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58-俺のこと、嫌いになったか?

第五十八話 俺のこと、嫌いになったか? 投稿者:兄貴 投稿日:09/02/08-16:06 No.3833
シモンと超は自分達を囲んだネギたちの一点を目指して走り出す。

いくら武装して自分達を囲んでいるとはいえ、一部の者が持っている武器は人体に影響の無い対ロボット用の魔法具でしかない。


「悪いが退場してもらうヨ!」


超は特殊弾の束をズラリと並べ、一点に集中放火する。

一箇所を崩し、一気に駆け抜ける作戦である。


「ってうおおい、私かよ!?」


標的は千雨の場所だった。

アーティファクトの能力は不明だが、素人の上に図書館探検で鍛えられ上げ、意外に逞しいのどかや夕映やハルナたちよりも劣ると判断した。

シモンと超は話し合ったわけではない。しかし両者の考えは一致して、千雨に向かって走り出す。


「おお~っと、そうはさせないよ、お二人さん!」


千雨の直ぐ隣にいるハルナが逸早く動き出した。既に用意していたアーティファクト、一軒ただの落書き帳に見える物に、高速のペンの速度で何かを書き出し、それをシモンたちに向けた。


「落書帝国(インペリウム・グラフィケース)!! 出でよ!! 囮カモ君大行進!!」


「ムッ!?」


千雨に向けて放った弾丸だが、突如ハルナの落書き帳から飛び出したカモの大群が弾丸を遮り誘爆した。


「さっきの戦いで見切ったよ! この弾丸は着弾前に何かにブツけて誘爆させるのが最善策!!」


「読みはいいが俺っちは釈然としないような・・・」


目の前で自分の大量の分身体が黒い渦に飲み込まれるのを少し納得しないような目で見ているカモ。


「シモンさん、今ネ!!」


「ああ、分ってる! ドリルの刃先は丸めとくから勘弁しろよ!」


攻撃が防がれた超だが、焦る様子は無い。むしろ黒い渦で視界を遮るのが目的だった。そして隣にいるシモンがドリルを地面に突き刺した。


(下からの大量のドリルの攻撃だ、これをぶっ放した隙に・・・)


それは超とシモンの連携攻撃だった。

だが、簡単には成功しなかった。


「皆さん、シモンさんが地面から沢山のドリルを出します! 直ぐに後ろに飛んでください!!」


「なにっ!? くっ、スパイラルガーデン!!」


シモンが攻撃を繰り出す前にのどかの声が聞こえた。

その手に持っているのは読唇術のアーティファクトの本だった。

その声を聞いたネギたちは直ぐに一歩下がった。すると地中から無数のドリルが顔を出した。


「よっし、サスガ本屋ちゃん!!」


空振りに終わったシモンの攻撃。

のどかがいる限り心の中で思ったことは読まれてしまう。のどか自身に戦闘能力は無いものの、これだけの仲間と共にいると存分に威力が発揮された。


(こうして俺が悩んでいることも読まれてる・・・これじゃあ作戦の立てようが無い・・・)


全て筒抜けになってしまうのどかの能力をどう対処すべきか考えようとするが、その隙は与えられない。


「ん!?」


上空から研ぎ澄まされた殺気を感じた。

その殺気は自分に狙いを定めている。

上を見上げるとそこには、タカミチがポケットに手を入れながらシモンを見ていた。


「豪殺・居合い拳!!」


のどかの指示により一旦間合いをネギたちが広げたため、気兼ねなくタカミチは渾身の力を拳に込めて、一撃を振り下ろす。

シモンにシールドを張る暇は無い。

文字通り一撃必殺の技が襲い掛かる。

しかし、


「させないヨ! その男を倒すのは、この私ネ!!」


超がさせなかった。

背中に装備しているカシオペアを起動させ、擬似時間停止、絶対回避能力を同時に発動させ、シモンの身を救い出した。


「間一髪ネ・・・」


寸前で回避した超とシモン、だが一息つく間は与えられない。


「超、後ろだッ!?」


「エッ?」


攻撃を避けた瞬間、超の背後に襲い掛かる人影があった。

それはネギだった。

拳に魔力を纏い、高速で超の間合いを詰める。

超が気付いた時には遅い。ネギは超の背中にあるものを目掛けて一直線に拳を貫く。


「雷華崩拳!!」


ネギが狙った物、それは超の強化服の背中の窪みに装備されているカシオペアだった。

ネギの拳の着弾と共にガラスが割れるような音が響いた。


「しまっ、カシオペアを!?」


「よっし!」


「これで、キサマもその力を易々と使えまい!」


「覚悟しなさい!!」


超と何度か戦い、ネギたちも超の力の正体がカシオペアにあることに気付いた。しかしネギのカシオペアが既に壊れている以上、対抗するには超のカシオペアも破壊するしかない。

たとえ最強タッグが相手だろうとネギたちは己の能力をフルに使えば、カシオペアの一つを破壊することは出来た。

そして間を空けずに今度は刹那とアスナの二人が飛び掛る。


(まずい!? 壊れてはいないが、確実に傷が入っている。 このままでは後数回の使用が限度・・・)


自分の切り札とも言うべきカシオペアのダメージ、それは超に迷いを与えた。


(くっ、後数回ならここで使用するわけには・・・。こんな事なら予備を持ってくれば良かったネ・・・)


ここで刹那たちの攻撃を交わすためにカシオペアを使ってもいいが、シモンとの戦いの前に使いきるような真似はしたくなかった。


「させねえよ!!」


今度はシモンが超を守った。

右手に螺旋槍、左手にブーメランを持ち、アスナと刹那の攻撃を止める。だが、刹那はそれを見て大声を上げる。


「今です! ネギ先生! 高畑先生!」


シモンの両手はアスナと刹那に押さえられている。その隙にタカミチとネギが同時にシモンに向かっていった。


「シモンさん!?」


慌てて駆け寄ろうとする超、しかし・・・


「させないアル!」


蹴りが別方向から飛んできた。

放ったのは褐色肌の格闘娘、古だった。

そしてもはや問答はしない、古は魔法関係者ではないが、素の力を存分に使い、拳打を放ち超を止める。


「ぐっ、古・・・」


「超、これまでアル!!」


「くっ、・・・舐めるな!」


超がこれほど古に乱暴な言葉を使ったことは無い。それだけ超は焦っていたのかもしれない。

超は無我夢中で渾身の力を込めて古の腹部を殴る。


「うぐっ!」


素の力だとわずかに古が勝っているだろう。

しかし強化服に身を包んだ超の拳には耐えられずに勢いよく後方に古は殴り飛ばされてしまった。

しかし超が足止めを喰った間にハルナが再びアーティファクトを使い、今度は見るからに屈強そうなゴーレムを召喚する。


「確保ーーッ!」


「グッ!?・・・させるかァ!」


惜しみなく特殊弾をぶちまける超、しかしそれは再びハルナのゴーレムに阻まれてしまった。


完全に一糸乱れぬパーティのチームワーク。シモンも超も後が無い。

しかし終われる筈が無い。

シモンは塞がった両手のまま螺旋力を解放する。


「ネギ先生、シモンさんからドリルが伸びます!!」


のどかの声が一瞬早かった。瞬時にシモンからアスナたちは離れ、接近しようとしたネギたちは動きを止める。

そしてシモンは誰もいない周りに向けて包み込むオーラからドリルを伸ばす。

フルドリライズである。

だが当たらなかった。

しかしシモンはネギたちが自分から離れたのを見て直ぐに超へ向かって走り出した。


「超!」


「シモンさん!」


中心点で二人は駆け寄りあい、そして同時に背中合わせで振り向いた。


「「ふう~~~」」


互いに背中を預け合い、二人はようやく一息ついた。ネギたちも無理に攻めて来る様子はない。

シモンと超は冷静に息を整えながら口を開く。


「どうやら、成長してるのはコイツらも同じみたいだな」


「ウム、オマケにのどかさんの力でこちらのやろうとする事は筒抜け・・・想像以上ネ」


背中合わせにネギたちの力量に素直に脱帽したシモンと超。


「シモンさん、お二人が力を合わせたと言っても所詮は急造です。本当に一つになった僕たちには勝てません!」


ネギの言葉にはどこか自信が漲っていた。それは、自分達の絆は超とシモンの能力に負けていないという確証が今の攻防で掴めたのである。

それはアスナたちも同じだろう。たとえ超とシモンの二人を相手にしようともまったく引く気は無い様である。


「ったく、俺も舐められたもんだぜ・・・」


実力者の集まり、のどかの能力、更に・・・


「さっきは吹っ飛ばされたが次はそうはいかないアルよ」


先ほど激しく吹き飛ばされたはずの古が無傷でこの場に戻ってきた。

あれだけ派手に吹っ飛ばされてなぜ無事なのか? それは木乃香の力だった。

多少の怪我など、木乃香の魔力に掛かれば一瞬だった。


「攻撃が読まれて、怪我しても直ぐ直る・・・か、随分といい仲間が揃ってるな・・・ネギには」


当初は凸凹に見えていたが、意外とネギパーティのバランスが調っていることにシモンは気付いた。

これを更に鍛え上げれば相当恐ろしいチームが出来上がるのではないかと予想した。

だが、


「フム、しかし少々調子に乗りすぎたようネ・・・。決戦の前にカシオペアを傷つけられたのは少しカチンと来たヨ・・・」


常に笑っていた超の瞳が真剣な目つきに変わった。それは怒りがにじみ出ていた。

ようやく運命の日が来たのだ。

隣にいる男との決別を決める一戦をやろうと言うのに、無粋な横槍にいい加減不愉快に感じたのである。


「そう・・・だな、俺も甘かった。昨日は対等に思ってやるって言ったのに、・・・甘かった・・・」


シモンも目つきが変わった。

それは完全に本気の目である。

今までも十分本気だった。しかしやはりどこかで全力で攻撃することを遠慮していた。

だが、今のネギたちを相手にそうは言っていられなかった。

こうしている間にも仲間達が戦っているのである。

こんなところでいつまでも止まっているわけには行かなかった。


(空気が・・・変わった?)


タカミチが何かに感づいた。シモンと超、二人から溢れ出す覇気、それは別々の種類だったが、どちらも自分達に突き刺さるほどの気迫をあふれ出していた。


「ネギ先生・・・」


「はい・・・分かっています・・・」


そしてネギ、刹那たちも明らかに変わった二人の空気に鳥肌が立った。


(シモンさん・・・怖い・・・)


素人の木乃香たちも、覇気に当てられて口元が震えだした。

そしてシモンは自身のドリルやタカミチたちとの戦いで傷ついた大地を眺める。


(・・・どうせ心を読まれるなら・・・俺だってどうなるか分からないぐらいの規模でぶっ放す!)


どうせ自分の考えが読まれるなら、シモンは開き直ることにした。

たとえ先を見ることが出来てもどうしようもないほどの攻撃を繰り出す。


「超、飛べ!! 大地を壊す!」


「ウム!」


「皆さん、シモンさんが地割れを狙っています!」


「「「「えっ!?」」」」


「いくぜ、大地は全て俺の武器だ!! トロイデルバースト!!」


シモンがドリルを大地に突き刺した。

すると穴だらけの大地に皹が一瞬で広がり、一帯の大地が浮き上がったり沈んだりして巨大な地割れを引き起こした。


「ちょちょちょっ!?」


「落ち着いて! 急いでこの場から飛びのくんだ!」


たとえ攻撃内容が分っていてもこれだけはどうしようもなかった。地震を予知しても防ぐ術が無いように、シモンの起こした地割れからは逃げ出すのが精一杯だった。

だが、一瞬でシモンの攻撃を理解した超は既に動いていた。


「ホラ、隙ありネ」


「えっ・・・」


「のどか!?」


攻撃前に飛んだ超は地割れの影響を受けることは無かった。

それどころか、慌てふためくネギたちの一瞬の隙をついて、のどかの背後から特殊弾をぶつけた。


「のどかさん!?」


既に遅い。


「皆さん、ごめんなさ・・・でも、がんばってくだ・・・」


「のどかさーーーん!?」


黒い渦がのどかを包み込み、のどかの退場を表していた。


「し・・・しまっ! くっ、キサ・・・ッ!? うわあ!?」


「せっちゃん!?」


仲間がやられ激昂する刹那が超を取り押さえようとした瞬間、ブーメランが飛んできた。

辛うじて剣で防ぐものの、余りの威力に押されて刹那が後方へ弾き飛ばされる。


「本屋ちゃん!? 刹那さん!?」


「取り乱したらダメだ! のどか君も恐らく無事だ! 今は・・・えっ?」


退場したのどかと攻撃を受けた刹那に目が行き、アスナたちが目を離した僅かな間に、既にシモンはそこにいなかった。


「えっ?」


「シモンさんが・・・消えた?」


「油断大敵と言ったヨ」


「えっ・・・うあああ!?」


「アスナさん!?」


混乱が広がった。

仲間がやられたと思ったら、シモンの姿が消えた。

そのことに気を取られている隙に超が接近し、強化服に電流を流して力を溜めた拳を、アスナの腹部に放つ。

たとえ鎧に身を纏おうと、防御もとれなかったアスナは激しく吹き飛ばされる。


「三人目・・・さあ、四人目に行くヨ!」


「ネギ君、今は目の前に集中するんだ!」


「わ・・・分ってるよ!」


次々とやられる仲間だが、気を取られている暇は無い。迫り来る超にタカミチとネギは構え、警戒態勢に入る。

すると超が走りながら笑みを浮かべる。


「さすが高畑先生ネ。しかし目の前ばかり見ていると、足元に躓いてしまうヨ」


「なっ!?」


超の笑みと同時に割れた大地の下から振動が聞こえた。

削岩機のような物が音を立てて地中から地上へ飛び出そうとするような音である。


「まさか!?」


己の真下から近づく気配にタカミチが目を見開いた瞬間、地中からドリルが現われた。

それはドリルを持ったシモンだった。

一瞬姿を消したかと思われたシモンだが、地割れを起こした後、刹那にブーメランを投げつけ、その後地中に身を隠し、そのまま地中を掘り進み接近していたのである。


「そのまさかだ! 掘って砕いて地下から天まで突き抜ける! これが穴掘りシモンだ!」


「し、しまっ!?」


魔法使いではないタカミチに障壁を張ることは出来ない。

そのため自然と体が防御ではなく反撃体勢へと移った。

真下に向けての居合い拳でシモンを迎撃しようとする。

だが、シモンに拳が向けられるその僅かな間こそ、達人タカミチの唯一の隙だった。


ドリルと拳がぶつかり激しい音を立てる。

シモンを再び地下へ押し戻そうとするほどの威力である。

だが、シモンはその手の問題になるといつも以上に気張る。タカミチの居合い拳ですら正面から互角に持ち直す。

そしてその隙に超が間合いを詰める。


「させません!」


「ふっ、擬似時間停止!」


タカミチに詰め寄ろうとする超の前に立ちはだかろうとするネギだが、超はこの瞬間、残り数回しか出来ないカシオペアの能力を一度だけ使用し、ネギの横をすり抜ける。


「ぐっ、・・・これまでか・・・」


シモンに腕を封じられているタカミチに超を止める術は無い。

超は真横からタカミチに向けて特殊弾をぶつけた。


「タカミチ!?」


黒い渦がとうとう学園最強のタカミチをも包み込んだ。

この特殊弾の力を使えば、学園祭期間中ならエヴァンジェリンでも防ぐことが出来ないほどの威力を持っている。


「ネギ君、すまない。後は・・・」


さすがのタカミチもこれにはどうしようもなかった。包まれた渦に逆らうことが出来ずにそのまま姿を消した。


「そ・・・そんな!?」


「た・・・高畑先生まで!?」


「おいおい!? 急になんなんだよ!?」


そしてタカミチの退場という非常事態にネギが取り乱した僅か数秒の間に、地中から飛び出したシモンはネギに向かって手を伸ばし、螺旋力を解放した。


「超次元アンカー!」


「しまっ!?」


「遅い! 覚悟していた結果に一々取り乱して、目標を忘れたら全てが水の泡だぞ!!」


ネギが取り乱した僅かの間にシモンが作り出したアンカーがネギの体に巻きついて動きを封じる。

そしてネギを思いっきり引き寄せる。


「ネギ君!?」


そして引き寄せられこちらに体を浮かせて向かってくるネギに向かって超は渾身の力を込めて顔面に一撃を叩き込む。


「ネギ坊主、少し痛いが歯を食いしばるネ!!」


反動をつけて向かってくる無防備なネギは鈍い音を響かせながら、顔面を強打され吹っ飛ばされた。

勢いは止まることなく建物の壁に激突とし、そのまま埋まってしまった。


「そんな、ネギ君!?」 


「ちょっ、お前ら!?」


「く、よくもネギ坊主を!」


「古さん、待ってください!?」


次々と倒れる仲間達に、古は自身を抑えることが出来ずに、ガムシャラになってシモンと超に向かっていく。


「はあああああああ!!」


雄叫びを上げて渾身の力を込めてシモンに殴りかかる。

しかし・・・・


「・・・・螺旋フィールド・・・・」


シモンは一歩も動かずにその場にシールドを張った。

いかに強烈とはいえ気を纏っていない古の拳は、ロボットを倒すほどの威力があっても、シモンが張ったフィールドを破るほどには至らない。


「ぐっ」


拳が届かずに歯軋りする古。

その後ろには超がゆっくりと近づいていた。


「古さん!?」


「なっ・・・超・・・」


振り返ると後ろには弾丸を握り締めた超がいた。

そして彼女は少し悲しそうな笑みを浮かべながら、古に特殊弾を使った。


「許せ、・・・古よ・・・新世界で会おう・・・」


「ぐっ、超・・・・起きろ、ネギ坊主――!!」


黒い渦に包まれならが古は最後に少年の名を叫んだ。

そしてその叫びは届いた。


「古老師!? くっ、シモンさん! 超さん!」


「ほう、あの一撃を喰らって起き上がるか? さすがはネギ坊主ネ」


超の一撃に、膝がガクガク揺れ出すネギ。

相当のレベルでも今の超の攻撃をまともに受ければ意識を失うことは避けられない。

しかしそれでもネギは立ち上がった。生まれたての小鹿のように震えながらも、力を振り絞り、叫ぶ。


「ラス・テル・マ・スキル・マギステル・来れ虚空の雷・薙ぎ払え・雷の斧(ディオス・テユコス)!!!!」
最終更新:2011年05月11日 15:48
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