第四十三話 それでも俺は生きている!! 投稿者:兄貴 投稿日:08/11/21-00:27 No.3741
シモンは今はただ粉々にされた自分の全てに呆然とするしかなかった・・・・・・・かに見えた。
「うわ~、シモンさん大丈夫ですかね~、超さん?」
会場とは別の場所にてこの試合を薄暗いコンピュータールームにて見物するハカセと超も、この戦いの一部始終を見ていた。当然彼女達もシモンの哀れな姿も見ていた。そして強烈な一撃により殴り飛ばされたシモンの安否をハカセは気遣っていた。すると、
「・・・・・ハカセ、今から生でこの試合を見に行くネ、ちょっと面白い事になるかも知れないヨ」
「え?この試合って・・・だって・・・今決着が・・・」
超の言葉の意味がよく分からなかった、なぜならこの試合も何も今シモンが完全に負けたはずだと思っていたからである。するとハカセのそんな考えを見抜いた超は首を横に振る。
「これで終わりのはずが無いヨ、まだきっと何かが起こるネ!」
「・・・・何かが?・・・・・・・起こるって一体・・・・何がです?・・・」
すると超は自信満々の笑みでハカセに振り向く。
「ふふ・・・何かがヨ!!!」
超は笑みを浮かべながらコンピュータルームに背を向ける。ハカセも少し戸惑ったが超の言葉の真意が気になり、超を追いかけた。
『ヨーコ選手の強烈な拳が炸裂!!!!シモン選手その威力に激しく吹き飛ばされる!!!!』
会場が騒ぎ出している。ボロボロにされ、みっともない姿を曝け出した今のシモンを周りの者達はどう感じているのだろうか、しかしそんなことは今のシモンにはどうでもよかった。
「「「「「「シモンさん!!」」」」」
『これはとんでもない威力だ!!さすがにこれほどの攻撃を受ければ立つことも無理でしょう!・・・この勝負ヨーコ選手の「待って!」・・・・えっ?』
朝倉が勝利者宣言をしようとした瞬間誰かが口を挟んだ、その人物とは他の誰でもない、今シモンを殴り飛ばしたヨーコ自身だった。自分の勝利が決定する寸前に口出しする、この行為に朝倉は首を傾げる。するとヨーコは腕を組みながら場外で倒れるシモンを眺めている。
「これで終わるような男じゃないのよ・・・アイツはね」
『えっ?いや・・・ヨーコさん・・いくらなんでもこれ以上は・・・・』
「いいから黙って見てなさい、アイツは絶対に立ち上がる!・・・私には分かるのよ・・」
朝倉に軽くウインクをして、試合続行を促した。しかし誰の目から見てもこれ以上は無理であると思っていた。何より先程までの不安定だったシモンはこれ以上戦う気力すらないだろうと思っていた。
友や家族がシモンの名を叫びながら駆け寄ろうとしている。今のシモンに何と声を掛ければいいか分からない、しかし懸命にシモンの名を叫んでいた。
だがシモンは反応しない、それはヨーコから受けたダメージによってではない、シモンはなんとこの時、夢を見ていたのだ。それは現実世界ではものの数秒の時間しか経っていない、しかしその夢はシモンにとっては数秒程度だとは思えないほど濃く、鮮明な夢だったのである。
(これは・・・・夢なんだろうな・・・・)
頭の中に流れる映像に対してシモンは簡単に結論を出した。ヨーコに殴られて、頭も強く打っている、だからありえない話でもなかった。そして眠っている時に見る夢の内容はほとんどが、ありえないような話、それを夢と呼ぶ。
なぜなら夢の中で登場する自分の前に懐かしい男がいたからだ。もう二度と会うことは出来ないと思っていた、しかし死んだ筈のその男はシモンの目の前で腕を組みながら立っていた。
[目ぇ覚めたかシモン?]
やはり夢だ、そう確信した。だが悪い夢ではなかった、少なくとも自分の心は落ち着いていた。ありえない出来事も夢と確信してしまえば難しく考えないで済んだ。するとシモンは苦笑しながら夢の中の男に話しかける。
(夢を見てるって事は・・寝てるってことだよ、だから目は覚めてないんじゃないかな?・・・)
[バカヤロウ!!こんなにスゲぇ心の目覚まし時計鳴らしてやって、いつまでも寝惚けたこと言ってんじゃねえ!!]
夢の中に現れた男は豪快に言う。そんな男に向かってシモンは笑うしかなかった。
(はは・・相変わらずだな・・・、人の夢の中まで登場してきて・・・)
[その通り!これは夢だ!だから何が起こっても許される!!!!]
(それ無茶苦茶だよ~)
その男の姿も、そして身に纏う空気も相変わらず変わっていなかった。もっとも死んだ人間なのだから変わっているはず無い。もう自分の方が目の前の男より年上なのだが、シモンは相変わらずこの男には頭が上がらなかった。すると男はズイッとシモンに近づいてきた。
[忘れたのか?お前が迷ったら俺が必ず殴りに来てやるって言っただろうが!なんとか宇宙だろうが夢の中だろうが、そのためなら棺桶からだって這出してやるよ!!俺を誰だと思ってやがる!!!!]
(!?・・・そうだな・・・そうだったな・・・・・・)
シモンは何故コアドリルがヨーコの胸の中で光ったのか、その理由が分かった。それは簡単なことだった。コアドリルに眠った英雄の魂がヨーコの拳を借りて自分を殴りに来たのだと。
懐かしい、そしていつまでもでっかい男の言葉と魂の姿。
[それでシモンお前は誰だ?]
(えっ?・・・俺・・・俺は・・・・)
[お前ほどの男が、あんな穴ぐら育ちのデカ尻女に好き勝手言われてビービーしてんじゃねえ!!自分が選んだ一つの事がお前の答えじゃねえのかよ!だったらその答えに迷ってんじゃねえ!!自信を持て!!]
(あっ・・・・そうか・・・・最初から答えを持っているのに・・俺は・・・)
男の言葉にシモンはハッとなった、たとえ悲しみを誤魔化すためでも、そうあろうと自分自身の意思で決めた答えに迷う必要なんて無かったのだ。すると目の前の男はニッと笑い顎だけ動かしシモンに告げる。
[分かったんなら早く言って来い!そして俺の言ったことを今度は二度と忘れんじゃねえぞ!自分を信じろ!俺が信じるお前でも、お前が信じる俺でもない!お前が信じる――――――!!!]
その瞬間、シモンは再び現実に引き戻された。
ハッとなってシモンは周りを見渡す。
「シモンさん!シモンさん!」
駆け寄るネギたちは何度もシモンの名を叫んでいる、そして彼らがシモンに触れようとした瞬間、瓦礫に埋もれて全く身動きしなかったシモンが不意に立ち上がった。
「「「「「シモンさん!?」」」」」
『オオ~ッとシモン選手立ち上がった!?これは驚きです!しかしダメージは相当なはずです、これは続行できるのか!?』
「ふふ・・・ほらね・・・こういう奴なのよ・・」
「やはりネ・・・」
「ぶ~う!」
不意に立ち上がったシモンに驚くネギや朝倉、しかしヨーコ、ブータ、そして超だけが分かっていたかのような笑みを浮かべる。するとシモンは少し俯いたまま一歩一歩リングに向かって歩き出した。
「シモンさん!」
「兄貴!」
少し驚いて呆然としたが、ハッとなってシャークティと美空が心配そうにシモンに尋ねる。すると
「大丈夫・・・俺は分かった・・いや・・・思い出したんだ!・・・俺・・思い出したんだよ!」
先程の出来事は紛れも無く夢だった、しかしそれでもシモンにとっては本物だった。ボロボロになった姿のシモンはどこか吹っ切れたような顔をしていた。その顔を見てヨーコも口元に微かに笑みを浮かべる。
「これで最後だ!いつまでも死んだ人間に迷惑かけてられないからな・・・・墓穴掘るのは・・・これで最後だ!」
リング状に再び戻ったシモン、ヨーコは黙って見ている。音を立てない静寂な空気が流れ、この後このボロボロの男は何をするのか、会場中が注目している。するとシモンは顔を上げ、会場中に響き渡る大声で叫ぶ。
「お前が信じる・・・お前を信じろ!!!!それが・・俺なんだよぉーー!!」
「「「「「「「!?」」」」」」」」
「ニッ!」
傷だらけの体を引きずりながらシモンは全てを思い出した。そして二度と誰にも否定させない自分自身が導き出した想いの全てを曝け出す。そう自分が幼かったとき、明日へと向かったあの時の言葉を、シモンはこの世界にぶちまける。
「ニアは死んだ!もういない!だけど・・俺の背中に!この胸に!一つになって生き続ける!!!!」
「シモン!」
シモンは己の指を天に向かって強く指す。
「穴を掘るなら天を突く!墓穴掘っても掘り抜けてっ!突き抜けたなら、俺の勝ち!!!!」
「そうよ・・・・なによ・・・分かってるじゃないシモン!!」
「ぶう!!」
「シモン・・・さん・・・・」
ヨーコとブータだけがシモンの言葉に涙を浮かべながら頷いていた。そして他の者たちはかつてのヨーコたちと同じような顔をしてシモンを見ている。かつて四天王が地上の人類に絶望を与えるために空に映像を流し、グレン団を見せしめに殺そうとした。しかしその出来事を希望に変え、地上の人類に光を与えた男、その姿を再び見ることが出来た。
「俺を誰だと思っている!俺はシモンだ!新生グレン団リーダー!穴掘りシモンだぁ!!!!」
「そうよ!たまに墓穴を掘っても・・・掘った墓穴の分だけアンタは再び強くなる!それがアンタなのよ!!」
涙を振り払い舞い戻ったシモン、名乗りを上げた彼はサングラスではなく、幼い時から身に着けていたゴーグルを装着した。その姿にヨーコは強い笑みを浮かべて叫んだ。シモン一人にスポットライトが当たったかのように会場中の注目を一身に浴びるシモンは雄たけびを上げヨーコへ向かう。
「さあ、いくぜヨーコ!!突き抜けた墓穴の先を見せてやる!!」
「人に何を言われようとも、自分で一度決めたことを最後まで貫き通す、合格ね・・シモン!!アンタは私の言葉を跳ね返した!!」
「あたりまえだ!!俺を誰だと思っているーーーーー!!!!」
『なな・・・なんと!?シモン選手からも膨大な緑色の光が溢れている!?これは一体!?』
「もどったぜ!!穴掘りシモンの本物の気合がよおおおお!!」
完全に螺旋力のゲージが振り切れたシモンはヨーコにも負けないほどの巨大なオーラでリング上を埋め尽くす。ヨーコもその姿に想いを高ぶらせ、己の気を高めシモンに向かって走り出す。
「さあ、来なさいシモン!」
「ヨオオオコーーーー!」
――――ガシュュューーーン!!!!
『両者の拳が再び交差する!!まだ・・・まだ決着はついていない!!』
「すっかり復活しちゃって、私の拳はそんなに目が覚めたの!?」
―――ドガン!!
「何言ってやがる、久しぶりに死んだ人に会っちまったよ、でも・・・たしかに起こされた!!」
―――バゴッ!!
『両者の攻撃がぶつかり合う!!そして・・・これは・・・リング上の互いの緑色のオーラが渦を巻いて二人を囲んでいます!!』
激しくぶつかり合うシモンの螺旋力とヨーコのコアドリルから流れる螺旋力を受けた打撃、その光が一つの流れとなり、ついには螺旋の渦を巻いて二人を包み込む。
「まったく、・・・・ホントにアンタは大した奴よ・・・」
―――バシィィン!!!!
「そうだ、男と三日会わなければ活目して見ろ!だが・・・俺とは一分経てば活目して見ろ!!」
―――バシィィン!!!!
「それが穴掘りシモンなんだよ!!」
「知ってるわ!その男の魂に私達は明日を賭けたんだから!!」
振動が、風圧が、想いが、熱気が、互いの力の全てがぶつかり合いその渦が会場中を包み込む。
――ガタッ!
その時誰かが立ち上がる音がした。それは豪徳寺だった。
<どうされました?豪徳寺さん>
不意に隣で立ち上がった豪徳寺に茶々丸が尋ねる、すると彼は拳を力強く握り締め、目尻に涙が溜まっている。
<すげえ、・・・あの人達が何に対しぶつかり合っていたかは知らない・・・だが・・・これほど熱い想いを互いにぶつけ合えるなんて・・・すごすぎるぜ!>
すると豪徳寺はマイクを持ち上げ解説者席に足を乗せて叫び出した。
<最高だぜ・・・・アンタたちはやっぱり最高だぜ!シモンさん!ヨーコさん!>
その声は拳を交えあう二人には聞こえない、しかし他のものには聞こえた、すると豪徳寺につられて観客の一人が声を上げる。
「やっぱ・・・・やっぱアンタは熱いぜシモンさん!」
するとそれを見て、また一人声を上げる。
「そうだ・・・ヨーコさん・・・負けるな!・・・・負けんな!」
一人叫べばまた一人、お通夜のように静まり返っていた会場が再び熱を取り戻し二人へ向けて大歓声を上げる。
「シモンさーーーーん!!」
「ヨーーコさーーーん!!」
「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」」」」
どちらを応援しているのか最早分からない、気付けば観客は両方の選手を応援していた。それは試合に勝てと言っているわけではない、ただ声を上げずにいられなかったのだ。
―――バシィィン!!!!
ぶつかり合った衝撃がリング上を駆け巡る。
―――バシィィン!!!!
「死ぬほど辛いことがあった・・・だが、それでも俺は生きている!!」
「そうよ!私達は今日を生きている!!」
―――バシィィン!!!!
「もう揺らがねえ!!自分の出した答えが間違ってねえって胸張って言うぜ!!何度だって言ってやる!!俺はニアとの思い出と共に明日へ向かう!!俺は生きる!!でもアイツのことは絶対に忘れねえ!!」
「そうね!!だったらもう何の心配も要らない!!」
―――バシィィン!!!!
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」
『両者一歩も退かない!!激しいぶつかり合いにさらに光の輝きが増していく!!止め処なく溢れるこの光、今にも天を突きそうな勢いです!!!!』
振りかぶった互いの全開の気合を込めた拳の一撃がぶつかり合い、その衝撃によって生まれた光が大きく輝き出し、会場全体が思わず目を瞑ってしまった。
『お互い行ったーーーーーー!!このぶつかり合いを制したのは!?』
そしてようやく目を開けるとそこには、
「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、」
「ふ~、疲れた~・・・・」
『なっ・・・お互い健在です!まだ勝負は終わっていない!!』
「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」」
お互いリングの上に膝をついて座り込んでいた。なんと今の一撃でも決着はついていなかったのである。再び会場が盛り上がるが、当の本人達は違う。疲弊しきりながらも、お互いの顔はとてもスッキリしていた。
「やっぱり小さな子供相手に仕事していたから、熱血についていけなくなったわね・・・・は~あ~私も鈍ったわね~」
「バカ言うなって・・・・ヨーコは生涯現役だって・・・頑丈すぎるのもお前の良い所だろ?」
試合の決着はまだついていない、しかし何故か二人は座り込みお互いに笑みを浮かべ笑いあっていた。
「ねえシモン・・・アイツに・・・・会ったの?」
「ああ、・・・叩き起こされてきた!」
「誰に?」とはシモンは聞かなかった、聞かなくてもその人物が誰なのか互いに分かっていたからだ。ヨーコも苦笑しながら「そう?」と頷きそれ以上は聞かなかった。
するとヨーコはヨロヨロと立ち上がり、肩の力を抜いた。そして軽くため息をついてシモンを見る。
「たとえ弱みを晒しても・・アンタは強くなって戻ってくる、アンタはもう・・・大丈夫ね・・無理して嫌味を言った甲斐があったわ・・」
「全てが大丈夫なわけじゃない・・・でも・・・・俺のこの一年の弱さは全て吐き出した。だから・・・・心配要らない!!・・・済まなかったな・・・らしくない真似させて・・・」
そう言ってヨーコを見るシモンの瞳に偽りをまったく感じなかった。ヨーコはそれだけで全てを満足した。シモンもニアへの思いを侮辱された時頭に血が上ったが、なんてことはない、ヨーコがわざとそう言ったのだ。少し考えればヨーコが本心で言うはずが無い、そのことも気付かずに殴りかかった自分が少し恥ずかしかった。そしてヨーコは自分達を見て戸惑っている朝倉に体を向けて。
「うん、降参するわ!」
『はっ?・・・えっ・・・あの・・・いいんですか?』
「ええ!それでいいわ!」
『ええ~では~・・・コホン!ヨーコ選手棄権のため、この勝負シモン選手の勝利です!!』
全てに満足したヨーコは自分の敗北を認めた。それはせっかく盛り上がった戦いにしては呆気ない幕切れだった。観客も少し戸惑ったが、そのことに対して誰も文句を言わずにただ拍手をして二人を称えていた。
「兄貴!」
「「「「シモンさん!」」」」
突如試合終了が告げられ、ネギたちが一目散にリングを駆け上がってきた。そして誰よりも速く美空とココネがシモンの胸に飛びついた。傷だらけの体に少し堪えるが、シモンは両手を広げて二人の少女を迎え入れた。
「カッコ悪いとこ見られちまったな・・・」
シモンの胸に顔をうずめる二人はその状態のまま首を横に振る。二人は何も言わなかった、しかし今はシモンの存在を確かめるかのように身を寄せる。二人がどんな顔をしているかは分からないが、シモンも腕を回して二人の少女の頭を撫でる。この光景に木乃香たちが羨ましそうな顔をしていたがこの時はスルーした。
するとシモンにヨーコが近づいてくる。
「生きていれば・・・楽しいことも悲しいことも・・いつあるかは分からない、先のことなんて誰にも分からないんだから・・・でも・・アンタは大丈夫よね?」
ヨーコはシモンを囲むネギたちを見てうれしそうに告げる。シモンもヨーコの言葉に笑顔で頷く。
「ああ、当然だ!・・・、ありがとう・・ヨマコ先生!!」
「ぷっ・・ふふ、いいのよ・・・・久しぶりに・・・いいものが見れたしね・・・」
クルッとシモンに背を向けヨーコは木乃香を見る。そして肩を軽く叩いて、
「がんばりなさいよ!」
「!?・・・・は・・・はいっ!!」
この試合で木乃香は自分の想いを叶える事の困難さを理解した。そして何をすべきなのか理解した。ただ自分を磨いてシモンの隣に相応しい大人になるだけではダメなのだと、自分がされたように自分も支える側にならなければならないのだと理解した。ヨーコの言葉に木乃香は強く頷いた。
その笑顔を見てヨーコは満足し、リングを立ち去ろうとした。しかし
「ヨーコ!」
その動きを不意にシモンが名を呼び、止めた。
ヨーコも名を呼ばれ振り返る、するとシモンは少し戸惑っている表情をしていた。彼が今から言う言葉は二人のこれからの未来に大した影響はない、しかしイザ言おうとすると少し照れてしまった。
それはヨーコに一生告げることのない言葉だとシモンは思っていた。しかし体を張って、心を痛めながらも自分のためにその魂を振るってくれた最高の仲間に、どうしても言いたくなってしまったのだ。
「ヨーコ・・・知ってた?・・俺・・昔は・・ヨーコが好きだったんだよ・・・・」
「!?」
「なっ!?」
「シ・・・シモンさん・・・」
そのことをネギたちは皆知っていた。しかしそれが今告げられるとは完全に予想外だった。全員完全に不意をつかれて固まっていた。
しかしヨーコは違う、彼女は再びシモンに背を向けた。
「そう・・・そうだったんだ・・・・・もう・・バカね・・・・・・」
背中を向けているヨーコの表情は分からない、しかしヨーコは手で少し目元ををこする様な仕草をしていた。すると急に明るい笑顔で振り返った。
「残念ね~、私にKO勝ちしていたら、考えてあげてもよかったんだけどな~~」
クスクスと笑いながら冗談めいた口調でヨーコは答えた。
「そっか・・・、はは、じゃあ惜しかったな~、もうちょっとがんばれば良かったな~~」
「そうね~、ふふ、惜しかったわね~・・・ホントに・・・惜しかった・・・」
シモンの告白にそれほど意味は無かった、それは告白と呼べるものでもなかったかもしれない、想いが成就したわけでも振られたわけでもない、互いに笑いながらそれで終わらせる、それがシモンとヨーコの一番の関係なのかもしれない。シモンの告白を受けて少し寂しそうな表情を一瞬ヨーコは浮かべたが・・・
「シモン!」
「なんだ?」
「アンタ・・・相変わらずいい男よ♪」
笑顔を見せて、ヨーコはそれだけ告げて再び背を向けリングから立ち去った。
「シモンさん・・・あの・・・」
ネギが少し戸惑い気味にシモンに話しかける、あれだけ感情を露にしたシモンに何と声を掛ければいいか分からなかった。するとシモンはいつもと変わらぬ笑みを浮かべながらネギの頭に手を置いた。
「アイツは・・・優しくて・・・そして厳しさも持っている。心を痛めながらも俺のためにあんなことまでしてくれた・・・いい女だよ・・・本当に・・お前も見る目があるよネギ!」
「は・・・はい!」
ネギは誤魔化すことをせずに少し顔を赤らめて頷いた。そして、シャークティが近づく。
「シモンさん・・・・本当に大丈夫なんですか?」
先程の涙を流したシモンを気にしてか、少し不安そうな表情だった。それは木乃香やアスナたちもそうだった。そこでシモンはそんな不安を吹き飛ばすあの言葉を言う。
「あたりまえだ、俺を誰だと思っている」
その瞬間シャークティもそしてこの場にいた全員、花が咲いたような笑顔を見せた。少なくとも今のシモンは何も強がったり無理したりして誤魔化していないことが、その瞳から理解できたからだ。
『これにて一回戦を全て終了いたします!!そしてこれより二回戦を開始したいと思います!』
朝倉の声を聞き、シモンたちもリングから立ち去る。自分のために悪役にまでなったヨーコに心の中で感謝しながら、シモンは控え室へ向かった。
後書き
短いですが更新しました。本当はこの試合は一話でまとめる予定でしたが分けました。
とりあえず感想板で書かれていたようにいつかは言われると思っていました。以前にも注意点として書きましたがシモンの大人のキャラをイマイチ掴めず、不快にする可能性があると述べました。元々グレンラガンを書くときから覚悟していましたが、今回は批判を予想していましたが、あえてやりました。やはりグレンラガンはアニメで完全な終わり方をしていたため、登場人物のほとんどが成熟していたためクロスオーバーの主人公としては正直つまらなくなると思っていました。特にネギまのクロスオーバーにするとほとんどの場合が完成された主人公がネギまの世界でネギたちの甘さを指摘したりするパターンが多かったので、主人公を指摘するキャラとして今回はヨーコに無理をさせました。というわけで前話のヨーコは本心で嫌味を言ったりしていませんので、お間違いなく。でもシモンはマジ泣きです。その結果不快に感じた方も多いと思いますが、ご了承ください。
最終更新:2011年05月10日 14:58