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50-3

シモンの頭の中の精神世界。

すると自分一人だけの暗闇の世界に一匹の悪魔が降り立った。

悪魔の羽と尻尾を生やし、サングラスをつけた悪魔は高らかと笑いながらシモンに向かって叫んだ。


[がっはっは! 悩んでるみたいじゃねえか、ええ~? シモン!]


(ア・・・アニキ!)


[バカヤロウ! 俺はアニキじゃねえ! 言ってみりゃあデビルカミナ様だッ!]


(やっぱ滅茶苦茶だ!?)


シモンの頭の中で一匹の悪魔が囁いた。


[にしてんもだ! 情けねえ~ぞ~、シモン! 男が女に退いてどうすんだ!]


(うっ・・・・でも・・・俺にはニアが・・・・)


[バカヤロウ!! 据え膳食わねえのは男失格! 不能屈折のダメ漢! いい女が向こうから迫ってきてんだ! ありがたくもらっちまえ!]


(で、でも俺にはニアがいる! そんなこと断じて出来ない! それに木乃香は真剣なんだよ・・・・だったら俺も場の雰囲気とかそんなもので応えるわけには・・・・・)


だがそんなシモンを「やれやれ」と言った感じでデビルカミナはため息をついた。


[っか~~、おめえってやつはよ~。いいかシモン、・・・愛といい女は別腹だ! ちょいちょいっと、やっとくのも経験だ! こんなおいしい場面は滅多にねえぞ! ]


(なな・・・なんだよそれー!?)


とんでもない滅茶苦茶な誘惑を囁くデビルに狼狽するシモン、

しかしその時だった。暗闇の世界に一筋の光が差し込んだ。


[うおっ!? この光は・・・・天使の光!?]


デビルカミナとシモンだけの精神世界に一人の天使が舞い降りた。

暗闇に包まれた世界に光をてらし白い翼を羽ばたかせる者、それは昔の出会った時のニアだった。


(ニ、ニニニ・・・ニア~~~!?)


懐かしい少女時代の二アの姿、すると天使はニコッとシモンに微笑んだ。


[ごきげんよう。私はエンジェルニアです]


(エンジェル・・・・でもニアなら納得だ・・・・)


思わず精神世界で泣きそうになるシモン。するとエンジェルニアはとても温かい笑みを送ってくれた。


[シモン、・・・シモンはアニキさんじゃない。シモンはシモンの思ったとおりにすればいいと思います]


(俺の・・・・思ったとおりに・・・・・)


同じようなことを昔本人に言われたような気がした。それはシモンにとっては生涯を通じて重要な言葉だった。

だが、その感動を遮るように悪魔は口を挟んできた。


[おうおうおう! 黙って聞いてりゃ言ってくれるじゃねえか! 俺はシモンの心に問いかけてんじゃねえ! 俺様が説いてるのは男としての常識だ!]


[いいえ、違います! シモンの常識を決めるのはシモンなのです! 周りが決めた常識など打ち破るのがシモンなのです!]


すると頭の中で天使と悪魔が喧嘩を始めた。当事者でありながらシモンはそれをハラハラしながら眺めていた。


すると天使はビシッと悪魔に向かって指を指した。


[デビルさん、アナタは間違っています! この子が真剣ならシモンはそれを真剣に考えて応えるべきなのです!]


[何言ってやがる! やりてえもんはやりてえ! それが漢ってもんだ! 漢をなんだと思ってやがる! 俺たちのドリルは女の都合どおりに出来ちゃいねえんだよ!]


デビルも一歩も退かずに指を天に向かって指した。

両者の意見は未だに纏まらない。そこで天使と悪魔はようやくシモンへ振り向き。


[もういい! シモン、お前が決めろ!]


[もういいです! シモン、アナタが決めるのです!!]


(結局それか~~!?)


再び頭を悩ませるシモン、現実世界では刻一刻と木乃香の唇が迫ってくる。


[がっはっは! 天使のお許しも出たんだ、怖いものわねえ! ほらシモン、いただいちまえ!!]


(ななな、何ガンメンを奪うときみたいなノリで言ってるんだよ~~)


悪魔が高らかに笑う。

すると天使があることに気付いた。


[あっ、でもこの状況は・・・なんて言えばいいのでしょう・・・]


(ニア?)


[シモンは私が好きで・・・私もシモンのことが大好きで・・・でもこの子もシモンのことが好きで・・・・これは・・・・]


(・・・・ニア?)


首を傾げるニア、すると疑問の答えに気付き、シモンにビシッと指を指した。


[そうです! これは浮気です!]


(なッッッA○×B□△D~~~~~~!?!?)


それは最強の一撃だった・・・・・・。


プクッと頬を膨らめせる昔の二アは可愛いなと思いながらも、純粋なその言葉はシモンの心に大きなダメージを与えた。



「シモンさん!?」


「ハッ!? ・・・・ゴ・・・ゴメン、少し意識が飛んでて・・・・・・」


天使の一言により、シモンは一瞬で現実に引き戻されてしまった。目の前には心配そうに顔を覗きこむ木乃香。

すると木乃香はさっきの続きを求めるかのように再び目を瞑り顔を近づけてきた。

だが今は先程と違ってシモンも冷静になれた。シモンは木乃香の両肩を掴み遠ざけた。そしてハニカンだ笑みを木乃香に送った。


「ゴメンな、・・・今日のところは・・・俺とニアの勝ちだ」


「――っ!」


「そうだ・・・・お前が真剣だからこそ・・・・まだまだまだまだ、揺るげないんだ・・・・」


そう言っていつものように笑うシモン。それが今のシモンの答えだった。すると木乃香もようやく肩の力を抜いてシモンに気の抜けた笑みを送った。


「せやろな・・・・やっぱこれ以上の背伸びはまだ早いか~・・・・」


苦笑しながらモジモジする木乃香。告白した時以上の勇気と気合を使用したため、落ち着いた途端に自身の行動が恥ずかしくなってきた。


「木乃香・・・・・・・ホントにゴメン・・・・今日のことといい・・・今といい・・・俺は本当に最低なことをしちまった・・・・」


「ううん、・・・シモンさんが真剣にウチの気持ちを考えてくれた・・・・・それだけで満足や・・・・・」


「今日のところは」とあとで付け足して木乃香はウインクした。その言葉がシモンの心に響き、シモンは少し考えたあと、ある決意をした。


「木乃香・・・・今日はこれ以上は無理だ・・・・でも・・・・今度からはもう少し・・・お前と向き合ってみようと思う・・・」


「えっ?」


木乃香は慌ててシモンを見た。そこにあるのは真剣なシモンの表情だった。


「正直俺は・・・ニアが全てだった・・・だからお前の7年後のプロポーズとかあまり考えていなかった・・・・」


それは今まで考えられなかったことだった。


「俺は一回元の世界に帰ってニアに会いに行く。・・・・でもそれからは・・・・・ニアがどうのこうのじゃない、俺が近衛木乃香をどう思っているのか、もう少しお前と向き合って考えることにするよ・・・・・」


「シモンさん・・・・」


「だからと言って、お前を好きになるとは限らない。それに木乃香だって今後他の男を好きに・・・「それは絶対あらへん!」・・・・・でも・・・・やっぱり未来はどうなるのか分からない・・・・、でも今度からはニアを理由にしたりはしない。・・・・それでも・・・いいかな?」


木乃香は拒む理由など無い。それは大きな前進であった。「俺がニアを好きでいる限り、他の誰かを好きになることは無い」と言っていたシモンにようやく少しだけ近づけたのである。可能性がゼロでは無くなったのである。それは大きな成果だった。これで少なくとも土俵の上に立つことが出来たのである。ならば後は自分をもっとシモンに知ってもらうだけである。


「今日は俺も楽しかったよ・・・。木乃香と一緒にいて・・・・楽しかった・・・・」


その言葉を聞いて木乃香はシモンに向かって満面の笑みで頷いた。


「シモンさん・・・・ありがとな・・・・」


涙が出そうになった。一度はあきらめた恋だったが、ようやく少しだけ前進できたのである。未だに片思いではあるが、木乃香はそれだけでうれしかった。


「う~ん、よしっ! ホンマは今からロマンチックなイベントが多いんやけど、今日は大人しく引き下がることにするわ~」


「そうか、・・・そうだな・・・明日も色々あるからな・・・・お互いにな」


「・・・超さんのことなん?」


「まあな、・・・木乃香には悪いけど最終日はアイツとの予定が入ってるからな~」


「む~、それやっぱうらやましいわ~、ええな~超さん」


互いに冗談めいた言葉で笑いあい、シモンは木乃香に背を向けた。


「それじゃあ、・・・・・また明日」


「ん! 必ずネギ君たちと一緒にシモンさんに会いに行くからな~」


こうして学園祭二日目が終わろうとしていた。

あきらめずに突き進んだ少女の想いが少しだけ前に進んだ日だった。

教会への帰路の途中、泣きながら走るアスナとすれ違ったが声を掛けそびれた。恐らく彼女の想いは届かなかったのだろう。しかし自分が何もしなくてもアスナも、そしてたくさんの仲間がいるのだから心配は要らないだろうと思い、アスナの背中を見送った。

後は明日を迎えるだけである。少なくともこの時はそう思っていた。



しかし超は待ってはいなかった。



間もなく本格的な大決戦が始まることに、まだシモンは気づいていなかった。
最終更新:2011年05月11日 00:47
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