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「ゆがんだーstepで、とびーだしてく ときにいきおいまーかせ、はしりぬーけたいー♪」
女神様、じゃない、ガチさんから頂いたアクィラを首から下げて、今日も私はノリノリで家事に勤しむ。
ガチさんには軽く考えるようにと言われたけど、私としても始めて大好きな人とデートできた記念の日なので、私からもプレゼントをあげた。
私の大好きなバンドの名前を連想させる、真紅色の小さな鳥の形をしたアクセサリー。
とても幸福で、満たされた気分だった。

でも、私は知ってしまうことになる。
こんな浮かれた日々を、いつまでも続けてはいられないことを。

金曜日の朝。
私はいつものバス停で、いつも通り女さんを待っているのです。
レ「おはようございます、女さん」
女「あ、ガチ。おはよ。
  あれ? その首から下げてるやつ何?」
レ「え? あ、これはですね~」
私はニヤニヤと笑いながら、女さんを焦らすように語尾を伸ばしてみます。
女「何? 焦らしたって何も出ないわよ」
レ「いえいえ、でも本当のこと言ったら女さん妬いちゃうかも知れませんよ~?」
女「私が何で嫉妬するのよ…まぁ話してみ?」
レ「ふふ…やはりそっけなくても気になるんですね?
  私のことが気になるんですね?
  もうすぐ恋に発展しちゃいそうなんですね?」
女「…(スッ」
レ「あぁ! 殴らないでくださいお願いします後生ですから~っ!」
女「…まったく、早く話しなさいよ」
レ「ふぁい…あのですね、先週コンビニに女さんがきてたとき、女の子が入ってきたでしょう?」
女「あぁ、あのすごく真面目そうな子ね」
レ「そーです。ややあってあの人と仲良くなりまして、昨日あそこの『小物屋』に行ってきたのです」
女「そこで買ったと」
レ「いえいえ、何と彼女から頂いたのです!
  まぁ私が先に買ってあげたんですけどね」
女「…それで大切そうにつけてるんだ」
レ「はい、深紅色の鳥で“GARNET CROW”だそうです。可愛い子からのプレゼントは大事にしないと!」
女「…そう」
レ「だから、ほらっ!」
私は自分の制服のポケットを探り、ぼろぼろになった紙切れを取り出します。
レ「女さんから昔頂いたお手紙、ずっと持ち歩いてますよ♪」
女「そんな昔の手紙を…?」
レ「昔…? あ、確かにそうですね、思えば小学校のときですから。
  でも私は毎日見てますからね、あまり実感ないです」
女「だからそんなぼろぼろなのね…」
レ「ふふっ、ちょっと願掛けみたいなことをしてるんですよ。
  これを毎日開いてみて、いつか擦り切れてしまったら、女さんの貞操は私のものに…フフフ…
  …あれ? 殴らないんですか?」
女「…今回はいいわ。さ、早く学校いくわよ!」
レ「あ、はいっ!」
さっき見た女さんの横顔が赤かったのは、私の気のせいでしょうか?
レ「女さんっ、待ってくださいよー!」
女「…」
小走りになって、どうにか女さんに並びます。
でも女さんの表情は何故か険しくて、一瞬声をかけるのが躊躇われました。
レ「あ、あの、女さん?」
女「…ごめんね」
レ「えっ?」
女「私…あの手紙のこと、すっかり忘れてた。
  あんたがそんなに大事にしてくれてるっていうのに…!」
レ「女さん? 私は別にそんなの気にしませんよ?」
女「でも…もしかしたらもう、ゴミと混ざって捨てちゃってるかも知れないのよ。
  人の心がこもったものを…そんな風に…」
むぅ。女さんも中々乙女なところがありますね。よし‥。
レ「…さすがにそれは酷いです」
女「ガチ…ごめん…」
あぁ、女さんがどんどん落ち込んで…罪悪感です…。
レ「謝るだけじゃ許してあげません。私のお願い、一つ聞いてもらいます」
女「…」
レ「そうですね…今日のところは頬で許してあげましょう」
女「…はい?」
レ「キスですよ、キス! してくれないと許しませんよ」
この辺りで女さんも私の真意に気付いたのか、いつものクールな感じに戻っていました。
やっぱり女さんはいつも通りが一番です。
女「…この公共の場で?」
レ「誰も見てませんって。 ね? 許して欲しいんでしょう?」
女「…」
あぁ! 顔を赤らめて視線だけ反らす女さん!
これを見るために生きて来たと言っても過言じゃないほどに可愛い!
二年前まだ小さかった頃の友さんの愛猫チィちゃんよりもずっと可愛い!
女「…いくわよ」
一通り周囲を確認したあとで、女さんが私に近づいてきます。
あぁ、女さんの息づかいが…幸せ…。女さんの頬もますます赤く染まって…
女「…(チュッ」
WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!
い、今起こったことをありのままに…
女「戻ってこい」
レ「痛いっ」
女さんが向こうの世界に行っていた私の頭を軽くはたきました。
力がこもってないわりに、私の頭はいい音がするものです。
レ「あぁ…でも幸せです、最高に嬉しいです…」
女「…ねぇ、ガチ」
レ「へ? 何ですか、女さん」
女「あんたも…私に対して後ろ暗いことがあるでしょ?」
レ「後ろ暗いこと…ですか?」
女「私に黙って他の女の子と二人で出掛けたこと!」
レ「…女さん」
途端、女さんはしまった、というような表情になります。
ふふ…そんな可愛い顔をしても私の追求からは逃れられませんよ。
レ「女さん…すみません、私女さんの本当の気持ちに気付いてあげられなくて…」
女「な、違…」
レ「でももう大丈夫です、愛し合う二人の間にはどんな壁も無意味です。
  さぁ今から女さんの家で生まれたままに愛し合いましょう!」
女「…バカ! そんなこと言うならあんたも罪滅ぼしくらいしなさいよ!」
レ「罪滅ぼし…?」
しまった、この状況から逆に仕掛けられるなんて…不覚です。
レ「…分かりました。何なりとお申し付けください」
女「それじゃあ…あんたもキスしなさい」
レ「!」
これは…予想外の準エロゲ的展開!? wktk! wktkァッ!
女「か。勘違いはしないでよっ!? 私と同じ罰にした方が後々いさかいがなくて済むと思っただけで…」
レ「女さぁん!」
女「ちょ、ちょっとあんた実行にうつすのが早っ…!」
レ(チュウゥゥ~
女「…/// 早く離れなさい」
レ(ギュウゥゥ~
女「…ちょっと、早く離れて」
レ「幸せです~…」
女「感想は後でいいから! こんなとこ見られたら…!」
友「ほほう、朝から仲のよいことですなぁ~」
レ「あ、友さん。ニヤニヤしてると変態みたいですよ」
女「ガチ、ちょっとどきなさい?(ニコッ」
レ「…はい」
笑顔なのにすごい覇気です…。友さん御愁傷様‥。
女「鉱物と生物の中間の生命体になって二度と戻ってくるなっ!(ドカアッ」
レ「うわぁ‥ここ最近の最高記録ですね、コレ」
‥何でこんなものを見なくてはいけないの?
私はいつも通り、上機嫌でお弁当を作って、あの人のことを考えながらバス停へ。ただ、それだけなのに。
あの人、キスしてた。あの時の、綺麗な女性と。
見ていられなかった。
浮かれていた自分が、世界中から馬鹿にされているように感じた。
ドアを手荒く開け、靴を脱ぎ散らかし、自分の部屋に籠る。
一息吐くと、涙が溢れてくる。
どうして? もっと夢を見させてくれたっていいじゃない。
届かない、幻だっていい、もう少し、私に、どうか‥

決めた。決心した。
『覚悟』、これさえあればきっとどうにでもなる。
あの二人は好き合ってるみたいだけど、まだ付き合ってはいないらしい。
なら、まだ私にだってチャンスはある。
憧れの人とメールして、顔を合わせて、並んで歩いて、満たされる。
そんな幸せが、あってもいいはず。
さぁ、今日は宣戦布告だ。
はい、月曜です。いつも通り、女さんを待ってます。
昨日はツーちゃんに女さんとのことを色々と聞かれましたが、何だったのでしょう?
あ、今日は女さんいつもより早、く…?
ツ「ガチさーん!」
レ「ツーちゃん!? どうしたんです?」
ツ「ふふ、ガチさんに会いに来ました!」
レ「会いにきたって…えぇ?」
いきなりどうしたのでしょう…混乱…
ふふっ、と微笑むその顔に引き込まれそう…。
ツ「ガチさんはあの、女さんって人のことが好きなんですよね?」
レ「へ!?」
私まだあなたにはカミングアウトしてないはずなんですけど!?
ツ「キスしてるとこ、見ちゃいました!」
レ「……~~ッ!」
ま、まさか見られてるなんてっ…!
あ、でもこれはこれで女さんを解放的にさせるいいきっかけになってくれるかも…
ツ「またあの人のこと考えてますね?」
レ「え? わ、分かるんですかっ?」
ツ「はいっ♪ いつもあなたのこと、考えてますから」
レ「へ? えっ?」
あれ、ツーちゃんの顔が私の頬に急に近づいてきて…
チュッ
ツ「ふふふ…」
レ「…え? えぇ!?」
ツ「私もしちゃいました!」
私はもう何を話したらいいのか…
『疑問をぶつけるんだ』という当然のことに気付いたのでさえ、ずっと後のことでした。
私が呆然としていると、ツーちゃんの顔がまた近づいてきます。
そして、耳許でささやきました。

「私、ガチさんのことが好きです」
レ「あ…えと…」
私はもう、本当に言葉が出てこなくて…
ツーちゃんも、私を見つめてニコニコするだけで…
ツ「これは、宣戦布告ですよ」
レ「えっ…?」
ツ「あの、女さんて人に伝えておいてください。
  うかうかしてると、ガチさんは私がもらいますよ、って。ではっ!」
ツーちゃんはそれだけ言って、ちょうど着いたばかりのバスに乗ってしまいました。

女「ガチっ!」
レ「あ、女さん…」
私が少し放心していると、女さんが肩で息をしながらやってきました。
女「『あ、女さん』じゃないわよ! 今の子誰!? そして何!?」
レ「あうぅ~…襟持って揺らすの止めてください~…」
女「うるさいっ! 今の子の正体をさっさと答えろぉぉ~~!」
女さんの嫉妬をやや嬉しく感じつつも、何かとんでもないことになりそうな予感の中で気を失った、冬の日の朝でした。

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最終更新:2007年02月19日 21:06