第五十二話 明日は最後までやろうぜ!! 投稿者:兄貴 投稿日:09/01/08-14:11 No.3795
建物並みに巨大な大きさ。二つの顔、そして兜。
それは実に見慣れた姿だが本物ではない。ならば引き下がる理由などは無い。質量の差など関係ない。
本物を知る二人のグレン団はグレンラガンモドキに立ち向かう。
「いくわよ、シモン!!」
「おう!! 螺旋弾だァーーー!!」
シモンとヨーコは巨大な鉄の塊に向けそれぞれの螺旋の力を放つ。しかし途端に鉄の塊の目が光った。
『魔力による機体の強化完了・・・・・・・・』
「なにッ!?」
「効いてないわ!?」
二人の攻撃が直撃するかと思いきや、モドキはその巨体に魔力を流し、攻撃をかき消した。
『本来これだけの質量に魔力を流し強化するには膨大な魔力が必要ですが、世界樹の大発光の魔力により期間限定ですが容易に出来るようになりました・・・』
モドキのスピーカーから茶々丸の声が聞こえる。だが、この二人に細かい説明など不要である。ようするに見えない壁が攻撃を阻んでいる。それだけで充分だった。
「よくわかんねえが、要するに・・・・・」
「そうね・・・・つまり・・・・」
「「そいつを突き破ってやればいいってわけだッ!!」」
いつもとやることは変わらない。臆せず立ち向かう二人だが、グレンラガンモドキも止まっているだけではない。
すると本来別のガンメンとして機能していたグレンの顔の口が開き、中から光が漏れる。
『接近中の二つの反応を捕捉、迎撃体制、魔法光弾発射準備及び魔力供給完了』
「ちっ、変な改造しまくりやがってッ! ヨーコ、俺の後ろに!!」
『魔法光弾射出』
グレンモドキの口から光の光線が放たれる。それは先程まで田中さんが放っていた脱げビームのような紛い物でないことは一目瞭然だった。
瞬時に威力を察知してシモンは螺旋力を解放し、持っていたドリルを自身の身体よりも何倍も大きいドリルへと変化させた。
「ギガドリル・シールド!!」
「今のうちに!!」
巨大なギガドリルが傘のように開き魔力の光弾を四散させる。
シモンの後ろに隠れたヨーコは光線が鳴り止んだのを見るや否や飛び出し、再びライフルを放つ。だが、昔カンメンの強固なボディにも風穴を開けてきた弾丸は、またもや直撃と同時にかき消され、傷一つ残せなかった。
「くっ、相当硬いわね・・・面倒くさいわ・・・」
「なんだ弱音か? 年取ったんじゃねえのか、ヨーコ!」
「・・・・まさか!」
空の薬莢を地面に落としながら舌打ちするヨーコ。ドリルを元のサイズに戻したシモンも同感だったが、憎まれ口をニヤリと笑いながら呟き、ヨーコと自分自身を刺激させた。
攻撃が通じない。しかし二人の心は微塵も折れない。弾かれようともグレン団らしく前へ前へと進んでいく。
だからこそ同じマークを背負っているからこそ、美空、ココネ、シャークティも折れるわけにはいかなかった。たとえ相手が何人いようとも、弱音を吐かずに敵を蹴散らしていく。
一方真夜中の死闘が繰り広げられている中、重い選択肢を超に提示されたネギたちは・・・・
「うっひょ~、スゲーじゃんここ! どんな魔法空間よ! 夕映~、のどか~、アンタこんな面白いことまで黙ってたの~?」
「ハ・・・ハルナ・・・怖いです・・・」
「すごいでござるな」
「な・・・なんつう魔法空間・・・・来るんじゃなかった・・・・・。帰らせていただきます・・・」
「でも千雨さん、ここに来ると一日経たないと出られませんよ?」
エヴァンジェリンの別荘。暖かい気温と大きなプール、完全なるリゾート空間に、初めてきた楓、ハルナ、千雨はそれぞれの反応を見せた。
そして巨大なプールにいても経ってもいられずにハルナはいの一番で水着姿でプールに飛び込み、気づいたら皆で遊んでいた。
「う~ん・・・・ちょっと待って・・・、今頭の中を整理するから・・・」
この光景にアスナは頭の中を整理しようと唸っている。
タカミチにフラれてショックを受けていたアスナはこの別荘の中に4日間も塞ぎ込み、食っちゃ寝を繰り返していた。そして突如現れたネギたち。そこまではまだ理解できた。しかしそのメンバーの中に今までいなかった楓やハルナ、クラス内でも浮いていた千雨までいることに一瞬訳が分からず呆けてしまった。
そしてネギを睨みつけ思いっきり胸倉を掴んだ。
「ちょっと、ちょっとネギー!! 一体どうなっているの? 何でパルに千雨ちゃんまでここにいるの?」
「実は、魔法の件がばれちゃいまして……」
「やばいじゃん!! あんたもう70%くらいオコジョ決定よー!! どうすんのよー!?」
「うわーん!! ごめんなさーい!!」
「あんたの問題でしょうがー!!」
そしてネギの胸倉を掴み思いっきりネギの頭をシェイクした。二人が出会った頃は自分の記憶を消そうとしてまで隠そうとしていた魔法がいつの間にかほとんどの人間が知ってしまっている。もはや呆れてものが言えなかった。
しかし今まで姿の見えなかったアスナを見て木乃香たちも駆け寄ってきた。
「それでアスナは大丈夫なん?」
木乃香が全部言い終わる前にアスナはこの世の全てが終わったかのような黒いオーラを出して膝を抱えた。しかし何とか引きつった顔で笑顔を見せた。
「ふっ・・・ふふふ・・・まあね・・・・もう大丈夫だから・・・・」
物凄い低いトーンで呟くアスナ。空元気は見え見えである。すると耳ダンボでこの話題を聞き取ったほかの者も身を乗り出した。
「え~~、アスナフラれたの~?」
「うわ~ん、ホッといてよパル!」
「アスナさんもフラれて・・・・どうしようゆえ・・・私たちの周りで告白成功した人いないよ~」
「のどか・・・しっかりするです・・・ですがたしかに勝率が悪いですね・・・・」
「ふっ・・・ふふ・・・・私も・・・・その内の一人ですか・・・・・」
「刹那が落ち込んでしまったアル!」
「ったく・・・どいつもコイツも簡単に告りやがって・・・・」
「おやおや、千雨殿は否定派でござるか?」
恋愛話にはこれ以上ないほど食いつきを見せる思春期真っ只中の少女たち。しかしその成功率は今のところかなり低いことに数名落ち込みだした。するとアスナが手を叩き場を沈めた。
「はいはいはい! それで~? 木乃香の方はどうだったの~? ちょっとぐらい何かあったの?」
「えっ・・・・ウチ?」
同じ時間に想い人とデートしていた木乃香。その発言に全員が集中して聞いてみる。
木乃香は思い出す。腕を組んで歩いたこと、膝枕、そして抱きついて・・・・シモンが自分に向かって
『もう少しお前と向き合って考えてみる・・・』
自分をもっと見てくれるとシモンは言ったのである。それを思い出しただけで木乃香の顔はどんどん顔が赤くなり、
「う~ん、・・・・・・・・・えへへ~」
思わずニヤけてしまった。
その顔を見て全員がプールから飛び出し詰め寄ってきた。
「何々!? ひょっとして何かあったの!? 前進したの!? 私はフラれたってのに・・・・裏切り者~~!!」
「うっひょ~、マジか!? くっは~、木乃香からラブ臭がッ! お姉さんに話してみなさい!」
「やりましたね木乃香さん! これからもがんばってくださいね!!」
「はは、ありがとな~、夕映」
場所が学校で無いだけで、本当に普通の中学生の会話だった。恋愛話で大盛り上がり、このままでは本当に一日それだけで終わってしまうような空気になってしまった。ほとんどの者が当初の目的を忘れているようだった。
普段からそういう話は興味の無い千雨だけは冷静だった。いい加減イライラしてきて地面をバンバン叩いて、怒鳴り散らした。
「テメエらいい加減にしやがれ! 今は超の奴とあの熱血兄さんの問題が先だろうがッ!!」
「「「「「・・・・・・・・・・・あっ・・・・・・・」」」」」
「あっ・・・て、テメエら本当に忘れてたのか!? さっきまであんな重苦しかったくせに!!」
「ウガァ」と唸りながらいつものクラスでの雰囲気とは違う千雨の素の性格を見て、新鮮な気持ちになりながらもようやくネギたちはハッとした。
「ちょっと何よ? 熱血兄さんってシモンさんのこと? 何があったのよ・・・・」
「はい、実は・・・・・」
一人状況が分からないアスナにネギは順を追って説明していく。
火星人、子孫、タイムマシン、歴史の改変、魔法をバラす、超とシモンの戦いの理由・・・・・全てを聞き終えたアスナはからかっているのかとネギを殴ろうとしたが、目は真剣である。刹那たちも同じである。本当は冗談だと笑い飛ばしたかったが、タイムマシンの力は既に知っている上に、シモンが自分たちを仲間に入れなかった理由も全ての辻褄が合った。
「えっと・・・・マジ?」
「おそらくは・・・・シモンさんもそのことを知って自分の信念に従っているんだと思います・・・・」
あまりにも突飛過ぎる話題だが肯定しなければならないような空気が漂っていた。すると千雨がパソコンを取りだしなにやら操作しだした。
「千雨殿?」
「なあ、その話を信じる信じないはとりあえず置いといて、さっき言ってたグレン団・・・ですか? 異世界云々の前にそれは本当に存在しているんですか?」
千雨がパソコンを操作しながら尋ねてきた。どういう意味なのか分からないがとりあえずネギは肯定した。
「はい、シモンさん、ヨーコさん・・・この世界では後は美空さん達がそうです。・・・でもそれが何か?」
「私はシモンさんと武道会の時に会って、色々協力を頼まれたんですよ。ほら、さっきも言ったようにあの大会の映像を流して魔法を広めようとされていたって・・・・でもそれに対抗してシモンさんが魔法の代わりに「気合」だとかそういう言葉を広めたんですよ・・・」
「「「「「はあっ!?」」」」」
するとパソコンを操作していた千雨がネット上に流出した大会の映像を流しだした。そこにはシモンと刹那の試合の映像が流れていた。
『す・・・・・好きですーーーーーーーーっ!!』
「「「「「ぶほおお!?」」」」」
「ななななな、何やってるんですかーーーー!?」
音声が流れたら正にピンポイントで告白部分が流れていた。それを見て一気に噴出す一同。刹那は慌ててパソコンを壊そうとするが楓たちに取り押さえられてバタバタしている。
「いや・・・・まあ、この試合も含めてネットでは「気合」「愛」「絆」、とかそういう言葉が流れて「魔法」って単語は影を潜めるようになったんですよ。私たちのクラスの春日の試合もその内の一つです」
「知らなかった。あの大会の裏でこんなことがあったなんて・・・・しかも気合ね~・・・」
画面を見ながらアスナは感心したように呟いた。すると千雨はさらにページを進めて違うページを流した。
それはシモンとネギの戦いである。
「あっ、僕だ・・・・」
「そうです、・・・実はこの試合前にシモンさんに最後の頼みを言われたんです・・・・そのグレン団って言葉を使って・・・・」
「最後の頼み? シモンさんは何を千雨殿に依頼したでござるか?」
千雨とシモンの意外な協定に驚きつつ千雨の言葉に集中した。すると千雨はシモンに頼まれたものの正体を見せた。
そしてアスナたちはその画面を見て・・・・・
「「「「「「えっ!? ・・・・・・ええええええええええええええええええ!?!?」」」」」」
ネギたちの絶叫が別荘内に響き渡った。
アスナたちの絶叫は外まで届いていなかった。
ネギたちの今の状況など知るはずも無く、シモンは目の前のグレンラガンモドキを見上げていた。そして茶々丸もコクピットからシモンを見下ろしていた。
『シモンさんたちは粘っています・・・・そろそろ終わらせなければ明日を待たずしてこの機体の動力がオーバーヒートしてしまいます』
茶々丸は冷静に機体の調子とシモンたちの現在の様子を見て検討していた。
このままシモンたちを捕獲するのか、それともここは一旦引き下がるべきなのかを。いかに世界樹の魔力で稼動しているとはいえ、もともと無理があった。本来超が科学の力で作ったものを、ムリヤリ動力を魔力に変えたため、出力は上がったが、限度もあった。
しかしシモンたちはこれまで田中さんを相手に戦っていたためにそろそろ疲れが見え始めている。田中さんの残存もまだ残っている。もう少しやるか、今すぐ下がるか、シミュレートしていた。そしてコクピットに写るシモンの表情を見る。
(不利なシモンさんですが逃げる意思は無さそうです。・・・現在有利な私が引くか引かないかで迷う・・・・これは・・・・おかしいという感情でしょうか・・・・)
機械でありながら己の思考に戸惑う茶々丸。するとシモンはニヤリと笑みを浮かべた。
「どうした、茶々丸・・・・お前は俺と戦ったことがあるはずだろ?」
『シモンさん・・・・』
「何を悩んでるかしらねえが、俺たちを計算で図れれば苦労しねんだよォォ!!」
シモンが螺旋力を開放し、再び巨大なドリルを取り出した。今度は身を護るためではない。これまでと同じように壁を突き破るためである。
『強力なエネルギー反応。超さんの情報によればこれが螺旋力・・・これまでの力の計算によると、機体の損傷可能性あり・・・迎撃体制準備・・・』
するとグレンラガンモドキも腕を変形させ、それに見合った巨大なドリルへと形を変えた。
『アーム部分装備完了、魔力による強化完了。メガドリルブレイク準備完了』
するとモドキはドリルを勢いよく回転させてシモンに向かって振り下ろしてきた。
「「兄貴!?」」
「「シモン(さん)!?」」
それぞれの持ち場にいるものが叫ぶ。明らかに質量差のあるドリルである。食らえば一たまりも無いかもしれない。
だがシモンはこれを前にして背中を向けるわけにはいかない。
「メガドリル? おい、そんな大事な部分が捻じ曲がってるのか? 茶々丸、超に伝えておいてくれ・・・・本物は・・・・本当のドリルは・・・」
シモンは巨大化させたドリルを天に掲げ、ドリルの回転と共に自分も回転させ、そのままモドキに向かって飛び込んだ。
『メガドリル・ブレイク』
「ギィガァドリルゥゥ・ブゥレイクゥゥ!!!! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
飛び込んだシモンと振り下ろされたモドキのドリルが交差する。耳に付く削り合う音が場に響き渡り、シャークティたちは思わず耳を塞いでしまうほどだった。
二つのドリルの先端が一点に集中して両者一歩も引かない。
(質量、魔力、この機体の方が上、対するシモンさんは螺旋力と呼ばれる力だけで補っている・・・・)
互角のぶつかり合いを冷静に頭の中で処理していく茶々丸。
しかし茶々丸はまだ分かっていなかった。互角などでは無い。シモンのドリルが徐々にモドキのドリルを押していく。その重さがコクピットにいる茶々丸にも伝わって来る。
(この力は・・・この機体が押されています。・・・シモンさんには螺旋力と呼ばれるエネルギー以外のプラスアルファがある?)
相変わらず計算を狂わされる茶々丸。しかしそれに取り乱した様子はない。計算外があることが計算どおり、そのような様子である。するとスピーカーにシモンの声が聞こえてきた。
「忘れたか茶々丸・・・ドリルは俺の魂だ・・・・俺のドリルは天を突くドリルだってことをッ!!」
『!?』
すると機体が更に押し上げられていく。そしてモドキのドリルに亀裂音が響いた。
『押し切られます!? 緊急離脱!!』
「ドリルのぶつかり合いで、俺が負けてたまるかよぉーーー!! これが、新生グレン団のドリルだァ!!!!」
シモンのドリルはモドキのドリルを粉々に砕きそのまま一直線に機体へと向かっていく。しかしそれはぶつかることなく、いち早くドリルを機体から茶々丸が切り離したことにって逃れられた。
「ちっ、交わされた!!」
背に装着されたブースターを一気に射出させて、モドキは上空へと高々と逃れた。思わず舌打ちをするシモンだが、動揺しているのは茶々丸も同じだった。
(今の攻撃と離脱により、既に動力部分が熱を帯びています。今日これ以上は・・・超さんも顔見せ程度でいいと仰ってましたから、これ以上は無意味でしょう・・・・しかし・・・)
攻撃を免れた茶々丸は、超の言うとおりここは無理せず引き下がるのが得策だと思った。シモンは充分応えてくれた、ならばここは無理せず決着は明日までとっておくべきだという答えを導き出した。
だが、実行に躊躇してしまった。
それは機械として生まれた彼女には絶対にありえないことであった。
(この感情は何と言うんでしょう・・・超さんの命令に・・・・背きたい?・・・・いいえ、しかしこの場を離れたくないと思っています・・・・・)
ゆっくりと機体を下降させながら思い悩む茶々丸。
しかし戦いはまだ終わっていない。この場にはまだ数十対の田中さんが残っている。
「ぐっ!? げほっ、げほっ・・・」
「シスターシャークティ!?」
「シャークティ!!」
田中さんの放ったロケットパンチがシャークティの腹部に直撃し、その場にうずくまってしまった。慌ててシモンたちはそこに駆け寄る、すると残り全ての田中さんに完全に囲まれてしまった。
「くっ、・・・囲まれた・・・シャークティ、大丈夫か?」
「申し訳ありません・・・ビームばかりに気をとられて・・・・・」
「な、なんでだよ!? ビームにダメージは無いんだからそっちよりロケットパンチを気にするべきじゃないのか!」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
――ドカッ!!
無言で女性陣に殴られてしまった。
しかしふざけている場合ではない。この取り囲まれた状況をまずどうにかするしかない。
だが、シモンも大技を使用した後のため、螺旋力の光に力が無い。それは美空たちも同じだった。
(・・・ここでシモンさんたちを捕らえていいのでしょうか・・・・超さんはああ言ってますが、恐らくシモンさんと明日戦いたがっています。・・・やはりここは私が引くべきなのでしょう・・・しかし・・・)
四面楚歌、絶体絶命。
取り囲んだ田中さんがジリジリと輪を縮めてシモンたちを追い詰める。
だが、ここで終わらせては超もガッカリするだろう。超の気持ちを尊重するのならここで大人しく引き下がるべきである。
しかし・・・茶々丸はそれを出来なかった。
画面越しに写るシモンたち、しかしその表情にあきらめの色は無い。まだ戦う気である。それを見てしまった茶々丸は引き下がれないのではない、引き下がりたくなかったのである。そんな自分の感情に戸惑っている内に取り囲んだ田中さんが攻撃の構えを一斉に取った。
これが全て放たれればゲームオーバーである。
だが、茶々丸はそれを止めない。ここで決着をつけるつもりである。
「ターゲット、捕獲シマス」
「やってみやがれェェ!!!!」
そして田中さんの攻撃が発動し、シモンたちが最後の雄たけびを上げた・・・・・・・
その時だった!!
「喧嘩殺法未羅苦流究極闘技!! 超必殺・漢魂!!!!」
「「「「!?」」」」
『!?』
野太い声と爆音が響き渡る。
すると自分たちを囲んでいた田中さんの一部が吹き飛ばされたのである。
「なっ、一体何があったのです!?」
「ちょっ・・・何? 誰かが・・・助けてくれたの?」
『・・・あの方は・・・・』
吹き飛ばされた田中さんの隙間から確かに見えた。
黒い学ランと実に特徴的なリーゼントをしたあの男が立っていた。
その男に見覚えがあった。忘れるはずも無かった。武道会で予選でありながらシモンと伝説になるほどの壮絶な殴り合いをした男である。
「漢、豪徳寺薫、参上!!!! 来たぜ、シモンさん!!」
その声と姿を見てシモンはニヤリと笑った。しかしそれ以外のものは唖然としていた。それはヨーコも同じだった。
「あの人・・・予選で兄貴に負けた人じゃん・・・・なんで?」
首を傾げる美空、すると豪徳寺の後ろからゾロゾロと人影が現れた。
「薫ちんだけじゃないぜ!!」
「我々も来ました、シモンさん、そして美しいお嬢さん方」
「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」」
なんとその後ろから更に大勢の男たちが雄たけびを上げて現れた。
その数は予想以上に多い、三十人・・・いや五十人以上いるかもしれない。しかもその誰もが少しだけだが見覚えのある人たちばかりだった。
剣道着を着ている者や拳法家の衣服、空手胴着、学ランの者もいる。
そうその全員が武道会場の予選で見たことがあった。
「ちょっ・・・どういうことよ・・・なんで彼らが・・・」
流石のヨーコもこの事態が分からずに首を傾げる。すると集まった男たちを代表して豪徳寺が携帯を取り出して掲げた。
「見たぜ、掲示板!! これに書いてあった! グレン団の称号、それは漢の魂の在り処!! その称号を手にしたい者は今夜教会へ集合!!」
「「「はああっ!?」」」
「俺たち皆気持ちは同じだぜ! このマークを掲げて戦う美空ちゃん、ヨーコさん、そしてシモンさんに惚れた!! 俺たちを・・・・グレン団に入れてくれぇ!!!!」
「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」」
闇夜に漢達の魂の叫びが麻帆良に響き渡る。その一つになった魂は新生グレン団をそして茶々丸の鼓動を高鳴らせた。
そして豪徳寺が田中さんの大群に指差した。
「まずは、最初の仕事だ!! 俺たちのリーダーと先輩たちを助けるぜ!! いくぜ、野郎共!!」
「「「「「「「いくぜぇぇぇーーーーーーー!!!!!」」」」」」」
豪徳寺を先頭に男たちは走り出した。
「熱血拳!!」
「いくぜ、烈空掌!!」
「ロボットたちよ、僕の3D柔術を披露しよう!!」
その高ぶった気合と魂の荒波は、感情を待たない田中さん達を次々と蹴散らせて行った。
今だポカンとしてシャークティたちは眺めていた。
「シモン・・・・どういうこと?」
するとシモンはニッと笑い立ち上がった。
「ネギのクラスの生徒の長谷川って子に頼んだんだ。パソコンで気合が浸透したら俺たちの掲げるグレン団の称号を欲しい奴は来いって流してもらったんだ」
「い・・・いつの間に・・・・長谷川って・・・千雨ちゃんだよね・・・・」
「必要だったんだ・・・・仲間が・・・・魔法使いじゃない仲間が・・・」
シモンは駆けつけてくれた男たちの戦いを見ながら呟いた。
「過去の改ざんもそうだ、・・・でも魔法をバラすこともそうだ」
「シモンさん・・・」
「俺は・・・人間は・・・魔法に頼るほどまだ弱くないと思う。 誰もが持っている気合と熱い魂、そして信じあえる仲間との絆があれば・・・」
シモンはギュッと拳を握り締め、その先は言わなかった。だがシモンの言いたいことは何となくシャークティたちにも理解できた。
そして彼女たちも立ち上がった。
「理由はどうあれゾクゾクするっすね・・・・」
「でも、良いんですか? グレン団の称号を安売りして・・・・」
「良いんじゃない? グレン団の資格は気合のある奴だし・・・・」
「ぶう!!」
「ココネも気合がアル・・・」
そして全員頷きあって走り出した。
「それじあ、後輩達に負けてられないわね!!」
「「「はい!!」」」
ヨーコの叫びと共に再び美空たちも向かって行った。
その背中をシモンは見送り、呆然と立っているグレンラガンモドキの中にいる茶々丸に話しかけた。
「茶々丸・・・帰って超に伝えてくれないか?」
『・・・・何をですか?・・・・』
「本物を魅せてやるってな!!」
力強い笑みを浮かべるシモン。気づけばまだ残存していたはずの田中さん達はすでに壊滅寸前である。どう考えても潮時だった。すると茶々丸はこの光景を見てあることに気づいた。
『シモンさん・・・私は命令でアナタと戦っています・・・・ですから超さんが戦えと言えば戦います。戦うなと言えば戦いません』
「そうか・・・・」
『ですが・・・・今日は無理をしないようにと言われたのですが、少し無理をしました。そして、もっとこの場でアナタたちと戦いたいと思いました・・・・その理由は分かりません・・・私に感情は必要ないのですから・・・・』
相変わらず変化の無いトーンで喋る茶々丸。しかしその言葉の端々には茶々丸が無いと言っている感情のようなものを感じた。
『ですが・・・その理由の正体が少し分かりました。機械である私にソレは無いのですが、人間の言葉で表現するならば・・・・この感じは・・・・・』
「感じは・・・・なんなんだ?」
シモンは黙って茶々丸の話を聞く。すると次に茶々丸の口から出た言葉は何とも似つかわしくない言葉であった。
その言葉を聞いてシモンは思わず笑ってしまった。
茶々丸がシモンたちに抱いた気持ち、それは・・・・・
『・・・・・・血が騒ぐというのでしょうか?』
「あっはははははははははは!!」
茶々丸に変な感情が芽生えてしまった。
それは恋とか羞恥心などのように可愛いものではなく、実に物騒な言葉だった。
気合を叫ぶシモンたちに感化され、茶々丸は命令とは関係なく戦いたいと思ってしまったのである。
これはシモンのツボに入り、未だに笑いが収まらない。ぶっそうな言葉であるが、機械ですら自分たちに熱い想いを抱いてくれるのがうれしくてたまらなかった。
「じゃあ、茶々丸・・・明日は最後までやろうぜ!!」
『・・・・・分かりました・・・・・今日はこれにて失礼します・・・・・」
シモンの言葉を正面から受けて、茶々丸はグレンラガンモドキを動かし、ゆっくりとその場をあとにして行った。
黙ってそれを見送ったシモンが次に振り返ると、大勢のものが笑みを浮かべながら立っていた。
「よく来たな・・・・お前たち・・・・」
振り向いたシモンが声を掛けると、中から豪徳寺が一歩前へ出て名乗りを上げた。
「改めて、俺の名は豪徳寺薫!!」
するとその内の何名かが豪徳寺と同じように一歩前へ出て名乗ってきた。
「俺は中村達也! 薫ちんとアンタの殴り合いに憧れやした!!」
空手の胴着を着て前髪を逆立たせている男、
「あっ・・・本戦で楓に一瞬でやられた人」
「うおっ!?」
美空の一言で膝を付いて落ち込む中村。それを無視して次々名乗る。
大柄な拳法着を身に纏った男。
「だ、大豪印ポチ・・・」
「・・・・アナタはたしか・・・、クウネル選手に負けた方ですね・・・」
「ぐはっ!?」
シャークティの何気ない一言で落ち込む大豪印。するともう一人前へ出た。
見るからに無駄に美形な男は礼儀正しく爽やかに挨拶する。
「山下慶一です。ヨーコさんとは予選で手合わせしましたね」
「えっ? ・・・・・う~ん・・・・あっ、予選で私に一撃で負けた子ね!」
「ごほっ!?」
山下まで落ち込んでしまった。
すると他の者全員暗くなってしまった。なぜなら彼らは全員武道会の予選落ちした者たちなのである。
「まてまてまて! 一人残らず落ち込んでどうするんだよ! 武道会の成績なんて気にするなって! それを言うなら俺は10歳の子供に負けてるんだからな!」
女性陣の無自覚な言葉に一気に暗くなった一同にシモンは慌てて声を上げる。
そして教会の屋上まで飛び乗り、そこからこの場の全てを見下ろした。
「必要なのは成績なんかじゃない! この胸にあるもんだけだ! 皆はどうだ?」
シモンはドンと胸を叩き尋ねた。すると男たちは再び立ち上がり拳を振り上げて叫んだ。
「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」
再び夜の教会に響き渡る男たちの声。ヨーコとブータはこの光景を物凄く懐かしいものを見るような目で見ていた。それは八年前のあの日、グレン団が大グレン団になった日のことだった。その時と似た光景を美空やココネも目を輝かせて見ていた。
「調子に乗っちゃって・・・・」
「ですが・・・これがアナタたちが過去に見た光景なのでしょう?」
シャークティがヨーコの隣で語りかけた。冷静そうに見えるがシャークティも気持ちが高ぶっているのが分かる。この興奮はやはり抑えられるようなものではなかった。
この世界ではシモンとブータだけのグレン団だった。そして後にヨーコが現れ、気づけばシャークティ、美空、ココネが加わり、そして明日の決戦を前にしてこれほど多くの男たちがグレン団の旗に憧れてこの場に集ったのである。
既にシャークティも理解していたつもりだが、グレン団のこの影響力だけは相変わらずだった。
「ハシャいでますね、シモンさんは。」
「そうね~、でも無理も無いわよ。 なんだかんだで今のグレン団は男がシモンしかいない華やかなメンバーでしょ? やっぱ男同士っていうのは違うんじゃない? ああやってその場のノリでバカ騒ぎ出来る仲間がうれしいんでしょ・・・」
「ふふ、たしかにシモンさんの周りにはネギ先生を除けば女性ばかりでしたからね・・・・」
するとシモンが屋上で演説し、男たちが叫ぶ中、自分の隣でヨーコが真剣な表情をしてシモンを見つめていた。
「・・・・ヨーコさん?・・・」
ヨーコは拳をギュッと握り締め力強い目でシモンを見ている。
それはやはり8年前を思い出してのことである。
「あの日もこうだった・・・人類の心が一つになって勝利を勝ち取ろう・・・そんな気にさせる夜だった・・・・」
ヨーコは表情を変えぬまま呟いていく。その言葉はシャークティにしか聞こえず、彼女は黙ってその話を聞いた。
「あの人は言ったわ・・・・後ろは任せた!・・・って・・・帰ってきたら10倍返しだって・・・・」
だがその男が帰ってくることは無かった。シャークティにもその人物が誰なのか、すぐに分かった。そして今屋上で叫んでいる男を見る。
「あの日と似た光景よ・・・でも、絶対に同じ結末なんかにはしない!! 今度こそ・・・背中を護ってみせるわ! そして・・・最高のハッピーエンドを掴んでみせるわ!!」
それがヨーコの決意だった。8年前に自分が出来なかったこと、勝利を手にしたにもかかわらず、敗北以上の傷を心に負ってしまった日。同じ想いを二度も繰り返さないという決意をヨーコは誓った。
「・・・お互い報われませんね・・・・」
「えっ?」
するとヨーコの隣にいたシャークティが苦笑しながら呟いた。そしてシモンを指差し、
「なぜなら、あの人が帰ってきても10倍返しは無いんですよ?」
「ぷっ、・・・・ふふふ、そうね。お互い損な女かもね♪」
シャークティにしては珍しい冗談めいた口調だったがヨーコは構わず笑った。そしてこの光景を眺めながら、誓いの握手をした。
「お願いよ。・・・私がアイツの側にいなくても・・・・」
「大丈夫です。私もハッピーエンドを望みます。・・・そしてシモンさんだけでなく・・・美空やココネ・・・いえ・・・今この場にいる全ての者と勝利を喜びたいです」
男たちが相変わらず大騒ぎする中で二人の女が勝利を誓い合った。
「シモンさん! いや・・・リーダー! さっきの奴らは一体なんだったんだ?」
「アイツらか、簡単に言えば・・・気合と魂・・・そしてグレン団を否定する奴らだ・・・・そして奴らは俺たちに喧嘩を売ってきたんだ」
シモンの言葉にガヤガヤと豪徳寺たちは騒ぎ出す。だがシモンは躊躇わずに告げる。
「明日の最終日が決戦の日だ。さっきみたいなロボット共がもっと大量に現れるはずだ・・・・・・・でも俺は戦う!・・・・ヨーコも! シャークティも! 美空も! ココネもだ! そして俺の相棒のブータもな!!」
「ぶう!!」
「これは俺たちそれぞれが自分たちの意思で決めたことだ。・・・・お前たちはどうだ?・・・・俺たちと一緒に戦ってくれるか?」
するとシモンの問いかけに男たちは一斉に拳を振り上げて叫んだ。
「当たり前だぜ、リィーダァー!!」
「とにかく燃えてきたァァ!!」
「俺たちの気合を見せてやるぜぇ!! ロボットがなんだぁ!!」
「俺もだ! 美空ちゃんが行くんなら俺も行くぜぇ!!」
「「「「「「「ヨーコさんは絶対守るぞぉぉ!!」」」」」」」
その叫びを聞きシモンは興奮が抑えられないまま、両手を広げて大声で叫んだ。
「ありがとう。それじゃあ、俺たちは今日から・・・新生大グレン団だァァ!!!! ここに集った俺たちの気合と絆があれば、何も怖いものなんて無い!! 勝とうぜ、この喧嘩!!」
「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」
故郷の世界でもその名前しか残っていない伝説が、今再び新たな世界で復活を遂げた。
華やかだったメンバーが一気に荒々しく賑やかになってしまったが、そんなことはどうでもいい。再び立ち上がったグレン団の旗が誇らしげに夜風に揺らされていた。
そしてシモンは立ち去ったグレンラガンモドキの方角を見て心の中で超に向かって告げる。
(超・・・見せてやるよ。・・・たしかに魔法と科学が力を合わせれば多くのものが救われるかもしれない・・・でも、俺たち人間の誰もが持ってる気合は・・・まだまだ捨てたもんじゃないってことをな!! お前に与えられる明日じゃない! 俺達自身の明日は、自分達の手で掴んでやる!!)
ここに今いるもので、シャークティたち三人を除き魔法使いはいない。しかしこのメンバーで壁を突き破って見せることを誓った。
男たちは疲れを忘れ一晩中騒ぎ明かした。慎みなど何も無いバカ騒ぎだったが、茶々丸の言うとおり自分たちも明日の決戦を前にして血が騒いだ。
後書き。
やっちまったァァ!! しかしもうやっちゃいます!
ネギまって結局最後は巻き込むくせに一般人だとか危険がどうとか、覚悟があるとか無いとか言いますけど、もう最初から巻き込んでしまうことにしました。常識人のシャークティがいるはずですが、関係ない! なぜなら彼女は既にグレン団だから! シモンも魔法使いじゃないからもういいや~~ってノリです。
ネギまの原作あまり読まない人には分からないキャラが出てきて首を傾げられたかもしれません。だって豪徳寺とかマジで文化祭でチョイ役でしたから・・・・。しかし名前を書いた奴らは一応ちゃんと本当にいます。・・・どこかに・・・。残りの男たちは格闘大会の予選でアスナたちにやられたキャラたちだったと思ってください。
思えば予選のころからシモンは何かを感じ取っていたはずです。というわけで、豪徳寺にキタンのような役目をやらせちゃいました!!
最終更新:2011年05月10日 15:04