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プロット(序章) - (2006/11/17 (金) 18:42:45) のソース

41 名前:暫定[sage] 投稿日:2006/11/16(木) 19:54:56 ID:LQWq2smx0
 夕焼けに染まる、雲ひとつない美しい空の下。
 荒れ果てた丘の上に、一人の男がいた。
 地に跪いた男の体は、赤い血で濡れている。
 涙も枯れ果てたその眼差しは瞬き一つせずに、沈む夕日を見つめて。
 男は、体を深々と折り、額を大地に擦りつけ、呻くように呟いた。
 すまない、すまないと。
 男は、壊れたようにその言葉を繰り返す。
 光を失った幾百もの眼と、墓標のように突き立った鉄の箱だけが、その無価値な懺悔を聞いていた。
 やがて光は消え失せ、闇が世界を覆い尽すまで。

 禁断の地、ジュワン。
 その日、数百もの人々と、一人の日本人がこの地から姿を消した。
 一羽の鳥が歌う、目覚めの声と共に。

仮面ライダーGLOW序幕

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 薄暗い部屋の中。
 一人の男が、古ぼけたソファーに座ってテレビを凝視している。
 映されているのはありふれたニュース番組。
 聞こえてくるのは、若いニュースキャスターの声と遠い異国の情勢だった。
「現在、入国が禁止されているジュワンでは宗教団体ノイズを自称するテロ集団と治安維持のために派遣された多国籍軍との戦闘が激化の一途を辿っているとのことです。なお、現地で行方不明となっているジャーナリストの明神 大和さんの消息は依然として判明していません。一年前に発生したテロ集団による現地住民の大量虐殺に巻き込まれたという可能性もあり、安否が気遣われています。また――」
 そこで、音と映像が途切れた。
 男が振り向くと、若い女性がリモコンをテーブルに置いている。
 申川悦子。
 相談所を営む男の助手だ。
「陣内先生、目が悪くなりますよ。それに――」
 部屋の電灯を付け、可愛らしい花の入った花瓶を手に取りながら、男を軽く睨む。
「――相談所が休業の間、花の世話は自分がするって約束、しまたよね?」
 花瓶の水を取り替えてやりながら、淡々とした調子で男を責める。
 彼女と付き合いの長い、男……陣内 強には、冷淡な表情の下に隠された憤りが察せられた。
「いや、面目ない。ちょっと仕事の方が手詰まりでさ。つい、ね」
「万年、借金取りに追われている陣内先生が、私の仲介もなしに手詰まりするほど大変な仕事、ですか」
「あー、それはね。俺の個人的な親交というかコネというか……」
「この前の情報屋さんのガセネタに、いくら支払いましたっけ」
「ええと、それは、えーと……」
 途端に怪しくなる強の様子に、悦子はため息をつく。
「そんなに大切なんですか、大和って人のこと」
 的確な悦子の物言いに、強が押し黙る。
 その通りだった。
 相談所を休業にしているのも、そこら中を駆けずり回り、嫌味な連中に頭を下げて情報をかき集め、一時期はジュワンへ密入国しようとしたのも、全ては行方不明となった友人、大和のためだ。
「まあ、ね。あいつは俺のためにいろいろ無茶なこともやってくれたし、ガキのころからの付き合いだからな。腐れ縁ってやつさ」
「それで、この有様ですか」
 花瓶を置きながら、悦子は部屋を見回す。
 台所には水浸しの食器が放置され、屑箱には空になったインスタント食品ばかりが捨てられている。走り書きが記された大量のメモが散乱し、机の上の灰皿には溢れ出さんばかりの吸殻が詰め込まれていた。
 それらが、ここしばらくの間、寝食を削って大和を探し続けた強の内面を雄弁に語っている。
「片付ける余裕がなくってさ。本当は、一秒も無駄にしたくないんだけどね……」
「これじゃ、明神さんを見つける前に陣内先生の方が倒れますよ」
「わかってるさ。でも、ね」
 思いつめ、表情を曇らせる強の様子に、悦子は諦めたように頭を振った。
 強に綺麗なお辞儀をして、手荷物を取り部屋を出て行く。
 年下のお嬢さんに説教される自分の情けなさに嘆息する強。
「あの」
 強が振り向くと、出口から悦子が顔を出してこちらを伺っている。
「無理しないでくださいね、叔父さん」
 一瞬、呆気に取られた強だったが、悦子を安心させるように笑顔を作った。
「大丈夫。いろいろ迷惑掛けてごめんな、えっちゃん。君は俺にはもったないぐらい、優秀な助手さ」
 小さく頭を下げ、帰宅した悦子を見送った強は、部屋を見回して苦笑する。
「久しぶりに、掃除するかな」
 いつの間にかに、灰皿の吸殻は片付けられ、テーブルには布に包まれた手製の弁当が置かれていた。

 申川 悦子の両親は、数ヶ月前に原因不明の事故で死亡している。
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