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66-後日談・懺悔突破

第六十六話 後日談・懺悔突破 投稿者:兄貴 投稿日:09/03/02-23:18 No.3864
シモンたちが元の世界に帰り、その直ぐ後に、超鈴音も己の明日へと向かった。

ネギやアスナたちクラスメートは少し渋っていた。

この世界の人間として生きていかないか? 一緒に卒業しないか? などと言って超を説得しようとした。

それはとても超には魅力的な提案だった。しかし受け継がれた背中に燃えるドクロのマークがそれを許さない。

だから超は迷いの無い瞳で言った。


『私の望みは叶った。だからこそ私も私の生きるべき世界へ行く』


笑っていた。

それは心の底からの笑みだった。


『私もアバヨ、ダチ公とは言わない。無限に広がる道の果てで、いつの日かまた会おう!』


次の瞬間彼女の体は光に包まれた。

超は言っていた。自分の望みは全て叶ったと。

超の望みが何だったのかは分からない。今にして思えば超とシモンたちの因縁は何だったのかは結局分からずじまいだった。

だがしかしネギたちは彼女の再会を誓う言葉に頷いた。

クラスメートの旅立ちを、シモンたちが去った同じ場所で超も旅立ちの場所として選んだ。

そして彼女はシモンたちと同様に天に輝く星の元で、輝きの中へと消えていった。


それが学園祭最後の夜の出来事だった。


そして激闘の末、ようやく掴み取ったありふれた日常が返って来た。それこそが皆が必死で掴み取った明日だった。

だがようやく掴み取った今日に居ない人物も居る。


シモン、ヨーコ、ブータ、そして超鈴音である。


クラスメートは当然超が居なくなったことに寂しさを感じ、最初はしんみりしていた。

しかしそれが彼女の望むことではないと思い、何も変わらない今日として、いつも通りの大騒ぎをした。

それでいい。それこそが苦労して掴み取った光景なのである。

だが、戦いの当事者達はそう簡単にはいかなかった。

教師のネギはクラスメートの元気さに苦笑しながらも、どこか元気が無かった。それほどまでに消えたもの達は彼の中でウエイトを占めていた。

それはネギだけではない。

世界を左右する喧嘩に関わった女たちは、別れの時は笑顔だったものの、どこか元気が無いのは一目瞭然だった。

これはそんなネギや彼女達の心を励ました、一人のグレン団の話だった。





(やーれやれ、やっぱ皆元気だね~。でもそれ以外は微妙な人たちもいるね~)



それは兄との別れの場にいた者たちを指していた。

美空はその場にいたネギやアスナたちを見て、ため息をついた。

騒ぎ出す生徒たちを苦笑しながら出席簿に目を落とすネギ。そこにはメッセージが書かれていた。


[立ち止まるな、前へと進め。君が求めたモノは得られるだろう 再見 超]


それは超からの言葉だった。いつの間に書かれていたかは知らないが、それを見ながらネギは窓の外を見て黄昏る。


(超さん・・・)


(おー、ネギ君凛々しいねぇ。10歳とは思えねー。青空見上げて何を思ってんだか)


空を見上げるネギに対して美空が思っていると、その様子を見て、反応している者たちが、美空以外にいた。

何か不機嫌そうなアスナ。信頼の笑みを浮かべる刹那、しかし少しすると寂しそうにネギと同じように窓の外の空を見上げている。

明らかに心配しているのどか、そして表情には出さないが、夕映もそうだろう。


(まあ、私も人のこと言えないんだけどね~、あ~あ、兄貴はいつ帰ってくるんだろ)


自身も落ち着くと、やはり心にポッカリ穴が開いたような寂しさに襲われた。

再会は約束したものの、明確に帰ってくる日は告げられていない。

シモンのことだから、相当時間が立っても何食わぬ顔で現れて、細かいことは気にするな、なんて言って笑いそうだ。

それはそれでいいだろう。しかしそれでも今の寂しさは中々埋められなかった。ココネや顔には出さないがシャークティも同じだろう。

木乃香に関しては事あるごとに、美空にシモンはまだ帰ってこないのかと聞いてくる始末だ。


(はあ~、兄貴~、早く帰ってきてよ~)


再び深くため息をつく美空。その様子を亜子に見られて彼女は心配そうに尋ねてきた。


「美空、元気無いけど大丈夫?」


「え? そう? いや何でもないヨ?」


「でも美空、今年の学祭はスゴかったよねー。なんかファンクラブも出来たみたいだし、シモンさんたちと凄い大活躍してたしさー」


「いや~、私も生まれ変わったというか、進化したと言うか」


アハハ、と笑いながら照れる美空。すると亜子も美空と同じようにため息をついた。


「亜子、何か悩みごと?」


「え? いやー、そゆー訳ちゃうんけど・・・」


「アレだったらウチの教会に懺悔でもしに来るといーよ。ウチの神父さん、評判いいから」


「懺悔かー。ちょっと違うかな。考えとくわ」


「みそらー! ざんげって何ですかー?」


「え? 何ってゆっても・・・」


突如話しに入ってきた鳴滝姉妹にどう説明したらいいのか分からない美空に代わり、風香がネギに尋ねた。


「ネギ先生、ざんげって何ーー?」


「・・・・・・」


しかし未だに空を見上げてボーっとするネギは気づかぬまま返事をしなかった。


「先生聞いてるのー!?」


「あ? ハ、ハイ! えー、懺悔というのは『告解』とも言ってですね・・・自分の罪を悔い改めて、それを神父様に聞いて貰って、神様のお赦しを貰うことなんです」


「えー! じゃあ、どんなイタズラしても許してくれるですか!?」


「神様、太っ腹ー!」


「いえ、そーゆー考え方は、ちょっとマズいのでは・・・」


随分と捻じ曲がって広がってしまう懺悔のシステムだったが、いつも通りの光景なので美空は口を挟まないことにした。

しかし懺悔というものに興味を抱いたものが少なからずいたことに、美空は気づかなかった。



そして勉学にまったく身が入らないまま、放課後を向かえた。

美空はいつも通り、シスターの服に身を包み、ココネと一緒に教会の掃除を始めた。


「な~んかあれだよね~、兄貴が来てからの常識はずれの出来事に慣れすぎて、なんつうか気が抜けちゃったよね~」


雑巾を絞りながら美空は愚痴を言う。


「当たり前の日常か~、でも兄貴と一緒にいたのが私の中で日常化しちゃって、今が日常に感じないや・・・あ~あつまんないっすね~」


「美空・・・」


ぶつぶつと文句を言う美空だが、不意に小さな手に服の裾を掴まれた。


「大丈夫だってココネ。強くなろうって約束は忘れてないよ♪ 今度兄貴が来たときにはこっちがビックリさせてやろうね♪」


心配無いよとウインクをする美空。ココネもその言葉に頷いた。

しかしココネも寂しがっていることには変わらない。特にココネに関しては自分のように賑やかでいつもバカ騒ぎなクラスメートの中にいるわけではない。寂しさは自分以上かもしれないと思い、黙ってココネをおんぶしながら、掃除を再開した。

しかしその時だった。


「で、でもアスナさん、それは・・・」


「違わないってば!」


何やら教会の外で騒がしい口論が聞こえた。何事かと思って扉から外を覗き見ると、アスナとネギが教会の前で言い争っていた。


「今日、あんた授業中、外見てボーっとしてたでしょ!?」


「た、確かに、ちょっとボーっとしてたかもしれませんけど、僕、しっかり授業はやってましたし・・・」


「だから、そーゆーことじゃなくてっ! アンタがちゃんとやる奴だってのは知ってるの! そのこと言ってるんじゃなくて! アンタ・・・今、お父さんのコトで頭一杯なんでしょ?」


「!?」


どうやらアスナは今日のネギの態度にご立腹のようで、何やら一方的に叱り付けている。

美空もその様子を呆れながら眺めていたが、あまり今はシリアスな雰囲気に入りたくないと思い、そのまま扉を閉めた。


「ったく、な~にやってるんだか、こういう時に兄貴はどうすんのかね~」


どうやら完全にいつもの日常が帰ってきたわけではないようだ。

それぞれが何かを心に抱えているのが目に見えた。

ネギとアスナもその内の一人だろう。

外では何やら、ネギが声を出して駆け出す様子と、アスナが言いたいことがうまく言えないことに地団駄を踏んで悔しがっている声が聞こえてきた。


「喧嘩するつもりじゃなかったのにー! 何でいつもこーなっちゃうのー、もぉー!」


悔しがるアスナ。

しかし美空はソッとしておこうと思い、声を掛けずにそのまま掃除の続きを始めた。

だがこの時、アスナの足が教会に向いていることに気づかなかった。


「さ~ってさっさと終わらせて・・・ん?」


外の喧嘩を無視して、掃除の続きを始める二人。そして懺悔室の中を雑巾で拭いていると、何やら気配がした。


「アスナサンだ・・・」


「えっ?」


「あの~、いいですか?」


「へっ?」


教会に入ってきたアスナは、そのままなんと懺悔室に入ってきた。

突然のことにテンパる二人だが、アスナは美空とココネに気づかずにそのまま話をしだした。


「私・・・その、またつまらないことで喧嘩しちゃって・・・」


(っておいおい!? 私に気づいてねえの? それになんでアスナが懺悔を・・・あっ、今日教室で広まったからか・・・、・・・とりあえずボイスチェンジ・・・)


「あの・・・神父さん?」


「いえいえ、どうぞ続けてください」


「私の友だ・・・じゃないし、先せ・・・んー、ウチの居候です」


「それで?」


「その・・・そいつには夢があるんです。でも、夢のことになると、もーまっしぐらで、すぐボロボロになるし見てらんなくて・・・それで、この間、ちょっとした事件があってですねそいつにソックリな奴がいたんです。でもその事件でアイツは誰でもない自分自身になるって言ってマシになったと思ったら、今日見たら根っこの部分が変わってなくて!!」


「なるほど・・・」


「それで・・・ついまた・・・その・・・私、アイツの夢の邪魔するつもりじゃないんですけど、私は私で実力不足で全然手助け出来ないし・・・その・・・心配・・・で・・・」


「ほうほうなるほど・・・(重いな~・・・)」


「こんな時・・・」


「はっ?」


最初はイタズラ気分で話を聞いていたら、意外と重いアスナの悩みに、美空は困ってしまった。

するとアスナはスカートの裾を握りながら告げる。


「こういう時、いつも言葉をくれた人がいるんです。その・・・すごく滅茶苦茶で・・・以前この教会に住んでいた人なんですけど・・・」


「!?」


美空はハッとして顔を上げる。

膝の上にいるココネもである。

アスナのいう人物、それは間違いなくあの男である。


「私はいつも言いたいことが言えなくて自分勝手に言ってしまうんです。でもあの人はいつも胸に響く言葉で簡単に納得させてくれるんです・・・」


「はい・・・知っています・・・」


「その人に・・・道に迷ったアイツをぶん殴るのはお前だって言われたんですけど・・・私は殴って怒鳴るだけで、自分の言いたいことを100分の一も伝えられないんです・・・」


アスナの真剣な表情に、美空も改めてシモンの影響力を認識した。

こんな形でシモンを信頼している者もいる。それが誇らしく思い、そしてだからこそ、美空もこのままアスナを帰すわけにはいかなかった。

美空は目を瞑り、声を変えたまま神父になりきり、シモンならどうするのかを考えた。


「・・・いいじゃないですか、それで・・・」


「えっ?」


アスナが声を上げて格子越しからこちらを向く。


「何も話さない・・・何もぶつけない・・・それでは何も伝わりません。でも、ぶん殴れば殴られた方は何かを感じ取るはずです」


「でも!?」


「それに、例え今は伝わらなくても、諦めずにぶつかっていけば、少しだけでも前に進むことが出来ます」


「あっ・・・」


足掻いて足掻いてジタバタすれば、少しだけ前に進むことが出来る。

あの男が残した言葉を、美空、そしてアスナは思い出した。

そしてココネも美空を実に感心したように見上げる。

アスナもその言葉を覚えている。だがそれでもうまくはいかない。


「そうなんですけど、アイツって私の言うことはあまり聞かないんですよ・・・。私が相手だとアイツもムキになるし・・・ヨーコさんの前だとあたふたするくせに・・・」


「へっ? ヨーコさん?」


意外な人物の名前に思わず美空は声を上げてしまった。


「あっ、知ってますよね? 実はソイツ、身の程知らずなことにヨーコさんのことが好きで・・・」


「ほ~、なるほど・・・(モロバレだしね)」


「その、アイツがヨーコさんのことを好きになるのは分かるんです。美人で、私なんかより心も力もずっと強くて・・・笑顔がとても素敵で・・・」


「ええ、知ってますとも」


「アイツ、シモンさんじゃなくても、ヨーコさんなら頭を撫でられて微笑まれるだけで簡単に頷いちゃうと思うんです。たしかに私じゃ・・・まだ・・・太刀打ちできませんし、アイツの気持ちも分からなくもないんですけど・・・同じ女としてその・・・」


「あ~・・・(おいおい、話が脱線してないか? ってゆうかまあこれは・・・)」


少し呆れ顔になりながら美空は愚痴愚痴言っているアスナに思ったことを言う。


「ようするにアナタはヨーコさんに嫉妬してるんですな~」


「えっ? そりゃあ憧れますけど・・・嫉妬は・・・」


「その人が別の女の人を好きでヤキモチを焼いてるわけですな~」


「ちちちち、違います!? なんでそうなるんですか!?」


「いやいや、恥ずかしがることはありません。恋は宇宙を変えるとも言います(つうかそれしかねえじゃん)」


「違いますってばーーーー!!」


「何を言うんです! 意地は張らずにぶつけるものですよ!」


「だから違いますってばーーーーーっ!」


そう叫びながらアスナは勢いよく教会から走って飛び出した。

その後姿を美空はケラケラと笑いながら見送った。


「うひはははー、あ~面白かった、アスナも可愛いね~。しかしヨーコさんが相手か~、こりゃあヨーコさんライバルが多そうですな~」


「美空・・・最初はスゴク良カッタケド・・・」


その時再び教会の扉が開く音が聞こえた。

アスナがもう一度来たのかと思い、外を見ると別の女が現れた。



「し、失礼します・・・神父さん、ちょっとええ?」



「えっ?」



女は真っ直ぐに懺悔室までやって来た。そしていすに座り少しオロオロとした表情だった。

しかしその人物は知り合いだった、というよりクラスメートである。

ほんわかした空気を身にまとい、少しとぼけた京都弁を喋る少女。

そんなクラスメートは一人しかいない。



(こ、このかああああーーー!?)



悩みなど無さそうな天然少女の登場に、美空は思わずひっくり返ってしまった。


「あの、神父さん?」


「あっ、いえいえお気になさらずに。それで一体どうされました?」


動揺を必死に隠そうとし、ちゃっかりとボイスチェンジをしたまま美空は木乃香に尋ねた。


(おいおいおい、アスナに続いて木乃香まで、・・・つうかクラスに悩みのある奴がこんなにいたのか?)


すると木乃香は今まで見たことないような複雑な表情をしていた。


「えっと・・・その・・・こんなん言ってええかわからんけど・・・」


少し悩みながらも、木乃香は決心して心の内を明かしていく。


「ウチ・・・凄く好きな人がおるんです。多分・・・ウチの初恋やと思います・・・」


「ほお、恋の悩みですかな? (つうかモロ知ってるけど)」


「でもその人には一生忘れられない人が心ん中におって、・・・凄く大切に思われてて、ウチは一度あきらめたぐらいやった・・・」


ニアのことを言っているのは明らかだった。

しかし学園祭でそのことについては解決したように思ったので、美空とココネは不思議に思った。

シモンはたしかに木乃香に、帰ってきたら、真剣に木乃香の気持ちと向き合うと言ったのである。ならば何を悩むのかと思った。


「ウチは・・・その好きな人が、その心の中に居る人がどうのやなくて、目の前のウチの気持ちを考えてくれる言うてくれた時は凄くうれしかったんや・・・」


美空もその光景は見ていた。

うれしそうにシモンの胸に飛びついた木乃香の笑顔を今でも覚えている。


「ウチは一歩進めた・・・これから先もどんどんウチの気持ち伝えて、振り向いてもらお
う思っとったんや・・・せやけど・・・」


そして木乃香はギュッとスカートを掴みながら悔しそうに言う。


「ウチは・・・その人のことを未だによく知らんかったんや・・・」


「・・・知らなかった?」


「・・・この前転校してもうた人は、その人のことをウチなんかよりもずっと知っとった・・・」


(転校? 兄貴をよく知る・・・って超か?)


「その女の子は・・・ウチがまったく知らんことを二人で話し合って・・・最初は喧嘩しとったのに、いざというときは凄く息が合って、お互いを理解しあってて・・・」


超鈴音とシモンの因縁は木乃香たちは結局知らないままだった。

だからなぜ彼女がシモンやグレン団のことを自分たちより知っているのかを知らなかった。

それが木乃香の嫉妬だった。


「それだけやないん、その人には凄く美人でスタイルのええ初恋の人がおって・・・」


「ほ・・・ほう(またヨーコさんか!?)」


「ウチの好きな人はその人をホンマに信頼しとって・・・。結局恋人同士にはならんかったけど・・・それでもあんな並んだだけで素敵な二人組みは見たことあらへん・・・それぐらい二人はお似合いやった・・・。それぐらい信頼しあっとった・・・」


「なるほど・・・恋人同士ではなく、最高の二人組みというわけですか?」


木乃香は寂しそうに頷いた。

好きだと告白した自分よりもシモンを知っている超とヨーコ、そして・・・


「そんで・・・その人の・・・家族ゆうてる人がおるんやけど・・・その人、本当はシモ・・・やなくてウチの好きな人のことを好きやってわかるんです」


「えっ?(兄貴の家族って・・・私? ココネ? ・・・・ってシスターシャークティかぁ!?)


「二人もまた凄く信頼しあっとって、好きやって告白はせんけど、その分誰よりもシモンさんの気持ちを理解して・・・支えてるんやと思います・・・」


とうとうシモンの名前を出してしまったが、木乃香は気づいていないようだった。

そして美空は今の木乃香の言葉に妙に納得した。

シャークティはシモンのことが好きだ。それは確実だろう。

だが彼女はシモンに想いを伝えずに、今の家族としての関係を選んだ。それはニアへのシモンの想いを尊重し、その代りに切っても切れない別の絆をシモンと結んだのである。


「それを見てウチは思ったんや。ウチはシモンさんに何が出来るんやろって・・・」


「何が出来る・・・ですか?」


「ウチ・・・シモンさんのことを全部知っとるわけでも、信頼されとるわけでも、支えとるわけでもないんや。ただ好きって言っただけなんや・・・」


木乃香は悔しそうに唇を噛み締めた。

超のようにシモンを知っているわけでも、ヨーコのように信頼しあっているわけでも、シャークティのように支えているわけでもない。

何より武道大会で、シモンの心の痛みに気付けなかったことに、酷くショックを受けた。

ただ子供のように好きだと言っているだけである。しかもシモンはニアのことを未だに好きだといっているにも関わらずである。


「ウチ・・・ただ気持ちだけぶつけて困らせとるだけかもしれないんです・・・」


それが学園祭を経て、シモンが居なくなった後に木乃香が感じたことだった。


(お・・・重~~)


余りにもシリアスな悩みに、恋愛経験ゼロの美空は何と言っていいか分からなかった。


(つうか、私に答えられるわけ無いじゃん・・・。まあ、木乃香ってホントに兄貴に惚れてんだな~~)


また美空は考え込んでしまった。こんな状況でシモンは何というだろうかと。アスナも言っていた通り、何か胸に響く言葉が言えればいいのだが、木乃香の悩みは美空の想像を超えてるためにうまく励ますことは出来ない。

だから・・・


「ま、まあ・・・気合でなんとかするしか・・・」


「そうなんやけど! ・・・このままじゃアカン思って・・・ウチは気持ち伝える以外にあの人に何が出来るんやろって・・・・」


(ヤベエ、深刻すぎる~~~~! どうすりゃいいんだ~~! うう~~こ、こうなったら・・・ヤケだ!!)


木乃香の次々と出てくる悩みに完全に動揺してしまった美空は、大して考えもせずとんでもないことを口走ってしまった。



「こうなったら・・・アレをやるしかありません・・・」



「えっ、アレって?」



「アレといったら決まってるでしょう、合体です!!」



「・・・・へっ?」



意味も分からず声を上げてしまう木乃香。

ココネも意味が分からずに首を傾げている。

当然美空も自分で何を言っているのか分かっていないが、グレン団として思わず言ってしまった。



「つまり、その方と張り合う人、背中を預ける人、支える人、が揃っているなら足りない者は癒す人です! 即ち、寝技を使う人が居ない! 心と体の重なり合い、即ち合体です!!」



「寝技? ・・・合体? ・・・・ボンッ!?///////」



ココネは分からず相変わらず首を傾げている。

だが、思春期である程度の知識を持っている木乃香は合体の意味を考え、顔が真っ赤に爆発してしまった。


「ししし、神父さん、なな、何をゆうとるん!」



「いえいえ、恥ずかしがることはありません! 気持ちを伝えるしか出来ない? それで結構ではありませんか! 喧嘩することも、殴ることも、一緒に居ることも、そう難しいことではありません。しかし合体できる者はそうはいません! アナタの合体技で、彼の心と体を癒してあげるのです!」



「せ、せやけどウチまだ子供やし・・・それにヨーコさんみたく胸も大きないし・・・」



「大丈夫、大丈夫! 兄貴のドリルはそんな柔なモンじゃないって!」



「そそそ、そうなん? ・・・・って・・・・兄貴?」



「うおおおおお、しまったーーーーーー!?」



興奮状態の美空は思わずシモンを兄貴と呼んでしまった。

同じく興奮状態だった木乃香だが、突然神父が発した言葉に、ハッとなり格子越しに神父の顔を覗き込んだ。

そしてそこには口を開けて、固まってる美空と、膝の上で首を傾げてるココネがいた。


「みみみみ、美空ちゃん!?」


「い、いやこれには深いわけが!」


「神父さんって、美空ちゃんだったん!? せやったらさっきまでウチは・・・」


再び顔が爆発してしまった。

神父に相談していたと思い、自分の胸のうちを曝け出した木乃香だったが、実はその相手はクラスメートだったのである。


「美空ちゃん、ヒドイえーーーー! ウチ、ホンマに悩んどったのにーーー!」


懺悔室から飛び出し、木乃香は美空とココネの居る部屋に入って抗議をする。

美空は100パーセント自分が悪いのだが、往生際悪く、言い訳をしようとしている。


「だだ、大丈夫! 誰にも言わないから! むしろ妹の私に相談できて良かったじゃん!」


「それとこれとは、話違うわーーーーー!!」


ポカポカと美空を叩く木乃香。どうやら相当恥ずかしかったようである。

美空が相手だと、せっかくあまり具体名は出さなかったのに、超やシャークティに嫉妬していることまであっさりバレてしまったと言っても過言ではない。


「あ~んも~、ウチまだ相談したいことあったのに、全部台無しや~」


「い、いや~、細かいことは気にすんなって! ここは兄貴の妹分の私に・・・」


「細かないもん! う~、せっちゃんのことも相談したかったのに~」


「へっ、せっちゃんって・・・刹那さん?」


「あっ・・・」


慌てて口を押さえる木乃香だが、既に遅い。その人物は美空もよく知っていた。


「なんで桜咲さんなの~って・・・一つしかないか・・・」


「うう~~、バレてもうた、ウチのアホ~~。美空ちゃんもココネちゃんも内緒にしてな」


刹那はシモンに惚れてるどころか、武道大会で公衆の面前でど派手な告白をしている。

結局振られたし、むしろ木乃香が焚きつけたようなものだったが、やはり何かしらのシコリがあるのだろうと思った。


しかしその時だった。


「また誰かキタ・・・・」


「へっ、またァ?」


「誰なん?」


懺悔室で言い争っていると、教会の扉が開く音にココネが気付き、美空と木乃香は外の様子を伺う。

すると教会に入ってきた人物は少しキョロキョロした後に、なんと懺悔室に向かい、中に入ってきた。


「失礼致します、神父様・・・」



「「へっ?」」



美空と木乃香は入ってきた人物に固まってしまった。

またもやよく知る人物。

クラスメートで、竹刀袋に刀を入れて常に持ち歩いている少女。

そんな人物は一人しか居ない。

彼女は顔を赤らめながら懺悔室に座った。



(せっちゃーーーーーーん!?)



(御本人光臨ーーッ!?)



(刹那サンダ・・・)



口をパクパクさせながら顔を見合う三人。

しかし刹那はそうとは知らずに己の胸のうちを明かしていった。




後書き。


シモンが居ないネギまの世界・・・それってただのネギまじゃねえか!? 

ただのネギまです。

しばらくはまったく熱さの欠片も無い温い話を上げていきます。

これならわざわざ第一部・完などやらなくても良かったかも知れませんが、とりあえずあれは第一部というよりもネギま世界に現れたグレン団と超鈴音編といった感じなので、あれはあれで完結です。

というわけで第二部ではなく後日談です。
最終更新:2011年05月11日 15:53
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