豪徳寺の喧嘩パンチと、ポチのカンフーのように無駄の無い連撃。しかし計四つの拳の嵐を前に、タカミチは未だに余裕を崩さない。
その場を一歩も動くことなく二人の拳を弾いていく。
「おっ、よっ、ほっ。うんうん、大したものだ。攻撃力も夏に入って遥かに向上している。ダテに毎日修行していたわけではないね」
「当ったり前よォ! 実らない気合を持った覚えはねえんだぜ!」
「練磨の日々は裏切らない・・・・」
(ふっふっふ、いいなあガムシャラで、真っ直ぐで、諦めが悪い。昔の僕を見ているようだ)
魔法使いとしては落ちこぼれ。それでも死に物狂いの努力で今の力をタカミチは手にしている。そんな彼にとっては天才肌のネギやアスナよりも、目の前の泥臭くも前向きに吼える豪徳寺たちに共感できた。
「いくぜ! 新技・疾空掌!!」
空中から叩きつけるような形で、気の塊を飛ばす達也。まるで合図をしたかのように豪徳寺とポチは左右に飛び退き、達也の気は真っ直ぐタカミチに迫る。左右は飛び退いた豪徳寺とポチが構えている。
しかしその程度で手がなくなるタカミチではない。左右がダメでも上には活路がある。
タカミチは軽々とその場でジャンプをして達也の気弾を交わす。しかしそれも全ては四人の作戦である。
もっともタカミチには全てはお見通しなのだが・・・
「やるね! で? 僕を上空に誘ってどうする気だい?」
四人がタカミチを上空に飛ばせようとしていたのは最初からタカミチは気づいていた。だが、あえて乗ることにした。すると上空には同時に飛んだ慶一が迫っている。
「全てを読んでいましたか、流石ですね! しかし、僕たちの全てを読めたわけではないでしょう!」
「さあ、どうかな?」
タカミチはポケットに入れた拳を軽く握り締める。
それは学園祭でネギと戦った時とは比べ物にならないほど手加減した一撃だが、速さも威力も並みのものが対応できるものではない。
「居合い拳!」
タカミチのポケットを鞘代わりにしたストレートパンチ。しかも空中では慶一に交わすすべは無い。
だが、慶一はその技を待っていたかのようにニヤリと笑みを浮かべた。
「かかりましたね! 3D柔術・弾丸(たま)すべり!」
「おっ!?」
慶一は交わしたわけではない。
しかしタカミチの拳は絶妙なタイミングで体を捻らせた慶一の体をなぞる様に滑り受け流されていく。
流石にタカミチもこの意外な技に目を見開いた。
「地上も空中も関係ない。縦・横・そして高さを加えた格闘技、それが3D柔術ですよ」
そして慶一はその一瞬を逃さずに、タカミチのポケットに入れた状態の両手を掴み取った。
「一度鞘から出した剣を再び鞘に戻した瞬間の手は、隙だらけ! それに先生の居合い拳は接近では使用不可能。対する僕はこの状態が得意分野。そうなると・・・・」
空中で高畑の両手を封じ、ねじ上げ、間接技を決める。
それは地に足が着いた状態のように見えるほど見事な一連の動きだった。パワーではなく、相手の筋肉の反射と硬直の隙間をつくかのような動きだった。
(これは・・・抜け出せないな。しかも空中だから力が入りづらい。僕の居合い拳を交わした動きといい、見事だ・・・)
高畑はタバコを咥えたまま、自分のピンチを忘れて、教え子の見事な動きに感心する。
すると慶一はひねり上げた高畑の両拳を交差させ、受身の取れない状態にしたまま、高畑の腹の上に両足を乗せて、そのまま地面に叩きつけようとする。
「決まっている、勝つのは僕だ!」
「うぉっ!?」
背中から受身も取らずにタカミチが音を立てて落下。さらにアバラには落下の衝撃の瞬間、慶一が両足で踏みつけた。
常人ならば交差させられた両腕を落下の際に骨折して、背骨を折り、アバラを粉砕していただろう。
それほどまでに涼しい顔をしながらも慶一の攻撃はえげつなかった。
しかし相手はあくまで超人クラス。これでやられるはずも無い。
落下して数秒後、タカミチは封じられた腕をほどき、寝そべったまま拳を腹の上にいる慶一に突き上げた。
「はっ!」
「ぐっ!? 流石高畑先生! この程度ではやられませんか」
「ふっふっふっ、そんなことは無いさ。結構痛かったよ?」
咄嗟に反応して後方に飛んで回避する慶一。確かな手ごたえの一撃を叩き込んだというのに、顔をまったく歪めないタカミチに寒気がした。
だが、タカミチの言っていることは嘘ではない。
慶一の攻撃は、骨折とまではいかないが、タカミチには確かにダメージを与えていた。
「後はまかせるよ!」
「心得た!」
そして慶一もまた、この一撃でタカミチを倒せるとは思っていなかった。タカミチが起き上がろうとした瞬間を狙い、ポチが地面を思いっきり殴りつける。
「ふんぬらばァ!!」
その振動が地面を伝わり、タカミチは起き上がろうにもバランスを崩してしまう。
そして残りの豪徳寺と達也の二人が空中に飛び、その両拳に鍛え上げた気を練り上げて一気に叩きつける。
「いくぜえ! ギガ・漢魂!!」
「ダブル・疾空掌!!」
「はっはっは、これはすごい! 大した連携だ! まさに一本取られたね♪」
学園祭も終わりネギたちが居なくなった学園は静か?
それはとんでもない間違いだった。
騒がしい学園の生徒たちはネギの生徒達だけではない。
たとえ夏休みに入ろうと、むしろ夏の太陽より熱い炎を燃やした男たちがシモンの残したグレン団の誇りを背に乗せ戦っていた。
麻帆良武道大会、そして学園祭最終日の大喧嘩。二つの大イベントを乗り越え、夏を迎えた彼らに待っていたのは、シモンとヨーコの帰郷。そして美空とココネが更に強くなるために旅立ったという知らせだった。
シモンとヨーコが何を思って帰ったのか彼らは分からない。そもそも二人についてそれほど詳しく知っているわけではない。
だがそれを詮索するつもりは無い。二人には二人の事情があるのだと言うシャークティの言葉に簡単に彼らは納得した。
それよりも、彼らの心を揺らしたのは、かけがえの無い二人の帰郷に涙を流すことなく、二人と最も仲のよかった美空とココネは、懸命に自分たちの道を進んでいるということだった。
気づいたら彼らはタカミチの元へと向かった。
特に何かやりたいことがあったわけではない。進むべき道が何かあるわけでもない。
しかし何かがしたかった。
今この学園に居ない四人のグレン団たちに負けないよう、彼らも自分を追い込みたくて、この夏を過ごしていたのだった。
そして、彼らも旅立つのだった。
「・・・・どうしても・・・行くと言うのかのう?」
「はい、当然です」
学園最高の権力者を前に、一シスターであるシャークティは一歩も引かずに、学園長に申し出ていた。
「う、うむ。しかし君の気持ちは分からんでもないが、ネギ君たちと違って美空君たちは首都にいるから、問題は無いと思うがのう・・・」
「そうだね。それにあまりゾロゾロ行っても仕方の無いことだ。やはりここは僕と龍宮君が・・・・」
シャークティの形相に背中に汗を流しながら学園長はシャークティを宥めようとする。
しかしその言葉は余計にシャークティの怒りを買うだけだった。
不穏な空気の漂う学園室。
すると一旦顔を下げてシャークティが何かを小さく呟いた。
「問題が無い? 心配いらない? ・・・ですか・・・」
「シャークティ先生?」
「無いわけ・・・無いではないですか・・・」
「?」
シャークティの呟きに耳を傾けようとすると、シャークティは鋭い目つきで顔を上げ、彼女らしからぬ大声で叫んだ。
「何も無いはずが無いでしょう!! 魔法世界に行ったのはネギ先生たちだけでは無いのですよ!」
「「!?」」
机を強く叩きつけながら叫ぶ彼女の拳は強く握られ血が滲み出していた。
「たしかに心配要らないかもしれません。それにあの子達も危険を承知で乗り込んだのです。その結果・・・何があったとしても・・・それがあの子達の自分たちで選んだ意思として納得せざるをえないでしょう・・・しかし・・・・」
ギリッと強く唇をかみ締めながら、シャークティは二人に向けて口を開く。
「それと私がここで何もしないでいることは、まったく別の問題です!!」
「・・・シャークティ先生・・・・」
「あの子達を信じるということ・・・・それは、私は何もしなくていいということにはならないのです!」
魔法世界の事件の知らせを聞いたのは、ほんの少し前のことだった。
ネギたちを魔法世界へと送り出した、係りのものが、ゲートポートでテロがあり、ネギと多数の生徒が巻き込まれ、行方不明になったという知らせだった。
更にゲートポートは破壊され、残り僅かな時間で完全に現実世界との退路を絶たれてしまうという内容だった。
この二つの知らせを聞いたとき、シャークティは真っ先に同じ世界へ向かった美空とココネを頭に浮かべ、血相を変えて学園長室へとやってきたのだった。
そして学園長室に着いた彼女の目の前には、既に報告を受けた学園長が、この事態を対処するために、ゲートが完全に閉ざされる前に派遣しようと、タカミチ、そしてネギのクラスの生徒の龍宮が既に学園長室にいたのだった。
タカミチに関しては、豪徳寺たちの訓練に付き合っていた所為で、少し服を汚したままで、それが逆に事態の緊急性を示していた。
そんな二人を見て、シャークティは学園長に、自分も派遣するように申し出た。
当然事情が分かるだけに、学園長もタカミチも、そして龍宮も予想できた言葉だった。しかし学園長は素直に首を縦に振らなかった。
しかし、シャークティも退くことは出来なかった。
そして、いつまでたっても折れない学園長に業を煮やして、シャークティは最後の手段として一枚の封筒を取り出し、学園長が正面に見えるよう机の上にそれを置いた。
「これを・・・お預けします」
その封筒に書かれていた漢字は、手に取るまでも無く、なんと書いてあるのか直ぐに分かった。学園長は慌てて手に持ち、確認するが間違いない。
「こ・・・これは・・・じ、辞表じゃと!?」
「シャ、シャークティ先生!?」
「今の私に出来る覚悟の形はこれしかありません。しかし教員としての覚悟は、これで納得して欲しいのです」
シャークティの目は変わらず真っ直ぐだ。元々冗談を好まない彼女なら、なおのことだった。
つまり本気ということだ。
「し、しかしのう・・・向こう側との兼ね合いもあるしのう・・・それに何故そこまでして・・・」
「何故? むしろ何故そんな分かりきったことを聞くのですか?」
「・・・・それは・・・」
「間もなくゲートが閉ざされる世界に残されている子達は・・・・私にとって何なんだと思っているのですか?」
「・・・・・・・・・・」
「私の弟子・・・いえ・・・家族は・・・私が必ず救ってみせます。あの人がいない今こそ・・・この程度のこと、無理でも無茶でも何でもありません!」
学園長もタカミチも、これほど強い信念を秘めたシャークティを見るのは初めてだった。
常に冷静さと厳しさを兼ね備えた氷のような女。それが彼女の数ヶ月前までのイメージだった。
そして決して私情と感情に流される者ではなかったはずだ。
しかし今の彼女は誰がどう見ても、私情に流され、勝手な行動を取ろうとしている。それは教員としても魔法使いとしてもあるまじき行為だった。
だが、にもかかわらず、彼女の目は冷静さを保ち、その目に一切の濁りは無かった。
今のシャークティの心は熱く、想いは温かく、常識に逆らってでも己のやるべきことをしようとしているのである。
その熱意を受けては首を横に振るわけにはいかない。学園長は辞表を手に取り、少しだけ目を瞑って口を開く。
「・・・・・・・なるほどのう、女の覚悟を感じたわい・・・・」
「では、・・・・学園長」
学園長は肩の力を抜き、ヤレヤレといった感じで首を縦に振った。
「うむ、・・・ワシの負けじゃ、もっともこれを受理するかしないかは、オヌシが帰ってきてから決めるとしよう。美空くん、ココネくん、そして高音くんに、愛衣くんの四人については君に任せるとしよう」
「ありがとうございます!!」
「うむ、ではタカミチ、そして龍宮君にはネギ君達の方を任せるぞい」
「分かりました」
「ふっ、まあ・・・依頼料さえ貰えれば、私はどちらでも構わないさ」
「よし、では事態は急を要するからのう。早速じゃが三人にはゲートに向かってもらうぞい」
「「「了解」」」
話は決まった。
やるべき事も決まった。
シャークティは胸元のロザリオを握り締め、数秒間何かを祈るように呟いた。そして顔を上げ、タカミチたちと共に、今すぐ旅立とうと思ったその時だった。
学園長室の扉が乱暴に開かれた。
「「「!?」」」
一瞬驚いて、全員が肩を少し動かすと、開かれた扉の向こうからゾロゾロと誰かが入ってきた。
「な、なんじゃッ!?」
入ってきた者達は実に意外な人物たちだった。
学園長もタカミチも龍宮もシャークティも揃って目を見開いた。
そして意外な人物たちを代表して男が告げる。
「水臭ぇっすよ~、シャークティの姐さん!」
言ったのは豪徳寺だった。
そして豪徳寺の言葉に続くように次々と口を開いていく。
「俺らにも声掛けてくんね~とよ~」
「ふふ、グレン団の女神を黙って行かせるわけには行きませんよ」
「我らも共に」
豪徳寺に続いて口を開いたのは達也、慶一、ポチ。そして・・・・
「ふっふっふっ、そういう訳なのです」
「シスター・シャークティ。我々モオ供シマス」
ハカセとエンキ、二人を含めて計六名の新生大グレン団のメンバーが学園長室に乗り込んできた。
「あ、あなたたち・・・・」
「これはどうなっているんだい?」
「な、何故君たちがここに!? もしかして・・・今の会話を・・・・」
事態がまったく飲み込めず、豪徳寺たちの乱入にただ理解できなかったタカミチたちに、ハカセが代表して答える。
「えへへ~、いや~、学園祭中に探知機にも引っかからない盗聴器を学園長室に超さんが忘れていったのをたまたま思い出して、たまたま話を聞いて駆けつけたわけですよ~」
「な、なんじゃとお!?」
「えへへへへ~~~」
「な、なんですって!? ハカセさん・・・・それでは・・・」
ハカセのとんでもない言葉に、シャークティも驚きを隠せなかった。
そして次の瞬間、普段温厚のタカミチも、このときばかりは思わず声を張り上げてしまった。
「な、なんということを!? 葉加瀬くん! 君は自分が何をしてしまったのか理解しているのか!? よりにもよって一般人でもある彼らに魔法の存在を!?」
ハカセのしてしまった行為はそれほどのものである。
魔法の存在は秘匿。
バレればオコジョにされるか、本国へ強制送還。もしくはなんらかのペナルティが課せられる。それが魔法使いのルールであり、絶対に破ってはならない掟なのである。
世界の均衡を守る。倫理。正義。上げれば限が無いほど魔法を秘匿にしなければならない理由が出てくる。
だからこそ、学園側は学園祭で魔法を世界にバラそうとした超鈴音と戦ったのである。
ハカセは一般人だが、特別な理由により魔法の知識を許可されているが、背負うべきルールは自分たちと同じである。
それを破り、一般人である豪徳寺たちを巻き込んだことを、タカミチは見逃すことは出来なかったのである。
だが、タカミチは目の前の男たちを侮っていた。
「へっ、魔法だ~~? んなもん、知ったって今更関係ないぜ」
「・・・・えっ?」
「はっ?」
「?」
「な、・・・なんじゃと?」
豪徳寺の言葉に全員が呆けると、他の面々も笑いながら口を開く。
「その通りだぜ! 大体、俺たちはそれ以上にスンゲーもんを知ってんだからよ」
「ふっ、たしかに魔法だろうと超能力だろうと今更だね」
「気合に比べれば取るに足らない・・・・」
忘れてはいけない。
彼らは魔法を使えないだけで、既に一般人ではないということだ。
天を突く男と共に戦い、同じ誇りを背負い、ましてや最終日にはその瞳に全銀河の希望の象徴であるグレンラガンを生で見た男たちである。
魔法という存在など、もはや今更だった。
「うっ・・・まあ・・・そうじゃろうが・・・しかしのう・・・・」
ようやくその事を思い出した学園長は困ったように視線を変えると、龍宮は口元を隠しながらクスクス笑い、シャークティは眉間を押さえながら苦笑していた。
二人に援軍は期待できないと理解した学園長は、最後の砦であるタカミチに視線を送ると、学園長の期待通り、タカミチはそれでも納得できないような顔だった。
「バカを言うのは止めたまえ!!」
「「「「「「ッ!?」」」」」」
タカミチが怒鳴るようにして、その場を制し、豪徳寺たちは普段見ないタカミチに少し肩を震わせた。
「君たちは・・・・・何も分かっていない。自分たちの認識がどれほど甘いものなのかをね・・・。遊びでもない、訓練でもない、本当に死と隣り合わせの世界を・・・・君たちは・・・・何も分かっていない!」
タカミチの言っていることは、正しい。それが魔法使いとして、そして魔法先生としての言葉としては当たり前の言葉である。
しかし言うべき相手が悪かった。
その言葉をまるで待っていたかのように、超が居ない現時点では学園最高の頭脳を誇るハカセが眼鏡を光らせて、ニヤリと笑った。
「おっほん。・・・・・5人・・・」
「「ん?」」
「これ・・・何の人数だか分かります?」
ハカセの呟きに、タカミチと学園長が首を傾げた。
そして次の瞬間、ハカセの怒涛の相手の言葉の揚げ足取りが始まった。
「ネギ先生が仮契約したクラスの生徒の人数です」
「「あっ!?」」
タカミチと学園長は、口を半開きにして固まってしまった。
しかしハカセの攻撃はこれでは終わらない。
「それを含めて~・・・ウチのクラスで魔法の存在を知ってしまった一般人・・・そう、刹那さんたちや茶々丸などを除いた、高畑先生の仰る元一般人の人数は・・・・9人」
「うっ・・・・あっ・・・・いや、それは・・・・」
「そして今回の事故に巻き込まれた生徒の人数は報告によると15、6人だそうですね~」
「「うっ・・・・」」
「そして学園祭での不祥事・・・魔法アイテムの一般人への貸し出し・・・学園生徒たちを巻き込んだロボットとの脱げビーム合戦・・・それに対する隠蔽・・・これ、言うべき場所へリークしたらどうなるんでしょう?」
「は、葉加瀬くん・・・・」
「き、君はワシらを脅す気か!?」
そう、タカミチが言っていることは正しかったのだが、この学園では、最早そんな言葉は今更だったのである。
何も言い返せなくなったタカミチと学園長は背中に汗をダラダラと流してしまった。
そんな二人にハカセはニコッと笑みを送る。
「いえいえ、脅しているわけじゃなくて、お願いしているんですよ。今までと同じように、私たちの不祥事にも目を瞑ってくだされば~と」
「ななッ!?」
「それに~~、茶々丸が居ないんですから、私がちょっと本気出せば、科学の力でここの学園結界を壊すのは簡単なんですよ?」
「いいいいい!?」
学園最強の二人は、魔法も使えない只の少女の前には無力だった。これも科学の前に魔法が無力であるかを証明した出来事かもしれなかった。
しかしタカミチも、やはり首を縦に振れずに、声を張り上げるしかなかった。
「それでも・・・、君たちは何も分かっていない。遊びじゃないんだぞ? ましてや魔法世界など論外だ。こんな事態になると分かっていれば、ネギ君たちにも許可しなかったさ」
だが、その言葉も既に火の付いたグレン団の前に無意味である。
「聞き捨てならねえなあ、高畑先生よォ」
「な・・・・なんだって?」
行く行かないの許可を貰うためにここに来たのではない。彼らは既に行くと決めてから来たのである。
「その通りっすよ。俺たちは学園祭の時から・・・」
「ええ、どんな窮地も日常も・・・・」
「常に真剣に誇りと・・・」
「胸ノ中ノ魂ニ・・・」
「「「「バリバリ、命賭けてんだよォ!!!」」」」
響き渡るその言葉には覇気が篭っていた。
「甘く見て欲しくねえっすよ! たとえ危険だろうと、仲間が居るんなら魔法世界だろうと、地球の裏側だろうと、月だろうと、火星だろうと、銀河の果てだろうと駆け付けてやるってんだ!!」
思わずタカミチや学園長、そして龍宮ですら、胸を打たれるような感覚に襲われた。
いくら豪徳寺たちが、それなりの実力者の者たちとはいえ、彼らは一般人でしかなかった。
しかしそんな一般人の言葉も、誇りと気合で魔法使いと一般人の間に立つ境界線をも蹴り飛ばしたのだった。
それをよく知るものだからこそ、次の瞬間シャークティは、豪徳寺たち側に立った。
「・・・・教師としてはお勧めしませんが・・・・私は辞表を提出して今では只のグレン団の女・・・・、ならば答えは決まっています」
「シャ・・・・シャークティ先生・・・・」
「高畑先生の意見は最もです。しかし・・・魔法や危険や死についてを、知っている、知っていないの差で、彼らの覚悟を・・・私たちグレン団の覚悟を図らないほうがよろしいですよ?」
本来なら一番に反対するはずのシャークティが、豪徳寺たちの味方になった。それは彼女が魔法先生である前に、グレン団の仲間である証拠でもあった。
そしてシャークティはニッコリと微笑んで、豪徳寺たちを見る。
「高畑先生の仰ったことは事実です。しかし今更あなたたちに覚悟について問うのは無礼ですので、代わりに別のことをお聞きします」
「・・・・姐さん?」
「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」
学園長室内がシンとなり、全員が注目する中、シャークティは声を張り上げる。
「もし、・・・・・もしグレン団としての言葉を言うなら?」
「「「「「「当然! 行くぜ、ダチ公っすよ!!」」」」」」
「俺たちの仲間は・・・・」
「「「「「絶対救ってやろうじゃねえか!!」」」」」
その答えを聞いて、ニヤリと笑うシャークティは、言葉を続ける。
「ふふふ、・・・では皆さん!! 気合は?」
「「「「「「満タン!!」」」」」」
「無理は?」
「「「「「「承知!!」」」」」」
「お腹は?」
「「「「「「くくった!!」」」」」」
「では・・・我々は?」
「「「「「「新生大グレン団だァァ!!!!」」」」」」
その叫びに満足したシャークティはゾクゾクとした興奮を抑えきれぬまま、振り返り、学園長と高畑を見る。
「・・・だそうですよ? ネギ先生の生徒は良くて、彼ら・・・いえ、私たちはダメですか?」
「うう・・・・うう~~む・・・・」
すると学園長がかなり折れかかっていることに気づき、グレン団はダメ押しの一言を告げる。
「何度だって言いましょう! 私を・・・」
「その通り! 俺たちを・・・」
「「「「「「俺たちを誰だと思っていやがるッ!!!!」」」」」」」
その言葉に学園長だけでなく、タカミチもトドメをさされた。
「だああ~~もう分かったわい! まったく、シモン君は余計なものを残していったようじゃの~~」
「ハッハッハッハッハッハッ!・・・・ふう~~、やれやれ・・・たしかにそうですね。学園祭に続き、どうやら今回も我々の完敗ですね」
「うう~~む、あまり気は進まんがの~」
苦笑する二人を見て、豪徳寺たちはハカセとガッツポーズをして手を叩きあい、悦びを分かち合う。その光景がおかしくて、龍宮は普段見れないクラスメートのハシャギっぷりに思わず口を開いた。
「やれやれだな、ハカセ・・・お前も伝染したのかい?」
「当然ですよ。科学に売った私の心と魂は、超さん同様にグレン団に買い取られちゃいましたからね♪」
「ふっ、少し・・・うらやましいかもな」
龍宮の本心にハカセは屈託のない笑みを見せ、手を上げて全員を仕切った。
「では行きましょう!!」
「やれやれ、魔法世界が大変なことになりそうだな」
「しかし、それもまた楽しみかもしれないな」
「うっし! たまんねえぜ! ゾクゾクしてきたあ!」
「血ガ滾リマス」
「腕も鳴る!」
「よっしゃあ、テメエら! 俺たちの女神を助けに行くぜぇ!! 殴り込みだァーーーーッ!!」
「「「「「うおおおおおおおお!!!!」」」」」
タカミチ、龍宮と共に奴らが動き出し、魔法世界へ殴り込む。
シャークティ、豪徳寺薫、中村達也、山下慶一、大豪院ポチ、田中エンキ、葉加瀬聡美、計七名の新生大グレン団、緊急参戦!!
最終更新:2011年05月12日 14:32