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59-俺が信じる仲間を信じる!!

第五十九話 俺が信じる仲間を信じる!! 投稿者:兄貴 投稿日:09/02/10-15:05 No.3838
ネギたちを退けた超とシモンは二人並んで走っている。


「これだけ走っても、学園側に見つからないな・・・」


「まあ、ほとんどの人数が減った上に未だに総力戦で潰しあってるからネ・・・」


これだけ学園全土を巻き込んだ戦いにもかかわらず、2000対以上いるロボットとも、学園の生徒たちともすれ違うことはない。まるで誰かが二人を戦いの舞台に誘おうとしているようである。

だが、それもそのはずだった。今の学園の生徒達は襲い掛かるロボットや、巨大なロボット同士の戦いに夢中になっているのである。

さらに二人を探そうとしている学園側の教師も既にほとんどが退場している。


「仲間が心配カ?」


少しに皮肉めいた口調で超がシモンを見る。しかしシモンは即答した。


「大丈夫だ・・・そう信じてる。俺が出来るのは心配することじゃない。皆を信じて、そして開いてくれた道を進み俺のやるべきことをする、それだけだ・・・俺が信じる仲間を信じる!!」


心配していないとはシモンは言わない。

現実の残酷さは身に染みてわかっている。しかしここで仲間を気遣うのは彼らに対する侮辱でしかない。

仲間は誰一人失いたくない。

しかし彼らの気持ちに応える為、シモンは拳を強く握り締めながら堪え、超の後を追いかける。






そしてシモンが信じる気持ちに応えようと、この場でも激しい争いが続いていた。


「魔法の射て(サギタ・マギカ)火の三矢(セリエス・イグニス)!!」


「そんな初級の呪文が通じるモノですか!! 雷鳴剣!!」


炎の矢を飛ばすシスターにジャージを着たメガネの女剣士は雷を剣に漲らせて襲い掛かる。

シャークティと刀子である。

するとシャークティは振りかぶった刀子の剣に「今だ!」と狙いを定めてロザリオを向ける。


「武装解除(エクセルマティオー)!!」


シャークティの狙いは的中した。

刀子が技を発生させるために作り出した溜めの瞬間の隙を突いて、刀子の剣を弾き飛ばした。

しかし刀子は剣を失っても構わずに向かってきた。


「ふっ、神鳴流を舐めないように! 斬空掌!!」


武器が無いことなど彼女には関係ない、気を練った両拳から空気の刃を繰り出した。

そしてその刃はシャークティの足を掠らせ、シャークティは思わず転んでしまった。


「くっ、しまった」


傷はそれほど深くない。しかし掠った足から血が滲み出し、足がしびれ出す感覚に襲われて、うまく立ち上がることが出来なかった。


「ふう、少々時間が掛かりましたがこれで終わりです」


戦っているうちに、ブチ切れモードだった刀子も時間がたつに連れて落ち着きだし、今ではちゃんと冷静に物事を判断できる思考に戻っていた。

そして足を怪我し、これ以上の戦闘はシャークティに不可能と判断し、飛ばされた刀を拾い、ゆっくりと近づいてくる。


「いくら魔法先生とはいえ、こちらは戦闘が本職なのです。ただでさえ西洋魔術師であるアナタでは剣士である私に最初から勝ち目など無かったはず。なぜこのような事を?」


自分と同じ仕事をし、常にクールで冷静な思考、そして厳しい判断力を持っているシャークティ。彼女を知る刀子だからこそ今回の行動を不可解に思った。

するとシャークティは地面に肩膝を突いたまま、刀子の言葉を否定した。


「はあ、はあ、・・・・魔法先生ではありません・・・」


「・・・はっ?」


「魔法先生ではありません・・・私は・・・・新生・・・大グレン団です!!」


まだ折れぬ闘志を瞳に漲らせ、シャークティは強い口調で返した。

だがそんなシャークティの叫びを、刀子は哀れむような瞳で見つめた。


「・・・あの男に・・・誑かされたのですか? アナタらしくもない・・・」


「・・・そんなこと・・・ありません・・・」


「だったら何故このようなバカな行為をしたのです! 魔法使いとしての誇りを忘れたのですか!」


忘れてなどはいない。

シャークティは魔法使いであることを誇りに思っている。そんなのは当たり前だった。しかし自分にはもう一つの誇りが出来たのである。それは決して譲ることの出来ない誇り。

彼女は胸元にある小さなグレン団のマークを握り締めた。


「アナタはグレン団を・・・シモンさんを知らないんです。彼と話してみてはどうですか? 彼らの大きさに触れてみてはどうですか? そして・・・彼らの魂を見れば・・・少しは私の気持ちも分ると思います」


小さく笑みを浮かべながらシャークティは己の誇りを握り締めながら話し出した。

しかし刀子はそれでもシャークティの言葉を信じられなかった。


「随分立てるじゃないですか。・・・そんなにあんな男がいいのですか? まさか白馬の王子様とでも言うのですか?」


「ふふっ、私はシスターです・・・仮に白馬の王子などが現れても・・・私は揺らいだりしません・・・・ですが、・・・」


刀子は皮肉を込めてシャークティに告げる。

するとその言葉にシャークティはクスクスと笑いながら、傷ついた足に鞭を打ちながら、ゆっくりと立ち上がった。



「天をも突く男に出会えば・・・女は嫌でも変わります」



そして立ち上がったシャークティは握り締めた手を離し、もう一度己の武器である十字架を刀子に構える。

そして恥じることなく堂々と告げる。



「お望みなら言いましょう・・・私は・・・彼のことが好きです」



それは決して本人に向かって言うことがないであろう言葉だった。彼女自身はそう決めている。

木乃香や刹那、エヴァンジェリンのようにその気持ちを惜しみなく伝える恋愛もある。しかし彼女はしない。

その気持ちを伝えることはしない、しかし最も信頼の置ける家族であり仲間として側にいる。そして寄り添いあうことはせずとも、共に同じ誇りを掲げて前へ走る。それが彼女の選んだ愛し方なのかも知れない。


「ですが・・・それと今回の事とは関係ありません」


「・・・なんですって?」


だが、シモンに対する感情を認めても、シャークティはそれだけは認めなかった。


「私は・・・魔法先生ではなく、家族を選びました・・・そして、このグレン団のマークを受け取りました。・・・私だけではありません。美空も・・・ココネも・・・豪徳寺さんたちも・・・、シモンさんの為でなく、自分の想いでこの旗の下に集ったのです!」


戦うのはシモンを好きだからではない。

キッカケはシモンだったにせよ、学園側ではなくグレン団として動くと決めたのは誰が何と言おうと否定できないシャークティ自身の答えだった。

そう、



「戦うのは、自分の意思です!! 私を誰だと思っているんですか!!」



それがシャークティの想いだった。

彼女はグレン団という誇りを守るために、こうして今戦っているのである。

愛する者のためではない。

仲間の道を作るためである。

リーダーのシモンが超鈴音にグレン団を証明するための道を邪魔させないことが、今の彼女の使命だった。

だからシャークティは負けを認めない。

誇りを傷つけられることに比べれば、足の傷などいくらでも耐えることが出来た。


「それで・・・我々が納得するとでも?」


「しないでしょう・・・ですが、私が引き下がらないことは理解していただきたい」


揺らぐことのない瞳、それを見て刀子もため息を一つついてあきらめた。


「分りました・・・では、全身全霊を込めて・・・アナタを打ち負かすことにします!!」


刀子も再び戦闘のプロの瞳に戻った。


「はああああああああああああああ」


先ほどとは比べ物にならないほどの雷が刀子の剣に集っていく。

そしてシャークティの身に突き刺さるような大気の揺れが襲い掛かる。

説得を無理だと判断した刀子は、かつての同僚であろうと、倒すべき敵と見なして全力の攻撃を放つ。

刹那の最強技と同じ。

上空へ飛び上がり、溜めた雷を一気に振り下ろす。



「神鳴流・決戦奥義!!」



シャークティには一歩も動く気配はない。

それは怪我した足では回避することが出来ないと判断したのである。

ならば刀子が技の溜めに時間を集中している間、こちらも攻撃に全ての魔力を込めて迎え撃つことを決めた。



「私も・・・全てを賭けます!!」



シャークティは手持ちのロザリオに残りの全ての魔力を込める。

これを使えばおそらく今日はこれ以上の戦闘は不可能になる。

しかし目の前の強敵を止めるため、グレン団の一員として、全てを覚悟した。


(安心してください、シモンさん。・・・私は・・・勝ちます。アナタが信じてくれる私を信じます!)


シャークティは魔力を込めたロザリオを上空に浮かばせる。その数は七つ。



「七つの星に裁かれよ・・・」



打ち上げたロザリオが上空から神々しく巨大な光で照らし、その光が一気にシャークティの合図と共に撃ち下される。



「真・雷光剣!!」



「七星剣(グラン・シャリオ)!!」



雷と七つの裁きの光がぶつかり合い、聖戦と呼ぶにふさわしいほどの神々しい交錯がこの一撃に込められていた。

刀子の巨大な雷を飲み込もうとする七つの光。それを刀子は強烈な雄叫びを上げて持ち堪えようとする。


「ぐううう・・・こんな・・・もの、はああああああああああああ!!」


雷神の如き光が四方を貫いた。

そしてその光の中から折れた刀を持った刀子が傷ついた体を労わることなく飛び出した。


「勝った! アナタの最後の魔力、堪え・・・・ッ!?」


全ての魔力を出したシャークティに戦う術などはない。

足を怪我している以上、自分から逃げられるはずもない。

ならばこの勝負は自分の勝ちだ・・・・そう刀子は思った。

しかし・・・


「バ・・・バカな・・・魔力を使い切って・・・なぜ・・・」


光の中から飛び出した刀子は驚愕した。

なぜならば自分の直ぐ目の前にシャークティの拳があるからである。

傷ついた足で、それでも歯を食いしばり、実に彼女に似つかわしくない攻撃を繰り出そうとしているのである。



「たとえ魔力が切れても、私には残っている物があります!!」



残った力を込めたシャークティの最後の拳が鈍い音を立てて刀子の顔面に直撃した。



「気合! 彼の好きな言葉です!!」



シャークティの格闘技術は刀子には遠く及ばないだろう。しかし大技を堪えたことに勝利を確信し気を緩めた刀子には避けられず、拳はピンポイントに入り、刀子の脳を揺らした。

そしてその一撃が全てを決めた。


シャークティの気合の一撃が、刀子の意識を一瞬で断ち切ったのである。


「はあ、はあ、・・・・勝った・・・」


殴り飛ばし、倒れる同僚を見下ろしながら、シャークティは自身の勝利を確信した。


「ふふ、こんなボロボロの姿・・・美空とココネには見せられませんね・・・」


勝利を手にしたものの、自身の姿にシャークティは苦笑してしまった。

そしてようやく全ての力が抜けてその場で仰向けに倒れた。

そして夕焼け空を眺めながら、拳をギュッと握り締めた。


「ですが、新生大グレン団としての初陣を勝利で飾ることが出来ました・・・。私も野蛮になったものです。・・・ですが・・・」


クスクスと笑いながら、彼女を知る者なら想像が出来ないぐらい華やかな笑みを浮かべた。

そして、誰もいないその場で呟く。



「私はシスター・・・神に仕える者・・・しかし、主よ・・・今だけ耳を塞いでください・・・」



刀子も気絶しているので、聞いているものなど誰もいないこの場で、シャークティは夕焼け空の下で仰向けに寝たまま、一言呟いた。



「好きです・・・シモンさん・・・」



その言葉は誰も聞いていなかった。

おそらくシャークティはシモンに向けてではない、自分自身に向けて言った言葉だろう。

そして一度口にした言葉をもう二度と言わないようにもう一度飲み込んで。彼女はゆっくりと立ち上がった。


まだ戦いは終わっていない。

今でも戦う仲間の下へ、彼女はゆっくりと向かった。







そして同時刻、七つの光と巨大な雷の交錯は、湖の上からも見ることが出来た。


『今のは・・・。いずれにせよあまり時間を掛けてられませんね・・・』


ラガンモドキのコクピットから茶々丸はこことは別の戦いに意識が行った。そして自身もそろそろ動き出すべきだと判断した。


だが、そうはさせまいと巨大な拳が向かってきた。


魔道グレンの拳である。ブータとエンキの二人の意思に動かされ、茶々丸に襲い掛かる。しかし・・・。


『無駄です・・・』


茶々丸は拳を避けようとはしない、むしろ軽々と片手で掴み取ってしまった。


「ぶう!?」


エンキの肩に乗るブータが思わず声を上げた。

するとスピーカーから茶々丸の淡々とした声が聞こえてきた。


『底が見えました・・・。ブータさんの螺旋力には驚きましたが、シモンさんから比べれば想定の範囲内です』


そしてグレンラガンモドキは掴み取った魔道グレンの拳をひねり取った。そして巨大なミシミシと捻れる音が響き渡る。

ブータの螺旋力を浴びてエンキはなんとか逃れようと抵抗しようとするが、想像を超えるグレンラガンモドキの力が魔道グレンの片腕を捻り取った。


「ちょっ、あの鬼みたいなロボットの腕が取れたーーーッ!?」


「茶々丸さんスッゴ!?」


「しかしどっちが本当に味方なんだ? 鬼のほうに乗っているのは田中さんだが、さっきのドリルの兄さんと仲間みたいだし、どうなってんだ?」


未だに続くロボットバトルに観客は大盛り上がりだった。しかしその戦況は明らかに傾いていた。


「ぶう!?」


「片腕損失、戦力40パーセントダウン。科学制御サレテイルタメ、再生能力ハ遅イ・・・・」


ブータに対してエンキは淡々と述べるが、言葉の内容は明らかに窮地を示していた。


『終わりです、ブータさん、そしてT-ANK-α3。最終日の最も魔力の満ちるこの時間帯ではこの兵器に勝つのは不可能です・・・』


「ぶみゅうう! ぶふッ、ぶふっ!!」


世界樹の力を使い動いているグレンラガンモドキには付け焼刃の魔道グレンでは敵わないという茶々丸の言葉。

しかしエンキの肩の上でブータはその小さな体から大きく叫んだ。

ブータが何を言っているのかは分らない。しかし茶々丸にもエンキにも、ブータが何を言いたいのかよく分った。

「あきらめない」その言葉が瞳に宿っているからである。


『・・・T-ANK-α3、アナタならこの状況、互いの戦力差から結果を導き出せるはずです・・・それでも退かないのですか?』


同じ機械として計算で導き出してしまう悲しさ、それは茶々丸もエンキも同じだった。


「ブータサンカラノエネルギー供給率、最高テンションノ状態ノ時デモ覆ラナイデショウ、・・・片腕ノ損失ガ無クテモ勝率ハ・・・・30パーセントホドデシタ」


「ブミュウ・・・」


『そうです、そしてそれがたった今ゼロになりました。・・・退いてください・・・』


茶々丸とエンキの二人の会話、それは未だに闘志を燃やすブータを悲しませるような内容だった。

こんな時シモンがいたならきっと言い返しただろう。しかし自分にはそれが出来ない。そして機械であるエンキにも言えない・・・ハズだった。


「デスガ・・・私ハリーダーニココヲ任セルト命ジラレマシタ・・・」


「!?」


『!?』


相変わらずの温かみの無い機械声、しかしその言葉にブータと茶々丸は顔を上げた。


「私ガT-ANK-α3デハナク、田中エンキデアル以上、一度決定シタコトヲキャンセルデキマセン・・・」


それは命令を忠実にこなすだけのロボットなのか、それともエンキが進化しようとする力、螺旋力を受けたゆえの変化なのか分らない。

しかしエンキの言葉には茶々丸と同じような彼自身の感情をブータは感じた。


本来ならバグである。

しかし茶々丸は理解できた。

論理的に説明することは不可能だが、彼女はエンキの言っていることが分った。


『分りました・・・ならばT-AN・・・いえ、田中エンキよ、アナタを敵として排除します』


だからこそ、手加減は無用だった。

何をしでかすか分らないグレン団である以上、茶々丸は全力でエンキを破壊することを決めた。

そしてその証として茶々丸はグレンラガンモドキの腕を変形させた。

その形こそまさしくグレン団に対する最大の皮肉かもしれない。


『アーム部分変形完了。メガドリルを改め、ギガドリル装備完了』


グレンラガンを真似た姿で巨大なドリルの形に腕を変形させた。

その姿に生徒達は大いに興奮し、「漢の魂だ!」などと騒ぎ出す。

しかしこれがただの冗談ではすまないことはエンキにもブータにも理解できた。

魔力で強化された鉄のドリルは激しい音を立てて回転し始めた。触れれば確実に磨り潰されることなど目に見えていた。


『あなた方が望んだ結果です。では・・・いきます。ギガドリルブレイク、発動!!』


シモンのようにドリルを巨大化させないものの、ただでさえ巨大なロボットの腕に装着されたドリルである。それを魔力で強化させ、助走をつけて走り出した。


「いいのか!? アレいいのか!?」


「あのロボ死ぬぞ!?」


湖の上を激しい波を立てて走り出すグレンラガンモドキ。そしてその腕に装着したドリルの回転は激しい風を巻き起こし、あたり一面に突風が吹き荒れる。

だが、エンキはインプットされた己の使命から逃げ出さなかった。


「超螺旋シールド、展開」


「ブミュウゥゥ!!」


エンキは魔道グレンの頭上で正面から向かってくるグレンラガンモドキに両手を広げて迎え撃つ。そのエンキの動作を真似して魔道グレンも片腕を伸ばし、巨大なシールドを張った。


巨大な緑色のオーラに包まれる魔道グレン。そのオーラに巨大なドリルがぶつかった。

シールドに衝突したドリルから強烈な削り音が響き渡る。だが、その行く手をシールドがたしかに防いだ。


『やりますね・・・しかし・・・時間の問題です・・・・』


ドリルが防がれはしたが、茶々丸に慌てている様子は無い。それどころか防いでいる魔道グレンのもう片方の腕に徐々に亀裂が入っている。


「超螺旋シールド・・・破損・・・展開率・・・90・・・85・・・70・・・」


いかに強大なシールドを張ろうともその衝撃を完全に防ぎきれるものではない。それどころか衝撃に耐え切れずグレンの腕が徐々に破損していく。

そして・・・


「ぶうううう!?」


ブータが悲鳴のような鳴き声を上げる。

それは共に戦うエンキの両腕にも亀裂が入っていくからである。


「展開率・・・60・・・・50・・・」


その瞬間何かが壊れた音がした。

人間が傷ついたときに出来る音ではない。これは物が壊れる時になる音である。


「展開率・・・45・・・機体田中エンキ・・・上腕部分・・・損傷・・・」


魔道グレンだけではない、エンキの鉄の腕が片方飛んだ。


「ぶひィ!?」


肩に乗るブータが徐々に焦り出し、何度も悲鳴のような鳴き声を上げる。

徐々に壊れていく仲間を助けるために、自身の奥底から気合を振り絞る。

しかし・・・


「展開率低下・・・30・・・・」


現実は残酷だった。

ブータが気合を振り絞れば振り絞るほど、衝撃が増し、その力にエンキは耐えられず、ボディの損傷が余計に早まった。


どうすればいいかブータには分らなかった。


ただ、螺旋力と共にその小さな瞳からは茶々丸とエンキには流せない、涙がとめどなく溢れ出した。


「ブータサン、今スグ飛ビ降リテ退避シテクダサイ。数秒ダケナラコノ機体デ持チ堪エマス」


計算できるからこそ分ってしまう結果。

だが、一度決めたことを止めることが出来ない矛盾。

エンキはこの場で命を終わらせるつもりである。


そんなことは出来ない。


ブータは何度も首を横に振ってその場を動こうとはしない。


だが、そうしている間にも確実にシールドは削り取られていった。


ブータの涙、そしてエンキの損傷は茶々丸の目にも入った。茶々丸はドリルを廻しながらもう一度エンキに告げる。



『・・・大量生産型とはいえ、機体が大破すればハカセでも直すことは出来ません・・・・・そのボディは限界です・・・・それでも・・・戦いますか?』



同じ同胞としての最後通告だった。

もしこの相手が人間だったなら茶々丸は命令に逆らってでも攻撃を中断しただろう。

感情が芽生え始めた彼女は時には少しだけ命令に逆らうこともある。それが茶々丸の優しさだった。

しかし、エンキには容赦しなかった。

同じ同胞だからこそ、仕える主のためにその力を使うのが彼女達の使命。それが理解できるからこそ、茶々丸は全力でエンキと戦う。

だからこそ、茶々丸の最後の警告にエンキが応じなければ、彼女は容赦なく薄くなり今にも壊れそうなシールドごと、魔道グレンとエンキを貫くつもりである。


するとエンキは己のボディの欠片飛び散る中、最後の最後までシールドを張り続け、口を開く。



「コノ状況デ発スルベキ言葉・・・新生大グレン団ノメンバーガ発スルベキ言葉ヲ検索・・・。・・・一件照合・・・」



何を思ったのかエンキは頭の中で何かを検索し始めた。


その間にサングラスまで飛んだ。


するとその下に隠れていたエンキの瞳が検索を完了し、目がチカチカ光りだした。そして茶々丸に向かって告げる。


それは気のせいだったかもしれない、エンキは機械。

言葉に変化があるはずはない。

しかしそのときのエンキの言葉はいつもより強い口調に感じた。




「検索結果・・・・田中エンキハ・・・本望デス!」




「!?」



その瞬間、エンキは力ない人形のようにバランスを崩して倒れそうになる。


そして完全にシールドが解けた。


目の前には巨大なドリルが勢いを止めることなくエンキに振り下ろされようとしている。


エンキの肩から落ちるブータには全てがスローモーションのように見えた。


数秒後、高速回転したドリルはエンキと魔道グレンを同時に粉々にしてしまう。


だが、それを止める術は無い。


零れる涙もスローだった。


しかし自分には、偽者のグレンラガンのドリルによる攻撃を防ぐことは出来ない。



新たな仲間も守ることが出来ない。



その時ブータは昔を思い出した。


それは走馬灯なのかもしれない。


しかし懐かしく・・・悲しい光景だった。


エンキが言った言葉、「本望」これと同じ言葉を似たような状況で言った男がいた。


あの男も敵だった。


千年もの間機械のように己の本能を封じ込めた男だった。しかしその男は本能を取り戻し、最後はその命を使い、自分達のために道を作ってくれた。


男は言った。



[螺旋の命の明日を作るならば、本望だ!!]



シモンも認めていた。彼も自分達の仲間だった。

そしてあの戦いで光の中へ消えていった仲間は彼だけではない。



[これが螺旋の力かよ・・・大したもんじゃねえか・・・]



そうだ・・・思い出せ、

自分達が信じたドリルは・・・大グレン団が信じた螺旋の力は目の前にある形だけ真似した紛い物ではないはずだ。


一番側で、一番多く本物をシモンの側で見てきたのだ。


本物を証明するのは誰だ? シモンか? ヨーコか? 


いや、自分にも出来るはずだ。何故なら自分もグレン団なのだ。


そして何より、同じ悲しみを何度も繰り返しはしない。


そう、あの時と同じ・・・。



[アバヨ・・・ダチ公・・・]



何度も繰り返してなるものか!



「ブータ・・・サン・・・」



エンキは見た。倒れる寸前に確かに見た。



『ブータさん・・・こ・・・この光は・・・』



茶々丸も見た。

ブータの体を覆う螺旋力の光が徐々に変化し始めた。



「ブゥゥゥゥッ、ブミュウゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」



それが学園祭の起こしたもう一つの奇跡だった。


ネギたちがカミナと出会ったように、一匹の小さな生命が、その小さな体では収まりきらないほどの想いと魂を爆発させ、その身を進化させた。



「・・・もう、誰も死なせたりはしない!!」



この場で人の言葉を発することが出来るのは茶々丸とエンキだけだった。

しかし叫んだのは彼らではない。

叫んだのはブータを包み込んだ緑色の螺旋力の光の中からである。

光の中から現れた者、男? 女? いや、それ以前に人間ですらない。

だが、その者が誰なのかは直ぐに分った。



『これは一体・・・ブータさんが・・・・人間型に・・・』



目を疑いたくなるような光景だった。いつもシモンの肩に乗っていた小さな生物が、人間の姿へと変わったのである。


茶々丸も発する言葉が見つからず、答えが出なかった。


ブータにも螺旋力がある。

それは突然変異か、シモンに感化されたために生まれた力かは謎のままである。

だが、個体の成長エネルギーを全て螺旋力に変換していたため、本来大型のブタモグラが小さいままだったのである。

しかし今、成長エネルギーを種の進化エネルギーに変換したのである。

いや、その説明は無粋である。

ブータが進化した理由、それは仲間を死なせたくないという魂の叫びだった。



「下がれ、茶々丸! 偽りのグレンラガン! ・・・エンキを・・・仲間を・・・もう二度と失ったりはしない!!」



全身を毛に覆われて人型となったブータは勇ましくその両腕を思いっきり前へ伸ばし、己の螺旋力を全開に解放する。


その力が魔道グレンに再び息を取り戻し、寸前のところでドリルをシールドで妨げた。




シモンでもないヨーコでもない。



グレン団最古のメンバーがついにその魂を叫ぶ!!






後書き。


美空が熱いと言われて嬉しいです。ありがとうございます。

最初は楓と美空のどっちを勝たせるか迷いました。素の力ではアレなので姉妹合体までさせて実力を均衡にしようとしたのですが、武道大会のようなイベントではなく真剣勝負の場での敗北をさせ、九尾さんの仰るとおり、美空には今後這い上がって大きく成長してほしいと願いあのようにしました。

そして今回も色々やっちまいましたが・・・シャークティの宇宙魔法には勘弁してください。シャークティの技が原作に無い上に思いつかなかったので、シリアスな場で同じ雑誌系列のマンガで私が一番好きなキャラクターの魔法を使わせちまいました。

本物はネギより強いかも・・・


そしてブータ! こいつはある意味一番扱いづらいかもしれません。

シモンの相棒なのに「ブウ」としか言いませんし、たまに出さないとどこにいるのか分からなくなります。

しかしそれでもブータはやはり必須のキャラクターです。

とにかく気合で表現していきます!!
最終更新:2011年05月11日 15:48
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