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終着点~侵されざるもの~ - (2007/11/08 (木) 19:35:15) の最新版との変更点
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**終着点~侵されざるもの~ ◆/Vb0OgMDJY
「む……?」
赤い、色?
今しがた視界に入った色に、僅かに意識を向けた。
現在地は良くはわからないが、この辺りに赤い色が見えるようなものは、
……否、この島で赤い色というと心当たりは一つしかない。
だがそれは、このように遠くから見えるようなものでは無い、と考えたところで、漸くそれの正体が理解出来、同時に我輩は手近な木の枝へと降下した。
そうして羽を休めながら、その考えが間違っていないことが確認できた。
「炎……だと?」
この距離でも、僅かに揺らめいて見える赤。
そこから薄く立ち上る黒い煙。
そして、その根元に見え隠れする白い建物。
此処からでは判別出来ないが、何らかの施設、で火事が起こっているのだろう。
そのこと自体は別にどうでもいい。
いや、良くはないが、別段気にかける必要の無い現象だ、少なくとも鳥である自分にとっては。
だが、今この状況でそれが起こると言う事は、必然的にあの場所である事が起きている事を連想させる。
すなわち、殺し合い。
最低でも二人以上の人間が、あの場所で戦っている。
或いは一方的に襲われているという事になる。
「……確かめておく、必要があるな」
この場所は、蟹沢達と別れた地点からそう遠くは無い。
そうなるとあの場所に居る、或いは居た人物が蟹沢達と接触する可能性は、それなりに高い。
いや、それ以前に、炎を目にした蟹沢達が、自らあの施設に向かう可能性だってある。
そして、戦いが起こっている以上、あの場所に居る人間の片方、或いは両方とも、殺し合いに乗っている可能性は高い。
このまま放っておけば、純一や蟹沢が危険に晒される恐れがある。
だが、我輩ならどうか?
我輩の事を参加者だと知っている人間は少ない。
出会ったことの無い相手ならば、恐らく皆無だろう。
だから、我輩がまずあの施設、及びその周辺にいる相手を観察し、その結果を蟹沢達に知らせれば、彼女らの危険はそれだけ減る。
問題があるとするなら、病院へ向かうという当面の目標を変更しなければならない事だが……。
「……病院に向かった者は、手練と聞いている。
まずは、危険度の高い方を優先するべきだな」
病院に向かったメンバーの聞いた範囲の能力と、少し前に別れた蟹沢達の能力。
同じ危険に見舞われたときに、どちらがより危険かは考えるまでも無い。
そして病院と違い、今眼前には明確な危険が存在している。
ならば、そちらを優先するべきだ。
「ふむ、それにいい機会だ。
この機に我輩の有り難さを奴らに、そう、特に蟹沢に思い知らせてやろうではないか」
そう、言葉を残し、進む道を選んだ鳥、土永さんは炎に揺れる施設を目指し、飛び立った。
その言葉の中に秘められた『ある』感情に、彼は気付いていたのだろうか。
『郷愁』
恐らくその表現が最も近しいその感情。
一度は修羅の道を選んだ彼だが、否、だからこそ、その心に秘めた望郷の念は大きなものとなっていた。
それ故、自分と同じ時間、空間を過ごしてきた存在、蟹沢きぬとの再会は、彼の心の中で大きな比重を占めていた。
故に、彼は無意識の範囲で、蟹沢きぬの安全を優先していた。
・・・…その事に大した意味は無い。
ただ、それにより一つの結果が生まれた。
それだけのこと。
訪れる未来を知る術など無い鳥は、ただ、飛んでゆく。
その先に、もう一つの、……悲しい再会がある事など知らずに、ただ、飛んでゆく。
◇ ◇ ◇ ◇
(……信じられる筈が、無いよね)
少しずつ高くなる日差しを受けながら、二人の少女が森の中の開けた場所に座り、何事かを話し合っていた。
ボロボロの衣服を纏い、槍を携えた少女、月宮あゆ。
所々血に染まった巫女服を纏い、謎の気ぐるみを手にしている少女、佐藤良美。
彼女達は、火勢の収まらない農協の施設を離れ、少し南の地点に居た。
談笑しながら情報を交換している、様に見えるが、この2人の関係を知っている人間ならば、とてもそれが真実とは思わないだろう。
言うまでもなく、お互いを知っている少女達がそんなことを信じる筈がなかった。
(死にたくない、っていうのは多分本心だと思うけど、私に含む事が無いなんてことはあり得ない)
かつて、そう、丁度一日前、良美が絶望に突き落とした相手、月宮あゆ。
良美に言わせれば、あきれるほどに考えなしで、役立たずだった少女ではあるが、だからと言って今でもそのままとは限らない。
否、先ほどの行動を見る限り、そのままである筈が、無い。
その彼女は会話を初めて直ぐに『死にたくない』と言い、良美に殺されない為なら協力するとまで言った。
或いは、お互いが一人の時に再会したのであれば、その言葉を信じられたかもしれない。(最も、その場合は持ち物をくれる事に感謝しつつ、適当に捨て駒として利用するのだろうが)
だが、あゆは『死にたくない』と、共にいた仲間から離れ、良美の下へと来た。
これは、役立たずの発想では無い。
以前のあゆならば、何もせずに蹲っているのが関の山だった筈だ。
結果的にその行動が自らの危機を招いていたあたり、考え無しであることには変わりはないようだけど。
(そう……、だけど、間違いなく前に会った時のあゆちゃんとは違うよね)
あの時、瑛理子という少女に向けた酷薄な言葉。
何の躊躇いもなく向けた銃口。
躊躇せずに、瑛理子の命を奪った行動力。
全て、以前のあゆからは考えられないものだ。
それが、良美に警戒を与える。
以前とは違う、唯の無力なだけの少女では無い。
良美を疑いもせず、あっさりと思惑通りに踊ってくれるような相手では、無い。
それどころか、
(気を抜けば、私を殺そうとするかも……
ううん、間違いなく、いつか殺しに来る)
そもそも、殺し合いを肯定する人間同士が手を組んだ場合、行き着く先は一つ、最後にどちらが生き残るかを決める事だ。
簡単に利用出来る『駒』では無く、隙を見せれば襲い掛かってくる可能性のある『敵』
今の彼女は、そう認識しなければならない、危険……な相手だ。
(だからいつか殺さないといけないんだけど、そのいつか、を、いつ、にするかが問題なんだよね。
……正直、今のあゆちゃんとはあんまり一緒に居たくないな)
農協での遭遇時、あゆの言葉は歓迎出来る物だった。
けど、その後の行動を一つ一つ検証してみると、彼女は手を組むべき相手じゃない。
理由があれば、さっきまで一緒にいた人間を簡単に殺す。
かつて手駒にした倉成武と違って、自分が健在な事以外に、襲い掛かって来ない理由が無い。
いや、そもそも健全な状況でも、何もしてこない保障なんて無い。
彼女は良美に恨みを抱いている可能性が高いのだから。
そして非常に不愉快だけど、恐らく今の良美よりも、あゆの方が『強い』
――まず、あゆの話では、生き残りの内、半数近くが徒党を組んでいるらしい。
あゆが実際に会ったのは数人だが、聞いた範囲では10人近い数だとか。
そして、
(そいつらに、私の顔を覚えられているんだよね
しかも、その中に純一君達やことみちゃん、凶暴な方のあゆちゃんは含まれていない……)
つまり、既に良美に利用されてくれるような人間は殆ど残っていない。
いや、それどころか皆無かもしれない。
それに対して、あゆは沙羅以外の相手には危険とは認識されていない。
その沙羅から危険が広まるだろうけど、それでも利用出来る相手は良美よりも圧倒的に多い。
――そう、まず採り得る選択肢の点で、あゆは良美よりも遥かに『強い』。
――次に、あの時あゆが見せた戦闘能力。
(さっきの凄い力は、…・・・あの槍の力だよね)
あゆの手にある槍に視線を向ける。
あゆに高い身体能力を与え、燃え盛る炎を押し返した力。
良美の持つハリセンや、指輪よりも遥かに強大な力を持つ槍。
……どうにかして、手に入れたい槍。
――今の戦闘力の面でも、あゆは恐らく良美よりも『強い』
――そして、あゆは良美の本性を十分に理解している。
これが、最も重要な事柄。
どれだけ強くても、仲間が居ても、皆良美の言葉にコロリと騙されてくれた。
けど、一度騙されたあゆは、易々と良美の言葉に騙されてくれない。
それどころか、当然こちらを騙そうとしてくる。
それに対して、良美は今のあゆについてあまり把握出来ていない。
――互いの情報について、あゆは僅かに良美よりも『強い』
以上の点から考えると、明らかに良美よりもあゆの方が優位に立っている。
あゆがその優位をどこまで認識しているのかはわからないけど、今の良美は立場で言えば、利用される側の存在になってしまっている。
……面白い筈が無い。
何時だって良美は利用する側だった。
利用して、捨ててきた。
あゆだってその一人だ。
なのに、そのあゆに何時捨てられるかと警戒しておかなければいけないなんて。
(なるべく、早く、それもこちらから先に仕掛けるべきだよね)
今すぐにでは無い。
だが、そう遠くない未来、
殺される前に、あゆを殺すことを良美は心に誓った。
■
……上手く、騙せてるかな?
良美さんを恨んでいない、と言ったけど、そんな事は多分信じないよね。
実際に恨んでいる訳だし。
だから、どこまで騙せているかなんだけど、そこは良くわからないや。
ボクとしては、
『恨んでないはずはないけど、死にたくないからそう言っている』
くらいに認識されているのが理想なんだけど。
どうかなぁ。
まあ、今のボクには『力』がある。
その気になれば、今すぐにでも良美さんを殺せるだけの力が。
だから、あんまり焦る必要は無い。
今は、良美さんを利用していればいいんだから。
ただ、全てを知らせる訳にはいかない。
だから、例の紙は渡していない。
あれには少しだけどこの『力』、永遠神剣の事が書いてあるから。
ボクは使う事が出来たけど、ボク自身には特別な使える条件があるとかは思いつけない。
強いて言うならディーさんとの契約だけど、ボクはまだ工場に行っていない。
工場にも永遠神剣があって、それを使える力を貰ったって可能性もあるけど、確認なんて出来ないし。
だから、もしかしたら、良美さんだってこの神剣を使う事が出来るかもしれない。
そう考えると、必要以上の情報は与えられない。
それに、あの着ぐるみの事も少し気になった。
もしかしたら、あれを着て沙羅さん達のグループに潜り込む、なんて事を考えるかもしれない。
その他にも、疑いだすと切りが無い。
だから、疑われない程度の情報だけ口にしておいた。
それで、今は良美さんの情報を聞いている。
……純一君、か。
それなりの人数の集団。
そして、沙羅さん達と同じような目的を持っている。
つまり、利用出来る相手かもしれない。
(良美さんが使えなくなったら、その人達を頼ってみるのもいいかも)
■
あゆちゃんと、情報を交換しながら考える。
私はもうこの島の殆どの人間から危険視されている。
あの着ぐるみを使えばいくらかはマシになるかもしれないけど、あれを使う場合は偽名が必要になる。
ここまで人数が減ってしまうと、かなりの確立で相手の知り合いの名前を言ってしまうかもしれない。
正直、道は険しい。
でも、
(絶対に偽善者達は殺し尽くしてあげないと)
圭一君は死んでしまったけど、まだ沙羅ちゃんは生きている。
美凪さんだって生きている。
他にも、純一君達のような偽善者共はまだまだこの島には沢山居る。
そう、偽善者、今のあゆちゃんや死んでしまった名雪ちゃんを見れば一目瞭然。
口では綺麗事を言いながら、自分の命が危ないとなれば本性を見せる。
そこまで考えてから、ふと気になった。
(そういえば、名雪ちゃんはどうして死んだのかな?
あんな物に乗っていて、死ぬなんて事あり得るの?)
あの時に見たアレは、そもそも人間がどうにか出来るようなものじゃない。
相手を威圧する、重厚なボディ
銃弾をまるで相手にしない、鋼鉄の車体。
普通の列車の速度を維持しながら、小回りの聞く機動性。
どう考えても、生身の人間がどうにか出来る相手ではない。
(それに……)
そもそも、今回の放送で、悠人君と千影ちゃんの名前は呼ばれなかった。
だから、あの後二人は名雪ちゃんから逃げ延びたという事になるんだけど、
(……あの怪我で?)
無理。
どう考えても無理。
一人が犠牲になってもう一人を逃がすのが精々。
でも、現実に二人とも生き残っている。
(そうなると……)
あの二人、だけでは流石に無理だろうから、あの後誰か、それも多分偽善者の部類の人間があの場所にやってきて、そして、そして、考えたくないけど、機関車に乗っていた名雪を殺した。
そういう結論しか出ない。
名雪ちゃんが、あの直後に、或いは上手く逃げ延びた二人を探し回っている間に、失血死やらショック死で死んだ、という可能性もあるけど、それらは否定した。
どちらかと言えばそちらの方が常識的な判断だけど、そんなに都合の良い偶然が訪れる筈が無い。
あの二人にだけそんな偶然が訪れるなんて認めない。
だから、あの機関車を破壊するだけの力は確かに存在している。
それも、自分の敵の側に。
しかも、
(あゆちゃんの話だと、圭一君は病院で死んだ筈、ことりちゃんは私が殺した、そして、千影ちゃんの話からすると、衛っていう子はあの時点で既に死んでいた)
つまり、犠牲者ゼロ。
一人の犠牲も出さずにアレを破壊した。
……思わず震えてしまいそうな程の脅威。
そんなものに、正面から戦いを挑むなんて馬鹿な真似は出来ない。
やはり、後ろからだまし討ちをするしか無いかな。
そうなると……、
「うん、それじゃあこれからの方針を言うね」
■
良美さんの作戦は簡単だった。
まず、大体の居場所が分かっている純一君達と接触する。
この時はボク一人で。
そして、少ししたら着ぐるみを着た良美さんも合流する。
ボクの知り合いとして。
そうすれば、少なくとも一度は名前を間違えられる。
それで、後は沙羅さん達のグループとの対立を煽る。
これだけ。
でも、単純だけどいい作戦かも。
けど同時に、良美さんに都合のいい作戦でもある。
もしその純一君が、先に沙羅さんと遭遇していたら、ボクは危険になる。
良美さんが合流するときも、やっぱりボクが危険に晒されるかもしれない。
ただ、先に合流して、そのままボクが良美さんの危険を訴えるという行動も取れる。
だから、明確に反対する理由も無いんだけど。
「うぐぅ、でも、そんなの汚いよ」
一応、演技として反対はした。
良美さんの油断を誘う為に。
だから、こんな結果は予想して無かった。
「うぐぅ、苦しい……よ」
いきなり、首を絞められるなんて結果は。
■
気が付いたら、あゆちゃんの首を絞めていた。
「うぐぅ、苦しい……よ」
あゆちゃんが何か言ってる。
でも、耳に入らない。
『汚い』
「よしみ、さん、離して、よ」
「……………………ない」
「はな…して……」
「私は汚くなんてないッ!!」
止まらない、
ギリギリと、あゆちゃんの首を絞める。
あゆちゃんは、あろうことか槍から手を離して、両手で私の手を外そうとしている。
しばらくして、あゆちゃんの手から力が抜けてきた。
なので、そこらへんに放り投げた。
ゴホゴホと喉を押さえて咳き込むあゆちゃん。
でも、そんな事は気にせず、槍を拾ってあゆちゃんの顔の横に突き刺した。
「ひぅ…」
「ねえ、あゆちゃん」
勤めて優しい声を掛ける。
あゆを、そして自分自身を刺激しないように。
「何か、勘違いしていない?
私たちには、そんな事言っていられる程の余裕は無いんだよ」
意識的に、その単語に触れないように心掛けながら、話す。
あゆちゃんは、怯えながら私を見ている。
その視線で少し落ち着きを取り戻して、再び声を掛けようとして、
瞬間、視界が反転した。
■
殺される、
殺される、殺される、
殺される、殺される、殺される、
殺される。
ボクの方が強い?
どうにかなる?
そんな考え、一瞬で吹き飛んでしまった。
突き立った槍に目を向ける。
ボクの『力』
あっさりと手放してしまった『力』に
殺される。
ボクは、ボクは、ここで殺される。
良美さんが何か言っているけど、耳に入らない。
殺される、やだ、死にたくない、でも力が無い、だから、殺される、死にたくない、殺される、死にたくない。
死にたくない、殺される、殺されない為には、『力』がいる。
だから、縋った。
すぐ傍にあった『力』に。
■
地面に叩きつけられて、漸く私は投げ飛ばされた事に気が付いた。
息が苦しい。
思わず咳き込んで。
その光景を目にした。
槍を構えて突っ込んでくるあゆちゃんの姿を。
その瞬間、感じた感覚は、熱かった。
「うっ、あああああああ!!」
左肩に槍の先端が刺さって、
違う、
槍が左肩を貫通していた。
「あゆ、…ちゃん!」
とっさに、右手に嵌めた指輪を使って、
何も、起こらなかった。
「え……?」
何で?
何で?
何でこんな時に?
こんな最も大事な時に?
そう、呆けていると、
「ぎ、ああああああ」
再び襲って来る痛み。
力任せに押し込まれる槍による痛み。
「あああああああ!!」
がむしゃらに、右手で殴りつけた。
あゆちゃんは簡単に吹き飛んで、同時に槍も抜けた。
それで尋常じゃない痛みが襲ってきたけど、かまっていられない。
再び、突撃してくるあゆちゃん。
横っ飛びにかわしながら、デイパックに手を突っ込む。
武器を選んでいる時間は無い。
掴んだ物がハリセンであることを確認して、一息付く。
三度、突撃してくるあゆに、ハリセンを叩きつけて、
次の瞬間、右腿を貫かれた。
「ああああああああああああああああ!!」
何で?
電撃は?
見ると、ハリセンは無残に破かれていた。
ふざ、けないで
思わず、毒付いて、
そんな事を考えている場合で無いと考えた瞬間。
右腕を貫かれた。
■
「ハァ、ハァ」
漸く、落ち着いた。
良美さんは、木に寄りかかって座り込んでいる。
両手と右足が、血に染まっている。
やっ、た?
ボクは、自分の力で、良美さんを退けた?
……なんだ。
こんなに簡単だったんだ。
こんなに簡単に、良美さんを倒せたんだ。
あの、良美さんを。
今の良美さんは、もう前とは違う。
ただの、無力な存在。
奪われるだけの人間。
ひどく、気分が良かった。
だから、槍を良美さんの手に突き立てた。
「うあっ!!」
悲鳴を上げた。
「……良美さん、痛いの?」
何も答えない、ただ睨みつけてくる。
でも、その目が何よりも雄弁に語っていた。
だから再び、今度は足に突き立てる。
「あっ…………!!」
再び悲鳴。
それを聞いて、ボクは叫び出した。
そして、槍を突く。
「痛いよね!
苦しいよね!
でも、ボクはもっともっと痛かった!! 苦しかった!!
みんな、みんな良美さんのせいだよ!!」
叫びながら、休まずに足に槍を突きたて続ける。
間違いない。
これは、『憎しみ』
ボクをこんな風にした良美さんへの憎しみ。
それが、ボクの体を突き動かす。
ボクに休む事を許さない。
「ほら!みっともなく泣き喚いて、命乞いしてみなよ!
『死にたくない』って!
もしかした止めてあげるかもしれないよ!!
ボクの時みたいに、あの人が助けてくれるかもしれないよ!!」
そうだ、もっと苦しんで、苦しんで、苦しんでくれないと。
大石さんや、乙女さんの分も。
ボクの絶望の分も。
もっと、もっと。
そう、考えていたら、
「……あはは」
水を差された。
「……あはははははは」
何故?
何故、良美さんは笑っているの?
何故?
何が?
「何が、可笑しいの?」
「あははははははははははは!!」
答えない。
それどころか笑い声は大きくなっていく。
……カンに触る。
「何が!可笑しいのって聞いているんだから!答えなよ!!」
「可笑、しいよ。
だって、あゆちゃん、本気で生き残れるなんて思っているの?」
…………え?
「あゆちゃんごときが、最後まで生き残れるなんて、有り得ないよ。
だって、あゆちゃん、自分から何も出来ていないもの」
何を
「瑛理子さんに狙われた時、
炎に包まれた時、
そしてさっき私が襲った時。
どれも、ただ運が良かっただけだもの」
黙れ
「たまたま、その槍があったから、
たまたま、私にはその槍が使えなかったから。
たまたま、『あの時』あゆちゃんは利用した方が効果的だったから」
「……黙れ」
槍を突く、
でも止まらない。
「あゆちゃんは、ただ運がいいだけだよ。
現実も、状況も、上手く理解せずに、ただ右往左往しているだけ。
『生きたい』っていう理想だけ掲げて、ただ流されているだけの弱者だよ」
「……この、黙れ! 黙れ!!」
「今も、ただ、私が憎いから、そんな理由で短絡的に私を殺そうとしている。
これからどうするのか明確な考えも無しに。」
いくら痛めつけても、良美さんの言葉は止まらない。
「ハァ、ハァ、
……じゃ、じゃあ、じゃあ良美さんはどうなのさ!
そうだよ、そんな事を言っている良美さんは何なの!?
今の良美さんは、その、弱者に、狩られるだけの、無力な、存在でしかないよ!!」
「ええ、けど、私は、選んだ…もの。
自分の、意思で、自分の、…道を、戦…を、
戦かって、抗って、負けたから、私はここにいる。
何もせずに、流れ着いただけの、あゆちゃんとは違う」
「黙れ!黙れ黙れ黙れ!!黙れーーー!!!」
止まらない、
だから、足ではなくて腹
お腹に槍を突き立てる。
「うう、ん、違、わない、…かも、ね、あゆ…ちゃんも、その内、私みたいに、なる」
「黙れ、黙れ、黙れ、黙って、黙ってよ!!」
でも止まらない。
だから何度も何度も突き刺した。
■
しばらくして、良美が反応しなくなった頃、ようやくあゆは手を止めた。
「……これで、何も言えないね」
動かない良美に声を掛ける。
無論、反応は無い。
けれど、気にせずに続ける。
「ボクは、死なないって事、分かってくれた、でしょ」
反応は無い、
未だに胸は僅かに上下しているものの、
今の良美に答える力など無い。
筈だった。
「む…ぃ……だよ」
思わず、あゆは槍を取り落とした。
すぐさま拾い上げて、突きつける。
だが、その手は遠目でもわかるくらいに震えていた。
「ぅ……ぁ……」
あゆが、震えながら口を開こうとしたとき。
「おい! てめー、よっぴーに何してやがるんだ!!」
「えっ!?」
突如、背後から声がした。
(見ら……れた?)
すぐさま振り返るが、人の姿は無い。
だが、
「おい! 純一、この先に危険な奴がいるぞーー!!」
再び、今度は先ほどよりも小さい声。
確実に、この近辺に第三者、それも恐らくは複数が居る。
そう、理解したあゆは、すぐさま声の反対方向に駆け出した。
(見つかるわけにはいかない!!)
全力で、わき目も振らずに駆け出す。
戦うという選択は、取れなかった。
あゆは、恐怖していた。
良美の言葉に。
(死、ぬ?
ボクが?)
拭えぬ恐怖から逃げる為に、わき目も振らず、あゆは逃げ出した。
そして、その場には良美だけが残された。
もはや死を待つのみの人間。
だが、その少し前方に、何かが降り立った。
■
エリーの声がした。
……褒めてくれた。
対馬君の声がした。
……お疲れ様って言ってくれた。
とても、嬉しかった。
うん、痛いのも、苦しいのも、少し薄くなった。
死ぬ間際になって、少し、救われた。
こんな、
こんな、奇跡が与えられるなんて、
「ふざけ…ないで」
信じられる筈が、無かった。
「私にだけ…こんな、都合の、い、い、奇跡…、訪れる筈、無い
エリーを、対馬君を…汚さ…いで、土永…さん」
さっき、あゆちゃんを驚かせた声は、カニっちの物だった。
そして、このタイミングで聞こえる、死んだ二人の声。
そういう事が出来る相手に、心当たりがあった。
「うん、そうだ、よ、エリーも、…馬君も、褒め、て、ゲフッ、ゲフッ…ない。
絶対に、怒…、そうじゃ…きゃ、二人じゃ無い。
…も、怒ら……って、嫌われたって、後、悔なんか、していない」
絶対に、二人と帰るって誓った。
二人が死んで、二人を殺した相手を絶対に殺すって決めた。
他人を欺いて、利用して、捨てて、殺して。
褒められる事なんて一つも無い、蔑まれるだけの行為。
でも、一つも後悔なんてしていない。
何時の選択も、私が決めた、私だけの物だ。
それを、
「鳥……ごと、きの安…ぽい哀れ、みで、ゴホッ、…私を、私の、道を、決意を、穢さないで!!」
叩きつけて、それで、本当に最後が訪れた。
後悔はしていないけど、悔いは残ってる。
でも、私は選んだ道を貫いた。
もし、仮に、次なんてものがあるとしたら、私はまた同じ道を選ぶ。
だから、その道を最後まで貫いた、その事だけを胸に抱こう。
私は、私であり続けた。
その事だけを、誇りに思って、
…………そうして、私の戦いは終わった。
■
叩きつけるような叫びを最後に、良美は動かなくなった。
「……我輩、は」
安っぽい哀れみ。
否定は……出来ない。
助からない傷を見て、せめて安らかな死を迎えられる事を祈っただけだ。
……エリカの死は、我輩の責任であるらしい。
ならば彼女に依存していた、良美の死も我輩の責任に含まれるのだろう。
だから、その罪を償いたいと思ったのかもしれない。
そうして、与えられたのは、拒絶であった。
「我輩……は……」
この殺し合いが初めてで無い事を知り、蟹沢達と共に仕組みを終わらせる道を選んだ。
だが、だからと言って、我輩の罪が消える筈も無い。
一度、殺し合いを肯定した存在に、赦しなど与えられないのかもしれない。
我輩の、偽りの赦しを、良美は拒絶した。
我輩の、償いは、拒絶された。
これが、結果だというのだろうか。
罪は、永遠に、赦されないのだろうか。
我輩に対して、明確な殺意を抱く存在、……智代とかいう名前であったか。
あの者が、我輩を赦す事など、
いや、智代だけでは無い、
我輩が騙してきた人間達が、我輩を赦す事など、有り得ないのかもしれない。
ならば、我輩は、どうすればよいのだろうか?
良美は、赦しなど求めずに、誇りを抱いて死んだ。
だが我輩に、抱ける誇りなどあろう筈が無い。
結局、犯した罪に震え続ける事しか、我輩には赦されないのであろうか?
罪の無い、蟹沢達を危険に晒しながら、生き続ける事しか、出来ないのだろうか?
……答えを見出せぬまま、鳥は飛び立った。
悲しみと、失望、或いは絶望、を齎した再会を経て、仲間の下へと向かう。
知りえた危険を知らせる為に。
&color(red){【佐藤良美@つよきす 死亡】}
【E-6上部 /1日目 朝】
【土永さん@つよきす-Mighty Heart-】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:左翼には銃創(治療済み)、頭には多数のたんこぶ】
【思考・行動】
基本:最後まで生き残り、祈の元へ帰る
0:我輩は……
1:純一達にあゆの事を伝える。
2:つぐみ達を探し純一達が西に向かった事を教える。
【備考】
※小町つぐみ、高嶺悠人の情報を得ました。
※月宮あゆ(外見のみ)を危険と判断しました。
【今日子のハリセン@永遠のアセリア、破壊】
良美の死体の傍に、所持品が放置されています。
【月宮あゆ@Kanon】
【装備:永遠神剣第七位"献身"、背中と腕がボロボロで血まみれの服】
【所持品:支給品一式x3、コルトM1917の予備弾31、コルトM1917(残り0/6発)、情報を纏めた紙×2、トカレフTT33 0/8+1、ライター】
【状態:良美の言葉に対して恐怖、服と槍に返り血、魔力消費中程度、肉体的疲労中程度、ディーと契約、満腹、首に痣、背中に浅い切り傷、明確な殺意、生への異常な渇望、眠気は皆無】
【思考・行動】
行動方針:他の参加者を利用してでも、生き残る
0:死にたくない
1:ひとまず誰にも見つからない所まで移動する。
2:どこかの集団に紛れ込む
3:可能ならば工場に行く(北上)
【備考】
※契約によって傷は完治。 契約内容はディーの下にたどり着くこと。
※悲劇のきっかけが佐藤良美だと思い込んでいます
※契約によって、あゆが工場にたどり着いた場合、何らかの力が手に入る。
(アブ・カムゥと考えていますが、変えていただいてかまいません)
※ディーとの契約について
契約した人間は、内容を話す、内容に背くことは出来ない、またディーについて話すことも禁止されている。(破ると死)
※あゆの付けていた時計(自動巻き、十時を刻んだまま停止中)はトロッコの側に落ちています。
※目的無しに走っています。 どの方角に向かっているかは次の書き手さんにお任せします。
|191:[[世界で一番長く短い3分間]]|投下順に読む||
|191:[[世界で一番長く短い3分間]]|時系列順に読む|189:[[求めのアセリア/Lost Days(前編) ]]|
|183:[[ファイナル・ミッション/奪う者、奪われる者(後編)]]|&color(red){佐藤良美}||
|183:[[ファイナル・ミッション/奪う者、奪われる者(後編)]]|月宮あゆ||
|185:[[どんなときでも、ひとりじゃない]]|土永さん||
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**終着点~侵されざるもの~ ◆/Vb0OgMDJY
「む……?」
赤い、色?
今しがた視界に入った色に、僅かに意識を向けた。
現在地は良くはわからないが、この辺りに赤い色が見えるようなものは、
……否、この島で赤い色というと心当たりは一つしかない。
だがそれは、このように遠くから見えるようなものでは無い、と考えたところで、漸くそれの正体が理解出来、同時に我輩は手近な木の枝へと降下した。
そうして羽を休めながら、その考えが間違っていないことが確認できた。
「炎……だと?」
この距離でも、僅かに揺らめいて見える赤。
そこから薄く立ち上る黒い煙。
そして、その根元に見え隠れする白い建物。
此処からでは判別出来ないが、何らかの施設、で火事が起こっているのだろう。
そのこと自体は別にどうでもいい。
いや、良くはないが、別段気にかける必要の無い現象だ、少なくとも鳥である自分にとっては。
だが、今この状況でそれが起こると言う事は、必然的にあの場所である事が起きている事を連想させる。
すなわち、殺し合い。
最低でも二人以上の人間が、あの場所で戦っている。
或いは一方的に襲われているという事になる。
「……確かめておく、必要があるな」
この場所は、蟹沢達と別れた地点からそう遠くは無い。
そうなるとあの場所に居る、或いは居た人物が蟹沢達と接触する可能性は、それなりに高い。
いや、それ以前に、炎を目にした蟹沢達が、自らあの施設に向かう可能性だってある。
そして、戦いが起こっている以上、あの場所に居る人間の片方、或いは両方とも、殺し合いに乗っている可能性は高い。
このまま放っておけば、純一や蟹沢が危険に晒される恐れがある。
だが、我輩ならどうか?
我輩の事を参加者だと知っている人間は少ない。
出会ったことの無い相手ならば、恐らく皆無だろう。
だから、我輩がまずあの施設、及びその周辺にいる相手を観察し、その結果を蟹沢達に知らせれば、彼女らの危険はそれだけ減る。
問題があるとするなら、病院へ向かうという当面の目標を変更しなければならない事だが……。
「……病院に向かった者は、手練と聞いている。
まずは、危険度の高い方を優先するべきだな」
病院に向かったメンバーの聞いた範囲の能力と、少し前に別れた蟹沢達の能力。
同じ危険に見舞われたときに、どちらがより危険かは考えるまでも無い。
そして病院と違い、今眼前には明確な危険が存在している。
ならば、そちらを優先するべきだ。
「ふむ、それにいい機会だ。
この機に我輩の有り難さを奴らに、そう、特に蟹沢に思い知らせてやろうではないか」
そう、言葉を残し、進む道を選んだ鳥、土永さんは炎に揺れる施設を目指し、飛び立った。
その言葉の中に秘められた『ある』感情に、彼は気付いていたのだろうか。
『郷愁』
恐らくその表現が最も近しいその感情。
一度は修羅の道を選んだ彼だが、否、だからこそ、その心に秘めた望郷の念は大きなものとなっていた。
それ故、自分と同じ時間、空間を過ごしてきた存在、蟹沢きぬとの再会は、彼の心の中で大きな比重を占めていた。
故に、彼は無意識の範囲で、蟹沢きぬの安全を優先していた。
・・・…その事に大した意味は無い。
ただ、それにより一つの結果が生まれた。
それだけのこと。
訪れる未来を知る術など無い鳥は、ただ、飛んでゆく。
その先に、もう一つの、……悲しい再会がある事など知らずに、ただ、飛んでゆく。
◇ ◇ ◇ ◇
(……信じられる筈が、無いよね)
少しずつ高くなる日差しを受けながら、二人の少女が森の中の開けた場所に座り、何事かを話し合っていた。
ボロボロの衣服を纏い、槍を携えた少女、月宮あゆ。
所々血に染まった巫女服を纏い、謎の気ぐるみを手にしている少女、佐藤良美。
彼女達は、火勢の収まらない農協の施設を離れ、少し南の地点に居た。
談笑しながら情報を交換している、様に見えるが、この2人の関係を知っている人間ならば、とてもそれが真実とは思わないだろう。
言うまでもなく、お互いを知っている少女達がそんなことを信じる筈がなかった。
(死にたくない、っていうのは多分本心だと思うけど、私に含む事が無いなんてことはあり得ない)
かつて、そう、丁度一日前、良美が絶望に突き落とした相手、月宮あゆ。
良美に言わせれば、あきれるほどに考えなしで、役立たずだった少女ではあるが、だからと言って今でもそのままとは限らない。
否、先ほどの行動を見る限り、そのままである筈が、無い。
その彼女は会話を初めて直ぐに『死にたくない』と言い、良美に殺されない為なら協力するとまで言った。
或いは、お互いが一人の時に再会したのであれば、その言葉を信じられたかもしれない。(最も、その場合は持ち物をくれる事に感謝しつつ、適当に捨て駒として利用するのだろうが)
だが、あゆは『死にたくない』と、共にいた仲間から離れ、良美の下へと来た。
これは、役立たずの発想では無い。
以前のあゆならば、何もせずに蹲っているのが関の山だった筈だ。
結果的にその行動が自らの危機を招いていたあたり、考え無しであることには変わりはないようだけど。
(そう……、だけど、間違いなく前に会った時のあゆちゃんとは違うよね)
あの時、瑛理子という少女に向けた酷薄な言葉。
何の躊躇いもなく向けた銃口。
躊躇せずに、瑛理子の命を奪った行動力。
全て、以前のあゆからは考えられないものだ。
それが、良美に警戒を与える。
以前とは違う、唯の無力なだけの少女では無い。
良美を疑いもせず、あっさりと思惑通りに踊ってくれるような相手では、無い。
それどころか、
(気を抜けば、私を殺そうとするかも……
ううん、間違いなく、いつか殺しに来る)
そもそも、殺し合いを肯定する人間同士が手を組んだ場合、行き着く先は一つ、最後にどちらが生き残るかを決める事だ。
簡単に利用出来る『駒』では無く、隙を見せれば襲い掛かってくる可能性のある『敵』
今の彼女は、そう認識しなければならない、危険……な相手だ。
(だからいつか殺さないといけないんだけど、そのいつか、を、いつ、にするかが問題なんだよね。
……正直、今のあゆちゃんとはあんまり一緒に居たくないな)
農協での遭遇時、あゆの言葉は歓迎出来る物だった。
けど、その後の行動を一つ一つ検証してみると、彼女は手を組むべき相手じゃない。
理由があれば、さっきまで一緒にいた人間を簡単に殺す。
かつて手駒にした倉成武と違って、自分が健在な事以外に、襲い掛かって来ない理由が無い。
いや、そもそも健全な状況でも、何もしてこない保障なんて無い。
彼女は良美に恨みを抱いている可能性が高いのだから。
そして非常に不愉快だけど、恐らく今の良美よりも、あゆの方が『強い』
――まず、あゆの話では、生き残りの内、半数近くが徒党を組んでいるらしい。
あゆが実際に会ったのは数人だが、聞いた範囲では10人近い数だとか。
そして、
(そいつらに、私の顔を覚えられているんだよね
しかも、その中に純一君達やことみちゃん、凶暴な方のあゆちゃんは含まれていない……)
つまり、既に良美に利用されてくれるような人間は殆ど残っていない。
いや、それどころか皆無かもしれない。
それに対して、あゆは沙羅以外の相手には危険とは認識されていない。
その沙羅から危険が広まるだろうけど、それでも利用出来る相手は良美よりも圧倒的に多い。
――そう、まず採り得る選択肢の点で、あゆは良美よりも遥かに『強い』。
――次に、あの時あゆが見せた戦闘能力。
(さっきの凄い力は、…・・・あの槍の力だよね)
あゆの手にある槍に視線を向ける。
あゆに高い身体能力を与え、燃え盛る炎を押し返した力。
良美の持つハリセンや、指輪よりも遥かに強大な力を持つ槍。
……どうにかして、手に入れたい槍。
――今の戦闘力の面でも、あゆは恐らく良美よりも『強い』
――そして、あゆは良美の本性を十分に理解している。
これが、最も重要な事柄。
どれだけ強くても、仲間が居ても、皆良美の言葉にコロリと騙されてくれた。
けど、一度騙されたあゆは、易々と良美の言葉に騙されてくれない。
それどころか、当然こちらを騙そうとしてくる。
それに対して、良美は今のあゆについてあまり把握出来ていない。
――互いの情報について、あゆは僅かに良美よりも『強い』
以上の点から考えると、明らかに良美よりもあゆの方が優位に立っている。
あゆがその優位をどこまで認識しているのかはわからないけど、今の良美は立場で言えば、利用される側の存在になってしまっている。
……面白い筈が無い。
何時だって良美は利用する側だった。
利用して、捨ててきた。
あゆだってその一人だ。
なのに、そのあゆに何時捨てられるかと警戒しておかなければいけないなんて。
(なるべく、早く、それもこちらから先に仕掛けるべきだよね)
今すぐにでは無い。
だが、そう遠くない未来、
殺される前に、あゆを殺すことを良美は心に誓った。
■
……上手く、騙せてるかな?
良美さんを恨んでいない、と言ったけど、そんな事は多分信じないよね。
実際に恨んでいる訳だし。
だから、どこまで騙せているかなんだけど、そこは良くわからないや。
ボクとしては、
『恨んでないはずはないけど、死にたくないからそう言っている』
くらいに認識されているのが理想なんだけど。
どうかなぁ。
まあ、今のボクには『力』がある。
その気になれば、今すぐにでも良美さんを殺せるだけの力が。
だから、あんまり焦る必要は無い。
今は、良美さんを利用していればいいんだから。
ただ、全てを知らせる訳にはいかない。
だから、例の紙は渡していない。
あれには少しだけどこの『力』、永遠神剣の事が書いてあるから。
ボクは使う事が出来たけど、ボク自身には特別な使える条件があるとかは思いつけない。
強いて言うならディーさんとの契約だけど、ボクはまだ工場に行っていない。
工場にも永遠神剣があって、それを使える力を貰ったって可能性もあるけど、確認なんて出来ないし。
だから、もしかしたら、良美さんだってこの神剣を使う事が出来るかもしれない。
そう考えると、必要以上の情報は与えられない。
それに、あの着ぐるみの事も少し気になった。
もしかしたら、あれを着て沙羅さん達のグループに潜り込む、なんて事を考えるかもしれない。
その他にも、疑いだすと切りが無い。
だから、疑われない程度の情報だけ口にしておいた。
それで、今は良美さんの情報を聞いている。
……純一君、か。
それなりの人数の集団。
そして、沙羅さん達と同じような目的を持っている。
つまり、利用出来る相手かもしれない。
(良美さんが使えなくなったら、その人達を頼ってみるのもいいかも)
■
あゆちゃんと、情報を交換しながら考える。
私はもうこの島の殆どの人間から危険視されている。
あの着ぐるみを使えばいくらかはマシになるかもしれないけど、あれを使う場合は偽名が必要になる。
ここまで人数が減ってしまうと、かなりの確立で相手の知り合いの名前を言ってしまうかもしれない。
正直、道は険しい。
でも、
(絶対に偽善者達は殺し尽くしてあげないと)
圭一君は死んでしまったけど、まだ沙羅ちゃんは生きている。
美凪さんだって生きている。
他にも、純一君達のような偽善者共はまだまだこの島には沢山居る。
そう、偽善者、今のあゆちゃんや死んでしまった名雪ちゃんを見れば一目瞭然。
口では綺麗事を言いながら、自分の命が危ないとなれば本性を見せる。
そこまで考えてから、ふと気になった。
(そういえば、名雪ちゃんはどうして死んだのかな?
あんな物に乗っていて、死ぬなんて事あり得るの?)
あの時に見たアレは、そもそも人間がどうにか出来るようなものじゃない。
相手を威圧する、重厚なボディ
銃弾をまるで相手にしない、鋼鉄の車体。
普通の列車の速度を維持しながら、小回りの聞く機動性。
どう考えても、生身の人間がどうにか出来る相手ではない。
(それに……)
そもそも、今回の放送で、悠人君と千影ちゃんの名前は呼ばれなかった。
だから、あの後二人は名雪ちゃんから逃げ延びたという事になるんだけど、
(……あの怪我で?)
無理。
どう考えても無理。
一人が犠牲になってもう一人を逃がすのが精々。
でも、現実に二人とも生き残っている。
(そうなると……)
あの二人、だけでは流石に無理だろうから、あの後誰か、それも多分偽善者の部類の人間があの場所にやってきて、そして、そして、考えたくないけど、機関車に乗っていた名雪を殺した。
そういう結論しか出ない。
名雪ちゃんが、あの直後に、或いは上手く逃げ延びた二人を探し回っている間に、失血死やらショック死で死んだ、という可能性もあるけど、それらは否定した。
どちらかと言えばそちらの方が常識的な判断だけど、そんなに都合の良い偶然が訪れる筈が無い。
あの二人にだけそんな偶然が訪れるなんて認めない。
だから、あの機関車を破壊するだけの力は確かに存在している。
それも、自分の敵の側に。
しかも、
(あゆちゃんの話だと、圭一君は病院で死んだ筈、ことりちゃんは私が殺した、そして、千影ちゃんの話からすると、衛っていう子はあの時点で既に死んでいた)
つまり、犠牲者ゼロ。
一人の犠牲も出さずにアレを破壊した。
……思わず震えてしまいそうな程の脅威。
そんなものに、正面から戦いを挑むなんて馬鹿な真似は出来ない。
やはり、後ろからだまし討ちをするしか無いかな。
そうなると……、
「うん、それじゃあこれからの方針を言うね」
■
良美さんの作戦は簡単だった。
まず、大体の居場所が分かっている純一君達と接触する。
この時はボク一人で。
そして、少ししたら着ぐるみを着た良美さんも合流する。
ボクの知り合いとして。
そうすれば、少なくとも一度は名前を間違えられる。
それで、後は沙羅さん達のグループとの対立を煽る。
これだけ。
でも、単純だけどいい作戦かも。
けど同時に、良美さんに都合のいい作戦でもある。
もしその純一君が、先に沙羅さんと遭遇していたら、ボクは危険になる。
良美さんが合流するときも、やっぱりボクが危険に晒されるかもしれない。
ただ、先に合流して、そのままボクが良美さんの危険を訴えるという行動も取れる。
だから、明確に反対する理由も無いんだけど。
「うぐぅ、でも、そんなの汚いよ」
一応、演技として反対はした。
良美さんの油断を誘う為に。
だから、こんな結果は予想して無かった。
「うぐぅ、苦しい……よ」
いきなり、首を絞められるなんて結果は。
■
気が付いたら、あゆちゃんの首を絞めていた。
「うぐぅ、苦しい……よ」
あゆちゃんが何か言ってる。
でも、耳に入らない。
『汚い』
「よしみ、さん、離して、よ」
「……………………ない」
「はな…して……」
「私は汚くなんてないッ!!」
止まらない、
ギリギリと、あゆちゃんの首を絞める。
あゆちゃんは、あろうことか槍から手を離して、両手で私の手を外そうとしている。
しばらくして、あゆちゃんの手から力が抜けてきた。
なので、そこらへんに放り投げた。
ゴホゴホと喉を押さえて咳き込むあゆちゃん。
でも、そんな事は気にせず、槍を拾ってあゆちゃんの顔の横に突き刺した。
「ひぅ…」
「ねえ、あゆちゃん」
勤めて優しい声を掛ける。
あゆを、そして自分自身を刺激しないように。
「何か、勘違いしていない?
私たちには、そんな事言っていられる程の余裕は無いんだよ」
意識的に、その単語に触れないように心掛けながら、話す。
あゆちゃんは、怯えながら私を見ている。
その視線で少し落ち着きを取り戻して、再び声を掛けようとして、
瞬間、視界が反転した。
■
殺される、
殺される、殺される、
殺される、殺される、殺される、
殺される。
ボクの方が強い?
どうにかなる?
そんな考え、一瞬で吹き飛んでしまった。
突き立った槍に目を向ける。
ボクの『力』
あっさりと手放してしまった『力』に
殺される。
ボクは、ボクは、ここで殺される。
良美さんが何か言っているけど、耳に入らない。
殺される、やだ、死にたくない、でも力が無い、だから、殺される、死にたくない、殺される、死にたくない。
死にたくない、殺される、殺されない為には、『力』がいる。
だから、縋った。
すぐ傍にあった『力』に。
■
地面に叩きつけられて、漸く私は投げ飛ばされた事に気が付いた。
息が苦しい。
思わず咳き込んで。
その光景を目にした。
槍を構えて突っ込んでくるあゆちゃんの姿を。
その瞬間、感じた感覚は、熱かった。
「うっ、あああああああ!!」
左肩に槍の先端が刺さって、
違う、
槍が左肩を貫通していた。
「あゆ、…ちゃん!」
とっさに、右手に嵌めた指輪を使って、
何も、起こらなかった。
「え……?」
何で?
何で?
何でこんな時に?
こんな最も大事な時に?
そう、呆けていると、
「ぎ、ああああああ」
再び襲って来る痛み。
力任せに押し込まれる槍による痛み。
「あああああああ!!」
がむしゃらに、右手で殴りつけた。
あゆちゃんは簡単に吹き飛んで、同時に槍も抜けた。
それで尋常じゃない痛みが襲ってきたけど、かまっていられない。
再び、突撃してくるあゆちゃん。
横っ飛びにかわしながら、デイパックに手を突っ込む。
武器を選んでいる時間は無い。
掴んだ物がハリセンであることを確認して、一息付く。
三度、突撃してくるあゆに、ハリセンを叩きつけて、
次の瞬間、右腿を貫かれた。
「ああああああああああああああああ!!」
何で?
電撃は?
見ると、ハリセンは無残に破かれていた。
ふざ、けないで
思わず、毒付いて、
そんな事を考えている場合で無いと考えた瞬間。
右腕を貫かれた。
■
「ハァ、ハァ」
漸く、落ち着いた。
良美さんは、木に寄りかかって座り込んでいる。
両手と右足が、血に染まっている。
やっ、た?
ボクは、自分の力で、良美さんを退けた?
……なんだ。
こんなに簡単だったんだ。
こんなに簡単に、良美さんを倒せたんだ。
あの、良美さんを。
今の良美さんは、もう前とは違う。
ただの、無力な存在。
奪われるだけの人間。
ひどく、気分が良かった。
だから、槍を良美さんの手に突き立てた。
「うあっ!!」
悲鳴を上げた。
「……良美さん、痛いの?」
何も答えない、ただ睨みつけてくる。
でも、その目が何よりも雄弁に語っていた。
だから再び、今度は足に突き立てる。
「あっ…………!!」
再び悲鳴。
それを聞いて、ボクは叫び出した。
そして、槍を突く。
「痛いよね!
苦しいよね!
でも、ボクはもっともっと痛かった!! 苦しかった!!
みんな、みんな良美さんのせいだよ!!」
叫びながら、休まずに足に槍を突きたて続ける。
間違いない。
これは、『憎しみ』
ボクをこんな風にした良美さんへの憎しみ。
それが、ボクの体を突き動かす。
ボクに休む事を許さない。
「ほら!みっともなく泣き喚いて、命乞いしてみなよ!
『死にたくない』って!
もしかした止めてあげるかもしれないよ!!
ボクの時みたいに、あの人が助けてくれるかもしれないよ!!」
そうだ、もっと苦しんで、苦しんで、苦しんでくれないと。
大石さんや、乙女さんの分も。
ボクの絶望の分も。
もっと、もっと。
そう、考えていたら、
「……あはは」
水を差された。
「……あはははははは」
何故?
何故、良美さんは笑っているの?
何故?
何が?
「何が、可笑しいの?」
「あははははははははははは!!」
答えない。
それどころか笑い声は大きくなっていく。
……カンに触る。
「何が!可笑しいのって聞いているんだから!答えなよ!!」
「可笑、しいよ。
だって、あゆちゃん、本気で生き残れるなんて思っているの?」
…………え?
「あゆちゃんごときが、最後まで生き残れるなんて、有り得ないよ。
だって、あゆちゃん、自分から何も出来ていないもの」
何を
「瑛理子さんに狙われた時、
炎に包まれた時、
そしてさっき私が襲った時。
どれも、ただ運が良かっただけだもの」
黙れ
「たまたま、その槍があったから、
たまたま、私にはその槍が使えなかったから。
たまたま、『あの時』あゆちゃんは利用した方が効果的だったから」
「……黙れ」
槍を突く、
でも止まらない。
「あゆちゃんは、ただ運がいいだけだよ。
現実も、状況も、上手く理解せずに、ただ右往左往しているだけ。
『生きたい』っていう理想だけ掲げて、ただ流されているだけの弱者だよ」
「……この、黙れ! 黙れ!!」
「今も、ただ、私が憎いから、そんな理由で短絡的に私を殺そうとしている。
これからどうするのか明確な考えも無しに。」
いくら痛めつけても、良美さんの言葉は止まらない。
「ハァ、ハァ、
……じゃ、じゃあ、じゃあ良美さんはどうなのさ!
そうだよ、そんな事を言っている良美さんは何なの!?
今の良美さんは、その、弱者に、狩られるだけの、無力な、存在でしかないよ!!」
「ええ、けど、私は、選んだ…もの。
自分の、意思で、自分の、…道を、戦…を、
戦かって、抗って、負けたから、私はここにいる。
何もせずに、流れ着いただけの、あゆちゃんとは違う」
「黙れ!黙れ黙れ黙れ!!黙れーーー!!!」
止まらない、
だから、足ではなくて腹
お腹に槍を突き立てる。
「うう、ん、違、わない、…かも、ね、あゆ…ちゃんも、その内、私みたいに、なる」
「黙れ、黙れ、黙れ、黙って、黙ってよ!!」
でも止まらない。
だから何度も何度も突き刺した。
■
しばらくして、良美が反応しなくなった頃、ようやくあゆは手を止めた。
「……これで、何も言えないね」
動かない良美に声を掛ける。
無論、反応は無い。
けれど、気にせずに続ける。
「ボクは、死なないって事、分かってくれた、でしょ」
反応は無い、
未だに胸は僅かに上下しているものの、
今の良美に答える力など無い。
筈だった。
「む…ぃ……だよ」
思わず、あゆは槍を取り落とした。
すぐさま拾い上げて、突きつける。
だが、その手は遠目でもわかるくらいに震えていた。
「ぅ……ぁ……」
あゆが、震えながら口を開こうとしたとき。
「おい! てめー、よっぴーに何してやがるんだ!!」
「えっ!?」
突如、背後から声がした。
(見ら……れた?)
すぐさま振り返るが、人の姿は無い。
だが、
「おい! 純一、この先に危険な奴がいるぞーー!!」
再び、今度は先ほどよりも小さい声。
確実に、この近辺に第三者、それも恐らくは複数が居る。
そう、理解したあゆは、すぐさま声の反対方向に駆け出した。
(見つかるわけにはいかない!!)
全力で、わき目も振らずに駆け出す。
戦うという選択は、取れなかった。
あゆは、恐怖していた。
良美の言葉に。
(死、ぬ?
ボクが?)
拭えぬ恐怖から逃げる為に、わき目も振らず、あゆは逃げ出した。
そして、その場には良美だけが残された。
もはや死を待つのみの人間。
だが、その少し前方に、何かが降り立った。
■
エリーの声がした。
……褒めてくれた。
対馬君の声がした。
……お疲れ様って言ってくれた。
とても、嬉しかった。
うん、痛いのも、苦しいのも、少し薄くなった。
死ぬ間際になって、少し、救われた。
こんな、
こんな、奇跡が与えられるなんて、
「ふざけ…ないで」
信じられる筈が、無かった。
「私にだけ…こんな、都合の、い、い、奇跡…、訪れる筈、無い
エリーを、対馬君を…汚さ…いで、土永…さん」
さっき、あゆちゃんを驚かせた声は、カニっちの物だった。
そして、このタイミングで聞こえる、死んだ二人の声。
そういう事が出来る相手に、心当たりがあった。
「うん、そうだ、よ、エリーも、…馬君も、褒め、て、ゲフッ、ゲフッ…ない。
絶対に、怒…、そうじゃ…きゃ、二人じゃ無い。
…も、怒ら……って、嫌われたって、後、悔なんか、していない」
絶対に、二人と帰るって誓った。
二人が死んで、二人を殺した相手を絶対に殺すって決めた。
他人を欺いて、利用して、捨てて、殺して。
褒められる事なんて一つも無い、蔑まれるだけの行為。
でも、一つも後悔なんてしていない。
何時の選択も、私が決めた、私だけの物だ。
それを、
「鳥……ごと、きの安…ぽい哀れ、みで、ゴホッ、…私を、私の、道を、決意を、穢さないで!!」
叩きつけて、それで、本当に最後が訪れた。
後悔はしていないけど、悔いは残ってる。
でも、私は選んだ道を貫いた。
もし、仮に、次なんてものがあるとしたら、私はまた同じ道を選ぶ。
だから、その道を最後まで貫いた、その事だけを胸に抱こう。
私は、私であり続けた。
その事だけを、誇りに思って、
…………そうして、私の戦いは終わった。
■
叩きつけるような叫びを最後に、良美は動かなくなった。
「……我輩、は」
安っぽい哀れみ。
否定は……出来ない。
助からない傷を見て、せめて安らかな死を迎えられる事を祈っただけだ。
……エリカの死は、我輩の責任であるらしい。
ならば彼女に依存していた、良美の死も我輩の責任に含まれるのだろう。
だから、その罪を償いたいと思ったのかもしれない。
そうして、与えられたのは、拒絶であった。
「我輩……は……」
この殺し合いが初めてで無い事を知り、蟹沢達と共に仕組みを終わらせる道を選んだ。
だが、だからと言って、我輩の罪が消える筈も無い。
一度、殺し合いを肯定した存在に、赦しなど与えられないのかもしれない。
我輩の、偽りの赦しを、良美は拒絶した。
我輩の、償いは、拒絶された。
これが、結果だというのだろうか。
罪は、永遠に、赦されないのだろうか。
我輩に対して、明確な殺意を抱く存在、……智代とかいう名前であったか。
あの者が、我輩を赦す事など、
いや、智代だけでは無い、
我輩が騙してきた人間達が、我輩を赦す事など、有り得ないのかもしれない。
ならば、我輩は、どうすればよいのだろうか?
良美は、赦しなど求めずに、誇りを抱いて死んだ。
だが我輩に、抱ける誇りなどあろう筈が無い。
結局、犯した罪に震え続ける事しか、我輩には赦されないのであろうか?
罪の無い、蟹沢達を危険に晒しながら、生き続ける事しか、出来ないのだろうか?
……答えを見出せぬまま、鳥は飛び立った。
悲しみと、失望、或いは絶望、を齎した再会を経て、仲間の下へと向かう。
知りえた危険を知らせる為に。
&color(red){【佐藤良美@つよきす-Mighty Heart- 死亡】}
【E-6上部 /1日目 朝】
【土永さん@つよきす-Mighty Heart-】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:左翼には銃創(治療済み)、頭には多数のたんこぶ】
【思考・行動】
基本:最後まで生き残り、祈の元へ帰る
0:我輩は……
1:純一達にあゆの事を伝える。
2:つぐみ達を探し純一達が西に向かった事を教える。
【備考】
※小町つぐみ、高嶺悠人の情報を得ました。
※月宮あゆ(外見のみ)を危険と判断しました。
【今日子のハリセン@永遠のアセリア、破壊】
良美の死体の傍に、所持品が放置されています。
【月宮あゆ@Kanon】
【装備:永遠神剣第七位"献身"、背中と腕がボロボロで血まみれの服】
【所持品:支給品一式x3、コルトM1917の予備弾31、コルトM1917(残り0/6発)、情報を纏めた紙×2、トカレフTT33 0/8+1、ライター】
【状態:良美の言葉に対して恐怖、服と槍に返り血、魔力消費中程度、肉体的疲労中程度、ディーと契約、満腹、首に痣、背中に浅い切り傷、明確な殺意、生への異常な渇望、眠気は皆無】
【思考・行動】
行動方針:他の参加者を利用してでも、生き残る
0:死にたくない
1:ひとまず誰にも見つからない所まで移動する。
2:どこかの集団に紛れ込む
3:可能ならば工場に行く(北上)
【備考】
※契約によって傷は完治。 契約内容はディーの下にたどり着くこと。
※悲劇のきっかけが佐藤良美だと思い込んでいます
※契約によって、あゆが工場にたどり着いた場合、何らかの力が手に入る。
(アブ・カムゥと考えていますが、変えていただいてかまいません)
※ディーとの契約について
契約した人間は、内容を話す、内容に背くことは出来ない、またディーについて話すことも禁止されている。(破ると死)
※あゆの付けていた時計(自動巻き、十時を刻んだまま停止中)はトロッコの側に落ちています。
※目的無しに走っています。 どの方角に向かっているかは次の書き手さんにお任せします。
|191:[[世界で一番長く短い3分間]]|投下順に読む|193:[[贖罪/罪人たちと絶対の意志(前編)]]|
|191:[[世界で一番長く短い3分間]]|時系列順に読む|189:[[求めのアセリア/Lost Days(前編) ]]|
|183:[[ファイナル・ミッション/奪う者、奪われる者(後編)]]|&color(red){佐藤良美}||
|183:[[ファイナル・ミッション/奪う者、奪われる者(後編)]]|月宮あゆ|194:[[銀の意志、金の翼]]|
|185:[[どんなときでも、ひとりじゃない]]|土永さん|194:[[銀の意志、金の翼]]|
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