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レイジングガイア上層部が司令部に一堂に会している。

状況を全て報告し終えた「クラーケン1」のレジットは下がり直立不動の構えを崩さずに居た。

『ネバードさんは、規律の緩さを問題にしたいわけですね』

ミッションテンペストの被害報告、対策会議は被害の大きさを反映してか、面々の表情は暗かった。

『戦力は規律、訓練で生きるものだ、烏合の衆では…いつか痛い目を見ると言ったろうに』

よく日焼けした表情にシワを寄せ、苦々しく吐き捨てるのはテラ統合軍幕僚長ネバードだ。

その言葉に奥歯を噛締める思いのレジットは無言で視線を落とした。

テラ軍から出向での参加をしたレジットの部隊崩壊も彼のシワを深くさせる要因ではあった。

『ふむ、チーム統制の重要性は以前からも議題に上がってはいましたね…』

議題の話を纏めているのはリヒタール。ユグラで一国の王をしていた彼の言葉はあくまでゆっくりだ。
まだ30半ばという若き器には似つかぬ雰囲気すら感じさせる。

『それより改種『揚羽蝶』が、さしたる戦益もあげなかった方が衝撃よのぅ』

幼い少女の声は金剛機の性能テストかの様に『クラーケン』の壊滅データを分析している。

『知念胤殿、相手は上位と思わしき天使…クラーケンも一部隊では厳しかったのでしょう』

深い赤の緋袴(ひばかま)と目を引く真紅の千早が印象的な少女「知念胤梨緒」
素顔を仮面で隠していないことからも解る高位の巫女。神宮家の部の位を任されているのだ。

『残った画像はコレだけじゃな?天使のこの体皮は確か6連珠式改も傷無しのはずじゃ弐式では通るわけが無いのぉ』

知念胤の手元には破壊された金剛機、ヨロイの明鏡から引き出された瞬殺されたデータが資料に纏めてある。

『これ程までとは・・・見事と言いたくなる高出力じゃの』

(ギノとやらの動きを‘神の目’で追わせるべきじゃったな)

『小娘!!神宮家の研究の為に部下達は死んだわけでは無いぞ!!』

思慮に耽る知念胤をネバードが一喝するが、少女は何処吹く風で受け流す。

『Mrネバード、落ち着いて話しをしましょう。しかし彼女の言うように興味深いデータですね。人語を解す・・・と』

リドル・オットマンは静かにたしなめ冷静に場を仕切りなおす。
その目は天使ギノ、天使ミトラの項目で止まり僅かに眉をひそめた。

『オットマン、エンゼルベルトの調査は進んでいるんだろうね?』

重い沈黙を解除しゼンリフュールが若き司令に投げかける。

『地道に進めていますよ。確かなデータというものは幾重にも検証を重ねる必要がありますからね』

『ですが、近日中には興味深いデータを提示できると思いますMissベルゲン』

ゼンリフュールは小さく頷き皆を見渡す。
依然沈黙を守っているのは難しい表情の「酒水」と退屈そうな「サラ」である。
各戦闘部隊「1隊」のリーダーも召集されているが任務でこの場には居なかった。

『ともかく・・・ヴァルキリーも含め規律が取れん原因となる部隊は‘大惨事’の危険因子として見直すべきだな』

ネバードの語気は荒い。兼ねてから彼の‘軍隊流’を遠ざけていての今回の出来事だけに周りも反論する事は無い様子だ。

『再編成が必要と・・・?』

リヒタールが先を促す。

『うむ、ゼン殿が‘まだ’首を縦に振らぬというのであれば仕方があるまいが・・・な』

『型に入れ込むと長所を潰す輩が多いのだがな』

目を合わせもせず酒水が反論をぶつける。

『ふんっ!その考えが纏まりの無いチームを甘くさせ崩壊に導くんだろうよ!!』

ネバードが言い終わる間際大きな音がソレを遮り机を叩き立ち上がるサラ。

『ちょっと!!下らない意地の張り合いは沢山!!!死者や怪我人を減らす努力をしなさいよ!!!』

それだけ言うとガタっと座りなおすサラ。その剣幕に押されたか一瞬静かになる部屋。

『・・・・・・妾もネバード殿に賛成じゃな。失敗を乗り越える変化は必要と思うぞ』

『私も多少の編成見直しには必要を感じるね、当然現在の任務に支障が出ない事が最低条件だろう』

梨緒とリヒタールが、意見を並べた段階で他からの異論は出なかった。
リヒタールは最後に「見直し案を再度提出しますよ、ネバード殿のアドバイスを貰いますので」と短く締めた。

『では今日は解散になる。各人の今後の更なる協力を頼む、天使から最後の大地を守るのが我々共通の使命じゃからな』

ゼンリフュールは其々を見回し厳しい表情を崩さず語ると長い裾を翻し退出するのだった。

(・・・ヴァルキリーの戦力が大きくなりすぎたかね・・・まぁ少し振る方が見通しが良くなるかもしれないね・・・)






全員が退出した司令部に座る梨緒、伏せた瞳の世界には報告を行う宮司が映っていた。

「回収した揚羽蝶2機、心珠は問題ありません明鏡の業は八分といった所でしょうか」

『では白金の手配を』

「了解しました、機体との合流地点にて検体と御待ちします」

『八分からの引き上げも必要じゃの、犬でも狼でも呼ぶように』

「そちらも手は打ちます、では」

暫くの後、知念胤は目を開きゆったりとした動作で立ち上がる。

(6割程度の完成度かの・・・有る程度の駒は必要と見るべきか・・・)

静かな部屋に着物の擦れる微かな音だけが空気を震わせていた。
最終更新:2009年05月08日 21:30