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68-2

そして一度頭の中身を落ち着けさせて、今度は別の話をするために、皆を一斉に呼び出した。



「アスナさん、こんな所に呼んで何の用事ですか?」



ネギ、木乃香、刹那、のどか、夕映、ハルナは中等部校舎の屋上に集合した。

夏休み初日にいきなり何故呼び出されたのか分からなかったが、呼び出した張本人のアスナがようやく口を開く。



「ねえ、ネギ。アンタさー、クウネルさんが言ってた魔法の国に私たちの卒業まで待たないで、夏休みに行くつもりでしょ?」


「え? ハ、ハイ」



学園祭終了後、アルビレオ・イマことクウネルは自分が持っているサウザンドマスターの情報を全てネギに提示した。

そしてその手がかりが魔法世界にあることもである。

それを聞いたときのネギはさっそく行って来ます、なごとくの速さで行こうとしていた。

実際アスナたちが止めなければそのまま行ってしまったかもしれなかった。



「はい・・・これだけはやっぱり止まることは出来ないんです・・・」



せめて生徒が卒業するまで待ったらという提案だったが、それほど先まで待てないのは、アスナたちの目から見ても明らかだった。



「シモンさん・・・そしてカミナさんに出会い・・・超さんと戦って・・・僕は誰でもない僕自身になると叫びました」



そしてもう一度考える。


ならばネギ・スプリングフィールドとは誰なのか?


そう考えると、やはり原点に戻ってしまった。



「お父さんのことをあきらめ切れない・・・それが僕なんだったら、それでいいじゃないかと思いました」



ネギはそう言ってアスナを見る。



「でも・・・僕は必ずこの学園に帰ってきます!」



自信満々に告げるネギ。するとアスナは少し不安気に聞き返す。



「ネギ・・・・でも、そこ相当危ないとこなんでしょ?」


「姐さんの言うとおりだな。まぁ鎖国してるみてーな場所だからなー。直接の危険が無かったとしても、鎖国時の日本や冷戦当時の東側諸国に潜り込むくらいの覚悟は必要だぜ?」



ネギの代わりに、ネギの肩に居るカモが説明をする。

もっとも鎖国時の日本も、冷戦当時など知らないアスナだが、それでも危険だと言うことは分かった。

だが、ネギはそれでも「必ず帰る」と言っている。



「はい、お父さんを見つけるまでは止まれない・・・しかしここはお父さん以外で僕が僕でいられる場所です」



父も探す。


だからと言って、教師の仕事も放棄しない。



「どっちも放棄しません! 父さんも、そして・・・先生の仕事も、どっちもです!! だから、安心してください!!」



それがネギの結論だった。

何か根拠があるわけではない。だが、自分も誰でもない自分になるためなら、それが自身の一番の答えだと思っていた。

するとアスナは、少しムスッとした顔で聞く。



「それで、もし帰って来れなかったら?」



その言葉を聞いて、のどかと夕映の肩が震え、不安そうにネギの顔を伺う。

しかし当のネギは「何も心配要らない」という顔つきで、言葉を返そうとする。



「僕を、誰だと思って・・・・」



「このアホーーーーー!!!」



「ぶほおっ!?」



「「「!?」」」



ネギが何を言おうとしたのかは分かったが、それを言い終わる前にアスナのハリセンがネギを彼方へと吹き飛ばした。


突然の出来事にポカンとしてしまう一同。



「ね、ネギせんせ~」


「ちょっ、アスナさん!?」


「何で今の流れで殴られるん!?」



そして殴り飛ばされたネギは何故殴られたのかを分からずに、アスナを見上げる。

するとアスナは肩を震わせながら、怒り心頭だった。



「それよ! アンタが注意しなきゃいけないのはそれ!」



「・・・へっ?」



意味が分からず声を出すネギ。




「アンタ誰でもない自分になるって言ったわよね?」


「は、はい・・・」


「でもさ、お父さんも見つけてない、教師の仕事も終わってない、それって言ってみれば今のアンタはまだ誰でもないってことじゃない?」


「?」


「だ~か~ら、今のアンタじゃシモンさんと同じ言葉を言うのは早過ぎだってことよ! ぜ~んぜん、言葉に説得力も重みも感じないのよ!」 


「あっ・・・」



言われてネギもハッとした。


たしかにシモンやヨーコのように言葉に重みを乗せることなど無理かもしれない。ましてや、説得できるだけの根拠も裏づけもない。

それだけの物をネギはまだ積み重ねていないからである。



「僕は・・・まだ・・・誰でもない?」


「・・・そうよ・・・」



今のネギに、言葉だけでアスナたちを信じさせるのは不可能だった。



「で、でも・・・それでも僕は・・・行きたい・・・いえ、行きます! そして・・・必ず帰ってきます! そうとしか言えません・・・僕を・・・信じてくださいとしか言えません!」



アスナの言葉が突き刺さり、少しシュンとなったが、ネギも退く事は出来なかった。

するとアスナは軽く微笑んだ。



「誰が諦めろって言ったのよ」


「・・・えっ?」


「アスナ、どうゆうことなん?」


「そうだよ~、言ってることが滅茶苦茶じゃね?」、



ネギだけでなく、呼び出された木乃香たちも首を傾げる。

するとアスナは一枚の紙を取り出して、それを皆に突き出した。



「そこでコレよ!」


「・・・なんです、これ?」



アスナから渡された一枚の紙に目を落とす。するとそこには『新クラブ設立申請書』と書かれている。



「新クラブ設立申請書・・・?」


「うん」


「突然、何のクラブです? それに新しいクラブには5人以上の部員が必要で・・・」



アスナから渡された紙を見ても未だに状況が分からない一同。するとアスナは自分の考えを打ち明ける。



「シモンさんにグレン団がいるように、アンタには私たちがいる」


「えっ?」


「そして道に迷ったシモンさんを殴る人に、カミナさんやヨーコさんがいたんなら、アンタには私がいる!!」



ドンと胸を叩いて言い放つアスナ。

彼女もまた決意をした瞳だった。



「アンタが止まれないなら止まんなくていい! 無理してあきらめるぐらいなら、無理してでも前に突き進むこと! でも、一人じゃダメ! シモンさんに仲間がいたように、私もアンタに協力するわ! そして早いトコお父さんを見つけちゃおーってわけ!」


「アスナさん、・・・それじゃあ・・・これって・・・」


「そう、このクラブは『ネギのお父さんを捜し出して、しかもちゃんとこの学園に帰ってくる』。その為のクラブよ。名前募集中! 当然、アンタが顧問ね! 文句ある?」


「「「「「おおおおおおおお!!!」」」」」



アスナの宣言に、ネギに代わり、感心の声を上げる一同。そしてその目はキラキラと輝いている。

アスナの新クラブへの勧誘。

取りあえずこの場にいる者には聞く必要はないだろう。それほどまでに既にやる気に満ちた表情をしている。



「アスナさん・・・でも・・・」



アスナの気持ちはうれしい。

しかしそれに諸手を上げてネギは喜ぶことは出来なかった。

だがそれを言う前にアスナがネギの頭に手を置いた。



「でもね、ネギ。少しうれしかったよ」


「えっ?」


「アンタが、絶対に帰ってくるって言い切ったのはうれしかったよ」



そう言ってアスナはニカッと笑った。


それを見せられて、今のネギが文句を言うことなど出来ない。


危険だから?


教師として危ない目に出来ない?


これは自分の問題だから?


つまらない理由で、彼女たちの決意をゴチャゴチャ言うことなど出来ない。


それこそ最大の侮辱にしかならない。


だからネギは今出来る最高の返事をするだけだった。



「ありがとうございます!!! 僕、がんばります!!!」



難しくかっこつける必要はない。

今の自分に出来るもっとも気持ちを伝える言葉を言えばいい。

だからこそ、ネギらしい言葉にアスナだけでなく、ハルナたちもウインクと親指を突きたてて返事を返した。


「そうよ、そんでいつかみんなでまた言おうよ! その場のノリじゃなくってさ、胸張って堂々と、私たちを誰だと思っている! ってね♪」


そしてアスナが指を天に向かって指した。相当恥ずかしかったが、それを振り払って、実に堂々とポーズを決める。

ネギも「ハイッ」と頷いて自分も指を上に突き出す。

それが面白くて、ハルナと木乃香もアスナを真似して指を天に向かって突き出した。

顔を見合わせてから、頷き、苦笑しながらものどか、夕映、そして刹那も少し肘を曲げながらも天に向かって突き出した。




目的はそれぞれ違えども、行くべき場所は同じ場所。





そしてその場所へは生半可な覚悟と力では行き着くことは出来ない。


ならばやらねばならないことも同じだった。


デカイ口を叩くだけの力を身につける。


無理を通せるだけの物を積み上げていく。


つまり修行だった。



「ココネは十分に素質がありますから、焦らなくてもいつかは大魔法が使えるようになります」


「ハイ」


「しかし美空は・・・正直な話、やめた方がいいです」


「ノオッ~~!?」



しかし本格的な修行の初期段階でこの少女はダメ出しをされてしまった。

しかもどうやら冗談ではなさそうである。

シャークティは本当に自分では強くなれないと言っているようである。



「ちょっ、なんすかそれ!? さっきのは冗談で、何もいきなりグランドクルスとか使いたいって言ってるわけじゃないんすよ!? 別に基礎的なものでもいいから教えてくれって言ってるんすよ!?」


「当たり前です! そもそもそんな大魔法、ココネならまだしもアナタが使えるわけ無いでしょう!」


「はあっ!? そりゃあココネは魔法使いとしては私より優秀っすけど、私はダメって決め付けるのはあんまりっすよ! あの感動はウソだったんすか!?」



まくし立てるように文句を言う美空。するとシャークティは頭を抱えながら説明をしていく。



「美空、勘違いしているようですけど、アナタは強くなれないのではない。私が課す修行では、アナタが求める強さは手に入らないということです」


「・・・? どういうことっすか?」



シャークティの言葉に首を傾げる。



「武道大会で分かったように、アナタは魔法で戦うタイプの者ではない。むしろ戦士タイプです。だから不向きな攻撃魔法を極めるぐらいならアナタの最大の武器を鍛えることが、一番の理想です」


「・・・武器?」


「はい、アナタの速さです。それを誰にも負けない武器にして、アナタはスピードのスペシャリストになるのです。ですから無理して大魔法を覚える必要はありません」



美空は魔法使いの見習いのため、簡単な魔法なら使用することが出来る。

しかしそれは戦闘に特化したものではない。

才能以前にこれまでやる気が全く無かったために、魔法使いとしてのレベルは、ネギの足元にも及ばなかった。

しかし・・・



「ネギ先生どころか、高畑先生までもが目を見張ったのは、アナタのスピード、そして不恰好でしたがそれなりに威力を持った蹴り技です」



武道大会ではその二つを駆使して美空は一躍学園のスターにまでなったのである。

美空の才能を以前から知っていたシャークティだからこそ、美空の長所を伸ばすことを進めた。



「美空、器用貧乏ではなく、スペシャリストになりなさい。壁を突き破ることに特化したシモンさんのように」


「!?」



スペシャリスト。

実にいい響きだった。

たしかにグレン団に相応しい。



(・・・ってことは・・・速さが私の魂ってことか・・・)



求められるのはどこまでも突き進むことの出来る可能性である。

だからこそシャークティの提案に美空は頷いた。



「分かりやした! ・・・でもそれならどうするっすか?」



やるべき事は決まった。しかしそこで止まってしまう。なぜならシャークティは完全なる魔法使い。

そうなると美空を指導するのは不可能ではと思ったのである。

無論シャークティはそんなことは百も承知。だからこそ事前に手を打っておいたのである。



「本当は感卦法などを私が教えて上げられればいいのですが、ここは私より、むしろ戦闘に長けた特別コーチにお願いすることにしました。今からその人のところへ行きなさい」


「っ、特別コーチ? ・・・誰っすか?」



何か嫌な予感がした。

するとシャークティは僅かに笑みを浮かべながら地獄の教官を紹介する。



「エヴァンジェリンです」


「いいぃ~~~!?」



たしかに戦いに関しては文句無いだろう。何よりネギをココまで鍛え上げたのだ、師事するのは間違っていないだろう。

しかし・・・



「は・・・はは・・・マジっすか?」


「うれしいですか? 彼女自ら受けてくれましたので」


「自らって、あのエヴァさんがっすか!? どんな魔法使ったんすか!?」



エヴァはネギのように才能溢れるものならまだしも、現時点では凡才の自分に興味など無いはずである。

そんなエヴァがどうしてこんな面倒くさいことを引き受けたのかを疑問に思うと、シャークティはクスクス笑った。



「魔法など使ってません、独り言を言っただけです・・・」


「独り言っすか?」


「ええ、・・・ただ彼女の前で、美空がシモンさんの妹なら、シモンさんと結婚した方は美空のお姉さんになるわけで、・・・ここで未来の妹の面倒を見てくれる方はいないものかと・・・、やはり家族の好感度を上げるのは大切ですね・・・と彼女の前で呟いただけです」



そう言ってシャークティはニッコリと微笑んだ。

だがその笑顔が微妙に美空には怖かった。



(シスターシャークティ・・・さり気に黒・・・)



だがそのお陰で、エヴァンジェリンという、強さを求めるなら絶好の教官を得ることが出来たのである。

モチロン、厳しさはハンパではないだろう。

シャークティは出発までココネに付きっ切りだろう、今にして思えばそちらの方が何倍も安全かもしれない。

しかし・・・



(まあ、でも・・・ハンパは止めたんだ・・・。ここらで努力っつうもんをやっときますか! ・・・・うはあ似合わね~~)



一度決意した以上、美空も後に退くわけには行かない。


美空は無理を通せる強さを手に入れるためにエヴァの別荘へと向かった。













そして向かった先で最初に見た光景は・・・



「うわあ、・・・コリャ一体・・・」



武道大会で自分と互角に戦ったアスナが、ネギに手も足も出ずにズタボロに負けた姿だった。



「ふん、やはり口先だけだな神楽坂アスナ」



横たわるアスナに問答無用で吐き捨てるエヴァ。そして彼女は美空の存在に気付いた。



「アレ~、美空ちゃん?」


「春日さん、どうされたのです?」



別荘内に入ってきた新たな気配に気付き後ろを向くと、目の前の光景に呆然としている美空がいた。



「ふん来たか、未来の妹よ」


「「「「へっ?」」」」



ニヤリと笑って告げるエヴァと、告げられた美空に、皆訳が分からずに二人を交互に見る。



「ちょっ、どういうことですか?」


「いつから美空ちゃん、エヴァンジェリンさんの妹になったん?」



するとエヴァはアスナを掴み上げながら、美空を見る。



「くっくっく、手加減はせん、この私の妹になるのなら最強にしてやる。この口先だけの女と共に地獄の訓練を課してやろう!」



そう言って高笑いを上げるエヴァ。



「・・・やっぱハンパでいいかも・・・・」



それを見て美空はエヴァの別荘に入って数秒でこの場に来たことを後悔してしまった。



(兄貴・・・惚れさせるなら普通の女にしてよね・・・。)



天の向こうに消えた兄に心の中で美空は嘆いたのだった。


口に出した決意を口だけにしないのは、中々に難しい。こうしてアスナと共に美空は地獄とめぐり合うことになった。







後書き


主人公が居ないって・・・・でも結構楽です・・・。


しかし次回はネギまでは無い世界のお話です。


主人公が久々出ます。


懐かしい連中も出ます。
最終更新:2011年05月11日 15:54
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