彼女たちは安らぎの闇の中で唄う◆PatdvIjTFg
――わらわは闇姫じゃ。闇の中に棲む者、闇がわらわの王国。この闇こそわらわの世界、ここがわらわの居るべき場所。
押入れの中、暗い闇の中、少女はそう心の中で呟いて微睡む。
闇の中に溶けてしまいそうで、しかしはつきりと実を持つ己の身体がもどかしい。
闇の世界の外、下品で野蛮で暴力的な光の世界にあるものは、怪物の顔をしたひたすらに暴力的な下賤の民ばかり。
誰が、外に出ようというものか。
闇の中、さらに目を瞑る。
ぎうと、ぎうと、目を瞑る。
強く、強く、瞑る。
――強【ごう】!
しかし、いきなり聖なる闇は破られる。
母を名乗る愚かな女、醜女の顔に蟻のような昆虫の身体を持った化け物が押入れの戸を開けて、闇を乱暴で猥雑な光で犯す。
何故、姫であるわらわに対して、恥知らずにも血縁を名乗ることが出来るのだろうか、
きっと、夜の仕事の安酒が頭の中身を腐らせたのだ、と少女は推測している。
安酒の悪臭を口から撒き散らして、わけのわからぬ言葉を吐き散らす、
ヒステリックに虚飾されているが、要するに自分は寝るから、少女に出て行けと言っているのだ。
経験則から少女は逆らわない。
かつて、彼女がこの女を「無礼者、下がりおれ」とたしなめた時、少女の脳天をトンカチで殴打したことを今でもはっきりと覚えている。
ああ、耳から飛び出した脳みそのかけらを拾い集めるのは、どれほどに大変だったことか。
そのトンカチは、護身用として自身の首から下げている。
だが、トンカチが無いところで女は新品同様の台所の包丁を持ち出してくるに違いがない。
何をしても、無駄だ。
トンカチを携えて、城の外へと出る。
街はこれから仕事へ行く城下の平民共であふれている、誰も彼女を城の姫君であるとは気づかない。それが彼女を愉快にさせる。
それが例え、口からニコチン塗れの煙を吐き出す人の形をしたがん細胞のような化け物であっても、
顔中に泥絵の具を塗りたくったかろうじて雌とわかる粘液質な化け物であっても、ああ、愉快/\。
それにしても醜い、王族と下賤の民にはこれほどの差があるのだろうか。
どこへ行くかを考えながら歩いていると、下賤の民共の子どもが通う学校があったので柵越しに中を覗いてみる。
人の気配はない、静まり返っている。
学校といえば、かつて身分を隠して少女は通ったことがあるが、その高貴なる身分がばれて平民の子どもらに髪と服をぼろぼろにされた上、
興奮のあまりに水をかけられ、鉄パイプで脳天を殴打された。
服の切れ端や髪の毛は家宝にすると思えば愛らしくも思えるが、やはり下賤の民の子はやはり下賤。高貴な人間に対する態度というものを知らない。
それ以来、校内に入ったことはない。
誰かが来る様子も無いので、少女は学校から立ち去る。
公園にたむろしている貧民にパンを分けてもらいに行こうか。
「おう、また来たんか」
フケだらけの頭をぼりぼりと掻きながら、しょぼくれた親爺が袋の中からコッペパンを取り出して二つに割った。
池のほとりのベンチは、平日の昼間には誰も居ない。
親爺と並んで座って食べる。
親爺は珍しく少女のようなまともな人間の姿をしている。
「また、サボりけ?いかんぞ、ワシみたいになるからな」
親爺の少女を見る顔には、子を見るような喜びと学校にも行かず浮浪者に食事をたかる少女への哀れみが入り交じっている。
少女は気にしない、大事なことはパンがもらえるかどうかだ。
「のう……」
――なんじゃ、申してみい。
空腹が満たされ、少女は上機嫌だ。
「いかんよ、嬢ちゃん……ワシなんぞに餌もろたらいかん」
狙い澄ましたかのように、警察官の制服を着た全身膿んだ化け物が、少女と親爺の元へと歩いていくる。
――どういうことじゃ。
「結局、家族ん所に帰るんが一番や」
――憲兵と共にあの頭の腐れた女がいる城に帰れというか、嫌じゃ!あの女、怒り狂うて何をするかわからぬ!
「母親と話し合って、しっかり生きていかんとな」
――やめろ、やめ……
親爺の姿が、化け物に変わっていく。
その目だけは少女を見据えて、哀れみを浮かべたままで。
その時、少女は思い出した。
――わらわを、そのような目で見る者など……誰もいなかった
連れて来られた交番で少女の母を名乗る醜女を待つ、顔を真赤にした醜女が迎えに来る。
帰った後、何が起こるかなど――想像するまでもない。
平手。
「恥をかかせやがって!」
拳。
「産まなきゃ良かった!」
蹴り。
「穀潰し!」
包丁。
「これで、終わりにしてやるよ!どうせあんたなんか死んでても生きてても誰にもわかりゃしないんだよ!!」
命の危機に瀕して、少女の思考は冷静だった。
己を助けに来る――騎士【サーヴァント】が来る。
触手。
「あなkg@ぱえgえsげsl」。wまkgか」
ぐちゃ。
少女の母を名乗る女はあっさりと死んだ。
「gねpへmへrph:えけえおqpkqw」
その容姿は地球上に対するありとあらゆる生命体に対して冒涜的な存在であり、
その存在そのものが理性とはどれほど細い綱をわたっているかわからなくさせるなんと恐ろしく狂的なものであろうか、
あらゆる宗教において許されるものでなく科学的にもまた許されるものでなく、
目を腐らせるのではなく脳を腐らせるかのような、ああ眼球をえぐり抜いてしまいたい、
永久にその姿を見ずに済むのならば。耳もそうだ、ちょうどいいところにシャープペンシルの芯があったこれで鼓膜を突いて耳を刳り、二度とその者の発する音を聞こえないようにしてしまいたい。
だが、その存在は少女にははっきりと――人間の姿に見えていた。
「私は沙耶、貴方が私のマスター?」
「わらわの闇を取り戻したか、ご苦労」
緑の髪をした白いワンピースの沙耶と名乗る可憐な少女、少女には目の前の怪物がそうとしか見えていない。
だが、どうでも良い。
「わらわは、この闇へと返る。後のことはよきにはからえ……」
押入れを、その中の闇の王国を少女は取り戻した。
邪魔立てする愚かな女も、二度と邪魔することは出来ない。
押入れの中で、少女はじつと目を閉じて眠る。
胎児のように、眠る。
ぽかあんと、少女を見送った後、沙耶は包丁を使って女を切り分ける。
人間とはすなわち、沙耶にとっては食糧である。
食べきれない分を冷蔵庫の中にしまい込み、そして一人、少し早いが昼食の時間とする。
家の中での食事は、どことなく彼女が愛した人間との日々を思い起こさせる。
――郁紀。
人ならざる者の言葉で、そつと呟く。
もう一度、会いたい。
そのために、ここへ来たのだ。
「よきにはからえ……か、うん。頑張らなきゃね」
もう一度、唄おう。
あの愛の唄を高らかに。
【クラス】
キャスター
【真名】
沙耶@沙耶の唄
【パラメーター】
筋力E 耐久D+ 敏捷E 魔力D 幸運EX 宝具EX
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
陣地作成:EX
自らに有利な陣地を作り上げるキャスターのクラス特性。
本来は魔術師ではないため、E-ランク程度の能力しか発揮できないが、
彼女が持つ唯一の宝具を発動した瞬間、星そのものが彼女、あるいは彼女たちの陣地として扱われる。
道具作成:C++
「魔術師」のクラス特性。
人間を理解することで、精神的、肉体的な改造を可能とする。
【保有スキル】
異形:B
人間としての正常な感性は、彼女の姿を、声を、臭いを、存在そのものを許容できない。
彼女の存在そのものが相手への精神攻撃となり、抵抗判定に失敗した場合、
相手に1ターン以上の行動不能、あるいはステータスへの不利な補正、あるいは両方を付与する。
また、クリティカル時は相手に低ランクの精神汚染を付与する。
星の侵略者:A
彼女達の種族が持つ特性、
彼女が持つ唯一の宝具が発動し、星の支配者となった彼女あるいは彼女たちは、星からのバックアップで自分のステータスに有利な補正を受ける。
愛:EX
沙耶という少女が、広大な宇宙の中の小さい地球という星に辿り着き、
70億の人間の中から偶然に狂った人間と出会う確率は、その人間が自分を愛してくれる人間に出会う確率は、ほとんど0に等しい。
しかし、彼女は出会った。故に彼女の幸運値はEX(測定不能)である。
そして、咲いた。彼女達の愛は完成した。故にその愛はEX(測定不能)である。
【宝具】
『それは、世界を侵す恋(SONG OF SAYA)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:40,000 最大補足:6,999,999,999人、あるいはたった1人
彼女の胞子をまき散らし、その星全てを彼女の種族へと作り変える繁殖活動。
あるいは、彼女を愛した一人の人間のために作り上げられた美しい世界。
この宝具の発動と引き換えに、彼女は消滅する。
しかし、サーヴァントとしての役割は彼女の子どもたちが引き継ぐだろう。
また、この宝具は彼女の意思で発動することは出来ない。
三画以上の令呪が無ければ、意図的に発動することも出来ない。
ただ、その時が来れば自動的に発動する。
【weapon】
彼女の肉体そのものが武器である、ふしゅるー、ふしゅるー♪
【人物背景】
ニトロプラスの名コンビが新たなジャンルに挑戦した意欲作!
突然現れた謎の少女・沙耶。そして男女4人が繰り広げる恋愛ストーリー。
そのメインヒロインとなる女の子、ぐうかわ。
【サーヴァントの願い】
もう一度、郁紀に会いたい。
【マスター】
闇姫@夜姫さま
【マスターとしての願い】
乱暴で下品な光に犯されることがないよう、沙耶に任せる
【weapon】
首からぶら下げたトンカチ
【人物背景】
親からの虐待やいじめによって、己に優しくしてくれる人間以外怪物のようにしか見えなくなってしまった少女。
自身を闇の世界の姫であると思い込むことで、敵からの攻撃に対しての精神的な防衛を行うようになった。
何も見えない闇こそが彼女の安らぎの王国。
【方針】
押入れの中で、ただじつと待つ
最終更新:2015年04月20日 10:38