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99-2

そして報告を受けたのはミルフだけではない。


ここもそうである。


首都・帝国・そしてアリアドネーの隊長・団長クラスは混乱の中、警戒態勢を最大限に高めながら慌しく動いていた。


そんな中、一人の少年が一人の若い男に、緊急の報告をしていた。


「ほう・・・世界最悪の愉快犯・・・・狂鬼・・・・狂い笑いのユウサ・・・ですか」


オールバックに眼鏡を掛けた男。

オスティア総督であり、メガロメセンブリアの元老院議員でもある、クルト・ゲーテルは少年の報告に少し眉を動かした。


「はい、公安部が入手した情報で、まだ定かでは・・・しかし一応報告をと・・・」


するとゲーテルは少し考えるような素振りをしてから、軽く溜息をついて立ち上がった。


「・・・奴の目撃情報はチラホラありましたが・・・・最後の情報はたしか・・・、7・8年ほど前に、奴が旧世界の京都で神鳴流歴代最強剣士の青山鶴子と戦ったのが最後・・・・結局、青山鶴子や神鳴流はユウサを仕留めきれず、奴はそれ以来行方をくらましていましたが・・・・」


ゲーテルは「何故今頃?」といった表情のまま無言で黙った。


「・・・本物でしょうか?」


「・・・・鬼なだけにいつも神出鬼没に騒ぎを起こすのが好きな奴ですからね・・・。旧世界や魔界へ行ったという情報もありましたが、あの鬼が未だにこの世界に居たとなると・・・・もしかしたら例の黒い猟犬の妙な動きと関わってくるかもしれませんね」


真剣な眼差しでゲーテルは入った情報を頭の中で整理しようとする。

しかし、冷静さと余裕の態度を保っているようで、内心はそれほど落ち着いているわけでもなかった。


「総督・・・リカード元老院議員には・・・・」


「いえ・・・彼は冒険王やネギ君の件で色々と忙しいでしょう。それに黒い猟犬(カニス・ニゲル)についての指示は私に任されましたからね・・・まったく・・・これからという時に・・・集う戦士たちに二人の怪物・・・中々思ったことが出来ませんね~」


少し困った顔でイスに座り直し、あくまで冷静に状況をどうすべきかを思案しているが、中々どうするべきか思いつかなかった。

そう、これは彼にとっても魔法世界にとってもイレギュラーな出来事だった。

全てとまではいかないが、この世界のトップクラスの権力を持ち、管理者としての立場にいた彼だが、ここ最近は少し嫌な予感が胸の中に過ぎっていた。


「リカード元老院議員が動かないのなら総督が?」


「・・・・・・・・とりあえずは例の古城を監視している部隊に、ミルフ隊長だけではなく私にも直接報告を入れるようにしてください。もし、本物が絡めば荷が重過ぎますからね。伝説の怪物を・・・二人も同時に相手にすることになるかもしれませんから・・・いや・・・冒険王も数に入れれば三人になりますか?」


ゲーテルの指示を受けて少年は小さく頷いて一礼をしたまま部屋の外へ出た。

部屋の扉がパタンと閉まるのを確認し、ゲーテルはイスの背もたれに身を預けながら天井を眺めた。


「ユウサ・・・・あの狂気の鬼が・・・・今になってどういうつもりでしょう・・・」


自分の知らないところで勝手に動き出す世界の流れ。


「ユウサ・・・チコ☆タン・・・・瀬田・・・・そしてネギ君・・・・はてさて・・・世界は誰に微笑むのか?」


ゲーテルが、慌しく動き出す時代と世界に何を思っているかは誰にも分からない。

しかし彼がどう思おうと、思わなくとも、刻一刻と新たな時代が近づいてくるのだった
















重い瞼を擦りながらの大会二日目の準決勝。



相手は地方からここまで勝ち上がった、多少はこの世界で名の知れた猛者だろう。


昨日とは違って、瞬殺・秒殺・というわけにはいかなかった。


だが・・・・


「なるほどな・・・・・流石に楽勝ってわけにはいかないが・・・・・・」


シモンが攻防の中、ぼそりと呟くと、サラが応えた。


「あの化物に比べたらどーってことねーよ!!」


「ぶみゅうう!!」


ブータの螺旋力を浴びて、メカタマのアームが変化した。それは見るからに逞しい、螺旋の形。


「「いくぜ!!」」


パートナーの掛け声と共に、二人は唸りながら自身のドリルの先端にエネルギーを込める。

構わず向ってくる二人の拳闘士だが、次の瞬間二つの衝撃波により激しく吹き飛ばされた。



「「ダブル・インパクトォォーーーーーッ!!」」



ドリルに向うところ敵なし。

剣でも魔法でもない、戦いの舞台では初めて見るドリル。

いつの間にかそれが観客たちの間でも知るところの存在となり、シモンとメカタマがドリルを出した瞬間、「待ってました!」といわんばかりのどよめきを見せた。



『ドリルきましたーーーッ!! もはや名物となってしまったシモン・メカタマコンビのドリル技!! これにはたまらず相手も吹き飛ばされましたァ!!』



吹き飛ばした相手を見て、勝利を確認。

二人はいつものように闘技場のど真ん中でハイタッチを交わし、歓声が上がる。



『シモン・メカタマコンビ! 危なげなく決勝進出けってーーーーーーーい!!』



「「「「「「わああああああああああああああ!!!!」」」」」」



楽勝ではないが、苦戦も無い。

シモンもサラも、幾多もの世界最強クラスの力との激戦を乗り越えてきたことにより、もはや二人には並の猛者クラスでは相手になるはずも無かった。

たとえ魔法世界でもレベルの高い拳闘大会の準決勝とはいえ、今の二人には何の自慢にもならなかった。


「らくしょー、らくしょー! 案外魔法っていうのも大したことねーのかもな」


歓声を受けながら、メカタマのコクピット内で少し得意げな顔になりながらサラは声援に手を振って応えながら闘技場を後にしようとする。


「どうかな・・・・それこそ世界は広いからな。昨日の映像に出ていた奴等もそうだしな」


「紅き翼か~。まっ、あのラカンと同じぐらい・・・そしてそれ以上強い奴等も居るってのは分かったけど、この大会見る限りそうでもないんじゃないか? ラカンが一人別格なだけだろ。あ~あ、明日はアイツと戦うのか~、あ~やだな~」


サラは口を3の字にしながら、明日のラカンとのことを考えて見るからに嫌そうな様子である。


「さあ・・・・それもどうかな?」


しかしシモンはまだラカンと戦うと決まったわけではないと思っている様子である。

その証拠に客席からもチラホラ話しが聞こえてきた。


「おい・・・・ようやくだな・・・」


「ああ・・・・正に伝説の一戦だな・・・マジでどっちに賭けようかな」


「やっぱラカンだろ~。本物でもない限り、ナギには勝てねーよ」


「何言ってるのよ! ナギ様が勝つわよ!」


あれだけ盛り上がったシモンたちの戦いも、前座でしかない。

この大会中は結局ずっとそうだった。

やはりいかにシモンたちの力を見せたとしても、ナギとラカンという超ビッグネームが揃う大会では、おまけ扱いである。

既に観客たちは次の世紀の一戦に興味が移っていた。


「ったくよ~。私たちだっているっつーのによー。ナギだとかラカンだとかの話しばっかじゃねーか」


「そう言うなよ。実力が伴っているんだから、仕方ないさ」


「む~。何だよ~、それじゃあシモンはこれでいいのかよ?」


「まさか、言っただろ? 流れに身を任せていても、いずれこの流れを飲み込んでやるってな」


マントを翻しながら、胸元のコアドリルと指輪を指で弄りながら、シモンは笑う。


「ナギ・・・いや、ネギにラカン・・・・どっちが決勝に来ても、観客がどう思っても望むところだ。その時は、たっぷり教えてやればいい!」


「・・・・何を?」


「・・・・さあ? その時に考えるよ」


サラとは反対に、どうもシモンは余裕がある。

結局昨晩は自分の記憶を映像で見ることは敵わず、結局進展もなかったのだが、妙に自信に満ち溢れていた。

当初はラカンと戦うことを避けようとしていたのだが、いざ大会で戦いが進むにつれて、表情が活き活きとしていた。


(もう少しだ・・・・もう少しで・・・何かを掴める・・・・)


コアドリルを弄くりながらシモンは笑みを浮かべた。

すると、退場する自分たちと入れ違いざまに前方から見知った巨漢の男が現れた。



「よう。随分とアッサリだったな」



ニヤニヤと笑いながらも、その流れる威圧感はいつもよりも研ぎ澄まされている。



「ああ・・・でも、明日はそうはいかないんだろ?」



シモンは立ち止まらずラカンの横をすれ違いながら言う。するとラカンもふり返らずに応えた。



「ああ、すぐ終わらせてやるから待ってな!」



この男が全て口にするのは強がりでもハッタリでもない。自分の力を信じるゆえの事実だろう。

だからこの男が早く終わらせると言えばそうなるだろう。

しかし、シモンはすれ違いざまに見たラカンの表情から、本心を読み取っていた。



「そうか? でも顔に書いてあるぜ?・・・・楽しみで仕方ないってよ・・・・・明日の決勝じゃない・・・・今から始まる事がな」



お互い振り向かない。

しかし今自分たちは同じ顔をして笑っていることが、シモンにもラカンにも分かった。


「・・・・テメエはどっちがいい? ボウズと俺は」


「・・・・どっちでもさ。俺のやる事は変わらない」


「そうかよ・・・・まあいい・・・それじゃあ・・・・」


「ああ・・・それじゃあ・・・・・」


シモンは外へ、


ラカンは外へ、


お互いが逆の方向へと進みながら、二人は同じ言葉を言った。


「「明日の決勝戦は楽しみだな」」


どのように楽しみなのかは分からない。

ネギとラカンの戦いはまだ始まってすら居ないのだから。だが、どちらが勝ちあがってきても、シモンと戦うことになれば楽しいことになるだろう。

そしてシモンも、強敵と戦うたびに何かを掴み取り何かを成してきたのだ。この大会中は結局それほどでもなかったが、決勝に関しては勝ち上がった二人のどちらと戦っても、何かが起こるような気がしていた。

根拠が無い勘だった。

すると・・・・


「・・・・・シモンさん・・・・」


外へ続く闘技場の通路を進む中、数人の少女たちと、二人の男を発見した。


「・・・・来たか・・・・・」


アキラや夏美、そして裕奈とまき絵に試合前の激励を受けていたネギと小太郎だった。


「シモンさんたちもスゴかったねー! 決勝進出おめでとー!」


「おめでとうございます」


「流石兄ちゃんたちやな・・・・・俺らも負けてられんな」


駆け寄る少女や表情に気合を入れている小太郎。

そしてその後ろには・・・・


「ネ・・・じゃなかったナギ・・・どうなんだ?」


これまたラカンとはまた別の意味で、強者の空気を醸し出すネギが居た。

するとネギは頼もしい表情のまま、シモンの問いに何の迷いも無い瞳で頷いた。


「大丈夫です!」


「おっ?」


断言した。

そこには強がりは感じない。

ラカンと同様に、自分をどこまでも信じきった目をしていた。


「勝つのは僕です! 勝てるかもとか、ひょっとしたら・・・とかそんなんじゃありません。勝たなくちゃいけないんじゃない・・・・僕が勝ちます!」


口調は強い。

だが、決して肩に力が入っているようにも見えなかった。

おそらく自分は相当やってきた・・・・もしくはかなりの秘策や考えがあるのかもしれない。

少なくとも大口には見えなかった。

流石のシモンも少し驚いた。



「随分と自信あるじゃないか? 相手は化物だぞ?」



するとネギはひるまずに、シモンに向って言い放った。



「大丈夫です。僕を誰だと思っているんですか?」



言い切ったネギの表情は威風堂々としていた。

その表情に女性陣が顔を赤らめて見惚れているが、無理も無いほど今のネギは頼もしかった。


「さあ、知らないな? だから教えてくれよ」


「ええ。教えてあげますよ。今日と・・・・そして明日の決勝戦で」


ネギは中へと進んでいく。

すれ違う際のネギとシモンとの身長差が当然だが子供バージョンの時と比べてあまりない。しかしそれはただ単純に年齢詐称の薬を飲んでいるからだけではなさそうだ。


「シモンさん。ラカンさんは本当に強敵です。僕の目指す人たちの居る舞台への入り口です。でも・・・・ゴールじゃありません。だから・・・・・シモンさん。以前・・・あなたが言ってくれた言葉・・・・、今度は僕からあなたに頼みます」


その背中はとても大きかった。


「目指す天の向こうで待っていてください!」


今から始まる準決勝の第二試合。

どちらの男も、実に頼もしかった。

シモンはネギの言葉に振り向かず、返事もしない。しかし口元に笑みを浮かべて手だけを軽く上げて了承の合図を出した。

一体どちらが勝つのか本当に分からないが、どちらが来ても自分は必ず相手になるとシモンは心の中で約束した。

少女たちがネギと小太郎が闘技場へ向かったのを見て走って客席へ移動しようとする。シモンには目もくれず、一瞬でも見逃してはならないといった表情だった。

だが、それはシモンも同じ気持ちだった。


「俺たちも行くか」


シモンもサラも少し歩くスピードを速めて、客席へと向おうとした。

すると・・・・


「どうでしたネギ先生は?」


シャークティやグレン団の仲間がそこに居た。どうやらシモンが試合を終えて帰ってくるのを待っていたようだ。


「ああ。どうなのかは、これから教えてくれるそうだ」


「そうですか・・・ふふ、シモンさんもお疲れ様でした」


「おう! 観客の反応も上々だったし、さすがリーダーだったぜ!」


大して疲れてはいないが、労いの言葉を掛けてくれた。ネギがいつも拳闘の試合を終えると女性ファンの出待ちがごった返すらしいが、シモンの場合はどうもそうはいかなかった。

だが、それでも少ない言葉でも十分に心に染み渡るのが目の前の仲間たちだった。


「パパとハルカは?」


「お二人は別の場所で見ていました。なにぶんこの試合は超人気でチケットも近い席では取れなかったので・・・・」


「うわ~。そっか~、本当に人気なんだな~。多分皆今日が決勝戦だと思ってるんじゃね?」


サラは冗談めいて言っているが、あながち冗談でもないところがこの試合の盛り上がりだった。


「多分お二人もサラさんを探していますし、行かれてはどうです?」


「そーだな、ちょっと探してくるよ! 直ぐ戻ってくるからさ!」


サラはそう言って、メカタマから降りて少し駆け足で瀬田とハルカを探しに行った。そしてメカタマから降りたブータも自然とシモンの肩へと戻り、シモンはブータの頭を撫でながら、サラの背中を見ていて思った。

人ごみの中へと駆け込むサラを見ていると、そしてこのようにチケットを一緒の席で入手できない辺り、この試合の注目度が高いことを証明していた。

そしてこの大会の試合は魔法世界全土に放映されている。

だからこそ、これから始まる戦いは魔法世界全体が注目していると言っても過言ではないのであると。



だからこそ・・・・



これから始まる戦いは・・・・・



これから始まるもう一つの戦いは・・・・



決して歴史上では語られることは無い。



その代わりこの戦いに参加した者たちは決して忘れない。



「それよりシモンさん。FILMの件ですが・・・・」



「そーだな。明日になる前に早いところ・・・・」



「おいテメエら!!」



―――!?



急に叫び声が聞こえたと思ったら、そこに居たのはトサカだった。

彼らしからぬ必死な形相で、走ってきた。


「おい・・・はあ・・・はあ・・・ナギの野郎は・・・・もう試合してんのか?」


何を焦っているのかと思えば、どういうことなのかと納得した。

たしかに自分の拳闘団に所属している者が戦うのだ。気にならないはずは無いだろうとシモンたちは察した。


「ああ、今来たところだ。早く席に行かねえとな」


だが、その認識は誤りだった。

ネギが来たのはついさっきなのだから、別に試合はまだまだこれからだという風に、軽い気持ちで言った。

だが、トサカはそれに対して・・・・


「くっそが!・・・遅かったか! 昨日から散々探し回ったってのに、手遅れかよ!!」


まるで何か取り返しのつかないことをしてしまったかのように、トサカは叫んだ。

その様子に、ただ事ではない何かを感じ取った。


「・・・・どうしたんだ? 何かあったのか?」


するとトサカは、シモンを睨みつけながら息を整えていく。


「その前に一つ聞かせろ・・・・ナギの野郎の正体は・・・いや、コジローも含めて他の女共は今手配中の賞金首・・・サウザンドマスターの息子のネギ・スプリングフィールドと、その仲間の白き翼とやらで間違いないねえのか?」


「・・・・・・・・・・」


「通報しようってわけじゃねえ! さっさと答えろよな!」


突然トサカに問われて、どう答えるべきか迷いシャークティを見ると、シャークティも仕方ないといった表情で頷いた。

本来は言うべきではなかったのだろうが、このときは何か様子が違った。


「・・・・・ええ・・・・・あなたの言うとおりです。それが何か?」


「けっ・・・そうかよ・・・英雄様の息子がテロとはよ・・・・まあいい・・・・それは後だ・・・・」


「トサカ・・・どういうことだ?」


何か嫌な予感がシモンたちに過ぎった。



「実は昨日の夜にバルガスの兄貴宛に連絡が来た・・・・」



「バルガスに?」



「ああ、連絡主は黒い猟犬(カニス・ニゲル)のアレクサンドル・ザイツェフ。ちっとは名の知れた男だ・・・・俺も以前に似たような誘いが来て内容を聞かずに断ったんだが、今回首謀者の奴が言ってきたんだ。英雄の息子ネギ・スプリングフィールド、及び白き翼のメンバーを国家級のテロリストとみなし、徒党を組んで仕留め、その後に新時代の幕開けを宣言する・・・・だとよ・・・・」




「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」



流石の彼らも突然すぎてツッコミどころが分からなかった。

だが、それが普通の反応だろう。

こんな祭りで盛り上がる平和な日常の中で、唐突に言われてもピンと来ないだろう。


「「は・・・・はああああ~~~?」」


「ちょっ・・・・ちょっと大げさじゃないか?」


「あまりにも荒唐無稽な計画過ぎてピンと来ませんね」


「おいおいおいおい、ファンタジーな世界ってやっぱ世界征服とか企む奴等が居るのか?」


トサカとは逆に今の説明ですっかり緊張感が抜けて、誰もが苦笑していた。

だが、トサカは変わらずに真剣な形相である。


「ウソくせえが、マジくせえんだ! とくに奴等は既に大勢のメンツを集めて準備を進めているそうだ。この情報は、ラオって奴から連絡が来て、間違いねえ! 奴等は白き翼たちをおびき寄せるつもりらしい! だから昨日からあの野郎を探していたんだが・・・・」


「まあ、ネギのやつは修行していたからな・・・・でも、ネギをおびき寄せるってどうするんだ?」


「それもそうですね・・・・そんな訳も分からない野蛮な連中の待つところに、普通何の意味も無く行きませんよ?」


トサカが何と言おうと、シャークティの言葉はごもっともだった。

ネギを仕留めるために大勢の者達が徒党を組んだとはいえ、ネギ本人が行かないのならば何の意味も無い。

行く理由も無い。


だが・・・・



「その方法・・・・ようやく分かったさね」



「「「「クマの奴隷長!?」」」」



ネギが行かねばならない理由は既に作られていたのだった。


「ママ・・・・どういうことなんだ?」


「今朝の朝刊の掲示板に書いてあった。新聞は全て今日のラカンVSナギの特集だが・・・隅にこう書いてある」


現れた奴隷長がトサカに聞かれて、持っていた新聞をバッと広げてそこに書かれている文章を読み上げた。




「白き翼(アラアルバ)のメンバーに告ぐ。明日の朝までに北方のニャンドマまで赴いて、我等の挑戦を受けるべし。受けない場合、もしくは時刻に間に合わなかった場合は貴公等の学友である、春日美空とココネという名の二人の少女の命は無いと思え・・・・だとさ・・・・」




小さく溜息をつきながら奴隷長はその一文を読み上げた。

だが・・・




「・・・・・・・・・・えっ?」




その意味がシモンにもシャークティにも・・・そして豪徳寺たちにも分からず、しばらく呆然としていた。

「正攻法さね・・・・賞金稼ぎがこうゆう果たし状を新聞に載せる手は昔から結構ある・・・・だが・・・」


「ちっ・・・あの偽ナギの正体が・・・なんと息子のネギ・スプリングフィールドだと分かった瞬間にこんなことになるとはよ~・・・前々から怪しいと思ってたんだが・・・それじゃあ亜子の奴は・・・」


トサカが舌打ちをしながら今コロシアムで戦う偽ナギをネギだと言い放った。どうやら彼も独自でネギの正体に気づいていたようだ。

幸いここには亜子も居ないうえに、シモンたちも知っていることなので、それは大した問題ではなかった。


問題なのは・・・・・・


「だが、今は早くこのことを知らせないといけないよ。明日の朝までにニャンドマに着くには今から飛行船を飛ばさなきゃいけないさね」


「ああ・・・だが、手遅れだったな。もう試合も始まった・・・・止めることもできねえ。そもそもあの野郎は亜子やアキラたちを助けるために拳闘やってるんだ・・・・。こっちに行くって事は亜子達を見捨てることになるわけだからよ・・・・・・」


仕方ない・・・・まるでそんな口調でトサカは呟いた。

だがそんな中、まだ動けだせないでいたシモンも、シャークティも豪徳寺、達也、慶一、ポチ、エンキ、ハカセは口をパクパクさせながら震えていた。

そして・・・


「・・・・妹・・・なんだ・・・・」


「・・・・ん?」


ようやくシモンが言葉を吐き出せた。

震える口調で汗を流しながら・・・・


「み・・・・美空ちゃんにココネちゃんが・・・・」


誰もがシモンと同じ表情をしながら・・・


「美空・・・・・ココネ・・・・」


「シャ、シャークティ先生!?」


思わず動揺して気を失ってしまうかもしれないほど、シャークティはバランスを崩して倒れそうになる。

ハカセが慌てて支えようとするが、二人とも両足の震えが止まっていない。


「お、おい・・・・どうしたんだよ、テメエら? その二人はテメエらの知り合いなのか?」


そして、次の瞬間、トサカの肩を力強く掴み、声を震わせながら大声で叫んだ。



「「「「知り合いどころじゃねえ! その子達は俺達の仲間なんだよ!!」」」」



身を乗り出したグレン団の言葉に、トサカ、奴隷長は一気に表情が変わった。


「な、なんだってえ!!??」


「はああァ!? ほ・・・・本当かい?」


「俺たちは元々美空ちゃんとココネちゃんを助けるために来たんだ! 何てことだよ・・・何でそんなことになってんだよ!?」


「そ、それは知らないが・・・だが、・・・そうか・・・・それならアンタたちとネギ・スプリングフィールドたちの繋がりも納得できるが・・・・」


「そんなことはどちらでもいいです!! 奴隷長さん、・・・それよりも、美空とココネが捕まっているというのは本当ですか!?」


シャークティが動揺を抑えて冷静になろうとするが、そんなわけにはいかない。焦りと動揺が表情から滲み出ていた。

しかし誰もが同じなのである。だから、シャークティを抑えようとするものは居なかった。


「む~・・・・こう言ったらなんだが、黒い猟犬(カニス・ニゲル)ならば・・・・可能性は高いと言えるさね・・・・・奴等は賞金稼ぎだが、悪名も世界に轟くほどさ・・・・残念だが・・・・」


「・・・そ・・・そんな・・・・」


「奴等も本気さ・・・例のゲートポートのテロ容疑者の白き翼(アラアルバ)とやらの賞金は日に日に高額になっていく。全員引き渡せば、一生豪遊して暮らせる・・・・それほどだよ・・・」


予想を上回る最悪の事態が更に加速していく。

自分たちの愛する仲間が死の危機に瀕していた。



「美空・・・・ココネ・・・・・俺の・・・・妹が・・・・・」



だが、ここでいつまでも呆然としているのは下の下。

慌てふためくのはそれ以下である。

そして彼等はグレン団。

動揺や焦りにより震える拳を握り締め、確認し合わずとも同じ答えに行き着いた。



「リーダー・・・・リーダーは覚えていないかもしれないが、美空ちゃんとココネちゃんは本当にリーダーの妹で・・・俺たちの女神様だぜ」



俯きながら顔も思い出せない二人の妹に対して思い悩むシモンに対して、豪徳寺が今すぐにでも飛び出しそうな衝動を抑えながら、シモンの言葉を待つ。



「ああ・・・俺たちは二人を助けるためにこの世界に乗り込んで来たんだ」



達也も・・・・



「僕達はやることは分かっています。そこが・・・本当に命を落とすかもしれない場所だということも・・・・だけど・・・・」



慶一も・・・



「リーダー・・・言うんだ・・・・我々はどうするべきだ?」



ポチも・・・シモンの口から言うまで、飛び出そうとする自分を抑えている。



「リーダー、命令シテクダサイ」



エンキも、そしてハカセもシャークティもブータもシモンを見つめている。



「シモンさん・・・・・シモンさんの気持ちを教えてください」



「血の繋がりも無い・・・・顔も思い出せない・・・・ですが、そんな二人をあなたはどうしたいのです?」



この瞳を見せられれば、問わなくても分かる。



「ぶみゅうう!!」
最終更新:2011年05月13日 01:11
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