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48-目指す天の向こうで待っている!!

第四十八話 目指す天の向こうで待っている!! 投稿者:兄貴 投稿日:08/12/21-14:37 No.3774
「ちょっ・・・これ見てよ!!」


ネギの生徒でもある釘宮円が持っていたパソコンの画面に何かを写した。声を聞いて委員長たちやヨーコもその画面を覗き込む。


「な・・・なんですの、これは?」


「ネギのこと・・・みたいね。ネギの涙の過去?」


気づけば自分たち以外にも会場中の観客たちが携帯電話やパソコンで同じ画面を写している。リングサイドにいるハルナも携帯の画面を見ながら、その内容に驚いているようだった。彼らはようやく、超の仕掛けた撒き餌に掛かったようである。


「ネギ君にそんなことが・・・・」


携帯の画面を見ながらハルナは呟く。そしてその後ろにいるのどかや夕映を見る。


「(ゆ・・・ゆえ~、これネギせんせ~の・・・)」


「(はい、しかしなぜこの事が・・・)」


何かを小声で話し合っているが、その様子だと自分と同じ反応ではなさそうである。


「ふ~~~ん、ひょっとして君たちはこの内容を知ってたのかな~~~?」


「「ギクッ!?」」


ハルナと違い夕映ものどかもネギから直接話を聞いていたが、その場にハルナはいなかった。それを今日までずっと黙っていたことにハルナは不気味なオーラを出しながら二人を威圧する。


「ほほ~~う、ちょ~~っと、後でお話しようね~~」


「「ひいいいいい!!」」


超の仕掛けにより彼女たちだけでなく色々な場所でネギの過去を皆に知られていく。


「んまあ・・・まあ・・・。行方不明のお父様を・・・ネギ先生にそんな事情が・・・・」


「しかも・・・お母さんもいないみたい・・・」


「んまあ!・・・そ・・・そんなことも知らずに・・私は私は・・・・雪広あやか、一生の不覚!!」


委員長を始め、ネギの過去を知り涙を流す一同。いつもそんな素振りを見せずに笑顔を見せていたネギを想い、胸が痛んでいた。


「あっ!? これによると決勝のクウネル選手がお父さんかもしれないって!?」


「なんですと!?」


「ウッソー!? もしそうだとしたらスゴすぎじゃん!」


ネギの生徒たちだけではない、この会場にいる観客たちもその情報が耳に入り、試合そっちのけで騒ぎ出す。そして会場中の考えが一つになった。


「じゃあ私たちに出来ることは!」


「当然!・・・・・」



「「「「「「「ネギ先生を応援よ!!!!」」」」」」」



ネギの生徒や女性客だけではない。ネギの過去に心打たれた者達が一つになり大声援を送り出した。








「シモンさん!!」


「いくぜ、ボウズ!!」


シモンのブーメランとネギの魔法の杖が交錯する。素手の戦いをこれまでしてきたネギが武器を使うことは珍しかったが、ネギは長い杖を槍のように巧みに使い、シモンと衝突する。


「桜花槍衝・大公釣魚勢!!」


「ちぃっ! (鮮やか・・・そして速い!)」


ネギは槍の扱いにも慣れているようである。古によれば八極拳は槍をも得意とするそうである。その間合いの長さと動きの独特さに、流石のシモンも舌打ちをする。ネギの技はシモンの直撃は避けたものの、確実にダメージを与えていく。さらに先程ネギから貰った拳の一撃により、明らかにシモンの体の動きが鈍っていた。そして・・・


「そこです!!」


「しっ・・・しまった!?」


シモンの動きが鈍った瞬間、ネギは杖でシモンの手首を攻撃し、持っている武器を落とさせる。シモンも顔を歪めてブーメランから手を離した瞬間、ネギは既にシモンとの間合いを詰めて次の動作に動いていた。急接近したネギはそのままスピードを殺さずに、シモンの腹に肘打ちを叩き込む。


「硬開門!!」


「~~っ!?」


声に出せぬほどの衝撃がシモンを襲う。一瞬息が止まってしまった。だが、ネギはこのチャンスを逃しはしなかった。


「魔法の射手(サギタ・マギカ)!! 光の一矢(ウナ・ルークス)!! 弓歩沖拳!!」


(くっ・・・速い!・・・それに動きが読めねえ!)


即座に追撃するネギは右手に雷を集える。そしてその一撃をすかさず叩き込む。同じ箇所にこの試合三度目の衝撃、さすがのシモンも倒れこむ、しかしネギは倒れこむことすら許さない。


「高畑先生のときの連携攻撃アル!」


「しかも完全に入っている! まだまだ続くぞ!!」


ネギが完全に動きで圧倒している。ある意味予想外だった。しかしネギは冷静に攻撃を繰り出していく。


(いける! このまま押し切れば勝てる! ここで決める!!)


雷の魔法の矢を纏わせた右手を中段に真っ直ぐに打ち出す。この技は大してタカミチに通用しなかったが、今のボロボロのシモンには充分な一撃である。シモンを覆う螺旋力も最初のころの力強さが徐々に消えて、光が小さくなっている。シモンはそんな中、小さく呟く。それは迫り来る少年への素直な感想だった。


「ったく・・・・ネギ・・・やるじゃねえか・・・」


「雷華崩拳!!」


完全にフラフラとなったシモンのみぞおちに叩き込み、さらに三本の雷の矢が追い討ちをかける。シモンは勢いよく場外へと吹き飛ばされた。


『完全にネギ選手のペースです! シモン選手これまでか!?』


肩で息をしながらリングの外を見つめる。そして、完全な手ごたえに拳をぎゅっと握り締め、ネギは叫ぶ。


「はあ、はあ、はあ、僕の・・・僕の勝ちです!」


その言葉に連れられて、会場がワッと盛り上がる。


『こ・・・これは完全にキマッタ~~~~~!! つうかシモンさん死んだか~~~!?』


「ネ・・・ネギ先生~~! なんと素晴らしい! 感動で涙が止まりませんわ!!」


「すっげ~~!ネギ君つよ~~い!」


委員長や裕奈を始め、ネギの大活躍に大興奮だった。


「ちょっ・・・ホントにネギの奴シモンさんに勝っちゃったの?」


「シモンさんが・・・そんな・・・こんなにアッサリと?」


だがアスナや刹那たちはこれで終わりだとは思えなかった。なぜか分からないがそんな気がした。シャークティや美空たちもそうである。まだ何かが起こりそうな気がした。


「いや・・・そんなはずないって・・・」


「美空の言うとおりです・・・少なくとも私たちの知るシモンさんは・・・こんな時に立ち上がる人です・・・」


それは勝利宣言したネギもそうである。これではあまりにも簡単すぎる。こんなに簡単に負けるようなら刹那も遅れを取るはずはないと思っていた。


そしてその考えは正しかった。


「まったく・・・ごほっ・・・ぐっ・・・はあ、はあ、・・・体がぶっこわれそうだよ・・・」


「!?」


このまま終わりではないとは思っていた、だがそれでも驚いた。シモンはまだ終わっていなかった。再びフラフラと立ち上がり、自分の前に現れたのである。


『生きていた~~! シモンさん生きています!』


「「「「アニキ~~~!!」」」」


<そうだ、立つんだシモンさん! アンタはこんな所でやられる男じゃねえ!>


再びリングに現れたシモンに豪徳寺や観客の男たちが声を上げる。シモンの健在にシャークティたちもホッと胸を撫で下ろすが・・・しかし・・・


「はあ、はあ、はあ、・・・っつう・・・・」


もうすでにシモンの体はボロボロである。その地面を支える両足には力がなく、今にも倒れそうである。思えばヨーコとの一回戦、刹那との戦い、そしてネギの強力な技を何度も食らって、もはやシモンの体は限界に近づいていた。それはネギにも理解できた。


(シモンさんは立った・・・でも・・・もうこれ以上は戦えない・・・・いや、違う!!)


次に攻撃をすれば自分の勝利だと確信した。だが、すぐに頭の中で否定する。自分が憧れてきたシモンの背中はいつだってボロボロだった。だが、そんなボロボロの状況から無理を通してきたのがシモンなのである。


(そうだ・・・シモンさんはいつだってここからなんだ! そんな人だからこそ、僕たちは憧れたんだ!)


ネギは微塵も油断などはしていなかった。決して自身を驕る事無く、真っ直ぐとシモンを見つめた。今のネギは決勝のことよりもシモンのことしか眼に入っていなかった。その瞳を見てシモンはため息をつく。


(舞い上がっているのかと思っていたけど、冷静だな・・・予想が外れちまったな・・・)


てっきりネギはクウネルのことで頭がいっぱいなのかと思っていた。だが今のネギは自分に集中していた。本当は集中力が乱れていてもおかしくなかったが、試合前にアスナに言われた一言がネギには効いていた。

ネギに油断は無い、シモンはボロボロ、螺旋力も切れ掛かっている。この状況はまさにアレだった。


(はは・・・俺すごいピンチなんじゃないかな?)


すごくピンチだった。

すると自分に向かって構えるネギは、今の心境を語り始めた。


「シモンさん・・・さっきまでの僕は父さんの事を考えるばかりに集中し切れませんでした・・・でも・・・アスナさんが目を覚まさせてくれました。」


ネギはリングサイドにいるアスナをチラッと見る。


「僕は一人で走っているわけではありません。僕の隣で支えてくれるアスナさん、のどかさんや、それに木乃香さんやいいんちょさん達、全てを見失わずにココまで来ました」


「・・・へえ・・・」


「そして今・・・僕の前にある壁を突き破り、僕は決勝へ行きます!!」


「んまああああああ!!」


「うっひょ~~、ちょっ、今のネギ君やばくね~~!?」


「カッコイイーーーー!?」


気持ちが空回りしていないネギ、その凛々しい姿に会場の声援が一層高まる。先程までシモンを応援していたものたちですらネギの心意気に感動していた。


「くう~~、カッコいいぜボウズ!!」


「俺たちも応援するぜ!!」


「この試合に勝てば親父さんに会えるんだろ? がんばれ!!」


『おお~~っと、突如鳴り響く大声援!!観客の心が一つになっています!!』


鳴り止まぬネギコール、会場中が一体になっていることにようやく気づいたネギはペコペコと礼儀正しく挨拶していた。

そんな光景の真ん中でシモンは苦笑するしかなかった。シモンのネギに対する予想は外れたが、この状況だけは当たった。恐らくこの試合では全員がネギを応援するであろうことを。多くの声援を受けて、より一層気持ちを高ぶらせるネギ、ボロボロの自分。この状況を打破するには一つしかなかった。



「ったく・・・妙な悪役になっちまったな・・・味方が居ない孤立無援・・・・体は傷だらけ・・・たしかに絶体絶命だな・・・。・・・しょうがない・・・あの力を使ってみるか・・・」



「シモンさん?」


自嘲気味に笑うシモン、その態度からネギも何かを感じ取った。それはまだ見せていないシモンの何かである。ネギは瞬時にそれを感じ取った。

シモンはこのままでは本当に勝てないだろうと判断した。螺旋力も風前の灯である。よってネギに対抗する最後の一手を使うことにした。


「シモンさん・・・一体どうする気なのよ?」


「・・・たしかにこれ以上は・・・ヨーコさんと私の試合で、もうあの人はボロボロなのに・・・」


「たしかに・・・僕らの世界の常識では、これ以上は無理だろうな・・・」


「当たり前アル、ここからネギ坊主相手に逆転は不可能ネ!」


刹那たち専門家の目から見ても、これ以上は不可能という判断である。タカミチですら頷いている。だが、彼らも妙な期待感を隠すことが出来なかった。それはシモンが一体どんな人物なのかをよく知っていたからである。


「おい、・・・シモンにはまだ何かあるのか?」


エヴァがこの中でもっともシモンを知るシャークティに尋ねるが、彼女も分からなかった。


「分かりません・・・。・・・ですが・・・・」


「なんなん? シモンさんにはまだウチらが知らん力があるん?」


「それは分かりません、ですがあの人は胸に宿した気持ちを力に変える方・・・ヨーコさんの時には真の気合、刹那さんの時には愛の力・・・、ならばここでは何を見せるのでしょう・・・」


その答えは誰にも分からなかった。だが、これでシモンが終わるとは一人も思っていなかった。









「シモンさん・・・その体でどうするつもりですか?」


構えは崩さずにシモンに問いかける。ネギは警戒心を解かないまま、肩で息をするシモンを見つめる。


「身体だけじゃねえよ、今の俺はかなり疲れているから螺旋力も湧き上がらない・・・・正真正銘のピンチって奴だ・・・勝ち目はかなり薄い・・・」


「そ、それじゃあ・・・「でもな!」・・・」


ネギの言葉にシモンは口を挟み、小さく笑いながらネギに語りかける。


「俺だって一人で戦っているわけじゃない」


「・・・・えっ?」


「俺は多くの仲間たちに支えられて今まで踏ん張って来れたんだ、俺一人だけの力じゃない。どんな時でも仲間との絆が力をくれた・・・だからこのピンチでは・・・」


シモンはニッといつものように笑った。




「仲間との絆の力でこの困難を乗り越える!!」




堂々と叫ぶシモンの言葉、それがシモンの奥の手であった。ヨーコとの戦いでは気合、刹那の戦いでは愛、そしてこの戦いでシモンが選んだ力は、絆の力であった。しかしその内容は周りの者には理解できなかった。なぜならこれは一対一の武道大会なのである。仲間の加勢など許されるはずはない。そんなこと誰だって知っている、そんな中でどうやってシモンは仲間から力を得るつもりなのかと全員が疑問に思っていた。


そんな中シモンが大きく息を吸い、大声を上げる。


「ヨーーーコーーー!! いるんだろーーー?どこだーーーー?」


「えっ!? ヨーコさん?」


「「「「!?」」」」


突如大声で仲間の名前を呼ぶシモン。その名前を聞いて、まさか本当に仲間を乱入させるつもりなのかと誰もが疑問に思った。辺りをキョロキョロ見渡すシモン、すると委員長たちネギのクラスメートの集団に混じっていたヨーコがシモンに向かって手を上げて応えた。

するとヨーコと目が合い、シモンはニッと笑う。そして彼はヨーコに向かって手を差し出した。



「俺の・・・、俺たち大グレン団の魂を俺に!!」



「!?」


魂、そう言われてヨーコは頷き、納得したよう笑みを浮かべた。「なるほど、そういうことか」というような表情だった。

委員長やまき絵や龍宮ですら、何のことだか分からなかった。ネギたちも頭に?マークを浮かべていた。するとヨーコは首からぶら下げているドリルの形をしたアクセサリーのようなものを外し、シモンに向かって投げつけた。



「受け取りなさい、シモン!!!!」



ヨーコが投げた物をシモンは真上に手を伸ばし受け取った。


そして自分が受け取った物の感触を確かめた。それは実に一年ぶりに手にした物だった。全ての始まりにして全ての物語を創った希望の象徴。自分たちの意思を受け継ぐものに託したものが、何の因果があってか、今再び自分の手に帰ってきた。



(懐かしいな・・・この感触・・・、この重さ・・・。そうだ・・・これに俺たちは明日を賭けたんだ!)



右手を天に伸ばし、それを握り締めたまま固まるシモン。そしてようやく目を見開いた。



「俺は忘れない、これには倒れていった者達の魂が眠っている。今その魂を受け取り、この世界に轟かせる!!」



するとシモンの手の中でヨーコから受け取った物が光りだし、その光がシモンの体を覆いだす。そして同時にシモンはゴーグルを装着した。


「なっ?・・・シ・・・シモンさん!?」


『な・・・なんだ!? シモン選手が再び光りだしたぞ!? こ・・・この光は・・・一体どこから湧き上がっている!?』


エヴァたちも目を見開き驚いた。シモンの言葉の意味は分からない、しかしもう不可能だと思っていたシモンの気合が、これまで以上の輝きを出したのである。








この状況は当然彼女の目に入っていた。


「バ・・・バカな!? アレが・・・アレがこの世界に!?」


バンッと机を勢いよく叩く超。彼女はシモンがヨーコから受け取ったものを見て、心臓が飛び出しそうになるほどの衝撃を覚えた。


「超さん? ・・・ど・・・どうしたんですか?」


超の取り乱した姿に、慌てて顔を覗きこむハカセ、しかし超の動揺はただ事ではなかった。

超はシモンたちの物語を知っていた。そしてシモンがそれをギミーに託して旅立ったのも知っていた。だからこそこの事態には予想外だった。


「アレが・・・コアドリル・・・全ての始まりにして・・・希望・・・カ?」


シモンたちの物語を真に証明するもの、それがコアドリルである。ヨーコがこの世界ではずっと首から提げていたことに超は気づいていなかった。まさか本物のコアドリルがこの世界にあったなどと予想もしていなかった。全ての物語が詰まっている大グレン団たちの魂を、超はこの目で見ることが出来たのである。その興奮を抑えることなど出来なかった。彼女は我を忘れ、その場を後にして、急いで会場まで向かった。






そんな超の心情を察してか、シモンは心の中で語りかける。


(見ていろよ、ネギ・・・そして超!・・・これがお前の知らない、大グレン団の絆の力だ!! いくぜ・・・アニキ・・・ニア・・・そして・・・)


シモンの上げた雄叫びと螺旋力の光が、シモンのゴーグルをいつものサングラスに形を変える。


だが今回はそれだけではなかった。いつものV字型のサングラスが、今回は星型の形になって現れた。



「いくぜ、キターーーン!!」



失った友の名を叫ぶシモン。だが、コアドリルに眠る魂は彼だけではない。



「いくぜ、キッド!! アイラック!! ゾーシィ!!」



『こ・・・これは一体どういうことだ!? シモン選手が何かを叫んでいます! そしてその度に光の強さが増していきます!』



かつて銀河に散った英雄たちの名前、彼らのことをこの世界では誰も知らない。だがその英雄たちの一人一人の名前をシモンはこの世界で叫ぶ。未来永劫一人たりとも忘れない、そう誓っているように見えた。



「マッケン!! ジョーガン!! バリンボー!!」



シモンが一人の名前を叫ぶたびに光の力が強くなる。まるで名前を呼ばれたものの魂が頷いて、シモンに力を与えていくような気がした。



「そしてお前も一緒に行こうぜ! ロージェノム!!」



その瞬間、天を突く光がシモンを包み込んだ。倒れていった全てのものたちの想いが、今シモンと共に次元の異なる世界で輝きだした。





「ななな、一体なんなんですの!?」


「シ・・・シモンさんが、スーパーサ○ヤ人に!!」


「バカな・・・シモンさんの、き・・傷が癒えていく・・・・」


反応は人それぞれである。満身創痍のシモンを包む光がシモンの体まで癒していく。


「なな・・・なんなのよアレ!? アレも気合だって言うの?」


「す・・・スゴイ・・・・シモンさん・・・キレーや・・・」


目を輝かせてシモンを見つめる木乃香たち、するとココネが何かに気づいた。


「キタン・・・キッド・・・アイラック・・・ゾーシィ・・・マッケン・・・ジョーガン・・・バリンボー・・・ロージェノム・・・」


「ココネちゃん、どうしたん?」


シモンが叫んだ一人一人の名前を口にしていくココネに、美空とシャークティもハッとした。


「そ・・・そうだ・・・大グレン団の人たちの名前じゃん・・・」


「そうです・・・それに・・・螺旋王ロージェノムの名前まで・・・」


「「「「えっ?」」」」


シモンが叫んだ名前は分からなかったが、螺旋王ロージェノムにはアスナたちも反応した。その名は昨日の夜自分たちに教えてくれたシモンの過去の話に出てきた人物である。


「それってたしか・・・シモンさんたちの世界の王様で敵だった人じゃない?」


「ええ、・・・たしかそうだったと・・・ですがなぜシモンさんは螺旋王の名まで・・・」


螺旋王との戦いでシモンは、かけがえの無い人を失ったはずである。大グレン団たちの名前とともに叫ばれるなどありえないと思った。そしてシャークティと美空もである。シモンは失った者の魂と言った。それは即ち今叫んだものたちは既に死んでいるということである。シャークティたちはシモンから昔の話をネギやアスナたちよりも知っていた。シモンたちが螺旋王を倒して地上を奪い取ったことも知っている。しかしその戦いで死んだのはカミナ一人だけだと思っていた。まさか既に他のメンバーたちまで死んでいたことを知らなかったのである。


そう、まだこの世界の者は、超鈴音を除いて知らなかったのである。シモンたちの真の戦いを。


そう、この世界の人間は死んだグレン団のメンバーだけでなく、シモンたちの運命の戦いを知らない。だがシモンは忘れない。今、彼らの魂を受け継ぎ、その姿を現した。




「友の想いをこの身に刻む、 一騎当神超銀河!!!!」




膨大な螺旋力の束がスパークする。その一つ一つの想いを噛み締めて、シモンは新たなる進化を遂げる。




「目に焼き付けやげれ、ヒヨッコ共!! 真の絆の力! 螺旋族の力! 大グレン団の力!! 見せてやるぜぇ!!」



その叫びはシモン一人だけのものではない。銀河の命運を変えた者達の魂が、今日この日、麻帆良の地に光臨した。巨大ないくつもの光の束が螺旋の渦となり交わり、シモンを包み込み、ついにその姿を現した。







「うっ・・・あっ・・・ああ・・・」


ネギは言葉を発せ無かった。ネギだけではない、この場にいる全てのものが声を上げられずにいた。今日の大会、どれほど常識を超える力が振るわれても盛大に盛り上がっていたが、星型のサングラスを装着した男の姿に、誰もが声を失っていた。

そしてネギは声を失い動揺しながらも、その頭は冷静に状況を判断していた。傷が治り、これまで見たこと無いほどの強い光に包まれているシモン、その姿を前にして、


(か・・・・勝てる気がしない・・・・どうして?)


星型のサングラス越しから見つめる瞳、場を多い尽くす圧迫感、そして圧倒的な存在感。先程までの自分の優勢を忘れてネギは気おされていた。


だが、言葉を失っても戦意まで失うわけにはいかない。ネギは体中の魔力を振り絞る。


「うああああああああああ!!」


叫びとともに魔力の束を拳に収束させていく。タメの時間はスキだらけだが、シモンの動く気配は無い。ならばもう一度己の最強技をぶつけるのみ。


(分かる! 半端な技じゃダメだ! 何でかは分からない・・・でも、このままじゃ勝てない!!)


試合序盤にシモンに繰り出した技を、最大までタメる。するとそんなネギの行動が読めたシモンはニヤリと笑って自分の腹を叩いた。そう、シモンは体を差し出したのである。それは試合開始直後と同じ行動だった


「いいぜ、・・・もう一度殴らせてやるよ!!」


「っ!?」


それはシモンの挑発と挑戦状だった。先程自分に大ダメージを与えた力をもう一度ぶつけて来いと言っているのである。だが状況は先程とは明らかに違う。対峙するだけでも汗を掻いてしまうほど、今のシモンからオーラが出されている。だが、その言葉に従うしかない。ネギはもう一度己の技に全力を込め、シモンに向かって走り出した。


「桜華崩拳!!」


先程と同じようにネギはシモンめがけて拳を繰り出す。いつもなら直撃と共に轟音を響かせる技。


しかし今回は不発に終わっていた。


なぜならその拳はシモンまで届かなかった。螺旋力の光がネギの拳を阻んだ。紛れも無く現時点の最強技だった。だがシモンは顔色一つ変えずにやり過ごした。


「そんな!?」


不発に終わる自分の技。強力な螺旋フィールドを発生させるシモンの前に、もはやネギの技は全てを無効化された。


「当たり前だ! 今の俺にそんなものが・・・、そんなものが効いてたまるかァ!!」


「くっ・・・まだだ!! 弓歩沖拳!! 翻身伏虎!! 雷華崩拳!!!!」


無我夢中で己の技を次々とネギは繰り出す、そんなことなど認めないといった様子だった。だがその攻撃は欠片一つもシモンまで届かない。先程まで届いた全ての力が微塵も届かなくなる。力が何一つ通用しない、その現状にネギはただあせるばかりだった。

そしてとうとう不動だったシモンが拳を握り締めた。


「言ったろうが! 俺たちの想いが、そんなもんで破られてたまるかよ!!」


次の瞬間、思いっきり振りかぶったシモンの拳がネギの身体を捉え、ネギは言葉にならない衝撃を受けた。


「あ゛~っ!!」


ネギの腹に一撃が入りふきとばされた。シモンが言った内臓が全て吹き飛ぶような衝撃、今まさにネギはその痛みを味わっていた。だがネギがその痛みを自覚するころには、シモンは目の前に居なかった。


(き・・・消えた!?)


「後ろだ!!」


「っ!? は・・・速い!」


気づいたときにはもう遅い。後ろを振り向く前にネギはシモンにサーカーボールのように蹴り上げられた。シモンの動きが美空より速いかどうかは分からない、しかし防御も回避も一切叶わない。ただネギは人形のように力なく蹴り上げられた。そして上空に蹴り上げられたネギの真下でシモンが身体を精一杯捻り、拳を天に向かって突き上げる。




「いくぜ、超銀河大紅蓮パンチ!!!!」




「くっ風障壁(バリエース・アエリアーリス)!!」



迫りくる拳、全てがスローモーションに見えた。だがそんな拳を交わすすべなどネギには無かった。そこで無我夢中で風障壁を張る。風障壁はタカミチの拳すら防ぐほど強力である。だが、シモンの拳は障壁と激しい音を打ち立てて、なんと障壁を突き破ってしまったのである。


「そ・・・そんな・・・・」


アスナや委員長たちが叫んでいるのは聞こえたが、どうすることも出来なかった。

胃に突き上げるような衝撃だが、それほどの痛みを感じない。なぜなら突き破ったとはいえ、障壁がシモンの力の勢いを大幅に減らしてくれたからである。それゆえ強烈な一撃だったが、自分はまだ意識がハッキリしていた。それは実に不思議なことだった。まだ身体を起こせそうである。


しかし、だからこそ冷静に悟ってしまった。自分と今のシモンとの圧倒的な力の差を。


(そ・・・そんな・・・つ・・・強すぎる・・・。か・・・勝てない・・・)


気づけばリングの上には、拳を高らかと突き上げるシモンと、それを横たわりながら見上げる自分が居た。



それが僅か数秒足らずの出来事だった。







いつの間にか、あれほど盛り上がっていたネギコールも無くなっていた。少年の力を嘲笑うかのような圧倒的な力に、誰もが呆然とするしかなかった。


逸早く沈黙を破ったのは朝倉だった。そして彼女の言葉と共に、会場には悲鳴が響き渡った。


『ネ・・・ネギ選手ダウン!! シモン選手の突然の力に手も足も出ず!!』


「「「「「ネ・・・ネギくーーーん!?」」」」」」


その叫びは木乃香たちのグループかまき絵たちなのか分からない。ひょっとしたら両方かもしれない。ただ彼女たちは涙を流しながら倒れる少年に向かって泣き叫んだ。


「そそ・・・そんな!! いくらなんでもシモンさんやり過ぎだよ!!」


「ひ・・・ひどいよ・・・いくら試合だからって・・・」


「~~~・・・・ぶくぶくぶくぶく・・・バタン!・・・・」


「い・・・いいんちょが倒れた~~!?」


裕奈やまき絵を始め、彼女たちは涙ながらシモンを非難する。委員長などは失神しそうになってしまった。だが涙を流しているのは、のどかや夕映も同じだった。手加減無用の戦いだが、それでも傷つき倒れる少年に涙を流した。


「ゆゆ・・・ゆえ~~、ネギせんせ~が・・・」


「そんな・・・こ・・・こんなことが・・・」


スピード、パワー、そしてこれまで受けた傷すら癒したシモンの新たなる進化に、タカミチたちですら背中に汗を掻いていた。


「し・・・信じられない・・・こんなことが・・・か・・・彼は一体・・・」


「あの人は一体・・・どこまで強くなるというのですか・・・・」


刹那は試合中にシモンの成長速度を進化と捉えた。それは間違っては居なかった。単純な戦闘力なら昨日までの時点では自分たちに敵わないと思っていた人物が、たった一日でこの会場の誰よりも頭一つ飛びぬけた力を手にしたのである。それはもはや脅威としか思えなかった。


「む・・・・・むきーーーーーー!!!!」


その時一瞬倒れた委員長が顔を真っ赤にしながら奇声を上げて飛び起きた。そして息を荒くしながらシモンを睨む。


「ゆ・・・許しません・・・許しませんわ、シモンさん!!! こ・・・この私がお相手します!! ネギ先生の仇ですわ~~~!!」


「ちょっ、いいんちょ、それはマズイって!!」


「いいえ、マズイものですか!! シモンさんに10倍返しですわ!!」


「こら・・・そのセリフは中々旨いけど、やめときなさい」


シモンに今にも飛び掛ろうとする委員長を、周りが慌てて止めに入る。ヨーコも委員長の襟元を掴んで止めるが、委員長は興奮状態で止まる気配が無い。するとシモンが会場中に声を張り上げる。



「うるせえェェーーー!! ガタガタ騒いでんじゃねえよ、ハナタレ共!! 覚悟を決めた男の戦いを、甘やかしてんじゃねえ!! 俺たちを誰だと思っている!!」



その怒りは会場中の非難の声にシモンが逆ギレしたわけではない。一人の男として認めたネギと自分との戦いを、周りの者たちが世間一般の常識を持ち出して非難するのが我慢出来なかったのである。怒鳴り散らすシモンの怒声に思わず委員長たちは黙ってしまった。修学旅行から何度かシモンとは会ったことがあるが、これほどの激しさを持っているなどとは思っていなかったのである。

そして会場が静かになったのを見計らって、シモンは横たわるネギを見下ろした。



「どうだネギ、俺たちはスゴイだろ? たとえその命がすでに尽きようとも、こうして俺と共にある。これが俺たちの絆だ! 明日を手にするために最後まで立ち向かった者達だ!」



己の胸を指差し、シモンは誇らしげにネギに向かって語りかける。


「それでお前はどうすんだ? 続けるか続けないかはお前が決めろ」


だがそんな質問などしなくてもシモンが一番ネギの気持ちを理解していた。


勝ち目があるのか無いのか、相手が強いか弱いとかではない。重要なのはあきらめるかどうかである。そしてネギがどうするのかは聞かなくても分かっていた。


シモンの言葉を聞きながら歯を食いしばるネギ、勝てる相手ではないと悟ったが、身体を起こさないわけにはいかなかった。


(そうだ・・・僕の見てきたシモンさんは、こんな状況で何度も立ち上がってきた。・・・あきらめない、・・・それがシモンさんから教わったことだ・・・。初めて会った日に教わったはずだ・・・)


シモンとの出会い、エヴァンジェリンの力に恐れて逃げ出した自分は、深い森の中でシモンと出会った。その時にシモンは自分に向かって言ってくれた。足掻くのをあきらめたら一歩も前に進めない、その言葉がネギの頭を過ぎった。今立ち上がってもシモンには勝てないかもしれない、だが無理だとは決め付けない。自分の生徒たちが涙を流しながら見つめる中、ネギは立ち上がった。


「・・・いいんだな?」


立ち上がったネギに確認するようにシモンは尋ねる。するとネギは少し腫れた顔でムリヤリ笑顔を作った。


「はい、・・・足掻いて足掻いて、ジタバタします!」


その笑顔を見てシモンもうれしそうに笑みを返し、拳を突き上げ、会場中に聞こえるように大声で叫ぶ。



「続行だーーっ!! 文句は無いな、お前たち!!!! これが俺たちの常識だ!!」



「「「「「「!?」」」」」」


それはシモンの意思表示だった。邪魔を出来るものならしてみやがれ! そう言っているように聞こえた。その言葉と態度に会場の誰もがシモンを疑った。常識的に考えて続行などありえなかった。大人と子供の戦い、しかも子供は既にボロボロである。

だが、結局誰も文句が言えなかった。常識を問うことが出来なかったのである。そして彼らは、後から沸々と湧き上がる感情を抑えられずに。



「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」


『ネギ選手はあきらめない!! 試合は・・・試合はまだ終わっていません!!』



それは彼らがこの戦いを大人と子供ではなく、男と男のぶつかり合いだと認めた瞬間だった。どちらの応援も関係なく、皆が雄叫びを上げて二人の決着を望んだ。


その声援を受けてシモンとネギは互いに笑顔を見せ合い、走り出した。ネギはかなり身体が重そうである、だが自然に身体が前へ前へと行く感覚だった。勝てるかどうかではなく、あきらめないと決めたネギの身体は自身が思っている以上に動いた。


「「いくぜ(きます)!!うおおおおおおおおおおお!!」」


しかし相変わらずネギの攻撃はシモンにはまったく届かなかった。拳も蹴りもシモンの螺旋力に弾かれる。そしてその度にシモンに振り払われた。だがそれでもネギは何度も立ち向かっていた。

シモンはネギの攻撃を交わそうとはしない。どうせ全て無効化してしまうのである。彼はただ、何度も向かってくるネギを迎撃した。だが、それでもネギは何度も立ち上がった。


「ったく、このガキ!」


「はあ、はあ、・・・まだ・・・まだやれます!!」


何度も立ち向かっては殴られるネギの姿に相変わらず生徒たちは涙を流していた。だが、もう止めようなどとは思っていなかった。ただ純粋にネギを応援していた。するとアスナがこの光景を見て呟いた。


「まるで、シモンさんみたいね・・・」


「アスナさん?」


「ほら、なんかボロボロでもムキになって立ち向かう姿、私たちがいつも見てきたシモンさんじゃない?」


アスナがネギを指差しながら少し笑った。そしてその言葉になんとなく皆納得してしまった。今のボロボロのネギの姿こそ、自分たちが憧れた男の姿なのであると。するとアスナも目に溜まっていた涙を勢いよく拭い、大声を上げる。


「コラーー!! しっかりしなさいよバカネギ!!」


アスナの声を聞いて夕映たちも互いに顔を見合わせて一斉に声を上げる。


「ネギ先生!!」


「ネギく~ん! シモンさ~ん! どっちもがんばってや~!」


その声を聞いて今度は方々から声が鳴り響く。


「俺以外の奴に負けんなや、ネギ!!」


「兄貴ーー!!」


<ネギ先生の目はまだ死んでねえ! 油断するんじゃねえぞシモンさん!!>


そして今度はネギだけではない、シモンへのエール両方だった。それはまるで一夜で伝説になった予選会を再現したような熱気だった。ボロボロなのに殴られるたびに強くなる。今のネギがそう見えたのである。



「最大! 桜華崩拳!!」


「効かねえつったろ!!」



今回三度目、タカミチと美空の試合を含めて五度目の桜華崩拳、しかしまたもやその拳は欠片もシモンまで届かない。シモンを包む強力な螺旋力の前に無効化され、シモンは目の前にいるネギを殴り飛ばした。

ゴロゴロとリング上を転がるネギ。これで何度目のアタックか覚えていない。だがやるべきことは忘れない。たとえ殴られても何度でも立ち上がった。


「しつけえぞ、ボウズ! 何度やっても同じだぜ!」


少し肩で息をしながら舌打ちをするシモン、だがその表情は立ち上がるネギを少しうれしそうな目で見ていた。そしてまたネギも笑顔を返す。勝機など無い無謀な戦い、だがネギにとってこの戦いの敗北は、力が及ばなかったときではない、諦めたときなのである。だからネギは何度だって立ち上がった。


「ドリルと同じです・・・ジタバタすれば、少しだけ前へ進めます! 今の僕で進めるところまで進んでみます!!」


「往生際が悪いぜ、ドM野郎! だが、トコトン付き合うぜ!!」


「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」


戦いは終わらない。シモンも勝とうとすればいつでも勝てるのだが、いつのまにかネギの意地に付き合うような形で戦っていた。微妙な力加減でネギを返り討ちにした後、もう一度かかって来い、というような態度に見えた。その甲斐あってか、ネギも気を失わずに何度でも向かって行った。そして、試合制限時間が迫る中、ネギが再び桜華崩拳の構えをした。


「その技は効かねえぞ!!」


「それでも・・・それでも僕はこれに賭けます!! 老子とマスターの下で編み出したこの技で、壁を突き破って見せます!!」


「そうか・・・だったら乗った!! 俺たちの絆の壁を、突き破れるもんなら突き破ってみやがれ!!」


両者の言葉を聞いて誰もが理解した。恐らくこれが最後の攻防になるのだろうと。そしてネギはいつものように魔力を極限まで練りこむ、シモンはそれを邪魔する気は無い。あくまで正面衝突が望みである。

そしてネギもこれまでの最大ではなく、限界に望んだ。タカミチとの勝負で拳に乗せた魔法の射手(サギタ・マギカ)は九つだった、しかし今は自分の拳に乗せられるだけの魔法の射手を限界まで搾り出した。

その結果ネギが搾り出した魔力は、


(光の精霊(セブテントリーギンタ)67柱(スピーリトゥス・ルーキス)!! 集い来たりて(コエウンテース) 敵を射て(イニミクス・サギテント)!!)


「なっ!? あの数は・・・67だと!? 今のボーヤでは9つで精一杯のはずだ!?」


限界を超える力を振り絞るネギ、その荒々しいが熱量を帯びた拳をシモンに向ける。シモンもまた、その拳に乗る力にこれまで以上のものを感じた。



「これが・・・今の僕の・・・魂と気合です!! 限界突破!! 桜花崩拳!!」



「大グレン団をナメんなよ!! おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」



湧き上がったシモンの螺旋力が再びネギの拳を阻む。だが・・・


(こ・・・・・これは・・・)


シモンが歯軋りする。なぜなら今回は攻撃を阻んでも弾くことが出来ないのである。そしてネギの拳は徐々に徐々に、シモンを覆う螺旋力の光を削っていく。


(まだだ、まだいける!!)


まだ闘志を捨てないネギ。


(やばい!?・・・このままじゃ超銀河モードでも・・・破られる!?)


そしてこのままではまずいとシモンは思った。

シモンの螺旋力とネギの魔力が反発しあい、強力な音を響かせる。そしてネギの拳が少しずつだが前へと進んでいく。その瞳はまだあきらめていない、魔力全てが尽きるまで拳を収めようとはしなかった。


(そうだ・・・この目だ・・・)


その不屈の瞳を見たシモンは小さく笑って呟いた。どこまでも自分を信じ立ち向かうネギの姿に、シモンは最後の言葉を送る。


「そうだ、それでいい・・・・それを忘れるなよ・・・ネギ・・・お前を信じろ!!」


「・・・シモンさん?」


拳を突き出しながらネギは顔を上げた。


「俺が信じるお前でもない。お前が信じる俺でもない。お前が信じる・・・お前を信じろ!!」


「・・・シモンさん・・・・」


その瞬間閃光が走りシモンの顔が見えなくなった。そして自分の身体がその光によって弾き飛ばされたのが分かった。

 
「うおおおおおおおおおおおおおっ!! シモンインパクトォォーー!!!!」


シモンの雄叫びと共に発せられた閃光と衝撃波が、ネギの最後の一撃を吹き飛ばした。その衝撃波を受け、ネギは力なくリングに転がった。









「はあ、はあ、はあ、・・・・僕の・・・負けか・・・」


そしてついにネギの口からその言葉が漏れた。


これが最後の攻防だと誰もが理解していた。そのため誰もがこの結末を理解できた。


この勝負はネギの完敗であった。


この勝負に勝てば父親かもしれないクウネルと戦うことが出来た、それゆえ委員長や他の観客たちも少し残念そうな顔をした。だが、顔を起こしたネギの顔はとても晴れやかであった。文字通り自分の全てを出し切ったと自負していた。だからこの勝負はこれで満足だった。


だが、勝負は負けたが試合の結果は意外な結末を迎えた。


『ネギ選手が弾き飛ばされました!! しかし・・・・しかし・・・・』


そのことに気づいたのは朝倉だけだった。そしてシモンの顔を見る限り、本人も恐らく確信犯であろう。そして朝倉が口を開いてアスナたちやネギにもそのことが理解できた。



『シ・・・シモン選手の手には・・・ド・・・ドリルが握られています!!』



「「「「「「!?」」」」」」



そう、最後の攻防を防ぎきれないと思ったシモンは、咄嗟にドリルを出してネギを迎撃したのであった。そしてそれはこの大会のルールの違反対象だった。シモンは苦笑して自分が持っているドリルを眺める。すると朝倉が急ぎ足でシモンへ駆け寄り、ドリルを確認した。


『え~、あの~、・・・確認してみたところ・・・これは本物のようです。この試合のルールは刃物や飛び道具のほかに・・・その・・・ドリルの使用を禁止されています。ですから・・・・この試合は・・・シモン選手の反則負けです!! よってネギ選手の決勝進出です!!』


その言葉に、誰もどう反応していいのか分からなかった。突如告げられたシモンの失格、そして当の本人は既に納得しているような表情である。だが、ここでネギが慌てて口を挟み、異議を申し立てる。


「ちょっ・・・ちょっと待って下さい!! この勝負・・・この勝負は僕の完全な負けでした! だから・・・だから・・・・」


だがその言葉を言い終わる前にシモンが首を横に振った。


「・・・・シモンさん?」


「バカヤロウ、お前が勝ったんだ。だったら何も恥じることなんてねえ、胸を張れ」


倒れているネギに歩み寄り、シモンは手を差し出してネギの身体をムリヤリ起こした。だが、ネギは納得しないような表情だった。そんなネギの頭をクシャクシャとシモンは撫でた。


「お前の魂に当てられて、ドリル出したのは俺の責任だ。だから悪いのは俺だ。お前が気にすることじゃないさ」


「・・・でも・・・シモンさん・・・」


するとシモンはリングの外の一点に視線を逸らした。そしてそこにはクウネルがいた。シモンは顎でクウネルを指し、ネギに告げる。


「いいんだ、これで。俺はもう満足だ! ・・・・だからいけよ! 決勝でお前を待っている人が居る。ただありのままをぶつければいいさ、お前はお前だ!」


そしてシモンはいつものように笑った。当然ネギも納得できない部分もあった。結局壁を崩して道を突き進むことは出来なかったと思っている。だがしかし、今は道を譲ってくれたシモンの笑顔を見て、力強く頷いた。


『決勝進出はネギ選手です! よってこの、まほら武道会の最終決戦のカードはネギ・スプリングフィールド選手VSクウネル・サンダース選手になりました』


その瞬間ようやく大歓声が上がった。そしてその歓声は勝者のネギだけでなく、失格となったシモンへも送られた。

3-Aの生徒たちも、始はシモンを非難していたが、この戦いの結末に涙を流しながら、ネギだけでなく、シモンにも盛大な拍手を送った。

それだけで満足したシモンは、ネギに向かってある物を差し出した。


「ネギ、これをお前に預ける・・・お守り代わりだと思ってくれ、・・・絶対無くすなよ?」


「シモンさん・・・これは・・・・」


「これは信念と希望の象徴だ、ちっぽけに見えるが、これ一つが銀河に匹敵するほどの価値があるんだ」


シモンはそう言って、ネギにコアドリルを差し出した。それを受け取ったネギは、その大きさからは考えられないような質量を感じた。


(お・・・・重い・・・)


その重さこそが大グレン団の魂の重さだった。ネギの想いを察してシモンは頷いた。


「もうお前に言うことは何も無い、明日はお前を対等だと思ってやるよ。だから言葉の代わりにそれをお前に預ける。明日・・・お前の答えと一緒に返してくれ」


ネギはその言葉から察した。とうとう自分は、シモンや父がどうするかではなく、自分が何をすべきか決断するときが来たのである。そしてそれはシモンと試合とは違って本当に雌雄を決するかもしれないのである。これにはそんな意味が篭っているとネギはコアドリルを見て思った。

そしてシモンが言った、返しに来いという言葉は、自分を待っているというメッセージなのだと理解した。




「ネギ・・・俺もお前を待ってるぜ! そして今度は道を譲らない!! 俺の気合、愛、絆、そして魂と誇りに誓って!!」




シモンは脱ぎ捨てたコートに再び袖を通し、ネギに背中を向けた。その背中には大グレン団のマークが描かれている。そしてシモンはいつものように天に向かって指差した。




「今日が終わり明日になる。目指す天の向こうで待っている!!」




その言葉だけを残し、大歓声が上がる中シモンは後ろを振り返らずにリングを後にした。


後に残されたネギは受け取ったコアドリルを首にぶら下げ、シモンに向かって深々と頭を下げた。


森での出会い、橋の上での再会、修学旅行、そして悪魔との戦い、これまで何度も自分を助けてくれたシモンは、この瞬間からネギの元を離れた。超鈴音の計画はネギにはまだ分からない、しかしもうシモンに頼るのではなく、自身で答えを導き出すと、首からぶら下げたコアドリルを弄りながら改めて誓った。





こうしてシモンの武道大会は幕を下ろしたのだった。








後書き、


今回は少し反則技をシモンが使いました。しかし天上天下一騎当神超銀河モードはコアドリルが無ければ使えないので、基本的なシモンの強さは刹那と戦った辺りのです。今後再び出るかどうかは不明です。やっぱシモンが最強すぎるのもアレですから・・・。

しかしこの大会中螺旋力でやりたい放題してしまい、原作の螺旋力の設定をかなりぶっ壊してますが、これはこの小説内の設定だと思っていただけたら幸いです。しかしこれでようやくドリル解禁!・・・長かった・・・。
最終更新:2011年05月10日 15:02
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