【女大学・16】 女は自分の親の家を継がず、舅姑の跡を継ぐのだから、自分の親よりも舅姑を大切に思い、孝行をしなくてはならぬ。
嫁に入った後は自分の親の家に行くのも稀なことにするべきだ。
ましてや他の家へは、おおかたは使いを遣わして安否を尋ねること。また自分の故郷のよいことを自慢して褒め語ってはならない。【女大学評論・16】 女は自分の親の家を継がず、舅姑の跡を継ぐから云々とある。
これも前に書いたとおり、婿養子を迎えた家の娘は親の家を継ぐのである。他の家に嫁いで舅姑の跡を継ぐ者と、生まれた家に居座って父母の跡を継ぐ者と、両方いるのである。これに気づかないのは、女大学の作者の全くの手落ちであるといえるだろう。
まあ、そんな手落ちのことはさておくとしても、自分の親よりも舅姑を大切に思い孝行せよとは、人情の実際においてできないことである。もし無理に強いれば虚偽となる。教育家の注意すべきことである。
また、嫁いだ後はめったに実家に行くなという。他の家に対しても自分からはあまり行かずに使いを遣わせて安否をたずねよという。これも無用の注意であろう。
女子が結婚すると家事に忙しくて、特に子供などが生まれると外出は自然と億劫になるけれども、父母を親しみ慕うのは人間の自然な情であって、決して悪いことではない。家事の都合がつくならば、忘れぬようにちょくちょく里の家をたずねて両親の機嫌を伺い、一緒に食事などをして楽しむがよい。
他人と付き合うのもこの通りで、自分の家を大事に治めたなら、暇なときには自分からその相手の家をたずねて自由に行き来するがよい。
「嫁入り」は「入牢」ではないのだから、憚ることはない。
また、実家の親を誇ってほめ語るなとは念入りな注意だ。確かに、いたずらに我が身内の美を吹聴することは、婦人に限らず誰でも慎むべきことである。
最終更新:2007年05月01日 14:35