第四十六話 不幸なんて目指さないで幸福を掴み取れ! 投稿者:兄貴 投稿日:08/12/12-12:58 No.3763
(刹那・・・随分といい目をしているじゃないか・・・)
それが向かい合う刹那に対する感想だった。大会前から色々とあったようだが、自分の知らぬ間に目の前の少女はギラギラした瞳を自分に向けている。きっと何かがあったのだろうと分かった。エヴァと戦い、アスナやネギ、そして美空の勇気を見て刹那も何かを感じ取ったのかもしれない、もっとも今となっては知りようがない。だが心が軽くなっているのは自分も同じだった。ヨーコと戦いこの一年の溜まっていた弱音を全て吐き出したシモンに今残っているのは胸の中で熱く滾っているものだけだった。
刹那の得物はデッキブラシ、刃を禁止されているこの大会では妥当な武器である、しかしそれでも気で強化された武器なだけあってそれなりに強力であろう。確認したわけではない、しかし素手ではやはりキツイと思ったシモンは巨大化させたブーメランを自然に構えていた。
シモンと相対する刹那、その心は妙に落ち着いていた。思えばシモンとともに居るといつも驚かされることばかりだった。そんなシモンに対して最初は拒絶し、しかしいつの間にか信頼し、気づけば惹かれていた。それは自分だけではなかった、この学園の生徒たちも何名かそうである。だが、今この場に居るのは自分とシモンの二人。今の刹那は己の想いをぶつける、その気持ちで満たされ、真剣な眼差しでありながら頬が少し緩んでいた。
『さあ、2回戦最後の戦い、桜咲選手対シモン選手!! 互いが実力者同士、その力を存分にぶつけてもらいましょう!!』
朝倉が二人の間に入って手を上げる、それを見て刹那とシモンは互いの武器を構える。
『ではFight!!』
「かかってきやがれェ、刹那!!」
「ええ、いきますよ!」
先に動き出したのは刹那、シモンとの距離を詰めてブラシを振り上げ斬りかかる。シモンは反射的にブーメランで受け止める。
「うおっ!」
受け止めたがその衝撃はとても女の細腕の一撃とは思えず、シモンは微かに膝が曲がる。しかし刹那は一撃では終わらず洗練された剣技を次々と繰り出していく。シモンも反射的に受けていくが、剣の技術は刹那が圧倒的に上。
「神鳴流奥義・・・斬岩剣!!」
横になぎ払う形で刹那はモップを振るう。シモンはジャンプ一番で交わすがそれは己の隙を与えてしまったようなもの。
「奥義・・・斬空閃!!」
宙に浮いたシモンに対して気の塊を飛ばすがシモンはブーメランを体の前で円のようにグルグル回して弾き飛ばす。しかし防がれた刹那は大して驚いた様子は無い。
着地したシモンはそのまま刹那に向かって走り出しブーメランを振り下ろす。
(重い・・・気でも魔力でもない力・・・これがシモンさんの気合)
気で強化されている自分の得物と互角に打ち合っている。だがシモンの常識外はすでに刹那にとっては常識内として認識していた。一々驚いていたらキリが無いからである。
お互い刀ではないが鍔迫り合いのような形で互いの武器の動きを封じている。シモンは小細工はせずこのまま押し切ろうとする。しかし剣士の刹那にはそんな単純な方法はうまくいかずに簡単にいなされ、剣を弾かれる。
「シモンさん、神鳴流にそんな力任せは通じません!」
ブーメランを弾かれシモンの体がむき出しになった瞬間、刹那は腰を屈める
「神鳴流奥義・・・百烈桜華斬!!」
円を描くようにあたり一体に花びらが舞うような美しい剣、しかし・・・
「通じない? そんな壁がこの世に有るものか!」
「むっ!?」
一瞬ブーメランを弾かれ仰け反った形になったシモンだが、体を無理矢理とめ、思いっきり振りかぶった形で上から刹那に向かってブーメランを振り下ろす。
「穴掘りシモンはどんな壁にも風穴開けて道を通す!! これが漢の魂~~炸裂斬りーー!!」
両者の一撃が音を立ててぶつかる。互いの武器が擦れ合うような音を響かせたが、押し切ったのはシモンだった。
「くぅ!」
刹那はシモンの攻撃の直撃は防いだものの、威力に押されて後方に飛ばされる。しかしすぐに体勢を立て直し、大地を蹴りシモンに向かって跳ぶ。
「さすがですね、シモンさん! アナタに常識を問おうとしたのが間違いでした!」
「その通り! なぜなら俺は・・・「道理を蹴っ飛ばす」・・・刹那?」
シモンがブーメランを振り下ろしながら言おうとした言葉に対して刹那が笑いながら口を挟む。
「無理を通して道理を蹴っ飛ばす・・・・それがシモンさんでしたね・・・・」
「ははは、俺のことをよく分かっているじゃないか!」
シモンも言われて思わず笑ってしまった。互いに目は真剣に、しかしどこか楽しそうに、お互いの力をぶつけ合っていた。
『これは意外だ! 武器を使った勝負では桜咲選手有利かと思いましたが、シモン選手も負けていません!』
朝倉の言葉は、今まさにこの戦いを見ているタカミチや刹那を知る龍宮達の思っていることだった。力任せに振り回す剣が刹那とちゃんとした戦いの形になっている。刹那が手を抜いているとも思えない。しかもシモンの動きは刹那と打ち合うたびに徐々にキレていくようにも見えた。
(シモンさん・・・体がすごく生き生きとしている・・・シモンさんは元々気合しだいで強くなる人だったが・・・これは・・・)
刹那はシモンとの打ち合いに楽しさを感じると同時に、動きが格段によくなっていくシモンに何かを感じ取っていた。今まで何度かシモンと共に戦ってきた、窮地になればなるほどシモンは力を解放していった。気合という曖昧なものをあまり認めたくは無かったが、シモンのそれは何故か信じてしまった。
しかしこれはそれだけではない、まるで今まで封じ込めていたものが一気に開放されたような感覚、まるで美空と戦っていたときのアスナを見ているような感じだった。その正体が何なのかは分からない、しかし解放された原因は刹那には何となく想像できた。
(ヨーコさんとの戦い・・・シモンさんは己の弱さを全て吐き出した・・・。弱さを吐き出した今のシモンさんに残っているものは強さだけ・・・まったくこの人は・・・ヨーコさん・・・ニアさんといい、私たち以外の女の人には心を動かすんですね・・・)
打ち合いながら途端に刹那は急にムッと不機嫌になり少しだけ剣が雑になった。
一方シモンも自分の体も心も軽くなり、未だに成長し続ける自分自身に胸が熱くなっていた。
(ヨーコ・・・お前のおかげだ。・・・今の俺は・・・グレンラガンを動かしていた時と同じぐらい心が高鳴ってる)
己がずっと隠してきた心に巣食った弱さを吐き出した今、自分は何でも出来る気がした。
思えばカミナの死を受け入れ明日へ向かおうと決意したときもそうだった。心が開放されて、何でも出来る気がした。その後の四天王との戦いはすべて自分たちには不利な戦局だった。海中での戦闘、空の上の攻防、竜巻を発生させ近づくことの出来ない相手とも戦った。しかしどんな状況でもそのたびに自分たちは強くなった。その度にグレンラガンも進化した。今のシモンはその当時と同じような感覚だった。
「いくぜ刹那! 螺旋力全開!! シモンブーメラン!!」
螺旋力が身体を覆い、シモンの体から光が大量にあふれ出す。そして雄たけびとともに投げたブーメランが轟音を立てて刹那に襲い掛かる。
「甘いです! 武器を投げるなんて失敗でしたね!」
だがシモンのブーメランは直線的な攻撃だったため、刹那は難なく真横に交わした。武器を無くしたシモンは丸腰である。勝機と思い、刹那は向かっていく。
しかし刹那はシモンの投げた武器がブーメランであることを忘れていた。
「えっ!?」
後方から迫り来る気配に刹那は思わず後ろを振り向くと、シモンのブーメランが戻ってくる。
「俺を甘く見て失敗だったな!」
「ま・・・まずい・・ぐっ!?」
思わず刹那の口から声が漏れる。自分でシモンのことを一瞬でも甘いと思ってしまったことが悔しかったが、今はそれを悔いている暇は無い。直撃すれば敗北は必死。さらにシモンは相手が強敵なら年下の女であろうがまったく容赦ない全力攻撃だったため、この攻撃はヤバかった。
(回避・・・無理だ・・・これは当たる・・・どうする・・・どうする・・・真横に回避しても間に合わない・・・ならば上? 勢いよく飛び出せば・・・しかしどうやって・・・)
コンマ数秒の間に刹那は頭をフル回転させて活路を見出そうとした。しかしどの案も成功することは出来ない。だが・・・一つだけ思いついた。
(!?・・・そうだ・・・この方法なら・・・しかし・・・)
せっかく思いついた方法だが、その方法に刹那は一瞬だけ躊躇った。なぜならこの方法は自分の中では使いたくない方法だったからである。自分にとってはコンプレックスだったもの、これが原因で親友との間に壁を作ってしまったのである。しかしそんな一瞬の躊躇いから刹那はある言葉を思い出した。
[周りの奴らが持っていないからって周りの真似することなんて無いのにな]
それはシモンが言った言葉だった。それは直接自分に言ってくれたわけではない、しかしその言葉は刹那の心を軽くさせた。
(そうだ・・・・シモンさんが言ってくれた・・・・隠す必要なんて無いんだ・・・)
その瞬間ブーメランが刹那の立っている位置に巨大な音を立てて突き刺さった。
「せ・・・せっちゃ~~~~ん!?」
「ちょっ・・・いいのアレ!?」
『ちょっ・・・これはやりすぎだ~~~~!! シモン選手容赦なし! 桜咲選手は生きているか~~!?』
衝撃音とともに巨大な土煙を上げたシモンのブーメラン、これには会場中がざわつき出した。あまりの威力にアスナたちも口を大きく開けて唖然としていた。しかし・・・
『ええ~~土煙が晴れていきますが果たして・・・・ってあれ?』
リングを覆った土煙がようやく晴れたと思ったら、リングに居たのはシモンと地面に突き刺さっているブーメランだけだった。
「ちょっ・・・えっ?・・・刹那さんは?」
「せっちゃん・・・・あれ?・・・おらへん・・・・」
リングの隅を見渡しても刹那はどこにも見当たらなかった。地面に突き刺さっているブーメランを見る限り刹那は交わしたのである。しかしどこにも刹那が居ない。するとシモンは少し苦笑しながら空を見上げた。それを見て全員シモンの視線を多い上を見た・・・・すると・・・
「「「「「「なっ・・・・なんだってェェーーーー!?」」」」」」
「ぶーーーーーーー!?」
「・・・・・せっ・・・・せっちゃん・・・・・」
会場中が同時に驚愕の声を上げる。なぜなら・・・
『桜咲選手・・・攻撃を上空に逃れて回避していました!・・・しかし・・・しかし・・・』
皆同じことに驚いていた。刹那が攻撃を上空に交わした、それまではいい。しかし全員刹那が今背中から出しているものに声を上げられずにいた。事情を知るネギやアスナたち、知らなかったタカミチやシャークティたち、ハルナたちや他のクラスメートたちを含め全員が唖然としている。そして朝倉がアナウンサーとして皆の思いを代弁する。
『桜咲選手・・・翼が生えてるぅーーーーーーーー!? ・・・ど・・・どうなってんだ~~~~~!?』
そう、刹那はなんと今まで隠していた翼を使い、遥か上空に逃れていたのである。
「刹那・・・・お前・・・・」
シモンの口からも思わず声が漏れた。刹那がずっとコンプレックスに思っていたもの、純粋な人間ではない証。それが原因で刹那はずっとツライ思いをして来たことを聞いた。シモンがそれを知らずにかつて知ったような口を聞いたことに対して刹那は激怒した。しかし彼女は今、戦いの最中とはいえ多くの一般人やクラスメートが見る中、己の翼を解放した。そのことに対してシモンも目を見開いて驚いた。
会場中がざわつきながら、刹那は羽をバタバタさせながらゆっくり下降していった。その姿はとても美しく、まるで白い翼をもった天使が舞い降りてくるように見え、会場中がその姿を見て、途端に声を失い見惚れていた。
「隠してたんじゃないのか?・・・お前はそれを・・・・」
シモンは舞い降りる刹那を見上げながら呟いた。すると刹那は温かい笑顔を見せて口を開く。
「アナタの所為ですよ・・・・シモンさん・・・」
「!?」
その言葉を聞いてシモンはハッとした。熱くなった戦いに感化され、自分の繰り出した無我夢中の攻撃が、刹那のずっと隠してきたものを、よりにもよってこんな大観衆の前で出させてしまったのだと。
しかし刹那はそんなシモンの表情から心を読み取り、首を横に振る。
「違います、そうではありません。・・・アナタの所為・・・それは・・・アナタの所為で私はこの翼を後ろめたいだなんて思わなくなってしまった・・・」
「刹那・・・お前・・・」
「アナタの所為ですよ・・・この翼を誇ってしまうようになったのは」
シモンは考え込んだ、なぜならシモンは翼について刹那と話し合ったことなど無かった。京都の木乃香の実家の温泉で詠春と少し話した程度だった。
だがハッとした、あの時詠瞬との会話を刹那やネギたちは聞いていたのである。そのことを思い出し、シモンは顔を上げる。すると刹那は力強い笑みを浮かべた。
「私はもうこの翼を後ろめたいなどと思いません! 私の翼は隠すためのものでは無い! そう・・・なぜなら・・・」
刹那は指を高らかに天に向かって突き出した。
「私の翼は、天を翔ける翼なのですから!!!!」
恥じらいなんて無い。刹那は誇らしげに高らかに天を指差した。
こんな刹那を誰も知らない、親友の木乃香ですら初めて見た。生真面目で、物事を細かく常に考え、日常生活では自分の気持ちを押し殺し遠慮していた彼女が、今自信に満ち溢れ、己を誇りながらシモンと同じポーズをしているのである。その姿に多くのものが目を輝かせている。誰も何故刹那の背中に翼が生えているのか、本物なのか?そんな疑問は長谷川千雨を除いて、完全に吹き飛んでしまった。
「せっちゃん・・・・せっちゃんカッコエエエーーーー!!」
「「「「「「うおおおおおおおおおおお!! せっちゃーーーーん!!」」」」」」
木乃香の叫びが口切となり、会場が大歓声を上げる。木乃香はその様子に目をキラキラ輝かせながらうれしそうにする。
「うは~~、せっちゃん人気者やわ~~~」
「あ~あ~、とうとう刹那さんまでやっちゃった~~、いいのかな~、一度やると癖になっちゃうのに~」
アスナも顔をニヤつかせながら、刹那を見る。アスナ自身これまで何度もシモンの真似をしていただけに、刹那の行為をうれしそうに見ていた。
「ははは、誰の真似をしてるのか一発で分かるというのもすごいね」
「ふふふ、相変わらず物凄い感染力ですね、シモンさんの気合は。」
教員として、魔法先生・生徒の間柄でタカミチとシャークティも幾度と無く刹那と関わったが、こんな刹那は初めてであった。
「ははは・・・そうか・・・そうなんだ・・・・・」
シモンもクスクスと笑ってしまった。刹那らしからぬ刹那の行為に思わず笑みがこぼれてしまった。
「いいと思うよ、刹那。今のお前・・・・すごくカッコイイぜ」
お世辞ではないシモンの言葉に、刹那は可愛らしくハニカンだ。その笑顔に心奪われ会場中の男が再び騒ぎ出した。
(カッコイイ・・・か。まったくアナタは・・・そうやって容易く私をうれしくさせる・・・)
そんな中、ようやく刹那は着地した。そしてシモンを見る。これまでこの翼を見たものたちは軽蔑の眼差しで自分を見ていた。しかし今は違う。今では自身が誇れるものになった。そのキッカケを与えてくれた目の前の男を見て、刹那は決心した。
「シモンさん・・・私・・・エヴァンジェリンさんとの試合で言われたことがあるんです・・・」
着地した刹那は攻撃を仕掛ける様子も無く、翼を広げたまま語りだした。
「どちらかを選べ・・・と・・・剣と幸福・・・どちらかの道を選べと・・・・」
その言葉を聞いてエヴァやアスナたちも反応した。刹那がエヴァに問いただされたこと、今後己が歩む道、刹那はその答えはまず自分に勇気をくれたシモンに告げたいと。刹那はその答えを言う決心がついたのである。
「どちらかを・・・・選ぶ?」
「はい、私のように人外としても中途半端な存在、最近甘い日常にタルみきった私にエヴァンジェリンさんが叱咤してくれたのです。お嬢様を護るために強くなるのか、それともただの人になって幸福に生きるのかを・・・・」
刹那は顔を上げてシモンを見る。
「その答えを・・・・アナタに聞いて欲しいのです」
力強い瞳で刹那はシモンを見る。この数十年苦悩し続けた己の道、今後自分がどうするのか、刹那はようやく答えを出した。
(そう・・・エヴァンジェリンさんでもない・・・・このちゃんでもない・・・ネギ先生やアスナさんでもない・・・私が自分で勝手に作った心の壁を簡単に突き破ってくれたアナタに・・・新たな道を私に教えてくれたアナタに・・・私は・・・言います。)
迷いも無い、躊躇うことなんて無い、いつも堂々と己の道を進むシモンに向かって、刹那は己の決意を述べようとする。
・・・・・しかし・・・・
「私の道・・・それは「あのさ、ちょっと聞いていいかな?」・・・えっ?」
刹那が述べようとした瞬間、黙っていたシモンが首を傾げながら口をはさんできた。そして・・・
「あのさ・・・なんでどっちかなんだよ・・・両方選んじゃダメなのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」
シモンは純粋に疑問に思い質問する。その言葉に場が「し~ん」となった。エヴァやネギたちも口を半開きにしている。シャークティと美空はある程度予想していたかのように、少し呆れ顔でシモンを見ていた。
すると少し顔を下げて刹那は呟く。
「私は・・・・剣と幸福・・・・・両方選びます・・・・・」
ボソリと呟いたが、ちゃんと皆の耳には聞こえていた。するとシモンは「ポンッ」と手のひらを叩き
「そうなのか? うん、いいじゃないかそれで。でもなんでエヴァはどっちかを選べなんて聞いたんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シモンはアッサリ納得してしまった。むしろ二つ選んで当たり前のような様子だった。
――刹那の決意表明終了・・・・というわけにはいかなかった。
「シモンさ~~~ん?」
すると刹那の肩がプルプルと震えだし、ツカツカと歩み寄ってきた。その声には微かに怒気が孕んでいた。
「私が・・・エヴァンジェリンさんに心も身体も痛めつけられ・・・ボロボロになり、苦悩し・・・ようやく・・・ようやくたどり着いた答えなのに・・・・・・なんで先に・・・しかもアッサリ言うのですか~~~~~~~~~~~!?」
刹那はシモンの胸倉を掴み、涙目になりながらシモンを揺すり始めた。
苦悩の末にようやく導き出した答え、それは困難な道かもしれない。今の幸せをかみ締めながらも、己を高めるための練磨を絶やさずに、大切なものを護るために己の命と魂を賭けた決意だった。それを口だけの決意にしないように、常に己の命と魂を賭けて突き進んできたシモンに誓うことによって刹那は前へ進もうとしたのだが、シモンはまるで「そんなの当たり前じゃないか」というような態度だった。
「なんでって・・・だって剣を捨てたら幸福なのか? 違うだろ、両方選んで初めて幸福になるんじゃないか! 自分にとって大切なものを片方切り捨てて、なんで幸せになれるんだ?」
「たしかにそうです、ええそうですとも! しかし二兎を追うものは一兎をも得ずという諺もあるじゃないですか! 全てを手にするなんて驕りなのですよ!」
「そんなの誰が決めたんだ! 会ったことも無い先人の言葉を参考にしても従う必要なんてないじゃないか! そんな道理なんて俺が蹴飛ばしてやる!」
「えっ・・・え~~~~~?」
グッと親指を突き上げて「当たり前だ!」と言わんばかりのシモンに刹那は完全に取り乱してしまった。
刹那の答えにシモンも賛成なのだが、こうもアッサリと終わらされてはどうにも釈然としなかった。それゆえ賛成されているにもかかわらず、なぜか刹那はシモンに異議を申し立てるという訳の分からない行動に出てしまった。
「え~~と・・・・あっエヴァンジェリンさんが言っていたのですがトルストイの『アンナ・カレーニナ』の冒頭の一説、『幸福な家庭は皆同じように似ているが、不幸な家庭はそれぞれにその不幸の様を異にしているものだ』というのがあるそうです。」
「ふ~ん、それで?」
話の方向が少しズレだした。刹那はエヴァが言っていたことをそのままシモンに伝える。
「幸せな人はみな似たり寄ったりですが、不幸な人はそれぞれに違うということです。この意味が分かりますか?」
「・・・・・いや、全然・・・・」
「つまり幸せな人はエヴァンジェリンさん曰く、つまらないということです」
「はァ? なんでだよ?」
刹那はエヴァに言われた言葉を一言一句忘れずに丁寧にシモンに説明していく。
「幸福な者に語るべき物語はない。不幸と苦悩こそが、人の魂に火を宿す・・・ネギ先生のように」
「なんだよそれ? 人の不幸話聞いて何が面白いんだ? だいたい自分の人生は人に語るためのものじゃないだろ?」
「・・・・・・・は? ・・・あの・・・えっと・・・・・」
完全否定だった。エヴァにこのことを言われたとき刹那は己が幸せになっていいかどうかを苦悩した、最近自分が気づかぬうちに幸せになり腑抜けていたことを理解した。しかしどうもシモンとは話が噛み合わなかった。
「刹那、自分の生き方を人にどう判断されたって別にいいじゃないか。人から見て面白いとかつまらないとかで生き方を決めるほうが、よっぽど薄っぺらでつまらないよ。不幸なんて目指さないで幸福を掴み取れ!」
「・・・・・で・・・ですが・・・・」
「それがどんなものでも自分が誇れればそれでいいじゃないか。泥臭いだ、汚いとか人に言われても俺はそうやって生きてきた。ドリルはお前の魂だ、そう言ってくれた人がいたから俺は自分の魂を誇れるようになった。」
「・・・・・あの・・・ですから・・・私は両方を選ぶと・・・・・」
「ああ、だったらそれでいいじゃないか。何の問題があるんだ? 一々人に言わないでも自分がそうだと決めたら、そうすればいいじゃないか。確かに二つを同時なんてことは困難かもしれないが、困難に立ち向かわないで得るものなんて無いと思うよ」
シモンはそう言ってニッと笑い刹那を見た。強引な理論と笑顔、それに刹那を始め多くの者が今まで救われてきた。しかし今の刹那にとっては違った。なぜなら刹那の先程までの悩みは、こうもアッサリと終わってしまった。
(えっ・・・あれ? ・・・これで・・・話は・・・・終わり? ・・・アレ?・・・)
その瞬間刹那は地面に両手と膝をついてうな垂れた。その肩は震え、物凄い落ち込みようだった。
(わ・・・・私の悩みはなんだったんだ~~!? この人は・・・この人はなんでこうも滅茶苦茶な理論がポンポン出てくるんだ? あのエヴァンジェリンさんとの戦いから学んだことを・・・こんなにアッサリと・・・)
新たな自分の決意をシモンに聞いてもらいたい、そのために刹那はエヴァや木乃香にも言わずにいたのに、まるで自分の悩みが物凄く小さいことのように感じ、急に馬鹿らしくなってしまい、刹那は本気で泣きそうになってしまった。そんな刹那を周りの者は気の毒に思って見つめていた。
「とりあえず・・・・シモン君とのディベートは無理だな・・・・」
「無理矢理な理論で言い包められるうえに、言っていることが間違ってないだけに大変ですね・・・」
タカミチとシャークティはリング上で落ち込む刹那を哀れむような目で見ていた。
「ちょっ・・・急にどうしたんだよ、刹那? 俺なんか変なこと言ったか?」
戦いの最中に落ち込み、うな垂れる刹那に、シモンは素で心配そうに顔を覗きこむ。すると刹那の肩が急に震えだした。まさか泣いているのか?そう思い少しシモンが慌てそうになった瞬間、
「クス、クスクスクス」
刹那が突如口元を押さえながら声を漏らす、そして
「アハハハハハ! そうですね、・・・ふふ・・・、申し訳ありません・・急に・・・」
刹那はお腹を押さえながら笑った。その様子にシモンは益々訳が分からなくなり、周りに助けを求めようとするが、リングサイドに居るエヴァやタカミチたちも、おかしそうに口元を押さえて笑いを堪えていた。
「シモンさん・・・やはりアナタはすごい人です。だってどんな滅茶苦茶な言葉も、アナタが言えば信じてしまえるのですから・・・」
「・・・滅茶苦茶・・・に聞こえちまうかな?」
「はい、滅茶苦茶で・・・根拠が無いのに・・・筋が通っている・・・。少し悔しいです・・・、どうやら私はまだシモンさんのことを理解していなかったようですね」
複雑そうな笑みを浮かべる刹那を見てシモンは再び武器を構える。
「刹那・・・互いを真に理解し合うのには、言葉だけでは限界がある」
「・・・シモンさん?」
「俺のことを・・・互いをもっと知り合うんだったら、もっと語り合おう! 言葉だけじゃなく、拳や魂をぶつけ合ってな! 今この場には俺とお前しか居ない、俺は全部受け止めてやるよ!」
その一言が合図となり、シモンの体から螺旋力が開放される。それは正面に居れば思わず後ずさりしてしまうほど、大気を揺るがす荒々しさを帯びていた。
(ああ・・・スゴイ・・・なんて熱く・・・大きく・・・強い・・・魔力でもない・・・気でもない・・・・人が誰しも持っている気合という名の力・・・)
だが、刹那は気圧されたりはしない、むしろ胸が熱く高鳴った。シモンの心に居るニアでもカミナでもない、ヨーコやシャークティ、美空でもない。今シモンは刹那だけを見て、その魂を正面から受けようとしてくれている。そう思った瞬間、刹那の肩が再び震えた。それは歓喜や怒りや笑いを堪える震えではない。これは純粋な武者震いだった。そしてその湧き上がる想いを堪えることが出来ずに、刹那は再び笑った。
「では・・・受け止めてくださいね。・・・今の私のありのままを・・・・アナタにぶつけます!!」
刹那の武器はブラシ、傍目から見て少し頼りないようにも見えるが、刹那の気を纏い強化されているブラシは更に硬度と力を増していくように見えた。そして刹那も構える。
「神鳴流剣士、3-A、出席番号15番、桜咲刹那!! いざ参ります!!」
「ああ・・・・来いよ、・・・お嬢ちゃん!!」
同時に駆け出して互いの武器を交錯させる。武器と武器がぶつかり合う、どちらも攻撃の手を一瞬たりとも休めずに辺りいっぱいに何度も衝撃音を響かせる。
「奥義・・・斬鉄閃!!」
「怒涛大切斬!!」
互いの必殺技が繰り出されれば、一際激しい衝撃の嵐が吹き荒れる。アナウンサーの朝倉もその衝撃に危険を感じ、いつの間にかリング下に避難を始めた。その衝撃は当然観客席までも行き届く。腕を顔の前に置き、しかしそれでも戦いを見逃さないように懸命に全員が顔を逸らさないようにしている。
刹那は技の出し惜しみはせずに、次々と一撃必殺の強力な技を繰り出していくが、シモンも一歩も引かない。それは一部の人間から見て奇妙な光景だった。なぜならシモンと刹那は単純なぶつかり合いで、まったくの互角の戦いを繰り広げているのである。
「神鳴流奥義・・・百烈桜華斬!!」
刹那も奇妙な感覚があった、そしてそんな刹那が感じることを理解できたのはこの会場でタカミチ、エヴァ、シャークティ、龍宮、楓、そしてネギである。
「超時空烈斬!!」
刹那の技に負けずシモンも強力な力を振るい、再び互角のぶつかり合いをした両者の武器が互いを弾きあう。
この瞬間刹那も、そして他の者も、確信した。
(やはり・・・シモンさんは昨日より・・・先程までより・・・強くなっている! 一度打ち合うたびに・・・少し時が経てばその分強くなっている!?)
ドリル無しのシモンの力は正直なところ、自分やネギ達と比べて見劣りすると思っていた。その証拠に昨晩の予選では、それなりの使い手とはいえ、自分たちよりも遥かに劣る豪徳寺に大苦戦の末に辛うじて勝ったぐらいのものだった。
しかし今は違う。自分と互角の戦いを繰り広げている。しかも試合開始当時は互角とはいえ剣技のみにおいては自分が圧倒的に上回っていた、にもかかわらず今では自分と同等の動き・・・いや・・・徐々に力が増し、押されていくような感覚に陥っていた。
「どうした、もうへばってんじゃねえのか? まだあんまり語り合ってねえぜ! 」
「(くっ・・・バカな!?)」
当初は刹那のほうから攻撃を仕掛けていたが、少しずつシモンに形勢が傾き始めてきた。
「(バカな・・・一撃の威力まで上がっている! これは・・・試合中に成長どころの話ではない、むしろ進化だ!)
これはもはや気合でどうこうのレベルではない異常事態だった。裏の世界ではそれなりの実力者である刹那が、少しずつ、少しずつ圧されていく。目に見えるほど急激に進化していくシモンに、戦っている刹那だけでなく、ネギやタカミチも純粋に驚愕している。
その答えを知っているのはこの会場ではヨーコ、そして超鈴音だった。止まることの無い螺旋力の進化がシモンに力を与えていく。そしてその力がやがてこの世界での戦士たちの常識という壁に風穴を開けていく。
「まだだぜ、刹那! まだ足りねえ! これじゃあ、俺は乗り越えられねえ!」
「まったく・・・本当に常識破りですね・・・、ですが・・・ですが・・・・私だって・・・・」
シモンからは一撃打ち合うたびにその熱い想いが伝わってくる。だが、たとえシモンがどれほど進化しようとも、己も誓った言葉には嘘はつけない。刹那は背中の羽にグッと力を込める。
「私も・・・このまま負けるわけにはいきません!! ネギ先生が、アスナさんが、美空さんが、その熱い想いを見せてくれたのです。 あの人たちの前で・・・お嬢様の前で・・・たとえアナタが相手でもこのまま終わりません!!」
そして刹那は翼を広げて再び上空へと高らかに飛んだ。そして両手を広げて気の塊を飛ばし、これが数発当たり、シモンの体の体勢が崩れる。
「やべっ」
「好機!」
その瞬間を見逃さずに刹那は急降下し、シモンに向かう。シモンも無我夢中でブーメランでなぎ払おうとするが、急降下したと思った刹那は翼を羽ばたかせピタリと空中で止まり、シモンの攻撃は空を切る。
そして刹那はスキだらけとなったシモンに容赦なく一撃を入れる。
「奥義・・・斬岩剣!!」
その一撃は完全に直撃した。シモンのわき腹が破壊されたかのような激しい音を立てて、シモンは激しく飛ばされる。
「ぐ・・・いっ・・・がはっ・・・・・」
『桜咲選手の華麗なる舞による一撃がとうとうシモン選手を直撃~~! しかし桜咲選手は本当に翼が生えているのでしょうか? アナタの正体はひょっとして天使ですか?』
わき腹を押さえて表情を苦悶で歪めるシモン。翼を開放した刹那の動きは実に鮮やかである。そしてシモンが顔を前へ向けた瞬間、刹那は既に空高くに舞い上がっていた。そして彼女が手にもつデッキブラシには実に激しい光がスパークして覆っている。
「ったく・・・それアリなのか? さすがにそれは誤魔化しきれないんじゃないか?」
空を見上げてシモンは呟く、しかし刹那はニッと笑い、シモンを見下ろす。
「シモンさん・・・これが今まで私が死に物狂いで磨き上げた剣の道・・・即ち・・・私の魂です!!」
上空に舞う刹那は、静かに己の気を溜めて、目を瞑りこれまでのことを思い返しながらシモンに語りかける。その手に持つ己の武器に溜まる光はとどまること無く激しさを増していく。
そして限界地点になった瞬間、刹那は目を見開いた。
「神鳴流決戦奥義!!・・・・」
大気を震え上がらせるほどの異常に高ぶった気を抱え、刹那はシモンに向かって攻撃しようとする。
「イカン!? 刹那君、それはやりすぎだ!!」
「こらーー! 刹那ーー、そんな大技やったら会場が吹き飛ぶぞぉーーー!!」
エヴァとタカミチが刹那の技の威力を瞬時に察して、慌てて叫んで止めようとするが刹那は止まらない。タカミチとエヴァの声を聞いてネギたちも慌てて刹那に向かって叫ぶが、今の刹那には聞こえない。今の刹那の瞳にはシモンしか写っていなかった。己の一撃でシモンを倒す、しかしその瞬間、シモンはわき腹を押さえながら立ち上がった。
「すごくキレイだ・・・だがまだ足りない・・・なぜなら・・・魂、気合、俺にはもう一つ他の力があるからだ!」
傷つきながらも叫ぶシモンの体から、再び螺旋力が光りだす。全身に輝く気合を覆ったシモンは下降してくる刹那に向かって腕を思いっきり伸ばした。そしてその腕からシモンの螺旋力が刹那に向かって伸びた。
「なっ!? こ・・・これは!?」
シモンの腕から伸びた緑色の光は突如ロープ上の形になり、刹那の身体をぐるぐる巻きに拘束し、身動きを取れなくした。
(な・・・なんだこれは!? シモンさんには・・・こんな技もあるのか?)
翼ごと自分の身体を封じるシモンの力、ありえないことをいつでもやり遂げるシモンだが、さすがにこの事態は予想もしていなかった。拘束されて動揺する刹那に向かってシモンは叫ぶ。
「お前の魂と気合は中々だ・・・でも・・・それだけじゃダメだ・・・お前にはまだ欠けているものがある!」
「なっ!? (私に欠けているもの? ・・・修練の数? 潜ってきた修羅場の数? それとも・・・背負っている物の差? ダメだな・・・私は・・・ありすぎて検討もつかない・・・・)」
シモンに指摘されて刹那は拘束状態でありながらも考え込んだ。今の自分に足りないものは何か、だが上げればそれは限がない物だった。だが、シモンの答えは自分のまったくの予想外のものだった。
「お前に足りないもの・・・それは・・・愛だ!!」
「「「「「「「愛!?」」」」」」」
「愛!? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
シモンは拳をグッと握り締め、自信満々に叫ぶ。
一瞬時が止まったかのように会場が静まり返る。観客も、ネギたちもポカンと口をあけて呆けてしまった。刹那も一瞬呆けてしまったが、シモンの言葉の意味が分かり大声を上げてしまった。
「・・・・えっ?・・・・・ええええええええ!? ちょっ・・・・シモンさん、イキナリ何を! だだ・・・だいたい愛は関係ないではありませんか!」
その言葉にリングサイドで頷くものと首を横に振るものも居る。
「いや~~、刹那さんの言うとおり関係ないでしょ・・・・」
「なに言うとるん、アスナ! シモンさんの言うとおり愛は無敵や!」
「さすがシモンさんです! 哲学者だったおじい様も言っていました! 愛を知らぬ者が本当の強さを手にすることは永遠にないであろう、それを知るシモンさんこそ真に強い方です!!」
「う~む・・・愛アルか~~、私そんな経験ないアルヨ~~、では私は強くなれないアルカ?」
夕映と木乃香は愛を叫ぶシモンに目を輝かせて、尊敬の眼差しを送る。ネギもシモンの言葉だったため、真剣にメモをとっていた。
そしてリング中央で刹那を見上げながら、シモンは語る。
「刹那・・・覚えておけ、愛と気合の力は宇宙を・・・そして運命すら変える力になる。そして人はその力を抱えてどこまでも強くなる!」
そしてシモンは己の手から伸びる螺旋力で出来たロープを両手で掴み、勢いよく上空で大きな円を描くように回す。
「それをまだ知らないお前みたいなガキには、俺を超えることは出来ない! ヨーコと戦い・・・それを思い出した今の俺は誰にも負けない!」
「うあぁ!」
「くらえ!! 俺の嫁は~~~、宇宙一スイング!!!!」
学園の中心で愛を叫ぶシモン、 その叫びはまるで銀河の果てまで響くほどの大きさだった。あまりにもバカ正直に叫ぶその姿はむしろ清々しく、多くのものを引き込んだ。
だが、投げ飛ばされそうになった刹那はこのままでは終わらない。彼女はなんと全身に気を集中させ、シモンの螺旋力の拘束から逃れた。
「なっ、逃れただと!?」
さすがに拘束を破るとは思わなかったために、シモンも一瞬驚愕して刹那を見る。すると上空で自由になり羽ばたく刹那の顔は少し怒っているような表情だった。
「愛・・・ですか・・・ほう、シモンさんは私には愛が無い・・・・そうおっしゃるのですね・・・・」
その言葉には少しトゲがあった。目じりを少しピクピクさせながら、刹那は出来るだけ穏やかな声で言おうとしている。だが、その心は穏やかではなかった。
(この人は人の気も知らずに~~~! たしかにシモンさんにとって私は恋愛対象外なのでしょうけど、そこまで言うなんて酷過ぎます! たしかにシモンさんにはニアさんへの想いがありますし、ヨーコさんと比べても精神的にも肉体的にも私は子供ですが・・・・それでも・・・それでも・・・私は・・・・)
愛が足りない、そう言われた刹那だったがその言葉を考えれば考えるほど胸がムカムカして来た。
(確かに私は・・・・愛を知りませんけど・・・似たような感情なら現在進行形で・・・なのにこの人は私の気持ちを知るどころか・・・まったく愛が無いなどと・・・、たしかに私はこのちゃんのように告白はしていませんけど・・・少しくらい・・・少しくらい・・・察してくれてもいいではないですか!!)
ゆっくり地上に降り立った刹那は。この微妙な嫉妬とやるせない想いが今まで悩んでいた分、沸々と湧き上がってきた。
「・・・おい・・・・刹那?」
相変わらず鈍いのか鈍くないのかよく分からないこの男を、刹那は思いっきり睨みつけた。
「ええ・・ええ! たしかに失恋や結婚経験や告白されたりのシモンさんのような恋愛経験豊富な方から見れば私は愛も知らぬ子供に見えるでしょうねぇ!このちゃんの告白は断ったくせに・・・アナタは公衆の面前でヨーコさんに告白しますし・・・、いつもアナタはニアさんとヨーコさんばかり! 人に愛の重要性を語っておきながら、自分に向けられる好意は受け入れない、・・・そんなのあんまりです!」
「・・・・刹那?」
(まったくこの人は~~、柔軟な思考なのか、それとも頑固なのか・・・・愛を知りながら・・・恋に疎い・・・・本当にヤキモキさせる・・・)
少し涙目になりながら刹那は武器を構えている。肩で息をしながらその瞳はシモンを見つめている。だが一頻り子供のように叫んで心も少し落ち着いてきた刹那は、シモンの顔をジッと見ながら己の心と相談する。
(愛・・・か・・・たしかに私の想いは胸に秘めているうちはまだ・・・恋の領域・・・、シモンさんとニアさんに適うはずも無い・・・ですが・・・それに少しでも対抗しようとするのなら・・・私も・・・土俵に立たなくてはならない・・・)
いつも自分の心を乱すのも落ち着かせるのもシモンは容易くしてしまう。たしかにこれまで自分はシモンに対する感情を出来るだけ見せないようにして来た為、シモンが自分の気持ちに気づいていないのも無理は無かった。だが、それではおもしろくない。そこで刹那は木乃香の顔をチラッと見る。そして木乃香に言われたことを思い出した。
(想いを押し殺して遠慮するのが嫌・・・そう言われたんだったな・・・私は・・・。でも私は今日誓った・・・剣の道も・・・幸福もあきらめないと・・・ならば・・・)
目じりに溜まった涙を軽く拭い、刹那はあることを思いついた。それは考えただけでも恥ずかしい行為、しかしこの程度を出来なくて自分がこの先進む道に立ち向かえるはずはない。
(このちゃん・・・ウチは言うよ・・・このちゃんにも遠慮はせん、自分の気持ちを正直に伝えるよ・・・)
刹那は二、三度ほど深呼吸をして自身を落ち着かせようとするが、それでも顔はどんどん赤くなる、心臓の音も激しく鳴る。それでも自分の成すべきことをするために、懸命な笑顔をシモンに向けた。その笑顔にはほんの少しだけイタズラめいた表情が混じっていた。
「分かりました・・・私に愛が足りないと言ったのはアナタです、ならばその欠けているものを今解消させます! アナタの所為なのですから責任とってもらいますよ!」
「えっ? はっ? おいおい、何する気だ?」
(少しぐらい私の言葉に取り乱して欲しいものですね・・・ふふ・・・シモンさんはどんな反応をするのでしょう・・・。ですが・・・たとえどのように取り乱しても、最初から答えなど分かっている・・・。しかし・・・宮崎さんやこのちゃんのように・・・私も・・・。そうだ・・・・私は剣と幸せをあきらめないと誓った・・・・ならば・・・答えがたとえ分かっていても・・・立ち向かわねばならない!)
気を高め、刹那はシモンに向かって口を開く。
「今からアナタに見せる技・・・これは東大へ行って剣も勉強も恋も極めようとした伝説の神鳴流剣士の技・・・これを・・・アナタにぶつけます!!」
「はっ? トウダイ?」
一瞬訳が分からずに聞き返すシモン。しかし今の刹那の態度と少し顔を赤らめている表情から、彼女の友はあることに気付いた。
「ま・・・まさか、せっちゃん・・・」
「ウソ・・・いくらなんでも刹那さんが・・・・だってこんな大勢の人前で・・・まさか・・・」
彼女の胸に抱いた想い、彼女達は皆知っている。そして刹那は今その想いを剣に乗せて伝えようとする。
「シモンさん!! よく聞いてください!!」
「えっ?」
顔を真っ赤にしながらも刹那は武器を振り上げ物凄い勢いで向かってきた。
「はあああああああ!! 私は・・・・アナタのことが!!」
「なっ・・・・・お前何イキナリ言い出す気だよっ!!」
シモンも反撃すべく武器を振り下ろすが、その強力な一撃を刹那は力づくで受け止める。
「なっ!?」
「気合と魂・・・そして愛、全てを補った私の剣は易々とは折れません!!」
今にも折れそうな刹那の武器、しかしどれほどの衝撃を受けようとも決して折れずに今でも刹那の想いを宿し闘う意思を捨てない。
(言うんだ・・・言うんだ・・・このちゃんにも誤魔化さないと言った・・・何も恥じることなど無い・・・この気持ちを・・・この気持ちを言うんだ!!)
そして鍔迫り合いの中、ゆっくりと刹那は顔をシモンに近づけていく。震える唇、沸騰する顔、しかしそれでも募り募った想いを止めることは出来ずに、今・・・全てをぶちまける。
「す・・・・・好きですーーーーーーーーっ!!」
「なっ、○×A□B~~~!?」
「「「「「「いっ・・・・・・言った~~~~~~!」」」」」」」
『な、・・・・なんと衝撃の展開! 桜咲選手による必殺告白剣!! シモン選手が一瞬で石化した~~~っ!!』
完全に石化して固まってしまったシモン、予想したものの刹那の行動にアスナたちも固まる。余りにも大胆に告げた刹那の告白に観客も顔を赤くして固まる。
「あっ・・・・あの・・・・え? え~と・・・・あの・・・・(えっ? 好きって・・・・俺のことを? 刹那が・・・いや・・・そんなそぶり全く・・・いやいやいや、そんなことは在り得ない、だいたいアニキと違って俺が女にもてるなんて・・・はっ!? まさかここは多元宇宙か!? だって・・・こんな・・・)」
木乃香から告白された時それほどシモンは取り乱したりせずに冷静だった。それはあの場の雰囲気というか、そのような空気が流れていたため自分の心の準備も出来ていたため、冷静に対処できたからである。
しかし今はまったくの予想外の事態に頭が混乱してしまった。これまで微塵も恋愛対象として見ていなかった少女が顔を真っ赤にしながら自分を好きだと叫んだ。
そして想いを叫んだ刹那は再び武器を振り上げ石化状態のシモンに襲い掛かる。
「ふふ・・・とうとう言ってしまいました。私だって・・・私だって女ですよ! シモンさん・・・これもアナタの所為なんです。アナタが私を変えてしまった・・・異性に惹かれるということも生まれて初めて経験しました!! これでも私に愛が足りないと仰るのですか?」
「ちょっ・・・・・ちょっと落ち着け、刹那! 俺には・・・その・・・・ニアが!」
襲い掛かる刹那を見て慌てて正気に戻ったシモンは、間一髪のところで刹那の攻撃を受け止める。そしてニアの名前を口にする。
だがその瞬間刹那の目から涙が溢れ出す。
「知っています・・・だから・・・だから言うつもりなんてなかったのです! 答えなんて最初から分かりきっていたから・・・しかし・・・しかし・・・・・・それでも好きなんです!!」
「!?」
「苦しかったです・・・なぜなら・・・アナタはこのちゃんの想い人・・・それだけではなく・・・今でも一人の女性のことを想い続けている・・・私の心など入る隙間が無いほどに・・・」
剣を打ち合いながら己に溜まった感情を涙ながら明かして行く刹那、それは周りのものは顔を赤くしてしまうぐらい切なく、単純な感情だった。
『おお~っと、何やら色々とあったようですが再び戦いが再開されました! しかし常に冷静な桜咲選手が物凄いぶちまけ度です! シモン選手が後退していきます』
「もしアナタが無自覚なのだとしたらヒドイです! 修学旅行の日から行き場を失った私の想いを・・・アナタはとるに足らぬものとして見ている・・・ 奥義・・・斬鉄閃!!」
「くうっ!」
いつもの刹那らしからぬ暴力的な剣、しかしそれは荒々しい言動とは裏腹に、実に洗練された動きだった。シモンもかろうじて直撃を防ぐものの、刹那の攻撃の手は止まらない。
だが、シモンも打たれっぱなしではない。
「ったく、ギャーギャー騒いでんじゃねえよ、刹那! 確かにお前の想いを知らなかったのは本当にすまないと思っている・・・だけど・・・その想いに負けるほど・・・俺の想いだって弱くねえんだよぉ!!」
シモンも反撃をする。これで何度目の攻防かは分からない、しかしそれでも二人は疲労を見せることなく互いの想いをぶつけ合う。
「ですがアナタも少しは・・・人の気持ちも察してください!! 神鳴流決戦奥義!!・・・・」
再び大気を揺るがす強大な気、先程は不発に終わったが直撃すればひとたまりも無いほどの力が刹那を覆う。
対してシモンは先程と同じ手は使わない。何を思ったのか正面から受ける構えである。
「察しろ・・・か・・・本当にそうだな・・・でも・・・そいつは無理だ・・・、今のお前みたいに周りが見えなくなるのが恋・・・。それが進化した姿が愛だ!! そして・・・その究極の姿こそ俺のニアへの想いだ!」
その瞬間今日一番の螺旋力の光がシモンを包み込み、強大な光の柱となり天を突く。
「私だって・・・勇気をくれたアナタが・・・誰よりも勇敢で・・・・誰よりも熱く・・・例え弱さを持っていても・・・その弱さに負けずに何度でも立ち上がるアナタが・・・ずっと・・・ずっと好きだったんです!! 私は・・・私はヨーコさんと比べたら子供ですけど・・・本気なんです!!」
途中から涙を流しながら胸に秘めた想いを明かす刹那。観客も、そして木乃香たちも、恥も外聞も捨てて叫ぶ少女の切ない想いに涙が湧き上がってきた。
だが、それでも答えは決まっている。それは刹那自身が言っていたことである。刹那の想いが真剣だからこそ、シモンも己の想いに嘘を付くわけにはいかない。誤魔化す訳にもいかない。
天を見上げて自分を好きだと叫ぶ少女に自分の気持ちを伝える。
「悪いな・・・俺の想いは今でもこの無限の銀河を包み込む! 刹那・・・お前の気持ちは理解した。だが受け入れるわにはいかない! 愛の大きさじゃあ俺はまだ誰にも負けない!!」
強大な雷を覆った刹那に向かってシモンも螺旋力を全開にして飛び掛る。
「刹那ぁ! これが俺の返答だ!! ・・・・ゴメン!!」
「ううっ・・・シモンさんの・・・・シモンさんのバカーーーー!!」
そして両者にとって現時点最強の一撃がぶつかり合う。
「真・雷光剣!!!!」
「超銀河大切断!!!!」
二人の想いが膨大な光と音を発生させ、二人の姿を包み込んだ。会場のものが目を覆う、まさに全てを出し尽くすと呼ぶにふさわしいほどの熱量がぶつかりあった瞬間だった。
「刹那ァァーーー!!!!」
魂と気合と愛がぶつかり合う。そしてこの勝負を制したのはその全てが上回った方であった。
胸に宿す魂、湧き上がる気合、秘めた想い、その全てが交わり己の振るう武器に捻じ込んだ者が、この最後のぶつかり合いを勝利した。
「うっ・・・・・くっ・・・・・・こ・・・・・ここは?」
意識がハッキリしない。体に力が入らない、当然である。あれほど巨大な力を出し切ったのである。体が言うことを利かなくても不思議ではない。
そんな彼女にとって唯一正常に働いている器官は瞳だけだった。その瞳に移るのは自分の額に手を乗せながら魔法で自分に治療を施している木乃香の姿だった。
ここは大会控え室、どうやら自分は技を出し終わった後気を失い木乃香に膝枕をされながら治療されているようだ。
膝枕?
その瞬間意識が完全に覚醒した。
「お・・・おお・・・・お嬢様!?」
「あっ、せっちゃん目ぇ覚めた?」
ニッコリ笑って自分を見る木乃香、どうやら自分は木乃香に看病されていたようである。自分の周りを見渡すと、そこにはネギやアスナたちもいる。皆自分の側にいてくれたようである。少しずつ意識がハッキリしていった刹那は、あることを思い出した。
「あの・・・・試合は? ・・・・・その・・・・シモンさんは・・・・・」
その言葉を聞いてエヴァがニヤニヤしながら目の前に現れた。
「くっくっくっ、フラれたキサマの負けだ。あれだけ大勢の前でみっともない姿を晒すとはな、傑作だったぞ」
意地の悪い笑みを浮かべながら結末を告げるエヴァ。その言葉を聞いてアスナが咄嗟にハリセンを出し、問答無用でエヴァを殴り飛ばし、二人の口論が控え室に広がる。
だが、エヴァの言葉だけが頭に入り刹那は苦笑しながら軽くため息をついた。
「あの方は本当に私の予想などを遥かに上回る方だ・・・想いも・・・魂も・・・そして強さでも・・・、私などが太刀打ちできる相手ではなかった・・・」
ガックリと肩を落とす刹那、自分が決して譲れなかった強さにおいてもシモンには敵わなかったのである。
・・・・だが・・・刹那の目は失意の目ではなかった。新たなる決意が宿っていた。
「また・・・明日から気を引き締めねばなりませんね。このまま腐ってはあの人に申し訳ない」
「せっちゃん!」
「お嬢様・・・・いえ・・・このちゃん、ウチは大丈夫。もう・・・自分を押し殺したりなんてせん、強くなる・・・・そして・・・このちゃんたちといる今の幸せも絶対に守る!」
決意は既に述べた、あとは行動するのみである。たとえ敗北しようとも刹那はすぐに立ち上がり前を見る。その瞳と笑顔を見て、木乃香も歓喜の余り飛びついた。一瞬頬を赤くした刹那だが、黙って自分の胸に飛びつく木乃香の腰に腕を回した。そして、今ある幸せを噛み締め、絶対に守り抜くことを誓った。
皆暖かい目で二人を見守る。すると刹那があることに気付いた。それはシモンの姿がこの場にいなかったことである。
「あの・・・シモンさんは?」
「兄貴ならもう行っちゃったよ~。刹那さんと顔合わせづらいんじゃない?」
「えっ・・・・・・あっ!! ・・・そそ・・そうでした・・・・・私は・・・い・・・勢いに任せてあのようなことを・・・・」
美空に言われて刹那は思い出した。自分が思わず告白してしまい、子供の様なみっともない姿を見せてしまったことを。
「あのような子供じみたことを・・・シモンさんも私に幻滅されたでしょうね・・・」
「でも、せっちゃんも可愛かったな~。あれぐらいストレートのほうがシモンさんにはええと思うな~」
思い出しただけでも頬が沸騰しそうだった、別に後悔はないのだが、冷静に考えると自分はとても大胆なことをしてしまったのだと、急に恥ずかしくなった。シモンが自分と顔を会わせづらいのは仕方のないことである。
「たしかに・・・本屋ちゃんや木乃香にも負けないぐらい大胆だったわよ、刹那さん♪」
「フン、だがフラれたのだから恋の道はあきらめることだな」
「それを言ったらアナタもですよ、エヴァンジェリン」
「なぁっ!? シャークティ~、私はフラれたわけではない! まだ保留だ!」
告白などせずともシモンの答えなど分かっていた。しかしそれでも立ち向かう木乃香に今日自分の気持ちも同じであることを教えた。そのことに対して木乃香も何のわだかまりも無く頷いてくれたことに、刹那もかなり恥ずかしかったが、今では妙に清々しい気持ちであった。
「そんで~、桜咲さんはどうすんの? 木乃香同様あきらめないの?」
ハルナが興味心身に聞いてきた。とりあえずフラれたわけだから、このまま自分の想いはあきらめるのは普通なのだが、シモンの場合は独り身のため、この先まだ可能性がゼロでないことは明らかだった。
「さあ、・・・どうでしょうね・・・・・・」
すると刹那は少し目を瞑り考えた。だが、今はこれ以上どうしようという気にはならなかった。思いっきり告白してフラれたため、まだ先のことは考える気にはならなかった。
「まあ、・・・・私は自分のペースでやっていきます。まずは未熟な己を鍛え上げることが重要ですから・・・。あそこまでキッパリとフラれたのですから、今は自分を磨くことに集中ですね」
そう言って刹那は笑った。まだ恋の道はどうするかは分からない、それでも刹那は成長することを誓った。ハルナも最初はからかうつもりで聞いたのだが、刹那があまりにも真剣な目で答えたため、それ以上聞くことはしなかった。木乃香やアスナ、そしてエヴァも刹那の答えに納得して頷いた。
「ほかほか、せやけどウチらもとんでもない人に惚れてもうたな~~せっちゃんは「ゴメン」・・・で、ウチの告白には「ヤダ」・・・やった人やからな~~」
「そうね~、木乃香たちも生半可な気合じゃあ勝てないわね~、まあどっかの天才少年みたいに、シモンさんは告白の答えを有耶無耶にしなくていいんじゃない?」
そう言ってアスナはチラリとのどかとネギの二人を見た。
「えう~~、そう言われましても・・・僕にはまだ分からなくて・・・・」
「あう~~、わた・・・私もまだ答えは・・・・それに・・・・」
一斉に視線が集まり狼狽する二人。そしてのどかは告白を断ったシモンの一言を思い出す。
(もしネギせんせーに・・・・あんなハッキリと断られたら・・・・生きていけないよ~~~~。でもネギせんせーはシモンさんに影響されてるし・・・もし「ヤダ」なんて言われたら・・・う~~~~。)
涙目になる二人を見て、そして今この場にいない男のことを思い、皆笑う。もうここには刹那にも木乃香にも何のわだかまりは無かった。そしてシモンがこの試合で進化したのなら、刹那自身もこの試合を経て大きく成長したのであった。
色々とあったが激戦の末、シモンは準決勝進出を決めた。
これで大会もいよいよ終盤に差し掛かりベスト4が決まった。そしてこれがその組み合わせである。
長瀬楓 VS クウネル・サンダース
ネギ・スプリングフィールド VS シモン
だが戦いを忘れて談笑する彼らは、この時はまだ誰も気付いていなかった。本人も気付いていなかった。今共にこの場で笑う少年、彼は次の試合でシモンと戦うことを、すっかり忘れていた。
最終更新:2011年05月10日 15:00