第六十二話 俺はまだ全部を見せちゃいない!! 投稿者:兄貴 投稿日:09/02/17-13:05 No.3849
「儀式が・・・結界の復活と共に消滅しました・・・・。すいません・・・私が千雨さんに気付いていれば・・・」
飛行船の上でハカセは全ての終わりを告げた。
自分達の戦いを終わらせたのはグレン団ではない。目の前に居る少年達だった。
心の弱音を晒し、計画が台無しになった超は苦笑いを浮かべながらため息をついた。
「ふう、・・・数年の歳月を込めて・・・全てを費やし・・・激痛に耐えながら・・・いざ実行した結果がこれカ? 呆気ないネ・・・」
儀式が消滅し魔方陣も光を失った。
それは本当に超の手が全てなくなったことを意味していた。
「グレン団以外に敗れて・・・無様を晒して・・・本当に私は一体何がしたかったんだという話ネ・・・」
己を自嘲しながら、戦意を失った超は体中の力を抜いた。
力なくうな垂れる超に、ネギは一歩近づいた。
「超さん・・・アナタは本当に・・・何がしたかったんですか?」
「・・・? 何を言っている・・・私はシモンさんを倒して・・・「それです!」・・・」
「・・・ネギ?」
突如口を開いたネギに超もシモンもハカセも顔を向ける。
「僕・・・思ったんです。超さんはもっとズルくすれば、簡単に勝てたんじゃないですか?」
「・・・な・・・に?」
「シモンさんも言ってましたよね。超さんは黙っていれば出来たのに、あえて自分達に挑戦して来たって」
「・・・ああ・・・」
「過去を変えたいだけなら・・・この時代じゃなくても良かったはずです。それなのに超さんがこの時代を選んだ理由・・・それって・・・もしかしたら・・・」
それはシモンも武道大会の日に超に言ったことだった。
超の本当の望み、それはグレン団の真の物語を知りたかったのではないか、ということである。
超の困難を突破していくグレン団の姿を知ることこそ、超がこの時代を選んだ本当の理由なのだと思っていた。
当然超は意地になって納得しようとしなかった。
「ふっ、まさかネギ坊主もシモンさんのように、私がグレン団を知りたかったから、とでも言うつもりカ?」
超もネギの言おうとしていることを予想して、先に否定した。
先ほど弱みを見せたが、どうしても丸分りな意地を張ってしまった。
だがしかし、ネギは首を傾げた。
「・・・何を言っているんですか?」
「・・・はっ?」
「そうじゃありません、確かにそれもあるかもしれませんが、あなたがここに来た本当の理由・・・それは・・・さっき超さんが自分で言ったじゃないですか・・・」
ネギはチラッとシモンを見た。
「「「!?」」」
それだけでシモンもハカセも超も、ネギの考えが理解できた。
ネギはグレン団と超の因縁を全く知らない。だが、超のシモンに対する素直になれない姿を見て、超の心の奥底の本心を予測した。
「俺は・・・超が・・・俺達グレン団の真の姿を知りたいのかと・・・ずっと思っていた・・・・」
意地になって認めないが、それこそ超の本心だと思っていた。
ハカセも時折見せる超の切ない表情から、同じ考えを持っていた。
だが、ネギが言った先ほどの超の言葉を思い出す。
そして、全てに辿りついた。
「・・・ふふ・・・ハハハハハ、そうか・・・そういうことだたカ・・・」
超も理解し、思わず笑ってしまった。
少年の純粋な心に、打ち壊された意地という心の壁の中に潜んでいた自分の本当の気持ちが、ようやく分ったのだ。
「そうか・・・グレン団とか・・・過去を変えて世界を救うとか・・・そんな大仰ではない・・・私の願いは・・・」
自分の時代に既にいない男。
伝説と歪んだ物語を超の時代に残した男。
たしかにそれが原因で世界は変わってしまったかもしれない。
その歪みを正すために、過去に来た。そしてグレン団と戦い、失望した物語に見切りをつけて、前へ進む。
それが全てだと思っていた。
だが、それだけではない。
少女の願いは、もっと純粋で小さな願いだった。
「そうだ・・・シモンさん・・・・私は・・・ただ・・・」
涙を拭い、笑みを超は見せた。
それは、策略でも作り笑いでもなんでもない、
「私はただ・・・アナタに会いたかっただけなのかもしれない・・・」
「超・・・」
それこそが、超鈴音が抱いた本当の願いだったのかもしれない。
「私が作った壁なんかを突破して・・・無理を通して道理を蹴飛ばしてアナタに・・・会い来て欲しかった・・・」
「バカヤロウ・・・俺みたいに穴を掘るしか脳の無い奴には・・・伝えてくんなきゃ分んねえよ・・・」
「そうネ、フフフ、私・・・バカだたヨ」
「そうだな・・・ハハハ、俺達はバカだったよ、・・・答えは道の途中に落ちてたのに・・・二人共気付かなかった」
超とシモンは互いに笑った。
笑わずにいられなかった。
余りにも単純すぎる答え。十歳の少年にすら分ってしまったことに、なぜ自分達は今まで気付けなかったのかと、笑うしかなかった。
純粋におかしそうに笑い合う二人、その光景はどこか温かく、地上の生徒達も思わず微笑んでしまった。
そしてボロボロになりながらも世界樹を防衛していた者達は、消えた鬼神に驚いていた。
「お、おい・・・って・・・アレ?」
「き・・・消えた?」
「おい、あのデッカイのが消えたぞ!!」
それはギリギリのところだった。
最後の防衛ラインで粘った男達の粘り勝だった。
千雨の活躍により見事学園結界が復活し、あともう少しのところで世界樹広場にたどり着くかと思えた鬼神は姿を消した。
「やったぜ!!」
「勝ったぞ! 約束どおり俺達はやったぞ!!」
「ヨーコさんとの約束も守ったし文句なしだ!!」
「やったね、兄ちゃんたち!」
「おうよ! ゆーな☆キッド、お前もよくやったぜ!!
消失した鬼神にグレン団たちは手を叩き互いを称えあった。
その中には最後の最後まで一緒に粘った裕奈たちもいた。
千雨のお陰でもあるが、彼らはあたかも自分達が倒したかのように喜び合っている。
「やったね、みんな!」
「スゴカッタ!」
「オ見事デス」
「ぶう!!」
「はい、感心させられました」
「本当よ! 約束も守ったみたいだしね!」
豪徳寺たちが声のした方向に振り返る。するとそこには自分達の先輩がいた。
「うおおおお! 美空ちゃんたち! エンキも、無事だったのか!」
「ヨーーコさん! 約束守ったぜ!」
勝利、引き分け、敗北、結果はそれぞれだった。しかし誰もが同じような表情をして、己たちの成すべきことをしたことに、喜びを分かち合っていた。
『皆さんご覧ください! 巨大ロボが皆さんの活躍により消失しました!! 敵の火星ロボ軍団はあらかた壊滅!! ・・・ということは・・・』
「「「「・・・ということは・・・?」」」」
朝倉がこの光景を見て、学園中に勝利宣言をしようとした。生徒達もそれを待っている。
しかし、その言葉は阻まれた。
「ちょっと待って!!」
『うおっ!? どうしたのアスナ~? せっかく今・・・「なに・・・アレ」・・・?』
「アスナさん?」
「アレよアレ!! 向こうから・・・何か・・・近づいてくる・・・」
「えっ?」
アスナは恐る恐る、ある方角に向けて指を指した。
その先にあるのは湖、
そう、たった今消えた最後の鬼神が居た方向である。アスナの言葉に生徒達は振り返る。
するとそこには・・・・
「は・・・・はあああああああ!?」
「なっ・・・・なんだありゃあ!?」
数人の生徒が気付いて叫ぶと、全員が振り向き、その視線の先にあるものに驚愕の声を上げる。
「ちょっ、どういうことよ!? もう終わりじゃないの!?」
「き、聞いてないよーー!?」
「バカナ・・・アレハ・・・」
「ぶ、ぶう!?」
「嘘・・・ブータたちが・・・・倒したのに・・・」
近づいてくる巨大な物体。
生徒達も、グレン団も己の目を疑った。
己の目に映るものが信じられなかった。
「ちょっ、どういうことよ!?」
「・・・こ・・・こんなことが・・・・」
「せっ・・・せっちゃん・・・」
「おいおい、なんの裏ボスだ?」
アスナも、刹那も木乃香も千雨も、自分達の勝利を確信していた矢先だった。
突如現れた巨大なロボットが、一歩一歩、世界樹広場に、不気味に近づいてきていた。
その情報は直ぐに上空に居るハカセに届いた。
「なっ、これは!? ちゃ、・・・茶々丸?」
「どうしたハカセ?」
「その・・・敗退したはずの・・・グレンラガンの反応が・・・せ、世界樹広場の目前に現れました!!」
「「「なっ!?」」」
「どういうことだよ、ハカセ!? あの偽者はブータとエンキが倒したはずじゃ・・・」
「で、ですが・・・・本当に。・・・茶々丸! 応答してください! 茶々丸!」
ハカセの言葉に超もシモンも、ネギすらも度肝を抜かれた。
敗退し、偽りの夢として湖に沈んだはずの巨大ロボットが、真っ直ぐに、この飛行船の丁度真下に姿を現したのである。
ハカセは慌てて回線を茶々丸に繋いだ。
だが、応答は返ってこない。
不審に思ったハカセは真下に現れた巨大ロボットの反応を己のパソコンを使い、詳しく調べてみた。するとそこには衝撃の事実が記されていた。
「う、・・・うそ・・・」
「どうした、ハカセ?」
「大変です、超さん! この巨大ロボット・・・ありえないほど強大な魔力を溜め込んでいます・・・世界樹の大発光の魔力が・・・」
「バカな! それでは動力がオーバーロードしてしまうから、リミッターを着けた筈ヨ!」
「それが・・・リミッターが・・・外れています・・・・」
「なっ!?」
「機体の制限を・・・全て解除されています・・・。学園祭の世界樹の魔力を今現在も無尽蔵に吸収し続けています・・・」
ハカセの発言に取り乱す超。二人の会話はよく分らないが、シモンもネギも尋常でない事態を察した。
「おい、茶々丸! 応答しろ! こちら超、応答しろ!」
「ダメです! さっきから応答がありません・・・・」
「まさか・・・オーバーロードした機体に影響されて茶々丸の自我が乱されたのか?」
「おい! 俺にも分るように説明してくれ!」
「ぼ、僕にもお願いします・・・」
先ほどから自分達を置いてきぼりに二人でパソコンの画面を見ながら、通信機を口元において叫ぶ超とハカセ、業を煮やしたシモンが口を挟むと、超は少し考えながら、今の状況を説明していく。
「・・・簡単に言うと・・・魔力を吸収しすぎて・・・茶々丸が・・・いや、偽りのグレンラガンが暴走してしまい、それにより、同じ機械である茶々丸まで影響を受けた・・・ということヨ・・・」
「暴走って・・・暴走してないじゃないか!」
シモンの言うとおり、画面に映る巨大ロボットは世界樹広場から少しはなれた所で立ち往生していて、今は動く気配は無い。
そのことが少し不気味に思えたが、シモンが超から通信機をとり、茶々丸に直接話しかけた。
「おい、茶々丸! 聞こえるか? シモンだ・・・何か言ってくれ!」
しかし声はすぐには返ってこなかった。
超やハカセが声をかけても無反応だったのだ。それは当然のこと・・・かに思えた。
だが声は返ってきた。
感情が芽生え始めた茶々丸とは思えないぐらい無機質な声が返ってきた。
『ターゲットヨリ通信・・・コレヨリ・・・ターゲットノ捜索・・・及ビ、排除・・・・』
「「「「!?」」」」
それが、シモンたちの心を大きく揺るがせた。
その口から発せられた言葉が、ただの冗談であって欲しかった。
それは、茶々丸という少女の体を借りた別の存在に思えた。
「そ・・・そんな・・・」
「シ・・・シモンさんが・・・ターゲット?」
ハカセとネギが恐る恐るシモンを見る。
混乱した二人には、今の茶々丸の言葉の真意がまったく分らなかったのである。
だが、シモンと超は理解してしまった。
「アイツ・・・俺と戦うために・・・・」
「私の協力者だったために・・・・」
グレンラガンモドキの巨大メカに飲み込まれた茶々丸という名の少女。今の彼女は本来のメカと同じように、ただ与えられた役割を忠実に果たすだけの存在になってしまった。
己の意思を持たずに、感情を持たずにただただ実行する存在。
そして悲しいことに、茶々丸という人格は飲み込まれても、与えられた役割は覚えていた。
それはグレン団と戦うことである。
「こんな・・・・所に・・・いたのか・・・」
「・・・ウム」
シモンと超は拳を強く握り締め、パソコンの画面に映る巨大ロボを悲しい目で見つめた。
「俺達の・・・信念を通すという名目で行なわれた意地の張り合いによる犠牲者が・・・」
「こんな所に・・・いた・・・カ・・・」
全ては自分達から始まった。
先に喧嘩を売ったのは超。
それを真正面から受けたのはシモン。
どちらが悪いかどうかはこのさい、どうでもいい。何故なら重要なのはそこではないからである。
重要なのは、自分達の行なった行為に、とうとう犠牲者が出てしまったのである。
それが、シモンと超の心を締め付けた。
だが・・・
「いや・・・まだだ!」
そう、まだ終わっていない。
「そうネ、ここであきらめていいはずが無いヨ」
被害者は出たかもしれない。だが、まだ犠牲となったわけではない。
茶々丸はこうしてまだ生きているのである。
だから諦めるわけには行かなかった。そしてそのことの意味を超も分っている。
「超・・・俺達のしてきたことに対するケジメをつけなくちゃいけない・・・」
「ウム、・・・茶々丸を・・・助けるヨ」
二人の考えは、一点のブレも無く同じだった。グレン団も、火星軍団も関係ない。
己のしてきたことに対する尻拭い。
そして単純に自分達の友を救うという想いが、超とシモンの意地を捨てさせ、一つになった。
「シモンさん! ・・・でも・・・どうやって? リミッターを外したあの巨大ロボの出力は・・・その・・・」
「・・・問題ないさ」
「・・・・ウム」
「えっ!?」
想像を遥かに上回る巨大ロボの数値に不安を拭えないハカセだったが、その不安をシモンと超は一蹴した。
そして同じように少し不安気な表情のネギを見た。
「ネギが教えてくれた・・・」
「ウム、私達が力を合わせれば・・・・」
「「どんな困難をも乗り越えられる!!」」
最終更新:2011年05月11日 15:51