シーツごと跳ねる様に上半身を起こす。
(いつもの夢か・・・わしは何時これを拭いされるものか・・・)
まだ薄暗い無機質な部屋で、ひとつ息をつき服の乱れを直す。
(まだ早いが、もう眠れまい・・・)
目覚ましの一杯を入れる為キッチンへと、茶葉を淹れたポットを手に
窓辺の椅子に腰掛ける。
タルタロス艦橋、司令室に隣接する部屋の窓は小さい。
暗闇を見据え僅かに表情を曇らせる。
(ヤツらは何を考えておるのか・・・?)
手にしたマグの持ち手は夜の冷気を伝える。
(いや・・・何も考えておらぬだろうな・・・)
まだ薄めで注ぎ、ティーに口をつけゼンは再び思考を巡らす。
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それは不意に空に現れた。
いつからそこにいたのか?
飛空船とも宇宙船とも言われる馬鹿らしい質量を持った空に浮く乗り物。
現れた天使は脅威の能力を持ち、我々ユグラをあっという間に焦土と化した。
ユグラにも多くの国家が存在し、その単位での抵抗はあった。
今目の前にする天羅の剣士に匹敵する騎士達も、
テラで蒸気とエーテルを操る彼らに匹敵する魔道師達も、
妖と同列にするなら上位に位置する力を持つ古竜達すら
反撃といえるソレを行うことも出来なかった。
そう、『一瞬の始まり』だった。
圧倒的な光が次々と降り注ぎ、等しく全てを焼き払った・・・。
数度の攻撃で完全に反撃の出鼻を挫かれたのだ。
国単位での壊滅は組織的反撃の芽を摘み取り人々は逃げ惑った。
逃げる場所など有りもしないのに・・・。
焦土に変わり果てたユグラに圧倒的な光が降り注いだのはその数日間だけだった。
ユグラの中心、いやほぼ全域は壊滅し地方の生き残りと奇跡的に生き残った一部が
反撃を試みた。
監視者と名付ける事になる尖兵達は熟練した騎士や魔道師であれば対抗しうる事が
解り、有翼の天使も多くの仲間の屍と道連れに倒すこともあった。
天使には階級らしき上下関係があり、当然上位のものは強い能力を持つ、支配の構造
は人類に近いものがある事がわかる。
始めの大破壊『メテオカタストロフィ』を引き起こした存在はどれ程の力を持つのか・・・
自分達の力が全く及ばないのであれば、神に祈るしか無いのではないか?
仲間と地下に篭り、監視者と戦い、生存者を探す。
仲間を失い、天使から身を隠し、死者を弔う。
数ヶ月・・・半年・・・戦いはユグラの敗色が決められた後も続いていた。
流す涙も枯れ、乾いた激情が体を突き動かしていた。
(乾いた記憶.1 了)
最終更新:2009年05月02日 11:49