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104-3

「ま・・・・参りました・・・・」


「もういい・・・俺たちの負けでいい・・・」


甲板に座り込み、降参を告げるチンピラたち。

その姿に、少しホッとしてため息を漏らすエマが呟いた。


「ふう・・・・大分片付いてきたな・・・・・見習いどもたちも、意外と役に立つようだな・・・・・・・」


大反撃開始から、次々と心を折って敗北を告げる敵の集団たち。まさか僅かこれだけの戦力で相手の千を越える戦力を相手に互角以上に渡り合えるなど、最初は想像も出来なかった。


「ふん・・・・・何だというのだ・・・・あの男は・・・この間も・・・・今日も・・・・あの男の身勝手な想いだけで・・・何故・・・・・みんな奮い立つのだ」


自分には出来なかった。

心を折るなと、部下に怒鳴るだけで、それ以上はどうしようもなかった。

正直自分自身の心も折れそうだった。

だが、シモンは違った。


「よっしゃあ! グレン団最強ーッ!!」


「リーダーはまだ戦っている・・・・僕たちもまだまだやるぞ!」


「っしゃあ! 任せろォ!」


味方だけではない・・・・


「オラオラオラァ! さっさと降参しやがれってんだよォ!」


「よし・・・どんどん追い詰めるぞォ!!」


「向こうには騎士団に神速部隊やアリアドネーの戦乙女たちが居るさね。追い詰めて、私たちでこの集団を囲むさね! ラオ、ラン!」


「「おうッ!!」」


この場に居る者たちは・・・・


「随分減ってきたです・・・・・」


「お嬢様、ここは手を緩めず、一気に行くべきかと・・・・」


「あら、エミリィやコレットだけでなく、ベアトリクスまで。よほど例の殿方に影響を受けたのね」


「ニャハハハハ」


「こら! 最後まで油断はしませんわ! 敵の心を完全に折るまで、10倍返しの時間は続くのですよ!」


自分の部下や、数日前には敵として戦った者たちの心まで奮い立たせた。


「ケーッケッケッケッケ、どうだァ、分不相応に歯向かうからこうなるのだァ!」


「マンドラよ。・・・・こやつ等は、一応逮捕したいので、それぐらいで・・・・」


「ふん、ミルフよ。生温いことはあまり関心せんな。それがディーネのような連中にデカイ面をさせることになる」


「まあ・・・否定はせんがのう・・・」


「よしっ、神速部隊よ!! 私が許す! チンピラどもに断末魔を上げさせてやるのだァ!!」


「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」


「降参したものには手を出すな! じゃが、刃向かう者には鉄槌を!!」


「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」


どいつもこいつも・・・・


そう思いつつも、どうしてもそれがエマの口からは出せなかった。


「クソッ・・・・なんなんだ・・・・これは・・・・・気に食わん・・・・・」


何より気に食わないのは、自分自身も折れかかった心を折らずに居られるからだ。

それがどうしても認めきれず、複雑な表情を浮かべたまま、エマは空を見上げる。


      • すると


「ん?」


ちょうどいいタイミングで自分に向かって飛ばされるシモンが目の前まで迫っていた。


「なあッ!?」


「あ、危ない!?」


僅かに反応が遅れた。

空から真っ逆様に落ちてきたシモンを受け止めるどころか避けることすら出来ずに、エマはシモンと激突し、巻き込まれて床を激しく転がった。


「いてて・・・・大丈夫か、エマ?」


頭を抑えながらエマを見るシモン。

すると・・・・


「き、キ~サ~マ~・・・どこまで・・・私を・・・怒らせれば・・・・」


「待ってくれ、ワザとじゃない」


エマの背中から怒りのオーラがにじみ出ていたのだった。


「キサマーーッ!! 私に何か恨みでもあるのか!? 散々人を・・・そして人の部下を激しく混乱させて巻き込んで!!」


「まっ、待ってくれ・・・今はそれどころじゃ・・・・」


「大体キサマは何故ボロボロなんだ!? 少しは綺麗に勝てないのか!? 見よ、この艦はすでに傷だらけではないか!? 私にはアッサリ勝ったくせに、どこまで私を侮辱すれば気が済むのだ!!」


エマだって分かっている。しかし認めたくはなかった。

正直な話、自分がどれほど抗おうと、シモンも魔人も、自分では手も足も出ない領域のレベルだということを。


(クソ・・・クソ・・・・クソッ!!)


そして部下や仲間をアッサリと奮い立たせたシモンに・・・


(悔しい・・・・何故だ・・・・何故私は何も出来ないのだ)


嫉妬していた。


「・・・・エマ?」


「うるさい、この無法者め。一体いつになったら勝つのだ?」


悔しいなどと、決して口に出しては言えない。

エマは顔を背けて少し誤魔化してシモンに憎まれ口を叩く。

すると・・・・


「爆撃乱舞!!!」


「ッ、危ない!? ぐっ、・・・うおおおおおおおお、フルドリライズ!!!」


破壊以外に用途のない爆撃の嵐が、上空から襲い掛かる。

咄嗟に反応したシモンが体に覆った螺旋力から無数のドリルを伸ばした。そしてフルドリライズ形態のドリルの一本一本が高速回転し、天に向かって風を起こし、シモンの周りに人工的な竜巻を作り上げ、爆風に絶えながら攻撃を防いだ。


「な・・・なんて威力・・・自分の味方まで・・・」


エマが周りを見渡すと、激しい爆発の力が、チコ☆タンの味方ごと巻き込み、吹き飛ばされる光景に寒気がした。


(な、なんなんだ・・・・このバカげた力は・・・そしてそれを防ぐこの男も・・・・・一体何なんだ!?)


シモンとチコ☆タン。

間近で見て改めて思い知らされるレベルの違いに、エマはゾッとするしかなかった。


「はあ・・・はあ・・・・手間ァ・・・取らせやがって・・・・カスがァ・・・・いい加減吹き飛べってんだよォォォッ!!!」


「ま、まずい!? また来るぞ!? どうするのだ・・・・どうするのだ、シモン!?」


チコ☆タンが再び魔力を凝縮させ、連発で爆撃してくるつもりである。

しかも、それだけではない。



「もういいッ!! この世界ごと消し飛ばしてやらアアアアア!!!!」



決して大げさには・・・・聞こえなかった。


「い、いや・・・それより・・・これは・・・ま・・・・・まずい・・・これは・・・この魔力量はヤバすぎる!?」


全身の汗が噴出し、今からチコ☆タンのやる技の威力を瞬時に察してしまったエマは、顔を引きつらせた。


「ほ~~、ひゃひゃひゃ、すごいね~。これがかつて、チコちゃんが帝国軍の超弩級艦を吹き飛ばした最大爆発か・・・・ひゃっひゃっひゃ、芸術は爆発ってか? ひゃははははははは!! みんな、逃げろ逃げろ~~~! 逃げ場のねえ空の上を、精一杯逃げ惑え!!」


その威力を分かったのは、エマだけではない。


「お・・・おい・・・なんだよアレ・・・」


「ま・・・まず過ぎる・・・・・あれ・・・ダメだろ・・・」


誰もが、大気を震わせるその力に、戦いの手を止めて上を見上げた。

皆がそれなりの実力者であるがゆえに、皆がその威力を予想でき、だからこそ皆怯えてパニックになった。

もはや、戦っている場合ではない。

敗れて倒れている者たちも、そうでないものたちも、皆が一斉に慌てふためきだした。



「「「「「「「「「「逃げろォォォーーーッ!!!!」」」」」」」」」」



逃げ場がないことは誰もが分かっている。

しかしどうしようもない。


「ま、まずいさね!?」


「じょ、冗談じゃねえ!? コラァ! 何とかしやがれ、クソッタレ野郎ッ!!」


「み、皆さん・・・・・・伏せなさいッ!!!」


「ま、まずいぞい!? あやつ、本気でこの艦に居る全ての者を消し飛ばす気じゃわい!!」


いきなり真上から超巨大な爆弾が投下されるとしても、直前であればどうしようもない。

確実に迫る恐怖が、彼らをより一層怯えさせた。


「くっ、・・・このままでは・・・おい、シモン!! どうするというのだ!?」


このままでは、敵も味方も吹き飛んでしまう。

しかも悔しいことに自分自身にはどうすることも出来ない。

だが、そんな中。シモンはまるで心配要らないとばかりにニヤリと笑みを浮かべた。


「大丈夫。何とかするさ!」


アッサリと言い切った。


「な、・・・・・何とかだと!? 何を根拠にそんな・・・・」


「そんなの決まっている。俺だからだ」


「・・・・・はあ?」


何故ここまでハッキリと言い切れるのか。しかもこの自信に満ち溢れた姿は数日前の比ではない。

それがエマには分からなかった。


(俺なら何とかできる・・・・か・・・)


エマの戸惑った表情を見ながらシモンは昔を思い出した。


(そういえば・・・・あの時もそうだったな・・・・・)


かつて、四天王の一人であるグアームと戦ったときだ。

王都へ後少しというところで、グアームのガンメンが作り出した巨大な竜巻によるエネルギー防壁が自分たちの道を阻んだことがあった。

砲弾などの攻撃にもビクともしない強力な竜巻のエネルギー防壁に吹き飛ばされ、弾かれて、手が思い浮かばない中、一人のガンメン乗りが竜巻へ向かって突っ込んだ。

それは特攻だ。

だが、その特攻も竜巻に触れた瞬間激しく引きちぎられ、一瞬で爆散した。

グレン団は皆呆然としていた。

しかしそんな特攻に触発されたガンメン乗りたちが、挙って後に続けとばかりに竜巻に向っていく。

そんな、バカな真似はやめさせるように大グレン団が叫ぶが、誰も聞く耳持たずに竜巻に向っていこうとする。

このままでは、仲間が全滅してしまう。

何とかしなければ!

そう思った、その時だった。



『止まってくださ~~~い』



映像装置を使って、自分の巨大な姿を竜巻の前に映し出し、大音量で叫ぶニアの言葉に、竜巻に立ち向かおうとしたガンメンたちが一斉に止まった。



『皆さん、ごきげんよう。グレン団調理主任のニアと申します』



そう言って頭を下げるニアに対して、無数のガンメンたちが会釈を返した。

この光景に、大グレン団のメンバーたちは唖然とするしかなかった。



『見ての通り、今テッペリンは竜巻のような光の壁に包まれています。あれを何とかしないと皆さんも、先ほどの方々のように爆死なさってしまうでしょう。ですから、今しばらくお待ちください』



状況は恐らくピンチなのだろう。

少なくとも竜巻の風に吹き飛ばされるのを懸命に耐えている者たちを見れば、一目瞭然である。

にも関わらず、この少女のこの余裕の様子は何だ?



『もうすぐ竜巻は止まります』



この一切の不安を思わせぬ笑顔は何だ?

皆が注目する中、ニアはニッコリと微笑んだ。



『シモンが止めてくれます』



そして彼女は指を天に向って指して、ハッキリと告げてくれた。

そう、その時をシモンは思い出した。



『何故ならシモンのドリルは・・・・・・』



「そう、・・・・なぜなら俺のドリルは・・・・」



根拠のない何とかしてくれる。

だが、根拠はある。それが本当に根拠と呼べるかどうかは分からないが、少なくとも皆そう信じてくれたのだ。



―――天を突くドリルなのですから!


「天を突くドリルなんだからな!!」



そう、だから何とかすることができるのだ。


「は・・・はあ~~~!?」


エマの反応は、少し懐かしく感じた。

あの時もニアの言葉に、皆同じような反応をしていたことがあった。

ならば、やることは同じだ。

あの時と同じように、このドリルと自分なら何とかすることが出来ると証明するだけである。



「ふざけんなァァァ!!! 何にもさせねえェェッ!! もうこんな艦もどうでもいいッ!! 全員まとめてぶっ飛ばしてやらアアア!!」



身を縮め込め、渾身の魔力を全身に高ぶらせ、チコ☆タンはこの超弩級艦すら打ち落としてしまうほどの火薬を爆弾の中に詰め込んでいく。


その輝き・・・・


まるで太陽!



「見せてやらァ!! クソ雑魚共には生み出せねえ、究極の爆発をなァァ!!」



その光を恐れて、甲板に居るものたちは慌てふためき逃げ惑う。


だが・・・



「うっは~~~、兄貴~、やばいんじゃね~」



「爆乱・・・この名は伝説になるとばかり思っていましたが・・・・なるほど・・・」



「空気ビリビリスル」



そんな中・・・・



「すごいエネルギー量です・・・人一人が生み出せる力とは思えませんよ」



「ハカセ、奴ハ魔人ダソウデス」



「へっ、そりゃあ恐ろしいもんだぜ」



多くのものが逃げ惑い、慌てふためく中で、


「お、おい・・・・なんだよ・・・あいつら・・・・な、何で逃げねんだ?」


「シモンさん!? 美空さんもココネさんも、シャークティ先生も!?」


一つの集団だけが一切の動揺を見せずに、空で熱く燃え上がる魔力を凝縮させるチコ☆タンを見上げながら、シモンの傍へと歩み寄った。


「き、・・・・貴様ら・・・・・それに・・・」


エマは理解できないで居た。

敵味方問わずに今の上空で爆発寸前のチコ☆タンの脅威に気づいただけでも皆が慌てている。彼女の部下や他国の騎士団たちもそうである。

しかし、この戦いの原因を作った者たちと、そして・・・・



「どうやら彼も本気みたいだね」



「大したもんだよ。鳥肌ものだね」



「本当に、この世界って化け物だらけだよな~」



「ぶ~みゅ」



世界を混乱させた三人家族と一匹の小動物が、威風堂々とシモンの傍で並び立った。

そう、皆が伏せ逃げ惑う中、彼ら13名と一匹だけが恐れをまったく抱かずに、チコ☆タンの前に立った。



「怯むなよ、みんな!」



そんな頼もしき仲間たちに、シモンが叫ぶ。



「当ったり前だ! 全てが揃った俺たちが、何を恐れる必要があるってんだァ!」



応えるのは不撓不屈の無法者たち。



「副リーダー、豪徳寺薫!」



「中村達也だァ!」



「ふっ、山下慶一!」



「大豪院ポチ・・・・」



「田中エンキ」



「新入りハカセ!」



「シャークティ!」



「へへん、春日美空だッ!」



「ココネ!」



「ふふ・・・それじゃあ、瀬田記康!」



「なら、女房のハルカ!」



「ぶうぶ!!」



「ブータとサラ!!」



そして・・・



「そして・・・シモン!!」



最後に見せ場を持っていくのは、この13名と一匹。




「「「「「「「「「「「「「俺たちをォ誰だと思っていやがるッ!!!!」」」」」」」」」」」」」




溢れ出す想いは無限の力。


力がドリルの形になる。


彼らは壁があっても恐れない。


突き進むことも迷わない。



「必殺!!!!」



世界を沸かせる大きな力。



「ギィイガァァァ・ドリルゥゥゥ・ブレイクゥーーーーーッ!!!!」



無理を通して道理を蹴っ飛ばす力が・・・・



「「「「「「「「「「「「「新生大グレン団スペェシャァルゥウウウ!!!!」」」」」」」」」」」」」



気? 魔力? 気合? その力が何かは分からない。

しかし彼らの想いを織り込んだシモンのギガドリルブレイクが、新生大グレン団の咆哮と共に虹色に輝く光を放ちながら、天へと向っていく。


全てを突き破るドリル。それに対抗するのは・・・



「これで・・・・最後だァァァァ!!! 太・陽・面・爆・発ダァァァァァ!!!!」



全てを消し去る大爆発だった。

太陽並みの熱量を込めたチコ☆タンの最大爆発が放射能のような光を撒き散らして、全長数百メートルの超弩級艦のケルベロス全域に降り注ごうとする。

だが、



「うおおおおおおおおおおおおッ!!」



その光が降り注ぐ前に、シモンは自らのドリルを掲げて突き進んだ。

放射能のような光も、シモンのギガドリルから放出される虹色の膜がフィールドのような働きを見せ、チコ☆タンが投下した爆発から皆を守る。



「無駄だァァ!! 貧弱なヒューマン共ごときが、天の向こうにある太陽を突き破れるかァァ!! 何が天を突くだァ! だったらその向こうにある壁に押しつぶされやがれェェ!!」



シモンのドリルが天を突くのなら、チコ☆タンは天の向こうにある脅威を放った。

シモンを完膚なきまでに叩きのめすために。

しかし・・・



「・・・・・どうかな?」



「ア゛ン?」



「俺たちグレン団は、日の光が届かない地下の世界から、日の光の向こうまで飛び出した! たとえテメエが星の力を振るおうとも・・・・銀河に風穴を開けた俺の・・・俺たちのドリルを消せるものかァァァ!!」



「な・・・・・なにィ!?」



「俺を消し飛ばしたいなら・・・宇宙誕生以上の大爆発を持ってきやがれェェェ!!!」



チコ☆タンを中心に起こった大爆発は、太陽並みの超熱を放っているが、一歩も後ろへ引かないシモンは右手のドリルと、左手でコアドリルを握り締め、叫び続ける。



「何が宇宙だァァ!! 小っぽけなヒューマの喚き何ざ、飲み込んでやらァァ!!」



「飲み込めるものかァ! この小さな男が背負った大きな想いが、太陽だろうと宇宙だろうと、風穴開けて突き進むんだよッ!!」



そのとき、熱に溶かされ、シモンのギガドリルが徐々に削られひびが入っていく。


だが、チコ☆タンもシモンのドリルを完全に消し去れず、シモンのギガドリルから放たれたフィールドより先に攻撃が届かない。


そう、互いが互いに押されあっていて、両者既に交わす気も引き下がる気もない。



「無駄だァ!! 大爆発のフレアを、テメエごときに何とかできるかってんだァ!!」



「いや、何とかする!! グレン団の力は全て想い一つ! どんな攻撃も絶望も、俺たちの気合の前には通用しない!! 俺が俺を信じる限り、ドリルは何にも負けはしねえ!!」



全てを消し去る爆発と、全てを突き破るドリル・・・



「何度でも言ってやる! 俺たちを誰だと思ってやがる!!」



この勝負は・・・・


「こ、これは!?」


「か、・・・・拡散した!?」


強烈な閃光が視界を覆った瞬間、チコ☆タンの放ったフレアが拡散し、跡形もなく砕け散った。


世界を滅ぼす力は誰一人傷つけることなく、そして太陽が砕け散っても、世界は光に満ちていた。


しかし・・・



「な、なァ!? く、くっそが・・・・・・だが・・・・テメエの負けだァ!!」



叫ぶチコ☆タンの視界には、ドリルが砕け散ったまま突っ込んでくるシモンだ。

そう、仲間たちの想いを込めたギガドリル新生大グレン団スペシャルはチコ☆タンの最大最強技と相打ちとなった。


ドリルが消え去り、拳一つとなったシモン。それに対してチコ☆タンは・・・・



「テメエの貧弱な拳じゃあ、俺は倒せねえ! だが、俺の拳は一発でテメエをバラバラに出来るぜ!!」



人と魔人では元々の肉体のスペックが違う。

硬質な肉体と、素の力だけでも人智を遥かに超える魔人の振りかぶった拳は、超銀河モードのシモンを負かすだけの力があるはずだ。

つまり、ドリルの無くなったシモンに・・・・



「土に返りやがれェェェ!!!」



これを破る術はない。

チコ☆タンは恍惚に顔を歪ませて、空となった拳を突き上げて向ってくるシモンにカウンターで迎え撃とうとする。

だがその時・・・・



「・・・・アア?」



チコ☆タンは気づいてしまった。


何も握られていないはずのシモンの手に、小さく光る何かが握られていた。


その一瞬が・・・・


「!?」


勝敗を分けた。


シモンは突き上げた拳をチコ☆タンの胸の真ん中に突き立てた。


突き立てられたものは、コアドリルだ。



「な、何イイッ!?」



予想外の攻撃にチコ☆タンの表情は驚愕に染まる。


強靭な外皮で覆われている自分の肉体に深々と突き刺さった小さなドリル。



「ガ・・・・・テ、・・・・・・テメ・・・・・・・エ・・・・・」



その小さなドリルが・・・・



「俺はシモンだ。新生大グレン団のリーダー、穴掘りシモンだ」



チコ☆タンの胸で、淡い光を発して・・・



「お前が壁となって俺の前に立ち塞がるなら、いつだって風穴開けて突き破る」



シモンがねじ込んだ瞬間・・・・



「それが俺のドリルだァァァ!!!」



空気を振るわせる巨大な音と共に、チコ☆タンの胸に大きな風穴を開けて突き破ったのだ。


小さな光が大きな光へと変わり、一人の男の叫びが天に響き渡る。


その姿に呆然としながら、この場に居る全ての者たちは、吹き飛ばされる魔人と突き破った男を眺めていた。


最後の締めくくりには少しショボイ花火かもしれない。


だが、コアドリルから発せられたその花火は、人々の心に残った。


そして・・・



「祭りは終わりだァ!! 俺たちの勝ちだァァァ!!!」



勝者と敗者は明確に分かれたはずだ。


空の向こうから飛行船で乗り込んできたメチャクチャなものたちが勝者だ。


しかしこれはどういうわけだ?


シモンがチコ☆タンをぶっ飛ばして勝利を告げた瞬間、敗者はうな垂れるどころか、勝者と共にさわやかに大歓声を送った。







      • たった一人を除いて・・・・



「ひゃっひゃっひゃ。なるほど・・・そう来たかい、運命の女神様。全てを消し去る未来より・・・突き進むことに微笑んだかい。時代は滅びの未来より・・・・あきらめないことを選んだか・・・本当に笑えてくるぜ」



艦橋の上に立つシモンの下へと皆が集おうという中、たった一人だけ逆方向に歩みだし、ケルベロスの帆先まで進んだ。



「まあ、せいぜい足掻いて楽しませてくれよ。別に俺はこの世界の生まれってわけじゃねえからな。こんな世界・・・滅ぼうが足掻こうが一向に構わねえよ」



厭らしい歪んだ笑みを浮かべたまま、一度シモンに振り返り・・・



「さて、俺はそろそろトンズラさせてもらうぜ。それじゃあバイバイ、チコちゃん。テメエが爆死じゃねえのは意外だったが、お前の爆発芸はB級映画よりは面白かったぜ。そしてシモン君・・・お前さんも、いつの日かまた会おうぜ♪ その時は、例の坊やと一緒にな」



鬼は狂乱の終わった戦場から姿を消したのだった。


思わせぶりな鬼が消え、魔人が倒れて、一人の男と一つのチームがこの場に集った者たちの心に大きく刻まれた。


人知れず行われた世界を左右させる大喧嘩も、伝説級の戦果だけを残し、野太い歓声の中、小さな花火を合図に終わりを告げる。


そう、祭りは終わった。





      • この場の分だけは・・・・
最終更新:2011年05月13日 20:46
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