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クリステイアーネ・フリードリヒ&アサシン ◆KQwctnrg6E


「戦争? 殺し合い? 全くもってくだらん。義に反する行いだ。私はこの戦を、否定する」
 少女は凛として言い放つ。綺羅びやかな金髪と、真白い制服は彼女の高潔さをこれでもかと主張せんとばかりにはためいた。
 そんな物言いを受け、対面に座する童女は溜息を漏らした。しかしそれでは決して向かい合った少女を嘲るような色が篭められてはいない。むしろ――姉妹を見守るような温かい感情が宿っている。

「ま、お前さんならそう結論付けるだろうと思った」
 童女は小さな身体を揺らして薄く微笑んで見せる。その手には、童女の体型にはひどく不釣り合いな酒瓢箪がぶらさげられている。風紀の象徴とも言わんばかりの少女と、その振る舞いは対極の境地にあった。
 されど。童女に現代人間社会の風紀は通じない。
 なぜなら童女は、その小さな頭から捻れ伸びる双角が示す通りの人外存在。”鬼種”なのだから。




◇     ◇     ◇



 クリステイアーネ・フリードリヒは騎士である。
 親を慕い、日出ずる国に夢を見て、和を学び、人生の宝に値する友を得た武士である。
 何よりも正義を重んずる気高き乙女である。

 たとえその融通を殺した正義が不和を生む事を顧みたとしても。
 信じ続けた親に反する事になったとしても。 
 それでも彼女の心に義の心が絶える事は無かった。

 故に――記憶を取り戻し、聖杯戦争の運びを知った彼女は真っ先にこの戦争を否としたのは、自明の理であった。



「他者の命を贄に得るべき願いなど――この私には存在しない。他の誰かにもあってはならない」

 手元のレイピアは、偽りの世界にあってなお彼女の寄る辺として銀色の光を放つ。
 それを見やって、サーヴァントはあえてクリスの「宣誓」を遮るように口を開いた。

「成らば人間。お前はその義を以って何を為す」

 童女の姿から放たれる声色は決して子供のそれではなく、平安の世に憚った鬼としてのそれであった。
 その鬼の言葉をクリスは動じる事なく聞き入れ、座する己がサーヴァントに向け力強く宣誓した。

「――自分はこの戦いを止める。こんな邪道は、地獄は、義に外れた理が世を司るなど、この私が認めんっ!」

 この偽りの世界にも居た、愛すべき仲間たち。
 その何れもが、例え偽物であったとしても。自分の様に正面から矛先を向ける形になるまいとも。
 同じくしてこの戦争を肯定はしまいという確信が、クリスの確固たる信念を固めていた。


「ん。……ならそうしようじゃないか、マスター」
「え」

 瓢箪の酒を一口。しかしサーヴァントはそんな力強い言葉を聞き、何でもない風に返すのだった。
 呆気にとられたクリスは思わずぽかんと口を開く。双方の間にあった先ほどまでの緊張感は、とっくに霧散していた。


「いや、”え”ってさ。今のがただのポーズって玉でもあるまいに。どうしたよ」
「だって、内心こんなことを言ったら怒られると思ってたんだ」

 すっかり勢いを削がれた風にクリスは小さく漏らした。彼女の喜怒哀楽を見て、その数倍の時を生きる鬼はやはり歳相応だなと笑う。

「怒られる、ねぇ。あっはっは、お前さんそれでもあんな事を言った訳かい」
「……ああ。例えそれがお前の意にそぐわない物だとしても、自分は信念を曲げて義に反する訳にはいかないからな」

 どこかバツが悪そうに口ごもるクリスの頭を、愛おしそうに小さな手が撫ぜる。
 立場が逆だと、見てくれの構図に赤らむ彼女を、この鬼はいたく気に入っていた。

「それが良かったのさ、マスター。お前の信念……というか、生き様がな。それだけで私がお前さんの義を全うするには事足りる」
「……萃香」
「アサシン、と呼ぶがいい。余り嬉しくない称号だが、真名を漏らして良い道理も無いよ」

 慈しみに満ちたその言葉を、クリスは複雑そうな顔で受け止めてみせる。
 ドイツで生まれ育った身ながら日本人以上に日本を愛し、その道に限っては軍師の渾名を持つ友に引けを取らぬ聡さを持つ彼女は、この鬼の本質を既に悟っていた。

「……『情けなしよと客僧たち、いつわりなしと聞きつるに、鬼神に横道なきものを』……か」

 大江山の鬼の辞世の句。鬼のサーヴァントの最期を語る言葉が紡がれる。
 鬼はその言葉を、どこかむず痒そうに聞いていた。


「言ってしまえば、そんなもんは我儘に過ぎないんだがな。しかし、よく知ってることだ」
「日本の文化はだいたい知ってるんだ」

 えへんと胸を張るクリス。それ以外の成績を顧みれば決して無心に威張っていいものではないのだが。
 まあ、趣味を磨くことは決して悪ではなかろう。今は成績を気に病む余裕のある時でもなし。


「邪道を以って征する――裏返せばそうするしか無かったって事なんだよ。
 手を選んでいたら私は殺せなかった。謀を用いてでも首を狙われるだけの事を私はしてきた。
 だからそれは畜生にも劣る人面鬼心にとり当然の報いで、死に様に今更は未練はないさ」

 鬼は、平安の世の生に思いを馳せる。
 その名を酒呑童子。源頼光に果たしてその首級を取られる事となった、鬼の頭領。
 マスターであるクリスにとり、悪と言える伝説の持ち主は、昔話をするように自らの末期をそう語った。

「マスターが怒られるって思ったのは、私が悪い鬼だから殺し合いを望んでる。
 もしくは憤死に未練を残して叶えたい願いがある、という様なもんを想像してたからだろう」
「ひ、否定はしない」
「怒らないってば。むしろ私の方がお前に怒られそうな生を歩んでるもんだがね」

 鬼は苦笑いしながらマスターを諭す。すっかり保護者と子供の上下関係が出来上がっているが、こればっかりは年季の違いが生まれた摂理というものである。


「でも、ありゃあ全部私の中じゃ終わった話だ。今更どうこうしようって気は無い。
 そもそも私は、こっちに呼ばれる以前に第二の生を歩んでいたからな」
「幻想郷って奴だったか? そっちは自分、聞いた事無いんだが」
「ま、何しろ幻想だからねぇ。現実に生きていたマスターが知らなくて当然の世界だよ。文字通りのな」

 鬼は――酒呑童子でない、もうひとつの名を「伊吹萃香」としていた。
 むしろこちらこそが鬼の本質であり、大江山の絵巻は現世の歴史に置き去りにしていたはずだった。
 あるいは伝説としての「酒呑童子」が、幻想郷に生きる鬼としての「伊吹萃香」と混濁しこのサーヴァントを生んだのかもしれなkった。
 しかし鬼はその答えには拘ってはいなかった。故にクリスには未だ語っておらず、その時が来るとすればこの不透明さを解明する事が是となる時だと考えている。

「そんな訳で――私は未練を晴らすため、とかじゃなくてさ。
 お前さんの義を、『横道なき道』を導いてやりたくてここにいる……って事になる。
 ……今更何を賢人ぶって。とか思ってくれて全く構わないよ。偉そうに言ったところで、これは単なる私の意地に過ぎんからな」

「……いや。そんな事を思うものか」

 儚げに語ったその双眸を、義を宿した少女は蔑む事無く見据える。
 畏れ深き伝説を纏った小さな手をクリスは両手で掴んだ。


「アサシンが過去にした事が何であれ。今ははこうして志を同じくする仲間に違いはない。
 嘗ての悪鬼道理に暴虐を尽くそうという気がある筈でも無いんだろう?
 だったら、自分はお前を否定する理由などありはしないさ」

 萃香を掴む手に宿った熱。その感覚を、萃香はどこか懐かしげに感じていた。

「この手を疑う事なく握り返す事が出来る。矢張り、こんなに嬉しい事は早々無いな」

「改めて願い入れる。自分に力を貸してくれ、酒呑童子……いや、伊吹萃香」

 萃香は感慨深げにその「願い」を聞き入れた後、主の手を握り返す。
 悪逆無道を尽くした鬼神が、正々堂々を尽くす人間の矛となる覚悟を結ばんが為。

「応さ。任せよマスター。お前の義は私が守るでな。
 もとより私は、そのためにここにいるのだから」



【クラス】アサシン
【真名】伊吹萃香@東方project
【属性】混沌・中庸

【パラメーター】
筋力:B 耐久:B 敏捷:A 魔力:C 幸運:C 宝具:A

【クラススキル】
気配遮断:A+
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
 完全に気配を絶てば発見することは不可能に近い。
 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
 『密と疎を操る程度の能力』の霧状化に寄る運用。

【保有スキル】
怪力:A
 一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
 使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。

戦闘続行:A+
 往生際が悪い。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
 源頼光によって首を飛ばされてもなお、襲いかからんと悪あがきをした。

密疎操作:EX(A)
 あらゆる存在の密度を萃め、散らす力。
 自身の身体や岩、意識などその干渉対象は多岐にわたる
 ただしこれは「伊吹萃香」としてのスキルであるため、「酒呑童子」が混ざっている
 アサシンが使用する場合には干渉に著しい制限がかかる。

伊吹瓢:C
 アサシンが持つ瓢箪。中の「酒虫」のエキスによって、
 入れた水を酒に変換する事で、水がある限りはいくらでも酒が取り出せる。

【宝具】
『大江山百万鬼夜行(おおえやまひゃくまんきやこう)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
大江山の鬼の頭領たる酒呑童子、蜜疎を司る伊吹山の鬼たる伊吹萃香、両方の力が顕現した固有結界。
展開される心象風景は酒呑童子の支配した大江山と、伊吹萃香の起こした異変の象徴である宴会場が混じり合っている。
結界の内では茨木童子や星熊童子等、嘗ての配下の鬼たちが召喚されその暴虐を以って仇なす者に襲いかからんとする。
ただしこれらの軍勢は酒呑童子の記憶を核とし、伊吹萃香のに密疎を操る能力を一時的に開放、
応用して再現した事象再現であって独立サーヴァントの召喚を行なっている訳ではない。
そのため展開と維持に多大な魔力を擁するため、派手な力の割にアサシンらしい慎重な運用を必要とする。
また、この顔ぶれには伊吹萃香の記憶が少なからず影響している点があるようだ。


『神便鬼毒酒(しんべんきどくしゅ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
人が飲めば千人力の薬となるが、鬼が飲めば飛行自在の神通力を失うという神秘の酒。
アサシンが持つ伊吹瓢の酒を、更に変質させて盃に満たす事で使用出来る。
源頼光が酒呑童子を討伐する際に神から授けられ、これを飲んだ酒呑童子は毒により動けなくなる。
鬼に属する存在が摂取するとすべてのランクがDランクまで低下し、魔術の類が封じられる。
一方で純粋な人間が摂取すると、身体能力だけならサーヴァントと相対する事も可能となる。
但しどちらも効力は短時間の上、人間が摂取すると大きな副作用を齎す事となる。


【人物背景】
平安の京で暴虐を尽くした最凶の鬼頭領。
正面切り我が道を往くことを信条とし、神便鬼毒酒による謀で源頼光に討たれた時は
「情けなしよと客僧たち、いつわりなしと聞きつるに、鬼神に横道なきものを」と恨み言を投げかけた。
または幻想郷に住まう、幻想と思われいた鬼種のひとり。
宴会が減った事を不満に思い、能力を使って宴会が繰り返される異変を引き起こした。

アサシンはその両方の性質が混ざった特殊な存在。
正確に言えば「伊吹萃香」として召喚され、そこにサーヴァントとしての性質として
「酒呑童子」が交じり合ったという形になっている。

【サーヴァントとしての願い】
マスターの「義」を導く


【マスター】
クリステイアーネ・フリードリヒ@真剣で私に恋しなさい!

【マスターとしての願い】
殺し合いを止める。

【weapon】
  • レイピア
競技用のレイピア。フェンシングを嗜むクリスは常にこれを携帯している。

【能力・技能】
人間としては非常に高い戦闘能力を誇り、武術の達人程度では相手にならない。
素手のみによる格闘術も当然備えており、人間としては相当に強い部類である。
が、川神の武人の中ではそれほど格付けとしては高くはならない。

【人物背景】
川神市の仲良し集団「風間ファミリー」の新顔。ドイツ人。
正義を重んじるが勇敢な少女だが融通が聞かず、空気が読めない。
そのせいで仲間と衝突する事もあったが、過ちを認め反省して成長しつつある。

【方針】
聖杯戦争を止める方法の模索

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最終更新:2015年04月30日 05:38