第九十五話 それが俺の生き様だァ!! 投稿者:兄貴 投稿日:09/09/17-08:24 No.4153
祭りの熱気が最高潮に達していた。
メインイベントである拳闘大会などがまだ始まっていないうえに、この戦いは魔法世界の国民のほとんどが知らない。
しかし各々が己の力を熱く振るっていた。
「うおおおおおお! 冒険王ここまでだァ!」
「その首貰ったァ!!」
ゾロゾロと集まるメガロメセンブリアの武装した兵士たち。装備のレベルも最高のものを使用し、追い詰めた賞金首をその手で捕まえようとしていた。
だが・・・
「月歩! そして・・・嵐脚時雨!!」
「ざ、斬撃が雨のように・・・・・うがああああ!?」
「ぐわああああ!?」
「飛ぶ指銃の連打・・・・蜂の巣!!」
蹴り足を大降りではなく小さく細かく蹴りだすことにより、上空から雨のように細かい斬撃のつぶてとなる瀬田の蹴り技と、高速で突いた指先から飛び出す空気の弾丸が兵士たちの鎧に着弾した瞬間弾ける様はまるで花火のようである。
「く、気をつけろ! 間違いなくA級以上の実力者だ!」
「無闇に襲い掛かるな! 隊長格以外は下がって周りを囲み、四人の逃走を防ぐのだ!」
「「「「「了解!!」」」」」
襲い掛かる首都の戦士たちを悉く返り討ちにしていく瀬田。
「おのれ冒険王! ワシが直々に成敗してくれよう!」
「おっ・・・・強そうなのが出てきたね・・・・」
兵士たちを掻き分けて、一人の戦士が前へ出た。巨大な体とラカンのような筋肉隆々の太い腕を持ち、全身を黒く頑丈そうな鎧で覆っている。
そしてその背中には巨大なハンマーを背負っていた。
「ワシはメガロメセンブリア重装魔道兵部隊隊長のミルフだ! 犯罪者風情がいい気になりおるではない!」
醸し出す空気から一瞬で歴戦の猛者であることを瀬田は見抜いた。その証拠に、ミルフが現れた瞬間、首都側の戦士たちが声を上げた。
「うおおおお、ミルフ様だァ!」
「怒涛のミルフ隊長だ!」
相当信頼の置ける人物なのだろう。無数の兵士を蹴散らした瀬田の前に一人で現れたにもかかわらず、他の者たちは止めようともしない。
それだけで相手がどれほどなのかを見抜ける・・・・しかし・・・・
「くらえい! 土竜粉砕檄!!」
巨大なハンマーを振りかぶり、魔力による強化と腕力に物を言わせた一撃を瀬田に振り下ろす・・・・が・・・・
「鉄塊・・・・空木!!」
「なあッ!?」
「ミ、・・・ミルフ様の大巌ハンマーが・・・・」
「こ、粉々に砕けたァ!?」
鉄壁の防御で迎え撃った瀬田の前に、男のハンマーは粉々に砕け散ってしまった。この光景には攻撃した男だけでなく、彼の部下たちも信じられないような目で驚愕する。
「鉄塊のカウンター・・・並の勢いなら折れるか曲がるかだろうね・・・。この粉々に砕けたハンマーはむしろ君の強さを表している・・・だけど・・・」
「ぬ、ぬうう!?」
「もう少し功夫(クンフー)を積みたまえ!」
そして動揺した相手にすかさず瀬田の鉄拳が相手の顎を打ち抜き、勝負は決した。
男は力なく静かに倒れ、その代わり当たり一帯に大きなどよめきが走った。
「ミミ、ミルフ様がやられた!?」
「バ、バカな!? 大戦期には紅き翼の千の刃には及ばないものの単体でいくつもの艦を沈めたお方だぞ!?」
無数の敵を倒すよりも、むしろこの一勝のみの方が効果あったようだ。先ほどまで意気込んで向かってきたメガロメセンブリアの戦士たちは周りを囲むだけで、尻込みしていた。
そしてそれは首都側の戦士たちのみに止まらない。
「いくぞ、ブータ! 私たちの力も見せてやろーぜ!」
「ぶーむ!」
「冒険王ばかりに構ってはなりません! 我々アリアドネーはあのゴーレムのような物も止めるのです!」
「アリアドネー、戦乙女旅団の名に賭けて!!」
「無駄無駄無駄ァ! 行くぜぇ! メカタマ・インパクトォ!」
メカタマのコクピット内でブータを肩に乗せ、ブータの螺旋力を上乗せさせてパワーアップしたメカタマを操るサラ。
もはやガンメンとも呼べる性能を持ったメカをブータと共に動かしながら、アリアドネー魔法騎士団の戦乙女旅団たちを蹴散らしていく。
優等生のエミリィですら今はまだ見習いとして扱われている騎士団、その中でも『戦乙女旅団』といえばエリート中のエリートの精鋭部隊である。
しかし・・・
「なぜだ!? 見たこともない障壁に我々の魔法が阻まれている!?」
「気をつけなさい! ゴーレムの放つ力には魔力でも気でもない別の力を感じます! 冷静に対処を!」
「へん、冷静? 冷めてちゃいつまでも勝てねーよ! そうだろブータ?」
「ぶむ!」
「見たこともない力? だったら教えてやるぜー! これがブータと私の気合だよ!」
戦乙女たちの魔法が次々とメカタマのエネルギーとブータの螺旋力を融合させたフィールドの前に阻まれる。そして自分たちは螺旋を描くエネルギーの攻撃に障壁を破られる。
これまで経験したこともない戦いに美しき戦士たちの顔が焦りで歪んでいく。
しかしこれが螺旋の力、そしてこれがシモン同様に過去の螺旋戦士たちの無念を感じ取り、新たに気合を入れなおしたブータの上昇した螺旋力の力だった。
数で圧倒的に勝るものの、悉く返り討ちにされるメガロメセンブリア、アリアドネーの精鋭たち。
そして・・・・
「殿下の手を煩わせるな! 帝国軍の誇りに賭けて、奴等を捕らえよ!」
「やってみな。・・・・浦島流柔術・・・・龍牙!!」
「気弾!? こ、この女・・・・できる!」
「今頃気づいたのかい?」
ヘラス帝国軍の腕利きの戦士たちを、一見どこにでも居そうな普通の女に見えるハルカが、瀬田とは違う流派の体術を駆使していく。
「ええ~~い! 何をやっておるかァァ! もういい! 私が出よう!」
「マ、マンドラ隊長!?」
「帝国軍、北方艦隊部隊長であるこの私が相手だァ! おろかな犯罪者どもよ! 悪は栄えぬことを教えてやろう!」
「おお、あの方は!」
「とうとう北方艦隊のエースパイロットまで!?」
「ふん・・・・うるさい男だ・・・・」
「黙れええィ! そして受けてみよォ! この世界の空を知り尽くした私のォォ――――――」
「浦島流・・・・竜宮の柱!!」
「な、なァ!? ぎええええええええええええええええ!?」
気で作り出した巨大な柱を、向かってくる敵めがけてハルカは投げつけ、相手は断末魔のような叫びを上げて吹っ飛ばされた。
「な、瞬殺!?」
「てゆーかあの人、白兵戦なのに何で出てきたんだ? あの人、パイロットだろ?」
「し、知らんが、とにかくあの女も強いぞ!?」
銃器などを使いその体に火薬の匂いがこびり付くほど地球でも戦場を駆け抜けてきたハルカだが、体術でも十分に魔法世界で戦えるほどの力を持っている。
「やれやれ、サジ加減が難しいね。・・・銃器なら手っ取り早いんだが、殺すわけにもいかんからな・・・・。あの馬鹿と違って体術は疲れるから嫌なんだが・・・・」
基本の型は中国拳法の八極拳。そしてもう一つ、浦島流柔術と呼ばれる神鳴流同様に裏の世界では秘匿とされている力をハルカは身に付けていた。
「ハハ、すごいや瀬田さんもハルカさんもサラも。これなら俺がワザワザ助っ人に残る必要はなかったのかもしれないな・・・」
波のように押し寄せる猛者たちを、悉く打ち負かしていく瀬田ファミリーの力に改めてシモンは脱帽した。
そして逆にメガロメセンブリア、アリアドネー、ヘラス帝国の戦士たちは、噂の冒険王一家、そして彼等と共に戦うゴーグルを掛けた見知らぬ男に次々と味方が倒されていくことに目を疑った。
「バ、バカな・・・・たった・・・・たった四人組に・・・・・」
「信じられん!? 冒険王はただの密入国者ではなかったのか!?」
「ひ、怯むなァ! 相手はたったの四人だ! 数は圧倒的にこっちが有利だ! 20年ぶりの北と南の共同作戦が、失敗で終わるなど前代未聞のことが起きてはならん!」
だが、それでも四人は止まらない。
兵力差も相手の軍事力も関係ない。その程度の事で左右されるような四人ではなかったのだ。
「だ、ダメです!? 止まりません!」
「何なんだこの四人組はァ!?」
最早どう対処すればいいのか分からずに兵士たち、いや三国の間に動揺が走り、この四人が百名近い包囲網を破るのも時間の問題のように思えた。
だが、それでもまだ心を折らずに向ってくるものは居た。
一人の戦乙女が上空からシモン目掛けて魔法を放つ。
「おのれ・・・・おのれェ! だが・・・・ここから先を通すわけにはいかん! 逆巻け(ウェルタートゥル・テンペス) 夏の嵐(タース・アエスティーウア) 彼の者等に(イリース・カルカレム) 竜巻く牢獄を(キルクムウェルテンテム)!!」
「おっ、魔法か?」
「団長!?」
「お姉さま!?」
「風花旋風風牢壁(フランス・カルカル・ウェン ティ・ウェルテンティス)!!」
女が呪文を唱えた瞬間、シモンを中心に竜巻が発生し、渦巻いた気流は激しく高く上昇した。
「これは・・・・」
竜巻の気流は激しいが中心に居る分には問題なく、どうやらこれは攻撃ではなく竜巻で作り出した牢屋のようなもので、シモンが竜巻の中に閉じ込められてしまった。
「多くの戦士たちの犠牲と涙の積み重ねにより手にしたこの平和! 受け継いだ我等が未来永劫へと繋げる絶対的平和のために! 力なき者たちが安心して平和を祝うためにも! 貴様等全員この場で天罰を下す!」
美しき銀髪の髪を靡かせて、エミリィたちと同じ戦乙女の鎧を身に纏った女が竜巻の外から中に居るシモン、そして瀬田たちに向けて大声で叫ぶ。
だが・・・・・
「だが・・・・・その天を俺は突き破る!」
「なっ!?」
竜巻の中からシモンが女に向って言い返した。すると目を凝らすと竜巻の中が緑色に輝き、中に居るシモンが天に向ってドリルを掲げた。
「フルドリライズ・ツイスター!!」
シモンがフルドリルライズ形態でドリルを回転させ、ラカンとの戦いでやったように、一本一本のドリルを高速回転させ、竜巻の中からシモンが自ら作り出した竜巻で突き破った。文字通り、竜巻の壁を突き破り、天まで登った。
「バ、バカな!? 無詠唱で竜巻を!?」
シモンが出した竜巻を魔法だと勘違いした戦乙女が驚愕すると竜巻の中から竜巻を発生させる男が中から現れた。
「くそ・・・貴様は知らん・・・・一体何者だ!?」
「その答えは・・・・もう少ししたら・・・教えてやるよ!」
「ふざけるなァ! 犯罪者に加担しているのなら、貴様もただでは済まさんぞ!」
「犯罪者じゃねえ! 俺がこうして共に戦っているのは・・・・」
「紅き焔(フラグランティア・ルビカンス)!!」
「心に誇れるダチ公だア!!」
戦乙女の唱えた炎の呪文がシモンに向ってくるが、シモンは構わずドリルの刃先を炎へ、そしてその向こうにいる女に向けた。
「シモン・インパクトォ!!」
シモンのドリルに炎も、風も、雷も、全てはただの障害物にしか過ぎない。そして進む自分の前に立ちはだかるのなら、とことん風穴を開けて突き進む。
「信じられない! 団長が負けた!?」
「何者なの、この男!?」
女の放った炎の魔法も含めて、シモンは団長と呼ばれた女を吹っ飛ばした。
しかし・・・・
「ま、まだだ! まだ・・・私は終わっていない!」
シモンが手加減したのか、強固な鎧が身を守ったのか、それとも強い意志が意識を繋いだのかは分からないが、女は肩膝を突きながらもシモンを睨みつける。その瞳はまだ戦意を失っていない。
「だ、団長!?」
「お姉さま!? そのお体ではもう無理です!」
「いや、私はやれる! ここで敗れては我等の誇りも平和への道も閉ざされる!」
団長の女がシモンの攻撃を食らっても意識を保ったままヨロヨロと立ち上がる。その闘争心にはシモンも感心した。
「その根性・・・俺はそういう奴は嫌いじゃねえ。お前の正義は相当重いんだろうな・・・・でもな・・・俺の前へと進む意志も、軽くは無いんだ」
「黙れ! 逃さんと言ったら逃さん! 正しくあろうと・・・そして平和を願った先人たちが作り上げた法を身勝手に破ったお前たちの行いを、私は決して許しはしない!」
「い、いけませんお姉さま!?」
「くっ、我々も団長に続けえ!!」
「我らもだア! 勇敢な戦乙女たちに続くのだァ!」
「全員進めええ!!」
戦乙女旅団が声を上げてシモンに迫る。その心意気に打たれたメガロメセンブリアとヘラス帝国の戦士たちも身を奮い立たせて瀬田たちへ飛び掛る。
「う~ん・・・・この展開でこの気迫・・・中々だね~」
「ちょっとヤバイんじゃね?」
「ぶ~」
「ふっ、関係ないね・・・・どっちにしろ今更黙って捕まれるか」
「じゃあ・・・・決まりだ!!」
不屈の戦乙女に心を動かされ、全ての戦士たちが心を熱く燃やして再び瀬田たちに向ってくる。
だが、気迫で覆されるほどの相手ではないことを瀬田もハルカも見抜いていた。
結局は変わらずいつも通りに戦うだけ。それでこの場は乗り切れると確信していた。
だがその時だった!
「うおりゃああああああああああああ!!!!」
戦いの轟音をかき消すほどの大声が上空から聞こえてきた。
「「「「!?」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「―――――ッ!?」」」」」」」」」」」」」」」」
余りの大声に、シモンたちだけでなく、全ての戦士たちの動きが止まり、全員一斉に上空を見上げる。
すると・・・・
「おい・・・・あれは・・・いや・・・・まさか・・・あの方は!?」
「ま、・・・・間違いない!?」
数人のメガロメセンブリアの戦士たちがどよめき出して、突如上空から雄叫びを上げながら降りてくる一人の男に注目した。
「その戦いィ~~、俺も混ぜろォ!!」
軍服のズボンに上半身裸で、単身戦場のど真ん中に一人の男が降り立ち、ポカンとするシモンたちに向って指を指して、笑いながら告げる。
「誰だい・・・・あのうるさいのは?」
「たしか・・・・僕の記憶が正しければ、式典の時にいた人だよ・・・・」
そして同時にメガロメセンブリアの戦士だけでなく、アリアドネー、ヘラスの者たちも現れた男に驚愕していた。
「あれは、リ・・・・リカード元老院議院!?」
「あの伝説の英雄! 白兵戦の鬼とも言われた、あの方が!?」
「あれが・・・・首都の国家最強艦隊スヴァンフヴィードの艦長まで勤めた・・・・私たちアリアドネーにもその伝説は伝わっている・・・・」
「我等帝国側がかつて恐れたあの男が・・・・」
誰もが現れた男、リカードの名を知っていた。それほどまでにこの男はこの世界でも知れ渡った存在なのである。
そして現れたのはリカードだけではない。
「まったく、暑苦しくてうるさいのは相変わらずね。もう少し普通に登場できないのかしら?」
全員がリカードに注目する中、箒に乗って静かに降り立ち、笑う女。その人物に今度は真っ先にアリアドネーの戦乙女たちが叫んだ。
「「「「「セラス総長(グランドマスター)!?」」」」」
「随分と、手こずっているようね」
「も、・・・・申し訳ございません」
微笑みかけるセラスに向けて、団長を初め、全員が慌てて膝をついて悔しそうに頭を下げる。
しかしセラスは首を横に振って温かい眼差しで団長の肩に手を置いた。
「後は任せなさい。無理して貴方たちが倒れたら、誰が平和を守るというの?」
「グ・・・・総長(グランドマスター)」
セラスの言葉に涙を浮かべて顔を歪める戦士たち。そして彼女たちを労いながら、セラスは瀬田、ハルカ、サラ、そしてシモンを見る。
そして軽く溜息をついてセラスはターゲットでもある瀬田へ顔を向ける。
「・・・・・手配書に載っていない者もいるわね・・・まあ、それは置いておいて・・・・あなたが旧世界で名を馳せた冒険王、瀬田記康ね。随分と問題を大事にしたわね」
「・・・・・ははは、申し訳ない・・・迷惑を掛けたつもりは無いんだけど、貴方たちが強いものでこちらもそれなりに抵抗してしまい・・・」
瀬田は笑顔で答えるが、その笑みは少々ひきつっていた。それだけでなく、背中にも汗を掻いていた。
全ては突如現れたリカードとセラスの存在がそうさせた。
(この二人・・・・これまでの連中とは桁違いだね・・・)
瀬田は相手の実力をこれまでとは別格だと見抜き、いつものような柔らかい笑みが消えていた。そしてそれはハルカもサラも同じだった。
「これは・・・・メンドクサイレベルが上昇したね・・・」
「あの筋肉ダルマほどじゃねーけど・・・・・こいつら強い・・・・」
タバコの火を消してハルカが真剣な表情でぼやき、サラもメカタマの中から、リカードとセラスの力を見抜いていた。
そして・・・・
「そうそうビビるでない。これではまるで妾たちが悪者に見えるではないか」
もう一人の女がこの場に現れた。
そしてその存在にこれまでで一番の驚愕の声が周りから沸きあがる。
「「「「「「「「「テオドラ皇女!?!?!?」」」」」」」」」
「とうとう・・・・殿下まで・・・・」
「スゲー・・・・・作戦は聞いていたが、まさか本当に皇女まで来るとは・・・・」
祭りで賑わうオスティアで、現在最も賑わう場所に三人の超VIP的存在が現れた。
その人物の顔も名も知らないものはシモンたちを除いて誰も居ない。そしてこの三人が式典や会議の場以外でそろい踏みになっている光景に誰もが目を輝かせて見ていた。
「な、なんだって? 皇女? 何やら本当に大事件になってきたね~」
「頭痛いだろパパ・・・・」
「ぶ~」
「まてまてまてまて! 皇女って・・・・そんな大人物までなぜここに?」
「真打登場・・・・か・・・」
シモンたちは現れた三人に表情を変えた。明らかにこの場を囲む百名近くの戦士たちよりも目の前の三人からは強烈な力を感じたからである。
「来た・・・・俺らは・・・・伝説を見れるぞ・・・」
「感動です・・・この目で・・・直にあの方々の力を見られるとは・・・・」
誰もがリカード、セラス、テオドラのそろい踏みに感動で打ち震えていた。それだけでもシモンたちには三人の凄さが伝わってきた気がした。
「テメエらか・・・・噂の四人組は。職業柄あまり褒められねえが、欲望に忠実に乗り込んで、実に素敵な馬鹿野郎共だぜ。」
「うむ、中々良い目をしとるの~、三大勢力を相手にこれだけの大立ち回りをやるとは、返って関心したぞ」
「でも、少しやりすぎた様ね」
三国の戦士たちがシモンたちを包囲し、正面にはリカード、セラス、テオドラの三名が並んで歩み寄ってくる。
「何でこの世界に興味を持った? 何を知るためにお前さんはこの世界に来たんだ? 魔法の世界に旧世界一の科学力を誇る国の人間が簡単に受け入れられるはずがねえだろ? まさか戦争でもしに来たのか?」
「とんでもない。僕はただ・・・・世界の真実を知りたいだけだ。たしかにこの世界の調査はモルモル王国からの依頼ではあるが、ここに居るのも戦うのも全部含めて僕の意思だよ」
リカードの問いかけに瀬田は何も包み隠さず正直に答えた。その態度にリカードは好感を持ったのか、笑みを浮かべる。
「ふん、テメエの意思・・・か・・・・。そうゆうのは嫌いじゃねえ。・・・・だが立場上・・・」
しかし途端に雰囲気を変化させた。
突き刺さるような強力なプレッシャーを、瀬田に、そしてサラたちへぶつける。
「立場上、そうも言ってられねえんだよ」
より一層威圧感が増したリカードに、瀬田は拳に汗を握った。それはシモンたちも同じである。
(・・・・この男・・・・・)
包囲されている以上逃走も不可能。
そうなるとやることなど正面突破だけなのだが、中々四人は行動に移せなかった。それだけ無闇にやって勝てる相手ではないことを見抜いていたからだ。
「さ~て、それじゃあ・・・・俺は主役の冒険王殿と一騎打ちさせてもらおうか」
「むむ~、おいしいとこ取りじゃな」
「それでは・・・私は戦乙女旅団の団長を苛めてくれた隣のゴーグルの男を相手するわ」
「なな、勝手に決めおって~。・・・まあ良かろう。それでは妾は残りの二人を相手にしようぞ」
話しを進めていくリカードとセラスに頬を膨らませてムッとした表情を取るが、部下や他国の戦士たちが居る手前、見苦しくわがまま言うのも憚られ、しぶしぶテオドラは納得した。
「ちっ、なめやがって~~。今に見てろよな~」
「ふん、だが・・・・口だけじゃなさそうだ。油断するなよ、サラ、ブータ」
「おうよ!」
「シモン君・・・・済まないね、巻き込んでしまって・・・・・・と今更君に言うのは・・・・・」
「ああ、今更野暮だぜ、瀬田さん。俺がここに居るのも、覚悟を決めているのも、瀬田さんと同じで自分の意思だ」
「そうか・・・・そう言ってもらえると救われる・・・・君が居てくれて良かった」
ようやく瀬田は肩の力を抜いていつものように微笑んだ。それを見て、シモンもいつものように力強く笑った。
結局やるべきことは分かっている。ならば後はやるだけである。
「それじゃあ、瀬田さん。・・・遺跡と同じように」
「うん! 正面突破だ! それじゃあ・・・・」
「「「「「行くぞ(ぶむ)!! 」」」」
同時に声を出してシモン、瀬田、ハルカ、そしてメカタマに乗ったサラとブータが正面に居る強敵三人に立ち向かっていく。
「勇ましいな~、まっ、もう少し個人的に話しを聞きてえが、後は事情聴取で聞くとするか」
「じゃな。それでは尋常に・・・」
「成敗と行きますか」
それを見て、三人も動き出す。
「「「受けて立つ!!」」」
リカードは瀬田に。
テオドラはハルカ、サラ、ブータに。
そしてセラスはシモンを相手に選ぶ。
今この場に、本来ありえないはずの戦いが繰り広げられることになる。
「テメエの相手はこの俺だ、冒険王!!」
真正面から小細工抜きで向ってくるリカードに対し、瀬田は己の体術で先手を取る。
「望むところだよ。嵐脚・乱!!」
高速の蹴り足から繰り出される無数のカマイタチの斬撃がリカードに迫る。
全てを交わしきることは不可能。
仮にヘタに交わしても、その隙に瀬田は瞬動並みのスピードでリカードの隙を突くつもりだった。
しかし・・・・
「カマイタチかァ? んなもんそよ風だぜ! まとめてぶっとばしてやるぜ! 爆裂嵐拳! うおりゃああああああああ!!」
瀬田の嵐の蹴りに対して、リカードは正に正々堂々、正面から拳の連打を繰り出す。互いの蹴り圧と拳圧がぶつかり合い、両者の攻撃が中心で破裂した。
「か、かき消された!?」
「うおりゃああああ、まだまだ行くぜぇ!」
まさかいとも簡単に正面から破られるとは予想外だったのか、一瞬瀬田の反応が遅れた。その僅かな隙にリカードは強く握り締めた拳と共に瀬田の間合いへと飛び込んだ。
「くっ、鉄塊!」
瀬田も瞬時に反応し、体を瞬時に防御の体勢に移し、肉体を鉄並みの硬度に高めた。
だが・・・・
「どりゃあああああああ! 五臓六腑大・爆・拳!!」
「ぐうっ!?」
まるで金属で金属を殴ったような音が響く。
リカードの唸る拳が防御状態の瀬田の腹部に突き刺さり、その拳は弾かれるどころか、むしろ瀬田をその衝撃で吹き飛ばした。
そしてその瞬間リカードも瀬田も互いに顔を歪めた。
「ぐっ・・・・鉄塊を正面からグラつかせるとはね・・・・どうやらたしかに一筋縄ではいかないね・・・・」
ダメージを受けた腹部を擦りながら瀬田は相手の力を素直に認めた。
だが、殴り飛ばしたリカードも、殴った自分の拳が赤く腫れていることに気づき、思わず擦った。どうやら今の瀬田を殴った衝撃でこうなったのだろう。
「殴った感触が硬え・・・今の防御技といい、さっきの蹴りといい、見たこともねえ体術を使うな・・・・おもしれえ!!」
痺れる自分の拳を擦りながら、リカードも瀬田の実力を一瞬の攻防だけで認めた。
そして顔が徐々に活き活きとし出して、まるで戦いに喜びを感じているように見えた。
「・・・・鉄塊の強度を保った拳・・・・・鉄槌!!」
「重そうだな・・・・なら・・・・ブレットスリップス!!」
「こ、これは!?」
瀬田が拳を固めて打ち出したパンチがリカードの顔面を捉えたかと思えば、リカードの顔の表面を瀬田の拳が滑るように受け流された。
「おらァァ!! カウンター!」
「まずい!? 剃!」
「逃がすかァ! クイック・ムーブ!」
「くっ、指銃!!」
「どりゃああああああああ!!」
最終更新:2011年05月12日 14:47