20つめ

有馬記念当日。


この年最後の大一番。さらには年度代表馬争いも過激さを増していた。


着々と各馬がゲートに収まっていく。


湯田「おい、隣の枠同士仲良く頼むよ」


だだだだ「……。」


そして夢の扉が開いた


実況「今年の競馬を締めくくる有馬記念。ドリームレースにふさわしいメンバーが集結しました。まさにどの馬が勝ってもおかしくありません。各馬ゲートに収まって…さあ今ゲートが開いた!やはり内の方から式豊が押して押してスミビスペシャルが逃げていきます最内のカッスインパクト五十嵐もこれについていく勢い、オナリキャップも必死に押しています。そしてなんとダダダプレジメントがこれに続き4番手の位置!これは意外な位置どり菊花賞馬。これを見てライバルはダダダプレジメントだと話していたスーパーミッチー湯田が上げていきます」


だだだだ「…」


湯田「何を焦ってんだあいつ、仕方ない上げていくぞ」


式豊「ぺっちんぺっちいん」


五十嵐冬樹「あああああ待てえええええ」


馬鹿舘「逃げと言えば俺だろ」


実況「中団にはビワジェラード。これをマークしてマツリダカッスアナルスライン、さらにはロードオナロアと続いてマンハッタンサブもちょうど真ん中あたり。ヤニキゴーゴータイヤスカーレットが続くと言う隊列。」


実況「ここからは追い込み勢。追い込みの大将格ジャングルユキッチもいつもと変わらぬこの位置。どこでギアチェンジしていくのかが見所であります。ぴったりと横にいるのはキンタマ。5馬身うまい人が乗っています。カッスインザダーククリームジャーニーも末脚にかけます。以上、それぞれが思い思いの位置で競馬をしていきます」


5馬身うまい人「俺は5馬身うまいんだ」


由紀ち「だから何?」


5馬身うまい人「俺が5馬身うまいことをアピールするために日本にわざわざ来たんだ。負けて終わるわけにはいかないんだよ」


由紀ち「………」


5馬身うまい人「おい、なんとか言えよ」


由紀ち「…」


5馬身うまい人「おいきけよ。殴るぞ。杉浦になりたいのか」


池添「僕の馬が一番強い」


5馬身うまい人「あ?」


池添「勝った馬はうまく回っただけ。僕の馬が一番強い」


式幸四郎「その通りやな」


由紀ち(こいつら病気だろ)


実況「もう一度先頭に戻ってみましょう。スミビスペシャル式豊がレースを引っ張る展開。カッスインパクトオナリキャップがこれをつついていきます。さらにはダダダプレジメントも先頭を狙えるような位置。これは意外です。スーパーミッチーの湯田も必死に押しています」


五十嵐冬樹「ひゃあああああ」


実況「ここでカッスインパクトが一気に加速して先頭に立つ!またしても五十嵐!またしても五十嵐!!


だだだだ「wwwww」


実況「これにオナリキャップも参加していく!スミビスペシャルは3番手まで下がります」


式豊「危ない危ない。ここで無理してしまうと最後に持たなくなる」


だだだだ「やべえな」


五十嵐冬樹「あああああああああ」


馬鹿舘「逃げと言えば俺だろ」


実況「最後の向こう正面、これから最終コーナーに差し掛かるところ、前を引っ張るカッスインパクトオナリキャップは苦しい!!」


5馬身うまい人「俺はそろそろ行くぜ」


由紀ち「勝手にしろ。ここはまだ勝負どころじゃない」


らーど「…」


蛯名「ここで動いたか」


和田「ついていこう」


福永「五十嵐さんはG1に乗る騎手じゃない」


実況「徐々に差が縮まっていく最終コーナー!緩やかにコーナーを回ってここで先頭はスミビスペシャルダダダプレジメントがほぼ横並びで先頭!ダダダプレジメントが早くも先頭に立っている!」


式豊「!?」


だだだだ「いけええええええ」


湯田「あいつ何考えてるんだ、最後まで持つわけないのに」


ちんまん「負けたら騎手のせいだ」


由紀ち「早い、いくらなんでもあの仕掛けは早すぎる。直線が短いと言えどな」


実況「先頭はどちらも譲らない!最後の直線!ここですべてが決まる!まだ後続とは差がある!3番手にはカッスインパクト!内からビワジェラード外からキンタマジャングルユキッチはやはり内にもぐりこんだ!!」


だだだだ「負けてたまるかあああ」


式豊「ぺっちんぺっちん」


五十嵐冬樹「いやだあああ負けたくないいいいい」


実況「ここでカッスインパクトが恒例の斜行だーっ」


馬鹿舘「やべえ…うわあああああ」


実況「さらには疲れたオナリキャップが勝手に落馬ー!!」


さぶ「うおおおお!!」


実況「馬鹿舘をよけきれずなんとマンハッタンサブも落馬!これは波乱!」


実況「カッスインパクトの斜行も止まりません!」


五十嵐冬樹「全員落馬してしまえええええ!!!!」


らーど「ちょ…あぶねえ!」


三浦「くっ、二度同じ手を食らうか!」


5馬身うまい人「うおおおお外に膨らんでくるんじゃねえ!殴るぞ!おら」


三浦「俺に言うな」


5馬身うまい人「口答えするな。レース終わったら覚えとけよ」


実況「もうレースはめちゃくちゃ!前はわずかにダダダプレジメントが先頭!2番手はスミビスペシャル!3番手は何が出てくるか!かなりごった返している!」


由紀ち「内にもぐりこんだおかげで不利を受けずに済んだ…この判断は間違ってなかったな」


実況「内をついてジャングルユキッチ!しかしその前には落馬した馬鹿舘が倒れているぞこれは踏んでしまうぞ」


由紀ち「馬鹿舘邪魔すぎワロタwwwwwwwwもういいや踏んでしまおうwwwwwwwwwww」


実況「ジャングルユキッチが馬鹿舘を交わして外にいったんヨレる!もう一度立て直してムチが唸る!」


由紀ち「馬が本能的に馬鹿舘をよけてしまった」


実況「しかし先頭はダダダプレジメントスミビスペシャル式豊も必死のムチ!しかしこれは届きそうにない!3番手にようやくジャングルユキッチダダダプレジメントがいま1着でゴール!」


だだだだ「うおおおおお」


実況「だだだだ渾身のガッツポーズ!グランプリを勝ちました!2着にはスミビスペシャル、馬鹿舘の妨害を受けたジャングルユキッチは3着がやっと!」


だだだだ「あー…あきらめずにやってきてよかった」


式豊「おめでとう」


だだだだ「式さん、ありがとうございます」


式豊「これで君も僕と同じ、トップジョッキーの仲間入りだ」


だだだだ「…」


式豊「通算G1勝利数ではまだまだ僕には及ばないけどね」


だだだだ「……」


式豊「これからも一緒に頑張ろう」


だだだだ「………」


由紀ち「くっそ、あれさえなければ…」


勝利ジョッキーインタビュー


※アナウンサーは佐藤哲三を怒らせたことでおなじみの関西テレビの岡安アナ


岡安「有馬記念を勝たれました、ダダダプレジメントのだだだだ騎手です。おめでとうございます」


だだだだ「ありがとうございます」


岡安「菊花賞を制してからの有馬記念制覇。この世代No.1と言ってもいいのではないでしょうか」


だだだだ「その辺はまだこれから決着をつけるとして、良い形で秋と冬を迎えられてよかったと思います」


岡安「今回のレースは積極的に前へつける展開でしたが、これは事前に想定していたんですか」


だだだだ「出たら出たなりで、抑えることはしないで行こうと思ってた。前が思ったより争ってたからそうはならなかったけど、思い切って逃げるのもありだと思ってましたが、逃げ一本の馬はやはり速いですね」


岡安「この秋、見事に2歳王者復権となりましたが」


だだだだ「そうですね。負ければ毎回調教師に騎手のせいにされて、なかなか勝てない時期も続いて、クラシックももう駄目かなと思ってたんですが、あきらめないでやってきてよかったです。菊花賞を勝てただけで十分満足でしたが、最後の最後にこのような結果がついてきたことは誇りに思いますね」


岡安「一方で後続の有力馬に不利やアクシデントがありました。それは感じていましたか」


だだだだ「後続に不利があったから勝てたという風には言われたくありません」


岡安「棚ぼたですね」


だだだだ「…」


岡安「今後は他の有力馬に不利があった中勝った有馬記念馬として始動ですね」


だだだだ「秋2冠は立派」


岡安「他の有力馬のファンに向けて一言」


だだだだ「まあ勝ちましたよ」


岡安「最後はG1未勝利の短距離馬との一騎打ち。これで立派な勝利と言えるんでしょうかねえ」


だだだだ「最後はなかなか熱い競り合いになりましたね」


岡安「五十嵐冬樹についてどう思いますか」


だだだだ「別に」


岡安「ありがとうございました」


各陣営のコメント

1着ダダダプレジメント・だだだだ騎手「早めの仕掛けは焦りではなくとにかくこの馬を気分よく走らせたかった。結果として前に付けたのは得策だったのはありがたい。それでも最後は実力で勝ったわけですから、ほめてもいいのではないでしょうか」


2着スミビスペシャル・式豊騎手「僕の作戦がうまくはまった。後ろにいたら被害を受けていたし、前に行きすぎていたら最後に持たれていた。ちょうどいい位置をキープした自分の作戦がうまかった。最後は騎手の分負けてしまったが、だだだだくんも僕を目指して頑張ってほしい」


3着ジャングルユキッチ・由紀ち騎手「手ごたえは良かっただけに。悔しいですね。何故あの場所に馬鹿舘が倒れていたのかが理解できない。落馬したならさっさと避難してろよ。なんでいつまでもターフに寝転がってんだよ。踏もうと思ったけど馬が本能的によけて外にヨレていったん停止した。そこからごぼう抜きで3着まで来ましたからね。手ごたえはありましたよやっぱり。だから余計悔しいんですよ。前が不利を受けていなかったし、不利があったから負けたと言うつもりはないしもちろん上の2頭も強かったけど、どうせなら不利がない状態で直線勝負がしたかった。それでも内をついた判断は間違ってないと思った。五十嵐の被害は受けなかったが、まさか馬鹿舘があんなところで倒れているとは思わなかった。本当に腹が立つ。マジで踏んでやろうと思いました」


4着カッスインザダーク・式幸四郎騎手「他の馬が被害を受けまくっている姿を最後方から見ていた。面白かった。結局なんとなく追い出してみたら不利は受けず伸びて4着。式兄弟の健在をアピール」


5着タイヤスカーレット・アンカツ騎手「幸い不利はなかった。それでも5着がやっとだからしんどいな。本当なら他の馬を妨害したかったんだが、今日ばかりは自分が被害を受けないようにずっと心がけてたよ」


6着ビワジェラード・らーど騎手「直線で2回五十嵐に不利を受けた2回ですよ。進路をふさぐと言うか、寄ってきて外に膨らむ形になる妨害だった。馬がバランスを崩してあわやという場面もあったし、全力で追えなかった。…不完全燃焼ですね」


7着ヤニキゴーゴー・三浦騎手「直線でビワジェラードが膨らんだあおりを受けて一瞬停止した。そのあと外にいたキンタマに今度は内にタックルされて…こんな状態じゃレースはできない」


8着ロードオナロア・福永騎手「何があったのかよくわからない」


9着キンタマ・5馬身うまい人「あの新婚の野郎。三浦?ああそうだ、三浦だ。こないだスマスマのスカトロスマップに出てやがったな。あいつが外に膨れやがって俺の馬が被害受けたんだよ。注意したら口答えしやがって。あいつを見かけたらぶん殴ってやる」


10着スーパーミッチー・湯田騎手「ダダダプレジメントに合わせて追い出したけど、五十嵐と馬鹿舘がやばすぎてそれどころじゃなかった。不利は受けなかったからいいけど」


11着クリームジャーニー・池添騎手「僕の馬が一番強い」


12着マツリダカッス・蛯名騎手「まさにドリームレースだった」


13着アナルスライン・和田騎手「アドマイヤベガ」


降着ではなく初の"失格"処分カッスインパクト・五十嵐冬樹騎手「最低のレースだった」


落馬マンハッタンサブ・さぶ騎手「信じられん。直線の一番いい位置である内で落馬するとか常人の神経じゃ考えられない。馬鹿舘を踏もうとしたところ、馬の方が馬鹿舘をよけたときに前のめりになってバランスを崩して倒れてしまった。あんなところで倒れるかよ普通。駄目だと思ったら外に持ち出せよ。なんでそれぐらいのことが出来ないのか。なめてるとしか思えない。逃げと言えば俺とか言っているがそろそろ我慢の限界」


落馬オナリキャップ・馬鹿舘騎手「逃げ争いが激しくなって、最後の直線ではほとんど体力がなくなって落馬してしまった。この馬は高齢馬だからねえ。俺は悪くないけどな」


注目の年度代表馬争い。

G1を2つ勝った馬が勢ぞろいした。

まずはオークス・秋華賞牝馬2冠のカッスディザイア。しかし牝馬限定戦ではやや物足りぬ。おまけに有馬も回避と腰ぬけっぷりもアピール。

続いて宝塚記念・スプリンターズSを勝ったヤニキゴーゴー。春のグランプリホースは立派だが、スプリンターズSは格としては1枚落ちる印象。

続いて天皇賞の春秋連覇を飾ったビワジェラード。その他でも宝塚記念で2着、秋もJCと有馬で健闘。来年は凱旋門賞挑戦も見据えるこの馬も、年度代表馬候補の1頭。


そしてダービー・JCを勝利し、東京コースでそのキレ味をいかんなく発揮したジャングルユキッチもダービーJCともにレースの格としては文句なし。菊花賞を回避し、3歳を代表して戦うことを選んだ天皇賞(秋)では古馬最強ビワジェラードに及ばず2着も負けてなお強し、有馬でも3着と最後まで頑張った。


最後に春はG1を全く勝てなかった2歳王者、ダダダプレジメントは菊花賞・有馬記念の2冠。特に有馬記念を制した価値は高い。通算G1もこれで3勝。年間G1も滑り込みで2勝をマークし堂々の年度代表馬候補に名乗りを上げた。


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最終更新:2012年04月05日 23:32