旅行鞄をもった青年が一人宇宙港にいた、小さい鞄に数点の服とちょっとした身の回りの物しか入ってない鞄を大事に持ちながら先程あった事を思い出してた……。
「まさか入国手続きしたら、『お帰りなさい』なんて言われるとはな…久しぶりに聞いたな」
青年は何かを思い出しちょっと笑顔になりながら、歩き出した。
少しお腹が減った青年は酒場に向かった。他に食事ができそうな店があたりに見当たらなかったからだ。
店は先客でいっぱいだったためカウンターに座る事になった。本日のおすすめということでホッケ定食とお酒を頼んだ。焼き魚と言えば酒だし、FVBといえば米の吟醸酒である。
料理を注文すると、あらためて辺りの様子を見回した。
(それにしても…活気があるな、ずいぶん久しぶりにみた気がする。)
女性人口が多くなっているはずだが、この店は場所柄か男ばかりで女性の姿はない。あのネーバ……いや、この国では正式に「美少女による銀河帝国」と呼ぶのだっけか。その銀河美少女たちの姿もない。先日襲った未曾有の大災害からNWには活気が少なくなった印象があったが、そんな雰囲気とは正反対の喧噪だった。
「兄ちゃんどうした? 辛気くさい顔して」
彼がここしばらくの事件を思い出し、どんどん暗い気分になっていると、いきなり船乗り風の人が話かけてきた。
「いや…楽しそうだなと」
ちょっと気分が鬱々としてたのか青年は少し刺のある発言をした。
船乗りは面食いつつも、何となく察しがついたのか謝罪を返してきた。
「うるさいか? すまんな」
青年も自身がひどい事を言ってしまったことに気付いて謝罪をした。
場が気まずい雰囲気が包まれたが、船乗りはぽつりと話始めた。
「今日はな、死んでいった奴らを弔うための宴なんだよ」
「死んでいった人たちのために?」
「…いや、自分たちのためにかもな………人はいつか死ぬ、死んだら生き返らない、辺り前の話だ…だけど、俺たちは生きている。
「だから皆、死んだ奴らを弔っていつまでも悲しみに沈まないために、参加してる。
「それにさ、これを見たあいつらが、こっちがは楽しいのを見て、早く生まれ変わろうとするかもしれんしよ」
「生まれ変わる?」
「周り回って死んだ奴はまた生まれてくる……輪廻転生てやつかな」
船乗りは酒を飲みつつ、静かに笑った。
「とにかく、今は楽しいぞー!って、死者の国にいる奴らを歯ぎしりさせて早く生まれてこいやーてな、そんな願いを込めて……な」
「それに…生きているなら、生きなきゃな……」
船乗りは小さい声でそう、つぶやいた。
「と言う訳で兄ちゃん、うちらの奢りだ、じゃんじゃん飲みな!」
「は?」
「気にするなー、ここで逢ったのも何かの縁だ」
そういいつつ、船乗りは青年にガラスの杯を押しつけ、自分はお水用のコップに酒をなみなみと注ぐと高く掲げた。
「では…、死んだ戦友、家族達へ」
「ありがとうございます……死んだ友人、家族へ」
「捧げます」
「乾杯!」
そしてまた少し賑やかになった。
宴もたけなわ、最高潮……酒の勢いから青年は隣にいた船乗りに質問をしてみた。
「ところで先程から気になってたんですが……皆さんは移民、なんですか?」
「……ん?、生まれも育ちもFVBさ、なんか変かね?」
「いえ……FVBの人って東国人だから、こんなに肌の色が濃いとか思いませんでした……すみません」
船乗りが一瞬考え込み何か分かったのか笑い声が響いた
「いやいや、気にしなくていいぜ、これはまぁなんだ…『宇宙線焼け』だ」
「宇宙線焼け?」
「宇宙ではいろんな放射線がめったやたらに飛びかってるからな。宇宙船にも宇宙港にも放射線シールドは張られているが、油断してると肌がすぐこんな具合に……別に人体に害はないみたいだけどなー。ガッハハハー!」
害がないわけないと思うのだが、船乗りは豪快に笑いつつ酒をぐいっと飲み干した。
「ま、海で日焼けした程度に考えればいい!」
「はぁ…」
青年は怪訝な顔つきをしつつ船乗りに酒を注いだ。気がつけば、周囲には同じように褐色に日焼けした者の姿が目立つ。
「おっと、ありがとな……まぁ、今は東国人というより星の護り人だからな。これくらいで済むならありがたいくらいだよな。ついでにみょうに感覚が研ぎ澄まされた気もするしなー」
「?」
「そうだなー…口で言ってもわからないか」
船乗りは少し考えて何か思いついたのか酒場のウェイトレスを呼び
「おーい、姉ちゃんや聞きたい事あるんだが」
「ハイハーイ、何ですかお客さん」
船乗りは真面目な顔つきで
「正直に答えてくれ今日の下着は……赤だな?」
………一瞬が永遠になった気がしたその時、船乗りがいきなり飛んで…いた。なにかテケテケテンッと閃光が走ったようにも見えた。
「もうー(ハート)、やだなぁー客さん。それセクハラですよ?、それ以上言ったらぶっ飛ばしますからね☆」
もうぶっ飛ばしてるよー!と、だれもがツッコミを…怖いので(ウェイトレスが)心の中でツッコミを入れつつ元の喧騒に戻っていった。
一方、青年は壁にめり込んでた(どんなキック力?)船乗りを助けおこし
「えーと…大丈夫ですか?」
「あぁ大丈ぐふっ(吐血)、……青年よ、若草色…だったぜ」(ばたり)
「人がそんなに便利になれるわけがないっ!」
人の革新は、そんな形で体現するものではないのだ。
「くくく、やはり奴は小物だったか」
「所詮奴は我らの中で一番下の実力よ」
「集中力たりんのう」
「鍛えかた足りないから」
酔いがまわってきたのか他の人たちが集まり口々に言い始めた。何か皆酔ったのかノリノリである。
…そんな中、また別の船乗りが、突然なにかをテーブルに広げ始めた。
「バカな連中だ。おれが本当の星の護り人の力ってやつをお見せしますよ!」
「?…これは地図?」
「そうだ、FVBの中央海岸地帯の地図だ。ちなみに最新版だ」
「これで…一体?」
「こー、やるのだよ …はっぁぁー-!!」
「一体何を?」
「……はっ!あ、あれは!まさか奴はあれをするつもりなのか!?」
と、さっきまで気絶していた船乗りA(仮名)が気付いたのか解説し始めた。やはりノリノ(略
「あいつは…高い空間認識能力があるんだ」
「空間認識能力?」
「あぁ、物体の位置・方向・姿勢・大きさ・形状・間隔など、物体が三次元空間に占めている状態や関係を、すばやく正確に把握、認識する能力のことだ。…つまり、あいつは二次元の地図からでも立体的に地形を思い浮かべる事が可能なんだ。」
「す、凄い…そんな事が
「くくくく、わかったぞ皆、これが、これこそが答えだ!!」
そうして示した地図上には赤マルが付けられ…
「…これは?」
「わからないか?」
「えーと……国の防衛戦の手薄の場所?」
「違う…これはな……覗きに最適な場所だ」(ボソッ)
「………………はっ?」
「わからないか、ほら此処に温泉街がある、で此処に露天風呂がある訳だ…でこの直線からここらへんが隠れて見れる最高スポットと言う訳。」
「と言う訳で行くか、いや、別に覗きじゃないよ? ちゃんとあってるか確かめに行くだけだよ?」(棒読み)
「えっ? あ、あの…え~?」
「少しまつで御座る」
と、そこに犬耳のつけた黒装束を着た男が助け船を出した。この人は、昔ながらの東国人のようだと、かすかに覗かせる目元の肌から判断した。
「此処はお庭番御用達の温泉のはず、忍者トラップがあると思うた方が良いで御座る」
(あれはこの国の忍者…確か犬忍者と呼ばれる人かな、犬耳は機械式で常人では感知出来ない音迄も探れるとか言われているらしいけど…それにお庭番て、犬忍者えりすぐりのエリートだったよな確か)
ともかく、これで皆あきらめるかなと思った時
「故にせっしゃが斥候を勤めるで御座る」
見事にたきつけていた。ダメだろ?
「なら前衛は俺達宙の神兵ズに任せな、軌道降下して強襲してもいいぜ、ただ対空兵器は勘弁な」
「機甲侍ズも忘れて貰っては困る、我らも行こう。」
「近道なら俺達に任せな、船が通ればどんな場所も行ってやるぜ、ただし飛行機は無理だぜ」
「トラップ解除ならこの機関士様に任せろ、理力より知力が上だと証明してやろう!」
「理力も馬鹿には出来んぞ、援護は任せて貰おう。久しぶりに錫杖捌きを見せてやろう」
「……海尉としては少し見過ごせないな、監督役としてついて行きます」
戦士(バカ)たちは続々と名乗りを上げて役割分担をし始めた。
「では行くか、理想郷に!そして宙に散った同胞達を笑顔にするためにも!!」
そうして戦士たち(バカ)は去り、青年は広くなった酒場で一人立ち尽くしつつ思った
「すっごく才能の無駄使い、と言うか、なにこれ?」
「おーい、兄ちゃんいくぞ~早くしなー」
「えーと…ま、良いか」
そうして青年は溜息をついた後…そうこれはあの力が本当か調べるために知的好奇心からであって決して覗きのためにではないとぶつぶつ言いながら、彼等を追い掛け酒場を後にした。
その後、彼等は天国を見たのか地獄を見たのかは別の話で語られ…ないと思う。