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短編・ごっこ遊び

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
・ネタが非常に沢山ちりばめられています。本筋を見失うほどに。
・ネタにアレルギーをお持ちの方は医師にご相談の上適量を服用してください。
・小説もどきの文体です。かぎかっこの前に男とか女とかついてません。
・男と女に名前がありません。でも吾輩は猫じゃないんですよぅ。
・ネコとシベリアさんと孝二君は出てきません。
・それでも読んで下さる心やさしい方は素敵ですね。


 眼が覚めると朝だった。
 昨夜かけておいた目覚ましよりも先に起きた。
 寝坊なんかしたら目も当てられないので、これくらいがちょうどいい。
 眠気はないし体も軽い。
 一日の始まりとしては幸先がいい。

 そのまま気分よく学校に向かう。徒歩二十分程度だから朝の散歩がわりにちょうどいい。
 毎日見ている変わり映えのない通学路の風景も、目覚め次第でなかなか爽やかに見えるから不思議だ。
 夏だから日差しはそれなりに強いけれど、それも苦にならないくらいに、今朝はとても気分がいい。
 うっかりすると陽気にデスメタルでも口ずさんでしまいそうだったけれど、人目もあるし自制する。
 そんないい気分で歩いていると、目の前の十字路から人影が現れた。
 うちの高校の女子の制服を着ている。
 彼女も学校に向かっているのだろう、僕の場所からは横顔しか見えなかった。けれど、それでも綺麗な

顔立ちをしているくらいは分かる。
 艶々とした奇麗な黒く長い髪、夏服の袖から覗く腕は磁器のように白く細い。スカートからのびる足も

同様に病的なまでに白く、それでいて女性的な脚線をしていた。特にふくらはぎから足首にかけてのライ

ンがゲフンゲフン

「おや、珍しい。早いね。それはそうと今朝は随分といい天気だと思わないかな」

 邪な視線を感じたのか、前を歩いていた女性がこちらを向いて挨拶をしてきた。どこかで見たことある

と思ったら、やっぱり同じクラスの人だった。
 ある意味で非常に有名な。
 色白で美人なことは間違いないんだけど、死んだ魚の目をしていることで有名な彼女。
 突然授業中に生米をスナック菓子の如く食べ始めたり、教室の隅に炊飯器を置いてご飯を炊いてみたり

、クラスメイトに味噌を塗りたくってみたり。
 奇行を挙げればきりがないほど有名な彼女。

「おはよう。うん。いい天気だね。元気?」
「うん。体調は非常によろしいよ。ところで元気といえば、これは昔、元の国の気勢が盛んだったところ

から生まれた言葉だと知っていたかな? 日本語とは日常のあいさつ一つとってみてもなかなかに魅力的

じゃないか。嘘だけど」

 本人の申告がなければ信じてしまいそうなほどに滑らかに出鱈目を言われても、僕としては反応のしよ

うがない。
 その儚げな外見と行動、言動とのギャップがある種の魅力ではある。
 透き通るくらい肌が白いからてっきりインドア派かと思いきや案外アクティブで、この前はクローズラ

イン・フロム・ヘルを出会い頭にかまされた。
 死んだおばあちゃんが「まだ早いから帰りなさい」と言ってくれなかったら、六文銭を払わなければい

けないところだった。渡し賃の相場も変わってるだろうけど。
 とか頭の中で考えながら、体の方はしっかりと迎撃姿勢を取っている。今ならスピアーでも耐えられる

かもしれない。
 ごめん嘘。

「何を身構えているの? もうウエスタンラリアートはしないから心配しなくてもいいよ。ちょっとした

出来心だったんだけど」

 出来心でいちいち三途の川まで行かされてはかなわない。
 赤い髪で鎌を持ったさぼり癖のある死神がいるんなら、ちょっと行ってみたくもあるけれど。
 それにしても、あれはウエスタンラリアートだったのか。
 僕の目にはスタン・ハンセンじゃなくてJBLが降りてきてたように見えたんだけど、気のせいだった

らしい。

「賽の河原で石積みは嫌だよ」
「なら賽の河原で稲作でもしたらいい。実りの時期になると鬼が全部持って行くんだ」
「なんてことを。それを持っていかれては飢え死にしてしまいます」
「もう死んでるけど」
「じゃあいいや」
「諦めが人を殺す」
「もう死んでるんでしょ」
「さて、今回の君の任務だが」

 前後の脈絡を無視して唐突に話題を切り出す彼女。相変わらず瞳は濁っている。

「意思の疎通って知ってる?」
「私は天然キャラじゃないから」
「じゃあ会話しようよ」
「会話って何さ」

 そういいながら例の目で僕を見る。いや、睨むといってもいいくらいだ。
 その瞳に迫力はないけれど、眼つきだけは悪い。
 半眼ジト目で、まるで視力検査のときみたいに眉間にしわを寄せている。
 しばらく彼女はそのままだったけど、やがていつもの生気のない表情に戻る。

「いや、冗談だよ。つまらない冗談だ。すまなかった」
「いや、謝られても正直困るというか……」
「さて、今回の君の任務だが」
「え?」
「任務」

 任務? 
 僕は別にゼロシステムとか自爆とかには縁がないし無口無愛想無表情でもないんだけど。

「任務って?」
「任務。それと、今時ガンダムWネタは年がばれるよ」
「さらっと人の頭の中を読まないでよ」
「で、任務の内容だけど、今日一日私と恋人っぽいことをしてほしい」

「はい?」

 落ち着け。クールになれM原……って誰だよ。
 だめだ。よし、素数を数えたいけど思い出せないから円周率を唱えよう。
 3
 ゆとり教育ちくしょう!! つまりガッデム!! ていうかダム!! 

「いや、正確にはほぼ3だな。決して3ではない」
「ほぼ3なんだ」

 保母さん。プククク

「保母さんとか思ったB.B.Jokerな君は負け組」
「だから人の頭の中を読まないでって」
「声に出してしまっているとは考えないの?」
「マジで!? 出てた!?」 

 ああ恥ずかしい。穴があったら入りたい。ところがスコップを持ってない。
 べつに人を殺して埋めるわけじゃないんだからスコップくらい持っててもいいもんだろうに。本当に、

なんて僕は気の利かない人間だ!
 って、自分を罵倒している場合じゃなくて。

「しかしほぼ3というのもおかしな数値だと思わないかな。それでは2の二乗根がルート2だと言ってい

るのと大差ないんだけど」
「2の二乗根はルート2でしょ」
「いや、2の二乗根の値は1,41421356……であって断じてルート2などではありはしないんだよ。こんな

のは便宜的につけられた記号にすぎない」
「じゃあ円周率だってπじゃないんだね」
「そうなんだけど、そんな与太話はどうでもいい。落ち着いた?」
「ああ、……うん」

 相変わらず濁った瞳で、それでも魅力的に見えるのは何故だろう。
 そんな彼女と、僕が、その……。こ、恋人の真似事だなんて。
 大体、彼女と僕が並んで歩いたところで、周囲からどう思われるかなんて。
 恋人同士無理だ。
 そんな具合に改行どころか句点すら入らないことは確実なのに。
 一体何を考えているんだろう。
 というか、恋人っぽいことって具体的に何をどうすればいいのかなんてわからないし。
 そもそもなんで僕に……。
 ……。
 そうか、今日は僕を除く全世界的に臨時のエイプリルフールなんだ。
 そうに違いない。
 そういえばエイプリルフールって午前中だけっていう嘘があるみたいだけど本当なんだろうか。

「その嘘は本当」
「本当? ってことは本当に嘘ってこと?」
「いや、嘘ということが嘘で、本当に午前中だけ」
「へぇ」
「もはや独り言に関しての言及もなし?」
「ああ、いや、うん。で、僕は何をすればいいの?」

 その質問に、彼女は不思議そうに首をかしげる。
 いやいやようm……さっきからなんか電波が混線してる。
 待て待て。
 そうだ。
 いやいや、なぜそこで不思議そうな顔をしていらっしゃるんでせう。

「何が?」

 あまつさえ“何が?”ときましたか。

「いや、その任務とか言うの。具体的には何をすればいいの?」
「今日一日私と恋人っぽいことをしてほしい」
「それは聞いた。なんで相手が僕かはあとで聞く。で、具体的には?」
「恋人っぽいことの具体的な内容は……なんだろうね。とりあえず、恋人っぽく学校まで行こうか」

 そういって彼女は歩き出す。
 死んだ魚の目をしているから姿勢もよくないと思われがちだけど、意外に彼女はしゃんとしている。
 といっても、姿勢正しいというほどに肩肘の張ったものではなくて、実に自然体の姿勢で。
 どこにも見苦しいところなんかない。
 そんなことを思いながらぼーっとみとれていたら、左手を引っ張られた。

「恋人っぽく学校に行くのだから、そんなに離れて歩くこともないよね」
「あ、そうだね」
「それに、私は今から余裕で学校につけるほど足が速くない」
「え?」

 言われて左手首に目をやると、腕時計の針はけっこうやばい時間を指している。

「まったく。マイペースなのは美点だと思うけれど、暢気なのとは別だよ?」
「どっちがさ。とりあえず、急ごう」

 あわてて歩き出す。彼女はそんな僕に引っ張られる形になったけど、左手を離そうとはしなかった。


               以上、【今のはメラゾーマではない】素直シュール【エアクッションだ

!】  投下分


 三行で分からない前回のあらすじ
 ・朝起きたら朝だった。
 ・円周率はほぼ3だった。
 ・エイプリルフールは午前中だけ。


 遅刻はしなかったけど、学校でも指折りの有名人と手をつないで登校するってことは高校生としてなか

なか目立つもので。
 でも、彼女の場合はその有名さのベクトルが一般的な女子生徒のものとは明らかに違っていた。
 まあ、具体的には先の奇行をご覧あれといったところで。
 周囲の視線は単純に羨望だけではなく。憐憫がいい感じの割合で混じっている。
 腕のいいバーテンダーみたいな見事な比率だ。
 僕は未成年なので生憎とそういうカクテルは飲んだことがないんだけど。

「さて、『今日一日、恋人っぽいことをする』と君は約束してくれてわけだけれど」
「うん。きっと何か血迷ったんだと思うよ。もしかしたら早朝の爽やかな空気に脳がやられてたのかもし

れないし」
「早朝というにはあまりに日が昇りすぎていたと思うんだけど。まあ、君がそう言うならそうなんだろう


「だから、今朝僕と手を繋いで登校してきたのはきっと君の気紛れなんでしょう?」
「気紛れ? なかなか面白い言葉を使うじゃないか。ま、そうじゃないという保証は誰にもできないんだ

ろうと思うけれど」
「えっと、気に障ったならごめん。でも、ほら。なんで恋人っぽい行動をする相手が僕なのさ」
「ん? ああ、そこは言わないと伝わらないのか。というか、恋人っぽい行動をすると言ったのを承諾し

た時点で意図が伝わっていると思われて当然だろ。常考」
「それ別ジャンルの人」
「ん?」
「ああ、ごめん。混線した」
「そう」
「いや、君みたいに、その、魅力的な人が、なんでそういう……任務? をするのかって言うのがまだよ

く分からないんだけど」
「任務を遂行するのは君だろう?」
「ああ、確かにそう言ってたけど、そうじゃなくて……。何で相手が僕なのさ」

 そう。わけが分からない。
 彼女は確かに仲のいいクラスメイトだ。
 時々こういう思いつきに人を巻き込んでは楽しそうにしている。
 もっとも、表面上は一切の変化がない。
 だから、この感想もきっと喜んでるんだろう程度のものでしかないんだけど。

「じゃあ逆に聞こう。といってもこんなことをしたら吉良吉影あたりに怒られるかもしれないが」
「吉良吉影?」
「なんでもない。妄言だ」
「そう?」
「そう。気を取り直して。では聞こう。何で相手が君ではいけない?」
「え?」
「だから、何故君が相手ではいけない?」

 なんだか頭の中で、ドドドドドとかいう効果音付きで「質問に質問で返すんじゃあない」とか言ってる

殺人鬼が見えたけど、気のせいにしたい。

「爪はとってあるの?」
「いや、残念ながら」

 明らかに話が脱線しているけど、彼女も僕も元に戻そうとしない。
 そうだ。これはチャンス。
 どうにか体勢を立て直そう。

 えっと、目の前の彼女を消極的に倒すには……。
 って、倒しちゃ駄目だって。消極的ってなんですか。

「うー」
「ぱty……はっ! また独り言を」
「ベタすぎてネタとしての成立しているのかすら定かではないな」
「ごめんなさい」
「まあ、とりあえずは恋人らしく席につこうか」

 見れば、周囲の人たちはぞろぞろと各々自分の席に着き始めている。
 彼女も通学カバンからノートを取り出して机にしまっている。
 ちらりと僕の方を向くと、目尻を少し下げた。
 それは、恋人というよりも慈母のものに近いような。
 不覚にも、少しだけ安らいでしまった。
 他人の顔に味噌塗りたくるような人なのに。
 それにしても、あれは恋人の眼差しじゃないとか思ったところで。
 じゃあどんなのが恋人同士の眼差しかと問われると返答に窮するわけだけど。
 分からないければ人に聞く。

「恋人らしく席につくって……」
「ちったぁ自分で考えろ」

 ひぃ。
 サルアを彷彿とさせるような口調で言い返される。
 ガラスの剣でも持っていたりするのだろうか。

「というか、もしかして今日一日僕のする行動に全部“恋人らしく”っていう枕がつくってことなの……

?」

 ……成程、コイツぁきつい任務だぜ。
 だって、「彼女いない歴=年齢」のこの僕に向かって“恋人らしく”なんて。
 無い袖は振れない。
 無い胸は揺れない。

「何か失礼なことを考えなかった?」

 女性の胸部にきっと存在するはずのふくらみがあるべき場所に視線を向けると、彼女は濁った目を多少

細めてそう尋ねた。

 すいません恐いですごめんなさい。

 別に言外に胸がないとかぺったんことか洗濯板とかそういうことを言いたいわけじゃなかったんです。
 えぐれてるとか言ったらきっと彼女は胸に五本線のある服を着ていたりするわけで。
 左手を切り落とされたくはないのでそういう展開は勘弁してほしいです。ていうかこのネタはきっと通

じないんだろうなぁ。
 むしろ胸なんて飾りです。偉い人にはそれが以下略。
 そうではなくて。
 脚。
 脚こそすべてです。その美しい脚線は見る者を引きつけて已みません。
 陶磁器のような白く滑らかな肌。
 フトモモから膝にかけての魅惑的なライン。
 ふくらはぎで一度ふくらみ足首にかけてきゅっと締まっていく様など無形重要文化財ものです。
 あの細い足首。ファティ○みたいに綺麗な脚はそうそうお目にかかれるもんじゃないです。
 そのおみ足ならば、跪いて舐めることも厭いません。
 寧ろ舐めさせて下さい。

 妄想暴走絶好調だ。ひゃっほう!!
 ……。
 あー。
 ……。
 自傷行為一歩手前レベルの自己嫌悪。

「怪物王女?」
「イエナンデモ!?」

 能登かわいいですわ能登。
 頭の中で例の曲が再生され始めたけど、どうしようもない。
 だって脳内無意識全自動役立たずジュークボックスは、好むと好まざるとにかかわらずその場面に適し

た音楽をかける。
 EDのスタッフロールまで流れ始めた。
 あー、チェーンソーほしー。嘘だけど。
 やっぱりセーラー服からのびる脚はえろいな。
 とか、まあ、心に浮かぶ由無し事をそこはかとなく書きつくれば。
 あやしうこそものぐるほしくもなるわけがなくて。
 それは立派な電波さん。ゆんゆん。
 いやいやいやいや。
 そんな事はそれこそどうでもいい事であってですね!?
 いや、よくないんだけど今はとりあえず保留で、今一体何が問題なんだっけ?
 ……
 ……?
  あれれー?
 (・3・)アルェー?

 考えても答えが出ないどころか、考えるほどに深みにはまりそう。
 しょうがないから席につく。
 隣の席には彼女がいる。
 何度席替えしても。
 後ろの席じゃなくてよかった。
 後ろの席だったらDQNさん?
 いやいや、そうとは限らない。
 後ろから見つめるのは主にツンデレさんに似合いなことであって。
 それと対極を素直なんとかさんはやっぱり隣に座っているのが似合いかもしれない。
 だって、何度席替えしても後ろにいるツンデレさんなんてそれはつまり≪禁則事項≫なわけで。
 そっちの方向に奇天烈な日常はちょっと……。
 キテレツなんかいらないナリ。
 そして「ツンデレの対極が素直クールで、素直シュ(ry」とか考え出すと連鎖で金髪おでこ巨乳な少女

が出てきそうだから、それ以上は考えるのをやめる。
 危ない危ない。考えるのをやめても宇宙に漂ってるわけじゃない。
 うん。何言ってんだろう。
 そして担任の先生が入ってきて、転校生の紹介。
 なんて展開があるわけなく、朝のHRが始まる。
 今朝の目覚めはよかったのにな~。
 隣を見ると、彼女は米粒に毛筆で三十一文字を書こうとしていた。
 んー。
 んー。
 んー。
 三秒考えてみたけど、彼女には勝てる気がしない。
 頭に浮かぶことといえば、「みそひともじ」って孝二くんみたいな感じなのだろうか、とか。
 みそ違いですが何か?
 僕は誰に向かってしゃべってるんだ。
 自分に向ってですよ。ええ。黄色い救急車はやめてください。
 こんな具合に思考がばらばらに飛躍するから、僕はきっと考え事には向かないんだろうなーとか考える


 考え事に向かないと考える、ってなんか面白い。
 でも、結局下手の考え休むに似たり。
 隣の彼女に時々意識を奪われながら、大人しく授業を受けることにした。
 うん。下手の考え休むに似たり。


                以上、【三度目の正直】素直シュール【二度あることは三度ある】 

投下分


 読んでも分からない三行あらすじ
 ・いろ
 ・いろ
 ・あった


 魔道書のごとき文字の連なりを眺めつつ、嘆息する。
 なんて書くとちょっとかっこいい気がするけれど、つまりそれって日常言語に翻訳するとこういうこと

だったりする。

 授業中必死に睡魔と闘ってたからノートの字が汚くて読めない。

 ノートには1=0とか書いてあるし。
 もうね、馬鹿かと。
 小一時間問い詰められても仕方ないねと。
 そこでふと隣を見る。
 彼女はその奇行と共に成績優秀なことでも有名だ。
 曰く「その構造を支配する法則さえ受け入れてしまえば、難しいことなどほとんどない」とのことだけ

ど。
 生憎僕はそんなこと言われても日本語で頼むとしか言えない程度の知力なのです。
 つまり、きっと彼女から的確なアドバイスを貰っても、それがアドバイスだと気付かないような。
 まあ、とりあえずノート写さして貰おう。

「ごめん。さっきの時間のノート写させてくれない?」
「ああ、別にかまわないよ。ただ、きっとその字は読めないけど」
「またまた」

 言いながら、ノートを受け取る。
 彼女が意外にも、というのは失礼だけど、女の子らしい可愛い文字を書くのは知っている。
 そういう一面を見られるのが恥ずかしいのだろうか。
 恋人っぽくと言っているから、その恥じらいもそういう設定なのかもしれない。
 本気で恥じらっているんだとしたら、それはそれでかなりレアなものが見れたんだろう。
 そう思いながらノートを開く。

「え?」

 落ち着くために一度ノートから視線を外す。
 えー、えー、えー。
 三秒考えてどうしようもないと思ったら諦めるのが信条だけど。
 三秒って結構いろんな事が出来るんだ、とか思いながらもう一度ノートを見る。
 ……。
 読めなかった。
 そもそも日本語なのか分からなかった。
 見たこともないような記号の羅列が、開いたページに所狭しと並んでいる。
 まさか、宇宙人とチャネリングでもしていたのだろうか。

「いや、それは速記だ。一応見る人が見れば日本語だよ。ただ、書く人によって癖が出るから完全には解

読できないだろうけど」

 恥じらいでも何でもなかった。
 ただ純粋に読めないって何だよ。
 返して! 僕のときめきを返して!

「ご飯の後で教えてあげるから、先にお弁当を食べよう。一緒に」
「あー。うん。分かった。その、よろしくお願いします」
「何を緊張しているんだ? 恋人同士っぽく食べるんだから、もっと仲良さげに」
「うん。努力します」
「努力もいらない。いや、演技する程度の努力は欲しいけれど」
「えーっと、がんばります」
「よろしく」

 彼女の口から出た「演技」という言葉に、分かってはいたけどちょっとだけ引っかかりを感じる。
 やっぱり、「ごっこ遊び」だったのか。
 僕は彼女の恋人“役”で、一体何を考えているのか分からないけれど、こんなことで嘘はつかない人だ

から。
 はじめからそうだったんだろう。
 うん。
 きっと僕は、悲しくも辛くもないと思うのがいいんだろう。
 実際今日はこれまで確実に楽しかったし、まだ今日一日はこの役割を楽しめそうだし。
 ん。
 恋人役の彼女を待たせてはいけないと、急いでカバンからお弁当箱を取り出す。
 ちょっと傾いてたから中身が寄ってるかもしれない。うう。
 机をくっつけて、椅子に座って彼女と向き合うと、すでに箸を持って臨戦態勢に入っていた。
 彼女の前には、可愛らしいという修飾語を一切受け付けないほどに堂々としたアルマイトのお弁当箱が

ある。

「こいつを見てくれ。どう思う?」
「すごく……大きいです」
「ところで、忘れていたんだが私は小食な性質なんだ。こんなにたくさんは食べられそうもない」
「なんで自分のことなのにあっさりと忘れるかな」
「色々事情がありけるのよ。色々とな」
「はあ。えっと、代わりに僕が食べようか?」
「うん。幸い君も私と同じでそれほど食べないようだから、交換してくれると助かる」

 彼女の視線は、僕のお弁当に固定されている。
 確かに僕のお弁当はそれほど大きくない。
 運動部でもないから、そんなに沢山食べるわけじゃないし。
 女性が食べるにはちょっと大きいかもしれないけど、彼女のよりはまだマシだろう。
 それにこのロックオンは絶対に外せない。

「じゃあ、いただきます」
「うん。彩りのいいお弁当だな。これは、君のお母さんが作っているのか?」
「そうだね。毎朝大変だとは思ってるけど、僕は料理苦手だし、朝起きられないし」
「今朝は早かったみたいだけど」
「たまたまね」
「そうか。さ、君も食べてくれ」
「うん。いただきます」

 そう言ってお弁当のふたを取ると、予想外というか予想通りというか、白かった。
 大きなお弁当箱にぎっしりお米が詰まっていて、中心に梅干が埋め込まれている。
 完全無欠に日の丸弁当だ。
 ある意味伝説。

「……いただき、ます」
「うん。遠慮しないで食べるといい」
「おいしそう、だね」
「そうだな。今日の炊きあがりは会心の出来だった」
「……じゃあ、いただきます」

 確かにお米は冷めてもなおつやつやと光り、ご飯粒もきれいに立っている。
 こんなに奇麗なご飯は初めて見た。
 梅干しも真っ赤なやつじゃなくて、高価そうなちゃんとした梅干しだし。
 意を決して、ご飯を一口食べてみる。
 ……おいしい。
 ご飯がベチャッとしていなくて、でも固いわけでもない。噛むのが楽しくなる弾力だ。
 楽しくてそのまま噛んでいると、だんだん甘くなってくる。
 確かに、会心の出来なんだろう。
 時々梅干しをつつきながら食べる。酸味がちょうど良くて、とてもおいしい。
 お米の美味しさを再認識させられる。
 気がつくと、もうお弁当箱の半分以上食べてしまっていた。
 こんなに御飯を食べるのに夢中になったのなんて久しぶりだ。
 そう言えば御飯と御坂ってにてるよねってミサカはミサk……。
 いや、だから混線しすぎだって。
 ネットワークとかいらないから。
 チャイルドマンネットワークは欲しいかもしれないけどそしたら管理人はフォルテになってああフォル

テかっこよかったのになぁ……。
 うん。落ち着け僕。

「おいしい?」
「うん。久しぶりにおいしいお米を食べたよ」
「そう。なら良かった。君のお母さんは料理が上手だね。何より、冷凍食品が入っていない」
「ああ、うん。何か嫌いみたいで。そっちの方が楽だと思うんだけど」
「いや、おいしいくて体にいいものを食べさせたいからだろう。いいお母さんじゃないか」
「うん。そうだね」

 彼女は、僕のお弁当箱をとても優しげな眼で見る。
 朝に僕を見たときのように優しいまなざしだ。
 それは恋愛じゃなくて慈愛だと思うんだけど。
 でも、その表情はとても綺麗だから、きっといいことなんだろう。

「ところで、君は私の恋人役なのだから、目の前の恋人をほっといて食事に夢中になるというのはどうな

んだろう?」
「っ、ごめん。あんまり美味しかったから、つい……」
「むぅ。これは、怒るべきか喜ぶべきか分からないことを言うね。まあ、いいよ。無茶を言っているのは

私なんだから」
「ごめんね。えっと……」

 目の前の、微かに呆れたような表情の彼女。
 こんなとき、僕はどんな表情をしたらいいのか分からなくて……。

「わらえばいいと思うよ」
「今時EVA!? むしろ今だからこそ!? そもそもそれを言ったのは男の子なんだからその台詞を言うべ

きは僕であっていやでもべつに君が無表情だとかそんなことを言うつもりなんかなくてむしろアルエっぽ

いといえばぽいのかもしれないけどでも包帯巻いてないし声も林○さんとは違った感じだしって僕また声

に出してたのかああもうこのスットコドッコイ」
「肺活量アピール?」
「……違うって」
「ちなみに声には出してないよ」
「え?」
「なんか困った表情してたから」
「……そう」
「大丈夫?」
「うん」

 普段の奇行を見ていると忘れがちだけど、彼女はやっぱりかなり賢い人だ。
 こういう細やかな気配りができるし、それを自然と照れもなくやる。
 だから、ただの奇人では済まされない魅力を持っているんだろう。
 実際、数々の伝説的な奇行にも関わらず、彼女はクラスで浮いているなんてことはない。
 ……浮いてはないんだけど、なんか一目置かれてる。 
 遠巻きに見て面白いから、なのかもしれない。
 僕は席が隣だし色々関わることも多いから、それに比例して色々と気遣ってもらうことも多くなる。
 ただ、その心配りは見事によく分かんない方向を向いているから、正直に喜べないのが複雑なところな

んだけど。
 まあでも、彼女とご飯を食べながらこうやって話をするのはなかなか楽しい。
 今日だけじゃなくて、毎日お願いしたいくらいだ。
 ……無いだろうなぁ。
 気付くと、彼女はもうご飯を食べ終わっていた。
 僕もあとちょっとで食べ終わるところだ。

「ところで、随分と優雅に昼食を食べているけれど、次の時間は体育だろう? みんな着替えて行ってし

まったよ」
「……はい?」
「ほら」

 見回すと、僕らのほかには片手で間に合うくらいしか人が残っていない。
 彼らのうち半分はサボって保健室に行くつもりだろうし、もうあまり余裕はないと思った方がいい。
 急いで残りをかっ込む。

「やれやれ、マイペースなのは美点だと思うけれど、暢気なのとは別だよ?」
「それ今朝も聞いたから。ああもう、知ってたなら言ってよ……」
「いや、おいしそうに食べてたから」
「うう。その気配りはありがたいけど、演技とは言え恋人に授業をさぼらせるのはどうなのさ」
「恋人だからじゃない?」
「恋人っぽいことをするとは言ったけど、授業をさぼるのは勘弁してくれないかな」
「……なら仕方ないな。まあ、私も授業を休むわけにはいかないし」
「うん。あ、ごちそうさま。おいしかったよ」

 お礼を言いながらお弁当箱を返すと、彼女は少しだけ驚いて、すぐに嬉しそうに微笑んだ。
 僕がお礼も言わずに突っ返してくるとでも思ってたんだろうか。これでも礼儀正しいキャラで通ってる

のに。
 それは冗談としても、彼女の驚いた表情なんて初めて見た。
 どんな表情をしてても、綺麗な人はやっぱり綺麗だ。
 彼女から僕のお弁当箱を受け取って、鞄にしまう。
 机を元通りに戻して、ロッカーから体育着を取り出して、そこでふと思い出す。

「ノートさ、放課後にお願いしてもいいかな」
「ああ、うん」

 また何か驚いていたみたいだけど、時計の針はけっこうやばげな時刻を指していたので気にせずそのま

ま教室を出る。
 急いで着替えて、ちょっと遅れたけど先生が来るギリギリに体育館に着いた。
 彼女は、涼しい顔で列に並んでいる。
 ……女の子って、着替えに時間がかかるもんじゃないんだろうか?
 いや、常識なんて彼女の前では空しい。
 そして僕は考えるのをやめた。
 いいなぁ究極生物。


                以上、【自由研究は】素直シュール【うどんとスパゲッティの勝負】

 投下分


 三行あらすじ
 ・過去
 ・ログ
 ・嫁

 ごめんなさいっ!!
 って誰に何を謝ってんだかいきなりすぎて分からない。
 また何か混線したのかもしれない。
 文脈って大事。
 で、授業も無事終わりいよいよ放課後。
 僕は隣の席の彼女と向き合っていた。
 さてそれでは大きく息を吸って。せーの。

「ごめんなさいっ!!」

 彼女は相変わらずの濁った瞳で僕を見ている。

「委員会活動があったんだろう? 別に構わないよ」
「その。本当にごめん。僕から言い出したことなのに」
「分かっている。そもそも今日無理やりつきあわせたのは私なんだから、そんなに気にしなくてもいいよ

。ここで恋人っぽく我侭を言って君を困らせるのも一興だけど、それは流石にやりすぎだろうし」
「いや、それでお願いなんだけど、途中にあるマックで待っててくれないかな。って、恋人としてお願い

してみる」

 それを聞いて、彼女がちょっとだけ嬉しそうな表情になる。


「分かった。じゃあサイゼで待ってる」
「をい」
「ん?」
「……ああ、いや、そうだね。うん。じゃあ、また後で」
「ああ。早くね」

 彼女と別れて、委員会がある教室に向かう。
 議題は文化祭の予算配分について。
 正直どうでもいいというか、いてやることもあまりない。
 でも出ないと勝手に予算が減額されてたりするから出なきゃいけない。
 ああ、なんて拷問。
 委員会の途中に、彼女からメールがきた。

≪恋の呪文は?≫

 えっと……。

≪スキトキメキトキス≫

 しかしまた偉く懐かしい。
 返信したら、すぐにまたメールが来た。

≪逆から読んでも?≫
≪スキトキメキトキス≫
≪ヘルメス?≫
≪トリスメギストス≫
≪似てるね≫
≪……暇?≫
≪コーラとウーロン茶混ぜるくらい≫
≪中学生じゃないんだから≫
≪保守≫
≪メールで保守って意味分かんないって≫
≪>>1乙≫
≪>>1って誰さ≫
≪もきゅめきゅめんまい≫
≪まきゅまんめい≫
≪シャープシューターかけたい≫
≪関節技は勘弁して≫
≪カフェオレのコーヒーとミルクを別々のカップに分けてみた≫
≪……本当に暇なんだね≫
≪ホットミルクうめぇwww≫
≪本当にごめん。急いで向かいます≫
≪遅かったらアフガン航空相撲で処刑≫
≪すいませんホント勘弁して下さい≫

 委員会が終わると全力でサイゼリアに向かう。
 ドリンクバーで思いつく限りの暇つぶしをしているであろう彼女は、ある意味で非常に不憫だった。

「遅かったね」
「うん。ごめん」
「4分33秒遅い」
「何に比べて!? っていうかジョン・ケージ!?」
「こうなるともはや偶然の音楽だね」
「えっと、ごめん」
「いやいや、面白いからいいけど」
「じゃあ、早速ノートを」
「うん」

 それから小一時間ほど、彼女のノートを写していた。
 ノートを写させてもらうというよりは授業を再現しているといった調子で、だから一時間近くかかって

しまったんだけど。
 それにしてもよく覚えているものだ。

「いや、全部を覚えているわけじゃないよ。完全記憶能力なんてのとは縁がないから」

 そんなどこぞのシスターみたいな能力はいらないし。
 彼女はそう言いながらエスプレッソの入ったカップに口をつける。
 
「記憶は改変されるからこそ面白いんだよ」

 口元にカップをあてたまま、そう呟いた。
 面白そうなものを見る目つきで。
 その一瞬だけ、濁った眼じゃなかった。

「ところで、なんで今日はこんなことをしたの?」
「うん?」
「いや、恋人っぽいことをしてくれなんて」
「ああ、してみたかったんだよ。恋人っぽいことを」
「どうして?」
「ん?」
「なんで僕なの?」
「ああ、まあ……」
「……」
「突然だが」
「ん?」
「米が好きだ」
「実は僕も……」
「あ、間違えた」
「すk……え?」
「みんなも誤爆には気をつけよう」
「みんなって僕しかいないけど」
「いや、君が好きだ」
「……え?」

 ……テンプレがあった気がするけど気にせずどうぞ。

「いや、今日の一連の行動から推測してすでに気づいててもおかしくないぞ。常考」
「うん。いや、その可能性を考えなかったわけじゃないんだけど」
「以上、解答編終了」
「え? いや、あの、付き合う、とかは……?」
「いや、私の気持ちに整理をつけたかっただけだからね。あまり君を付き合わせてはいけないし」
「いや、その……」
「自分の気持ちを他人にどうこうして貰おうなんて言うのは、あまりに図々しいから」
「えっと……」
「一応整理はついたと思う。変な事に付き合わせて悪かったね」
「え?」
「こういうことは、実際にやってみないと分からないこともあるし。今日一日楽しかった。やはり君が好

きだ」
「……ありがとう」
「じゃあ、そろそろ帰るよ」

 そう言って立ち上がりかける彼女。
 彼女の眼はまたつまらなそうなものに戻っていた。
 死んだ魚の目。
 このまま彼女を返すのは、絶対によくない。

「あのさ!」
「ん?」
「今日一日、なんでしょ? だったら、今日が終わるまで、まだ恋人っぽいことは続くんだよね」
「……まあ」
「じゃあ、もうちょっと付き合ってよ。恋人としてのお願い」
「……しょうがないな。じゃあ、今日が終わるまで」

 それから僕は、彼女と色々な事を話した。
 外も暗くなってきたし、そのまま夕食を食べて。
 食後もいろいろと他愛ない話をして。
 他愛ないといっても彼女にとっての日常という意味で、つまりはそれなりに刺激的だった。
 時々、本当に時々だけど、彼女の眼は楽しそうなものになる。
 彼女が僕を好きだとういうのは、本当のことだろう。
 こういうことで嘘を吐く人ではないから。
 でも、なぜ付き合うというところまでいかないのか。
 なぜ?
 ……。
 それは、僕が彼女に好きだって言ってないから。
 期限付きの恋人。
 365日どころか、1日だけの恋人。
 ならやっぱり、最後にはきちんと決めなきゃいけないだろう。
 
「そろそろ遅いから、帰るよ。また学校で」
「あ、うん……。送るよ」
「ありがとう」
「今日一日、恋人っぽいことをするっていう約束だし」

 僕の言葉に、彼女はちょっとだけがっかりしたみたいだ。。
 でも、僕はあえて気にせずに、レシートを持って会計を済ませて、店を出た。
 店からの帰り道、途中までは同じだから、また色々と他愛もないことを話して歩く。
 手は、繋いで。
 まるで本当の恋人同士みたいに。
 恋人同士。
 ……うん。

 分かれ道について、彼女は手を離す。

「今日はありがとう。楽しかった」
「いや、あんまり恋人っぽいことができなくてごめんね」
「そんなことはないよ。恋人同士がすればなんだって恋人っぽいことになるんだから」
「ん?」
「だから、君は今日私と恋人同士の気持ちになって色々としてくれたんだろう? それはとても嬉しいよ


「ああ、うん」

 恋人同士がすれば、それは何でも恋人同士っぽいものになる。確かにそうだ。
 だから、僕も彼女と恋人同士っていう演技をしてきたわけだし。
 でも演じるってことは本当にその気持ちにならないと難しくって。
 その気持ちになってみたら、今日一日、すごく楽しかった。
 今日だけの気持ち。
 たった一日限定の、恋人同士のふり。
 これでおしまい。
 に、したいなんて思わない。

「突然だけど」
「ん?」
「君が好きです」

「……ありがとう。最後まで約束を守ってくれて」

 嬉しそうで、ちょっとだけ寂しそうな表情。
 ……?
 え?
 あれ……?
 ああ、いや、その、ね?
 これは演技じゃなくて……。
 ああもう、嘘吐きのパラドックスじゃないんだから、それくらい分かってよ。
 ていうか普通分かるでしょ。常識的に考えて。
 ……ああ、彼女の前では常識なんて言葉は空しい。
 そして僕は考えるのをやめ……るわけにはいかない。
 どうすればいい?
 そうだ、日付が変わってからもう一度。
 って、そんなのまわりくどすぎる。
 どうにかして、今、この気持ちを伝えないと……。
 ああ、なんか近所の人が珍しそうにこっち見てる。
 さすがに今ここでキスして「演技でこんなことできないよ」はマズいし。
 どうする? どうするの僕?
 続きはWEBで。
 いろんな意味で何言ってんの僕!?

「じゃあ、帰るよ。また学校で」

 そんな風に悩む僕をおいて、彼女は帰って行った。
 おいてけぼり。
 おいてけー。
 おいてけー。
 ……。
 空しくなってきたので、近くの公園に向かう。
 ジャングルジムにのぼってみた。
 地面から一メートルくらいの高さでぼーっと突っ立ってみる。
 あー。
 あー。
 あー。
 すっごい虚脱感。
 そのまま一人ラストライド。痛い。
 あー。ツームストンでR.I.P.で3カウント。
 テイカーさんかっこいいなぁ。
 もう考えるの疲れた。
 ラストの選択肢ミスったなぁ。
 とか思いながら、地面に寝っ転がってるのも飽きてきたので這い起きる。
 だからと言ってすることもなく、でも突っ立ってるのもあれだし。
 ブランコに座り込む。
 ぶーらぶーらぶーら。
 ぶーらぶーら。
 ぶーら。
 少年苦悩中……
 少年後悔中……


 で、いきなり携帯電話のアラームが鳴る。
 気付くと日付が変わっていたりした。
 盛大に溜息を吐くと、勢いをつけてブランコから飛び降りる。
 アイキャンフラーイ
 見事に着地を決めると帰り道をあいつの帰ったほうに歩く。
 家の前で合鍵を取り出し、鍵を開けようとするけどそもそもかかってない。
 不用心な。
 ノックすると、中から「どーぞ」と声がする。
 部屋には、コメッコを食べながら漫画を読んでるあいつがいた。

「満足したか?」
「んー。君は相変わらずうっかりしてるね。マックじゃなくてサイゼだったでしょ」
「悪い。あそこはうっかりしてた。ついいつもの癖で」
「あそこを間違ったら色々と不都合が出るじゃないか。しっかりしてくれ」

 えー、つまり、付き合って一周年を記念して、付き合い始めた一日を完全再現してみようプロジェクト

だったりしたわけなんだが。
 正直に言おう。えらく疲れた。
 なんか一人称まで変わっちゃってるじゃん俺。
 しかしまあ、付き合ってないふりをした上で付き合ってるふりをするってのは、もともと付き合ってる

立場としては現在のノリと混ざりそうでえらく苦労した。
 ていうか混ざったしな。
 一年前は初々しかったんだなぁ、俺。
 誰のせいだ。
 俺のせいか。
 俺か!?
 ああ俺さ!!

「お前だって時々素だったろ」
「うん。やはり私は演技には向いていないらしい。しかし君も、僕、なんて……」
「言うな。俺が一番びっくりしたんだからな」
「で、今日一日どうだった?」
「……ああ」
「ん?」
「突然だが」
「ふんふん」
「お前が好きだ」
「突然でも何でもないが。私も君が好きだよ」

 そう言って、微笑む。
 慈しみとはまた違った、恋人同士特有の表情。
 ……やっぱこいつには演技の才能があるんじゃないかと思う。

「一年な」
「まあ、一年前だからね」

 言いながら、コメッコをかじる。

「記憶は、改変されるからこそ面白いのさ」

 ファミレスでコーヒーを飲みながら言ったのと同じような格好で、呟く。
 ああ畜生、楽しそうだなぁ。

「ところで、別れ際なんだが」
「……ああ」
「なぜキスしてくれなかった?」
「いや、あん時ゃ誰もいなかったろ? 今回は人がいたから、流石に……」
「いや、去年も近所のおばさんに見られてたけど?」
「マジか!? うあーーーー」
「さて、このままじゃ締まらないよね?」
「……はいはい」

        xxx



“XXX -Kiss Kiss Kiss-” is closed.

                -Das Ende- -了- -The End-



 後書きという名の後書き。もしくは後書き。つまり後書き。

 お読み頂いて誠にありがとうございました。
 筆の遅さのせいで、四スレにわたって投下するとか、実にたわけたことをやらかしました。
 怠けてたわけじゃないんです。ごめんなさい。見逃してください。
 オチは、読む人が読めば分かのですが、ある四コマ漫画のパクr……オマージュです。
 女も男も、若奥様でもセールスマンでもありませんけど。まあ、ノリです。ノリがすべてです。
 あと、ネタが多すぎました。
 もうずっとネタ大杉。
 読みにくかったらごめんなさい。
 ネタ分かんなくてもごめんなさい。
 全部のネタが分かった人、貴方とはうまい酒が飲めそうだ。
 ていうか、書いてる本人がネタを全ては把握し切れていないというこの体たらく。
 それくらいネタまみれでございます。
 まあ、スレ中の指摘にもありました通り、東方とか西尾維新とか色々ね。
 個人的にメジャーどころに抑えたつもりなんですが。
 でも“個人的に「メジャーどころに抑えた」つもり”じゃなく“「個人的にメジャーどころ」に抑えた

つもり”っていうあたりがなんというか、ね。
 あと所々キャラも本筋もぶれていますね。
 そも書いている人間が人として軸がぶれているので察してください。
 あと、あらすじを書くのが苦手なので前の話とのつながりが分かりにくいかと思われます。
 なので、話を全部通して読みたいという稀有な方向けに、ていうかぶっちゃけ通して読んで欲しいので

ロダに上げようかと思います。
 ではでは、お読み頂いたすべての方に心よりの感謝を奉げつつ。
 さようなら。

 ……あ、そういやこの話タイトル決めてないじゃん。
 何やってんだorz


                以上、【バナナナナナナ】素直シュール【市場最強の米】 投下分

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