淑女の嗜み - (2007/06/10 (日) 23:52:04) の1つ前との変更点
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**淑女の嗜み
小さい少女を逃したネリネは、同じ失敗をするまいと心に決めていた。
次に見つけた相手が稟でなければ、誰であろうと問答無用で殺す。
そう、例え芙蓉楓や時雨亜沙だとしても、例外は無い。
魔法で殺すのは可能だが、不安定で制御が出来ないので頼り過ぎるのは危険である。
出来るだけ支給された槍でどうにかするしかない。
だが、覚悟をしたもののそんな「殺し合い」とは無縁に生きてきたネリネの決意はまだ揺らいでいた。
周囲が明るくなり、太陽が昇り始めてきた。時間的にはそろそろ早朝となる。
それは、あのシアを殺した女が最後に言った定時放送が流れる事を意味する。
恐怖していた。もし稟が死んでいたとしたら。その名が呼ばれる事が怖い。
その恐怖を打ち払うため、ネリネに出来る事は一つしかない。
(とにかく、誰であろうと見つけ次第殺します――)
◇ ◇ ◇ ◇
新市街地から西に向かっていた音夢は、閉じていたブティックをこじ開け品定めを始めていた。
一方同行していたつぐみは、隣にあった金物屋の窓を叩き割り目当ての品物をデイパックに詰め込んでいた。
特に、十二分に武器にとなる「釘撃ち機」が手に入ったのはありがたい。
銃よりも数段劣るが、上手く使えば致命傷を与えられる。もっとも、狙いが安定しないのが難だが。
「とりあえず、これぐらいでいいかしら」
音夢とは利害一致で行動を共にする事にしたが、絶対に気を許す事はしない。
おそらくは相手もそう思っているだろうが、二人は決して『仲間』などではないのだ。
デイパックを担ぐと、つぐみは音夢の元に戻った。
ブティックでは、キャミソールにワンピースを重ねてファッションチェックをしていた。
「終わったかしら」
「ええ。白を基調に選んでみました」
白が意味するは純白。普段はともかく、二人も殺した人間をイメージするには難しい色だ。
そんな事も構わず、音夢は嬉しそうな笑顔を浮かべると、デイパックから銃を取り出した。
「じゃ、行きましょ。今度は返り血を浴びても大丈夫なように、替えの服を持ちましたから」
可愛げに舌を出す音夢。何も知らない男が見たら、心ときめかせたかもしれない。
だが、つぐみの目には人間の皮を被った化け物としか映らない。
それでも、恐れる必要は無い。音夢が化け物ならば、つぐみとて化け物なのだから。
「ところで、行く当てはあるのかしら?」
「う~ん」
ブティックを出て、二人は死体があった場所まで戻る事にした。
つぐみの話では、そこに動かせそうな車があるというので、それを移動手段に使おうというのだ。
音夢としては兄を探したいが、その前に処理したい泥棒猫である芳乃さくらを探すほうが重要だ。
だが、この島でさくらがどこにいるかなど皆目見当が付かない。
泥棒猫の予備軍である白河ことりならば、教会で震えている可能性はあるが、いなければ無駄足になる。
残るは学校や住宅街など人が集まりそうな場所。新市街はこれだけ騒いで誰も現れないのだがら除外。
とすれば、学校を経由しつつ住宅街に向かうのが理想的だろう。
「なるべく人の集まりそうな……学校や住宅街なんてどうでしょう」
「そうね。弱い人間なんかは群れるために人の多そうな場所に行くかもしれないわね。ただ――」
喋るのをやめ、つぐみと音夢は建物の陰に隠れた。そして、デイパックからバールを取り出し息を潜める。
音夢も、銃を構えて建物の影から目標を見定める。
「そういった場所には殺し合いに乗った人間が現れるって事よ。貴女みたいにね」
「失礼ですね。私は邪魔だから殺しただけで、無差別じゃないですよ~だ」
「あら。じゃああのお嬢さんはどうするの? あれだけ殺気立ってるけれど」
「そんなの、殺すに決まってるじゃないですか。あ~あ、せっかく着替えたばかりなのに」
殺す事への嫌悪感よりも、着替えたばかりの服が汚れる事が嫌であるらしい。
「なら、ちょっと試してみたい事がるのよ」
「えぇ?」
「無駄だったら私が責任持つわ。いらなくなれば殺してしまって構わないし」
そう言って、つぐみは音夢だけに聞こえるように計画の内容を語り始めた。
◇ ◇ ◇ ◇
スクラップ場から南下していたネリネは、立ち寄った新市街でガラスの割れるような音を聞いた。
(誰か居る!?)
辺りを警戒し、慎重に足を進める。掴んだ槍を持ち直し、誰が出てきてもすぐ攻撃できるよう準備する。
一歩一歩前に進む。震える足を必死で立たせ、ネリネは二つの死体が転がる場所に辿り着いた。
「ひッ」
肉の塊となり、無造作に転がる二つの死体はネリネを睨んでいるように思えた。
その光景に、思わず足が滑り転倒する。尻餅をついた拍子に、ぬかるんだ部分に手を突いてしまう。
そのぬかるんだ土は、茶色でなく赤黒く粘々していた。
「いやッ、やァっ」
手を払い必死で泥を落とす。制服で必死に手を拭うが、気持ち悪い感触は拭いきれない。
あれだけの覚悟を胸に誓ったものの、それは現実に存在する死体の前に霞んでしまう。
首の無くなったシアの姿が脳裏に浮かぶ。そして、嗚咽を漏らしてしまう。
「稟さま……助けて下さい」
地面に顔を伏していたネリネは、こみ上げてくるものを必死で抑えていた。
そんな時、転んだときに落とした槍に手が触れる。その硬い感触で心が静まる。
(そうです。助けてもらうのは私じゃない――私が稟さまをお助けするんです)
触れた槍を握り締める。今度こそ覚悟を決める。ネリネは今までの恐怖を払拭した。
それと同時に、ネリネは密かに近付く足音を感じ取った。数は一人。
振り向き立ち上がると同時に、ネリネは相手に槍を突きつける。
「誰です!!」
「ちっ」
振り返った視線の先には、白いワンピースを着た少女がナイフを構えて立っていた。
「もう少し沈んでいれば良かったのに」
残念そうに呟くと、少女はデイパックにナイフをしまい、換わりに銃を取り出した。
「あんまり無駄弾を使いたくないんですけど、しょうがないか」
言うよりも先に、二発の銃弾がネリネに迫る。
一発は腕を掠ったが、本能が痛みを押さえ込んだ。もう一発も直撃をギリギリで回避し、体制を整え突撃する。
「やぁぁ!」
「っく」
繰り出された槍の一閃をなんとか横に回避して距離をとる。
避けられたのは、掠った方の腕の痛みが攻撃に支障をきたしたからだろう。
焼けるような痛みで泣きたくなるネリネだが、そこは唇を噛んで堪えた。
銃を構える少女とネリネの距離は5m前後。突撃可能な射程圏内である。
一方の少女は、銃を構えたまま動かなかった。
(弾切れ? でも、ブラフの可能性もありますね)
だがそれよりも、少女の顔がずっと余裕なのが不気味だった。
見ようによっては、こちらを誘っているようにも見える。
だが、実際には弾はもう無く、こちらが攻撃した隙を突いてくるかもしれない。
仕掛けるか仕掛けないか、一瞬ではあるがネリネは集中を途切れさせてしまった。
それはすなわち、ネリネの敗北を意味していた。
「動いちゃ駄目よ」
背中から銃口を突きつけるもう一人に気付かなかったのだから。
◇ ◇ ◇ ◇
「槍とデイパックはあっちに投げてくれるかしら」
つぐみの言葉に、耳の長い少女はしぶしぶ従う。デイパックを投げ捨て、槍を放った。
「音夢。槍を私のデイパックに入れておいてくれるかしら」
「え~。ま、私は槍なんか使えないから良いですけどね」
愚痴を言いながらも、音夢はつぐみのデイパックに槍をしまう。
「さて、次にお名前を宜しいかしら。あ、私は小町つぐみ。彼女は朝倉音夢よ」
少女に向かって優しく語り掛けるつぐみ。だが、少女は口を閉ざしていた。
そんなネリネの耳に、音夢が銃口を押し込める。
「痛い!」
「わっ。偽者かと思ったけど、本物の耳なんですね~」
面白そうに耳を触りながら、銃をさらに押し込んでいった。
「もう、鼓膜破れると聞こえづらくなりますよ」
「やッ、ぁ」
徐々に少女の耳に銃身が埋まっていく。その度に、少女の顔が痛みで引きつる。
「ネリネ――です」
「そう。もういいわ音夢」
「命令しないで下さい。全く偉そうなんだから」
そう言いつつも銃を引っこ抜く。ネリネの耳から血が流れるが誰も気にしない。
痛みに堪えながらも、ネリネは音夢を睨んだ。そのネリネを音夢は見下したように笑う。
「さて、ネリネはどうして攻撃してきたのかしら」
「あれは! 貴女方が先に――」
「ああもう! うるさいなぁ」
罵り声を挙げる前に、ネリネの腹部に蹴りを捻じ込む音夢。
「うげぇッ」
「あれだけ、殺気立って、近付けっ……ば! 馬鹿でもない限り! 気付きます……よ!」
言葉の合間に蹴りを放つ。つぐみに命令された苛立ちもあって自然と力が篭る。
「やめなさい音夢」
つぐみの強い口調に、舌打ちを打ちながらも音夢は蹴る事をやめた。
「げほっげほッごっ」
「大丈夫? でも、私達は殺気立った貴女が怖くて警戒してただけよ。ね」
優しくネリネの背中をさする。そんな様子を、音夢は冷めた目で見下さしていた。
(いずれは殺す相手に……たいした役者ですね。ホント)
そんな視線を気にせず、つぐみは言葉を続けた。
「貴女はどうして私達を殺そうとしたのかしら」
「……さまを」
喋りだしたネリネの言葉に耳を傾ける。
「稟さまを、生きて返すため……です」
「ふぅ~ん。それってさっき泣いて呟いてた名前ですね。男の人? 自分が死んでその人を一人にするんだ」
「それが……なんなのです?」
「ええ。実は私は人を探しているだけでね。邪魔をしないなら殺し合いはしないつもりなのよ」
聞いていた二人は聞き逃したが、つぐみはこの部分だけ『私達』でなく『私』と言い分けた。
だが、そんな些細な事よりもネリネは話の本題に注意を向けていた。
「え?」
「ま、言いたい事は簡単。私達と組まない?」
全てはこの一言のため、つぐみは音夢と一芝居打っていたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
つぐみの言葉を聞いたネリネは、どういう顔をして言いか解からなかった。
そんなネリネに、畳み掛けるように言葉が飛んでくる。
「もちろん。私達は『仲間』になる訳じゃない。お互いの利害が一致する間利用しあうのよ」
その言葉に、ネリネは慎重になる。
「おっしゃっている意味が、まだ良く分からないんですが……私は全員殺すつもりなんですよ?」
「だから、私達は探したい人間がいるだけなのよ。探し人に会えるまで、私達と殺し合いをして欲しくないだけ」
「見つかった後はどうなさるんですか?」
「さぁ、その時はその時ね」
気にする事でもないと言いたげに、つぐみは肩をすくめた。
「……お二人の探している方々は?」
「私は倉成武って男を探している。音夢は――」
「私も兄の朝倉純一って人を探してるの。あと、芳乃さくらと白河ことりって泥棒猫を探して殺すだけ」
「ね、少なくとも貴女の探す稟を殺す事は無いわ」
優しそうな言葉でつぐみは語り続ける。だが、その作った笑顔の裏の蔑む様な目はネリネをしっかり捕らえていた。
「女が三人でいれば、群れたがる人間は警戒を緩めて寄ってくるし、奇襲もしにくいと思うのよ……もちろん、人探しも楽になるわ」
「私はこれ以上人数が増えるのは困るんだけどな~」
つぐみの言葉に、横槍を入れる音夢。
「そうね。だから三人が限界。これ以上は増やす必要は無いわ……どう?」
解答権をネリネに与えてはいるが、背中に突きつけた銃口らしきものは外されていない。
ネリネに選択の余地は無かった。
(でも、これはチャンスかもしれません)
つぐみの言うように女三人組ならば、ある程度警戒を緩められるかもしれないし、なにより手札として使える。
さっきは失態を招いたが、今後はもっと冷静になって二人を利用すればいい。
そして、稟を保護できたら同行し、四人になったら稟以外を殺せばいいのだ。
「わかりました。仲間ではなくお互い利用しあうと」
「ええ。そういう事」
「良いでしょう。ただ、条件があります」
「何かしら」
「槍は返してください」
「……いいわ。ただし――」
「大丈夫です。その時は遠慮なく撃って下さいな」
背中越しに睨みあうネリネとつぐみ。やがて先に折れたつぐみがデイパックから槍を取り出す。
そして、銃口らしきものを背中から外すとネリネに槍を突き出した。
「どうぞ。よろしくネリネ」
「こちらこそ、頑張って下さいねつぐみさん。朝倉さん」
「音夢で構いません。じゃ、無駄死にしないように努力してねネリネさん」
「ええ。そちらこそ」
三人は本音を織り交ぜながら挨拶を交わす。今度は握手すらない。
その事に気付いた音夢は、気付かれないように笑う。
その中には、友情や友愛など微塵も存在するはずがなかった。
「じゃあ、さっそく移動しましょう」
そう言って、つぐみは工具箱を取り出し車に細工を施す。
数分後、見事車のエンジンがかかる。どうやら車は動くようだ。
だが、出発しようとする二人をネリネは止めた。
「私、服が汚れてしまって。血とか泥とか臭います」
「なんです? 私に対する当てつけ?」
わざわざ音夢の顔を見て文句を言うネリネに対し、すました顔で非難する音夢。
それは、少し前のつぐみが音夢に指摘した内容とほとんど同じだった。
うんざりした顔で、つぐみは手を払う。
「分かった。そこの角にブティックがあるからいってらっしゃい」
「ええ。少々失礼しますね」
つぐみの言葉に従い、音夢と二人でブティックに入るネリネ。
音夢はアクセサリーを選んではネリネに勧めていたが、それを丁重に断った。
先程のつぐみは攻撃しなかっただけでまだマシなのだが、音夢は違う。
面白がるように耳に銃口を捻じ込み、腹部に何度も蹴りを見舞ってくれたのだ。
何着か選び、試着室で着替える。カーテンを閉め、汚れた自分を見て憎しみが湧き上がるのが分かった。
(よくも……よくもこんな)
カーテンの向こうで笑っている音夢、そして見下すような目をしていたつぐみの顔を思い出す。
あの状況下での二人は、ネリネには人間の皮を被った化け物に感じられた。
大切な稟にあんな化け物に会わせたくはない。だが、今すぐ殺すのは非常に難しい。
それに彼女達を殺すのは、自分が味わった以上の苦痛や絶望を与えてやりたい。
(そうだ)
制服を脱ぎ捨て、痣となった腹部を優しく撫でる。
体の痛みはいつか癒えるが、心の痛みはそう簡単に癒えない。
(二人の探し人を私が保護して、それを二人の目の前で……うふふ)
履いていた下着も脱ぎ捨て、店にあった黒い下着に脚を通す。
幸いにも、普段着ていた服と同じものが見つかったのはありがたかった。
(それには、いつでも二人を拘束できるように準備しないといけませんね)
着替え終わったネリネは、カーテンを開け入り口で待つ音夢のもとへ向かう。
「お待たせしました」
「へぇ~。似合ってるじゃないですか」
先程のやりとりが嘘のように、お互い笑顔で言葉を交わす。
そして数分後、着替えてきたネリネを含む三人を乗せた車は音を立てて動き出す。
「あ、そう言えばそろそろ定時放送ですね」
「私は運転しているから、音夢とネリネでチェック入れて頂戴」
「分かりました」
◇ ◇ ◇ ◇
一人車の準備をしていたつぐみは、計画が思惑通り進んだのに呆れていた。
(二人ともおバカさんね)
ネリネもそうだが、音夢もまんまと自分の考えに乗った事がそう思わせた。
あの状況で殺されてしまうくらいならこちらの言葉に従うであろうネリネと違い、音夢には何の制約も無かったはずなのだ。
疑問なのは、音夢がこの計画にあっさり同意した事だ。彼女にメリットなどないはず。
だが、音夢は特に異を唱えるでもなく、つぐみの計画を邪魔せずに、むしろ事が進みやすいよう芝居をうった。
たんなる気まぐれか、それとも意図的なものか……その真意は解からない。
(それが解かっていて、わざわざ踊ったのかもしれないわね)
どちらにせよ、油断する気にはならない。二人の関係は仲間ではないのだから。
そう、ネリネを引き入れた最大の要因は音夢に対する牽制、可能ならば抑止力にするためだ。
音夢の武器もさることながら、あれでなかなか頭の回転もいい。捨てるには勿体無い。
だが、利害が一致しているからといって、音夢に背中を見せるのは危険である。
いつ気が変わって撃ち殺されるかも分からないのだ。可能性は捨てきれない。
数発程度ならば死ぬ事は無いだろうが、だからと言って的の様に撃たれる筋合いは無い。
そこでネリネを上手く操作して、危険だと判断したら上手く誘導し、ネリネに矛先を向けてもらう。
上手くいけば双方潰しあってくれるし、それが駄目でも逃げる時間は十分確保できる。
だからこそ悪役は音夢に任せて、ネリネとは握手をしなかった。
(やっぱり仲間では無いと言っても、自分より下の存在がいると思えば嬉しいみたいね)
握手をしなかった時の、ネリネを見下す音夢の瞳。
蹴りを入れられた時の、音夢を憎む気持ちを隠さないネリネの瞳。
互いが互いを牽制し、憎んでくれるだけでいいのだ。
そのために、つぐみのすることは徹底して裏方に回り、二人の矛先を自分以外に向ける事。
(さて、今まで以上に気を引き締めないといけないわね)
一呼吸置いて、つぐみは胸に手を当てた。
(必ず見つけるからね……武)
◇ ◇ ◇ ◇
(せいぜい利用させてもらいますよ二人とも。どうせ最後には兄さんと私以外残さず殺すんだから)
(この二人を殺す時は、それぞれの会いたい人間を先に確保して……目の前で殺すのが効果的)
(ま、二人とも武に逢えるまで上手く踊って頂戴ね)
――顔は穏やかに、口は優しく、瞳は儚げに……そうやって、心に潜む本音を巧みに隠す。
――ああ、淑女の嗜みとはかくも醜くおぞましい。
【B-3 新市街中心部 1日目 早朝】
【小町つぐみ@Ever17】
【装備:スタングレネード×9】
【所持品:支給品一式 天使の人形@Kanon、釘撃ち機(20/20)、バール、工具一式】
【状態:健康(肩の傷は完治)】
【思考・行動】
基本:武と合流して元の世界に戻る方法を見つける。
1:ゲームに進んで乗らないが、自分と武を襲う者は容赦しない(音夢とネリネの殺人は黙認)
2:音夢とネリネを利用する(朝倉純一と土見稟の捜索に協力)
3:音夢とネリネが利用できなくなったら捨てる。
【備考】
赤外線視力のためある程度夜目が効きます。紫外線に弱いため日中はさらに身体能力が低下。
参加時期はEver17グランドフィナーレ後。
【朝倉音夢@D.C】
【装備:S&W M37 エアーウェイト 弾数1/5】
【所持品1:支給品一式 MI デザートイーグル 10/7+1 IMI デザートイーグル の予備マガジン10 トカレフTT33の予備マガジン10】
【所持品2:出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭 コンバットナイフ 九十七式自動砲弾数7/7(重いので鞄の中に入れています)】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:純一と共に生き延びる。
1.何としてでも泥棒猫のさくらを殺す
2.犯罪者予備軍であることりも殺す
3.純一に危害を加えるであろう者も殺す
4.兄さん(朝倉純一)と合流する
5.殺すことでメリットがあれば殺すことに躊躇は無い
6.つぐみとネリネを利用する(倉成武と土見稟の捜索に協力)
7.頃合を見てつぐみとネリネを殺す
【備考】
白いワンピースに着替えました。(汚れた制服はビニールに包んでデイパックの中に)
音夢の参加時期は、さくらルートの卒業パーティー直後の時期に設定。
今のところつぐみとネリネを殺すつもりはありません。
【ネリネ@SHUFFLE】
【装備:永遠神剣第七位“献身”】
【所持品:支給品一式】
【状態:肉体疲労・精神疲労。腹部に痣。右耳に裂傷】
【思考・行動】
1:稟を探す。その途中であった人間は皆殺し(朝倉純一、倉成武は保留)
2:いつか音夢の前で純一を、つぐみの前で武を殺して、その後二人も殺す
3:稟を守り通して自害。
【備考】
私服(ゲーム時の私服に酷似)に着替えました。(汚れた制服はビニールに包んでデイパックの中に)
ネリネの魔法(体育館を吹き飛ばしたやつ)は使用不可能です。
※これはネリネは魔力は大きいけどコントロールは下手なので、
制限の結果使えなくなっただけで他の魔法を使えるキャラの制限とは違う可能性があります。
※永遠神剣第七位“献身”は神剣っていってますが、形は槍です。
※永遠神剣“献身”によって以下の魔法が使えます。
尚、使える、といっても実際に使ったわけではないのでどの位の強さなのかは後続の書き手に委ねます。
アースプライヤー 回復魔法。単体回復。大地からの暖かな光によって、マナが活性化し傷を癒す。
ウィンドウィスパー 防御魔法。風を身体の周りに纏うことで、防御力を高める。
ハーベスト 回復魔法。全体回復。戦闘域そのものを活性化させ、戦う仲間に力を与える。
※古手梨花を要注意人物と判断(容姿のみの情報)
※三人はそれぞれの知り合いの情報を交換しました。
※車はキーは刺さっていません。燃料は軽油で、現在は満タンです。
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**淑女の嗜み
小さい少女を逃したネリネは、同じ失敗をするまいと心に決めていた。
次に見つけた相手が稟でなければ、誰であろうと問答無用で殺す。
そう、例え芙蓉楓や時雨亜沙だとしても、例外は無い。
魔法で殺すのは可能だが、不安定で制御が出来ないので頼り過ぎるのは危険である。
出来るだけ支給された槍でどうにかするしかない。
だが、覚悟をしたもののそんな「殺し合い」とは無縁に生きてきたネリネの決意はまだ揺らいでいた。
周囲が明るくなり、太陽が昇り始めてきた。時間的にはそろそろ早朝となる。
それは、あのシアを殺した女が最後に言った定時放送が流れる事を意味する。
恐怖していた。もし稟が死んでいたとしたら。その名が呼ばれる事が怖い。
その恐怖を打ち払うため、ネリネに出来る事は一つしかない。
(とにかく、誰であろうと見つけ次第殺します――)
◇ ◇ ◇ ◇
新市街地から西に向かっていた音夢は、閉じていたブティックをこじ開け品定めを始めていた。
一方同行していたつぐみは、隣にあった金物屋の窓を叩き割り目当ての品物をデイパックに詰め込んでいた。
特に、十二分に武器にとなる「釘撃ち機」が手に入ったのはありがたい。
銃よりも数段劣るが、上手く使えば致命傷を与えられる。もっとも、狙いが安定しないのが難だが。
「とりあえず、これぐらいでいいかしら」
音夢とは利害一致で行動を共にする事にしたが、絶対に気を許す事はしない。
おそらくは相手もそう思っているだろうが、二人は決して『仲間』などではないのだ。
デイパックを担ぐと、つぐみは音夢の元に戻った。
ブティックでは、キャミソールにワンピースを重ねてファッションチェックをしていた。
「終わったかしら」
「ええ。白を基調に選んでみました」
白が意味するは純白。普段はともかく、二人も殺した人間をイメージするには難しい色だ。
そんな事も構わず、音夢は嬉しそうな笑顔を浮かべると、デイパックから銃を取り出した。
「じゃ、行きましょ。今度は返り血を浴びても大丈夫なように、替えの服を持ちましたから」
可愛げに舌を出す音夢。何も知らない男が見たら、心ときめかせたかもしれない。
だが、つぐみの目には人間の皮を被った化け物としか映らない。
それでも、恐れる必要は無い。音夢が化け物ならば、つぐみとて化け物なのだから。
「ところで、行く当てはあるのかしら?」
「う~ん」
ブティックを出て、二人は死体があった場所まで戻る事にした。
つぐみの話では、そこに動かせそうな車があるというので、それを移動手段に使おうというのだ。
音夢としては兄を探したいが、その前に処理したい泥棒猫である芳乃さくらを探すほうが重要だ。
だが、この島でさくらがどこにいるかなど皆目見当が付かない。
泥棒猫の予備軍である白河ことりならば、教会で震えている可能性はあるが、いなければ無駄足になる。
残るは学校や住宅街など人が集まりそうな場所。新市街はこれだけ騒いで誰も現れないのだがら除外。
とすれば、学校を経由しつつ住宅街に向かうのが理想的だろう。
「なるべく人の集まりそうな……学校や住宅街なんてどうでしょう」
「そうね。弱い人間なんかは群れるために人の多そうな場所に行くかもしれないわね。ただ――」
喋るのをやめ、つぐみと音夢は建物の陰に隠れた。そして、デイパックからバールを取り出し息を潜める。
音夢も、銃を構えて建物の影から目標を見定める。
「そういった場所には殺し合いに乗った人間が現れるって事よ。貴女みたいにね」
「失礼ですね。私は邪魔だから殺しただけで、無差別じゃないですよ~だ」
「あら。じゃああのお嬢さんはどうするの? あれだけ殺気立ってるけれど」
「そんなの、殺すに決まってるじゃないですか。あ~あ、せっかく着替えたばかりなのに」
殺す事への嫌悪感よりも、着替えたばかりの服が汚れる事が嫌であるらしい。
「なら、ちょっと試してみたい事がるのよ」
「えぇ?」
「無駄だったら私が責任持つわ。いらなくなれば殺してしまって構わないし」
そう言って、つぐみは音夢だけに聞こえるように計画の内容を語り始めた。
◇ ◇ ◇ ◇
スクラップ場から南下していたネリネは、立ち寄った新市街でガラスの割れるような音を聞いた。
(誰か居る!?)
辺りを警戒し、慎重に足を進める。掴んだ槍を持ち直し、誰が出てきてもすぐ攻撃できるよう準備する。
一歩一歩前に進む。震える足を必死で立たせ、ネリネは二つの死体が転がる場所に辿り着いた。
「ひッ」
肉の塊となり、無造作に転がる二つの死体はネリネを睨んでいるように思えた。
その光景に、思わず足が滑り転倒する。尻餅をついた拍子に、ぬかるんだ部分に手を突いてしまう。
そのぬかるんだ土は、茶色でなく赤黒く粘々していた。
「いやッ、やァっ」
手を払い必死で泥を落とす。制服で必死に手を拭うが、気持ち悪い感触は拭いきれない。
あれだけの覚悟を胸に誓ったものの、それは現実に存在する死体の前に霞んでしまう。
首の無くなったシアの姿が脳裏に浮かぶ。そして、嗚咽を漏らしてしまう。
「稟さま……助けて下さい」
地面に顔を伏していたネリネは、こみ上げてくるものを必死で抑えていた。
そんな時、転んだときに落とした槍に手が触れる。その硬い感触で心が静まる。
(そうです。助けてもらうのは私じゃない――私が稟さまをお助けするんです)
触れた槍を握り締める。今度こそ覚悟を決める。ネリネは今までの恐怖を払拭した。
それと同時に、ネリネは密かに近付く足音を感じ取った。数は一人。
振り向き立ち上がると同時に、ネリネは相手に槍を突きつける。
「誰です!!」
「ちっ」
振り返った視線の先には、白いワンピースを着た少女がナイフを構えて立っていた。
「もう少し沈んでいれば良かったのに」
残念そうに呟くと、少女はデイパックにナイフをしまい、換わりに銃を取り出した。
「あんまり無駄弾を使いたくないんですけど、しょうがないか」
言うよりも先に、二発の銃弾がネリネに迫る。
一発は腕を掠ったが、本能が痛みを押さえ込んだ。もう一発も直撃をギリギリで回避し、体制を整え突撃する。
「やぁぁ!」
「っく」
繰り出された槍の一閃をなんとか横に回避して距離をとる。
避けられたのは、掠った方の腕の痛みが攻撃に支障をきたしたからだろう。
焼けるような痛みで泣きたくなるネリネだが、そこは唇を噛んで堪えた。
銃を構える少女とネリネの距離は5m前後。突撃可能な射程圏内である。
一方の少女は、銃を構えたまま動かなかった。
(弾切れ? でも、ブラフの可能性もありますね)
だがそれよりも、少女の顔がずっと余裕なのが不気味だった。
見ようによっては、こちらを誘っているようにも見える。
だが、実際には弾はもう無く、こちらが攻撃した隙を突いてくるかもしれない。
仕掛けるか仕掛けないか、一瞬ではあるがネリネは集中を途切れさせてしまった。
それはすなわち、ネリネの敗北を意味していた。
「動いちゃ駄目よ」
背中から銃口を突きつけるもう一人に気付かなかったのだから。
◇ ◇ ◇ ◇
「槍とデイパックはあっちに投げてくれるかしら」
つぐみの言葉に、耳の長い少女はしぶしぶ従う。デイパックを投げ捨て、槍を放った。
「音夢。槍を私のデイパックに入れておいてくれるかしら」
「え~。ま、私は槍なんか使えないから良いですけどね」
愚痴を言いながらも、音夢はつぐみのデイパックに槍をしまう。
「さて、次にお名前を宜しいかしら。あ、私は小町つぐみ。彼女は朝倉音夢よ」
少女に向かって優しく語り掛けるつぐみ。だが、少女は口を閉ざしていた。
そんなネリネの耳に、音夢が銃口を押し込める。
「痛い!」
「わっ。偽者かと思ったけど、本物の耳なんですね~」
面白そうに耳を触りながら、銃をさらに押し込んでいった。
「もう、鼓膜破れると聞こえづらくなりますよ」
「やッ、ぁ」
徐々に少女の耳に銃身が埋まっていく。その度に、少女の顔が痛みで引きつる。
「ネリネ――です」
「そう。もういいわ音夢」
「命令しないで下さい。全く偉そうなんだから」
そう言いつつも銃を引っこ抜く。ネリネの耳から血が流れるが誰も気にしない。
痛みに堪えながらも、ネリネは音夢を睨んだ。そのネリネを音夢は見下したように笑う。
「さて、ネリネはどうして攻撃してきたのかしら」
「あれは! 貴女方が先に――」
「ああもう! うるさいなぁ」
罵り声を挙げる前に、ネリネの腹部に蹴りを捻じ込む音夢。
「うげぇッ」
「あれだけ、殺気立って、近付けっ……ば! 馬鹿でもない限り! 気付きます……よ!」
言葉の合間に蹴りを放つ。つぐみに命令された苛立ちもあって自然と力が篭る。
「やめなさい音夢」
つぐみの強い口調に、舌打ちを打ちながらも音夢は蹴る事をやめた。
「げほっげほッごっ」
「大丈夫? でも、私達は殺気立った貴女が怖くて警戒してただけよ。ね」
優しくネリネの背中をさする。そんな様子を、音夢は冷めた目で見下さしていた。
(いずれは殺す相手に……たいした役者ですね。ホント)
そんな視線を気にせず、つぐみは言葉を続けた。
「貴女はどうして私達を殺そうとしたのかしら」
「……さまを」
喋りだしたネリネの言葉に耳を傾ける。
「稟さまを、生きて返すため……です」
「ふぅ~ん。それってさっき泣いて呟いてた名前ですね。男の人? 自分が死んでその人を一人にするんだ」
「それが……なんなのです?」
「ええ。実は私は人を探しているだけでね。邪魔をしないなら殺し合いはしないつもりなのよ」
聞いていた二人は聞き逃したが、つぐみはこの部分だけ『私達』でなく『私』と言い分けた。
だが、そんな些細な事よりもネリネは話の本題に注意を向けていた。
「え?」
「ま、言いたい事は簡単。私達と組まない?」
全てはこの一言のため、つぐみは音夢と一芝居打っていたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
つぐみの言葉を聞いたネリネは、どういう顔をして言いか解からなかった。
そんなネリネに、畳み掛けるように言葉が飛んでくる。
「もちろん。私達は『仲間』になる訳じゃない。お互いの利害が一致する間利用しあうのよ」
その言葉に、ネリネは慎重になる。
「おっしゃっている意味が、まだ良く分からないんですが……私は全員殺すつもりなんですよ?」
「だから、私達は探したい人間がいるだけなのよ。探し人に会えるまで、私達と殺し合いをして欲しくないだけ」
「見つかった後はどうなさるんですか?」
「さぁ、その時はその時ね」
気にする事でもないと言いたげに、つぐみは肩をすくめた。
「……お二人の探している方々は?」
「私は倉成武って男を探している。音夢は――」
「私も兄の朝倉純一って人を探してるの。あと、芳乃さくらと白河ことりって泥棒猫を探して殺すだけ」
「ね、少なくとも貴女の探す稟を殺す事は無いわ」
優しそうな言葉でつぐみは語り続ける。だが、その作った笑顔の裏の蔑む様な目はネリネをしっかり捕らえていた。
「女が三人でいれば、群れたがる人間は警戒を緩めて寄ってくるし、奇襲もしにくいと思うのよ……もちろん、人探しも楽になるわ」
「私はこれ以上人数が増えるのは困るんだけどな~」
つぐみの言葉に、横槍を入れる音夢。
「そうね。だから三人が限界。これ以上は増やす必要は無いわ……どう?」
解答権をネリネに与えてはいるが、背中に突きつけた銃口らしきものは外されていない。
ネリネに選択の余地は無かった。
(でも、これはチャンスかもしれません)
つぐみの言うように女三人組ならば、ある程度警戒を緩められるかもしれないし、なにより手札として使える。
さっきは失態を招いたが、今後はもっと冷静になって二人を利用すればいい。
そして、稟を保護できたら同行し、四人になったら稟以外を殺せばいいのだ。
「わかりました。仲間ではなくお互い利用しあうと」
「ええ。そういう事」
「良いでしょう。ただ、条件があります」
「何かしら」
「槍は返してください」
「……いいわ。ただし――」
「大丈夫です。その時は遠慮なく撃って下さいな」
背中越しに睨みあうネリネとつぐみ。やがて先に折れたつぐみがデイパックから槍を取り出す。
そして、銃口らしきものを背中から外すとネリネに槍を突き出した。
「どうぞ。よろしくネリネ」
「こちらこそ、頑張って下さいねつぐみさん。朝倉さん」
「音夢で構いません。じゃ、無駄死にしないように努力してねネリネさん」
「ええ。そちらこそ」
三人は本音を織り交ぜながら挨拶を交わす。今度は握手すらない。
その事に気付いた音夢は、気付かれないように笑う。
その中には、友情や友愛など微塵も存在するはずがなかった。
「じゃあ、さっそく移動しましょう」
そう言って、つぐみは工具箱を取り出し車に細工を施す。
数分後、見事車のエンジンがかかる。どうやら車は動くようだ。
だが、出発しようとする二人をネリネは止めた。
「私、服が汚れてしまって。血とか泥とか臭います」
「なんです? 私に対する当てつけ?」
わざわざ音夢の顔を見て文句を言うネリネに対し、すました顔で非難する音夢。
それは、少し前のつぐみが音夢に指摘した内容とほとんど同じだった。
うんざりした顔で、つぐみは手を払う。
「分かった。そこの角にブティックがあるからいってらっしゃい」
「ええ。少々失礼しますね」
つぐみの言葉に従い、音夢と二人でブティックに入るネリネ。
音夢はアクセサリーを選んではネリネに勧めていたが、それを丁重に断った。
先程のつぐみは攻撃しなかっただけでまだマシなのだが、音夢は違う。
面白がるように耳に銃口を捻じ込み、腹部に何度も蹴りを見舞ってくれたのだ。
何着か選び、試着室で着替える。カーテンを閉め、汚れた自分を見て憎しみが湧き上がるのが分かった。
(よくも……よくもこんな)
カーテンの向こうで笑っている音夢、そして見下すような目をしていたつぐみの顔を思い出す。
あの状況下での二人は、ネリネには人間の皮を被った化け物に感じられた。
大切な稟にあんな化け物に会わせたくはない。だが、今すぐ殺すのは非常に難しい。
それに彼女達を殺すのは、自分が味わった以上の苦痛や絶望を与えてやりたい。
(そうだ)
制服を脱ぎ捨て、痣となった腹部を優しく撫でる。
体の痛みはいつか癒えるが、心の痛みはそう簡単に癒えない。
(二人の探し人を私が保護して、それを二人の目の前で……うふふ)
履いていた下着も脱ぎ捨て、店にあった黒い下着に脚を通す。
幸いにも、普段着ていた服と同じものが見つかったのはありがたかった。
(それには、いつでも二人を拘束できるように準備しないといけませんね)
着替え終わったネリネは、カーテンを開け入り口で待つ音夢のもとへ向かう。
「お待たせしました」
「へぇ~。似合ってるじゃないですか」
先程のやりとりが嘘のように、お互い笑顔で言葉を交わす。
そして数分後、着替えてきたネリネを含む三人を乗せた車は音を立てて動き出す。
「あ、そう言えばそろそろ定時放送ですね」
「私は運転しているから、音夢とネリネでチェック入れて頂戴」
「分かりました」
◇ ◇ ◇ ◇
一人車の準備をしていたつぐみは、計画が思惑通り進んだのに呆れていた。
(二人ともおバカさんね)
ネリネもそうだが、音夢もまんまと自分の考えに乗った事がそう思わせた。
あの状況で殺されてしまうくらいならこちらの言葉に従うであろうネリネと違い、音夢には何の制約も無かったはずなのだ。
疑問なのは、音夢がこの計画にあっさり同意した事だ。彼女にメリットなどないはず。
だが、音夢は特に異を唱えるでもなく、つぐみの計画を邪魔せずに、むしろ事が進みやすいよう芝居をうった。
たんなる気まぐれか、それとも意図的なものか……その真意は解からない。
(それが解かっていて、わざわざ踊ったのかもしれないわね)
どちらにせよ、油断する気にはならない。二人の関係は仲間ではないのだから。
そう、ネリネを引き入れた最大の要因は音夢に対する牽制、可能ならば抑止力にするためだ。
音夢の武器もさることながら、あれでなかなか頭の回転もいい。捨てるには勿体無い。
だが、利害が一致しているからといって、音夢に背中を見せるのは危険である。
いつ気が変わって撃ち殺されるかも分からないのだ。可能性は捨てきれない。
数発程度ならば死ぬ事は無いだろうが、だからと言って的の様に撃たれる筋合いは無い。
そこでネリネを上手く操作して、危険だと判断したら上手く誘導し、ネリネに矛先を向けてもらう。
上手くいけば双方潰しあってくれるし、それが駄目でも逃げる時間は十分確保できる。
だからこそ悪役は音夢に任せて、ネリネとは握手をしなかった。
(やっぱり仲間では無いと言っても、自分より下の存在がいると思えば嬉しいみたいね)
握手をしなかった時の、ネリネを見下す音夢の瞳。
蹴りを入れられた時の、音夢を憎む気持ちを隠さないネリネの瞳。
互いが互いを牽制し、憎んでくれるだけでいいのだ。
そのために、つぐみのすることは徹底して裏方に回り、二人の矛先を自分以外に向ける事。
(さて、今まで以上に気を引き締めないといけないわね)
一呼吸置いて、つぐみは胸に手を当てた。
(必ず見つけるからね……武)
◇ ◇ ◇ ◇
(せいぜい利用させてもらいますよ二人とも。どうせ最後には兄さんと私以外残さず殺すんだから)
(この二人を殺す時は、それぞれの会いたい人間を先に確保して……目の前で殺すのが効果的)
(ま、二人とも武に逢えるまで上手く踊って頂戴ね)
――顔は穏やかに、口は優しく、瞳は儚げに……そうやって、心に潜む本音を巧みに隠す。
――ああ、淑女の嗜みとはかくも醜くおぞましい。
【B-3 新市街中心部 1日目 早朝】
【小町つぐみ@Ever17】
【装備:スタングレネード×9】
【所持品:支給品一式 天使の人形@Kanon、釘撃ち機(20/20)、バール、工具一式】
【状態:健康(肩の傷は完治)】
【思考・行動】
基本:武と合流して元の世界に戻る方法を見つける。
1:ゲームに進んで乗らないが、自分と武を襲う者は容赦しない(音夢とネリネの殺人は黙認)
2:音夢とネリネを利用する(朝倉純一と土見稟の捜索に協力)
3:音夢とネリネが利用できなくなったら捨てる。
【備考】
赤外線視力のためある程度夜目が効きます。紫外線に弱いため日中はさらに身体能力が低下。
参加時期はEver17グランドフィナーレ後。
【朝倉音夢@D.C】
【装備:S&W M37 エアーウェイト 弾数1/5】
【所持品1:支給品一式 MI デザートイーグル 10/7+1 IMI デザートイーグル の予備マガジン10 トカレフTT33の予備マガジン10】
【所持品2:出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭 コンバットナイフ 九十七式自動砲弾数7/7(重いので鞄の中に入れています)】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:純一と共に生き延びる。
1.何としてでも泥棒猫のさくらを殺す
2.犯罪者予備軍であることりも殺す
3.純一に危害を加えるであろう者も殺す
4.兄さん(朝倉純一)と合流する
5.殺すことでメリットがあれば殺すことに躊躇は無い
6.つぐみとネリネを利用する(倉成武と土見稟の捜索に協力)
7.頃合を見てつぐみとネリネを殺す
【備考】
白いワンピースに着替えました。(汚れた制服はビニールに包んでデイパックの中に)
音夢の参加時期は、さくらルートの卒業パーティー直後の時期に設定。
今のところつぐみとネリネを殺すつもりはありません。
【ネリネ@SHUFFLE】
【装備:永遠神剣第七位“献身”】
【所持品:支給品一式】
【状態:肉体疲労・精神疲労。腹部に痣。右耳に裂傷】
【思考・行動】
1:稟を探す。その途中であった人間は皆殺し(朝倉純一、倉成武は保留)
2:いつか音夢の前で純一を、つぐみの前で武を殺して、その後二人も殺す
3:稟を守り通して自害。
【備考】
私服(ゲーム時の私服に酷似)に着替えました。(汚れた制服はビニールに包んでデイパックの中に)
ネリネの魔法(体育館を吹き飛ばしたやつ)は使用不可能です。
※これはネリネは魔力は大きいけどコントロールは下手なので、
制限の結果使えなくなっただけで他の魔法を使えるキャラの制限とは違う可能性があります。
※永遠神剣第七位“献身”は神剣っていってますが、形は槍です。
※永遠神剣“献身”によって以下の魔法が使えます。
尚、使える、といっても実際に使ったわけではないのでどの位の強さなのかは後続の書き手に委ねます。
アースプライヤー 回復魔法。単体回復。大地からの暖かな光によって、マナが活性化し傷を癒す。
ウィンドウィスパー 防御魔法。風を身体の周りに纏うことで、防御力を高める。
ハーベスト 回復魔法。全体回復。戦闘域そのものを活性化させ、戦う仲間に力を与える。
※古手梨花を要注意人物と判断(容姿のみの情報)
※三人はそれぞれの知り合いの情報を交換しました。
※車はキーは刺さっていません。燃料は軽油で、現在は満タンです。
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