笑顔の向こう側で - (2007/03/23 (金) 08:31:12) の1つ前との変更点
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**笑顔の向こう側で
それは銃と言うにはあまりにも大きすぎた
大きくぶ厚く重く
そして大雑把すぎた
それはまさに鉄塊だった
「「……」」
そして鞄から出てきた巨大な銃を眺め呆然としている少女が2人。
そこにあるのは『九十七式自動砲』
全長 2.06m 重量 59.0kg 口径 20mm
あらゆる面で女子高生に、いや、まともな人間に扱える代物ではない。
「……これが音夢さんの支給品ですか~」
「そうみたいですね……。」
どうコメントしたものやら。
そんな空気が2人の間に流れる。
「き、気を取り直して佐祐理さんの支給品を見てみましょう」
「分かりました~。ちょっと待ってて下さい」
そして佐祐理と呼ばれたほうの少女が鞄に手を入れ、中身を取り出していく。
「地図に、コンパスに名簿に水に……この辺は音夢さんのとあまり変わりませんね。あ!」
「何か見つけたんですか?」
2人で佐祐理の取り出したものを見つめる。
それはなんというかあまりにもだんごだった。
大きすぎず小さすぎず
そしておいしそうだ
それはまさにだんごだった
鞄の中から出てくる団子。団子。団子……。
そして2人の間に再び微妙な空気が流れる。
「……これが支給品ですか?」
「あははーっ。そうみたいですね~。音夢さん、ひとつ食べます?」
「いえ……こんな状況ですし、食べ物は出来るだけ残しておいたほうがいいと思いますよ」
それに私、和菓子嫌いなんです。
笑顔のまま毒づく。
その呟きが聞こえたのか聞こえなかったのか
「そうかもしれませんね~。それにしてもこんなにいっぱい団子さんがあると、まるでだんご大家族みたいですね」
佐祐理は、だんごっ、だんごっ、と口ずさみながらも団子を鞄にしまう。
「……何なんです、それ?」
「知りませんか?だんご大家族。昔は大人気だったんですけどね~」
そういえば一弥もよく歌ってました。
そう呟いた佐祐理の笑顔には少しだけ陰りがあった。
「とにかく、私達の鞄には役に立ちそうな物は入っていませんでしたね」
・・・・
「そうですね~。最初に出会えたのが音夢さんで良かったです。団子だけじゃ危険な人にあったら、佐祐理1人だったらすぐに殺されてたと思います」
・・・・・・・
「私も最初に会えたのが佐祐理さんで良かったです。こんな大きい銃、私には扱えませんもの」
あははーっ。
くすくす。
2人の少女は笑顔を交わす。
その笑顔の向こう側では───?
(この女の道具は団子だけですか、使えませんね)
音夢は自分の鞄に入っていたもうひとつの武器、S&Wの感触を確かめる。
そう、音夢に支給されていた武器は1つではなかった。
佐祐理に見せた『九十七式自動砲』は確かに強力だが、使いどころが難しい。
それに比べればこのS&Wは大当たりだろう。
(ライフルだろうが拳銃だろうが、急所に当たれば人が死ぬのは同じです)
仮に九十七式自動砲で佐祐理を狙おうとしても、撃とうとしてもたもたしている間に逃げられて終わり。
でもこのS&Wなら?
この馬鹿そうな女は自分が全ての手札を晒したと思ってすっかり油断して居るみたいだ。
ポケットから銃を取り出して、突き付けて引き金を引く。
それだけでこの女の人生は終るのだ。
(……もっともそんな勿体無いことしませんけど)
そう、この銃は小型な代わりに、装弾数はたったの5発しかないのだ。
そしてその内の2発の使い道は既に決めてある。
1つは、白河ことり。
学園のアイドルだかなんだか知らないが、最近兄さんに妙に馴れ馴れしく接している女。
それに対して兄さんも鼻の下を伸ばして喜んでいるのだ。
(全く、兄さんったら本当に浮気性なんですから)
そして2つ目。
(芳野さくら……)
突然に戻ってきて、兄さんを奪って行った泥棒猫。
今でもたまに思う、あのさくらは私の悪夢なのではないだろうか。
そう、6年前の桜の木の下から始まった悪夢。
何度あの子から兄さんへの手紙を破り捨てたのだろう?
それでもあの泥棒猫は性懲りも無く次の手紙を送ってくるのだ。
それでも、向こうは海外、此方は同じ家に住んでいるという絶対的な距離の差があった。。
だから負けっこないと思って気にしないようにしていたのに。
まさか4月になっていきなり転入してくるなんて想像出来ただろうか?
しかも6年前の姿のままで。
これが悪夢じゃなくてなんだというのだ。
(待っていてください兄さん。あの泥棒猫達を始末してから一緒にこんなふざけた殺し合いから抜け出しましょうね)
そう、この殺し合いは秘密裏に兄さんに近づく泥棒猫を始末する絶好の機会だ。
そして傷心の兄さんを私が慰めてあげれば、2人の仲は一気に……
(その為には私があの女達を殺したことを兄さんに知られないようにしないと……)
重要な点は2つ、兄さんよりも早くあの女狐共を見つけ出すこと。
そして目撃者を残さないこと。
(だからこの馬鹿女にもいつかは死んで貰わないといけませんね)
どうせなら役に立つ死に方をして欲しいものだ。
(ま、精々私の役に立って下さいね)
音夢さん、何か隠してますね。
彼女の言動、笑顔、その全てがうそ臭い。
(これも舞のおかげかもしれませんねー)
表情の変化に乏しい親友のことを想う。
彼女は嬉しい時も辛い時も顔には出さない。
でも、佐祐理には何となく分かるのだ。
舞の顔を見れば、今、彼女が何考えてているのか。
上辺だけの表情ではなく、心の底から湧き出る感情。
佐祐理はいつの間にかそれを見抜く術を身につけていた。
(……といっても、舞以外の人のことは分からない場合も多いんですけどね)
それにしてもこれはあざとすぎる。
今の所、音夢が何を考えているのかは不明だが、朝倉純一を探している、というのは本当だろう。
純一を見ていないか尋ねてきたときだけは彼女の仮面が剥がれていたような気がしたから。
(尤も、その後が問題ですけどね~)
芳野さくら、白河ことり。
この2人の名前を出す時には全身で悪意を放っていた。
大切な人が3人なら問題ない。
生きて帰れるのはたった1人。つまりその中の誰かを選ばなければならないのだ。
そんな選択をするくらいなら、勝てる可能性は低くとも主催者に抗おうとするだろう。
でも大切な人が1人なら。
最後の2人になった時点で自分で死ねば守りたい人を守ることが出来るのだ。
もしもここに連れてこられたのが舞か祐一さん、どちらか片方だけだったなら。
きっと佐祐理も大切な誰かを生かすために殺人鬼になっていたでしょう。
でも佐祐理には舞か祐一さん、どちらか1人を選ぶことなんて出来ません。
(だから──音夢さん、芳野さくら、白河ことりに何をしようが構いません。でも───もし、舞や祐一さんを傷つけるつもりなら許しません)
もしも音夢さんが皆殺しにして、純一さんだけを生かして返すつもりなら。
(貴方がこの殺し合いに参加するつもりなら……そのときは佐祐理が貴方を殺します。)
スカートの中に隠し持っているナイフの感触がやけに冷たく思えた。
【C-3 森 1日目 深夜】
【朝倉音夢@D.C】
【装備: S&W M37 エアーウェイト 弾数5/5】
【所持品:支給品一式、九十七式自動砲弾数7/7(重いので鞄の中に入れています)】
【状態:健康、】
【思考・行動】
基本:純一と共に生き延びる
1・ことり、さくらを殺す
2・兄さん(朝倉純一)と合流する
3・殺すことでメリット(武器の入手等)があれば殺すことに躊躇は無い。
【備考】
※S&W M37は隠し持っています。
【倉田佐祐理@Kanon】
【装備:スペツナズナイフ】
【所持品:支給品一式、だんご×30】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。ただし、危険人物を殺すことには躊躇しない
1・舞や祐一に会いたい
2・音夢を見極めたい
【備考】
※音夢を疑っています。
※ナイフはスカートの中に隠しています。
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