FVBは宙の民であると共に海の民である。そのため、宇宙艦隊にあっても帆走海軍の慣習や制度が色濃く残っているし、宇宙艦隊勤務であるか否かにかかわらず、FVB宙軍・海軍の士官候補生は海の上で3ヶ月間の訓練航海をすることが義務づけられている。
その1つが「ルテナント」制度であるが、以下の文中では東国人の国にふさわしく「海尉(Lieutenant)」と記述させてもらう。
さて、「海尉」とは、主に帆走軍艦時代など階級が細分化していない海軍における(艦長以外の)士官のこと。一般的な近代以降の軍隊における大尉・中尉・少尉をひとまとめにしたものと考えればいいだろう。アバウトなところがFVBに向いた制度かもしれない。 しかし、ここで問題になるのは命令系統、すなわち序列である。
誰かが誰かに対して威張りたいから序列が重視されるのではない。命令を下す者がいつ戦死するかも知れない軍隊だからこそ、一般人には扱うことのできない強力な武器を手にしているからこそ重視されるのが序列である。指揮官がいきなり存在しなくなったとき、その場にいる誰が指揮を執らなければいけないのか? そして、その結果について誰が責任を取らないといけないか?
いつ何時であっても誰かが必ず指示を出すこと、そして誰かがその責任を取ること。それが軍という組織である。
つまり海尉を採用している海軍・宇宙軍においては、海尉に昇進した順番にしたがって一席、二席……と呼び、その艦における「先任順位」を以て序列とし、一席の海尉が艦長の副官、すなわち副長を務めて艦長を補佐することになる。つまり、艦長に万が一のことがあれば副長が艦の指揮を執り、副長が戦死することがあれば二席の海尉が指揮を執る。さらに、その海尉がやはり指揮を執る状態でなくなれば三席が引き継ぐ……こういう流れになる。たとえ主力戦艦の指揮を5分前に着任したばかりのまだ若いぺーぺー海尉が執ることになろうとも、それが正規の順序である限り絶対である。
責任と権限の大きい順番に並べるなら、艦長(士官)→海尉(士官)→航海長(準士官)→掌帆長・掌砲長(下士官)→一般水兵・宙兵となる。
詳細は、「FVB海軍・宙軍における階級と職能」を参照のこと。
FVBには昔から「水夫」や「海賊」と呼ばれる者たちがいた。
彼らはいちばん下っ端の船乗りではあったが、ある時は海に、またある時は宇宙にいき、巧みに船を動かしては数々の苦難を乗り越えて航海を成功へと導く原動力となった。
その中でも、知識が足りないからと努力して学び、航海での生存率を高めて航海に挑んだ者は准士官と呼ばれ、縁の下の力持ちとして賞賛される存在となった。経験と知識に裏付けられた船乗りたちのまとめ役である。
そんな彼らは様々な思いから航海をしていたが、その多くには共通したある夢が存在した。それは……、
「いまだ見た事ない場所に、未知な場所へと行く夢」。
彼らはそれを見たくて、何処までも航海を続けた。果てにある「何か」を夢見て、自由に陽気に歌うかのように。
けれども、ここ最近はそんな彼らも夢を見続けられない状況ばかりだ。……戦乱にテロと厳しい状況ばかり。
それでも酒を呑んでいられれば、ヒャッハァーな者たちだから、多少のことは気にせずに船乗り暮らしを謳歌をしていたのだが……、少しだけ彼らは見てしまったのだ。
フリゲートでの海上警備から始まる戦いから第5世界迄に至る戦いを……。
シーズン1から護り続けた第5世界を歪ませたられた事、死さえも歪ませて死者を操る所業を、または貿易をする船を何の意味もなく沈める潜水艦の所業を……。
見てしまった彼らにはちょっと許せなくなった。酒がまずくなったのだ。
彼らの多くは本来は自由の民。型にはまった軍人は嫌いだし、軍属だって本当ならなりたくはないのだが、酒がまずくなるのはかなわんと軍籍に入る者が多くなった。そして、その中でも有能な者は准士官へと取り立てられ、さらに本格的に軍に身を置く覚悟が決まった者はエステル伝習所へと送り込まれた。
そこで、ずぶの素人から志願してきた学生に混じって、艦を組織として動かす術をあらためて叩き込まれ、きつい試験をくぐり士官となった者たち……。
彼らもまた海尉(ルテナント)として、ニューワールドの海と宙の防人となったのだ。
船乗りの国であるFVBにおいては、帆走船による外洋航海訓練(以下「帆走実習」)は重要な
カリキュラムである。
全体的なスキル向上を目的とする帆走実習については他国では「単なる精神論に過ぎない」と不要論も多いが、今なおFVBでは必須の項目である。いつ緊急輸送やシーレーン防衛でレムーリア航路に派遣されるかもしれないのだ。常在戦場はサムライの心得ではあるが、FVB士官には、どんな可能性にも対応できるよう、常に備えることが求められているのだ。
もちろん、宇宙艦隊勤務が決 まっている訓練生から異論が出ることはあるが、その場合は代わりに「バケツによる惑星洋上への緊急降下訓練(動力及び無線機は事故または敵攻撃により使用不能の設定)を選ぶことができる。しかし、帆走実習を選ぶ者が圧倒的多数であり、降下訓練を選択する者は3年に1名出るかでないかという状況は、やはり帆走実習への根強い支持があるためと考えて良いだろう。
エステル伝習所を卒業した訓練生は士官候補生として、見習い期間を過ごすことになる。そして士官候補生が海尉になるためには、定められた期間の航海経験を積み、その航海日誌(宇宙艦の場合は「航星日誌」だがFVBでは慣習的にすべて「航海日誌」と称する)を艦長に提出して海
尉試験の受験許可を得なければならない。
しかし、試験そのものは、実技試験も筆記試験もなく口頭試験だけである。
それはエステル伝習所を卒業した時点で最低限の知識は習得しているものとみなされているからだし、それが不十分であればそもそも艦長の許可は出ない。口頭試験における最大のポイントは海尉としての人
格であり、艦長(または
それに準ずると藩王から認められた者)3名による試験官の過半数が正式な士官にふさわしい人物であると認める必要がある。
それは、ここで海尉に昇進するということは、いずれは艦を指揮し、(試験官である)自分と肩を並べて戦う可能性が高いことを意味するからだ。自分の参加する戦線の一翼を任せられるか、臆病だったり蛮勇を誇ったりはしないか。1人の愚劣指揮官は、1軍を崩壊させる。
艦長となる資質のない者を認めるということは、いずれは自分自身を、祖国を窮地に追い込む遠因となりかねない。それゆえ、海尉試験の審査をするのは、あくまで戦場に立つ人間でなくてはいけないのだ。
海尉は艦の中枢、少なくとも最も動く部品であるといって良い。軍という組織を人の身体と考えるなら、「人々を守るために必要とあれば死力を尽くして戦う」「しかし無用な戦いは避ける」といった軍の精神は「心」であり、作戦を立案する参謀や指揮する艦長を「頭」とするなら、海尉は「神経」である。それゆえに、艦そして艦を動かす数多の船乗りたちにとるべき行動を伝え、現場の指揮を執る海尉たちのオペレーションがうまくいくかどうかは、艦が機能するかどうか、あるいは作戦が成功するかどうかと同義である。
確かに指揮は艦長が執り、航路計算や操舵は航海長が統率し、砲術長が砲戦を取り仕切るし、艦同士の白兵戦が発生とするなら、先陣を切って飛び込むのは海軍陸戦隊だろう。しかし、海尉は時には副長として艦長を補佐し、航海長を監督し、砲術長を指示して砲戦に備え、白兵戦ともなれば陸戦隊以外の船乗りたちを束ねて率先して乱戦に飛び込んでいく。
何十人、何百人、何千人という乗組員を抱える艦船が、1つの生き物のように機能するかどうかは、海尉たちがいかに部下である船乗りたちの信頼を得て、士気を保ち、1つの目的を達成すべく適切な行動を振り分けられるかにかかっている。それこそ海尉の任務の本質である。
10/10/07性能開示:ルテナント(職業):FVB
L:ルテナント = {
t:名称 = ルテナント(職業)
t:要点 = 副官,指示を出す,まだ若い
t:周辺環境 = 海の上
t:評価 = 体格6,筋力6,耐久力4,外見4,敏捷7,器用7,感覚6,知識5,幸運4
t:特殊 = {
*ルテナントの職業カテゴリ = ,,派生職業アイドレス。
*ルテナントの位置づけ = ,,{パイロット系,コパイロット系}。
*ルテナントのパイロット資格 = ,,搭乗可能(艦船系)。
*ルテナントのコパイロット資格 = ,,搭乗可能(艦船系)。
*ルテナントの搭乗補正 = 搭乗,条件発動,(位置づけ(艦船系)の乗り物に搭乗している場合での)全判定、評価+2。
*ルテナントの艦上補正 = ,条件発動,(位置づけ(艦船系)の乗り物の艦上で活動する場合での)全能力、評価+2
}
t:→次のアイドレス = キャプテン(職業),砲術長(職業),セーラー(職業),宇宙艦船・宇宙空母の建造(イベント)
}
★感覚評価+2 (SHQによる)
【東国人】(東国人の要点継承ページ)
[要点]
◎東洋風の服装 ……イラスト1枚目
◎東洋風の人材 ……イラスト1枚目
◎黒い髪 ……イラスト1枚目
[周辺環境]
◎四季 ……本文,イラスト5枚目
◎入り組んだ地形 ……本文「火山「百花山」」
◎稲作 ……イラスト2枚目
◎紙と木でできた家 ……イラスト4枚目
◎火山 ……イラスト3枚目,本文「火山「百花山」」
【船乗り】(船乗りの要点継承ページ)
[要点]
◎髪を隠す帽子か布 ……イラスト1枚目
◎艦剣 ……本文
◎膝までのズボン ……イラスト1枚目
[周辺環境]
◎帆船 ……本文
【海賊】(海賊の要点継承ページ)
[要点]
◎頭布 ……イラスト1枚目
◎日焼け ……イラスト1枚目
◎鍛えた体 ……イラスト1枚目
[周辺環境]
◎海 ……イラスト1,2枚目
(第1世代目HQ:知識+1)(第2世代目HQ:知識+1)
★クオリティチェック SHQ (2010/07/01)
★SHQ申請 感覚評価+2 (2010/10/27)
2010/05/06 開示申請
2010/05/09 申請内容訂正
2010/05/17 要点開示
文章・設定:光儀,曲直瀬りま
イラスト:曲直瀬りま,夜狗樹
コミック:夜狗樹