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41-でかけりゃいいってモノじゃない!

第四十一話 でかけりゃいいってモノじゃない! 投稿者:兄貴 投稿日:08/11/17-14:06 No.3739
「さて、エヴァと刹那はどっちが勝ったかな?」


超との談笑を終え駆け足で会場へ戻るシモン、結局自分の試合の準備などまったくせずに試合に挑むことになりそうである。息を切らせてようやく会場まで辿り着いた、しかしその時大歓声と朝倉の声が上がる。


『マグダウェル選手ギブアーップ!!途中劣勢だった桜咲選手でしたが見事逆転の一撃で勝利を手にしました!!』


「あっ・・・遅かった・・・・どうしよ・・・エヴァに怒られるかも・・・・」


まさにシモンが丁度たどり着いた瞬間に勝敗が決していた。リングの上で倒れるエヴァ、そしてエヴァに慌てて駆け寄る刹那にアスナ、そしてネギ。どういう結末だったかは分からないが大会前の沈んでいた刹那と比べるととても明るい表情をしていた。すると彼女はエヴァの手を掴み何やら頭を下げてお礼を言っているような様子だった。


「刹那?・・・どうしたんだろ?そう言えばヨーコがエヴァに刹那をイジメろって言ってたけど・・・・そのわりにはいい顔してるな」


刹那の今の顔は何か満ち足りた表情をしている。試合前に木乃香とわだかまりがあったようで気になっていたが、どうやらエヴァとの試合で彼女もまた何かを掴んだようである。


「まぁ、別にいいか・・・・・・それは刹那の問題だしな・・・・・。とりあえず俺の試合には間に合ったようだしな・・・・・」


一瞬あせったが自分の出番には間に合ったことを確認した、


「さて・・・行くか!」


笑みを浮かべシモンはコートを翻しゆっくりと戦場へと向かった。


(美空も勝ったんだし、俺も相手がヨーコだからって負けてられないな。・・・・・・・・・ヨーコ・・・・と・・・か・・)


その途中シモンは過去を振り返っていた。それはまだジーハ村にいた頃の話である。あの時地上から落ちて来た女性、彼女との出会いが全ての始まりだった。時にやさしく、厳しく、そしてたまに突き放したりもした。それだけ彼女は自分と変わらぬ歳でありながら多くの悲しみを幼いときから乗り越え戦場で戦っていた。


(思えば・・・・・もう随分とメンバーが減ったな・・・・大グレン団も・・・・)


カミナを始め多くの英雄たちが戦いに命を落とした、その中には自分の最愛の女性もいた。しかしヨーコは生き残った、運命の旅へのキッカケを与えた女は今でも変わらずにいる。それがうれしくもあり、当時を知るものがそれだけ少なくなったことに少し寂しくもあった。もし今日戦う相手が戦友のヴィラルだったならこんな気持ちにはならなかっただろう。しかしヨーコだけは違った、共に戦場を駆けながら、シモンがどん底にいたときも知っている、それが大きかった。


「・・・ヨーコ・・・・いつもお前は人前では強かった・・・俺はお前の弱かった姿を知らない・・・・でも・・・今日は・・・・俺が勝つ!」


拳を強く握り締め、彼は誓った。






場所は変わって選手控え室、知らぬ間に激戦を終えた刹那とエヴァンジェリンをネギたちが囲む。そんな中エヴァは少しつまらなそうに呟く。


「ふん、刹那をもっとイジメてやりたかったが・・・・」


大会前に腑抜けた刹那をイジメると公言していたエヴァだったが、どうやら自分が考えていた通りに行かなかったようだ。その言葉を聞いて刹那は今の自分の心境を語る。


「今の私は・・・・たしかに中途半端です、剣も日常での暮らしも・・・・友達への態度・・・私と同じ様な・・いえそれ以上の過酷な生き方をして来たアナタから見れば不快に感じるでしょう・・・・」


「そうだ・・・・だから私はキサマに問いただしたのだ、剣と幸福どちらを取るのか・・・・・・」


すると刹那は力強い瞳で答える。


「はい、お嬢様と以前より心を近づくことが出来、最近の私はそのことに妥協しタルんでいたと思います。あなたに言われてハッキリ気づきました」


「ほう、それで・・・・キサマはどうするのだ?半端に生きるのか?剣の道を進み大事なお嬢様を守るために強くなるのか?それとも・・・」


「・・・・言えません・・・」


「それとも・・・・・ん?・・・・・はあ!?」



なんと刹那はエヴァの質問に対して即答した。その答えにエヴァを含め木乃香やアスナたちも驚いた。そして次の瞬間エヴァはプルプルと怒りに震えながら口を開く。


「ほっほ~う・・・キサマ・・・あれだけ試合中でも私がクドクド説教をしてやったというのに・・・・その・・答えが・・・」


エヴァは人外の境遇にありながら最近の腑抜けた刹那を気に食わないと思っていた。煮え切らない刹那に苛立っていた。だからこそ彼女は刹那の本心を引き出そうとした、今の半端な生き方をする刹那はどうするのかを問いただそうとした。しかし


「その答えが・・・・今は言えないとはどういうことだーーーーー!?キサマそんなことで言い逃れを出来ると思っているのか!?」


刹那はエヴァの質問に決して答えることはなかった。「分からない」ではなく「言えない」それは答えがすでに出ていることを意味していた。正直刹那の本心を木乃香やアスナたちも聞きたいと思っていた。しかし刹那は言わなかった、それには一つの理由があった。


「今・・・この場で言っても・・・・いえ・・・今はまだダメです・・・・・」


「どういうことだ?」


刹那は誤魔化すのではなく、その意味を答える。


「私が今後どういう生き方をするのか・・・・・・当然教えます、むしろ知ってほしいです・・・・アナタにも・・・ネギ先生たちにも・・・そしてお嬢様・・・いえ、このちゃんにも・・・。ただ・・・まずはあの人に聞いてもらいたいのです・・・・」


「むっ!?」


「せっちゃん・・・・それって・・・・」


刹那の言葉にある人物を連想した木乃香は刹那に尋ねる、すると刹那は少し顔を赤らめて頷く。


「今日・・・ネギ先生や美空さんに踏み出した勇気が自分を変えることが出来ると教わりました・・・・・でも・・・本当はもっと前に教えてもらっていたんです・・・・あの人に・・・・」


刹那は修学旅行での出来事を思い出した。初めてシモンと向き合った日のことを、そしてあの時、自分が一歩を踏み出していたことを思い出した。今までずっと会話することすら出来なかった木乃香に勇気を出して自分から話しかけた日のことを。


「私はあの時一歩だけ前へ踏み出しました・・・・しかし二歩目を踏み出していなかった・・・、しかし今は違います・・・剣と幸福、私が選んだ道はまずあの人に言ってから私は・・・・二歩目を踏み出します!」


それが刹那の決意だった、力強く答える刹那にエヴァは何も言うことが出来ずに呆れてそっぽを向いてしまった。刹那自身がすでに答えを持っていることにネギたちも少し安心して、刹那が告げるその時を待つことにした。


「このちゃん・・・・それでええ?少しずつやけど・・・・ウチも昔みたいになれるようがんばるから・・・まずは・・・・・」


「ん!モチロンや!せやから、せっちゃんもちゃんとシモンさんに言うんやよ?」


少し不安そうに尋ねる刹那だが、木乃香は満面の笑みで頷いた。その言葉を聞いて刹那も小さく「ありがとう」と呟いて微笑んだ。



『さあ続いての試合を始めます!選手の方はリングにお越しください!』



朝倉のアナウンスが響き渡る。その放送を聴いて彼らは顔を見合い頷きあった。


「行きましょう、シモンさんたちの試合です!」


「そうね~、どっちが勝つのか興味あるわね~」


放送を聞き全員が試合を見物するため移動しようと思ったら、今まで黙っていたハルナが口を開く。


「なんかさ~、さっきのエヴァンジェリンさんや桜咲さんの会話はよく分かんなかったけど、やっぱりシモンさんが絡んでんの?」


「えっ・・・まあ・・・半分は・・・」


―――キュピーン!

「ふ~ん(ニヤリ)」


刹那の言葉にハルナは妙な効果音を立てて目を光らせた。するとまるでパズルが完成したかのような笑みを浮かべる。この表情に全員が嫌な予感がした。夕映やのどかも付き合いが長いだけにそのことを明確に感じ取っていた。


「ハルナ・・・どうしたですか?」


「ん~?いや~、相当大きな泥沼劇だな~ってね」


「・・・・何がですか?」


夕映は少し不安になりながらも、いやらしい笑みを浮かべるハルナに尋ねた。


「いや~だってさ~、のどかやアスナはネギ君にラブラブわけじゃ~ん?」


「へううううう」


「ちょっ・・・何テキトーなこと言ってんのよ!?私が好きなのは・・・・・(高畑先生・・・って本人の前じゃ言えないよ~!?)」


「ふふ~ん、でもネギ君はヨーコさんが好きなわけだ♪」


「「「「うおっ!?」」」」


「なな・・・なんで知ってるんですか~!?」


「くっくっく、私の嗅覚を舐めてもらっちゃあ困るよ~!そんでもってシモンさんもヨーコさんが好きだったわけだ~」


胸を張りながらハルナは面白おかしそうに語っていく、タカミチや小太郎もネギがヨーコのことを好きだというのは初耳で少し興味深そうに聞いていた。


「で、木乃香とエヴァンジェリンさんに桜咲さんとシャークティ先生はシモンさんが好きなわけだ~♪」


「ウチはそやよ、せやけど・・・・・」


木乃香が刹那とシャークティを見る。すると顔を真っ赤に俯く刹那と少し呆れ気味のシャークティがいた。


「あの・・・その・・・私は・・・・」


言いよどむ刹那、それを見て木乃香は刹那の肩に手を置く。


「せっちゃん、せっちゃんがどういう道選ぶか知らんけど・・・・それぐらい教えてくれへん?せっちゃんはウチの好きな人知っとるのに、ウチだけ知らんのは嫌や・・・」


「うっ・・・このちゃん・・・・」


「はいはい!では桜咲さん!ちゃっちゃと答えよう!Do you love Shimon?」


刹那の口元に全員が注目する、タカミチですら口を挟まず注目する。真っ赤な顔して何度も口をパクパクさせる刹那、傍らではアスナや木乃香が「がんばれ」と声を掛けている、そして・・


「うっ・・・・あの・・・・その・・・・・・・・・・・・・・イエス・・・アイドゥ・・・・・」


ほんの僅かな呟きだったがこの場にいた全員には理解できた。木乃香は暖かい笑みで頷きハルナはガッツポーズをしている。


「うっしゃー!はいはい認めたね~、いや~可愛いね~桜咲さ~ん」


「せっちゃん、よ~がんばったわ!そやったんなら早く言ってや~」


「あはは、刹那さん可愛い~」


「ふん、色ボケ剣士が!だからキサマは半端なんだ!」


一人つまらなそうに舌打ちするエヴァだが、アスナたちは笑顔で刹那の肩を叩いた。しかし一人大人の余裕でため息をつくシャークティがいた。


「まあ、桜咲さんは別として・・・・なぜ私まで入っているのですか?私は違いますよ・・・」


どうやらシャークティは自分がシモンを好きだと言われていることに納得していないようだった。


「え~、違うんですか~?」


「たしかに・・・私もそう思っていたんだがな・・・・・・」


エヴァもハルナ同様にシャークティはシモンを想っていると思っていた。しかし以前そのネタでからかったときは、冷静さを忘れ顔を真っ赤にして動揺していたはずの彼女が今ではまったく動じず冷静に否定している。そのことに少し違和感を覚えた。するとシャークティは今の自分の気持ちを説明していく。


「たしかに・・・彼と出会った頃はそんな気持ちがあったかもしれません・・・・どこまでも熱い心を持つ彼に惹かれました・・・・しかし彼は言いました、私や美空、そしてココネを友人ではなく家族だと言ってくれました・・・・」


「そういえば・・・美空君もココネ君も、彼のことを兄と呼んでいるね・・・そういうことだったのか・・・」


タカミチは納得したように呟く。シモンが来た当初、いつも冷静で厳しかったシャークティは明らかに丸くなっていた。それが同僚のタカミチから見ても不思議に思っていた、おそらくその時はシモンに惹かれていたんだろうと想像できた。


「でも家族って・・・それで納得できるんですか?好きだったんですよね?」


アスナはシャークティの発言を疑問に思い聞く、これは木乃香たちも気になっていた、好きだった男をそうやって割り切ることが出来るのか。しかしそれがシャークティと木乃香たちとの違いであった。


「当初は彼と二人で出かけたりなど、甘い想像に顔を赤くする自分がいました・・・ですが・・・・彼に家族と言われて、なんでしょう・・・それが一番うれしかったんです・・・そしてそれが一番の形だと自分で思ったのです・・・」


美空も以前シャークティにシモンへの想いの形を聞いたとき、同じことを言っていた。そしてそうやって割り切れることが大人の魅力なんだと思った。しかしアスナたちはシャークティの発言を聞いても納得がいかなかった。


「そなんかな~・・・せやけどウチは・・・・もっと・・・・・」


木乃香も少し納得がいかない表情だった。それはのどかも同じだった。好きという気持ちをそんな簡単に割り切れるものなのか、それとも自分たちがまだ子供なだけなのか、判断できなかった。


「ふん、随分と日和ってるじゃないか?それが大人の考えのつもりか?まあ、キサマがそれでいいなら別にかまわんが・・・」


「僕は・・・・・シャークティ先生の気持ちは分かるかな・・・・」


「えっ!?高畑先生も~!?そんな~・・・・・」


タカミチがシャークティの意見に同意したことによりアスナは焦ってしまった。割り切ることが大人になることだとしたら、あまりにもそれは寂しすぎると思っていた。するとシャークティはやさしい笑みを浮かべた。


「ですが・・・あなたたちが違うと思うのなら、自分が思ったとおりにすればいいと思います。どんな大人になるかは自分たち次第です、それはシモンさんも言っていたでしょう?木乃香さん達がシモンさんと恋人のような時間を過ごしたいと思うならそうすればいいと思います・・・」


まるで子供に諭すかのように温かい言葉を送るシャークティ、その笑みに木乃香たちは少し顔を赤くした。ヨーコとはまた別のタイプだが紛れもなく大人の魅力を兼ね備えた女性であると思った。


クルッと背を向け「では試合会場へ行きましょうか」と告げるシャークティ、その背中から神々しさを感じた。その言葉を聞いてアスナたちも後に続こうかと思ったが・・・・・


ハルナの一言に事態は一変した。


「なるほど・・・そういうことだったのか~・・・」


立ち尽くすハルナ、彼女は何か合点いったかのように顎に手を当て呟いた。その様子に再び全員が足を止めて振り返る。


「何か?」


「いや~・・シャークティ先生からは木乃香たちのようなラブ臭を感じなかったんだけど・・・そっか~家族か~」


「?・・・・ええ、そう言いましたけど・・・・・それが何か?」


―――ゾクリ!


その瞬間言い知れぬ悪寒が襲った。それほどハルナの醸し出すオーラから不気味なものを感じた。ふっふっふ、とあやしい笑みを浮かべるハルナ、その様子に皆一歩引いてしまう。するとハルナは・・・


「つまり・・・夫婦ってことじゃないっすか?」


「「「「「「「はっ!?」」」」」」」


ハルナの発言に全員キョトン顔になる。


「つ、ま、り、木乃香たちがシモンさんとデートしたりイチャついたりのラブラブな恋人関係を望んでいるとしたら!シャークティ先生はすでにシモンさんとはお互いを理解しあい共に暮らす長年連れ添った夫婦!どうっすかこれ!」


拳を強く握り締め熱く語るハルナ。全員呆然とする中、シャークティは夫婦という言葉を想像する。





(夫婦・・・・夫婦ですか?・・・それって・・・・)








緊急シャークティ脳内劇場

夫役 シモン

妻 シャークティ

娘 ココネ




「ただいま~」


少し疲れた顔をして、仕事から帰ってきたシモン。それをパタパタとスリッパの音を響かせながら、笑顔で出迎えるエプロン姿のシャークティ。


「おかえりなさい!ご苦労様です、お夕飯はもう出来てますよ」


「ああ、それじゃあ先にいただこうかな」


仕事の鞄をシャークティに無言で渡しネクタイの紐を緩めるシモン、そこに駆け足で寄ってくる一人の娘。


「お帰り!」


ココネがシモンの腰元に抱きつく、シモンは笑顔でココネを抱きかかえる。


「ただいまココネ!ちゃんといい子にしてたか?」


「ウン!オナカ空いた・・・ゴハン・・・ゴハン」


「はいはい、今支度しますよ、ココネも手伝ってくださいね♪」


それはどこにでもありふれた家庭のありふれた日常の様子、食卓に並ぶ食事を3人が囲んで同時に祈りを捧げながら箸を突付く。


「「「アーメン、・・・・いただきます」」」


「ああ~おいしいな~」


食事に手を伸ばし頬張るシモン、すると横にいるココネがシモンの裾を引っ張る。シモンが見下ろすと、ココネが箸で突き刺した料理をシモンに向けていた。


「これココネが作ッタ・・・・ア~ン・」


「本当か?ア~ン・・・・・・・・うん!おいしいよココネ!」


笑みを浮かべてココネの頭を撫でるシモン、ココネも照れながらもその顔にかすかな笑みを浮かべる。するとシャークティも顔を赤らめて箸を差し出す。


「あら、ココネの作った料理だけですか?・・・・あなた?・その・・・はい・・あ・・あ~ん・」


笑顔の絶えない一家団欒、それはどこにでもある日常だった。しかし僅かな間にそんな妄想をしたシャークティは・・・・







(そ、そんな~~・・し、幸せすぎます~~)


イヤンイヤンと頭を振るシャークティ。そこには大人な女性である先程までの姿は無く、恋する乙女の姿があった。


(・・・はっ!?)


しかし妙な視線を感じ、急にハッとなった。慌てて妄想から現実へ戻ると目の前にはニヤニヤ笑うハルナがいた。


「うっひょ~マジすか!?カマかけてみたけど恋人より夫婦が想像できるんすか!?」


「あっ・・いいえ・・・・その・・・今のは少し驚いただけでして・・・その・・・」


「いや~確かに大人の考えっすよね~、まさか恋人跳ばして夫婦か~、こりゃあ木乃香たちの最大のライバルだね~」


完全に15歳の少女の手の平で遊ばれているシャークティ、もはや大人の余裕など微塵もなかった。


「あなたたちも、何とか言ってください!私は・・そんな・・・ことなど・・・、むっ!?・・」


シャークティはハルナに勝てないと思い咄嗟に援護を要求しようと他のものを見た。するとあることに気づいた。


「あなたたち・・・一箇所に固まって何を?」


ハルナの後ろで他の者たちは全員のどかの後ろに集まっていた。そしてのどかは手に大きな本を持っている。彼女たちはのどかの持っているその本を全員で食い入るように覗き込んでいた。

少し・・・いや、かなり嫌な予感がした。


「宮崎さん・・・・その手に持っているのは・・・・・」


シャークティの声が震えていた。いや、最悪の事態を想像してしまった。なぜなら、もしのどかの持っている物が自分の想像通りのものだとしたら・・・


(まさか!?いえ・・・・そうだとしたら・・・あれは・・・たしか宮崎さんのアーティファクトは・・・・・)


のどかのアーティファクトは相手の心を読み取り本に写し出す。

のどかの後ろにいるものたちは顔を真っ赤にして唖然としている。


(ま・・・・まずい、まずい、まずい、まずい!!まさか・・・・今の私の妄想を・・・・・)


シャークティの動揺がピークに達する。事情を知らないハルナは頭に?マークを浮かべて後ろを振り返る。すると次の瞬間・・・・


「「「「「「なんじゃこりゃーーーーー!?」」」」」」


一気に怒号が響き渡る。その声は会場まで聞こえるほどだった。

まず真っ先にエヴァが駆け寄りその後に他の者も続く。


「シャークティー!キサマ~日和った発言しておいて、この妄想は何だ!?しかもちゃっかり子供までいる設定で、一体どんな三流ママゴトだ!!この妄想シスターめ!!」


「あんまりや~!夫婦てそんなん、ずるすぎや~!しかも・・あなた・・・て・・・・あなた・・て・・」


「わ・・・・私たちが子供に見えるわけですね・・・まさかそんな先の想像まで・・・・」


「つうかココネが登場して私が出ないって酷過ぎじゃないっすかシスターシャークティ!?つうかやけにリアルな設定だなこれ!?」


「「「大人だ・・・・」」」


結局彼らが試合会場へ移動するのにはもう少し時間がかかってしまった。









この様子を外から眺めている一人の女が居た。彼女は声を掛けることをせず、ため息をついていた。


「平和なもんね~、それにしてもあの子たちニアのこと忘れてんじゃないかしら?」


ヨーコはネギたちが繰り広げている恋愛話を少し離れた場所で聞いていた。


「なんだかね~、アイツがモテてるって意外ね~、まあ昔はニアが傍にいたからシモンもそれほど言い寄られたりしてなかったわけだけど・・・・・あの子達ちょっと美化しすぎなのかもね・・・。ただの熱血じゃないのよあいつは・・・・」


ヨーコは知っていた。シモンのどん底にいた時期を、シモンの弱かったときを知っている。敵から何度も逃げ出そうとした時、さらにカミナが死んだ時に荒れた心の弱さを。だが木乃香たちは違う、シモンの良い所だけしか知らない、愛しかったニアの死を受け入れながらも一日を強く生きるシモン、それが彼女達のシモンに抱いているイメージかもしれない。そのため少しシモンを美化しすぎている部分が多いとヨーコは感じていた。


「このままじゃ木乃香たちのためにならないわね・・・・しょうがない・・・私が教えてあげようかしら、シモンも同じ人間だってことを」


するとヨーコの顔つきが少し変わった。


(教えてあげるわ・・・・アイツだって弱さを持っている・・・・つらいことだってある・・ただそれに耐えてるだけ・・・それを知らずにシモンの傍にいることは無理なのよ・・・・)


ヨーコだけは知っていた、シモンの今は見せない心の弱さを。だからこそ今日全てを白日にもとに晒そうと考えていた。シモンの新たな家族、想いを寄せるもの達、そして友、彼らの中にしみ込んだ強い心を持ったシモンというイメージ、彼女はそれを今日壊そうと考えていた。それを知って初めてシモンは誰かから支えられるだろうと思っているからだ。


(シモン・・・・・時には思いっきり弱音を吐きなさい・・・・今日は私が全部受け止めるから・・・・それが・・あの時・・何も出来なかった私に出来る唯一のこと・・・・)


二アが死んだ日、彼女は旅立つシモンを笑顔で送り出すことしか出来なかった。決して涙を流すことはなく、笑顔で悲しみを覆い隠し、シモンは旅立った。あの時ヨーコはシモンに何も言葉を掛けられなかったことに悔いていた。だからこそ今日彼女は、一年前に出来なかったことをしようと決意した。




『さあ!一回戦最後の試合になります!予選で感動の渦を巻き起こした熱血代表のシモン選手!対するは予選でファンクラブまですでに設立されたキングオブ姉貴の称号を手にしたビキニ姿のセクシーダイナマイトのヨーコ選手!両者これまで学園の大会では顔を出していない無名の選手ながらすでに観客の人気を集めています!』



「「「「「うおおおおおおお!!」」」」」


「シモンの兄さ~ん!漢のあり方を見せてくれ~!」


「ヨーコさーん、好きだー!」


突如学園に現れた二人の戦士、そんな彼らを知るものはこの世界にはほとんどいなかったが、シモンとヨーコ、彼らはたった数日の間で多くの者たちから声援を一身に浴びるまで有名になっていた。騒がれるのは昔から馴れていた、二人とも照れることなく声援に手を上げて応えながら堂々と入場する。


<一回戦最後のカードですがどう見ます豪徳寺さん?>


<はい、私はやはりシモン選手に期待します!あの人こそ男が漢と呼ばれるにふさわしいと思っています!しかし対するヨーコ選手も予選を難なく勝ち抜いたとされる選手です!まずは互いの出方から様子を見ましょう>


会場が注目する中ようやく二人は定位置ついた。これから始まる戦いの直前、互いは少し笑顔を浮かべて向き合っていた。互いが無言でにらみ合う中、先にシモンが口を開いた。


「お前と会って・・・・・8年目・・・でもテッペリンでの戦いが終えてお前とは7年間会ってなかったから・・・・絆は太くても一緒にいた時間は短いのかもな・・・」


シモンが懐かしむような目でヨーコに語りかける。


「そうね・・・お互い少し大人になってはいたけど・・・・アンタと私の絆はちっとも変わってなかった・・・・。でも・・・変わっているものもあった・・・」


「変わっているもの?なんだよそれは?」


首を傾げるシモンにヨーコは鼻で笑いながら答える、そしてその表情はまるでシモンをバカにしているような笑みだった。


「アンタよ・・・シモン、アンタは変わった・・・」


「えっ・・・・・俺が・・・・?」


そのヨーコの表情をシモンは初めて見た。まるで人を小ばかにしたような言い方だった。


「ヨーコ・・・・・どういうことだ・・・・」


「シモン・・・・気付いてないなら教えて上げる・・・・・、大人になるって事は・・・・割り切るって事じゃないのよ・・・」


するとヨーコの顔つきが変わり両拳を握り締め構える。


「あの日・・・・旅立ったあの日から溜まっているアンタの本音を・・・・私が引きずり出してやるわ!!」


その瞬間ヨーコの体から研ぎ澄まされた闘志がシモンに向けられた。ビリビリと肌に感じるヨーコの闘志にシモンは並々ならぬ思いを感じた。それはただのお祭りのイベントでは済まないように感じた。ヨーコの真剣な眼差しを受けてシモンも拳を上げて構える。


「何言ってるか分からないよ、でも・・・一つだけ・・・・・俺は俺だ!それは変わらねえ!」


「変わったって言ってんのよ!!」


『な・・・なんでしょう、両者開始直前になにやら言い合っております、これは一体何があったのか!?しかしここは武道大会!今からは拳で両者に語ってもらいましょう!』


両者只ならぬ空気を出しているが、朝倉も司会者としての仕事を全うするために、二人のことが気になるが開始の合図を出す。


『では、Fight!!』


開始のゴングが鳴り出した。


「さて・・・・・お手並み拝見だね」


「うむ、ヨーコ殿の戦いを見るのは拙者は初めてでござるが・・・・」


一悶着あったが、なんとか試合に間に合ったネギたち、向かい合うシモンとヨーコを見て高畑と楓がネギたちに尋ねる。


「僕たちも素手のシモンさんは・・・・ヨーコさんも龍宮さんみたいに拳銃を使いますけど、この大会では禁止されていますし・・・・」


それはアスナや、付き合いがそれなりに長い美空たちにも分からないことだった。


「そうか・・・・まあシモン君の方は予選で見せてもらったが・・・・とりあえず二人の格はすぐに分かるだろう」


顎に手をあてリング状を注目する高畑、しかし今の発言の意味が分からずネギが聞き返そうとしたらエヴァが変わりに答える。


「たとえばだ、戦闘において闘志や殺気をむき出しにして立ち会うのは下の下、つまり二流三流のやることだ、相手がむき出しの感情を出せば動きが読みやすくなる、タカミチはその点戦いの時でも感情が読み取れず、動きが読めないだろ?」


「あっ・・・・そっか・・・」


「そういうこと、まず出だしの行動でだいたいの二人の格がわかるってことだよ」


タカミチがネギの頭を撫でながら答える、刹那や楓もそのことがよく分かっているようで頷く、アスナや美空、さらには素人の夕映たちも感心しメモを取っていた。

しかし・・・エヴァが少し笑いながら口を挟む。


「しかし・・・それはあくまで一般的な話だがな・・・・」


「マスター・・・どういうことです?」


「くっくっくっ・・・感情をむき出さない・・・・あの二人に想像できるか?」


「「「「あっ」」」」


ニヤリと笑みを浮かべるエヴァの言葉に一同口を半開きにして固まり、ゆっくり首をリングへ向けた・・・すると



「いくぜヨーコ!昔から消えねえ俺の気合を見せてやるぜぇぇーーー!!!」


「だったら教えてあげるわ!!このカッコつけ!今のアンタのメッキを剥がしてやるわ!!」


「「うおおおおおおおおおお!!」」


両者が雄たけびを上げ戦いを始める。


この光景にさっそく度肝を抜かれてしまった一同は口をそろえて・・・・



「「「「「むき出しだーーーー!?」」」」」




ネギたちとは離れた場所で観戦するクウネルはこの状況に少し笑みを浮かべていた。


「まあタカミチ君の言っていることは概ね正しい、感情をむき出しにして戦うのは二流三流・・・・・・もしくは超一流であること・・・・ナギのようにね・・・・」


クスクスと笑いながらクウネルはリングを見下ろす。


「さて・・・・あなたはどうですシモンさん?」


クウネルの言葉は誰にも聞こえなかった。




先に動き出したのはシモンだった、特にシモンは戦略を練らずにバカ正直にヨーコに向かって真っ直ぐ走り出す。それに対してヨーコは一歩も動く気配がない。するとヨーコは突如ポケットから何かを取り出し、それをシモンに向けて投げる。


――ギュン!

「うおっ!」


それは小さなものだった、しかし強烈なスピードと風を切る音を響かせるその小さなものにシモンはとっさに交わす。すると


――ドゴンッ!!!

「なっ!?」


シモンの避けたその物体はなんと壁に大きな音を響かせて突き刺さる。


『なんだ!ヨーコ選手がつぶてのような攻撃を仕掛ける!しかもこれは強烈だ!壁に突き刺さっている!この大会で飛び道具は禁止されていますが、禁止されているのは重火器や矢尻のついたもの等で、投石や投げ縄などは許可されています!』


「ちっ・・・曖昧なルールだぜ!・・・なのになんでドリルは具体名で禁止されてるんだ?」


「あら弱気?早いわね!」


―――ビュッ!ビュッ!ビュッ!ビュッ!


「うおっ!くっ!よっ!」


―――ドゴンッ!!!ドゴンッ!!!ドゴンッ!!!


間合いを詰めての戦いになるかと思いきやヨーコの間合いの外からの強烈な攻撃がシモンに襲う。シモンも少し距離を取って次々と交わしていくが、やっとである。


『すごいすごい!ヨーコ選手、龍宮選手と同様な飛び道具で相手を苦しめる!しかし・・・龍宮選手は500円玉だったが、はたしてヨーコ選手は・・・』


一つずつ投げられても辛うじて交わすシモン、するとヨーコは投げていた武器を大量に取り出す。それは・・・


「お・・・おいそれっ!?」


「ふふ、なに驚いているの?これは教師の必需品よ!」


『なんと・・・なんとヨーコ選手の武器は・・・チョークです!!なんと学園教師のアイテムのチョークを投げています!・・・つうかチョークで床や壁が陥没ってありえないっしょ!?』


「「「「「なにいーーー!?」」」」」


ヨーコが武器として投げていたのはチョークだった。そう、ヨーコの投げたチョークは黒板をも陥没させる。それゆえヨーコのいる学校では誰も授業中に悪さをしなくなったのは、故郷の世界にある小さな離れ小島の学校の生徒たちの間では有名である。観客がその正体に騒ぎ出す中、ヨーコは得意げな笑顔で大量のチョークをシモンに投げる。


「そらそらそら!!余所見をしてると廊下に立たせるわよ!!」


―――ビュッ!ビュッ!ビュッ!ビュッ!


教師のアイテムチョークを凶器に変えるこの所業に同職のタカミチとネギの顔が引きつっている。


「くそ!?飛び道具は卑怯だぞ!拳で来い!」


逃げ惑いながら苦し紛れに言うシモン、しかしヨーコは攻撃の手を緩めない。


「残念ね!これがチョークという名の私の拳よ!!」


「チョークはチョークだ!!てゆうかアニキみたいなこと言いやがって!!」


いくつ隠し持っているのか分からないほど大量のチョークをヨーコは投げる。上下左右ほぼ同時に攻撃されるため防御にばかり意識を集中させているシモンは反撃の意図口を見つけられない。砕けたチョークの数だけ白い粉が徐々にリングにこみ上げる。しかしヨーコの手は止まらない。


(このままヨーコのチョーク切れを待っていても、いつになるか分からない!ここは・・・・これだーーー!!)


「うおおおおお!シモンブーメラン!!」


『おおーっとシモン選手の目元にV字型のサングラスが出現・・・それを外し・・・・巨大化したーーーー!?』


シモンは螺旋力を高め、V字型のブーメランを具現化し、それを手元でクルクルと回しながらヨーコに接近する。


「むっ!?」


「どうだ!大回転ブーメランシールド!!」


ヨーコの投げるチョークは全て回転させたブーメランの前に弾かれる、そしてその隙に一気にシモンが間合いを詰める。投げチョークが通用せずにヨーコはシモンの接近を許してしまう。その瞬間シモンはブーメランを消し、拳でヨーコに攻撃する。


「とったぜヨーコ!」


「素手で来るとはホントに律儀ね!でもまさか私が素手で弱いと思っているの?」


殴りかかるシモン、するとヨーコはチョークの攻撃を止めシモンのパンチを片手で払いのける。そして余った拳でカウンターを仕掛ける。


「甘いわシモン!」


「それが甘いぜ!」


「それも甘いわ!」


シモンはその場で屈み足払いをヨーコに仕掛けるがヨーコは飛び跳ねてそのまま空中からドロップキックをおろす。しかしシモンも咄嗟に地面を転がり逃れ、即効で立ち上がり再び構える。


お互いの攻撃を払いのけながら、どちらも後を引かずに拳と蹴りの応酬を繰り広げるが、どちらも被弾しない。先程と一転した接近戦の攻防になり、一つ一つに息を呑みながら観客が見守る。


『間合いを詰めたが両者攻撃を軽やかに交わす!それよりシモン選手女性相手に拳を振るうことに躊躇わない!これは意外だ!!』


「意外じゃねえよ!俺とヨーコに男も女も遠慮もねえ!それこそ友情が進化したダチ公だ!!」


「あら、言ってくれるじゃない!顔面狙わないフェミニストさん?」


「!?」


口でなんと言っていてもやはり顔を殴るのをシモンは控えていた。そのためシモンの攻撃はほとんどローキックやボディへの攻撃に集中していたため、ヨーコには完全に読まれていた。するとヨーコは予期していたシモンのローキックを素手で掴み取り片足で立っている足を払い、シモンをその場で尻餅をさせる。


「いてっ!?」


勢いよく転ぶシモン、その時ヨーコはすでに次の行動に移っていた。ヨーコはシモンの背後に回り込み、シモンの首に腕を回す。


「なっ!?」


「遅い!」


シモンが咄嗟に後ろを振り返ろうと思い、首を回すがその瞬間シモンの顔がヨーコの身体に押し付けられ、首を腕で締め付けられた。


「うおお!?」


「ほらシモン!ギブアップする?」


『ヨーコ選手流れるようなコンビネーションでシモン選手の首を取った!これはチョークスリーパーです!!』


「「「「「うおおおおおおおお!!」」」」」


「華麗だぜヨーコさん!そのまま落とせーー!」


「シモンの兄貴ー!ギブアップはまだ早い!なんとか逃れるんだーーー!」


「ロープだ!ロープを掴めーーー!・・・・いやロープはねえーー!?」


プロレス顔負けの盛り上がりを見せる会場、ネギや美空たちの戦いに比べたらとても現実的な攻防だが、会場の熱は上がっていく。


「ううむ、一見地味でござるがこのままヨーコ殿がいくか?」


「ハラハラ・・・・シモンさんを応援したいけど・・・・ヨーコさんも応援したいし・・・・僕はどうしよう・・・」


『さあ、盛り上がっています!シモン選手エスケープ出来ません!身動きが取れない!このままいくか!』


ヨーコの腕に力が入る。会場中も「落とせ」のコールが広がっていく。しかし当のシモンは首を絞められている状況より別のことで頭がいっぱいだった。


「もご・・・もごもご・・」


首を押さえられるシモンは何かを呟いている。ヨーコはシモンが抵抗しようとしているのだと思い気にせず腕の力を強める。しかしその瞬間さらにシモンがもごもごと呟く。


「もご~~~・・・もご~(むむ・・・・胸が~~~!)」


半分顔を後ろに振り返った状態でシモンはヨーコに首を絞められている、しかしそれは強くされればされるほどヨーコのビキニにのみで覆われている胸の谷間に思いっきり顔を埋める形になっているのである。正直会場の盛り上がりは今のシモンにはどうでもよかった。目の前にうずめる桃源郷に頭がいっぱいだった。


(ああ・・・やわらかい・・・この感触・・・この弾力・・・・ああ・・なんか・・・このまま負けてもいいかも・・・・今俺は初めてブータの気持ちが分かった・・・・)


その瞬間シモンの心は勝負から完全に離れ天国へ行ったような気分になる。首に痛みが走るが気にならない、至福のこの瞬間に心を癒され、その顔はとても安らかである。


一方ヨーコはシモンが抵抗の力を徐々に弱めていることに気になった。しかし落ちる気配もギブアップする様子も一向にない、そのことに少し首を傾げていると、もう一人状況が気になったアナウンサーの朝倉が横からシモンの顔を覗き見る・・すると・・。


『シモン選手はまだ落ちていない!しかしその顔は・・・・とても幸せそうです・・・・まさか!?シモン選手、ヨーコ選手の豊満な胸の感触を楽しんでいます!!!!』


「なっ!?」


それを聞いて思わずヨーコは手を離しその場から飛びのいてしまった。


「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」


し~~~~ん


一瞬にして静寂な空気が流れる会場、するとシモンがようやく桃源郷から現実に戻ってきて慌てて立ち上がった。


「な・・・・なんだよ・・・・どうしたんだ・・・?」


キョロキョロと辺りを見渡すシモン、正面には胸を押さえてジト目で睨むヨーコ、そして無表情で自分を見るシャークティやエヴァたち、その背後には黒いオーラが浮かんでいた。


そして次の瞬間・・・・・



「「「「「「「「「ぬあああああんだそりゃあああああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」


「シモ~ン、テメーヨーコさんの・・・ヨーコさんの胸を!?」


「なんてうらやましい!?どさくさに紛れてなんだそりゃぁ!?」


<うおおおい!?見損なったぜシモンさんよぉ!アンタは・・・アンタは俺と同じ硬派を貫く男だと思ってたのによぉ!!>


シモンのファンも多かった観客が一転して全員シモンへ罵声を浴びせる。そして解説者席に座っていた、昨晩シモンと壮絶な死闘を繰り広げた豪徳寺も立ち上がり机に足を乗せて物申している。そして、


「ほう・・・・・あのバカめ・・・随分と余裕があるではないか・・・・」


「ふふふ・・・せやな~~~」


「ふっふっふっ」と邪悪な笑みを浮かべるエヴァたち、そのこめかみには欠陥が浮き上がっている。シャークティや木乃香からも迫力のある笑みが向けられる。この状況にシモンは焦って誤魔化そうとする。


「ま・・・待ってくれ皆!本当に逃げられなかっただけなんだって!」


会場中に聞こえるような大声で弁解の声を上げるシモン、しかしヨーコは胸を押さえながらシモンを睨む、


「でも・・・・アンタ・・・感触楽しんでたでしょ・・・」


「それは当然!・・・じゃなくて!?・・・」


「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおい!シモ~~~~ン!?」」」」」」」


再び怒号が吹き荒れる。リングサイドにいるエヴァたちのこめかみの血管が一つ増える。


「いや皆!胸はでかけりゃいいってモノじゃない!重要なのは形と包容力だ!!」


戦いを忘れ観客に向かって指を刺しながらやり取りをするシモン、しかしまたヨーコは自分で自分の胸を揉みながら、とんでもない発言をする。


「でも・・・・私・・・形もやわらかさも自信あると思うわ・・・・」


「たしかに・・・筋肉かと思いきや、やわらかくて弾力があって・・・・形も・・・・っておい!?」


――――ブチッッッ!!!!


どこかから聞こえる何かが切れるような音。またもや失言により会場中から睨まれるシモン、完全にあたふたして右往左往している。そんなシモンにヨーコはトドメの爆弾を投下する。


「まったく・・・いい年して胸ぐらいで興奮するんじゃないわよ!だいたいアンタ昔に私の胸に顔を埋めて、思いっきり鷲摑みにしたことあったでしょ?」


「えっっっ!?」


「「「「「「「「「なっっっ!?」」」」」」」」


ヨーコの発言は事実だった、しかしそれは昔地下から地上に飛び出したときに、上空から落下したさいにそんな形になってしまっただけで完全な事故である、しかし今はそのことなど誰も知らない。さらにヨーコは意地の悪い笑みを少し浮かべて爆弾を連射する。


「それに温泉に行った時に、私のハダカをじっくり見たでしょ?今更胸に触ったぐらいで慌ててんじゃないわよ、私とアンタの仲じゃない♪」


「お・・・・おい・・・・ヨーコ・・・」


ウインクをしながら色っぽい笑みでシモンに微笑むヨーコ。これも事実だった。温泉に入っているときに敵からの襲撃を受けてシモンたちはハダカのまま戦った。ヨーコはその際タオルで身体を隠していたが、敵を撃退したときに喜んで飛び跳ねたら、タオルがずり落ちた事があった。昇る朝日とともに見たその光景をシモンは今でも覚えていた。


―――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


「あっ・・・あの・・・・皆・・・・・・」


―――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



シモンはかつて言った、火山の噴火とは地下で燻り一気に地上へ弾け飛ぶものだと・・・・、今のこの状況はその光景と酷似していた。沸々と会場全体から発せられる音。そしてそれは次の瞬間・・・


「「「「「「「ごぉるあああああああ!!!!シモオオオオオン!!!!」」」」」」」」


観客という名の火山が大噴火した。



「テメエ~~シモ~~ン!ぶっ殺ーーーす!」


「鷲摑みだと!?顔を埋めただと!?ハダカを・・・・あのビキニに隠された理想郷を見ただとぉ!?テメエは漢の敵だぁ!!」


「テメエには失望したぜごるぁ!!」


「ヨーコさんとの仲だぁ!?それはどんな仲だぁ!?ハダカを見るような仲かぁ!?」


<あの時の・・・あの時予選でアンタに感じたシンパシーはなんだったんだ!?あの時のアンタの男気はなんだったんだ!?アンタは完全に俺を怒らせたぜこの野郎!!>


予選では会場中が一体になって送ってくれた「シモンコール」が「シモンブーイング」へと変わった。男たちは血の涙を流しながらシモンへ怒りの言葉の嵐を叩きつける。


最早完全に会場を敵に回したシモンは、開き直るしかなかった。


「待ってくれよ皆!皆も漢なら俺の気持ちは分かるはずだ!!」


「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・?」」」」」」


シモンの叫びに一旦会場が静かになる、そしてシモンは指を天に向かって突き出した。


「男は誰でも夢を追い求める、それがロマンだ!そこに山があるから登る、それが男ってもんだ!目の前にあんな二つのでっかくて美しい山が現れて、何も感じない奴は男じゃない!お前らだって股下にドリルくっ付いてんだろ!!!!」


完全にキマッタと思ったシモン、しかし・・・・


「「「「「「ぬあああんだそりゃあ!!テメーーだけいい思いしてんじゃねえ!!」」」」」」


『だああ、開き直ったぞシモン選手!しかし最低な発言だああ!!』



逆効果だった。


罵声に気おされてよろめくシモン、彼は必死に辺りを見渡し味方を探す。するとリングサイドにいるエヴァたちと目が合った。しかし・・・まずはアスナと夕映が同時に


「「最っ低(です)!!」」


一言呟いた。年下の女にハッキリと言われ、その言葉がシモンの胸に突き刺さる。そして


「ほ~う・・随分と節操のないドリルだな~・・・・叩き折るか・・・・」


「とりあえず調教・・・いえいえ折檻が必要ですね~・・・ふっふっふっ・・・」


「シモンさん・・・・胸で女性に反応するなど間違っています・・・・・私が叩き込んであげましょう・・・」


邪悪な笑みを浮かべるエヴァ、そしてどす黒い魔力を帯びたロザリオを背後にいくつも浮かばせるシャークティ、いつの間にか愛刀を手に持ち鍔を鳴らす刹那。その横では自分の胸とヨーコの胸を見比べて肩を落としている木乃香がいた。


「タカミチ、股下のドリルって?」


「それは・・・・・もう少し大人になれば分かるよ・・・」


シモンの比喩表現が分からず首を傾げて尋ねるネギ、タカミチは顔を引きつらせながら誤魔化した。そしてシモンとこの光景に美空とハルナは大爆笑していた。


ガックリと肩を落としうな垂れるシモン


(あ~・・・なんかこうやって罵声を浴びせられるのは久しぶりだな~・・・・)


シモンはこの時アンチスパイラルが来襲したときのことを思い出した。戦争責任者として市民が暴動を起こしシモンを罵倒し、死刑寸前まで追い詰められていた。


(しかし・・・・あの時よりショックに感じる・・・)


うな垂れるシモン、試合を忘れヨーコはクスクスと笑っていた。









後書き


更新しました。見て分かるとおり刹那とエヴァの試合は飛ばしましたが、これは原作どおりだったと思ってください。

では質問に答えていきます。

まずニーアさん感想ありがとうございます。ニーアさんの指摘はアスナのルール違反の剣ですが、これは描写を入れるのを忘れたのですが、本編ではアスナが刹那との試合で使用した際には試合後に大会の判定員が確認するという描写がありました、しかし今回は武器として使用する前にアスナの手元から落ち、確認する前にハリセンの姿に戻ったためスルーされた・・・・ということにしてください。

九尾さん感想ありがとうございます。九尾さんの指摘された「契約執行」の詠唱の問題ですが、これを詠唱したのは美空ではなく外にいたココネの方ですのでルール違反には当たらないということにしてください。


とまあ色々誤魔化していますが今後はもう少し詰めて書いていこうと思いますのでよろしくお願いします。


因みに今回のシモンのサングラス、これは本気で攻撃すれば相手をぶった切ることが出来ますが、これも今回は切れ味がないただの巨大なブーメランと言う設定です。もし切れ味があったら素手では掴めませんので。
最終更新:2011年05月10日 14:58
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