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命を懸けて(後編) - (2007/12/20 (木) 03:36:19) の1つ前との変更点
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**命を懸けて(後編) ◆4JreXf579k
前原圭一の強さの秘訣が強く信じる心にあったのなら、その者の強さの秘訣は諦めないことにあったであろう。
どんな最悪の状況でも決して投げ出さず、最後まで可能性を信じる不屈の心。
倉成武はそういう強さをもっていた。
だからこそ崩壊の危機に揺れるLeMUでも心を閉ざしていた小町つぐみの信頼を勝ち取り、最善の未来を選び取れたのだ。
そしてこの島でもその不屈の心は健在している。
気絶から回復した武は痛む頭を抑えつつ現状の把握に努め、智代の危機を見るや否や矢のように飛び出し無造作にデイパックの中に手を突っ込んだ。
特になにか目当てのものがあったわけではない。 だが、それが結果的に功を奏した。
武の手にあったのは首輪。 そこにはNo.16と印されている。 つまりこれは厳島貴子の首輪なのだ。
「貴子! 力を貸してくれ!」
最後まで力を貸してくれる仲間に感謝して武はその首輪をアヴ・カムゥ目掛けて投げる。
「いっけぇ!」
投げられた首輪が放物線を描き、アヴ・カムゥの元へ到達すると同時にベネリM3を発射。
銃の達人でもない限り投げられた首輪に銃弾を当てることなど不可能。
だがそれは拳銃を用いた場合の話であって、散弾銃であるベネリM3なら命中率は飛躍的に上昇する。
銃弾は上手く首輪に命中し、大きな衝撃を受けた首輪はカウントダウンを始めることもなくアヴ・カムゥの脇腹の付近で爆発した。
「うぐぅぅぅ!」
あゆのアヴ・カムゥが大きくよろめき、智代へのとどめの一撃も大きく逸れる。
「もう一発だ!」
智代も武の無事を確認すると、残った力を振り絞って九十七式をデイパックから取り出し、武の一撃に続いた。
狙いはまたしてもアヴ・カムゥの脇腹。
二度も同じ場所に大きな衝撃を受けたアヴ・カムゥが地響きを伴って今度こそ倒れた。
「遅くなって済まない」
「ああ、死ぬかと思った」
駆けつけた武に大きく息をついて智代が応えた。
死にそうなところを助けてもらうのはこれでお互い様だと二人で笑いあう。
しかし、戦いがまだこれで終わったわけではない。
アヴ・カムゥは倒れただけでまだ襲い掛かってくる。
あの程度の衝撃でアヴ・カムゥが止まりはしないということは武と智代がよく知っていた。
だからこそ、再会の挨拶もそこそこに二人は臨戦態勢に入ったのだ。
だが、起き上がってきたアヴ・カムゥの動きはどこかぎこちない。
ガラクタの人形のようなノロマな動きを披露するだけで、先ほどまでの脅威がまるで感じられないのだ。
「うぐぅ!? どうしてアヴ・カムゥの弱点が脇腹だって知ってるの!?」
「「弱点?」」
「あっ、しまった!?」
契約をして、幾多の人間を殺した人間とは思えないほど迂闊な一言を滑らせたあゆに武と智代が鸚鵡返しに聞く。
あゆのその答えもまた自らの一言が真実であることを語っていた。
「本当なのかよ……」
「いや待て、こいつにはさっき騙されたからな。 慎重にこいつでやる」
呆れる武に対して智代は慎重論を取って、弾の補充を終えた九十七式を構える。
あゆは回避しようと永遠神剣に力を送り込むがアヴ・カムゥの動きは拙い。
あゆの全力をもってしても永遠神剣を使わない時の半分程度の速度しかだせないのだ。
もはやアヴ・カムゥは頑丈さだけが取り柄の重たい人形であった。
智代が発射体勢に入り、いよいよ撃つ段階になってアヴ・カムゥに起きた変化以上に衝撃的な出来事が島全体を覆った。
「「「!?」」」
祭具殿から光の柱が天に向かって伸びているのだ。
桜の花びらが落ちてきたとき以上に不可解な現象だが、これは蟹沢きぬがなにかしらをやってくれたこれ以上ない証拠。
それにともなってこの島で異能を扱う者の能力が全て解放された。
もちろん武も例外でなく、これまで幾度も苦しめてきた疑心が完全に消え去り、体が軽くなってきた。
今まで正常ながらも、どこかフィルターがかかったかのようにハッキリとしなかった思考回路が正常に動き出す。
キュレイウイルスが再び活発に活動を始め、H173を完全に押さえ込んでいる証だ。
雛見沢症候群の影に怯える必要もないことに武は心から喜ぶ。
もう、圭一を殺したときのような間違いを犯すこともないのだ。
「蟹沢がやってくれたんだな」
「……だろうな」
智代も何が起こったのか察したようだが、その表情はどこか固い。
各自にかけられた異能を封ずる鎖が解けたのはいいが、それはきぬの命が消えたことも示すのだ。
分かっていた結果とはいえ、悲しくなってくる。
だが、智代がそれ以上に気にしているのが空の様子だ。
制限が解かれたのに未だに空を隙間なく埋め尽くす雲がどこか不気味に感じられる。
空の様子と制限の間には何の関係もないだろうが、まだなにも終わってないのだと雲が語りかけてくるようだった。
祭具殿から伸びる光を誰よりも注目していたのがあゆだ。
鷹野から与えられた任務は失敗した。
自分たちを不幸のどん底に叩き落した張本人に尻尾を振ってまで生きようとしたのに、その努力が全て無駄になってしまったのだ。
そしてこの任務の失敗の代償は月宮あゆの命。 今からディーが直々に殺しに来る。
(やだ、死にたくない。 ボクは死にたくない。 死ぬのはイヤだ。 ボクまだ死にたくない)
失敗しても元の奪われるだけの人生に戻るのならまだいい。
しかし今回は命そのものが代償であり、次の機会を待つようなことも不可能。
なんとか死から逃げる方法はないか、藁にもすがる思いでその方法を模索してあゆはその方法を見つけた。
目の前にいる二人を殺して自分がまだまだディーにとって価値のある生命体であることを見せ付ければなんとかなるかもしれない。
他の人間から見ればそうしても助かる見込みはないだろう。
あゆ自身もそうやって助かる見込みなどほとんどないと考えている。
だが、あゆの生への異常な渇望は僅かでも可能性があるのならその全てを賭けでも目的を遂行しようとする。
そう考えて自分を保たないと今のあゆは簡単に壊れてしまいそうだから。
「殺す。 今すぐ、速やかに!」
光の柱を眺めている武たち気づかれないようにあゆが『献身』を握り、精神を集中させる。
制限が解かれたのはなにも武やアセリアだけではない。
月宮あゆもその範疇に入るのだ。
残された力と制限が解放されて使えるようになった力の全てをかき集めて最大の神剣魔法を行使する。
「武、気をつけろ。 何かしようとしている」
「……まずい、逃げろ! 遠くまで!」
ようやく気づいた武たちが逃亡しようとするがもう遅い。
ピリピリとあゆのアヴ・カムゥを中心に物凄い力の渦が出来上がる。
残った力の全てを注いで、大地のスピリットが使う最大の神剣魔法を発動させたのだ。
あゆが唱えた魔法、それは全てを貫く緑の衝撃!
「エレメンタルブラスト!!!」
その言葉を唱えると同時に武たちが逃げ出した方角に上空からバレーボールほどの大きさの緑色の球体が降りてくる。
そしてある程度の高さを保つと緑色の球体が破裂。
瞬間、球体に凝縮されていた空気の塊が衝撃波と真空波となって暴れ出し、森の中を駆け巡り、一つ残らず木を薙ぎ倒す。
時間にして数秒。 あゆの残った力でエレメンタルブラストが効力を発揮させたのはそれほどまでに短い時間だ。
だが、わずか数秒しか発動してない魔法がエリア一面の木を残らず薙ぎ倒していた。
風はただ安らぎをもたらすだけのもののではない。
時として荒れ狂い、自然も人間もすべて薙ぎ払うのだ。
あゆがその狙いの中心に据えたのは木ではなく、あくまでも倉成武と坂上智代。
視線をこらしてみると静寂の中、動く生き物が二つあるのを確認する。
まだ、生きているしぶとさに驚嘆しながらもアヴ・カムゥの体を動かした。
大剣が動かしづらくなり、いよいよこのアヴ・カムゥも本格的な機能不全に落ちたことを知る。
が、攻撃力は失われてもその鉄壁の防御力は健在。
永遠神剣に回せる力はもうエレメンタルブラストで使い果たした。
アヴ・カムゥは当初のとおりにあゆが永遠神剣の補助もないまま動かしている。
万全を期してゆっくりと歩を進めていった。
◇ ◇ ◇ ◇
「おい、起きろ。 武、起きるんだ。 早く起きないとあいつが……」
血だらけの格好になりながらも智代はまだ生きていた。
エレメンタルブラストで生じた衝撃波と真空波が彼女の体を幾重にも切り裂いている。
周辺の残さず切り倒された植物の被害を見る限り、智代もよく生きていられたものだと己の幸運に感謝していた。
這いつくばって武のいるところへ進み、武の脈を取る。
脈拍は正常とはいえないが、動いてるのは確かだ。
怪我の度合いも智代とそう変わらないが気絶している。
背負って運ぶのは不可能。 智代も這って動くことしか出来ないほどの怪我をしているのだ。
武には自分で起き上がってもらって、自分で逃げ出してもらうしかない。
しかし、智代が武を起こすよりも速く、あゆのアヴ・カムゥがそこにいた。
「これでボクは助かる。 二人を殺せば助かるんだ」
もはやあゆの中で確定事項と化した目的を果たすためにアヴ・カムゥを動かす。
アヴ・カムゥが自由に動かせる部分、つまり足を使って智代と武を踏み潰すのだ。
まずは気絶している武を標的に定めた。
象をも上回るアヴ・カムゥの巨体は人一人踏み潰すのになんら不自由のない重さがある。
だがそれを阻止するかのように武とアヴ・カムゥの間に智代が体を割り込ませた。
武の体を覆うように四つんばいになって、アヴ・カムゥの足から武を守ろうというのだ。
もうそれしか智代にできることはない。 九十七式の反動に耐えれる自信もなく、他の方法も思いつかない。
わが子を守る母のように智代は自分ができる唯一の方法で武を守る。
「早く、早く潰れろ!」
グイグイと体重をかけるアヴ・カムゥに対し、智代は最期の力を振り絞って四肢を踏ん張る。
このままでは二人とも死ぬのを待つだけ、ならば一人だけでも生きていた方がいい。
その一人とはもちろん智代を助けてくれた倉成武でなければならない。
かつて受けた恩を命がかかっている今こそ返さねばならないのだ。
「起きろ、武。 お前はこんなところで死ぬ男じゃないだろう? お前は強い男だ。
こんなところでお前は死んではいけないんだ」
あゆから守りつつも武を起こす作業は続ける。
背中にかかる負担も強くなり膝や腕が地面にめり込んでいく。
あゆに負けまいと踏ん張れば踏ん張るほど、傷口から血が噴水のごとく吹き出て力が抜けるという悪循環。
智代の体を赤く染めている部分が半分を越えた。
「私は嬉しかったんだ。 私を叱ってくれたことが。 いけないことはいけないって教えてくれたことが。
お前にはいくら感謝しても足りないんだ。 それはもう七日七晩かけても語りきれないくらいにだ。
こういう言い方は失礼かも知れないが、お前のことは父親のようだとさえ思えたよ。
駄々をこねる私に根気よく付き合ってくれて、その上で私を元の道に戻してくれたんだからな。
だから今度は私がお前を救う番だ。 お前は命を懸けて私を救ってくれた。 だから今度は私がお前を命に換えても守る」
智代の命の炎がいよいよ小さくなる。
あゆもアヴ・カムゥが思ったより自由に動かせないことにヤキモキする。
このままでは埒が明かないと判断したあゆは直接『献身』で殺そうとアヴ・カムゥから降りようとする。
しかし、智代の命を懸けた呼びかけの方が早かった。
「武! 私の命をお前に託す! 私の命とともに戦うんだ!」
命を託す、それはつまり自分は死ぬという意思表示。
智代の一言で武は完全に覚醒し、アヴ・カムゥの足の下から逃れる。
その数秒後、地響きとともに智代の体がアヴ・カムゥに飲み込まれていく。
智代のいるであろう空間を見て静かに黙祷を捧げた。
「よく気絶するもんだ、俺は。 自分でもウンザリする」
エレメンタルブラストで大きく武の衣服と胸が切り裂かれているが、制限の解かれたキュレイなら数日で治るレベルだ。
あゆが狼狽し、再びアヴ・カムゥの中に篭城を決め込む。
その様子を見ていた武が絶対の意志をもって対峙する敵に向かって告げる。
「こじ開けてやる。 その体にでかい風穴をな!」
あゆが完全に武の殺意に気圧されて、一歩どころか二歩三歩と下がった。
そのとき、地上に露になった智代の赤く染まった体から蛍のような小さな光が出て、武の構える『時詠』に吸い込まれていく。
そして『時詠』の刀身が夜闇を切り裂くほどの光量で光を放ち始めた。
あゆにもそれが意味するものは何なのかいやでも想像がつく。
「ううう、うわああぁぁぁぁ!」
逃げても待っているのは死。 だからあゆは武に襲い掛かるしか手段がない。
追い詰められた鼠のごとくあゆが決死の抵抗を見せる。
残った足とほとんど動かない腕も強引に総動員して武に何度も襲い掛かる。
だが、その抵抗は猫を噛むことはできない。
「分かるか? あいつの命の光が! 見えるか? あいつの魂の輝きが!」
武が不規則に繰り出されるアヴ・カムゥの鉄の腕や足を避けながらタイミングを計る。
勝負は一発限り。 身体能力の強化はできない。
武にマナや魔力をコントロールする能力はないし、それでなくとも雀の涙ほどしかないこの光の力を無駄な行為に回す余地はない。
最善の状況で最高の一撃を叩き込むその技を繰り出すためには慎重な判断力が必要。
「そんなものでボクが!」
あゆの一撃は通常時の半分以下の速度だが、威力に関しては未だに必殺の域にある。
武も重傷を負い動きが鈍くなってるから条件はほぼ互角。
無理やり繰り出されたアヴ・カムゥの大剣の攻撃に対して、武は攻撃を一切行わず回避行動だけに専念する。
『時詠』の一撃を当てる絶好の機会を待っているのだ。
“その一撃は未来を見通す『時見』の力が必要不可欠”
それを悟ったあゆもしばらく攻撃されないと見て、防御を考えずに乱舞のように腕や足を使って武を追い詰める。
押して押して押して押しまくれば必ずあゆにも勝機はあるはず。
津波のように広い範囲を薙ぎ払うアヴ・カムゥの攻撃をよけるのは至難の技。
“それだけでなく膨大な量のマナが必要だ”
『時詠』が持っている力の量がほとんど無いことを知るとあゆにも自ずと冷静さも戻ってくる。
倉成武は永遠神剣の使い方の初歩である身体能力の強化も使ってないのだ。
それは身体能力の強化もできないほどあの光の力は弱いということ。
“よってこの一撃は技とも呼べないような失敗した技”
「もらった!」
油断したアヴ・カムゥの大振りの一撃が空を切る。
初めてできた絶好の隙を前にして武が突っ込まない手はない。
あゆが執念を振り絞って残った手足で武を迎撃する。
左腕は軌道を見切り回避して、右足は武の体に当たる前に前に出て懐に飛び込む。
アヴ・カムゥの返す刀の一撃も回避して武が再びアヴ・カムゥの腕に乗って駆け上がる。
“その威力は本家の一万分の一以下のものだ”
あゆと武の距離がこれ以上ないくらい近づいた。
そこであゆの顔に突如一筋の光が当たる。
それは『時詠』の放つ光ではなく、雲の間から漏れた夕日の光。
曇った空がやっと明けて茜色の空がその顔を覗かせたのだ。
人はこの時間をこう呼ぶ。
「聞けよ、あゆ。 黄昏がお前を呼んでいる」
「ひッ! う、うぐぅ! ああああ!」
『時詠』の刀身を装飾する輝けるかの光こそは、永遠神剣を扱う者だけが放つことの可能なオーラフォトンの瞬き。
一人では無理なことも二人でならできるという幾千の可能性を秘めた希望。
『時詠』が命高鳴る神韻の旋律を響かせて、漆黒の刃が金でも銀でもない光を発する。
武は『時詠』にこめられた力を解放して、二人分の命の重さを含んだ一撃をアヴ・カムゥの頭部に向かって放つ。
あゆが目の前の脅威を排除しようと体を揺さぶるが遅い。
「奇跡って言葉の意味を教えてやるよ。 クリティカルワン!」
“だが――アヴ・カムゥの装甲を打ち破るのにはそれで十分”
それは高嶺悠人が得意とするヘビーアタックの一撃に似ていた。
オーラフォトンを纏った剣を叩きつけるだけの基本的な攻撃。
紛い物のクリティカルワンの一撃はアヴ・カムゥの頭部から腹部までの装甲全てを完膚なきまでに引き裂く。
引き裂かれた装甲の薄暗い空間にいるのはまぎれもなく月宮あゆその人。
ついに無敵の城塞を破られ、剥き出しの姿を見せ付けることになったのだ。
武の宣言どおりその装甲に風穴が通された。
ここでアヴ・カムゥはその機能を完全に停止して地面に仰向きに倒れる。
武が中に入っているあゆを引きずり出そうと壊れたアヴ・カムゥに近寄る。
と、そこで亀裂の入った箇所からあゆが羽化した蝶のように飛び出してきた。
武が身構えるが、あゆは武と相対することもなく一目散に逃げ出そうとする。
永遠神剣の魔力も使い切ったあゆの残された武器は国崎から奪ったコルトM1917のみ。
ショットガンを扱う男を相手するには無謀というに過ぎる。
「待ちやがれ!」
武が智代を殺した犯人を逃すはずもなく、追いかける。
身体能力も歴然、あゆはグングンと追い詰められる。
(どうしよう、殺される。 死んじゃう。 いやだ。 怖い)
あゆがその逃れられない死から逃れるために一つの行動を取る。
それは人質を取るということ。
いや、それはそもそも人質という言葉が当てはまるかどうかも怪しい。
あゆが人質に取ったのは生きてる人間ではなく、死んだ坂上智代の死体なのだから。
智代の額にコルトを突きつけて武に勘違いした警告を始めた。
「こ、来ないで! 来るとこの人を傷つけるよ!」
「はぁ?」
「この人の脳みその色を確かめたくなかったらボクを見逃して! それだけでいいの!」
「何言ってるんだ、お前? そいつは死んでるぞ」
「武器をよこせなんて言わないから、ね、いいでしょ? ボクを見逃してよ!」
もはや前後の不覚すらもつかず、ただ生きるためだけにあゆがとった方法は余りにも哀れだった。
例えこの場を切り抜けてもディーが殺しに来るというのに、あゆが考えているのはとりあえずこの場から逃げ出す方法のみ。
武も哀れを通り越した不快な感情が沸き起こっていた。
「やれよ」
「へ?」
「やれって言ったんだ。 智代ならそう言う」
「勝手に死んだ人の気持ちを語らないでよ。 いい加減なことを言うと本当に撃つよ?」
「撃てよ。 撃った瞬間俺がお前を撃つ」
武が一歩進む。
あゆが後ずさる。
「撃つよ。 本当に撃つよ?」
「やれ!」
武があゆに向かって走り出した。
あゆが口からヒィと息を漏らして訳も分からず智代を撃とうとする。
だが、ここで驚くべき第三の人物が声を出した。
「撃たれるのは……困る」
その声がした方向を向こうとしたが、あゆは銃を持った手首に違和感を感じる。
見てみると、あゆの手首は切り裂かれ動脈から大量の血を流していた。
慌てふためいて止血しようとするあゆを尻目にもう一度第三の人物が声を出す。
「私は……まだ、生きてる……からな」
第三の人物、智代が持っていたサバイバルナイフであゆの手首を切り裂いたのだ。
それを見た人間の反応は二通り。
月宮あゆは『献身』を取り出し無駄な行為を始め、倉成武は『時詠』を構えて走り出した。
「ア、アースプライヤー!」 あゆの言葉に『献身』は何の反応も示さない。
「ハ、ハーベスト!」 何度やっても無駄。 魔力を使い果たした人間に奇跡は起こらない。
「おおおおおぉぉぉぉ!」 武があゆに向かって切りかかる。
その光景を前にして信念も理念もなくただ生きたいがためだけに殺し合いに乗ったあゆが次に選んだ方法は命乞いだった。
「ごめんなさい、もうしません、人殺しはもうやめます! 心を入れ替えますから許してください!」
(立派? ……立派じゃなくていいじゃねぇか。 情けなくって何が悪い!
情けなく逃げ回ったって、土下座して命乞いしたって、靴の裏舐めたって寿命が延びるんならそれでいいじゃねぇか。
立派に死ぬよりも、情けなく生き続けることの方が遥かに偉いんだよ。 死んだら……死んだらもう、瑞穂にもみんなにも会えないんだから……)
その瞬間、武の頭にかつて自分が言った言葉が過ぎる。
月宮あゆをここで殺すのは正解なのか。
その場凌ぎの嘘を言っているかもしれないし、本当に改心しようとしているかもしれない。
命乞いする人間を殺すのは外道のやることではないのか、この者に改心のチャンスも与えず殺すのは許されるのか。
かつて外道の道から改心することを許された武だからこそ、その要求をはねつけることは出来なかった。
振り上げた剣を下ろし、その言葉に嘘偽りがない本心からの言葉であるか聞く。
「もう人を殺さないと誓えるか?」
「誓う! 誓います!」
あゆが土下座をしながら一心不乱に謝罪を繰り返す。
「智代にはどう言い訳するつもりだ?」
「一生かけて償います! だから許してください!」
「……許して、やれ……」
ここで智代が出来る限りの声を出して許すことを許可する旨を出した。
殺されそうになっている智代が許すといっている以上、武ももう何もいえない。
「……分かった。 死ぬ気で償え」
その言葉とともに剣をしまって背中を向けた武にあゆが目を光らせた。
無防備な背中に『献身』を突き出して武の心臓を串刺しにしようと襲い掛かる。
だが、始めからその可能性を読んでいた武は背中を見せた状態からあっさりと避けてみせ、『時詠』を取り出した。
その顔には失望の表情が浮かんでいる。
「どうしてお前はそういうことしかできないんだ?」
「ひぐうっ!」
「お前は差し伸べられた手を簡単に翻した。 その代償は覚悟できてんだろうな?」
「ゴメンなさい、ゴメンなさい、ゴメンなさい! 嫌だっ、死にたくない、助けてええぇぇぇ!」
だが、遅すぎた。 なにもかも。
謝罪を始めるのも、自分の間違いに気付くのも。
月宮あゆはその手を人の血に塗れさせすぎていた。
「悪いが、もう俺でもその命乞いは聞いてやれない」
なおも命乞いを続けるあゆを袈裟斬りで一刀の元に切り伏せ殺害。
倉成武はこの島に来て三度目の殺人を犯した。
一度目も二度目もH173のせいにしようとすればできる。
だが、今回ばかりはどうあがいても言い訳できない純粋たる武の罪だ。
言い訳もできないほどに、純粋な自分の意思で、だ。
かくしてこの島で最も数奇な運命をたどった人物がこの世を去ることになる。
◇ ◇ ◇ ◇
「済まなかった。 お前が生きてると知らずに撃てなんて言ってしまった」
「いいさ……私も、生きてる、のが…不思議なくらいだし、私も、そうしろと言うさ」
智代を柔らかい草の上に寝かせた武は智代の応急処置を始めようとした。
が、同時に数時間前の戦いでほぼ全て使い切っていたことを思い出す。
何もできない己の無力を悔やむ武に智代はどうせ助からないからと笑った。
「なぁ」
「何だ?」
「私は……満足だよ。 生きて帰ることはできなかった。 やり、残した……ことも、悔いも、ある。
けど、私は欲張り……だからな、やりたい…こと、や、悔い、が、なくなる日、なんて一生……こない。
だから、ここで死ぬ…のは、守りたいもの……守れて死ぬ、の…は…本望だよ」
「勝手に満足するんじゃねぇ! 鷹野を、俺たちをこんなところに放り込んだやつをぶっ潰すんじゃないのか!?」
「お前が……やって、くれる…だろ?」
美しい銀髪ももはやそのほとんどが赤く染まっている。
武の血に塗れた手を同じく血に塗れた手で掴み、高く掲げた。
「私の……希望は、ここに、ある。 見て…いるか……鷹野。 お前を……倒す存在が……ここに、いる」
呼吸を荒くして最後の宣戦布告を行った。
そのまま智代はしばらく目を閉じて深呼吸して、あるがままの世界に身を委ねる。
風が気持ちい、空気がおいしい、空の色が美しい。
こんな島でさえ、こんな鉄と血に塗れた島でも世界はこんなにも綺麗に移るのだ。
死ぬ間際にそんなことに気が付くとは余程余裕のない生活を送ってきたのだろうか。
かもしれない、と智代は口元を小さく歪ませて笑う。
街の不良を相手に荒れていた時期もそうだ。
この島でも心安らぐ時間よりも復讐心に身を焦がしている時間の方が多かった気がする。
ああ、なんて、もったいない。
そよそよと耳に入ってくる風の音を聞きつつ、時間がいよいよ少なくなってきたことを悟る。
智代はずっと考えていたことを武に頼むことにした。
「なぁ?」
「何だ?」
「頼みごとが……あるんだ」
「何だ?」
「私を殺してくれないか?」
「な!?」
聞き間違いがないようにハッキリと一息で言い切ったが、やはり武は信じられないという顔をしている。
自らの死期を早める行為を頼むのは武には信じがたい望みであった。
当然、聞き入れるわけもなく武はその行為の真意を尋ねることになる。
「できる訳ないだろ! なんでそんなこと言う!」
「殺され、たく……ないか…らな、あんな奴に」
「だからってそんなこと言うな!」
「お前だから……言った、んだよ。 私、を…助けてくれた……お前…だから、私の命…を、もらって……欲しいんだ。
どこの、馬の骨…ともしれない……ような…やつ、に…私の命をやるつもり…はない」
息も切れ切れに智代は咽ながらその理由を答えた。
武にもその理由なら分からないでもない。
このまま快く思わない相手に致命傷を与えられ苦しんで苦しんで死ぬより、大切な人間の手で一瞬のうちに逝く方が幸せなのか。
どちらにせよ決まっているのは、このままでは間違いなく智代は死んでいくのだ。
ならばいっそと情けをかけて苦しみから解放して上げるのもまた一つの幸せではないだろうか。
武は気付かないうちにエアーウェイトを構えていた。
「これで……いいのか?」
「ああ、それで……引き金を……引けば、いい」
捧げられた真っ暗な銃口を前にして、智代は満足そうに呟いた。
武が銃を撃った経験は初めてではないが、今ほど引き金を重く感じたのは初めてだ。
この先は互いに殺意をぶつける『殺し合い』ではなく100%の結果が待っている『殺し』。
引き金を引く人差し指どころか腕全体が震えている。
「……いくぞ」
「いいぞ」
片手で撃てないのなら両腕で撃てばいいだけのこと。
左手で震える右手を強引に押さえて智代の心臓に狙いをつけて、発射した。
森の中に響く轟音。
エアーウェイトの薬室から薬莢が排出され地面に落ちる。
銃弾は、智代に当たっていなかった。
「できる訳ねぇだろ!」
武が叫ぶ。
「人を何人殺したって、仲間を撃てる訳ないだろうが!」
徹頭徹尾の偽善者、つぐみにLeMUでそう言われた時から何一つ変わっていなかった。
仲間だろうと敵だろうと殺害という行為に全く変わりはない。
そこで得られる過程も結果も全て等しきものなのだ。
敵を慈悲もなく殺しておきながら、何故慈悲の元に仲間を殺せない?
悔やむ武をまたもや智代が慰めた。
「そう、言うと思った。 お前、優しい、からな」
「優しかったら人なんて殺さない!」
「違う、さ……誰も、やりたく…ない…ことは、誰かが……やらない、と、いけない。
お前、は…それをやってるだけ……だ」
「だったらお前のこともちゃんと殺してる」
「これ、は…私の……我侭。 聞く…必要は、ない」
その言葉が終わると、智代は一際大きく咽て血の塊を吐き出す。
武にトドメを刺してもらうよう頼んだのも自分の死期が近いことを悟ったからこそ。
頭を動かすのも難しくなってきた。
残り少ない時間を前に最期にやるべきことを考えて智代は口を動かした。
「これは罰、なんだ、ろうな。 たくさんの……人に、迷惑かけた。 その、痛みを、甘んじて…受け入れろ、ということか」
「お前はもう十分償っただろ! 許されてるに決まってる」
武が智代を抱きしめる。
その消え逝く命を離さないように、智代の命そのものを掴むように強く抱きしめた。
どんどんと冷たくなっていく智代の体がその人生の終焉を終えようとしている。
何故か満たされた顔で智代が天を仰ぎ、最期の言葉を呟いた。
「まだ……許されて、ない。 地獄で、罪をつぐなってくるよ。 私の、最後の願い…だ。 聞いてくれ。
私を…埋める…必要、ない。 地獄は……暗い、だろう…から。 それに…そうする、時間も……ないはず、だ。 頼まれて……くれるか?」
「……ああ」
「このまま……空…見ながら……優しさに、包まれ、て………………」
その一言を最後に、坂上智代は粉雪のような淡く凄烈で儚い人生の幕を閉じた。
これから先に智代が行くのは天国か地獄か、それともそれ以外の別の場所か、それを知っているのは坂上智代本人のみである」。
◇ ◇ ◇ ◇
「クソオオオオオオォォォォォォォ!」
地面に拳を叩きつけ武が慟哭する。
ここでも守るべき対象を守れなかった。
厳島貴子、千影、坂上智代。 武が守ると決めた人間が尽く武の目の前で死んでいく。
全力を尽くしてあらゆる障害から守り抜くと決めた少女たちは結局誰一人として帰らぬ人となった。
「まただ。 俺は誰一人守れない!」
それは倉成武のせいではない。
彼はいつでも全力で戦ってベストを尽くしてきた。
ただ、結果がついてこないだけ。
だが、そう言われても武は納得できないだろう。
どうしようもできないのだ。
彼がベストを尽くしている以上改善すべき点はもはや何一つないのだから。
酷な言い方をすれば対峙した相手が悪かっただけだ。
「俺は悔しい!」
天に向かって吠える。
その声の先には誰にもいない。
あくまで武の独り言だった。
「なぁ、俺はいつになったら他人を守れるようになるんだ?
いつになったら俺は圭一とつぐみに顔向けできるようになる?
俺は、俺は、堪らなくそれが悔しいんだ!」
涙を溢しながら大声を上げる。
その問いに答えてくれる存在を求めて。
「クソオオオオオオォォォォォォォ!」
「なるほど、永遠神剣とアヴ・カムゥを持った契約者ですら打ち破るか。 つくづく我が子らの強さには驚かされる」
突如聞こえてきた言葉に武が泣き止み、言葉を発した人物を見た。
その男の顔は参加者名簿には載っていなかった。
背中に天使の如き翼を持ち、ハクオロ着ていた衣服に似た衣装に身を包んだ人物。
だが、武はその人物を天使だとは思わなかった。
背中に生やした翼や格好はそう見えても、その男の顔だけはまるで石のように何一つ表情が浮かんでいないのだから。
そして、明らかにその存在は人間ではなく、万物の霊長たる人間より遥かに上の存在であることがその身に纏った雰囲気から分かる。
「誰だ?」
「……しかし、やはり惜しいことをした。 やはり鷹野の言うことは聞かずに我の元まで来てもらうべきだったか」
まるで武の存在など眼中にないかのようにあゆの死体を見て呟く男。
と、そこであゆの体に異変が起こった。
血まみれのあゆの体が光に包まれ、大気中に溶けていくかのように消えていったのだ。
この島で目にする何度目かの不可思議な現象の意味を、警戒しながら武が尋ねた。
「!? ……何をした?」
「何もしていない。 この者は精神が肉体を形作っていただけ。 精神が死ねばその肉も消えるのが必定」
「意味が分からないな。 よく分かりやすいように言ってくれ」
「汝に説明する必要はない」
その言葉とともに背中を見せてどこかへ行きそうな男に対して武が『時詠』を構える。
だが、できたのはそこまでで武はそこから踏み出すことができない。
今までであった誰とも違う雰囲気を持つ男に対して仕掛けるタイミングを測れないでいた。
「それでいい。 我も汝と争うつもりはない」
「もう一度聞く。 お前は何者だ」
「我はこの地に汝らを呼び寄せし者。 今の名はディー」
「……それはつまりお前が黒幕ってことか?」
「……そうなる」
至極当然のように男は言った。
自分が黒幕だと、此度の殺人遊戯の首謀者は自分だと。
その言葉を聞いてはもはや仕掛けるタイミングなど関係ない。
皆の命を奪った元凶がここにいるのだ。
怒りとともに猛牛の如く武がディーへと向かっていく。
「お前が、お前が、お前がああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
だが、ディーの体に『時詠』の刃が喰いこむかと思われた瞬間、『時詠』が見えざる壁に阻まれた。
武が驚愕するのと同時に今度はディーを中心に衝撃波が発生して武を吹き飛ばす。
抗うことも出来ずに吹っ飛ばされた武にディーが戦闘の意思がないことを告げる。
「『動くな』。 我は無駄な行為は望まぬ」
その言葉は立ち上がってなおも攻撃しようとする武の行動を完全に束縛する。
言葉一つで人間の体を完全に止めてしまうその能力はまさに人間離れだ。
金縛り状態に陥った武は己の体に起こった変化に驚愕するが、それ以上の殺意があふれ出てくる。
ここで命を落としてでもディーに一矢報いようと体を動かそうとするがそれは如何なる者をも束縛する鎖。
どうやっても解けはしなかった。
「汝が真に強き者ならここではない、もっとふさわしいところで相見えることもあるだろう」
そう言うとディーはいつの間にか武の視界から消えていた。
武の体を束縛していた言霊もその効果を失い、自由に身になる。
地に膝をついて、武は元凶を目の前にしながら何もできなかった自分を責めた。
「ふさわしいところだ? どこまで上から見下ろせば気が済む!」
自分のプライドとかそういったくだらない問題のためではない。
戦火の中で散って逝った仲間のためにもここで目の前の男を討ち取らなければならなかったのだ。
だが、結局は圧倒的な力の差をみせつけられただけ。
無様な姿を見せて負け犬の遠吠えをしただけだ。
未だ桜の花びらが舞い散る中で、武は死んでいった仲間に誓いを立てた。
必ず、みんなの仇を討ってやる、と。
&color(red){【月宮あゆ@Kanon 死亡】}
&color(red){【坂上智代@CLANNAD 死亡】}
[残り9人]
【D-4 神社付近/二日目 夕方】
【倉成武@Ever17 -the out of infinity-】
【装備:永遠神剣第三位"時詠"@永遠 のアセリア-この大地の果てで-、貴子のリボン(右手首に巻きつけてる)】
【所持品1:支給品一式x24、天使の人形@Kanon、バール、工具一式、暗号文が書いてあるメモ、バナナ(台湾産)(3房)】
【所持品2:C120入りのアンプル×5と注射器@ひぐらしのなく頃に、折れた柳也の刀@AIR(柄と刃の部分に別れてます)、キックボード(折り畳み式)、
大石のノート、情報を纏めた紙×9、ベネリM3(5/7)、12ゲージショットシェル50発、ゴルフクラブ】
【所持品3:S&W M37エアーウェイト弾数4/5、S&W M37エアーウェイトの予備弾85、コンバットナイフ、タロットカード@Sister Princess、出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭】
【所持品4:トカレフTT33の予備マガジン10 洋服・アクセサリー・染髪剤いずれも複数、食料品・飲み物多数】
【所持品5:謎ジャム(半分消費)@Kanon、『参加者の術、魔法一覧』、イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×7 9ミリパラベラム弾58発】
【所持品6:銃火器予備弾セット各100発(クロスボウの予備ボルト80、キャリバーの残弾は50)、 バナナ(フィリピン産)(5房)】
【所持品7:包丁、救急箱、エリーの人形@つよきす -Mighty Heart-、スクール水着@ひぐらしのなく頃に 祭、
顔写真付き名簿(圭一と美凪の写真は切り抜かれています)、永遠神剣第六位冥加の鞘@永遠のアセリア -この大地の果てで-】
【所持品8:IMI デザートイーグル 10/10+1、 IMI デザートイーグル の予備マガジン6、多機能ボイス レコーダー(ラジオ付き)】
【所持品9:サバイバルナイフ、トランシーバー×2、、十徳工具@うたわれるもの、スタンガン、 九十七式自動砲 弾数7/7
九十七式自動砲の予備弾85発、デザートイーグルの予備弾85発】
【所持品10:クロスボウ(ボルト残24/30)竜鳴館の血濡れのセーラー服@つよきす-Mighty Heart-、地図、時計、コンパス 釘撃ち機(10/20)】
【所持品11:食料品沢山(刺激物多し)懐中電灯、単二乾電池(×4本)、ジッポライター、富竹のカメラ&フィルム4本@ひぐらしのなく頃に】
【所持品12:可憐のロケット@Sister Princess、 朝倉音夢の制服 桜の花 びら コントロール室の鍵 ホテル内の見取り図ファイル】
【所持品13:永遠神剣第七位"献身"、コルトM1917の予備弾25、コルトM1917(残り2/6発)、トカレフTT33 0/8+1、ライター】
【状態:肉体的疲労大、脇腹と肩に銃傷、全身打撲、智代に蹴られたダメージ、胸部を中心に体が切り裂かれている、女性ものの服着用】
【思考・行動】
基本方針:仲間と力を合わせ、ゲームを終わらせる
1:電波塔へ援護に行く
2:合流後、廃坑南口に向かう
3:瑞穂たちを心配
4:自分で自分が許せるようになるまで、誰にも許されようとは思わない
5:ちゃんとした服がほしい
【備考】
※制限が解かれたことにより雛見沢症候群は完治しました。
※キュレイにより僅かながらですが傷の治療が行われています。
※永遠神剣第三位"時詠"は、黒く染まった『求め』の形状になっています。
※海の家のトロッコについて、知りました。
※ipodに隠されたメッセージについて、知りました。
※武が瑞穂達から聞いた情報は、トロッコとipodについてのみです。
※確認はしてませんが蟹沢きぬは死んだと思ってます
|203:[[命を懸けて(中編)]]|投下順に読む|204:[[それぞれの「誓い」(前編)]]|
|203:[[命を懸けて(中編)]]|時系列順に読む||
|203:[[命を懸けて(中編)]]|蟹沢きぬ||
|203:[[命を懸けて(中編)]]|倉成武||
|203:[[命を懸けて(中編)]]|&color(red){坂上智代}||
|203:[[命を懸けて(中編)]]|&color(red){月宮あゆ}||
|203:[[命を懸けて(中編)]]|鷹野三四||
|203:[[命を懸けて(中編)]]|ディー||
----
**命を懸けて(後編) ◆4JreXf579k
前原圭一の強さの秘訣が強く信じる心にあったのなら、その者の強さの秘訣は諦めないことにあったであろう。
どんな最悪の状況でも決して投げ出さず、最後まで可能性を信じる不屈の心。
倉成武はそういう強さをもっていた。
だからこそ崩壊の危機に揺れるLeMUでも心を閉ざしていた小町つぐみの信頼を勝ち取り、最善の未来を選び取れたのだ。
そしてこの島でもその不屈の心は健在している。
気絶から回復した武は痛む頭を抑えつつ現状の把握に努め、智代の危機を見るや否や矢のように飛び出し無造作にデイパックの中に手を突っ込んだ。
特になにか目当てのものがあったわけではない。 だが、それが結果的に功を奏した。
武の手にあったのは首輪。 そこにはNo.16と印されている。 つまりこれは厳島貴子の首輪なのだ。
「貴子! 力を貸してくれ!」
最後まで力を貸してくれる仲間に感謝して武はその首輪をアヴ・カムゥ目掛けて投げる。
「いっけぇ!」
投げられた首輪が放物線を描き、アヴ・カムゥの元へ到達すると同時にベネリM3を発射。
銃の達人でもない限り投げられた首輪に銃弾を当てることなど不可能。
だがそれは拳銃を用いた場合の話であって、散弾銃であるベネリM3なら命中率は飛躍的に上昇する。
銃弾は上手く首輪に命中し、大きな衝撃を受けた首輪はカウントダウンを始めることもなくアヴ・カムゥの脇腹の付近で爆発した。
「うぐぅぅぅ!」
あゆのアヴ・カムゥが大きくよろめき、智代へのとどめの一撃も大きく逸れる。
「もう一発だ!」
智代も武の無事を確認すると、残った力を振り絞って九十七式をデイパックから取り出し、武の一撃に続いた。
狙いはまたしてもアヴ・カムゥの脇腹。
二度も同じ場所に大きな衝撃を受けたアヴ・カムゥが地響きを伴って今度こそ倒れた。
「遅くなって済まない」
「ああ、死ぬかと思った」
駆けつけた武に大きく息をついて智代が応えた。
死にそうなところを助けてもらうのはこれでお互い様だと二人で笑いあう。
しかし、戦いがまだこれで終わったわけではない。
アヴ・カムゥは倒れただけでまだ襲い掛かってくる。
あの程度の衝撃でアヴ・カムゥが止まりはしないということは武と智代がよく知っていた。
だからこそ、再会の挨拶もそこそこに二人は臨戦態勢に入ったのだ。
だが、起き上がってきたアヴ・カムゥの動きはどこかぎこちない。
ガラクタの人形のようなノロマな動きを披露するだけで、先ほどまでの脅威がまるで感じられないのだ。
「うぐぅ!? どうしてアヴ・カムゥの弱点が脇腹だって知ってるの!?」
「「弱点?」」
「あっ、しまった!?」
契約をして、幾多の人間を殺した人間とは思えないほど迂闊な一言を滑らせたあゆに武と智代が鸚鵡返しに聞く。
あゆのその答えもまた自らの一言が真実であることを語っていた。
「本当なのかよ……」
「いや待て、こいつにはさっき騙されたからな。 慎重にこいつでやる」
呆れる武に対して智代は慎重論を取って、弾の補充を終えた九十七式を構える。
あゆは回避しようと永遠神剣に力を送り込むがアヴ・カムゥの動きは拙い。
あゆの全力をもってしても永遠神剣を使わない時の半分程度の速度しかだせないのだ。
もはやアヴ・カムゥは頑丈さだけが取り柄の重たい人形であった。
智代が発射体勢に入り、いよいよ撃つ段階になってアヴ・カムゥに起きた変化以上に衝撃的な出来事が島全体を覆った。
「「「!?」」」
祭具殿から光の柱が天に向かって伸びているのだ。
桜の花びらが落ちてきたとき以上に不可解な現象だが、これは蟹沢きぬがなにかしらをやってくれたこれ以上ない証拠。
それにともなってこの島で異能を扱う者の能力が全て解放された。
もちろん武も例外でなく、これまで幾度も苦しめてきた疑心が完全に消え去り、体が軽くなってきた。
今まで正常ながらも、どこかフィルターがかかったかのようにハッキリとしなかった思考回路が正常に動き出す。
キュレイウイルスが再び活発に活動を始め、H173を完全に押さえ込んでいる証だ。
雛見沢症候群の影に怯える必要もないことに武は心から喜ぶ。
もう、圭一を殺したときのような間違いを犯すこともないのだ。
「蟹沢がやってくれたんだな」
「……だろうな」
智代も何が起こったのか察したようだが、その表情はどこか固い。
各自にかけられた異能を封ずる鎖が解けたのはいいが、それはきぬの命が消えたことも示すのだ。
分かっていた結果とはいえ、悲しくなってくる。
だが、智代がそれ以上に気にしているのが空の様子だ。
制限が解かれたのに未だに空を隙間なく埋め尽くす雲がどこか不気味に感じられる。
空の様子と制限の間には何の関係もないだろうが、まだなにも終わってないのだと雲が語りかけてくるようだった。
祭具殿から伸びる光を誰よりも注目していたのがあゆだ。
鷹野から与えられた任務は失敗した。
自分たちを不幸のどん底に叩き落した張本人に尻尾を振ってまで生きようとしたのに、その努力が全て無駄になってしまったのだ。
そしてこの任務の失敗の代償は月宮あゆの命。 今からディーが直々に殺しに来る。
(やだ、死にたくない。 ボクは死にたくない。 死ぬのはイヤだ。 ボクまだ死にたくない)
失敗しても元の奪われるだけの人生に戻るのならまだいい。
しかし今回は命そのものが代償であり、次の機会を待つようなことも不可能。
なんとか死から逃げる方法はないか、藁にもすがる思いでその方法を模索してあゆはその方法を見つけた。
目の前にいる二人を殺して自分がまだまだディーにとって価値のある生命体であることを見せ付ければなんとかなるかもしれない。
他の人間から見ればそうしても助かる見込みはないだろう。
あゆ自身もそうやって助かる見込みなどほとんどないと考えている。
だが、あゆの生への異常な渇望は僅かでも可能性があるのならその全てを賭けでも目的を遂行しようとする。
そう考えて自分を保たないと今のあゆは簡単に壊れてしまいそうだから。
「殺す。 今すぐ、速やかに!」
光の柱を眺めている武たち気づかれないようにあゆが『献身』を握り、精神を集中させる。
制限が解かれたのはなにも武やアセリアだけではない。
月宮あゆもその範疇に入るのだ。
残された力と制限が解放されて使えるようになった力の全てをかき集めて最大の神剣魔法を行使する。
「武、気をつけろ。 何かしようとしている」
「……まずい、逃げろ! 遠くまで!」
ようやく気づいた武たちが逃亡しようとするがもう遅い。
ピリピリとあゆのアヴ・カムゥを中心に物凄い力の渦が出来上がる。
残った力の全てを注いで、大地のスピリットが使う最大の神剣魔法を発動させたのだ。
あゆが唱えた魔法、それは全てを貫く緑の衝撃!
「エレメンタルブラスト!!!」
その言葉を唱えると同時に武たちが逃げ出した方角に上空からバレーボールほどの大きさの緑色の球体が降りてくる。
そしてある程度の高さを保つと緑色の球体が破裂。
瞬間、球体に凝縮されていた空気の塊が衝撃波と真空波となって暴れ出し、森の中を駆け巡り、一つ残らず木を薙ぎ倒す。
時間にして数秒。 あゆの残った力でエレメンタルブラストが効力を発揮させたのはそれほどまでに短い時間だ。
だが、わずか数秒しか発動してない魔法がエリア一面の木を残らず薙ぎ倒していた。
風はただ安らぎをもたらすだけのもののではない。
時として荒れ狂い、自然も人間もすべて薙ぎ払うのだ。
あゆがその狙いの中心に据えたのは木ではなく、あくまでも倉成武と坂上智代。
視線をこらしてみると静寂の中、動く生き物が二つあるのを確認する。
まだ、生きているしぶとさに驚嘆しながらもアヴ・カムゥの体を動かした。
大剣が動かしづらくなり、いよいよこのアヴ・カムゥも本格的な機能不全に落ちたことを知る。
が、攻撃力は失われてもその鉄壁の防御力は健在。
永遠神剣に回せる力はもうエレメンタルブラストで使い果たした。
アヴ・カムゥは当初のとおりにあゆが永遠神剣の補助もないまま動かしている。
万全を期してゆっくりと歩を進めていった。
◇ ◇ ◇ ◇
「おい、起きろ。 武、起きるんだ。 早く起きないとあいつが……」
血だらけの格好になりながらも智代はまだ生きていた。
エレメンタルブラストで生じた衝撃波と真空波が彼女の体を幾重にも切り裂いている。
周辺の残さず切り倒された植物の被害を見る限り、智代もよく生きていられたものだと己の幸運に感謝していた。
這いつくばって武のいるところへ進み、武の脈を取る。
脈拍は正常とはいえないが、動いてるのは確かだ。
怪我の度合いも智代とそう変わらないが気絶している。
背負って運ぶのは不可能。 智代も這って動くことしか出来ないほどの怪我をしているのだ。
武には自分で起き上がってもらって、自分で逃げ出してもらうしかない。
しかし、智代が武を起こすよりも速く、あゆのアヴ・カムゥがそこにいた。
「これでボクは助かる。 二人を殺せば助かるんだ」
もはやあゆの中で確定事項と化した目的を果たすためにアヴ・カムゥを動かす。
アヴ・カムゥが自由に動かせる部分、つまり足を使って智代と武を踏み潰すのだ。
まずは気絶している武を標的に定めた。
象をも上回るアヴ・カムゥの巨体は人一人踏み潰すのになんら不自由のない重さがある。
だがそれを阻止するかのように武とアヴ・カムゥの間に智代が体を割り込ませた。
武の体を覆うように四つんばいになって、アヴ・カムゥの足から武を守ろうというのだ。
もうそれしか智代にできることはない。 九十七式の反動に耐えれる自信もなく、他の方法も思いつかない。
わが子を守る母のように智代は自分ができる唯一の方法で武を守る。
「早く、早く潰れろ!」
グイグイと体重をかけるアヴ・カムゥに対し、智代は最期の力を振り絞って四肢を踏ん張る。
このままでは二人とも死ぬのを待つだけ、ならば一人だけでも生きていた方がいい。
その一人とはもちろん智代を助けてくれた倉成武でなければならない。
かつて受けた恩を命がかかっている今こそ返さねばならないのだ。
「起きろ、武。 お前はこんなところで死ぬ男じゃないだろう? お前は強い男だ。
こんなところでお前は死んではいけないんだ」
あゆから守りつつも武を起こす作業は続ける。
背中にかかる負担も強くなり膝や腕が地面にめり込んでいく。
あゆに負けまいと踏ん張れば踏ん張るほど、傷口から血が噴水のごとく吹き出て力が抜けるという悪循環。
智代の体を赤く染めている部分が半分を越えた。
「私は嬉しかったんだ。 私を叱ってくれたことが。 いけないことはいけないって教えてくれたことが。
お前にはいくら感謝しても足りないんだ。 それはもう七日七晩かけても語りきれないくらいにだ。
こういう言い方は失礼かも知れないが、お前のことは父親のようだとさえ思えたよ。
駄々をこねる私に根気よく付き合ってくれて、その上で私を元の道に戻してくれたんだからな。
だから今度は私がお前を救う番だ。 お前は命を懸けて私を救ってくれた。 だから今度は私がお前を命に換えても守る」
智代の命の炎がいよいよ小さくなる。
あゆもアヴ・カムゥが思ったより自由に動かせないことにヤキモキする。
このままでは埒が明かないと判断したあゆは直接『献身』で殺そうとアヴ・カムゥから降りようとする。
しかし、智代の命を懸けた呼びかけの方が早かった。
「武! 私の命をお前に託す! 私の命とともに戦うんだ!」
命を託す、それはつまり自分は死ぬという意思表示。
智代の一言で武は完全に覚醒し、アヴ・カムゥの足の下から逃れる。
その数秒後、地響きとともに智代の体がアヴ・カムゥに飲み込まれていく。
智代のいるであろう空間を見て静かに黙祷を捧げた。
「よく気絶するもんだ、俺は。 自分でもウンザリする」
エレメンタルブラストで大きく武の衣服と胸が切り裂かれているが、制限の解かれたキュレイなら数日で治るレベルだ。
あゆが狼狽し、再びアヴ・カムゥの中に篭城を決め込む。
その様子を見ていた武が絶対の意志をもって対峙する敵に向かって告げる。
「こじ開けてやる。 その体にでかい風穴をな!」
あゆが完全に武の殺意に気圧されて、一歩どころか二歩三歩と下がった。
そのとき、地上に露になった智代の赤く染まった体から蛍のような小さな光が出て、武の構える『時詠』に吸い込まれていく。
そして『時詠』の刀身が夜闇を切り裂くほどの光量で光を放ち始めた。
あゆにもそれが意味するものは何なのかいやでも想像がつく。
「ううう、うわああぁぁぁぁ!」
逃げても待っているのは死。 だからあゆは武に襲い掛かるしか手段がない。
追い詰められた鼠のごとくあゆが決死の抵抗を見せる。
残った足とほとんど動かない腕も強引に総動員して武に何度も襲い掛かる。
だが、その抵抗は猫を噛むことはできない。
「分かるか? あいつの命の光が! 見えるか? あいつの魂の輝きが!」
武が不規則に繰り出されるアヴ・カムゥの鉄の腕や足を避けながらタイミングを計る。
勝負は一発限り。 身体能力の強化はできない。
武にマナや魔力をコントロールする能力はないし、それでなくとも雀の涙ほどしかないこの光の力を無駄な行為に回す余地はない。
最善の状況で最高の一撃を叩き込むその技を繰り出すためには慎重な判断力が必要。
「そんなものでボクが!」
あゆの一撃は通常時の半分以下の速度だが、威力に関しては未だに必殺の域にある。
武も重傷を負い動きが鈍くなってるから条件はほぼ互角。
無理やり繰り出されたアヴ・カムゥの大剣の攻撃に対して、武は攻撃を一切行わず回避行動だけに専念する。
『時詠』の一撃を当てる絶好の機会を待っているのだ。
“その一撃は未来を見通す『時見』の力が必要不可欠”
それを悟ったあゆもしばらく攻撃されないと見て、防御を考えずに乱舞のように腕や足を使って武を追い詰める。
押して押して押して押しまくれば必ずあゆにも勝機はあるはず。
津波のように広い範囲を薙ぎ払うアヴ・カムゥの攻撃をよけるのは至難の技。
“それだけでなく膨大な量のマナが必要だ”
『時詠』が持っている力の量がほとんど無いことを知るとあゆにも自ずと冷静さも戻ってくる。
倉成武は永遠神剣の使い方の初歩である身体能力の強化も使ってないのだ。
それは身体能力の強化もできないほどあの光の力は弱いということ。
“よってこの一撃は技とも呼べないような失敗した技”
「もらった!」
油断したアヴ・カムゥの大振りの一撃が空を切る。
初めてできた絶好の隙を前にして武が突っ込まない手はない。
あゆが執念を振り絞って残った手足で武を迎撃する。
左腕は軌道を見切り回避して、右足は武の体に当たる前に前に出て懐に飛び込む。
アヴ・カムゥの返す刀の一撃も回避して武が再びアヴ・カムゥの腕に乗って駆け上がる。
“その威力は本家の一万分の一以下のものだ”
あゆと武の距離がこれ以上ないくらい近づいた。
そこであゆの顔に突如一筋の光が当たる。
それは『時詠』の放つ光ではなく、雲の間から漏れた夕日の光。
曇った空がやっと明けて茜色の空がその顔を覗かせたのだ。
人はこの時間をこう呼ぶ。
「聞けよ、あゆ。 黄昏がお前を呼んでいる」
「ひッ! う、うぐぅ! ああああ!」
『時詠』の刀身を装飾する輝けるかの光こそは、永遠神剣を扱う者だけが放つことの可能なオーラフォトンの瞬き。
一人では無理なことも二人でならできるという幾千の可能性を秘めた希望。
『時詠』が命高鳴る神韻の旋律を響かせて、漆黒の刃が金でも銀でもない光を発する。
武は『時詠』にこめられた力を解放して、二人分の命の重さを含んだ一撃をアヴ・カムゥの頭部に向かって放つ。
あゆが目の前の脅威を排除しようと体を揺さぶるが遅い。
「奇跡って言葉の意味を教えてやるよ。 クリティカルワン!」
“だが――アヴ・カムゥの装甲を打ち破るのにはそれで十分”
それは高嶺悠人が得意とするヘビーアタックの一撃に似ていた。
オーラフォトンを纏った剣を叩きつけるだけの基本的な攻撃。
紛い物のクリティカルワンの一撃はアヴ・カムゥの頭部から腹部までの装甲全てを完膚なきまでに引き裂く。
引き裂かれた装甲の薄暗い空間にいるのはまぎれもなく月宮あゆその人。
ついに無敵の城塞を破られ、剥き出しの姿を見せ付けることになったのだ。
武の宣言どおりその装甲に風穴が通された。
ここでアヴ・カムゥはその機能を完全に停止して地面に仰向きに倒れる。
武が中に入っているあゆを引きずり出そうと壊れたアヴ・カムゥに近寄る。
と、そこで亀裂の入った箇所からあゆが羽化した蝶のように飛び出してきた。
武が身構えるが、あゆは武と相対することもなく一目散に逃げ出そうとする。
永遠神剣の魔力も使い切ったあゆの残された武器は国崎から奪ったコルトM1917のみ。
ショットガンを扱う男を相手するには無謀というに過ぎる。
「待ちやがれ!」
武が智代を殺した犯人を逃すはずもなく、追いかける。
身体能力も歴然、あゆはグングンと追い詰められる。
(どうしよう、殺される。 死んじゃう。 いやだ。 怖い)
あゆがその逃れられない死から逃れるために一つの行動を取る。
それは人質を取るということ。
いや、それはそもそも人質という言葉が当てはまるかどうかも怪しい。
あゆが人質に取ったのは生きてる人間ではなく、死んだ坂上智代の死体なのだから。
智代の額にコルトを突きつけて武に勘違いした警告を始めた。
「こ、来ないで! 来るとこの人を傷つけるよ!」
「はぁ?」
「この人の脳みその色を確かめたくなかったらボクを見逃して! それだけでいいの!」
「何言ってるんだ、お前? そいつは死んでるぞ」
「武器をよこせなんて言わないから、ね、いいでしょ? ボクを見逃してよ!」
もはや前後の不覚すらもつかず、ただ生きるためだけにあゆがとった方法は余りにも哀れだった。
例えこの場を切り抜けてもディーが殺しに来るというのに、あゆが考えているのはとりあえずこの場から逃げ出す方法のみ。
武も哀れを通り越した不快な感情が沸き起こっていた。
「やれよ」
「へ?」
「やれって言ったんだ。 智代ならそう言う」
「勝手に死んだ人の気持ちを語らないでよ。 いい加減なことを言うと本当に撃つよ?」
「撃てよ。 撃った瞬間俺がお前を撃つ」
武が一歩進む。
あゆが後ずさる。
「撃つよ。 本当に撃つよ?」
「やれ!」
武があゆに向かって走り出した。
あゆが口からヒィと息を漏らして訳も分からず智代を撃とうとする。
だが、ここで驚くべき第三の人物が声を出した。
「撃たれるのは……困る」
その声がした方向を向こうとしたが、あゆは銃を持った手首に違和感を感じる。
見てみると、あゆの手首は切り裂かれ動脈から大量の血を流していた。
慌てふためいて止血しようとするあゆを尻目にもう一度第三の人物が声を出す。
「私は……まだ、生きてる……からな」
第三の人物、智代が持っていたサバイバルナイフであゆの手首を切り裂いたのだ。
それを見た人間の反応は二通り。
月宮あゆは『献身』を取り出し無駄な行為を始め、倉成武は『時詠』を構えて走り出した。
「ア、アースプライヤー!」 あゆの言葉に『献身』は何の反応も示さない。
「ハ、ハーベスト!」 何度やっても無駄。 魔力を使い果たした人間に奇跡は起こらない。
「おおおおおぉぉぉぉ!」 武があゆに向かって切りかかる。
その光景を前にして信念も理念もなくただ生きたいがためだけに殺し合いに乗ったあゆが次に選んだ方法は命乞いだった。
「ごめんなさい、もうしません、人殺しはもうやめます! 心を入れ替えますから許してください!」
(立派? ……立派じゃなくていいじゃねぇか。 情けなくって何が悪い!
情けなく逃げ回ったって、土下座して命乞いしたって、靴の裏舐めたって寿命が延びるんならそれでいいじゃねぇか。
立派に死ぬよりも、情けなく生き続けることの方が遥かに偉いんだよ。 死んだら……死んだらもう、瑞穂にもみんなにも会えないんだから……)
その瞬間、武の頭にかつて自分が言った言葉が過ぎる。
月宮あゆをここで殺すのは正解なのか。
その場凌ぎの嘘を言っているかもしれないし、本当に改心しようとしているかもしれない。
命乞いする人間を殺すのは外道のやることではないのか、この者に改心のチャンスも与えず殺すのは許されるのか。
かつて外道の道から改心することを許された武だからこそ、その要求をはねつけることは出来なかった。
振り上げた剣を下ろし、その言葉に嘘偽りがない本心からの言葉であるか聞く。
「もう人を殺さないと誓えるか?」
「誓う! 誓います!」
あゆが土下座をしながら一心不乱に謝罪を繰り返す。
「智代にはどう言い訳するつもりだ?」
「一生かけて償います! だから許してください!」
「……許して、やれ……」
ここで智代が出来る限りの声を出して許すことを許可する旨を出した。
殺されそうになっている智代が許すといっている以上、武ももう何もいえない。
「……分かった。 死ぬ気で償え」
その言葉とともに剣をしまって背中を向けた武にあゆが目を光らせた。
無防備な背中に『献身』を突き出して武の心臓を串刺しにしようと襲い掛かる。
だが、始めからその可能性を読んでいた武は背中を見せた状態からあっさりと避けてみせ、『時詠』を取り出した。
その顔には失望の表情が浮かんでいる。
「どうしてお前はそういうことしかできないんだ?」
「ひぐうっ!」
「お前は差し伸べられた手を簡単に翻した。 その代償は覚悟できてんだろうな?」
「ゴメンなさい、ゴメンなさい、ゴメンなさい! 嫌だっ、死にたくない、助けてええぇぇぇ!」
だが、遅すぎた。 なにもかも。
謝罪を始めるのも、自分の間違いに気付くのも。
月宮あゆはその手を人の血に塗れさせすぎていた。
「悪いが、もう俺でもその命乞いは聞いてやれない」
なおも命乞いを続けるあゆを袈裟斬りで一刀の元に切り伏せ殺害。
倉成武はこの島に来て三度目の殺人を犯した。
一度目も二度目もH173のせいにしようとすればできる。
だが、今回ばかりはどうあがいても言い訳できない純粋たる武の罪だ。
言い訳もできないほどに、純粋な自分の意思で、だ。
かくしてこの島で最も数奇な運命をたどった人物がこの世を去ることになる。
◇ ◇ ◇ ◇
「済まなかった。 お前が生きてると知らずに撃てなんて言ってしまった」
「いいさ……私も、生きてる、のが…不思議なくらいだし、私も、そうしろと言うさ」
智代を柔らかい草の上に寝かせた武は智代の応急処置を始めようとした。
が、同時に数時間前の戦いでほぼ全て使い切っていたことを思い出す。
何もできない己の無力を悔やむ武に智代はどうせ助からないからと笑った。
「なぁ」
「何だ?」
「私は……満足だよ。 生きて帰ることはできなかった。 やり、残した……ことも、悔いも、ある。
けど、私は欲張り……だからな、やりたい…こと、や、悔い、が、なくなる日、なんて一生……こない。
だから、ここで死ぬ…のは、守りたいもの……守れて死ぬ、の…は…本望だよ」
「勝手に満足するんじゃねぇ! 鷹野を、俺たちをこんなところに放り込んだやつをぶっ潰すんじゃないのか!?」
「お前が……やって、くれる…だろ?」
美しい銀髪ももはやそのほとんどが赤く染まっている。
武の血に塗れた手を同じく血に塗れた手で掴み、高く掲げた。
「私の……希望は、ここに、ある。 見て…いるか……鷹野。 お前を……倒す存在が……ここに、いる」
呼吸を荒くして最後の宣戦布告を行った。
そのまま智代はしばらく目を閉じて深呼吸して、あるがままの世界に身を委ねる。
風が気持ちい、空気がおいしい、空の色が美しい。
こんな島でさえ、こんな鉄と血に塗れた島でも世界はこんなにも綺麗に移るのだ。
死ぬ間際にそんなことに気が付くとは余程余裕のない生活を送ってきたのだろうか。
かもしれない、と智代は口元を小さく歪ませて笑う。
街の不良を相手に荒れていた時期もそうだ。
この島でも心安らぐ時間よりも復讐心に身を焦がしている時間の方が多かった気がする。
ああ、なんて、もったいない。
そよそよと耳に入ってくる風の音を聞きつつ、時間がいよいよ少なくなってきたことを悟る。
智代はずっと考えていたことを武に頼むことにした。
「なぁ?」
「何だ?」
「頼みごとが……あるんだ」
「何だ?」
「私を殺してくれないか?」
「な!?」
聞き間違いがないようにハッキリと一息で言い切ったが、やはり武は信じられないという顔をしている。
自らの死期を早める行為を頼むのは武には信じがたい望みであった。
当然、聞き入れるわけもなく武はその行為の真意を尋ねることになる。
「できる訳ないだろ! なんでそんなこと言う!」
「殺され、たく……ないか…らな、あんな奴に」
「だからってそんなこと言うな!」
「お前だから……言った、んだよ。 私、を…助けてくれた……お前…だから、私の命…を、もらって……欲しいんだ。
どこの、馬の骨…ともしれない……ような…やつ、に…私の命をやるつもり…はない」
息も切れ切れに智代は咽ながらその理由を答えた。
武にもその理由なら分からないでもない。
このまま快く思わない相手に致命傷を与えられ苦しんで苦しんで死ぬより、大切な人間の手で一瞬のうちに逝く方が幸せなのか。
どちらにせよ決まっているのは、このままでは間違いなく智代は死んでいくのだ。
ならばいっそと情けをかけて苦しみから解放して上げるのもまた一つの幸せではないだろうか。
武は気付かないうちにエアーウェイトを構えていた。
「これで……いいのか?」
「ああ、それで……引き金を……引けば、いい」
捧げられた真っ暗な銃口を前にして、智代は満足そうに呟いた。
武が銃を撃った経験は初めてではないが、今ほど引き金を重く感じたのは初めてだ。
この先は互いに殺意をぶつける『殺し合い』ではなく100%の結果が待っている『殺し』。
引き金を引く人差し指どころか腕全体が震えている。
「……いくぞ」
「いいぞ」
片手で撃てないのなら両腕で撃てばいいだけのこと。
左手で震える右手を強引に押さえて智代の心臓に狙いをつけて、発射した。
森の中に響く轟音。
エアーウェイトの薬室から薬莢が排出され地面に落ちる。
銃弾は、智代に当たっていなかった。
「できる訳ねぇだろ!」
武が叫ぶ。
「人を何人殺したって、仲間を撃てる訳ないだろうが!」
徹頭徹尾の偽善者、つぐみにLeMUでそう言われた時から何一つ変わっていなかった。
仲間だろうと敵だろうと殺害という行為に全く変わりはない。
そこで得られる過程も結果も全て等しきものなのだ。
敵を慈悲もなく殺しておきながら、何故慈悲の元に仲間を殺せない?
悔やむ武をまたもや智代が慰めた。
「そう、言うと思った。 お前、優しい、からな」
「優しかったら人なんて殺さない!」
「違う、さ……誰も、やりたく…ない…ことは、誰かが……やらない、と、いけない。
お前、は…それをやってるだけ……だ」
「だったらお前のこともちゃんと殺してる」
「これ、は…私の……我侭。 聞く…必要は、ない」
その言葉が終わると、智代は一際大きく咽て血の塊を吐き出す。
武にトドメを刺してもらうよう頼んだのも自分の死期が近いことを悟ったからこそ。
頭を動かすのも難しくなってきた。
残り少ない時間を前に最期にやるべきことを考えて智代は口を動かした。
「これは罰、なんだ、ろうな。 たくさんの……人に、迷惑かけた。 その、痛みを、甘んじて…受け入れろ、ということか」
「お前はもう十分償っただろ! 許されてるに決まってる」
武が智代を抱きしめる。
その消え逝く命を離さないように、智代の命そのものを掴むように強く抱きしめた。
どんどんと冷たくなっていく智代の体がその人生の終焉を終えようとしている。
何故か満たされた顔で智代が天を仰ぎ、最期の言葉を呟いた。
「まだ……許されて、ない。 地獄で、罪をつぐなってくるよ。 私の、最後の願い…だ。 聞いてくれ。
私を…埋める…必要、ない。 地獄は……暗い、だろう…から。 それに…そうする、時間も……ないはず、だ。 頼まれて……くれるか?」
「……ああ」
「このまま……空…見ながら……優しさに、包まれ、て………………」
その一言を最後に、坂上智代は粉雪のような淡く凄烈で儚い人生の幕を閉じた。
これから先に智代が行くのは天国か地獄か、それともそれ以外の別の場所か、それを知っているのは坂上智代本人のみである」。
◇ ◇ ◇ ◇
「クソオオオオオオォォォォォォォ!」
地面に拳を叩きつけ武が慟哭する。
ここでも守るべき対象を守れなかった。
厳島貴子、千影、坂上智代。 武が守ると決めた人間が尽く武の目の前で死んでいく。
全力を尽くしてあらゆる障害から守り抜くと決めた少女たちは結局誰一人として帰らぬ人となった。
「まただ。 俺は誰一人守れない!」
それは倉成武のせいではない。
彼はいつでも全力で戦ってベストを尽くしてきた。
ただ、結果がついてこないだけ。
だが、そう言われても武は納得できないだろう。
どうしようもできないのだ。
彼がベストを尽くしている以上改善すべき点はもはや何一つないのだから。
酷な言い方をすれば対峙した相手が悪かっただけだ。
「俺は悔しい!」
天に向かって吠える。
その声の先には誰にもいない。
あくまで武の独り言だった。
「なぁ、俺はいつになったら他人を守れるようになるんだ?
いつになったら俺は圭一とつぐみに顔向けできるようになる?
俺は、俺は、堪らなくそれが悔しいんだ!」
涙を溢しながら大声を上げる。
その問いに答えてくれる存在を求めて。
「クソオオオオオオォォォォォォォ!」
「なるほど、永遠神剣とアヴ・カムゥを持った契約者ですら打ち破るか。 つくづく我が子らの強さには驚かされる」
突如聞こえてきた言葉に武が泣き止み、言葉を発した人物を見た。
その男の顔は参加者名簿には載っていなかった。
背中に天使の如き翼を持ち、ハクオロ着ていた衣服に似た衣装に身を包んだ人物。
だが、武はその人物を天使だとは思わなかった。
背中に生やした翼や格好はそう見えても、その男の顔だけはまるで石のように何一つ表情が浮かんでいないのだから。
そして、明らかにその存在は人間ではなく、万物の霊長たる人間より遥かに上の存在であることがその身に纏った雰囲気から分かる。
「誰だ?」
「……しかし、やはり惜しいことをした。 やはり鷹野の言うことは聞かずに我の元まで来てもらうべきだったか」
まるで武の存在など眼中にないかのようにあゆの死体を見て呟く男。
と、そこであゆの体に異変が起こった。
血まみれのあゆの体が光に包まれ、大気中に溶けていくかのように消えていったのだ。
この島で目にする何度目かの不可思議な現象の意味を、警戒しながら武が尋ねた。
「!? ……何をした?」
「何もしていない。 この者は精神が肉体を形作っていただけ。 精神が死ねばその肉も消えるのが必定」
「意味が分からないな。 よく分かりやすいように言ってくれ」
「汝に説明する必要はない」
その言葉とともに背中を見せてどこかへ行きそうな男に対して武が『時詠』を構える。
だが、できたのはそこまでで武はそこから踏み出すことができない。
今までであった誰とも違う雰囲気を持つ男に対して仕掛けるタイミングを測れないでいた。
「それでいい。 我も汝と争うつもりはない」
「もう一度聞く。 お前は何者だ」
「我はこの地に汝らを呼び寄せし者。 今の名はディー」
「……それはつまりお前が黒幕ってことか?」
「……そうなる」
至極当然のように男は言った。
自分が黒幕だと、此度の殺人遊戯の首謀者は自分だと。
その言葉を聞いてはもはや仕掛けるタイミングなど関係ない。
皆の命を奪った元凶がここにいるのだ。
怒りとともに猛牛の如く武がディーへと向かっていく。
「お前が、お前が、お前がああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
だが、ディーの体に『時詠』の刃が喰いこむかと思われた瞬間、『時詠』が見えざる壁に阻まれた。
武が驚愕するのと同時に今度はディーを中心に衝撃波が発生して武を吹き飛ばす。
抗うことも出来ずに吹っ飛ばされた武にディーが戦闘の意思がないことを告げる。
「『動くな』。 我は無駄な行為は望まぬ」
その言葉は立ち上がってなおも攻撃しようとする武の行動を完全に束縛する。
言葉一つで人間の体を完全に止めてしまうその能力はまさに人間離れだ。
金縛り状態に陥った武は己の体に起こった変化に驚愕するが、それ以上の殺意があふれ出てくる。
ここで命を落としてでもディーに一矢報いようと体を動かそうとするがそれは如何なる者をも束縛する鎖。
どうやっても解けはしなかった。
「汝が真に強き者ならここではない、もっとふさわしいところで相見えることもあるだろう」
そう言うとディーはいつの間にか武の視界から消えていた。
武の体を束縛していた言霊もその効果を失い、自由に身になる。
地に膝をついて、武は元凶を目の前にしながら何もできなかった自分を責めた。
「ふさわしいところだ? どこまで上から見下ろせば気が済む!」
自分のプライドとかそういったくだらない問題のためではない。
戦火の中で散って逝った仲間のためにもここで目の前の男を討ち取らなければならなかったのだ。
だが、結局は圧倒的な力の差をみせつけられただけ。
無様な姿を見せて負け犬の遠吠えをしただけだ。
未だ桜の花びらが舞い散る中で、武は死んでいった仲間に誓いを立てた。
必ず、みんなの仇を討ってやる、と。
&color(red){【月宮あゆ@Kanon 死亡】}
&color(red){【坂上智代@CLANNAD 死亡】}
[残り9人]
【D-4 神社付近/二日目 夕方】
【倉成武@Ever17 -the out of infinity-】
【装備:永遠神剣第三位"時詠"@永遠 のアセリア-この大地の果てで-、貴子のリボン(右手首に巻きつけてる)】
【所持品1:支給品一式x24、天使の人形@Kanon、バール、工具一式、暗号文が書いてあるメモ、バナナ(台湾産)(3房)】
【所持品2:C120入りのアンプル×5と注射器@ひぐらしのなく頃に、折れた柳也の刀@AIR(柄と刃の部分に別れてます)、キックボード(折り畳み式)、
大石のノート、情報を纏めた紙×9、ベネリM3(5/7)、12ゲージショットシェル50発、ゴルフクラブ】
【所持品3:S&W M37エアーウェイト弾数4/5、S&W M37エアーウェイトの予備弾85、コンバットナイフ、タロットカード@Sister Princess、出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭】
【所持品4:トカレフTT33の予備マガジン10 洋服・アクセサリー・染髪剤いずれも複数、食料品・飲み物多数】
【所持品5:謎ジャム(半分消費)@Kanon、『参加者の術、魔法一覧』、イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×7 9ミリパラベラム弾58発】
【所持品6:銃火器予備弾セット各100発(クロスボウの予備ボルト80、キャリバーの残弾は50)、 バナナ(フィリピン産)(5房)】
【所持品7:包丁、救急箱、エリーの人形@つよきす -Mighty Heart-、スクール水着@ひぐらしのなく頃に 祭、
顔写真付き名簿(圭一と美凪の写真は切り抜かれています)、永遠神剣第六位冥加の鞘@永遠のアセリア -この大地の果てで-】
【所持品8:IMI デザートイーグル 10/10+1、 IMI デザートイーグル の予備マガジン6、多機能ボイス レコーダー(ラジオ付き)】
【所持品9:サバイバルナイフ、トランシーバー×2、、十徳工具@うたわれるもの、スタンガン、 九十七式自動砲 弾数7/7
九十七式自動砲の予備弾85発、デザートイーグルの予備弾85発】
【所持品10:クロスボウ(ボルト残24/30)竜鳴館の血濡れのセーラー服@つよきす-Mighty Heart-、地図、時計、コンパス 釘撃ち機(10/20)】
【所持品11:食料品沢山(刺激物多し)懐中電灯、単二乾電池(×4本)、ジッポライター、富竹のカメラ&フィルム4本@ひぐらしのなく頃に】
【所持品12:可憐のロケット@Sister Princess、 朝倉音夢の制服 桜の花 びら コントロール室の鍵 ホテル内の見取り図ファイル】
【所持品13:永遠神剣第七位"献身"、コルトM1917の予備弾25、コルトM1917(残り2/6発)、トカレフTT33 0/8+1、ライター】
【状態:肉体的疲労大、脇腹と肩に銃傷、全身打撲、智代に蹴られたダメージ、胸部を中心に体が切り裂かれている、女性ものの服着用】
【思考・行動】
基本方針:仲間と力を合わせ、ゲームを終わらせる
1:電波塔へ援護に行く
2:合流後、廃坑南口に向かう
3:瑞穂たちを心配
4:自分で自分が許せるようになるまで、誰にも許されようとは思わない
5:ちゃんとした服がほしい
【備考】
※制限が解かれたことにより雛見沢症候群は完治しました。
※キュレイにより僅かながらですが傷の治療が行われています。
※永遠神剣第三位"時詠"は、黒く染まった『求め』の形状になっています。
※海の家のトロッコについて、知りました。
※ipodに隠されたメッセージについて、知りました。
※武が瑞穂達から聞いた情報は、トロッコとipodについてのみです。
※確認はしてませんが蟹沢きぬは死んだと思ってます
|203:[[命を懸けて(中編)]]|投下順に読む|204:[[それぞれの「誓い」(前編)]]|
|203:[[命を懸けて(中編)]]|時系列順に読む|204:[[それぞれの「誓い」(前編)]]|
|203:[[命を懸けて(中編)]]|蟹沢きぬ|205:[[さくら、さくら。空に舞い散るのは……]]|
|203:[[命を懸けて(中編)]]|倉成武|205:[[さくら、さくら。空に舞い散るのは……]]|
|203:[[命を懸けて(中編)]]|&color(red){坂上智代}||
|203:[[命を懸けて(中編)]]|&color(red){月宮あゆ}||
|203:[[命を懸けて(中編)]]|鷹野三四||
|203:[[命を懸けて(中編)]]|ディー|205:[[さくら、さくら。空に舞い散るのは……]]|
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