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53-魔法が溢れる奇跡の日

第五十三話 魔法が溢れる奇跡の日 投稿者:兄貴 投稿日:09/01/16-15:59 No.3801
新生大グレン団と超の火星軍団。この二つの組織の対決がいよいよ始まろうという中、この舞台にもう一つの組織がある一人の少女の行動によって割って入ろうとしていた。

この少女の行動は超にもシモンにも予定外の行動だった。

それは少女の純粋な願いだった。

超鈴音というクラスメートを止めたいという願いからの行動だった。

超一味、超包子の料理人として常に超鈴音と行動していたネギのクラスメート四葉五月。彼女は今学園長室にいた。


「・・・・う~む、・・・・それは本当かのう?」


「五月君が嘘を言う子だとは思っていない・・・・しかし・・・・超君が全世界に魔法をバラす?」


五月は黙って頷いた。

今この部屋にいるのは学園長、そしてタカミチと五月の三人だけである。超の計画を知り、それを止めたいと思った彼女は超に内緒で全てを打ち明けた。本当はネギに相談したかったのだが、どうしてもネギが見つからず、かつての担任だったタカミチを頼った。

五月は魔法使いではないため、それほど詳しい作戦内容を知っているわけではない、そのため大まかなことまでしか説明できなかった。だがその説明だけでも充分だった。魔法の存在をバラすという行為、そして・・・


「今日の午後に計画を実行し・・・・邪魔を防ぐために2500対以上のロボット兵器を導入する・・・か・・・・」


「そんな大掛かりなら誰かが気づいていいはずじゃ、イマイチピンと来ないのう・・・・」


「・・・・ですが・・・・」


「安心してくれ、五月君が信用の置ける子だと信じている。ですが学園長、世界中に魔法を認識させるなんて可能なんですか?」


「・・・・都合よく今年は22年に一度の年・・・・あながち無理ではないかもしれん・・・」


顎に手を置き考える学園長。しかし本当だとしたらゆっくりとしている時間は無い。


「タカミチ、今すぐネギ君を連れてきてくれ、他の先生にはワシが連絡しておく」


タカミチは頷き駆け足でネギを探しに向かった。その様子を見て五月はホッと胸を撫で下ろした。


こうして一人の少女の行動により、これまで何も知らなかった学園側もついに動き出した。
















その頃ネギたちは未だにエヴァの別荘の中にいて、今後の内容について話し合っていた。


「・・・・漢の魂の在り処・・・美空ちゃんたちは女の子でしょ? これで本当にシモンさんたち仲間増やせるのかな~?」


「ネット上では相当食いつきがいいみたいだがな。実際本当に行くバカがたくさんいるとは思えないが・・・・」


残念ながらバカはいっぱいいた。


そうとは知らずに千雨を含め、今この場にいるメンバーで今後の話し合いをしていた。

軽い気持ちで倒しちゃえと言うハルナや、これまでの情報を整理しながら事細かに予想していく夕映。一部の戦闘屋たちを除いて意見が分かれていた。


「いいじゃん、いいじゃん!! 火星人に未来人に歴史改変!! お姉さん創作意欲わいちゃうなー!! 学園最強の頭脳の持ち主!! しかしその正体は未来からの侵略者!!  クラスメートが悪の黒幕!! あ~、なんという悲劇! もう倒しちゃえ!!」


「アンタはもう黙ってなさい!!」


「しかし、その辺の話が本当だとしても疑問点が二つあるです。一つは何故「魔法をばらす」ということが「歴史の改変」に繋がるのか。もう一つはそもそもなぜ、超さんはわざわざ何年も先の未来から来てまでそんなことをしようとしているのか」


「そうですね・・・。実際に超さんがやろうとしていることが本当に悪いことなのかどうか・・・だからシモンさんも僕たちと別々に動いたんでしょうけど・・・」


夕映とネギの疑問にみんなは静まりかえる。

未だに纏まらない話し合いを見て千雨もいい加減ため息をついた。その様子を見て、この中で唯一一般人としての考えを持つ千雨に意見を求めた。


「千雨ちゃんはどう思うん? 魔法が広まるのと広まらんのどっちがええ?」


「あん? そんなもん広まらないほうがいいに決まってんだろ。 大体それが普通なんだよ」


「え~、でもウチはちょっとええと思うよ。 そら~、シモンさんと戦うんは絶対嫌やけど、ウチのように治す系の魔法を皆覚えたら、もっと多くの人が救えるやろ?」


「だ・か・ら、それがおかしんだよ! 簡単に怪我は治らないし、手から火が出たり、雷が出たりしないのが普通の世界だ! 不思議なことは起こらないのが現実だ!! でも私はその普通の生活が気に入ってるんだ。ファンタジーはゴメンだ」


「「「「おお~~~~」」」」


「感心するな、バカ共が!!」


千雨の演説のような言葉に感心し拍手を送るアスナたち。相変わらずのお気楽な反応に千雨のイライラが募り募っていく。そして少しため息をつき、武道会でのシモンとの話を思い出した。


「ったく・・・・まあ、そう考えると私はシモンさんに賛成だな」


「えっ? シモンさんにですか? それはやはりどんな理由にせよ過去の改ざんを行うべきではないということですか?」


「はっ、そんな大そうなもんじゃねえよ。でもあの人は私に言ったんだよ、私が困る世界にはしないってよ。自分が勝てば変わらない明日が来るってよ。私はその何も変わらない明日の方がいいってことだ。限度もあるけど、魔法よりは気合のほうが聞こえも良いしな・・・・」


夕映の深い考えを鼻であしらった千雨の機嫌はかなり悪い。魔法でハシャイでいる木乃香やハルナたちを見て相当イライラしている。

そんな彼女としてはシモンの力は限度を超えているが、誰しもが持っている「気合」という単語で自分たちの力を現していたのが好感を持てた。納得はしないが・・・・

『魔法は魔法だ。鍛錬しなければ扱うことは出来ない、しかし気合を出せるか出せないかは本人のココ次第だ!』

そう言って自分の胸を叩いたシモンを思い出した。少なくともシモンは自分に向かって困る世界にはしないと言ったのだから、そうなることを願った。


「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」


「・・・・・なんだよ、・・・ジッと見て・・・・」


すると自分をアスナたちがなにやら無言で見つめている。すると木乃香が少し不安そうな顔で尋ねてきた。


「なあ、・・・・千雨ちゃん・・・・・まさか・・・・」


「・・・・・・なんだよ・・・・・・」


「・・・・・・シモンさんに・・・・惚れたん?」



――ブチッ!!

堪忍袋がどうとう切れた。



「うおぉい!! 誰があんなダサくて、暑苦しくて、やかましい男に惚れるか!! つうかテメエらいい加減にしろよ!!」


「シモンさんはかっこええもん!!」


「そうですよ、シモンさんはかっこいいです!!」


「木乃香とネギの言うとおりよ、千雨ちゃん。ああゆうのはダサかっこいいって言うのよ」


「どっちでもいいんだよチクショー!! いいから話を元に戻せ! 」


マジギレする千雨だが、相変わらず3-Aの生徒たちには勝てず、話はどんどん脇道にそれていく。

結局長時間話し合っても、あまり大した成果は無く、結局行き着いた答えは・・・・・







「・・・というわけで、超さんのやることが正しいかどうか分かりません。でも、この計画は世界に大きな混乱をもたらすので僕は止めたいと思います。皆さん、協力してください!!」


「「「「おおーーーーっ!!!!」」」」


「あんだけ時間掛けてこれかよっ!! 結局普通じゃねえかよ!! まあ、ファンタジーの世界を止めてくれるんならいいけどよ・・・・」


余りにも曖昧すぎる答えに千雨はツッコミを入れたが、自分に不利な話ではないので取り合えず納得した。

だが、やはりネギはどこか浮かない表情だった。まだ自分の決めたことに迷いがあるような表情だった。


「どうしたんだ、アニキ?」


「カモ君、・・・・本当にこれでいいのかなって・・・・こんな感じで超さんとシモンさんの下へ行けるのかなって・・・・」


ネギは不意に首から提げているコアドリルを弄くった。

シモンは言った、これは信念の象徴だと。これを返しにくるときは対等だと思っていると言っていた。しかし一応答えは出たものの、超やシモンのように確固たる信念の前には弱いと感じていた。

そして未だに超の言っていた魔法で救われる世界というのにも捨てきれない思いがあった。

だが未だに浮かない顔をしているネギを見て、アスナに後ろから頭を叩かれた。


「こら、ネギ!」


「うっ、・・・アスナさん・・・」


「ほら・・・え~と・・・その・・・とにかく、超は止めなきゃダメでしょ! アイツのやろうとしていることは悪いことなんだから、止めなきゃダメ!!」


「・・・・アスナさん・・・・」


「はあ~、私ももう少し口がうまければいいんだけどな~・・・」


言いたいことが思ったとおりに言えないアスナだが、ネギにも気持ちだけは伝わった。少し迷いはあるがやはり超は止めなければならないという気持ちになった。

すると刹那たちが時計を確認した。この別荘の中と外では時間の流れが違うが、そろそろ頃合の良いころである。


「ネギ先生、そろそろ外では学園祭最終日の午前になるころです」


「わかりました、では一旦外に戻りましょう! そして超さんを止めるということで、皆さんいいですね?」


「「「「「おおーー!!」」」」」


とにかく今はその通りに動くしかない。超やシモンほどの信念は無いかもしれないが、現時点で仲間たちと懸命に考えて出した答えなのである。ならばその通りに動くべきだとネギは自分に言い聞かせた。

外の世界へ帰るため、別荘の出入り口となるゲートに皆で同時に手を触れ、一斉に外へ出る。

それは何度も繰り返してきた行為だった。

ゲートを通ればいつものようにエヴァンジェリンの部屋に戻ることが出来るはずだった。




しかしその時だった!


「なっ・・・・これは!?・・・・・」


「兄貴、どうしたんだ!?」


「分からないよ、でも・・・カシオペアが・・・・」


「「「「「!?」」」」」


なんとカシオペアから実に荒々しい魔力の光が溢れている。そして同時に自分たちの周りの空間が歪みだした。


「な・・・なんです!?」


「ま・・・周りの景色がグニャグニャしているアル!?」


「これは・・・一体何事でござるか・・・・」


「お嬢様! 手を離さないでください!」


ゲートに戻ったネギたちは、本来エヴァンジェリンの自宅の部屋の中に出るはずだった。

しかし突如カシオペアが作動し、周りの風景が変わっていく。

この事態に一人残らず頭がついていかなかった。

カシオペアで時間跳躍する際に一瞬空間が歪められるのは知っている。しかしそれは一瞬だけである。だからこの事態はおかしかった。

空間が歪み、地面がまわったかと思えばその事態から一向に元へ戻らず、自分たちの周りはどんどんくずれていった。


「なんなのよこれ!?」


「わかりません、ですが何もしてないのに急にカシオペアが作動して・・・・でもこんなのおかしいです!?」


ネギたちの混乱はピークに達していた。自分たちの身に一体何が起こっているかなど想像もつかなかった。





カシオペアは未だに嫌な音を響かせながら光を漏らしている。

そして・・・・・ようやくその光が収まったと思ったら・・・・・そこは・・・・


「えっ!?」


「こ・・・・これは・・・・」


途端に自分たちの身体が軽くなり浮遊するような感覚に襲われた。しかしそれは間違いではない。まるで無重力のように身体が浮かび上がった。


「ど・・・・どうなってんのよコレ!?」


「せっちゃん!?」


「絶対に手を離さないでください!?」


そこにあるのは真っ暗闇の世界。

しかしその場にいる仲間たちの姿はハッキリ視認できるという実に不思議な空間だった。

身体が投げ出され、地面も天井も無ければ右も左も無い世界。一瞬呆けたがネギはいち早く意識を取り戻した。


「皆さん、このままでは離れてしまいます一箇所に集まってください!!」


その声を聞き、皆ハッと意識を取り戻して、まるで無重力の中を浮遊するかのようにネギの元へ集まった。


「おい、何がどうなってやがるんだ・・・・・」


「僕にも・・・・急にコレが動き出して・・・・って、えっ!!」


「あ・・・兄貴!?」


ネギが取り出したカシオペアを見て全員が驚愕の声を上げた。

なぜならカシオペアに大きな亀裂が入っていて、完全に動かなくなってしまっているのである。


「そんな、・・・二日目までは使えたのに!?」


ネギは驚きを抑えることが出来ない。しかし現実である。カシオペアには無数の傷跡が残っている。恐らく先程の魔力はこの隙間から漏れたのである。

全員何がなんだか分からずに不安そうな顔を浮かべる。するとカモが何かを考えている。


「ひょっとしたら・・・・こりゃあ超の罠かも知れねえな・・・・」


「「「「「えっ!?」」」」」


顔の言葉に皆が振り向く。そしてカモは自分の考えに唸りながら予想を出していく。


「超の様子だと・・・・シモンの旦那と戦いたがっているが、俺っちたちとは戦いたがっていなかった・・・・仲間に誘ったのはそれが原因だろう・・・・」


「たしかに超は無駄な戦闘を好まないアル。それにクラスメートと戦うのは嫌なはずアル・・・・」


「・・・・・・超の野郎はこれを使って未来と現在を行き来している・・・・・ひょっとしたら事前にタイムマシンに細工して、俺っちたちを未来にでも飛ばして戦いを避けようとしたんじゃないのか?」


「ちょっと待ってよ! こんな気持ち悪い世界がどうして未来なのよ!?」


カモは何か嫌な予感を感じながら亀裂の入ったカシオペアを眺めながら唸っていた。

そして・・・・何かにたどり着いた。


「・・・・ひょっとしたら!!!!」


「「「「!?」」」」


カモの叫びが空間の中に響き、全員が肩をビクリと震わせる。何事かと思いきやカモは滝のように汗を流していた。


「どうしたですか、カモさん?」


「・・・・おれっちの勘だが、超のヤロウは予めカシオペアに罠を仕掛けていた。それは最終日を迎える前に俺ッちたちを戦いの終わった・・・・つまり学園祭の後の日まで飛ばそうと考えていた・・・」


「ちょっと待てよ・・・・仮にそうだとしても、そのタイムマシンがあればもう一度学園祭の日に戻れるんじゃねえか?」


千雨の言葉に皆なるほどと頷いた。たしかに戦いの終わった日に飛ばされても、タイムマシンがあれば元に戻れるので無意味だと思った。

しかしカモは超から貰ったカシオペアの説明書を眺めて「やはり」と一言呟いた。


「こいつは22年に一度の世界樹の魔力の力で作動する。もし超が・・・その力が完全に失うほど・・・つまり一週間以上先の未来へ跳躍させようとしたら・・・・・」


「元の世界には帰ってこれない・・・・というわけでござるか・・・・しかし今のこの拙者たちはどう説明するでござるか?」


「それなんだが・・・・う~ん・・・アニキ、これ今までどうやって持ってた?」


恐る恐るネギを尋ねた。するとネギは・・・


「どうって・・・・ずっと服の中に入れてたけど・・・・・」


「・・・・・格闘大会の時もか?」


「・・・・・うん・・・・だってこんな大事なもの肌身離さず持ってないと・・・・」


「・・・・・それだァァ!!!!」


カモは完全に全ての謎が解けた表情をしていた。


「思い出してみてくれよ! タカミチさん、美空の姐さん、シモンの旦那、そしてクウネルと激戦を繰り広げていたんだ! その戦いで気づかねえ内にカシオペアに亀裂が入って少しずつ魔力が漏れ出したんだ!!」


「なっ!? でも僕はあの後に何回か使ったけど、ちゃんと動いたよ!」


「それが・・・何時間単位だったらまだ何とかなったんだろう・・・・だがよ、何日単位の長期の時間跳躍は無理だったんだ! それほどの巨大な魔力を使用しての跳躍に傷ついたカシオペアが耐えられなかったんだよ!!」


カモの推理に何人かの者も徐々にこの状況を理解して行った。

タイムマシンの故障、時間跳躍の失敗・・・・それに行き着いたのは夕映が最初だった。


「つ・・・つまり私たちは・・・・」


その言葉にカモはゆっくり頷いた。



「そうだ・・・俺っちたちが今いるここは、・・・・・俺っちたちは・・・・時空間の狭間のようなもんに囚われて漂流してるんだ・・・・」



いつもなら騒がしい声を同時に上げる彼女たちだが、この言葉に全員が言葉を失ってしまった。

ガクガクと足が震える。しかしそれを支える地面などはない、なぜならここはそういう空間なのである。

それ以降一言も誰もしゃべれなかった。いつも楽観的なハルナですら、この状況の深刻さを理解していた。

ネギはただ、涙が止まらず、震える手でカシオペアを眺めていた。











そんなネギたちの状況を知るはずも無く、教会は昨夜の宴会から明けて、朝を迎えていた。大騒ぎして寝た美空や豪徳寺を初めとする新たな仲間たちを起こさないように寝かせたまま、シモンとヨーコ、そしてシャークティは最後の話し合いをしていた。


「集まった仲間は50人弱、・・・地下にあったロボットはどれぐらいかしら?」


「およそ、2000を超えています。頭の超鈴音一人を狙うしかありませんが先程の巨大メカもあります。・・・・その中で彼女を見つけるのは困難です・・・」


「シモンのワープがあるけど・・・・・使わないんでしょ?」


シモンはコクリと頷いた。

本当は超を倒すのであれば、認識転移システム、つまりワープを使えば一番簡単なのだが、シモンはそれを使おうとはしなかった。

なぜならただの超と一対一の戦いで解決するのならこれほど悩む必要は無かった。しかも自分は超の練りに練った計画と立ちはだかる壁を破ることを誓ったのである。


「そうだな・・・・壁をすり抜けるのは俺たちのやり方じゃない。壁を突き破るのが俺たちなんだからな・・・・」


それは返って自分たちの勝率を下げる行為でしかなかった。しかしシャークティたちはそのことについて文句は言わずに笑顔で納得してくれた。


「つまりロボットたちとは正面衝突。その上で超鈴音を見つけ出す・・・ですか・・・・いくら仲間が増えたとはいえ・・・・難儀ですね・・・・」


50対2000では勝敗は見えている。いかに無理を通すのがグレン団とはいえ、このままではただの無謀だった。だがここは学園という広い敷地内の上に相手は単純なロボットである。

さらにいくらなんでもそれほど大騒ぎを起こせば確実に魔法先生と生徒の介入があるはずである。ネギたちがどうするのかは分からないが、さすがに学園側が超の協力をするはずなどは無い。シャークティは口では出さないが、彼らの介入まで粘ることが出来れば勝機があると思っていた。

3人で案を出し合っている中、教会の扉が開いた。シモンたちが扉へ向くとそこに居たのは意外な人物だった。


「ふん、私の知らない間に随分賑やかになったじゃないか?」


「エヴァ・・・」


魔法使いのローブに身を包んだエヴァが少し機嫌よさそうに中に入ってきた。中に入ってきたエヴァからはいつもと少し様子が違う気がした。それは身に纏う空気のようなものである。その正体に逸早くシャークティが気付いた。


「最終日だと、魔力が戻っているようですね?」


「まあな、もっとも学園祭が終われば元に戻るのだがな・・・・・」


そう言って軽い舌打ちをするが、気分が悪いわけではなさそうだ。だがシモンは少し気になったことがあった。


「・・・・なんで今日だけなんだ?」


「ん? それはこの学園最中は世界樹の発光により魔力があふれ出しているからだ。しかし学園祭が終わり世界樹の魔力が無くなれば、元に戻るということだ」


その答えを聞いてシモンは納得した。魔法という奇跡の力がこの学園を今満たしている。だからこそ、普通では体験できなかったことを体験できたのだろうと。


「そうか・・・・魔力が・・・いや・・・・魔法が溢れているのか・・・・」


「なんだ? 何かあるのか?」


「いや、・・・どうりでと思ってさ・・・・・」


「?」


「いつもは会わないのに・・・・学園祭が来てからどうりで会うわけだと思ってさ・・・・・」


それは武道大会でコアドリルを輝かせて自分を殴ったヨーコの一撃だった。

あの一撃で一瞬意識が遠のいたシモンは、普段は会えなかった人物と会えたのである。


「・・・・・・誰にだ?」


「魔法が溢れる奇跡の日・・・・死んだ人間に会うこともあるってことさ・・・・」


「?」


「! ああ、そういうことね・・・・」


「むっ!? ヨーコだけ理解するとは気に食わん!! 教えろ!!」


最終日の青空を見上げてシモンは呟いた。シモンの言っていることがヨーコには理解できた。しかし理解できなかったエヴァは悔しそうにシモンに、教えろと怒っていた。

袖を引っ張りながら騒ぐエヴァをあしらいながら、シモンは心の中であの男に向かって呟いた。


(ネギたちがどうなっても、答えを聞くまではどうしようもない・・・・・・・だから・・・・)


自分はまだ助けることが出来ない。だが、放っておくことも出来なかった。だからこそお守りとしてコアドリルを預けたのである。


(俺の代わりに見守ってやってくれ・・・・アニキ・・・・・)


道に迷って重い選択肢に友が潰されてしまいそうになったら、手を貸してやって欲しいとシモンは心の中で願った。



















「雷光剣!!」


「朧十字!!」


時空の狭間に捕らわれたネギたちは、何の意味があるのかは分らないが、ジッとしてあきらめるわけには行かなかった。それぞれの者が何もない空間に向けて攻撃をしていた。

だが、当然何の効果も無い。


「・・・・・だめです・・・・」


「空間に亀裂すら入らないでござる・・・・」


「私のアーティファクトにも何の方法も載ってないです・・・・」


「まあ、当然だろうがな・・・・・。アニキと木乃香の姉さんの方は?」


「だめだよ・・・・ちっとも動かない・・・・どれだけ魔力を込めても・・・・・・」


「アカン・・・針が少しも進まへん・・・・・」


「くっそ・・・・アニキと木乃香の姉さんの魔力でもダメか・・・・やっぱ壊れてんだな・・・。打つ手無しかよ!」


空間に変化はない。

カシオペアは動かない。

だが、あきらめるわけにはいかなかった。この何もない空間であきらめることは死に繋がるのである。

たとえ心の中がどれほど弱気になろうとも、絶望に押し潰されるわけにはいかなかった。

だからこそアスナは人一倍の声を出した。


「何言ってんのよ、皆! こんな時・・・・・こんな時にいつだって立ち上がった人がいたでしょ! 私は・・・・私はあきらめないわよ!」


「バカ! 戦闘とは違うんだ、こんなとんでも空間をどうするってんだよ・・・・・」


「そんなの・・・・・気合で何とかしてやるわよ!!」


「せや・・・・ウチも・・・・ウチも・・・・」


(お嬢様・・・・。・・・・シモンさん・・・・こんな時・・・・アナタならどうするんですか? ・・・・どうすれば・・・・言葉を下さい・・・・)


アスナは負けじと何度も何も無い空間でアーティファクトを振り回している。しかし魔力を帯びたものに対する効果は絶大だが、この場ではなんの役にも立たないことは自身でも分っていた。

しかしここで動くのを止めたら自身ですら決して言わないようにしていた弱音が出てしまう。だからこそアスナはがむしゃらに動いた。

だが成果はない。それを察したネギは徐々に弱気な心が出てきてしまった。


「僕の・・・・・僕の所為です・・・・・」


「ネギ先生!!」


「僕が・・・・僕が・・・・・」


「今言うの止めなさい! ぶっとばすわよ! 誰もそんなこと思ってないわよ! 悪いのは超でしょ!」


アスナは絶対にそれ以上ネギに言わせたくはなかった。だがたとえなんと言われようとも、ネギは自分の責任以外思いつかなかったのである。

安易にタイムマシンに手を出したこと。超鈴音を見抜けなかったこと。まんまと罠にはまってしまったこと。自分の生徒を巻き込んでしまったこと・・・・、挙げたら限がなかった。

そして何よりも答えも曖昧なまま戦いに赴こうとしたことが許せなかった。


「僕は・・・・やっぱりまだ迷ってたんです・・・・・超さんの計画は・・・・やっぱり間違っていないんじゃ「ネギ!!」」


「今は・・・今そんなことじゃなくてこの状況をどうにかするのが先でしょ!!」


アスナは怒鳴ることしか出来なかった。この状況でこれ以上の弱音や絶望の声など聞きたくなかったのである。

だがネギは己の中で渦巻いていた想いを吐き出してしまった。


「シモンさんの言っていることは凄く大切なことです。・・・でも僕は魔法使いとして考えろといわれました・・・・・そう考えるなら・・・・やっぱり超さんを否定することができないんです・・・・」


「「「「「!?」」」」」


その言葉に全員が動くのを止めてネギを見た。

だがネギの答えは自分達にとっては悲しすぎるものでしかなかった。夕映もすかさず訂正させようとするがネギは止まらない。


「違いますネギ先生! もしネギ先生たちの正体がバレたら、ネギ先生たちはこの学園に居られなく・・・・「それで!」・・・・」


「それで世界の多くの人が救われれば・・・・この学園の僅かな犠牲でより多くの人が救われるなら・・・・もしタイムマシンの力を知らずに超さんの計画だけを知っていたら・・・・僕は・・・・僕はきっと超さんに・・・・」


「「「「「!?」」」」」


それ以上は絶対に言わせない。言わせてたまるものか!


生徒達からその想いが前面に溢れてきた。

そして夕映が誰よりも先に動き出した。言葉で伝わらないのなら、力づくに出た。


「ネギ先生! 歯を食いしばってください!!」


叩いた音が広がった。

夕映の涙の叫びとビンタが空間に広がった。

夕映らしからぬ行動に、自分も殴ろうかと身構えていたが、出遅れてしまったアスナや、ただ泣いているだけだったのどかは呆然としてしまった。

そして夕映は震える肩と嗚咽交じりの声で叫んだ。


「忘れたんですか? シモンさんに・・・・・試合の最後に言われたはずです・・・・・」


「!?」


武道会の準決勝の試合。壁として立ちはだかったシモンは最後の言葉をくれた。


[いいか、ネギ。自分を信じろ! 俺が信じるお前でもない、お前が信じる俺でもない。お前が信じる・・・・・]


忘れるはずなどはなかった。


「お前が信じる・・・・お前を信じろ・・・・・」


「そうです・・・・そして私達も信じているです。・・・ですから・・・そんなことは言わないで下さい・・・・のどかを・・・いえ、私達を置いていくようなことは言わないで下さい・・・・・・」


「ゆえ・・・・・」


「夕映さん・・・・・・」


夕映がネギに対してのどかと同じぐらいの想いを寄せているのは誰の目にも明らかである。

ただ担任や友のためを思ってのことではない。自身の気持ちのためにもネギと別れたくないという気持ちからの言葉と行動だった。

頬を押さえながらネギは涙を流す夕映を見つめる。

他の生徒達もそうである。夕映の言葉に頷きながらネギの背中を叩いた。

しかし殴った夕映も必死で不安を隠そうとしている。

人一倍声を出しているアスナも強がりにしか聞こえない。なぜなら二人共肩が震えているからである。それは懸命に堪えているだけで、不安や恐怖が無いわけではないからである。

この状況を前進させなければ死しかない。実感する死の恐怖を必死に抗おうと、ネギを叱咤し自分達も奮い立たせようとしていたのである。


だが、それで打開策が見つかるわけでもない。口で言うもののやはり不安が大きくなっていった。




しかしその時だった!


ネギは気付かなかった。

アスナたちも気付かなかった。


ネギがぶら下げているコアドリルが微かに光ったことを。




そしてその光が小さな奇跡を起こした。











「どうしたテメエら、道に迷ったか?」












突如男の声がした。


だが、それはありえないことだった。


何故ならこの空間に自分達以外のものなど居るはずもないからである。


「何者!?」


「ちょっ・・・・誰よ、アンタ!?」


「拙者ら以外に人が居るとは・・・・・」


「気付かなかったアル・・・・」


慌てて全員が振り返った。

するとそこには一人の男が立っていた。


青い髪、そして肌に直接赤いマントを身に纏い、刀を肩に担いでいた。


何者かは分らない。しかし武器を携帯しているため、刹那は慌てて木乃香を自分の後ろにやり、アスナ、古、楓は男に向かって構え、警戒した。


だが男はアスナたちの態度に呆れたようにため息をついた。







「俺が誰だと? ったく・・・しょうがねえな・・・」






すると男は刀を抜き、それを真上に向かって掲げたのだった。

刀を抜かれて一瞬肩を振るわせたネギたちだったが、今度は呆然としてしまった。

なぜならこの男のポーズはシモンと似ていたからである。そして男の姿は暗闇の世界に光を照らしているように見えるほど、輝いて見えた。



これは一体何だったのかは分らなかった。


夢なのか、時限空間に捕らわれた自分達が見た幻なのか、それとも学園祭がおこした奇跡なのか、その正体はきっと一生分らないだろう。


だが、一生分らない代わりに、ネギたちは今日初めて見たこの男のことを一生忘れないだろう。


これがシモン、ヨーコ、ブータに続いて彼らが出会った異世界の英雄だった。




「ジーハ村に悪名轟くグレン団! 漢の魂背中に背負い、不撓不屈の鬼リーダー、カミナ様とは俺のことだッ!!」




全ての物語の始まりはシモンがコアドリルを見つけてから始まった。

しかしその物語に、この男は絶対に欠かすことの出来ないと言えるほどの存在だった。


「えっ?・・・・・・・」


ネギが間の抜けた声を出した。

他の者達も同じような顔で呆然としていた。


「な・・・・・何言ってるのよ・・・・・コイツ・・・・」


「う・・・・うそ・・・やないん?」


「カ・・・・カミナさん・・・・」


「おい・・・・・死んだってお前ら言ってなかったか?」


千雨の言葉に誰も何とも言うことができなかった。

しかし目の前の男が嘘を言っているとは思えなかった。

会ったことは無い。

名前とその生き様しかシモンからは聞かされていなかったからである。

だが、自分達の直感が言っていた。この男は間違いなくシモンのアニキだと。


「ああそうだ!! だが、それがどうした!!」


「「「「はあッ!?」」」」


するとカミナは腰を曲げてネギに詰め寄った。そしてネギの首にぶら下がっているコアドリルを指差した。


「それで、お前らは何だ!」


「・・・・・・えっ?」


そしてこの時初めてネギたちは、コアドリルが緑色の光を出しながら点滅していることに気付いた。


「テメエの持ってるそれは、シモンの・・・・そして俺達の魂だ! それを持ってる男が、こんな所でウダウダしてんじゃねえ! ここでジジババになって老いぼれるつもりか?」


突如現れたその男は豪快に喋り出した。

ネギたちは未だにこの状況に頭がついていなかった。

しかし不思議なことに男の言葉が一言一句残らず頭に残った。


「・・・・本当に・・・・アナタは本当に・・・・カミナさんなんですか?」


「何言ってやがる! カミナ様が他に何人も居ると思ってんのか!! 俺達の眠る魂を、メソメソしたガキに預けられて、のん気に寝てられるかっ!!」


するとカミナはネギからカシオペアを取り上げた。


「な・・・・何を!?」


「こんなもんがテメエの壁か? こんなもんを使う使わないで迷ってんじゃねえ! 使いたけりゃバンバン使えばいいじゃねえか!! シモンの顔色伺って、テメエの道を狭めてんじゃねえ!!」


「「「「えっ・・・ええ~!?」」」」


あまりにも滅茶苦茶な発言だった。カミナとシモンは別々の人間だから、掲げる誇りは同じでも、考え方は違うのかもしれないが、この男の滅茶苦茶さはある意味シモン以上に見えた。

過去の改ざんがどうのと精一杯色々自分の言葉で説明した夕映も、「使っちまえ」とアッサリと言われては何も言い返すことが出来なかった。当然千雨は頭が痛くなって俯いてた。

しかしこの男の滅茶苦茶はまだ止まらなかった。


「大体壊れて使えねえ? だから帰れねえ? それがどうした! だったらアレをやりゃあいいだろうが!」


「・・・・アレ・・・とは?」


ネギたちはゴクリと唾を飲み込みカミナの言葉を待った。

すると・・・・



「アレっつったら決まってんだろ、合体だッ!!」



「「「「「む・・・・・、無茶苦茶だ~~~!?」」」」」


「無茶かどうか、やってみねえと分んねえだろ!!」


「いや、無茶だって! いきなり何言ってんのよ!?」


ネギからカシオペアに続いて、首からコアドリルまで引きちぎろうとするカミナを、アスナたちは慌てて止めようとする。

だが、カミナは止まらない。

そしてアスナたちは次のカミナの一言で逆に止まってしまった。


「俺を誰だと思ってやがるッ!!!!」



「「「「「「「!?」」」」」」」


グレン団が受け継いだ決めゼリフ。

その言葉はシモンを通じて異世界のネギやアスナたちも気付いたら真似してしまう言葉。

その本家の言葉を聞いたのだ。ネギたちが胸を高ぶらせ、思わず止まってしまうのも無理は無かった。

そしてカミナはネギからコアドリルを引きちぎり、それをカシオペアに向かって思いっきり突き刺した。


「「「「「んな~~~!?」」」」


カシオペアにコアドリルが貫通した状態で突き刺さっている。

それは、誰がどう見ても余計壊れたとしか思えなかった・・・・・・が・・・・


急にカシオペアが緑色の光に包まれた。


「えっ?」


「う・・・・・嘘!?」


なんとカシオペアはドリルを飲み込んで一つとなり、傷ついた姿が完全に元の姿に戻った。


「「「「な・・・・直ったーーー!?」」」」


口を空けたまま全員固まってしまった。もはや気合がどうとかそんな問題ではなかった。

当然これは偶然ではない。

コアドリルにはこれまでの螺旋族が作りだした螺旋力の力が記憶されている。ヨーコガコアドリルのみでワープを使ってこの世界に来れたのはこれが理由である。

つまり、当然あの能力も内蔵されていたのである。ラガンのメインの能力。合体したメカをコントロールし、その傷を完全に修復させるという能力である。

もっともネギたちはおろか、この男がそんなことを知っていたわけではない。言うなればただの本能である。

だがそれが、道を作り出したのだった。


「見ろ! これが気合だ! やってやれねえことはねえ!」


カミナはそう言ってネギにカシオペアを手渡した。

するとカシオペアから溢れる光がネギたちを包み込んだ。


「ホントに・・・・直ったようでござるな・・・・」


「こ・・・これが気合アルか?」


「待て待て待て!! テメエら何で納得してんだ!? 突っ込むところがいっぱいあるだろうが!?」


突然現れた男の言葉と行動にもはや何と言っていいか分らない千雨。しかしシモンと接し多少の免疫がある者たちは、納得するしかなかった。


「・・・・・・・・細かいことを気にしたら負けですよ・・・・・」


「せや、せっちゃんの言う通りや・・・・・」


何でもアリの魔法に出会い、千雨も多少の非常識は覚悟していた。だが目の前の男の常識を見ていると、自身の覚悟や悩みが急にバカらしくなってしまった。


それはネギを始め、アスナも刹那も、そして木乃香や夕映、ハルナにのどか、楓に古、この場に居る全員が悩みなどどこかに吹き飛んでしまったような気がした。


カシオペアからの光が自分達を包み込み、ネギたちは先程までの絶望から打って変わって、このままアッサリ帰れると確信してしまった。


すると自分達を包む光の外側で、カミナは歯を見せて笑った。


「いけよ、チビ助! シモンがどうした! 歴史が何だ! マホウだか知らねえがそれがどうした! もしとか、たらとか、ればとか、そんな思いに惑わされるな!」


「――っ!」



「その言葉・・・・・・」


「せっちゃん・・・・どうしたん?」


刹那はこの言葉に肩を微かに震わせた。それはかつてシモンが自分に踏み出す勇気をくれた言葉だった。


「テメエが決めた道の先にあるのがお前の掴むべき明日だ! そして掴んだ明日にあるのが・・・・お前達が生きるべき世界だ!」


「・・・・・・カミナ・・・さん・・・・・」


「テメエの明日も世界も決めるのはシモンじゃねえ・・・・・アイツはそう言ってなかったのか?」


シモンは言っていた。

グレン団の信念をネギたちに押し付けたくはなかったと。

それはただ自分達を突き放しただけにも見える。

だが、シモンの言葉をネギたちはようやく受け止めることが出来た。


「そうです・・・・・シモンさんは・・・・・そう言ってました。シモンさんでもない、超さんでもない、・・・・・お父さんでもない・・・・・誰でもない僕自身になるって決めたんです・・・・・」


自分らしく生きる。

それはシモン、ヨーコ、カミナがそうである。彼らはたとえ人になんと言われても、生き方も信念も変えない。それこそが彼ららしい生き方である。


「そうだ、たとえ壁や天井が阻もうとテメエの信念で掘り抜けやがれ!! 世界は一つじゃねえ! 道だって無限に広がってんだよ!」


シモンと超のどちらの道を選ぶかという選択肢事態が無意味だった。

なぜならこの事態にたった二つの道しかないことを意味しているからである。

しかしカミナは道が無限にあると教えてくれた。

だから誰かの真似をする必要もない。迷い迷って出た答えに自信がなくても、それが自分の選んだことなら迷う必要などは無い。ネギは肩の力が軽くなったような気がした。


「行きましょう、・・・皆さん!!」


カシオペアの針が再び動き出した。

ネギは学園祭最終日、自分達が向かうべき日を思い浮かべ、そのイメージをカシオペアに送り込んだ。


「シモンさんは僕に魔法使いとして答えを出せと言いました。・・・・でも・・・・僕は従いません・・・・」


「ネギ?」


どちらかを選ぶ必要などは無い。ネギは自身が決めた道を胸張って口にする。


「魔法も歴史も関係ありません! 僕は・・・・僕は先生として、喧嘩する二人を仲直りさせたいと思います!!」


それは原点だった。

二人が喧嘩しているのなら止めたい。それが最初に思ったことだった。

しかし途中でシモンの昔話や、超の信念、シモンの信念などを知るうちに、徐々に重い選択肢ばかりが頭に過ぎった。

しかし今カミナと出会って辿りついた答え、それこそ原点だったのである。


「ほう、信念のぶつかり合いの喧嘩を邪魔するったあ、つまらねえチビ助だな」


「はい、・・・・でも僕はカミナさんではありません。そしてシモンさんでもありません。僕は目の前で起こる喧嘩を割り切って見過ごしたくはありません。だから・・・・お二人を仲直りさせます!」


誰が聞いても甘い思想かもしれない。しかしそれがネギらしい考えであるのなら、否定することなど出来なかった。


「そうか。まあ、それでいいんじゃねえか?」


全てを決意しカミナを見る。するとカミナも力強い笑みを返してくれた。


「カミナさん・・・・最後に一つだけ答えてください・・・・」


ネギには分った。

アスナたちにも理解できた。

無限に広がる道。その先でこれからどんな人間に会うかは分らない。

しかしカミナという男と会話をするのはこれが最後である。それだけは理解できた。

シモンが、ヨーコが、自分達が尊敬する者達を導いた男。

その偉大な男に最後の質問をした。




「無限に広がる道・・・・・その道は・・・・・どこまで続いているのでしょうか?」




ネギの最後の質問。

するとカミナは鼻で笑った。




「決まってるじゃねえか、テメエらが立ち止まらねえ限り、どこまでもだ!!」




その言葉と共に空間全体に光が行き渡り、ネギたちの姿を完全に光の中に消した。




―――行ってこい! アバヨ、ガキ共!!




最後にその言葉がネギたちの頭の中に響いた。





















「・・・・・・・ここは・・・・・」


次の瞬間ネギたちの目に映ったのは見慣れた景色だった。


「エヴァちゃんの家・・・・・ってことは!」


「うむ、拙者らは戻ってきたようでござる」


「た・・・・助かった~~、いや~~とんでもない経験したね! ああ~
やばかった!」


「ハルナ~、そんな気楽に言わないでよ~」


見慣れた風景に、自分達の無事を確認し、全員手を叩き合って無事を喜び合っていた。

だが、一人足りない気がした。


「おい、さっきの変な男は!」


千雨の言葉を聞いて、全員慌てて周りを見渡した。

だがこの場には自分達しか居なかった。


するとネギがあることに気付いた。それは引きちぎられたコアドリルが元の状態で自分の首からぶら下がっており、カシオペアも元のひびが入った状態のままになっているのである。


それは何も無かったことを意味していた。


「・・・・・夢・・・・だったのでしょうか?」


「いや、拙者らも全員覚えているでござる・・・・・」


「私もアル・・・・シモンさんのアニキをちゃんと見たアル・・・・・」


だが彼女達は全員覚えていた。自分達が絶望に押しつぶされそうになった時に、たしかにあの男を見たことを。


そしてネギはコアドリルをもう一度確認した。


「一つになって生き続ける・・・・それは・・・・こういうことだったんですね・・・・・」


カミナという男はたしかに自分達の前に現れた。それは事実である。ネギにはなんとなくそう思えた。


そして顔を上げた。


「行きましょう! これを・・・・これを返しに行かなくちゃ・・・・」


「・・・・・いいのね、・・・・ネギ・・・・」


アスナの問いにネギは頷いた。それは超のやることに反抗しようという意味でもあった。

ネギが迷っていた理由もたしかに納得できる部分もある。それは魔法使いとして生きる者はそうなのかもしれない。

だが、ネギは魔法使いではなく教師として超を止めると言ったのである。


「世界を変えるかもしれない行為、・・・しかしシモンさんと超さん、どちらが正しいのか正しくないのかを判断して行動するのは無理だと分りました。だってシモンさんと超さんは別々の人間です・・・・シモンさんがカミナさんではないように・・・・・」


道は無限に広がっている。

だから思想も無限にある。

そしてそれはどこまでも続いている。正解を探すなど無理な話である。

シモンと超の考えもその無限の中の二つである。だからネギはその二つとは違う別の道を選んだ。そしてその答えにはどうやら全員が納得してくれたようである。


「たしかに・・・・シモンさんと超さんを仲直りさせるのなら、早く会いに行かなくては!」


刹那の言葉に全員が頷き動こうとした。

するとエヴァの家の扉が開き、タカミチが顔を出した。


「ここにいたのか・・・・探したよ、ネギ君」


「タカミチ・・・・」


「今すぐ来てくれ、超君のことで・・・・「わかってるよ」・・・・ネギ君?」


タカミチが全てを言い終わる前にネギは口を挟んだ。その強い目にタカミチは一瞬と惑ってしまった。


「必ず・・・・・超さんを止め・・・・ううん、僕達の明日を掴んで見せるよ!」


するとネギだけではなく、アスナたちも強い決意を秘めた目をしていることにタカミチは気付いた。

だが、今はそのことを問いただしている暇はない。タカミチは黙ってネギたちを学園長室まで連れて行った。


ネギはコアドリルを握り締めたままタカミチに言われたとおり、学園長室まで走った。
最終更新:2011年05月10日 15:04
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