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眠り姫目覚める時――/――皇の策略 - (2007/06/02 (土) 15:32:53) のソース
**眠り姫目覚める時――/――皇の策略 「とにかくこの場から離れなければな……」 仮面の男―――『ハクオロ』は少女―――『神尾観鈴』をお姫様だっこをしつつ思考した。 この放送室から渡り廊下を渡って反対側の館内に行くのは容易なコトだった。 しかし、一抹の不安が残っていたためなかなか行動に移すことが出来なかった。 (反対側に移動しても、結局はあの廊下を渡らなければならない……。それはあの者たちに見つかる可能性が上がってしまう……) しばらく苦悩するが、ハクオロは決断する。 (とにかく今は、向かい側の校舎に向かうのが先決だろう…。そして、彼らに見つからないためには……) ハクオロは少女を持ち直し、階段を上り2階の渡り廊下へと向かう。其処についた時、ハクオロはそこから見える景色にまた頭を抱えることになる。 「これは、いったいどういうことなんだ……」 放送を聞き、駆けつけてきたであろう翡翠色の髪を持った少女と、茶髪色をした青年…。たしかにあの時、二人は対峙していた。しかし、今はどうだろう?――青年のほうには、また新たに二人の少女が傍らに立っており、翡翠の少女はあっけに取られた顔で青年のほうを見ていた。 (気にしている暇はない…今はとにかく脱出を考えるのだ!) ハクオロは自分に言い聞かせ、そくさに廊下を渡りきり、目の前にあった部屋に一時身を隠し、少女を隅に隠させる。そこまで終えるとハクオロはようやく一息つく。 (さて、ここからが本番だな……。いったいどうやってここから抜け出そうか…) ハクオロは目を瞑り思考を開始する。 (あの者たちからできるだけ見つからないようにここから出るためには……そうか!) ピンっとハクオロが閃く。 「あそこ、あそこから出ている階段からなら……!!」 ハクオロの考えている『階段』。それは、この校舎から門のほうへ向け出ている『非常階段』のことだった。 (あそこを通れば、青年たちから死角になることは間違えない。いや、そう上手くいかない可能性もある…) 常に2手、3手読むことを心がけているハクオロだからこそ、慎重になる。様々なパターンを考え、ついに最良と思われる策を見出す。 「やはり、あの娘にも協力してもらわなければならんか……」 ハクオロがつぶやき、ふと少女のほうを見たときだった。 『――――――――!!』 甲高い音がしたのと同時に、自分の皮膚から血が出ているのがわかった。寝ていたはずの少女の手には先程自分が解明した、『名のわからぬ武器』によく似ていたモノが握られていた。 (血…?私は死んでしまう、の、か……) 最後にみた光景は、身体を震わせながらも自分に近寄ってくる少女の姿だった。 ◇ ◇ ◇ 少女が目覚めたところ、そこはどこかの部屋の隅であった。 「アッ……アッ……」 震えそうになる体をどうにか押さえつけ、たぬき寝入りを敢行する。 無力な自分は、こうするしかないと悟った観鈴はただただ嘆いていた。それでも、 (……観鈴ちん、ピンチ!) なんて思ってられる程、精神が回復できていたのは、観鈴にとって不幸中の幸いであった。 仮面の男に気付かれないように、自分のバックの中身を探る。手の感触から、おはぎのパック以外のものを探す。底の方に手を伸ばすと、何か冷たい金属が手に触れた。 (なんでこんなものがはいってるかなぁ……) 底から持ってきたソレは―――通称『Mk.22』と呼ばれる、消音効果の高い銃であった。 手にしてみてわかる、確かな重み。引き金をひけば、仮面の男は死んでしまうだろう…。 (でも、でも……!!) 一介の女子高生である観鈴にそんなことが出来るはずなかった。現に小刻みに手は震えている以外は、最初の格好となんら変わっていない。しかし、 『…………ならんか』 男が何かつぶやき、ふいにこちらを見たときに、観鈴の精神は一瞬にして崩壊した。張り詰めていた緊張が一気に解き放たれる。―――思考よりもさきに手が動く。 そして、自分が気付いた時には、仮面の男が血を流し倒れているところだった……。 その光景に、ハッとする。泣き出しそうになるのをこらえて、仮面の男に駆け足で近寄る。 「大丈夫ですか…?!」 男の傷は頬にしかなかった。それでも自分は撃ってしまったのだ。拭いきれない後悔が観鈴を襲う。身体を揺すってみるが、男の反応は無く、観鈴を不安にさせた。 「うっ…うっ…往人さん……」 自分ではもうどうしようもなくなり、ここにはいない、自分のもっとも信頼できる人物に助けを求める。 観鈴はただ、気絶しているのか死んでいるのかわからない仮面の男に泣きすがるしかなかった。 ◆ ◆ ◆ 「ハクオロさーん、ハクオロさーん!!」 どこかで聞いたことのある馴染みの声が聞こえてくる。 最初は誰かわからなかったが、特徴のある声に声の主に気付き、返答する。 「ん? どうしたんだい、エルルゥ?」 自分の大切な家族で、いつも自分のことを気遣ってくれた優しい娘『エルルゥ』。会うのはいつ以来だっただろう…。 実際に離れていた時間は数時間でしかなかったが、今はそれが、何日にも感じた。そんな風に思っている時にエルルゥが言葉を発する。 「今のハクオロさんの状況をどうにかしないと、大変なことになりますよ?」 今の状況といえば、女の子と一緒に放送室にいて確かそれから……と記憶を巡らせる。 そして、思い当たる節がないので、エルルゥに聞くことにした。 「エルルゥ……それはどういうことなんだ?」 「それは…内緒です♪」 返答時間はわずか0.2秒。最初から自分が聞くことをわかっていたかのような反応だった。 「いや、そんな可愛らしく言われても困るんだがな……」 可笑しそうに笑う彼女を見て、ハクオロは頭を抱え呟いた。 「とにかく頑張ってください、ハクオロさん。約束なんですから……」 突然、スッ――と表情が硬くなり、その声はいつもより低くなっていた。 その様子に不審を抱くが、エルルゥの横からヒョイっと現れた『彼女』によって思考を止められてしまう。 「主さま、簡単に死んでしまったら許さないですわよ?」 髪を1つに束ねた美女『カルラ』。彼女に会うのも、久しく感じられた…。 「カルラ……お前もいたのか」 「えぇ……不本意ながら。それでもこっちでエルルゥさんと楽しくやってますわ」 楽しくということは酒を飲みまくっているのだろうと、苦笑いする。 「ちなみにこっちって、どっちのことなんだ?」 「それは、秘密ですわ。だけど、いずれ主も気付くことになるでしょう…」 カルラは微笑して答える。ちなみに返答時間はこれまた同じく、0.2秒。 彼女たちは私のことを見抜いているということに改めて気付かせられる。 (やれやれ…心を見透かされるとは皇失格だな…) と、自分をたしなめる最中に、自分を見つめる1つの視線に気付く。 凛としたその目の持ち主、カルラは先程から何も言わず自分のことをずっと見ていた。 「カルラ……」 吸い込まれそうな瞳に思わず彼女の名前を呼んでしまう。彼女は何か言いたそうにしていた。言いたくて、言いたくて、でも言えなくて――――。 そんな彼女の思考が手に取るようにわかった。どれくらい時がたっただろうか。このまま時がすぎないのも悪くない、そう思った時だった。 「ハクオロさーん!! ちょっと私のこと忘れてませんか~?」 しまった、と思ったときにはもう遅かった。エルルゥの顔は喜怒哀楽で言えば、『怒』。 しかも、髪は逆立ち、後ろにはメラメラと燃えるオーラ付きだ。 「すっすまない、エルルゥ」 すぐさま謝るが、エルルゥは頬を膨らませ、そっぽを向いている。 カルラに助けを請おうとするが、カルラはクスクスと面白そうに笑って見ているだけだった。 ……その後謝り続けた結果、やっと機嫌が直ったのか、エルルゥはこちらに向き直り、しゃべり始める。 「ふんっ、もういいですよ…。とにかくハクオロさんは頑張らなきゃだめですよ? 私たちの家族として、そしてトゥスクルの皇として……」 穏やかな声。いつ聞いても安心できるその声はハクオロの心に染み渡った。 「わかっているさ……」 「安心しました…」 ホッと、胸を撫で下ろすエルルゥ。この子には心配をかけっぱなしだと、自分を咎めていたが、背後で『ドスン』という音が地面に鳴り響きハクオロはハッと振り返る。 「では主さま……あなたはもうすぐ起きますが、今私たちにあった記憶だけ消し去ってもらいますわ」 鉄塊にも見えるその剣をいとも簡単に振り回しながら、カルラは近づいてくる。カルラに気をとられていたが、よく見るとエルルウは鋭利な金属を片手に装備している。 「どうしてそんなことをするんだ…っておい、カルラ!! 剣を振るのをやめろ! それにエルルゥ、その危なっかしい金属は何だ!? 今すぐ捨てるんだ!」 怒気を含ませながら言うが、確実に彼女たちは近づいてくる。 「さようなら主さま……。できることならもう2度と会いたくありませんわ……」 カルラが別れの言葉を捧げつつ、その剣を頭上めがけて振り落とす。 「さようならハクオロさん。ずっとずっと大好きですから……」 一方、エルルゥは持っていた鋭利な金属を全身に向かって投げつけようとしている。 「止めろ、止めるんだ……!!!」 ハクオロは尻餅をつきながらも逃げようとするが、彼女達の攻撃のほうが早かった。カルラの剣は確実にハクオロの頭上に当たり、エルルゥの金属は全身に刺さっていた。 「ああぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」 絶叫しつつ、目の前が真っ暗になるのを感じた……。 ◇ ◇ ◇ 『ごめんなさい…ごめんなさい……』 (ん…ここは…?) 目覚めると、少女が私の上で泣きついているのがわかった。 ハクオロは話すために彼女に呼びかけた。 「すまないが、少しそこからどいてくれないか?」 私の声に驚いたのか、少女がパッとその場からどき部屋の隅で私のことを見つめていた。そしてすぐに、 「ごめんなさい、ごめんなさい…」 と、まるでそれしか知らないオウムのようにひたすら謝り続ける。 必死に謝っている様子から察するに、この少女は自分を気絶させたのだろう、と思う。 (しかし、いったいどうやって…?) ただの少女にどんな力が…、と思考するが、少女の手にある『武器』を見て納得する。 「そうか、これで私を…」 ポツリと呟いたのに少女は反応する。 「すいません、私が銃であなたを撃ってしまったから……」 少女は、まだ隅で怯えながら話す。 (銃…これは銃というのか……) 初めて聞く名前をあの黒い塊とリンクさせる。 「そうか……。少女の力でも人を殺せる武器なんだな」 ハクオロの言葉に少女はキョトンとする。 「銃を知らないんですか……?」 初めて少女からの質問。やっと、落ち着いてくれたと心底ホッとする。 「あぁ……私の国にはこんな武器はなかったからな」 「どこから来たんですか…?」 「トゥスクルというところからだ。私の名はハクオロ、そこの皇だ」 「王様!? すごいっ……」 少女は口に手を当てて絶句しているようだが、目は輝いていた。 「お前の名はなんと言うんだ?」 「神尾観鈴です」 「観鈴…いい名前だ」 「が、がお……」 ハクオロの褒め言葉に観鈴は奇怪な言葉を発し、紅潮する。 「観鈴…君はこのゲームに乗っていない。そうだな?」 ハクオロは念のため確認しておく。 「はい…だからみんなに呼びかけてやめてもらおうと…」 ハクオロは観鈴のことを本当に純真な子だと思った。その純真さ故、危険に晒されていることに気付いてないだけだと。 「なら、結果から言おう。君の呼びかけにこたえたのは、少なくとも私を含め5人。残る2人はこの学校内にいるが、まだ素性が判明していない」 観鈴は黙ってハクオロの話を聞いている。 「私は、ここからの脱出を一番に考えている。だが、正直彼らに見つかることなく逃げ切るのは難しい。そこでだ、観鈴。君の協力が必要になる。やってくれるか?」 ここで断られたら、脱出案はすべて破棄。もう一度考えることになるんだがな…と思考するが、 「私は、ハクオロさんにすべてを任せます」 と、いう観鈴の返答に満足し、ハクオロは行動に移す。 観鈴の傍にあったマイクに目をむける。スピーカーの音量を最小限にとどめ、尚且つ設定を『校内放送』へと変える。これならば、外へ放送が漏れる音は最小限にとどまるだろう。 そして最後に、観鈴に言って欲しい最大のキーワードを彼女に教える。 観鈴は驚愕の顔をするが、「すごい!」と言いながら興奮していた。そんな様子を微笑ましく思いつつ、ハクオロは作戦を決行する。 「観鈴…はじめるぞ!」 「はい、ハクオロさん!」 目に力を込めて観鈴は返答する。それを確認したハクオロは、スピーカーをONにした――――。 ◇ ◆ ◇ 仮面の人が起きたとき、私は正直、戸惑っていました。 今考えてみると、私はこの人に何もされてないのに、私はあの人を発砲してしまった…。 (が、がお……) どうしようもない虚しさが、観鈴の胸を締め付ける。それでも、そんな自分を許してくれたあの人を観鈴は信じようと決めた。 (――――だから、私はあの人に名乗った。『私は神尾観鈴です』、と……) 名前を呼ぶことは、相手のことを認識した証。 (往人さんの時もいっぱい時間がかかったけど、仲良くなれた。だからハクオロさんとも…) 単純な考えかもしれない。幼稚だと笑われるかもしれない。でも観鈴にとってそれは唯一無二な答えであった。 簡単な互いの自己紹介の後、ハクオロと共に行動することを決めた観鈴は、彼の行動の手伝い――マイクの準備や、部屋の掃除をすることに決めた。 誰でも出来ることだが今の観鈴は十二分に満足していた。様々な準備が整い、ハクオロからキーワードを教えられる。 (えっ!? でもそれって……) と、混乱してしまうがハクオロの狙いに気付き興奮する。でもそんな興奮もつかの間、ハクオロの合図と共にスピーカーがONになり放送が開始された―――。 ◆ ◇ ◆ 『あーぁー。聞こえているか? 私の名はハクオロ。ここにいた少女、神尾観鈴は私が保護した』 校内に十分響く音量かつ、校外にはあまり漏れない音量。ここらへんは流石ハクオロといったところか。 そこまで言うと、観鈴が横から割ってはいる。 『私は大丈夫です。ですから、私の声に反応してくれた方たち、どうか争いをやめて下さい』 観鈴の切実な声がスピーカーを通して響く。 『この通りだ。私たちはお前たちと話し合う機会を求めている。私に賛同してくれるならば、一度、この部屋に集まって欲しい。時刻は3:30まで。それ以降は待たない』 『あ…放送室のことです!』 ハクオロの説明不足を観鈴が補う。 そして、最後に、 『願わくば、お前たちが私と違う道を歩んでいないといいんだがな…』 とポツリと呟き、放送がブツンと切れた―――――。 ◇ ◇ ◇ ハクオロは観鈴の手を引き、廊下の隅にある扉に向けて走っていた。 扉を開くと目の前に現れる『非常階段』。その階段を一気に下り地面を駆ける。今聞こえる音は、自分たちの足音のみ。――――つまり、作戦は成功したのだ。 「ハクオロさん、あんな嘘ついてよかったんですか?」 息を切らしながら、観鈴はハクオロに質問する。 「構わないさ。嘘も方便というだろう」 にっこり笑いハクオロは観鈴に返答する。 ハクオロのついた嘘は2つ。1つは観鈴に放送中、わざと『放送室』にいるように言ってもらうこと。実際にハクオロたちがいた場所は『講師室』である。そこのマイクを使って放送をしていたのだ。 もう1つは、「3:30まで放送室で待つ」ということ。そもそも敵か味方かいまだに怪しい者を信用する気は初めからハクオロにはなかった。 仮に、あの場にいた青年たちがゲームに乗っていたとする。そうすれば、自分たちを殺しに放送室へと向かってくるであろう。 その隙をついて、この場所から脱出をすれば3階にいる人と2階にいるもの、どちらがより早く校門につくかは小学生でも計算できるだろう。 「ハクオロさん、校門です!!」 観鈴が興奮したように話す。 「あぁ! さぁ、ここから脱出して仲間を探すぞ!」 ハクオロもそれに元気よく答える。二人で同時に校門を抜け、そのまま朝日の照らす森の中へと突き進む。そしてしばらく歩んだ所の森の木陰で休むことにした。 「ハクオロさん、ぶいっ!」 嬉しそうに観鈴がピースをしてくる。 「ははは……こうか?」 ハクオロも微笑みながら返した。 ―――照らしこむ月光が二人を包み、夜独特の柔らかな空気が流れ込む。時刻は3:00。 まだまだゲームは始まったばかり……。 【D-5 森の中/1日目 黎明】 【ハクオロ@うたわれるもの】 【装備:オボロの刀(×2)@うたわれるもの】 【所持品:支給品一式(他ランダムアイテム不明)、S&W M60 チーフスペシャル(.357マグナム弾5/5)】 【状態:健康・休憩中】 【思考・行動】 基本:ゲームには乗らない 1・観鈴とこれからのことを話し合う。 2・エルルゥ、アルルゥをなんとしてでも見つけ出して保護する 3・仲間や同志と合流しタカノたちを倒す 4・観鈴を守る。 【備考】 ※校舎の屋上から周辺の地形を把握済み ※中庭にいた青年(双葉恋太郎)と翠髪の少女(時雨亜沙)が観鈴を狙ってやってきたマーダーかもしれないと思っています。 ※放送は学校内にのみ響きました。 ※銃についてすこし知りました。 【神尾観鈴@AIR】 【装備:Mk.22(7/8)】 【所持品:支給品一式、おはぎ@ひぐらしのなく頃に(残り3つ)、Mk.22(7/8)・予備マガジン(40/40)】 【状態:健康・放送中】 【思考・行動】 基本:ゲームには乗らない 1・ハクオロと行動する。 2・往人と合流したい 【備考】 ※校舎内の施設を把握済み prev:[[二度と触れ得ぬキョウキノサクラ]] next:[[]]