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87-確かにこの手に宝があった

第八十七話 確かにこの手に宝があった 投稿者:兄貴 投稿日:09/07/19-14:06 No.4073
ここは遠いグラニクスの地方にある、遺跡の中にあるオアシス。

今ここで一人の筋肉隆々の男が、熱く語っていた。

傍聴者は一人の少年と少女、それはネギと千雨だった。


「解説しよう!! 二十年前、ここ魔法世界は未曾有の危機に瀕していた! 些細な誤解と諍いから始まった争いが、世界を南北に二分する大戦へと発展してしまったのだ! そんな中、無辜の民を救うべく颯爽と現れた男たちがいた! 名を「紅き翼(アラルブラ)」!」


語っているのは、あの男。ネギの父親の盟友でもあり、ライバルでもあるあの男。


「伝説の傭兵剣士!! 自由を掴んだ最強の奴隷剣闘士!! それがこの俺、紅き翼(アラルブラ)、千の刃のジャック・ラカンだ!!」


どーん! と効果音が出るほどの堂々とした長い口上を終え、満足そうなラカン。

それに対して千雨は興味なさそうな表情を、逆にネギは目を輝かせて見ていた。


「なんだ~、嬢ちゃんは興味なさそうだな?」


「まあ・・・私とは関係ない世界の話ですので・・・・・。それよりアンタ私たちをゲートポートに迎えに来てくれるはずだったんだろ? 何で来てくれなかったんだよ」


「むっ!?」


一瞬ラカンの額に汗が流れた。

千雨の指摘に少し顔を逸らして一瞬だけ気まずそうな顔をしたラカンだが、すぐに豪快に誤魔化した。


「すっぽかした! メガロメセンブリアなんて遠いしダリーじゃねえか」


「「なァッ!?」」


(まあ、ドリルで腹に穴を空けられて、しばらく寝てたなんて言わねえ方がいいだろうからな)


ラカンは未だにドテッ腹に残る痛々しいほどの傷跡を摩っていた。

すでに完全に貫通した穴は塞いでいるため、痛みもないのだが、美しき強靭な腹筋からは傷跡を完全に消し去ることは出来なかった。

ネギも千雨もその傷跡を見て、ラカンを百戦錬磨の戦士として確信を強めていたのだが、まさかその傷が最近出来た、シモンのつけた傷だとは思っても居なかった。


「おい、先生やめとけよ。こんなおっさんには習わないほうがいいんじゃねえか?」


強さと百戦錬磨振りを感じ取ったものの、信用できる人物とは思えず、千雨はネギの耳元で小さく忠告するが、ネギは逆にラカンから今の自分が最も求めているようなものを感じ取ったのか、キラキラした目をしていた。

その目を見て千雨は嫌な予感を感じた。


「でも・・・・凄い気合を持っていそうな人です・・・・」


「へっ?」


「今以上の気合を得るには、この人に師事してもらうしかありません!!」


「待てーーーッ!? いったん気合から話を戻せ!!」


まったく具体性の欠片も無い言葉に慌てる千雨だが、対するラカンはニヤニヤしていた。


「ほう、気合か~~、いいじゃねえか。しっかし、そーゆう言葉遊びで成長が止まるのもよくある話だぜ?」 


「違います! 僕がほしいのは、・・・・本当の強さ・・・・たとえボロボロになってもあきらめない、全力で自分を信じて、自分を掘り抜ける・・・・いつだってそんな前向きな・・・「ドアホウ!」・・・ごほっ!?」


真っ直ぐな目で反論しようとするネギの頭に軽く拳骨するラカン。もっとも、軽くと言ってもラカンの拳骨ならネギの本気のパンチクラスなのだが・・・・


「本当の強さとか、性格とか、そんなもんお前みたいな真面目な奴が陥りやすい罠だぜ?大体性格や生き方が修行で変わってたまるかよ。そんなもん精神論の話じゃねえか」


「そ・・・そんな~~」


「全否定かよ・・・・」


拳骨でうずくまるネギに容赦なく言うラカンだが、千雨は少しだけホッとしていた。


(あ~よかった。どうやら修行に関しては真面目らしいな・・・・大体あの熱血バカみたいに気合とか、魂とかで簡単に強くなるかっての。その点に関しちゃ安心か・・・・・?)


学園に居た時から、気合だ、魂だ、と叫んでいたネギを見ていただけに、少し心配だった千雨だったが、ラカンが少しまともな意見を言っていたので安心していた。

別にシモンの気合を否定しようとは思っていないが、千雨の目から見ても、シモンの力はまた別の力だと思っており、何の具体性も無い『気合』という単語のみでネギを突き進ませていいものか、少し心配だった。


しかし・・・・・


「だから気合なんて、強さに関係ねえ、・・・・・・・っと言いたいが・・・・」


雲行きが変わった。

その瞬間千雨の心に嫌な予感が浮かび上がり、それが即効で的中した。


「気合は別だ!!」


「「・・・・・へっ?」」


「俺はそんな突き抜けた気合バカは嫌いじゃねえッ!!」


千雨の読みは甘かった。ラカンもこういう人種だった。

そしてラカンは上機嫌に高笑いしながら、拳骨したネギの頭をクシャクシャ撫でた。


「ガッハッハ、しっかし、タカミチに聞いてたのと少し違うじゃねえか! 行儀がいい素直な坊主と聞いたんだが、随分熱いこと言うじゃねえか! 親父に似てるぜ! なんか良い出会いでもしたのか?」


ラカンの問いかけにネギはうれしそうに胸を張りながら頷いた。


「はい! 僕が信じる僕を信じろと、その人は教えてくれました。お父さんと同じように大きい背中のその人に追いつくためにも、僕はどんな修行にも耐えて見せます!」


「よっし上等だ! やっぱ男はデカくいかねえとよ!!」


こうしてネギとラカンの修行はシモンたちの知らないところで始まっていた。

今、目の前には居ないが、自分の目標とする者たちのレベルに追いつくためにも、ネギはネギなりに気張っていた。


そしてその追いつこうとする男は今どうしているのか?


その男は今、瀬田一家と共に、徐々に存在が世界に知れ渡り始めていた。









ここは魔法世界にある、どこかの冒険者の街。

今ここでは、ある四人組の話題で盛り上がっていた。


「ねえ、グレイグ。また噂の四人組がやらかしたみたいよ」


「またか!? ちっ、こっちは一つの遺跡を攻略するのに、とんでもない労力を使ってるってのに、一体どんな凄腕の冒険者たちなんだ?」


グレイグという名の男は、同じパーティの女の言葉に舌打ちをした。


「ほんとほんと~、これじゃあテンション落ちちゃうよね~」


「割に合わない・・・・」


そしてグレイグと同じように他の仲間もヤレヤレといった感じで溜息をついた。

四人四色の男女の冒険者チーム、アイシャ、グレイグ、リン、クリスティンたちは入ってきた情報に驚きと、疑問を隠せなかった。


「あの、アイシャさん。四人組って何のことです?」


そんな四人組にオズオズと尋ねるのは、最近このチームに加入した少女。ノドカことネギパーティの宮崎のどか。彼女もまた、アスナ達同様に、巻き込まれた事故にめげる事無く、真っ直ぐオスティアへ向けて、進路を取っていた。


「ああ、ノドカは知らないでしょうけど、最近冒険者仲間の間で有名なのよ。ここ数日で、超ハイスピードで遺跡を攻略して財宝を手に入れている四人組みがいるのよ」


「ハ、ハイスピードですか?」


「ああ、俺たちが一つの遺跡を攻略する頃には、既に二・三を攻略して、次に動いてるって話だ。何でも噂じゃあ一発で罠を見破ったり、強固な壁にアッサリと穴を空けて抜け道を行ったりするような男がいるらしいぜ」


「誰だか知らないけど、こっちは商売上がったりだよん♪」


「冒険者としてのレベルが違う・・・」


その言葉にのどかは少しショックを受けた。

図書館島や別荘での訓練もあってか、のどかは冒険者としてのレベルだけではなく、ダンジョン攻略や罠などを見破る能力が飛躍的に上昇していた。そんなのどかの加入もあってか、グレイグたちの遺跡攻略速度は大幅に上昇したと言っても過言ではない。

更にグレイグたちも素人目から見ても相当な冒険者としての実力を兼ね備えていると思っており、そんなグレイグたちよりも遥かに優れたものたちを、のどかはとても想像できなかった。


「上には上がいるんだな・・・・私もがんばらないと・・・。ネギ先生・・・私がんばります!」


愛する少年に誓いを立てたのどかだった。


そして噂の四人組とは誰か?


決まっている、奴らしか居なかった。






そして舞台は再び移る。

そこにはグレイグたちが噂にしていた四人組が食事をしながら丸いテーブルで、四人の内の一人の眼鏡を掛けた男が読む本の内容を聞いていた。


【南の古き民と北の新しき民は古くからの確執があり、ついには「大分裂戦争」と呼ばれる全面戦争にまで至るほどになった。

しかしそれは真実ではない。

両陣営にとって一部の利の無いこの戦争の裏側には、世界を欺き私腹を肥やす悪党たちの姿があった。

両陣営の中枢にまで潜り込んだ彼らは不安と混乱を煽り、怒りと憎しみを醸成させ、戦火を拡大させようとした。

彼らこそ、悪名高き「完全なる世界(コズモエンテレケイア)」である。

この組織の壊滅と歴史あるウェスペルタティア王国の王都オスティアの犠牲を持って大戦は終わりを告げ、最悪な事態は免れる。

大戦末期、全ての真相を暴き、世界を滅亡の危機から救った英雄が居た。その名は「紅き翼(アラルブラ)」ナギ・スプリングフィールドを初めとする英雄たちだった。】



「・・・・・・・・・・出典、・・・ヘラス帝国・・・こんなところかな?」・・



分厚い本をパタンと閉じ、瀬田は疲れたのか大きく背伸びをして息を漏らした。


「う~ん、中々壮大な歴史だったね~、サラの持って来てくれた本の内容は」


「しっかし、まあ・・・随分と映画みたいな話だな。どこのポッターだい?」


「これがこの世界の歴史・・・・・・ってゆうか気になったんだけどシモン・・・・」


「ああ、あの筋肉化け物もたしか紅い翼(アラルブラ)とか言ってたな・・・・・・・」


「この世界の最強クラスの英雄の仲間だったってか? どーりで強いわけだ・・・・。お前よく勝ったな」


「いや、・・・・あれは結構手加減されてたと思うよ? 多分・・・・賞金首じゃない俺を殺すのは避けたんだと思う・・・・」


「えっ? あれで・・・・手加減? よかった~~、お前が居てくれて。私一人じゃ絶対捕まってたじゃん」


サラがアリアドネーから盗み出した歴史書には、つい数十年前の歴史が描かれていた。亜人やヒューマンの戦争、「完全なる世界」、「紅き翼」、そして英雄ナギ・スプリングフィールドなどのごく最近の、この世界に住むものなら誰もが知っているような歴史が書かれていた。

壮大な物語に、思わず息を漏らすシモンとサラ。さらに少し前に戦ったラカンが紅き翼と名乗っていたことなど、今にして思えば背筋が凍るようなものだった。

しかし聞き入っていたシモンとサラとは違って、瀬田は本をジッと見ながら、どこか腑に落ちない表情をしている。


「パパ?」


「ん? あ、いや・・・・サラのもって来てくれた本はとてもおもしろい・・・・しかし・・・・」


「?」


「・・・・しかし・・・・ここには僕の欲しい歴史や情報までは書かれていなかったな・・・・それが意図的に書かれていないのかは分からないけど・・・・」


「・・・・そうだな・・・・。内容も薄いし、所々ハショッてやがる」


「「えっ?」」


瀬田の呟きにハルカだけは納得したように頷いた。

たしかに歴史は新しいが、それでも十分すぎるほど濃い内容だったとシモンもサラも思っていただけに、首を傾げた。

瀬田も首を傾げる二人に苦笑しながら、自分たちの気づいた疑問点を告げる。


「ああ、・・・・たとえば・・・ここに書かれている悪党たちの「完全なる世界」・・・彼らの目的が曖昧すぎる」


まずは素朴な疑問だった。どこから読んでも紅き翼の褒め殺しに対して完全なる世界はつぶされて当然のような悪党のように書かれている。

しかし瀬田はそこに疑問を感じた。


「私腹を肥やす悪党が、どうして自分たちの住む世界を滅ぼす必要があるんだい?」


「あっ、そういえば・・・」


「・・・そうだよな・・・、だって私腹を肥やしても使う場所が無きゃ仕方ないし・・・・パパ、どーゆうこと?」


私腹を肥やす連中はどこの世界にもどこにでもいる。

しかし世界を滅ぼすのとはレベルが違いすぎる。だが確かに紅き翼が世界の混乱を収めたのではなく、滅亡の危機から救ったと書かれているのである。

シモンもサラも、合点が言ったかのように頷いた。


「まっ、そーゆうことだな。戦で私腹を肥やすってのは簡単に言えば、武器商人とかマフィアが、戦争で儲けようってことだ。しかしそれが世界の破滅に繋がるってのは、訳が違う」


「うん、これは僕の推測だが・・・・完全なる世界という組織の者はたくさんいた。しかしこの歴史書には書かれていない、何かの理由で世界を破滅させようとした者達もいた。」


「う~~~ん・・・・ようするにその悪党たちの一部には別の目的を持っていた奴がいたって事ですか?」


「うん、そしてそのメンバーたちが、紅き翼たちが戦った本当の敵の姿・・・・まあ、それ以上は・・・・そもそも地球でも、世界を滅ぼそうとする人なんて聞かないからな・・・・」


瀬田が疑問に思ったのは「動機」それが分からなかった。

世界を破滅へもたらすという言葉が、紅き翼たちの功績に誤魔化され、真実が深く描かれていないことに疑問に思ったのだった。

しかし瀬田は一度黙ったかと思ったら、小さく笑い、本を静かに机の上に置いて背伸びをした。


「でもまあ、これが僕たちの目的と繋がっているかは分からないけどね・・・・」


まるで深く考えることを放棄したかのような様子だった。その言葉を聞いてシモンも素朴な疑問を思い出した。


「そういえば、気になってたんだけど、瀬田さんたちは賞金首になってまで何を調べているんだ?」


サラは父親の手伝いをしているとしか教えてくれなかった。自分も細かいことを気にしない性格の上に、これまで駆け足で過ごしてきただけに深く聞く暇が無かった。

一体犯罪者になってまで、何を知りたかったのかが疑問に感じた。

すると瀬田が少し顎に手を置き、どうしようか迷っている表情だったが、直ぐに元に戻った。


「・・・・う~ん、一応モルモル王国のトップシークレットだし、これを聞くと君にも被害が・・・・・と今更言うのは野暮かな?」


一応シモンはアスナたちと違って賞金の掛かった犯罪者でないために、自分たちの話を聞いて巻き込んでしまうかと思い、一瞬躊躇ったのだが、同じ男として語らずとも瀬田はシモンの本質に気づいていた。

当然シモンは笑いながら頷いた。


「ははは、ああ・・・・・野暮だな」


その答えを聞いて瀬田も予想通りだと思い、ニッコリと笑った。


「ふふ、やはり君は僕の思ったとおりの人だ。だが、う~ん、しかし全部を話すのも・・・・それにまだ何も答えは出ていないし・・・・そうだな~、・・・・(アスナちゃんたちに説明しようとした時はボケ~っとされちゃったしな~)」


だが、一度アスナ達に話した時に変な目で見られたことが記憶に新しいのか、自分のまったく明確ではない仮説を語ることに、瀬田は少し躊躇いを感じてしまった。


「う~ん、まだ僕が調べていることは【点】と【点】に過ぎない・・・しかしこれをいつか【線】で結んで、・・・・この世界の真実を知ることかな?」


そのため瀬田自身も上手く説明できないために、曖昧なことしか言えなかった。


「・・・・真実?」


深く内容を読み取れないシモンは当然首を傾げた。すると瀬田は少し照れ笑いをしながら己の胸の内を語る。


「そう、・・・この歴史書と同じように、この世界は僕が魔法使いではないことを抜きにしても、謎が多い。知らないままでいることが幸せでも、僕は不幸になってでも知りたい、それが僕の大好きな謎を解き明かすための冒険さ」


その時、落ち着いた大人の物腰を感じさせた瀬田の表情が、まるで子供のように見えた。

シモンはその表情をつい先ほど見た。

遺跡で共に穴を掘っている時の瀬田の表情は、今と同じように子供のように楽しそうだった。


「この世には、未だ解けぬ幾つもの謎が隠されている。それを地中から掘り起こすのが、僕の生きる喜びなんだよ」


瀬田の言葉にハルカは「ヤレヤレ」といった感じで呆れているが、その表情はとても穏やかで、母性を感じさせた。シモンはそんなハルカを見て、きっと彼女はこんな瀬田に惚れたのだろうと思い、笑みが零れた。


「パパ・・・・カッコいいけど、説明になってないよ・・・」


サラもまた、父親の言葉に恥ずかしそうに苦言するが、シモンにとってはそんなことなど無かった。


「いや・・・俺は分かったよ・・・・」


「ほらな。・・・・ってえええ!? なんで分かんの!?」


そう、シモンには今の説明だけで理解できたのだ。

小難しい、政治や、歴史や仮説などを語られても、正直なところシモンが理解するのは難しかっただろう。だが、瀬田の嘘偽りの無い素直な感情から出た言葉だったからこそ、シモンは納得できた。


「いいんじゃないか? 男は人に何と言われても、自分の胸の中に抱いた魂や、探究心には勝てないんじゃないかな? 要するに瀬田さんが言いたいのはそういうことだろ? たとえ狙われることになっても解き明かしたいものがある。俺はそう言われた方がむしろ納得できるよ」


自分がやりたいから、やる。シモンにはそれで十分だった。

すると瀬田はシモンの言葉に一瞬目をパチクリさせたが、次の瞬間笑いを堪えきれず、クスクスと笑った。


「ふふふ、どうやら僕は・・・君を侮っていたようだね。君は僕の想像以上に自分に正直なんだね」


「えっ、そうかな~?」


「そうだろ? 君は、たとえ人がなんと言おうと、自分で決めた道を自分のやり方で通す。そんな人に見えるよ?」


己とは何か?

その答えはまだ出ていない。

しかし瀬田にそう言われて悪い気はしなかった。


「そう・・・だったのかもしれない。今は難しいかな・・・・そうありたいと思っているけど」


二人が最初に感じたシンパシーはこれだったのかもしれない。

ただ同じ穴掘りなのではない。自分が思ったことに迷わず前へと進む。二人とも同じような生き方をしてきたのだ。

それがようやく分かった二人だった。


「お~い、ったく、二人して何訳の分かんないこと言ってんだよ~。私たちのこと忘れるな~」


「ホントだよ、ったく。それで、結局これからどうするんだい?」


「そうそう、ここ数日で色んな遺跡を掘り起こしたけど、大した成果無かったじゃん」


娘の鋭い指摘にギクリと肩を振るわせる瀬田。


「うっ・・・・、痛いところ言われちゃったね~。でも、まだ後一個調べていないところが・・・」


「それって、南の大陸の辺境にあるって聞いた所のか? でも、そこは詳しい場所がよく分からなかっただろ?」


「い、いや、でも実はあれから少し調べて、そこの遺跡はとある名家が保護下に置いている遺跡って噂を聞いたんだよ! その家の人に頼み込めば教えてくれるかも・・・」


「・・・・・私達はお尋ね者だぞ?」


詳しい地理が分からない。それはこの広大な魔法世界では致命的である。

さらに私有地内にある遺跡を探索するには当然許可が必要なのだが、お尋ね者の瀬田たちに降りるはずもない。

ましてや相手は相当の名家というため、強行するのなら戦う覚悟も必要である。そのため、少し敬遠していたのだが、瀬田は今になって名残惜しそうにグチグチ言い出した。


「うっ・・・たしか・・・セブンシープ・・・って家だったかな? たしかにこれ以上騒ぎを起こしたくないけど・・・・。でも・・・もしこれで重要な遺跡だったら・・・」


「ったく、違法になってでも調べたいなら、せめて正確な場所が分かってからにしな。大体もう十分堪能しただろ? シモンと一緒にどれだけ遊んでたと思っているんだ?」


「い、いや・・・遊んでいたんじゃなくて、歴史の探求を・・・・」


瀬田とシモンが出会ってわずか数日。

しかしこのわずか数日で二人は本能に任せて迷宮、ダンジョン、遺跡など瀬田がこの世界に来てから追っ手を退けている間に調べた冒険者たちの挑戦し続けた財宝を難なく手にすることが出来た。

これもこの二人が揃ってこその成果と言える。しかしその財宝の中には求めていたものは無かったのだった。


「お前は世界を知るには歴史の勉強と過去の遺跡を探索するのが一番手っ取り早いなんて言ってるけど、本当はお前、ただ単にこっちの世界の遺跡を発掘したかっただけだろ?」


「なななな、何言っているんだよハルカ~、僕はカオラちゃんの依頼はちゃんと覚えていたよ~?」


「・・・・・怪しい」


ハルカが目を細めて瀬田を睨むと、瀬田は汗をダラダラ流しながら挙動不審になった。


「ま、まあ、シモン君のドリルのお陰で、発掘作業の時間が短縮できたどころか、お釣りが出るぐらい見て回れたけど、たしかに目立った成果は無かったのは認めるよ・・・・」


「えっ? これだけ・・・・集めたのに・・・・」


シモンは瀬田の発言に目を点にしながら、自分たちの真後ろにあるテーブルへ振り返る。

そこには見ただけで目が痛くなるほどの神々しい光を放つ積み上げられた金銀、宝石、立派な彫刻や用途の分からないマジックアイテムなどの財宝の山が見上げられるほど積まれていた。

しかし瀬田もハルカも、サラでさえも目の前にある、売れば大金に換えられること間違いなしの財宝に大した興味を示していなかった。


「はっはっは、いくら魔法世界の難解なダンジョンとはいえ、基本は地球と大して変わらないからね! 僕の経験とシモン君のドリルでらくしょーだったね♪」


冒険王の名前はたしかに魔法世界ではそれなりに知れ渡っていた。

しかし巷の冒険者たちの間では、ここ数日で数多くの遺跡を攻略した謎の四人組の冒険者たちとして知れ渡っていた。

だが、もう十分ではないかと言うほどの財宝を前にしても、瀬田は楽しさでは満たされても、満足はしていなかったのである。


「でも、たしかにこれらは高価なものだ、・・・でも僕はトレジャーハンターじゃないからね。お金に換わるものに興味ない。これだけなら財宝目当ての盗賊たちと変わらないからね」


あくまで自分たちは金のために動いているのではない。そこに瀬田の譲れない信念のようなものを感じた。


「僕が求めているのは、いくら積まれても代えることの出来ないもの。残念ながら、まだ見つからないね」


「お金に変えられない・・・。それじゃあ瀬田さんが今まで見つけた中で一番の宝って何?」


瀬田の純粋な想いに、苦笑しながら瀬田に尋ねると、瀬田はニッコリと微笑んで胸を張る。


「はっはっは、決まってるじゃないか!」


そう言って瀬田は誇らしげに笑ってハルカとサラを抱き寄せた。


「二人に勝る宝は、この宇宙どこを探したって無いよ♪」


「「「!?」」」


瀬田に抱き寄せられた二人は、まったく恥ずかし気もなく告げる瀬田の言葉に、逆に自分たちが真っ赤になってしまった。


「パ・・・パパ・・・・」


「ぐっ・・・・(油断した・・・何故コイツはいつもいつもこんな不意打ちで・・・・)」


驚いて思わず噴出しそうになりながら、顔を赤くするハルカとサラだった。

一方シモンは、瀬田の言葉にまるで尊敬を抱いたかのような眼差しで小さく微笑みながら頷いた。


「家族・・・・・か・・・・・」


そしてその一言を呟いて、何か心の中に引っかかりを感じた。


「・・・・か・・・・ぞく?」


自分の言葉を言いなおして、シモンはもう一度首を傾げた。


「・・・シモン君?」


「あっ・・・いや・・・・家族・・・・・俺にも・・・家族はいたのかなって・・・・・」


目を閉じて、アリアドネーに居たときを思い浮かべる。

コレットに兄と呼ばれたとき、自分には弟、もしくは妹が居たんじゃないかという指摘をされて、それが満更でもなかったことを思い出した。

そしてそれだけではない。

自分には瀬田にも劣らないかけがえの無い宝物があったはずだと思い出す。


「・・・俺は覚えていない・・・・けど、心が覚えている。俺には・・・・確かにこの手に宝があった・・・・」


シモンは少し複雑そうな表情をしながらコートの内側に手を入れ、中から一枚の写真を取り出した。


「これが、俺にとっての宝・・・かな?」


そこにあるのは、シモンとニアの幸せそうな一枚の写真だった。

いきなり提示されたものに当然三人が食いついた。


「うわっ、何だよコレッ!?」


「ほ~う、・・・中々・・・いや・・・ハンパなく美人じゃないか」


「恋人かい? やるじゃないか、シモン君」


美しい女性と寄り添うシモンの写真に思わず身を乗り出してサラは食い入るように凝視した。


「なな、・・・・・なんだよ・・・・お前・・・・恋人居たのかよ・・・」


口をへの字に曲げて、すごくつまらなそうな表情をして少し落ち込み気味になるサラは、幸せそうにシモンに寄り添うニアと、照れた表情を浮かべて並ぶシモンの顔を何度も見る。


(な、・・・・なんだよ・・・デレデレしやがって・・・・恋人いんじゃね~かよ・・・・べ、別に私にはカンケーねえけど・・・・)


不満げに少し顔を俯かせるサラの気持ちを察してか、ハルカは無言でサラの頭に手を置いた。


「ったく、・・・・んで? この子はアンタの何なんだい? ・・・・って言っても記憶が無いんだったか?」


ハルカの言葉にシモンはゆっくりと頷いて、サラの手から写真をゆっくりと取り上げて、ニアの顔を見ながら呟く。


「うん、覚えていないんだ・・・・この子の・・・名前も・・・どんな子だったのかも・・・覚えているのは、この子が俺の宝物だったってことかな?」


覚えていない。それが何よりも悔しかった。

絶望に囚われた自分をアッサリと救ってくれた女のことを、自分は何一つ覚えていないのだ。

だが、分かったこともある。


「・・・・事故直後より俺も色々分かってきた。・・・俺は間違いなくこの子が好きで・・・俺は誰よりもこの子を信じて、この子も俺のことを信じてくれた・・・・そして・・・・」


誰よりも自分を信じ、誰よりも自分が愛した女。

そして・・・


(そして・・・・・もう・・・この世に居ないことも・・・胸の中に開いた穴が教えてくれた・・・・)


そこから先は口に出して言わなかった。

しかし複雑な何かを感じ取った瀬田は、シモンの気持ちを察してそれ以上聞こうとはせず、明るい声で、語りかける。


「そうか~、だったら尚更記憶を取り戻しておかないとね~」


シモンも瀬田の心遣いを理解し、顔を上げて、笑顔で頷いた。


「はい、だけど俺にはどうすればいいのか分からなくて、取り合えず今は自分の意思に従ってこの世界と人類を見たいなって思ったんだ」


瀬田とは少し違うかもしれない。

しかし頭の中に響いたロージェノムやアンチスパイラルの言葉。そして二アの言葉が今のシモンに前へと進む意味を与えていた。


(そう・・・・本当に世界は滅ぶのか・・・・いや・・・・違う、滅ばないんだってことを確かめなきゃいけないんだからな)


このことに関してもシモンは瀬田にもサラにも言わなかった。「完全なる世界」と世界の滅亡と言う言葉の何かのヒントになるかもしれなかったが、シモンは自分の胸の中に閉まった。

それは隠していたわけではない。

しかし答えは自分自身で出そうと思っていたから、シモンは言わなかった。

すると押し黙るシモンに、瀬田は指を鳴らしてある案を出す


「記憶・・・・それならいい方法があるよ?」


「「えっ!?」」


シモンとサラは思わず顔を上げた。


「実は噂で聞いたんだけど、この世界には人の記憶を読み取って、映像にする技術があるそうだ」


「な、・・・記憶を・・・映像に?」


「それって、映画みたいに出来るってこと? それじゃあ私にも見れるの?」


「多分ね。それは大きい街でしか出来ないし、お金も少し掛かるみたいだけど、まあ、それに関しては大丈夫だろうね。なんせこの近くには・・・・」


「なるほど、オスティアか・・・・」


「その通り♪ 悪くないんじゃないかな?」


オスティア。その単語にサラとシモンは顔を見合わせた。


「オスティアか・・・・・なあ、シモン。たしかあの白髪頭もそんなこと言ってなかったか?」


「ああ、・・・偶然か・・・運命かは分からないけど・・・・やっぱりアイツとは因縁みたいなものを感じるな・・・・」


オスティアで待つと言った、フェイトを思い出し、自然と口元に笑みが浮かんだ。

記憶を取り戻す、そして決着を付ける。オスティアには二つの目的が揃っているのである。


(いいぜ、お前が知っている俺になってから、ケリをつけてやるよ)


シモンは自然と拳を力強く握った。


(ったく、男って野蛮だよな~)


サラも今のシモンの頭の中を理解して、呆れていた。


「にしても、オスティアか・・・。それじゃあサラの帰りを待ってもらって、木乃香たちと一緒に行ってやった方が良かったんじゃないか?」


「う~ん、そうかもね~」


「・・・・・・このか?」


突然のハルカの呟きにシモンが首を傾げると、シモンではなく、シモンの相棒が過剰に反応した。


「ブイイ!?」


「うわっ、どうしたんだよブータ?」


「ぶみゅっ、ぶみゅっ!?」


よくよく考えればネギがテレビに出ていたのだ。木乃香もこの世界に居ても何らおかしくはなかった。ブータは懸命にシモンに何かを伝えようとするが、シモンもまた、木乃香の名前に何かを感じ取っていた。


「このか・・・う~ん・・・・このか・・・・あの、このかって?」


「ああ、数日前に会った女の子たちで、年はサラと同じぐらいかな?」


「・・・それがどうしたんだ?」


「いや・・・・このかって・・・・どこかで聞いたような・・・・」


それは僅かな引っかかりだった。

頭の中の片隅で、自分に真っ赤な顔で何かを伝えようとしている黒髪の少女が、一瞬だけ頭の中に浮かんだ。


(・・・・・そう言えば、・・・グラニクスでもあの変態女剣士が言ってたな・・・・たしか・・・刹那・・・・・う~ん、木乃香に刹那・・・・・どこかで・・・・)


そして木乃香の名前だけでなく、グラニクスで月詠が口にした刹那の名前を今になって、思い出した。

あの時は、緊急事態だった上に、それほど気には留めなかったが、木乃香と刹那という二人の名が揃って初めてシモンは何かを思い出しそうになった。

するとサラはつまらなそうに口を突き出して、愚痴りだした。


「へん、なんだよ? ひょっとして昔フッた女だったりしてな?」


「は、はあ? そんなバカな。そんなことあるわけないだろ?」


残念ながらそんなバカだ!

ブータはシモンにそうツッコミたかった。

するとニアの写真を見てから不機嫌なサラはジト目で嫌味を言う。


「いや~、わかんね~ぞ~、なんてったってお前ってば強い女をメチャクチャにして、ただの恋する女にさせたって、あの女も言ってたじゃんかよ!」


「おい、サラ! あんな奴の話を信じているのか?」


「だってそうじゃん! お前は昔何とかって女をメチャクチャにしたって・・・・、この写真の女といい、お前は・・・・」


「ったく、そんなわけないじゃないか。あんまり人聞きの悪いことは言わないでくれよ」


多少歪曲しているが真実だ!

そう言いたいブータだった。

しかしそんなブータの心中を察するものはなく、サラの不機嫌な声と、オロオロするシモンのやりとりに、瀬田とハルカが笑いながら眺めていた。


「やれやれ、のん気なもんだ。それじゃあ、目的地も決まったし飛行船でも調達するかい? 一応金はありそうだしな」


「うん、オスティアに行くには空路で行くしかないし、それにオスティアを拠点にするなら正に魔法の絨毯は必要だからね♪」


「それじゃあ、行こうぜ! さっさとシモンの頭を元に戻して、帰る方法も考えよーぜ。私だって学校あるんだしさ」


「大丈夫♪ 仮にサラが留年したり、勉強がダメになってトーダイに行けなくなってもシモン君がもらってくれるさ♪」


「えっ?」


「ぶふううう!? パ、パパのアホォーーッ!?」


「娘をからかうな」


「ははは、冗談冗談♪」


真っ赤になってサルのように喚いて瀬田に掴みかかるサラ。しかし最初は冗談だと軽口を言っていた瀬田だが、少しだけ様子が違った。


「まあ、でもシモン君なら僕の研究をついでモルモル王国で発掘活動を手伝ってくれそうだしね~。そう考えると満更冗談でもないよ~? ケータロー君は、なるちゃんと忙しそうだし・・・」


「ま、まあアイツらも女子寮を旅館に改築して、忙しいらしいからな・・・・」


「だろ~、だから将来有望な穴掘り好きが必要なんだよ~~」


ハルカが少し遠くを見つめながら懐かしそうに呟いた。

そして瀬田は目を光らせながら身を乗り出してシモンに尋ねた。


「どうだいシモン君! 将来モルモル王国で発掘活動をしながら暮らさないかい? 今なら僕の大事な大事な宝物を片方譲ってあげるよ?」


「・・・えっ? その・・・俺は・・・」


突然の勧誘活動に動揺してしまうシモン。

そしてサラのテンパりは最高潮に達した。


「ななな、宝物の片方って私のことかよッ!? ぱ、パパは私がコイツと結婚して、男の子と女の子一人ずつ子供生んで、一緒に発掘活動して、子供達も一緒に泥だらけになりながら家に帰ってきて、一緒にお風呂に入ったり、ご飯食べて、家族みんなで同じベッドで寝て、おやすみなさいのキスして、次の日も朝はおはようのキスして、そんでまた一緒に遺跡に遊びに行くとか・・・・・そんなツマンネー生活私がしたいとでも思ってんのかよッ!?」


娘の暴走に頭を抱えるハルカ。小さく鳴くブータ。

しかし瀬田はニッコリと笑って相変わらずだった。


「だってハルカは僕のものだしね~♪」


「ムキーーーッ!?」


目の前の父娘のやりとりは、徐々に激しさを増す。

しかしその中でシモンは何かを考えながら真剣な顔で、とんでもない一言を言い出した。


「発掘活動・・・・・穴を掘りながら暮らしていく・・・か・・・うん、俺には悪くないかもな・・・・・」


「「「えっ!?」」」


「ブウッ!?」


時が一瞬止まってしまった。


「シシシ、シモ・・・おま・・・どーゆう・・・・だだ、大体おま・・・・か、かのじょ・・・・」


口をパクパクさせながらシモンを見るサラ。

だが、シモンの判断基準はソレではなかった。


「だって・・・穴を掘ることが仕事って・・・いいことじゃないか! 宝物を掘り当てる事だってある。俺は・・・・そんな生き方はとてもいいと思うよ」


「んなこったろーと思ったよ!?」


「はあ~~~、まさかここまでこのバカと同じタイプだとは・・・・」


サラがどうとかではなく、将来穴を掘ってソレが仕事になる。ソレがシモンにとっては魅力的に感じたのだった。

激昂するサラ。心底呆れたように溜息をつくハルカ。


しかし・・・


「シモン君・・・・」


この男は何故か眼鏡の奥の瞳をウルウルさせていた。


「シモン君! その通りだ! 僕もよく学生時代は変人扱いをされていた! 穴ばっか掘っておかしいだの、変な奴だと後ろ指を指されたけど、僕は自分の人生を楽しく、そして誇りに思っていた!!」


「あ、あの・・・瀬田さん?」


「う~ん、うれしいな~。ケータロー君以来、僕はようやく心の友に会えた気がした!」


瀬田はものすごい勢いで、シモンの両手を掴み、興奮したように喋りだした。

同属嫌悪とは真逆の感情が、瀬田を埋め尽くしていた。


「よ~っし、将来はモルモル王国に是非来てくれたまえ! その時は、僕の持っている知識や発掘能力の全てを授けよう! ついでに、君にならサラもあげよう!」


「えっ・・・あっ・・・・その・・・」


「ババババ、バッカーッ!? 人の意見を聞かないで何勝手なこと言ってんだよーーッ!?」


「あきらめろ・・・・こうなったコイツは止められん」





シモン・・・なんやかんやで内定ゲット。














そして、シモンたちの現在居る場所から数十キロほど離れた高原地域で、今正にその首を狙わんとしているもの達がいた。


「ほう、その情報に間違いは無いか?」


「ああ、間違いない。冒険王だ・・・手配書に乗っていないのが一人居るがな」


「モフフフフ、冒険王の妻は良いおっぱいを持っていると聞く。これは楽しみネ」


「は~怖いよ~。でも生活のためには僕もがんばらなきゃ」


同じ黒衣を身に纏った不気味な集団。

目の奥を光らせて、遠くの村がある方角を見る。


「居所知れずだったが、ようやく見つけたか」


「行くのか、隊長?」


獣人、魔族、どちらとともれそうな亜人の集団が、リーダーらしき男に尋ねると、男は従う部下達に鼓舞をする。


「ああ、当然だ! 久々の大仕事だ! キッチリ仕留めて来ようではないか! 他の奴らには奪われるな!」


「はあ~~、仕事か~、怖いよ~。強いんだろ~な~」


「いい乳をゲットするネ」


「ようやくボーナスが出そうだな」


獲物を見つけた獣のごとく、不気味な雰囲気を醸し出して歩き出すのは、賞金稼ぎ結社『黒い猟犬(カニス・ニゲル)』と呼ばれる集団である。

冷酷非情でその名を魔法世界に轟かせている彼らが、ついに瀬田たちの存在に目をつけた。

久々の大物を見つけたことがれしいのか、顔に僅かな笑みを浮かべていた。


だが、突然歩き出した彼らの背後から声を掛けられた。




「待ってくんない、おっちゃんたち?」




「「「「!?」」」」




四人は慌てて振り返った。

いつの間にか自分達の背後に現れた謎の人物。

いや、それだけでなく、この世界の者は自分達の黒衣の姿を見るだけで震え上がり、ほとんどの者が関わろうとしなかった。

それを何の躊躇いも無く、声を掛ける存在がいきなり現れたことに驚いた。


「・・・・何者だ?」


部隊の隊長である男が問いかける。

そこには二人のシスター服を身に纏った少女達がいた。


「今の話・・・・ちょいと詳しく聞かせてくんない?」


少女は自分達にまったく恐れる気配も無く、軽口を叩く。しかし隊長の男は目の前の少女をただの少女とは思わず、警戒心を強めながら口を開く。


「・・・断る。仕事の内容をバラす者がいると思うか?」


すると少女は「やっぱり」という顔で落ち込んだそぶりをみせる。


「あ~あ~、やっぱ、そうっすよね~。・・・・・でも・・・・・そこを曲げて欲しいんだよね~・・・・だってひょっとしたらそこに・・・・」


言葉遣いは軽いままだが、その時少女の眼つきと声の抑揚が変わった。


「私達の兄貴が居るかもしれないんだからね♪」


「「「「!?」」」」


シモンたちの知らないところで、戦いが始まる。

冒険王への道筋を賭けて、黒衣を纏った『黒い猟犬(カニス・ニゲル)』とサングラスを掛けた炎のドクロのマークを背中に背負った『新生大グレン団』の二人が戦う。
最終更新:2011年05月12日 14:35
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