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105-またせたなッ!!

第百五話 またせたなッ!! 投稿者:兄貴 投稿日:10/02/01-19:39 No.4266

「うっ・・・・・ぐう・・・・・・・・」


腹にデカデカと風穴を開けられた。

それと同じように、何か心にも大きな穴が開いた気がした。

薄れ行く意識。

痛みを通り越して、体の感覚も感じなくなっていく中で、魔人は瞼の裏に二人の男と女を思い出した。


――また喧嘩しようぜ!


約束を違えて、二度と会えなくなった男。


――・・・ただ頼むだけじゃ・・・・生きよ


魔人である自分を生かしておきながら、死んだ女。


悲しいわけではない。


別に二人など自分にとってはどうでもいい。


しかし何故か悔しかった。理由は分からない。敵であっても自分を正面から見てくれた今は居ない二人。


「ううっ・・・・・・うっ・・・・」


体に風穴を開けられて、心にもデッカイ穴を開けられて、何故か昔をもう一度思い出してしまった。


「その状態でもまだ生きてるか・・・・すごいな・・・お前・・・・」


声がした。


「て、・・・てめえ・・・・・・」


声の方向へ顔を向けると、そこには自分に風穴を開けた男が自分を見下ろしていた。


「ぐっ、・・・・・俺の三つある心臓を・・・二つぶっとばしたぐらいで・・・・・勝った気になってんじゃねえ」


動かぬ体も首だけを起こして、チコ☆タンはシモンを精いっぱい睨み付ける。まだ自分は負けていないと吠える。

だが、シモンは揺るがない。


「いや、俺達の勝ちだよ」


「ッ!?」


「たとえ・・・お前が何度立ちはだかろうと、俺たちは負けない」


「俺」ではなく「俺たち」とシモンは言った。

そしてその言葉に・・・・


「・・・・ふん、・・・・・・」


チコ☆タンは何故か怒りが湧き上がらず、言い返すことが出来なかった。

真の姿で居る自分は、沸点が非常に低く、僅かなことでブチ切れることが、昔から多々あった。

だが、今はどうだ?

不思議なことに、怒りがまったく湧き上がってこなかった。


「ザイツェフ・・・・少しは・・・・・スッキリしたか?」


そうだ、答えは簡単だ。

敗れたとはいえ、チコ☆タンは完全に鬱憤を吐き出して、怒りが完全に治まったことを意味していた。


「ふん・・・・キサマは似ている・・・・・ギャーギャー騒ぎながら戦う姿は奴と・・・・」


「ん?」


「・・・いや・・・・何でもない・・・・どうでもいい話だ」


そう、どうでも良くなった。

デッカイ穴を開けられて、過去の因縁や世界への憤りの全てもどうでも良くなった。

それほどまでにチコ☆タンは怒りを発散できたのだった。

自分の怒りを全て解放できる相手が、まさか二十年たって新たに出会えるとは思わなかった。

それが妙におかしくて、魔人は初めて小さく笑みを浮かべた。


「・・・・一度死んで・・・」


「ん?」


「もう一度生き返り、・・・・祭りを企画してこのザマか・・・・」


シモンがチコ☆タンに言われて、艦橋の下を覗き込むと、倒れていない戦士たちも、全員が武器などを捨てて、既に抵抗する気力もないようだ。

自分たちの頭が負けたことと、戦いの疲労で、全員が甲板に座り込み、疲れの混じったため息を吐いていた。


「まあ・・・いい・・・・それも・・・もう・・・どうでもいいことだ・・・」


そしてチコ☆タンはもう一度軽くため息をつく。


「・・・・ザイツェフ・・・・お前・・・・」


そこに居るのは先ほどまで獰猛で荒々しい破壊魔人の空気が消えていた。

その目がシモンにはどこまでも切なそうに見えた。


「・・・何がしたかったんだ・・・・お前は何がしたかったんだよ・・・・」


だからこそ、興味を持った。

だが、魔人からはまともな答えは返ってこなかった。


「・・・さあな・・・・・・・恨み・・・憤り・・・法や制度を変えるため・・・過去の因縁と決着を付けるため・・・・その気になればいくらでも・・・理由は上げられるが・・・・逆に言えば・・・・・ハッキリとした理由などない・・・・」


「・・・・・」


「・・・・ふん、平和主義者でもない野蛮な我々の思考などそんなものだ。ハデなことをやって世界に存在を示したい・・・何も考えずに暴れまわりたい・・・・そんなところだ・・・昔はそうやって、バカ共は自分の存在を示していた」


怒りが完全に消え去り、穏やかな口調になったチコ☆タンは、これまでの自分や集めた仲間たちのことを考え、自嘲した。


「大人になれば出来なくなることも、祭りになれば子供に戻って大人も楽しめる・・・・理由は何でも良かった・・・・ただ・・・・我々の燻ぶった火種に火をつけたのが、キサマの妹であり、ネギ・スプリングフィールドでもある。・・・そうさ・・・どうでも良かったんだよ・・・こんな世界なんざ・・・・・・」


「お前・・・・・」


「・・・そう・・・・」


「?」


「あの男が護った世界・・・・奪った世界・・・あの女を受け入れなかった世界・・・・その世界は・・・・そんな・・・・どうでもいい世界は・・・・俺にとって破壊するどころか触れることも出来ない・・・仮初の世界すら・・・・俺には・・・・遠い・・・・届かない・・・・」


仰向けになりながら、チコ☆タンは空に手を伸ばし、握りしめ、再び開く。

しかしその手の中には何も掴めなかった。

何にも届かなかった。

昔はそうではなかった。

少なくともサウザンドマスターに敗れる前までは自分の存在は世界を左右させた。その名を轟かせた。

その手に触れたものは破壊してきた。

しかしこの虚無の二十年間、そして二十年ぶりに思い出した自分自身は、今の世界では何も出来なかったのだった。


そんな思いを・・・・


「・・・・寂しかったのか?」


「!?」


シモンは読み取った。


「お前が俺と誰を重ねたのかは分からないけど・・・・・・俺・・・・お前の気持ち・・・・何となくだけど分かる気がするよ」


「・・・・・ナ・・・ニ?」


「敵でも味方でも・・・自分と正面から対等にぶつかってくれる奴ってのは・・・すごく大切だからな・・・お前・・・寂しかったって目をしてるよ・・・・俺にもそんな奴らが居たから分かるよ・・・・・・・・・」


脳裏に浮かぶのはようやく思い出せた仲間たち。

命を懸け、命を預け、魂を燃やした仲間たち。

たとえ何年たっても忘れない。そして彼らだけでなく、今の自分には家族や、新たな仲間も居る。

そう、寂しいなどとは思わせてくれない仲間たちが居る。


「でも・・・・・・・」


そう、チコ☆タンの気持ちは理解しても、チコ☆タンとシモンは違う。

シモンは掴んだのだ。

何も掴めなかったチコ☆タンとは違い、シモンは自らの力で絆を掴んだ。

そしてそれを今正に奪い返し、もう一度自分の手の中に戻した。

再び掴んだシモンと、何も掴めなかったチコ☆タン。

だからこそ・・・


「お前の負けだ」


勝敗は明らかである。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


その言葉が何よりも重く。

風穴開いたチコ☆タンの心を更に貫いたのだった。


「・・・・・・・ふん・・・・・」


チコ☆タンは、もはや何も言わない。

全身の力を抜き、ようやく観念したように拳を開き、瞼を閉じてため息をついた。

そしてシモンも何も言わない。

無言で横たわるチコ☆タンの傍らで、祭りの終わった舞台の上で、風を浴びていた。

すると・・・・


「兄貴~~~!」


「ん?」


バタバタと駆け寄る気配にシモンが振り向くと、その気配の主は既に二人そろってシモンに向って飛び込んでいた。


「うりゃ~~~!」


「~~~♪」


「うわっ!」


飛び込んできたのは愛しい愛しい・・・・


「美空・・・・ココネ・・・・」


満面の笑みを見せる二人の妹だった。


「か~~っ、もうさっすが兄貴だねッ! 最高の登場で、私たちじゃあ手も足も出なかった奴をぶっとばしちゃうなんて!」


「カッコヨカッタ!」


シモンの腕の中で、興奮しながら見上げてくる二人に、シモンも優しく微笑み、二人の頭を撫でた。


「うわわ、コラ兄貴~~、恥ずかしいって!」


「ココネはウレシイ。モットスル」


最初は優しく、そして次第にクシャクシャと強く二人の頭を撫で回し、うれしさがこみ上げてきた。


「ったく、・・・・ちょっと見ない間に二人ともボロボロになりやがって・・・・・・・・」


「えへへ~、そりゃあもう。ちょっち臭い?」


「ン~~・・・・兄貴モボロボロ」


「うっ、まあさすがにな。・・・でも・・・・」


少々傷が見え、髪もボサボサで汚れが目に見える美空とココネ。

無理もない。何日間も監禁されていたのだ。更に今も大暴れをしてきたのだ。ボロボロに決まっている。

だが、・・・・それはシモンも同じである。

まったくお揃いの自分たちの様子に、笑いがこみ上げてきて・・・・


「でも、俺たちらしいか!」


「「ウン!!」」


こんな姿でも笑顔を見せる二人を誇らしく思った。


「にしても、驚いたよ~~。兄貴やシスターシャークティだけじゃなく、薫ちんたちやハカセに、どういうわけか色々な面子まで揃ってさ~。まっ、その場面は見てないけど、どういう展開でこうなったのかはなんとなく分かるけどね♪ よーするに、アレ? グレン団的展開?」


「はは、どうだろうな。でも、みんな本当にがんばってくれたよ」


「兄貴・・・・ココネモ、ガンバッタ」


「ん? そ~~か、よくがんばったな。えらいぞココネ!」


「~~~♪」


美空は能天気にいつものように笑い、ココネはご機嫌にシモンの撫でている腕に引っ付いている。

懐かしい・・・そんな気持ちになった。

そう、自分はこの子達の前に帰って来れたのだと実感できた。

そんな彼女たちに続いてゆっくりと歩み寄ってくるシャークティ。


「シャークティ」


「ふふ、お疲れ様です」


「・・・心配掛けたな!」


「してませんよ? だってあなたに、心配は無用でしょう?」


その笑顔がとてもうれしくて、少し照れくさい気持ちもする。だが、どうせ照れるのなら、同じことだと思い、シモンはシャークティ、美空、ココネの三人に、微笑んで・・・・


「そうだ、約束だったな・・・・これだけは言っておかないとな」


家族全員揃った今こそ、約束の言葉を告げる。


「シャークティ。美空。ココネ。・・・・・ただいま!」


帰ってきた家族に三人はニコッと笑って頷いたのだった。


「「「お帰りなさい!!」」」


シモンはようやく家族の下へ帰ってきた。それが今の自分には、心のそこからうれしかった。


さらに・・・・



「「「「リーダーァァ!!!」」」」



「「「「「「「「「「シモーーーーーンッ(さん)!!」」」」」」」」」」



素敵なくらいボロボロな姿で、仲間たちが皆艦橋の上に集まってきた。


下を見渡せば傷つき敗れた者たちが、甲板に座り込んだり横になったりして、全てを出し尽くしたような表情で、誰一人としてこれ以上足掻こうとはしなかった。


祭りの主催者という、ザイツェフが倒れた今、彼らももうこれ以上戦う気力もなさそうだ。


文字通り、自分たちの大勝利だと、シモンも駆け寄ってくる仲間たちに親指を立てて、二カッと笑った。


一緒に戦ってくれたミルフやマンドラの部下たちや、エミリィや夕映たちアリアドネーや、自分を奮い立たせてくれたトサカたち・・・


それに・・・


「一番良い形で勝利できたようだね、シモン君」


これまたボロボロの白衣で傷だらけの姿で瀬田ファミリーが笑顔で現れた。


「よっ、おつかれさん。それがお前さんの妹かい?」


「ま~~ったく、クタクタだよ~~」


同じようにハルカもサラもこの場に現れ、その傷だらけの姿よりも、無事に居てくれたことにシモンは安堵した。

そして忘れてはならない者がもう一匹。サラの肩にいたブータが、美空とココネの姿を見るや否や、走って二人に飛びついた。


「わーーッ! ブーターッ! うう~~~ん! この~~! 元気だったかーーッ!」


「ブータ! ブータ!」


「ぶみゅうう!」


美空とココネも、飛びついてきたブータを抱きしめてモミクチャにしながら、嬉しさを体一杯に表現した。



だがその時・・・


「ん?」


「お、おい・・・・あれ・・・・なんだ?」


駆け寄った仲間の一人が、空の彼方を指差した。


シモンたちが、つられて指し示された方角を見つめると、何やら黒い鳥の影がいくつも、こちらに向ってきている。


「ん?」


いや、よく見ると鳥ではない。

鳥にしては大きすぎる。

ドラゴンよりも大きいそれは、鉄の翼を羽ばたかせて向かってくる。


「あれは・・・・・・・」


「あれは・・・飛行船ですわ!」


「ええ~~っ? なんで~?」


シモンが目を凝らしてそれを見ると、その正体がようやく分かった。

それは飛行船だ。


「ちょ、どういうことさね?」


「ま、まさか敵じゃねえだろうな?」


「なに~? 延長戦ってか? 望むところだ!」


「こらこらこら」


自分たちの乗っている超弩級艦には及ばないものの、それなりの大きさの艦が複数前方から向かってきている。

突然の出来事に、シモンだけでなくその存在に気づいた者たちが顔を強張らせて、思わず緊張が走る。


「騒ぐな。あれは敵ではない」


すると、少し疲れた表情でエマとミルフが前へ出た。


「シモンよ、安心しろ。あれは首都の巡洋艦じゃ。恐らく総督の仕業じゃろう」


ミルフの言葉にシモンも思い出したかのように納得した。

総督と呼ばれた眼鏡を掛けた男は、自分たちが美空を救出するために仲間を引き連れてここに来ることを許可し、その後で自分たちも軍を導入することを言っていた。

どうやらその軍が全て終わった今になってようやく到着したようだ。


「・・・ということは、どうやらこのおバカな騒ぎも、これで終わりということですわね」


「ああ~~良かったよ~。美空もココネも無事だし、完璧じゃん♪」


「たしかに、クタクタです」


「Hay! ところで何で、ユエ吉が、戦乙女旅団の格好しるんだ!」


「えっ? 美空さん・・・でしたね・・・私のこと知ってるですか?」


「おいおいおいおい!?」


先ほどまで闘志を燃やし尽くしていた戦場の空気が、ようやく一変して穏やかな空気に変わる。


こうして、子供に戻ったバカたちの喧嘩祭りも、大人の介入により終結を迎えるのだった。





そう・・・終わりを迎えるのだった・・・・



彼らがどれだけ無法を叫ぼうと、人類の知恵が生み出した法律というルールからは逃れることはできない。



祭りの熱気に当てられて、子供に戻った者たちも、魔法が解けて再び大人に戻されたのだった。





「いや~~、本当に見事! 爽快ですね~。戦争でもないのに、こんなに多くの者たちを連行するのは初めてですよ」





手錠を嵌められて一列に連行されていく祭りの参加者を眺めながら、オスティア総督のクルトはこの光景を眺めていた。


「オラオラオラ! 全員武器を捨てろ! おとなしく列を作って乗れ!」


「陣形を乱さず、包囲網を絶対に破るな! 逃げようとするものは、手足をへし折ってでも取り押さえろ!」


「怪我人の治療は、重症者以外は後に回せ! こいつらを連行して身元を調べるのを先にしろ!」


「隊長! こいつら全員を連行して閉じ込めておくスペースがもう・・・」


「近くの街や村に留置所を一時設置する! 怪我人の治療と身元確認はそこで行い、終わった後は危険度の高い奴から順に、監獄に叩き込め! 治療はどうでもいい。身元の確認を徹底しろ」


計り知れない危険度を孕んでいた連中も、全てを出しつくした後では抵抗する気力も意思も見られず、彼らは次々と連行されていく。

地上に着陸させたケルベロスの周りを、艦体で囲み、彼らは武装した兵士の誘導に黙って従いながら、次々と政府の船へと乗せられていく。


「いいか! これだけ大きな艦だ。艦内に隠れている奴らも居るかもしれん、誰一人討ち漏らすな! 一人残らず確保しろ! 抵抗する者には怪我人だろうと容赦するな! このフザケタ馬鹿どもに、正義の杖を容赦なく振り下ろせ!!」


正に一網打尽の光景だった。


容赦なく公権を駆使して、先ほどまで命がけに戦っていた連中を連れて行かれる光景は、彼らと死ぬ気で戦い抜いたグレン団たちにはあまり面白い光景ではなかった。


「ふふ・・・気に食わない・・・そんな表情ですね」


そんなシモンたちのつまらなそうな心境を察したのか、クルトが問いかけてきた。


「確かに・・・・いや、気に食わないというより、納得いかない。何で俺たちだけ無罪なんだ?」


そう、シモンたちの手には手錠が掛けられていなかった。


「おやおや、不服ですか? これほど大規模なテロを未然に防いだあなたたちに感謝すれども、逮捕などもっての他ですよ?」


「・・・・ミルフやトサカたちはそうかもしれない。でも、俺や瀬田さんたちは、一応犯罪者だろ?」


命令違反でここまで来たミルフやエマやマンドラたちは元より、瀬田一家も、グレン団も、トサカたちも、一切の罪が問われずに、自由な状態のまま、ケルベロスの艦橋の上から、連行される者たちを見下ろしていた。

だが、それはあまりにも特別扱いすぎると、誰もが思っていた。

正直、シモンたちは美空とココネを救えれば、逮捕も覚悟していた。

だが、クルトの彼らに対しての扱いは、お咎めなしという意外な展開だった。


「勘違いしないで貰いたい。別に無実とは言っていない。しかし・・・・無罪にするというだけですよ。君たちは、ありがたいほど厄介なことをしてくれましたからね」


するとクルトはズレた眼鏡を直しながら、真相を語りだす。


「何?」


「ふっ、そこに寝ている怪物が、理由ですよ」


クルトが指差した場所に横たわるのは、無言で身じろぎ一つしようとせず、その場で空を眺めていたチコ☆タンだった。


「かつて世界が揉み消したはずの失態・・・・そして、この脅威・・・それを公表されるわけにはいきませんからね」


「えっ?」


「・・・・そうでしょう? アレクサンドル・ザイツェフ改め・・・・・・爆乱のチコ☆タン? 大人しく伝説になっていればいいものを・・・・」


横たわる魔人にゆっくりと歩み寄りながら、告げるクルトの言葉に、その意味を知るものたちは・・・・


「・・・えっ?」


「・・・・・・・・へっ・・・・・」


「・・・・・・・・・・はっ?」


僅かな間をおいて・・・・



「「「「「「ええええええええええええーーーーーッ!!??」」」」」」



度肝を抜かれてしまった。


「ば・・・ばばばば、爆乱チコ☆タンだと!? あの、童話の『チコ☆タンがやって来た!』のモデルになった!?」


「お、おいッ! 20年も前に死んだんじゃねえのかよ!? 俺ガキの頃にその童話読んで、人を怒らせないようにいつも発言気をつけるようになっちまったんだぞ!?」


「あの歩くグラウンド・ゼロとまで言われた魔人が!?」


「ちょ・・・・エマ団長、私聞いてないよッ!?」


「し、知らん! 私だって今初めて知ったんだ! 大体私もチコ☆タンは御伽噺でしか聞いたことないんだ! まだ赤ん坊だったし・・・・・」


「ワシは途中から気づいとったが・・・・」


「私も、もしかしたらとは思っていたさね」


「な、ママ、本当かよ!? 何で教えてくれなかったんだよ!?」


「ええ、私も・・・・」


「えっ、シスターシャークティ、知ってるんすか? ってココネーッ!? なんで震えまくってんの!?」


「アレ・・・・チコ☆タンダッタノ・・・・・・・・・」


あまりにも全員が驚きすぎていた。

ココネなんか今にも泣きそうである。

意味が分からずに首を傾げているのは、ココネとシャークティ以外のグレン団のメンバーに、シモンと瀬田一家に夕映だけだった。


「お、・・・おい・・・どういうことだ?」


「「「「「「勝った本人は知らないのかよッ!?」」」」」」


「ばっ、このクソッタレ野郎、テメエ知らずに戦ってたのかよ!?」


「とんでもない怪物ですのよ、シモンさん!? というかユエさんも知らなかったのですか!?」


「おい~、お前ら~、そんな変な名前の奴が本当に・・・・「バッ、ヤメロッ!!??」 ・・・・へっ?」


サラが「変な名前」と言いそうになった瞬間、チコ☆タンの存在を知る者たちが慌てて全員でサラの口を押さえた。

そしてそ~っとチコ☆タンに振り返ると、何の反応もなくボ~ッとしているのを見て、ホッとため息をついた。


「な、なんだよ~、みんなして・・・・」


「サ、サラさん。危ないこと言わないでください! 童話のチコ☆タンは名前をバカにされただけで、平気で街を消し飛ばすぐらい凶暴なんですよ!?」


「えっ・・・え~~~?」


「・・・う~ん・・・まあ、こいつが凄いのは戦って十分に分かったけど」


大げさすぎるような皆の反応に、どう対応していいのか分からず、チコ☆タンを知らぬ者達は皆戸惑っていた。

すると、当時を知るものとして、ミルフと奴隷長が口を開いた。


「爆乱のチコ☆タン。かつてシルチス亜大陸から始まり、世界を転々と渡り歩いた怪物じゃ。戦時の頃は、魔法弾の何千倍も厄介じゃった・・・だが・・・」


「うむ、たしかサウザンドマスターに敗れて、当時の王国地下超凶悪犯罪者専用の監獄に閉じ込められて死んだと聞いてたさね」
最終更新:2011年05月13日 20:47
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