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童貞男と黒タイツ女 - (2007/06/10 (日) 22:40:25) の1つ前との変更点
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**童貞男と黒タイツ女
百貨店を出た北川と風子は、誰とも遭遇する事無く役場に到着する事が出来た。
外から見た限りでは、役場は意外と狭く、どこか古めかしい印象を受ける。
駐輪場は近くにあったが、自転車が置いてある様子はない。
先客が居るかもしれないので、用心のため裏口から入ろうとしたが、鍵がかかっているため諦める事にした。
建物を半周し改めて玄関の前に戻ってくる。開いてない場合を想定するも、今度はいとも簡単にドアが開いた。
「なんだよ、こっちは開いてるのか」
役場内はシンと静まり返っていて、人の気配は感じない。
案内所に掛けられた振り子時計の音だけが静かに響いている。
その案内板を下から順に眺めていると、二階の案内部分に望みの場所を発見した。
「仮眠室とはありがたいぜ。喜べ風子、布団で眠れるぞ」
「くー」
「……って、すでに寝てたのかよ!?」
ため息を交えつつ、北川は風子を起こさない様にゆっくり二階へと足を運んだ。
来客のために小奇麗にされていた一階とは違い、二階は職員専用といった感じで無機質だった。
北川の足音が二階全体に響き渡る中、一番奥にお目当ての部屋を発見する。
だが、ドアノブに手を掛けた所でガックリとうなだれる。
(鍵が閉まってやがる。せっかく二階まで来たのに)
そんな北川の目に、壁に貼り付けられたメモ書きが飛び込んでくる。
【各部屋の合鍵は、一階の事務室にあります。使用する場合は、申請書に~】
どうやら入れない訳ではないらしい。風子を床に下ろすと、一階の事務室を目指した。
相変わらず静まり返っているが、逆に言えば周囲に誰も居ない事の証明になる。
協力的な人間ならば会いたいが、百貨店で襲ってきた少女のような人間はお断りだ。
だから、誰も居ないというのはありがたい事でもあった。
そんな事を考えながら歩いていたら、いつの間にかドアの立ち並ぶ廊下まで来ていたらしい。
一番手間のドアには『市長室』と書かれた質素なプレートが掛けられている。
その二つ隣に、探していた『事務室』のプレートが掛けられたドアがあった。
ここで最悪の事態も考えられたが、取り越し苦労だったようでドアはすんなり開いた。
部屋を見渡すと、机の上にモニターやらワープロらしきものが並べてある。
それらを無視して、北川は壁に掛けられていた鍵のガラスケースに近寄る。
「仮眠室、仮眠室は……っと。これか」
小さな役場にしてはやけに多い鍵の中から、仮眠室の鍵だけを抜き取る。
そして、急ぎ足で風子のもとへと走っていった。
仮眠室の前まで来た北川を待っていたのは、頬を膨らませた風子だった。
寝ていたから置いていったのだが、一人にさせたのは事実なので潔く謝罪する。
「っと、一人にさせて悪かったな」
「もがもが」
寂しくて頬を膨らませていたと思った北川は、子供じみた自己主張をする風子を笑う。
だが、よくよく近付いてみるとその頬の膨らみの不自然さに気付く。
空気を入れたにしては、やけにデコボコしている。
「なあ」
「んぐむぐ」
「ひょっとして」
「ん、んぐ」
「俺の……食料」
「けぷぅ……馳走様でした。風子としては、もっと栄養のある食事がしたいですが我慢します」
「のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
この日、北川は何度目かの絶叫をあげる事となった。
◇ ◇ ◇ ◇
支給品であった食料は、あろう事か全て風子の腹の中に収まっていた。
満足気な風子とは対照的に、北川は廊下で崩れ落ちていた。
仮に最後まで生き残ったとしても、空腹では満足に動けなくなる。
こうなると、食料を確保したいところだが、再び百貨店に戻るのは気が引ける。
他に食料が確保できそうなのは、新市街や商店街などだろう。
そんな重要な問題が発生していたとも知らず、風子はのんびりしていた。
「ところで、風子を床に投げ捨ててどこに行ってたんですか? 探検でもしてたんですか?」
「あ、そだった」
崩れていても始まらない。北川はポケットから鍵を取り出すと、手早く鍵を差し込んで仮眠室のドアを開けた。
中は色あせた畳が敷き詰められており、ご丁寧に布団が敷いてある。広さとしては六畳半といった所だろう。
特に北川の目を引いたのは、小さな冷蔵庫と一台のパソコンだった。
一方の風子は、靴を脱ぐと一目散に布団の中に潜り込み、数秒後には寝息を立てていた。
「おいおい。また寝るのかよ」
恨み晴らしに叩き起こしたいが、そんな事をするより先に冷蔵庫の中身を確認するのが大事だ。
電気も通っていて、室内を冷やしているのが静かに伝わってくる。
食料品が入っているのを願いつつ、冷蔵庫の扉をゆっくりと開けてみた。
……だが、北川の願いは即座に裏切られる事となる。
【ゲルルンジュース(スチール缶入り750ml)】
冷蔵庫の中には、見たことも聞いたことも無いジュースがぎっしりと詰められていた。
数にして十本程度。どれもみな同じ名前が記されている。
どう考えても外れです。本当にありがとうございました。
(ゲルルンジュースってなんだよオイ)
試しに一本手にとってみるが、ジュースにしてはずっしりと重く感じる。
意味不明な名前の下には「缶をぎゅっと握れば出てきます」と注意書きがなされている。
別にそこまで空腹ではないが、風子に全て食べられた事を思い出すと、自分も何か食べたくなる。
とりあえず、腹に入れば構わないのだ。味見のするためプルトップに手を掛ける。が、開かない。
穴に指を掛け力一杯引っ張る。だが、どんなに引いても普通のスチール缶のように軽快な音を立てる事は無い。
「ふぬぅーーーーー! むぉおおおおお! ぬわぁぁぁぁぁああああッ!」
顔を真っ赤にして、最大限の力を振り絞る。指がぷるぷると震え、顔が引き攣り始め所で変化が起きた。
ようやくプルトップが引き剥がされたのだ。数分間の死闘の末、ようやく中身とのご対面となる。
普段するように開いた飲み口に唇を近づけて、缶を斜めに持ち上げる。だが、いくら傾けても中身は一滴も落ちてこない。
「って、缶を握るとか書いてあったな」
だが、スチール缶は想像以上に硬く、握っても握っても中身が出てくる気配がない。
何度か挑戦するが、数分後には缶は床に放置され、隣ではまたも北川が崩れ落ちていた。
「残るはアレか……」
支給品の中で眠るアレを取り出し、北川は真剣に悩んでいた。
「食料なんだよな。ラーメンだし……うん」
だが、百貨店で襲ってきた少女にぶちまけたのは、まさしくちぢれた黒いアレ。
その強烈なイメージが、食べる事を拒否していた。
「最悪の事態に陥ったら……そこまで来たら……食べ……」
宣言してしまえば楽になる。だが、その代償は色々と大きい。
結局、ゲルルンジュースを3本拝借して、しばらくは水だけで過ごす事を決意した。
◇ ◇ ◇ ◇
次に北川が注目したのは、部屋に置かれたデスクトップだった。
詳しいわけではないが、簡単な操作くらいは可能である。北川は電源を付けてみた。
しばらくすると、見た事の無いOSが起動する。
某ゲ○ツのOSとリンゴのOSしか知らない北川には、違いが良く分からなかった。
チェックが済んで、デスクトップらしきものがモニターに映し出される。
そこには、一つのフォルダとどこかで見たことがあるアイコンしか存在していない。
「あれ、メニューバーとかスタートボタンとか無いのか?」
ネットも繋がっている様子が無い。配線を見ても、モニターと本体しかコンセントに刺さっていない。
「とりあえず、フォルダの方を」
クリックして中身を見ると、プログラムらしきアイコンが画面一杯に敷き詰められた。
一般人程度の知識しかない北川には、この中身が何なのかは判別できない。
そのフォルダを下手にいじる事はせず、デスクトップまで戻る。
「もう一つは……どっかで見たことあるんだよな?」
アイコン自体は、デフォルメされた女の子の顔だ。そこでピンときた。
「あ、そうだ! ちょっと前に発売されてすぐ回収騒ぎになったギャルゲーだ!」
クラスの誰かが、ネットで高額取引されているのを手に入れたと自慢していた。
だが、なぜそのゲームがこのパソコンに入っているか分からない。
定時放送まで少し時間があるので、試しにゲームを起動してみる。
「ありゃ?」
≪警告:ゲームディスクを挿入してください≫
ゲームは起動せず、そのメッセージだけが画面に表記された。
「ゲームディスクって言われてもなぁ」
部屋を見渡すが、それらしきCDは見当たらない。
もしやと思ってゴミ箱の中ものぞいたが、中は綺麗に掃除されていた。
「ま、ゲームやりたい訳でもないし別にいいか」
床に大の字になって倒れる。隣では、風子が体を丸くして寝息を立てていた。
(あ~。こう見ると普通に可愛いんだがなぁ)
だがその中身は、とことんマイペースで勘違いしまくりで、挙句の果てには食料を食い尽くすひどい奴だ。
そんな風子が寝返りをうって背中を見せた瞬間、北川は思わず生唾を飲んでしまう。
視線の先は、布団から飛び出した黒タイツとスカートに守られた小さな尻だった。
「うひょ!」
風子が呼吸をするたびスカートが擦れ、中身を見せるか見せないかのギリギリのラインを保つ。
黒いタイツが細い足を色っぽくさせ、扇情的なふとももは誘惑するかのように妖しく見える。
自然と、北川の両手がその秘境の先に伸びていた。
(は! いかんいかん!)
慌てて手を引っ込める。そして、反応した下半身を誤魔化すために、両手で股間を抑えながら腹筋を始めた。
(煩悩退散! 煩悩退散! これは超常現象だ! まやかしだ!)
頭の中から風子の顔や脚、タイツやスカートを必死で追い出す。
だが、視線は未だに風子の尻をロックオンしたまま外れない。
(っぐわ! ……くそ! ……また暴れだしやがった……)
股間を押さえつつ、腹筋の速度を上げる。だが、本能は全く収まる気配をみせない。
そんな北川に気付かず、風子は依然布団の中で寝息を立てていた。
そんな時、北川の脳が逆転の発想を閃く。
(逆に考えるんだ、スケベで最低と思われてもいいやと考えるん――いやいやいや! もっと駄目だろ)
あまり使えない閃きだった。
(ちくしょう……ちくしょぉぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぅぃ!!)
人生始まって以来、今日ほど体が崩れ落ちた日はそうは無いなと、心の何処かでそう思った。
――定時放送まであと数分。北川は我慢できるだろうか……それはまた、別の話。
【B-2 役場の二階の仮眠室/1日目 時間 早朝】
【北川潤@Kanon】
【所持品:支給品一式、チンゲラーメン(約3日分)、ゲルルンジュース(スチール缶入り750ml×3本)】
【状態:至って健康。悶々としている】
【思考・行動】
1:定時放送まで仮眠室で待機。そのあとで役場内を探索
2:知り合い(相沢祐一、水瀬名雪)の捜索。
3:あの娘を見てしまった以上、殺し合いに乗る気にはなれない……
4:鎮まれ俺の煩悩!
【備考】チンゲラーメンの具がアレかどうかは不明
チンゲラーメンを1個消費しました。
【伊吹風子@CLANNAD】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:睡眠中】
【思考・行動】
1:zzz
2:北川さん……お腹すいてます?
【備考】今のところ状況をあまり把握してません。
【備考】
※新市街での深夜から黎明に行われた戦闘は知りません。
※包丁の女の子(レナ)がまだ百貨店にいると思っています。
※役場の仮眠室の冷蔵庫には、ゲルルンジュース750mlが残り6本入っています。
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