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63-意地なんか、この際ぶっ壊しちまえ!!

第六十三 意地なんか、この際ぶっ壊しちまえ!! 投稿者:兄貴 投稿日:09/02/18-22:01 No.3851
学園祭最後の奇跡は次元を超えた世界にも影響を及ぼしていた。


カミナシティ、新政府の総司令官の一室。

そのテーブルに山済みになっている大量の書類。人が見えなくなるほど高く山済みにされた書類の一つ一つを細かくチェックしていき、ハンコを押していく男がいる。


その男こそ、この世界で最も多忙な男、ロシウ・アダイだった。


「ふう、平和は戻ったものの、問題は山済みだ。市民の苦情から他惑星からの条約の提携、だがどれも怠るわけにいかない」


かつて膨大な政務から、シモンですら音を上げるほど忙しかったものが、アンチスパイラルを倒し、全宇宙を開放したことにより、更にその量が増した。

だがロシウは一度も音を上げることなくその一つ一つを真剣に片付けていく。


「それにしてもヨーコさんがいなくなって数週間か・・・、シモンさんはまだ見つからないのか。あの二人なら心配は要らないだろうが・・・」


少し手を休めてロシウはかけがえのない仲間を想い出した。

姿を消した英雄を、もう一人の英雄が追いかけた。

どちらが欠けても、今の世界の平和はありえなかった。

ロシウは忙殺の合間に、何度も仲間のことを考えていた。


すると総司令室の扉が開いた。扉の方へ顔を向けると、顔が見えなくなるほどの書類を抱えた女性が入ってきた。


「総司令、これも追加です」


「ありがとう、キノン。テーブルに置いておいてくれ」


ロシウは追加された書類の量に驚くことも無く、むしろ当然のような反応を返した。

だがその反応が逆にキノンを心配にさせた。


「総司令、その・・・少し休まれてはどうですか?」


「大丈夫さ、君やギンブレーが協力してくれるお陰で随分楽になっている。本当に、感謝しているよ」


「それでもです! その・・・総司令の・・・いえ、ロシウの代わりはいないんだから。 あまり・・・私を心配させないで・・・」


少し顔を赤らめながらロシウの体調をキノンは心から心配する。キノンはただの部下として上司を心配しているわけではない、その気持ちはロシウもよく理解している。

だが、シモンたちに託された今日を守り、明日へと繋げるためには、多少の無茶をしてでも乗り切らなければならないと思っていた。


「約束・・・したんです。シモンさんたちの掘った穴は僕が整備すると。だから・・・あの人に誇れるように、僕は今手を休めるわけにはいかないんだ」


「でも、・・・だからって・・・余り無茶を」


「・・・みんなが言っていた。シモンさんのドリルを信じていたからこそ無茶が出来た。だから僕も同じだ、君がいてくれるからこそ無茶が出来るんだよ・・・キノン」


ロシウがそう言って俯くキノンの肩に優しく手を置いた。


「・・・ロシウ・・・」


そしてキノンはロシウの言葉と信頼が何よりうれしくて目が潤んでしまった。

互いを信頼し合う二人、そこには確かな絆の強さを感じた。

そしてどちらが言葉を発することなくゆっくりと互いの距離を詰めていく。

キノンは顔を赤くしながら目を瞑り、少し背伸びをする。

ロシウもそれに応えようとゆっくりとキノンの唇に近づいていき、やがて二人の影が重なる・・・・

と思っていたが、狙い済ましたかのようなタイミングで、部屋に訪問者が現れた。



「総司令、緊急事態です! 今すぐ来てください!!」


「「うわああ!?」」


声に反応してロシウとキノンの二人は慌てて離れて誤魔化そうとするが、既にモロバレだった。


「あっ・・・・。お邪魔・・・でしたか・・・」


入ってきたのはロシウの片腕でもあり、キノンと同様に多大な信頼を寄せている人物、ギンブレーだった。

いつも冷静沈着である彼だが、この時の慌てぶりは尋常ではなかった。

だが、部屋に入って直ぐに同僚と上司のラブシーンを目撃してしまい、一瞬頭から報告が飛んでしまった。


「い・・・いや、そんなことはないよ、ギンブレー」


「そそそ、そうです。それより緊急事態とは何のことです?」


顔を真っ赤にしながらも自然に振舞おうとする二人だが、明らかに不自然だった。

もしこれが今でなかったら、規律にうるさいギンブレーはゴチャゴチャ文句を言うのだが、今日だけは状況が違った。

ギンブレーも慌ててそのことを思い出した。


「そうです、とにかく急いで来て下さい!!」


「「?」」


珍しく慌てているギンブレーの反応に少し胸騒ぎを覚えたが、ロシウとキノンは黙って後に続いた。

そしてデカイ政府の基地を走り回り、ついに目的地と思われる場所に到着した。


「ここ・・・ですか?」


その場所があまりにも予想外でロシウにはまだ現状が把握できなかった。

そしてその目的地の扉の入り口には政府のパイロットのギミーとダリーがとても取り乱したような表情で立っていた。


「ギミー、ダリー、一体何が?」


「た・・・・大変です、総司令! あの・・・あの・・・そのえっと・・・急にすごい光がして・・・その・・」


「ギミー落ち着いて! 私が説明するから」


慌てふためき言いたいことが上手く言えないギミーに代わり、ダリーが説明することにした。

だがその彼女ですら、その態度に落ち着きが無かった。


「その、私達が扉の前に来た時・・・物凄い光が扉の中からあふれ出したんです。それで・・・慌てて中に入ったら・・・」


ダリーはそう言って扉を空ける。

この扉の中は大きな格納庫になっている。政府の戦闘兵器グラパールなどが収容されている、政府の地下格納庫である。


そして・・・アレが保管されている場所でもある。



扉が開いて中の光景を見た。


すると・・・・



「えっ? ・・・・・・これは・・・・・どういうことだ?」



「う、・・・・・嘘?」


その光景にロシウは絶句するしかなかった。同じくキノンもそうである。


「ギミー・・・・これは・・・どういうことだ?」


「俺にも分らないですよ! ただ・・・ただ・・・すごい光があったと思ったら・・・・こうなっていて・・・」


「分らないではない! 何があったんだ!!!」


ロシウは体中の震えが止まらなかった。

己の目を疑いたかった。

夢だと思いたかった。

だがそれは夢ではなく現実だった。

その部屋にグラパールの他に保管されていた全人類の希望がとんでもないことになっていた。













「グレンラガンが・・・・・・・消えた?」












そして次元は再び麻帆良に戻る。




大量の魔法螺旋弾に飛び込もうとしたシモンに多くの者からの悲鳴が聞こえた。

だが、それが今は完全に無くなり、世界樹広場は信じられないほど静まり返っていた。

誰もが現在のこの状況をどう判断して良いのか分らなかった。


ただ、飛び込もうとしたシモンの側から突如空間から切れ目が入り、その切れ目から現れた巨大な物体に、どう反応していいか分からなかった。


その現れた巨大な物体はシモンを庇うように仁王立ちして、魔法螺旋弾全てを受けた。


だが、その巨大な物体は決して揺らぐことなく、弾丸を浴びた今でも何事も無かったかのように立っている。



「・・・・な・・・・なに・・・アレ?」



「あの・・・巨大ロボと同じ姿をしたロボットが・・・現れた?」



アスナと刹那が口を開き、それが口火となって周りもガヤガヤと騒ぎ出した。



『これは・・・一体どういうことでしょう! 裏ボスとの真のファイナルバトル、そこに・・・そこにもう一体の似たようなロボットが現れました! しかし・・・これは一体どういうことなのでしょう!』



最早司会の朝倉の聞かされていた予定など大幅に狂っていた。マイクで喋りながらも彼女もこの状況の説明を求めている。


だがその答えは誰からも返ってこない。


なぜなら答えを知っている人間ですら驚いているのである。


そしてこの中で誰よりも呆然としているのは超鈴音である。


突如空間を切り裂いて現れたその存在を、夢なのか、幻なのか、判断できなくなっていた。



「兄貴・・・アレって・・・まさか・・・」



「シモン・・・さん?」



現れた巨大な物体の後ろでペタンと座り込み、見上げているシモンに向かって美空とシャークティが呟く。


するとその隣にいるヨーコが突如笑い出し、ブータがとても嬉しそうに鳴いた。


誰もが答えが分からぬ中、ようやくシモンが立ち上がり、その物体に声を掛けた。



「まったく・・・・、コアドリルがあるからってこんな所まで来やがって・・・、ロシウが今頃慌ててるんじゃねえか?」



シモンは苦笑しながら点滅するコアドリルを握り締めながら呟く。



「でも・・・・よく来たな・・・・」



そして次の瞬間は満面の笑顔でその物体に叫んだ。


見間違うはずなどは無い。


この堂々とした面構え、燃える炎のように赤い機体。


シモンは現れた物体を見た瞬間に本物だと一瞬で理解した。


それほどまでにシモンとコイツの絆は厚かった。




「グレンラガン!!!!」




呼ばれてグレンラガンの目が開き、輝き出した。


空間を越えて現れたのはグレンラガン。


説明などもはや不要。


現れた理由などはどうでもいい。


今のシモンはそれほどの興奮状態だったのだ。


宇宙の希望がついに次元を超えてここ、麻帆良の地に光臨したのである。


そしてグレンラガンは自動でラガンのコクピットの口をパカッと開けた。それはまるでシモンをそこへ誘おうとしているようだった。


「まったく、まだ俺に付き合ってくれるのか? だったら、遠慮なく付き合ってもらうぜ!」


誘いを拒む理由など何も無い。

シモンは一瞬の迷いもなくラガンへ飛び乗ろうと飛んだ。そしてそこにシモンの他にも興奮を抑えられない奴が現れた。


「ぶうううううううう!!」


「ブータ! お前も、やっぱり我慢できないか?」


「ぶみゅう!!」


「当然!!」と言わんばかりの声でブータが鳴いた。その理由は聞くまでも無い。シモンは力強く頷いて、ブータを肩に乗せてラガンに乗り込んだ。


「懐かしいな・・・ココも」


「ぶう」


そこにあるのは一年前まで自分が何度も使い続けてきた、自分の指定席、そして操縦桿のレバー、そして螺旋ゲージを示すメーター。何一つ昔と代わっていなかった。


ここに居れば、どんな時でも落ち着いた。ここが自分の居場所だと思っていた。


だが、ここに居てこれほど落ち着かない時など今まで無かった。それほどまで今のシモンの心臓は高鳴っていた。


シモンは大きく深呼吸をして、コアドリルを首から外した。



「よし・・・それじゃあ、ギミーには悪いが、せっかくだ・・・・久々行くぜ!!」



「ぶう!」



コアドリルの本当の使い方、それは全てこうするためのものである。

シモンは大きく振りかぶって、コアドリルが本来あるべき場所へ向けて捻じ込んだ。



「コアドリル・スピンオン!!」



その瞬間コクピットにある螺旋ゲージのメーターが満タンになった。興奮と螺旋力が合わさって振り切れそうなほど溢れている。

その興奮を保ったまま、シモンは懐かしい操縦桿のレバーに手を掛けた。



『超巨大エネルギー反応、ターゲットヲ機体内ニ確認』



同じフォルムの巨大兵器が現れたというのに茶々丸に関してはやけに冷静だった。モドキを勢いよく走らせて襲い掛かってくる。


だが、今のシモンに一点の不安もない。



『教えてやるぜ偽者! ・・・・これが本物だァァーーー!!』



走り出してモドキはグレンラガン目掛けて殴りかかる。

その拳を避けることなくシモンは操縦桿を握り、同じように拳を繰り出した。

モドキとグレンラガンの拳が宙で交差して、互いの顔面にその巨大な拳をめり込ませた。



「「「「「うおおおお! クロスカウンターだ!!」」」」」



「なんだかよくわかんねえけどスゲエ!! なんだよこのロボットバトル!!」



「スゲーー! 流石リーダーだぜッ!!」



「シモンさん、スゴッ!!」



大歓声が沸き起こった。


突如現れたもう一体のロボット。そのフォルムは両者とてもよく似ている。だが所々で微妙な違いがあるために、生徒達も自分達がさっきまで戦っていたロボットと、突如現れ、ドリルを持った男が乗り込んだロボットとの区別がついた。


するとドリルを持った方のロボットの殴った拳が相打ちかと思えた攻防を制した。



『分るか? 拳ってのはただ握れば良いって物じゃねえ! その拳の中に何が詰まってるのかが重要なんだよ!』



ロボットの癖に、まるで歯を食いしばっているような表情で拳を繰り出したグレンラガンのコクピットから声が聞こえる。シモンの声である。



『茶々丸! 以前まであった筈のテメエの気合が拳に詰まってねえ!』



想いと叫びすら力になるグレンラガンは、モドキを遥か後方まで殴り飛ばした。

その巨体からは信じられないほど軽やかに宙を舞い、モドキは再び湖の湖畔まで殴り飛ばされてしまった。


そして湖に落下したモドキはその重量を勢いよく叩き付け、湖に巨大な水しぶきを上げた。



「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」」



最早言葉など無意味だった。表現の仕様が無かったからである。

生徒達はまるで怪獣映画を見ているような幼い子供のような反応を全員が出した。

ただ純粋に「スゴイ」その想いで埋め尽くされていた。


そして巨大ロボを殴り飛ばして悠然と立つグレンラガンの足元に見知った顔が続々と集まってきた。そしてその誰もが同じような表情で同じ言葉を口にした。



「「「「「「「「シモンさん(兄貴)!! これは一体どういうこと!?!?」」」」」」」」



敵も味方も最早忘れてしまった。

ネギ、アスナ、木乃香、刹那、夕映、ハルナ、千雨、シャークティ、美空、ココネ、そして超までもが揃ってグレンラガンを見上げながら大声で叫んだ。

するとラガンの蓋が開き、中からシモンが顔を出した。そしてまるで子供がオモチャを自慢するような表情で告げる。



「コイツが・・・グレンラガンだ!!」



「「「「「「「「!?」」」」」」」」



偽者でも幻でもない。シモンとかつて銀河を駆け巡った人類の希望。

それが今ここにいる。

ネギたちはどう反応していいか分らなかった。


「これが・・・これがグレンラガン・・・兄貴の・・・兄貴たちの・・・」


「グレン・・・ラガン」


「まさか・・・この目で見ることが出来るとは・・・」


美空とココネ、そしてシャークティは感動に打ち震えながら機体に手を触れた。

自分達グレン団の象徴とも言うべきメカ、シモンからは話の中でしか聞かされていない。

それにようやく出会えたのである。

それを確かめるかのように機体に頬擦りをして感触を味わっていた。


「いや、ちょっと待てよ! これロボットだろ? どうやって来たんだよ!?」


ありえない状況に説明を求める千雨、しかし説明など不可能だった。シモンですら理論的には分かっていないのである。

ただ理解しているだけである。


「コアドリルを通じて・・・俺達の気合と絆が、次元を超えて結びついたんだ」


それだけでシモンは十分だった。説明の単語に気合さえ入れば、何だって納得が出来る。


「でも・・・だからって・・・」


「そうよ・・・スゴイなんてモンじゃないわよ」


「はい・・・体の芯から震えてしまいそうです。この・・・威風堂々とした立ち姿」


「これが・・・シモンさんたちのグレンラガンなんやな・・・」


ネギ、アスナ、刹那、木乃香もあまりにも滅茶苦茶で常識外れだが、信じるしかないこの状況に体中の血が沸きあがるほどの興奮をしていた。

それは夕映、ハルナ、楓も同じである。


「ふふ・・・、理論は最早求めません・・・・ただ・・・感動しています」


「そうそう! く~っ、のどか達にも見せてやりたかったね~」


「ウム、拙者もメカには疎いのだが、これはメカとは思えぬほどの壮観さでござる」


彼女達も美空たちのようにグレンラガンの周囲をグルッと周り、落ち着き無く観察している。


そして・・・


「ふふ・・・ハハ・・・もう、私はどうなっているのか分からないヨ・・・」


「・・・超?」


その場で腰を抜かして超は下から上までじっくりと眺めた。

御伽噺で聞かされていた伝説のメカ、それが自分の目の前に現れているのである。

感動も驚きも、全ての感情が大きく乱れてしまい、ただ小さく苦笑しながら眺めている。



「こんな・・・・こんなことが・・・・起こるとは・・・夢だと疑いたくもなる・・・」



力なく地べたに座り込む超に、シモンは上から感想を聞く。


「それで、どう見える?」


「ふっ、・・・私が作ったものとは相当違うネ・・・いや、それは形だけの話ではない・・・この・・・燃え滾るような赤く染まった全身が・・・今にも沸騰しそうネ・・・」


これのためにかつては夢を見た。心の底から憧れた。

そして失望した。

だが失望するまでに、本物を一度も見ていなかった彼女にとって、この出会いは衝撃以外の何ものでもなかった。


超の様子に暫く静まり返るネギたち。

ネギたちはシモンと超のグレンラガンに纏わる因縁は何も知らない。だから、なぜ茶々丸の乗っているロボットがグレンラガンに似ているのかは分からない。

だが、今の二人から流れる空気に只ならぬ物を感じた。



「おい! 殴り飛ばされたロボットが起き上がったぞ!」



広場に居る生徒の声を聞いて、湖へ振り返る。するとたしかに殴り飛ばされたモドキが立ち上がってコッチを見ている。

シモンはその光景を見て、再び戦いの瞳に戻った。


「ネギ・・・もう大丈夫だ! あとは見ていてくれ!」


「シモンさん・・・でも・・・」


「大丈夫・・・お前が信じる俺を信じろ! あのデカ物に風穴開けて、中からお前の生徒を必ず助けてみせる! 俺を誰だと思っている!」


ぐっと親指を上げて突き出した。

その表情を見せるシモンを信じられなかったことなど一度も無い。

ネギは大きく頷いてシモンの言う通りにした。

そして・・・


「まったく、相変わらず無茶苦茶ね、コイツは」


「ヨーコさん!」


「無茶苦茶すぎるのが当たり前で、驚くことにも慣れたわ」


ゆっくりと背後からヨーコが現れた。

彼女もまた、次元を超えてやってきたグレンラガンの無茶苦茶ぶりに呆れていた。


「シモン、私がサポートするわ。グレンのコクピットを開けて!」


それは当然の流れだった。


ヨーコはシモンと同様にガンメン乗りの経験もあるうえにグレンラガンにも乗ったことがある。

たしかにシモン一人で操縦も可能だが、パイロットが二人居るに越したことは無い。


だからヨーコがサポートに乗るのは当たり前だった。


しかし・・・



「いや、ヨーコ。お前はここで見ていてくれ」



「えっ?」



まさか断られるとはヨーコは思っていなかった。思わず声を出して首を傾げてしまった。

するとシモンは、周りを見渡して告げる。



「グレンの席には・・・別の奴を招待したい」



「えっ? 何言ってんのよ?」



シモンの言葉の意味が分からずにヨーコが尋ねると、シモンはある一人の少女を見て衝撃の言葉を告げる。








「乗ってみるか、超?」








「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」








「「「「「「「「はああああああああああああッ!?」」」」」」」」






一斉にネギたちが声を上げた。

そして当の超はシモンの言葉を一瞬理解出来ずに固まってしまった。



「シ・・・シモンさん・・・・・・何を・・・・・・言っているネ?」



言葉の意味は分かった。

しかし信じられなかった。

シモンの告げた言葉に、言われた超が誰よりも信じられなかった。

するとシモンはフッと笑って、呆然とする超に告げる。



「約束しただろ、本物を見せてやるってな。そして本物を知るなら二度とない機会だ。お前をグレンの特等席に招待するぜ!!」



「グ、グレンラガンの・・・グレンに・・・わ、私が・・・カ?」



「ああ! 全ての決着をつけるには相応しい席だ。意地なんか、この際ぶっ壊しちまえ!!」



震えが止まらなかった。

全身に行き渡る血の全てが沸騰した。

超は夢なら覚めるなと、心の中で何度も呟いた。

人がこれほど興奮出来る生物だとは思っていなかった。

超の心臓はそれほどまでに高鳴っていた。


(なんという皮肉な・・・・・・そして私の体も・・・・なんと単純で正直な・・・。夢が・・・こんな形で・・・)



超の戸惑う姿にヨーコは苦笑しながら少し意地悪な顔を浮かべた。


「ほら、どうするの? 乗るの、乗らないの? もし乗らないなら、やっぱり私が・・・」


「ちょっ、待つネ!?」


「ん~~~~?」


「うっ・・・・・・ふう・・・分かった、もう降参ネ・・・」


ヨーコの言葉を慌てて超は遮る。

その慌てた姿をヨーコに笑われてしまい、超は顔が赤くなってしまった。

だが、もうここまで来て意地を張るわけにはいかない。なぜならシモンの言うとおり、素直になるなら、恐らくこれが最後のチャンスだろう。

そして、あれほどまでに頑なに抱えていた己の意地を捨て去り、決意した超は最高の笑顔で立ち上がった。



「乗せてもらうヨ、シモンさん!!」



拳を握り締め、超は力強くシモンを見上げる。



「だったら覚悟しろよ! ハンパじゃねえぞ、コイツは!」



「当たり前ネ! ハンパであることなど許さない!!」



昨日の意地など超はアッサリ捨て去った。

それほどまでの価値が目の前にある。

グレンのコクピットの口が開き、超は真っ先にそのコクピットへと飛んだ。

そして中には操縦桿のレバー、ラガンの突き刺さったドリルが天井を貫通している。

そしてたった一つの座席。


「ここで・・・英雄カミナは・・・そしてロシウ・アダイ、そして獣人ヴィラルへと受け継がれていったコクピットが・・・・」


偉大なる先人達に受け継がれていった席が今自分の前にある。

超は感動に打ち震えながら静かに席に座った。

そして手をカタカタと震わせながらしっかりと両腕の操縦桿のレバーを握った。


『よし、準備はいいか?』


『・・・ウム!!』


モニターに上に居るシモンの姿が映し出された。


『超、こいつの操縦の仕方だが・・・『大丈夫』・・・・えっ?』


『問題ないヨ!! ようは気合って事ネ!!』


『ははっ、それが分かっていれば100点満点だ! それじゃあいくぜ!!』


シモンの合図とともにグレンラガンの背中のブースターに火がつき、夜の闇を飛び、真っ直ぐ湖の方向へ向かった。

その飛び去った後姿を眺めながら、取り残された者達は口を開いた。


「ええな~、ウチも乗りたかったわ~」


「僕も乗りたかったです・・・」


「私もだよ~、ってゆうか私はグレン団なんだし~」


「ココネも乗りタカッタ・・・・」


ネギたちが超を羨ましく思いながらグレンラガンを眺めていると、後ろからヨーコに頭を撫でられた。


「これぐらい許してやりなさい。ずっと意地を張っていた女の子がようやく素直になったんだから、これぐらいのご褒美は上げないとね」


「ご褒美・・・ですか?」


「そうよ。それにしてもネギ、アンタもやるじゃない」


「えっ?」


クシャクシャとネギの頭を撫でながらヨーコは笑う。その微笑に顔が真っ赤になるネギに、ヨーコは告げる。


「アンタの決意したとおり、喧嘩した二人は見事仲良くなったわ!」


「「「「「あっ!」」」」」


アスナたちも言われて気付いた。たしかに自分達の選んだ道、二人を必ず仲直りさせるという目的は見事に達せられていた。



「この勝負・・・本当に勝ったのはアンタ達かもね♪」



夜空を飛ぶグレンラガンを眺めながら、ヨーコはクスクスと笑っていた。









空を飛ぶグレンラガンの出力はたしかにハンパではない。その強力な圧力に超は圧倒されそうになったが、心の奥底から湧き上がるゾクゾクとした感情が大きく超を満たした。

自分は紛れも無くグレンラガンに乗っている。

そしてグレンのコクピットに乗り、大グレン団のリーダー、穴掘りシモンと共に戦うのである。

これに興奮せずにどうするのだ。

失望したことなどもうとっくに忘れた。

未来も過去も魔法も、今の超の頭には入っていない。

だがそれで良かった。それで良いのだ。

素直になった彼女は幼い時に目を輝かせてグレンラガンの物語を聞いていたとき以上の興奮をしていた。

するとモニターが開いた。シモンである。


『乗り心地はどうだ?』


『最高ヨ!』


迷わず即答する超に苦笑しながらシモンは告げる。


『今頃カミナシティは大慌てだ。これ以上心配かけないように早いうちに持って帰ってやらないといけない・・・』


『そうか・・・なら・・・』


突如グレンラガンが動きを止めた。

そして真下には湖と超が作ったグレンラガンモドキがいた。

こうして本物を知ると無様なものだと自嘲してしまう。


『ターゲット接近。機体ノ強化、出力、共ニMAX』


全身を魔力で覆ったモドキの姿は確かに美しく力強いかもしれない。だが、どれほど出力を強化されようと、どれほどの魔力を溜め込もうとも、超もシモンも同じ気持ちだった。

油断でもない、慢心でもない、それは確信だった。


「負ける気がしない」それが二人の心を満たしていた。


そしてゆっくりとグレンラガンは湖へと降り立った。


ここなら建物も人もいない。思う存分手加減無しでやれる。


『ではシモンさん、これを元の世界に早く返すためには・・・』


『ああ、一気に行く! だから・・・アレをやるぞ!!』


その言葉を聞いて超はうれしそうに頷いた。


『ふっ、望むところ!!』


二人が操縦桿を握り締め、心を一つにする。



シモンが叫ぶ。




『曲がって歪んで捻れた夢をも無理を通して殴って戻す!!』




超が続く。




『昨日の失望この手で潰し、通して見せよう、この無理を!!』




そして二人の心が重なりあの言葉を叫ぶ。






『『宿命合体グレンラガン!! 俺(私)を誰だと思ってやがる!!!!』』






その叫びと同時に世界樹の光が今年最高の輝きを発した。

22年に一度の大発光の光ですらグレンラガンの登場シーンの一部にしてしまう。

相変わらずの土派手な登場だ。

だが、その姿はダテじゃない。

叫んだ超とシモンの声は麻帆良全体に響き渡り、その姿に大喝采が上がる。

学園どころか、この世界の果てまで轟きそうな魂の波動がグレンラガンから溢れ出す。


そしてついに、学園祭最後の戦いが幕を開けた。


超の失望した夢と相対し、ついに決着が着く!






後書き。


やっちまったァァ!! 申し訳ありません! しかし細かいことは気にするな!!



やはり最後のシメはグレンラガンだ!・・・・とうとうやっちまった・・・。


シモンと超の決着は最初から戦いの勝ち負けで決める気はありませんでした。そのためにあえて一度、武道大会の裏側で戦わせました。

シモンにとっての勝利とは、超の心の壁を突き破ることでした。計画を中止にさせるだけなら原作のネギと大差ありませんし、ネギたちが絡めなくなるので、わざわざ回りくどいことをしたのは、超に本物を見せてやるためでした。

前回で超も茶々丸も倒しても良かったのですが、この際、細かいことを無視して、こうすることにより茶々丸だけでなく、本物のグレンラガンで超の心とも決着をつけさせるつもりでした。

今までネギたちに嫉妬していた超にはこれぐらいのご褒美を上げたかったのです。

思えばヨーコの役目は全てここに繋がっていたのです。今まではシモンの真の理解者として登場させました。そして女性としてのカリスマを出すことにより、木乃香や刹那、エヴァだけに留まらず、ネギが惚れたことにより、のどかやアスナといったネギパーティの女性が同じ女として目標と出来る人物としての役目を負わせました。

しかし実は彼女の一番の仕事はコアドリルをカミナシティから持ってくるという役割だったのです。それにより、コアドリルを通してカミナとネギたちの出会い、そして本物のグレンラガンの登場。それがヘルマン戦からの考えでした。


まあ、色々と理由がありますが、一番の理由は作者がヴィラルとシモンのシーンをやりたかっただけです。



まあ、やはり偽者出したからには本物を出したいなと・・・・。
最終更新:2011年05月11日 15:52
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