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106-やっぱり、俺の中に生きていたんだ!

第百六話 やっぱり、俺の中に生きていたんだ! 投稿者:兄貴 投稿日:10/02/06-00:18 No.4277
世界は知った。

遠い銀河の果ての物語。

青く輝く小さな星の無法者。

世界を紅蓮に染めた男が銀幕突破して現れた。


「さあ・・・・約束を果たそうじゃないか!」


現れた男は既にフラフラのボロボロだった。

だが、その事をツッコム者はなかなか現れなかった。むしろその姿こそ、画面に映った男らしいと、よけいに興奮したからだ。

その己をどこまでも信じきった瞳とドリル、そして大グレン団のマークを背負っていれば、それはもはやシモン以外の何者でもない。

ネギに向って叫ぶシモン。

すると観客は興奮を抑えきれずに大歓声を上げた。



「「「「「「「「「「シモォーーーーーーン!!!」」」」」」」」」」



会場が一瞬で揺れた。

足元から徐々に響き渡って一気に弾けるその現象は、世界各地で起こっていた。


「・・・・えっ?」


「「「「「「「「「「「「シモーーーーン!!」」」」」」」」」


「「「「「「「「「「「グレンラガン! グレンラガン! グレンラガン! グレンラガン! グレンラガン!」」」」」」」」」」


「・・・・・は、・・・はあ?」


一斉に鳴り響くシモンコールとグレンラガンコール。

シモンが現れた瞬間、会場のボルテージが最高潮に達し、彼らは一丸となってとにかく叫んだ。


「このやろー! 待ってたぞ、シモン!」


「大グレン団ステキーーーッ!」


「僕も将来ガンメン乗りになるーーーッ!」


「私を天の向こうに連れて行ってーーー!」


「ヨーコに会わせろォ!」


「どうせならグレンラガン持って来いよー!」


「俺は誰だって、言ってーーッ!」


好き勝手に会場中のあちらこちらから、意味不明な言葉が叫ばれた。


「・・・・・・・えっ?」


現れた瞬間にこの状態、状況を飲み込めず流石のシモンもポカンとしている。

そして・・・


「ど、どうなって・・・・えっ? しかも何でグレンラガンのことを・・・・」


自分の名前だけではない。何と会場はグレンラガン、大グレン団、この世界の住人が知っているはずのない単語を叫んでいるのである。

わけも分からずシモンが戸惑っていると、会場のど真ん中に立っているシモンの目の前に、シモンに指名された男が観客席から飛び降りてきた。


「シモンさん。ようやくここまで来ましたよ」


そしてもう一人・・・


「ったく~、兄ちゃんの所為で血が滾ってたところや。ほんまええタイミングで来てくれたな~」


ネギと小太郎、いや・・・


『おお~~っと、シモンの登場により、待ちきれなくなったナギとコジローが飛び出してきたァ! 彼ら既にやる気満々です!』


ナギとコジロー。世界の英雄打ち破った両雄が、開始の合図を待ちきれずに降り立った。


「なんつ~、映像に、演出や! 兄ちゃん、こんなんずるいで~?」


「でも、これで燃えなきゃ男じゃないよね」


「まっ、燃え滾りすぎて困るぐらいやけどな!」


既に拳に力を入れて、二人は今すぐにでも飛び掛ってきそうなほど、興奮している。

まるで胸の中にある熱いものを、今すぐぶちまけてやりたい、というように見える。


「ちょっと・・・どういうことだよ・・・これ・・・・」


会場の熱気、ネギたちの興奮、そして突き刺さる熱い眼差し。

今まで何があったのかをまったく知らないシモンには、いきなりこんな光景を見せられても理解できるはずがない。


「シモンさん・・・・アレ、見てください」


「・・・ん? ・・・・・ん?」


するとネギが首を傾げるシモンの背後にある巨大なオーロラビジョンを指差した。

そこには・・・


「ん? って・・・ニア!? えっ、グレンラガン? ヨーコやキタンたちも・・・えっ、何で!? 何でこんな映像が流れているんだよ! えっ、しかもこれって・・・テッペリンを落としたときか?」


グレンラガンの足元で、仲間たちにもみくちゃにされている、少年時代の自分と、その隣に居るニア。大グレン団のメンバーと心の底から喜びを分かち合っている時の映像だ。

抱き合い、手を叩き、酒を浴びるように飲み、声が枯れ尽きるまで騒ぎ通した、最高の一日。

シモンも鮮明にその時を覚えていた。


「ちょっ、・・・何でこんなのが流れてるんだ!? しかも、何で全員で見てるんだよ!?」


「それを聞きたいのは僕たちの方ですよ。本当は、今日流される映像は、紅き翼の物語だったはずなのに、何故かいきなりシモンさんたち大グレン団の物語が流されたんですよ?」


「・・・・えっ? ・・・あっ、・・・そういえば・・・・・」


決勝戦以外に、超重要なことを忘れていた。

シモンの記憶フィルム・・・・自分は昨晩仲間と・・・・間違えて・・・・そして間違えられた自分のフィルムは・・・・・・


「なっ・・・・・なっ・・・・なっ・・・・」


ネギの指摘に、ようやく全ての謎が一本道に繋がった。

しかしそれは分かったからといってどうなるものでもない。

ただ・・・・とにかく叫ぶしかなかった・・・



「なんだってーーーッ!?」



その直後、流されていたシモンの記憶映像が止まった。

それが誰の意思なのかは知らない。だが、観客たちは何故か気にならなかった。それは、もっと気になる存在が目の前に現れたからだ。



そして、遠い空の向こうに居る仲間たちは・・・



「「「「「「「「「ぬあにいいいいいいいいいいいいいいいッ!!??」」」」」」」」



政府の巡洋艦に乗せられ、オスティアへ向う帰り道。

先ほどまでシモンと共に戦った仲間たちは、飛行船内にあるモニターの前で、全員が卒倒していた。


「ちょっ、どういうことだコラァ!?」


「お、俺たちが一番最初に見る予定だったやつじゃねえか!? 何で俺たちを差し置いて、こいつらが見てるんだよ!?」


「そ、そうか・・・リーダーが間違えたフィルムをそのまま・・・・」


「な、なんという・・・・」


「そ、そんなァ!? 私も見たかったのにーーーー!」


「ロ、録画・・・デキマセンデシタ」


「そりゃあ、私もだっての!? 記憶の映像化? 世界同時公開? 何なのそれはァ!? つーかなんで私たちが見れないんだよーーーーッ!?」


「・・・・・・・モウ・・・・終わっチャッタノ?」


「あ、・・・頭が痛くなってきました・・・・流石に・・・だから早めに回収しないとと・・・・」


「い、いいのかよ・・・サウザンドマスターの物語じゃなくて、あのクソッタレ野郎の記憶映像なんか放映して・・・・」


「驚いたさね・・・たしかにあの若造・・・世界に名を轟かせたさね・・・」


「な、な・・・な・・・う、うらやましすぎますわ!? 何故、こんなに大変な目にあった私たちが見れなくて、他の方々が見れるのですか!?」


「なんでよー! 私だって、兄貴の歴史を見たかったよーッ!」


「兄貴さんの・・・私も・・・・興味ありました・・・・」


「おやおや、僕も見たかったな~。残念だったね、サラ」


「も~~、何でだよ~! 踏んだり蹴ったりじゃないか~!」


今すぐにでも、モニターをぶち壊すほどの勢いで、全員が暴れだし、僅かに戦艦が揺れるほどの騒ぎにまで発展した。


「「「「どちくしょーーー! グレンラガンが・・・ヨーコさんが・・・どちくしょーーーッ!!」」」」


「ふ、不公平ですわ! 私だって見たいのに・・・この様子では恐らく木乃香さんも見ているはず・・・こんなところでとんでもない差が・・・・」


「なんだよ~~、私だってシモンの話を楽しみにしてたんだぞ~。それがもう終わってるなんて卑怯じゃねえかよ~」


「ぶ、ぶ~~~む・・・・」


「やれやれ、騒がしいのう」


「まったくだ。あんな男の歴史なぞ見ても・・・そもそも、セラス総長も会場に居られたはず、なのに何故こんなバカなことを・・・・」


「エマ団長~、強がり強がり」


「なっ、わ・・・・私は別に興味ないぞ!?」


「ふざけんなっての! 私は見たかったんだよーー! 大体、妹の私たちやグレン団を差し置いて、なーんで、見ず知らずの奴らが先に見ちゃってるんだよーーッ!!」


もはや収拾がつかない大騒ぎ。

あまりの騒ぎのために、一時戦艦の警報がなりそうになったぐらいである。

新生大グレン団を中心に、自分たちの戦っている間に起こった出来事に、誰もが口をそろえて文句の嵐を口から吐き出す。

このままでは、再び大混乱がおきるかもしれない。

だが・・・


「たしかにうらやましいけど・・・・でも、僕たちも・・・人から見たらそう映るんじゃないのかな?」


「「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」」


瀬田の言葉に、混乱がピタリと止んだ。



「僕たちはシモン君の伝説を見ることは出来なかった・・・でもね・・・僕たちはシモン君と一緒に、新たな伝説を創ったじゃないか」



伝説を見るのと創るの・・・どちらがいいか?


そんなもの答えるまでない。


瀬田の言葉に、自分たちの成したことを改めて気づいた彼らは、僅かな沈黙の後・・・・・



「「「「「「うおおおお! そうだア! 俺(私)たちを誰だと思っていやがるゥッ!!!!」」」」」」



もう一度騒ぎ出した。


結局戦艦の警報がなり、遠い空の向こうは大騒ぎだった。








「なるほど。俺が居ない間にそんなことがあったなんてな」


そして、舞台は同じように興奮が冷めやまらぬ、オスティアへ戻る。


「シモンさん・・・・今までどこに?」


「・・・・ちょっと伝説を創りにな・・・・」


「・・・・・・・サラさんは?」


「ああ、ちょっとメカタマがぶっ壊れてな。どうやら戦いに参加するのは無理みたいだったから、俺一人で来たよ」


「・・・・・・その怪我は?」


「気にすんな、いつもの無茶さ」


まったく答えになっていない、アバウトな回答。

相変わらずシモンらしい。

そして・・・・


「・・・・・・なら・・・・・・記憶は?・・・・・」


語尾が若干弱かった。

シモンが来てくれたのだから、それでいい。

シモンの怪我も、サラが居ないことだって、今なら目を瞑る。

だが、それだけは気になった。

いや、気になるのはネギだけでない。当然小太郎も、観客席に居るアスナや木乃香や刹那たちも、皆同じである。

不安そうに見つめる皆の視線に、シモンは小さく笑い・・・



「俺を誰だと思っている」



全国ネットを通して、ぶちまけた。


「シモンさん!!」


青年の姿だろうと、構わず涙を浮かべるネギ。


「く~~、ようやく帰ってきたようやな、兄ちゃん!」


震えを抑えることの出来ない小太郎。

そして・・・・


「やっぱり!! じゃ、じゃあ・・・・あそこに居るのは・・・・」


「ほ、・・・・ほんまに・・・・」


「私たちの知っている・・・・」


そう、彼女たちの知っているシモンだ。

アスナや木乃香たちは笑顔と涙の入り混じった表情で、今すぐにでも闘技場に飛び降りて、シモンに飛びつきたいぐらいだった。

だが・・・それは阻まれる。

シモンの言った、「俺を誰だと思っている」は・・・・



「「「「「「「「「ウオオオオオォォォォォォーーーーーーーーーッッ!!!!」」」」」」」」



世界の心を一瞬で鷲摑みにする、大ファンサービスのようなものになってしまった。


「シモーン! ついでに口上もなんか言ってくれーー!」


「合体よ、合体! 私と合体してーーッ!」


「グレンラガンを召喚しろーーッ!」


「ブータってどこに売ってるのー? 私もペットに買いたいーーッ!」


もはや、この会場の熱気と興奮を止めることなど誰にも出来はしない。


「うっは~~、すごいや、シモンさんってば!」


「ああ~~んも~~、ずっきゅーんや。ウチの心にもうずっきゅーんや!」


「あれです! そうですあれです! シモンさんが人気者になったのは少し不満ですが、周りに熱気を伝染させてしまうこの感じ! もう、あれは間違いなくシモンさんです!」


鳴り止まぬ大歓声と、シモンコールにアスナたちは嬉しそうに周りを見渡して、ゾクゾクした。


「へっ、記憶がねえとか色々あったらしいが、あのド派手なパフォーマンスは、あの熱血バカ以外にありえねーな」


「へーー、千雨ちゃんもシモンさんのことを知ってたんだー! 正直私たちは、シモンさんのことそんなに知らなかったけど、やっぱありゃあ、カッコいいわ~、アキラもそう思うでしょ?」


「えっ? 裕奈、別に私は・・・でも・・・学園祭のときとか、シモンさんのああいう熱いところは、今日ようやく納得できた気がしたよ。ああいうバックグラウンドがあったなんて・・・」


「う~ん、木乃香や桜咲さんが好きになるのも分かる気がするわ~」


「・・・それはいいとして・・・茶々丸・・・何故震えているでござるか?」


「お気になさらず・・・ただの・・・・・武者震いです!」


「うっひょ~~、老若男女獣魔ロボット、あらゆる種族に影響を与える、シモンさんクオリティーは健在って事だね~!」


「うん、ハルナの言うとおり・・・・あれが・・・・ネギ先生がお父さんと同じように憧れた・・・・もう一人の目標の人!」


あれが、シモンだ!

私たちはもっと前からあの人の友達だったと、まるで心の中で自慢するかのように、鼻が高く、皆誇らしげだった。


「だーはっはっはっはっは! 相変わらず、ずるいぐらいオモシレーじゃねえかよ、アイツ!」


「うむ、まさかいい年して妾もここまで興奮するとは思わなんだ・・・・」


「ええそうね・・・だから・・・・そろそろ認めたら、偽エヴァ?」


「う、うるさい・・・だ、誰が・・・あんなダサい男・・・・私の本体が・・・ほ、ほ・・・惚れたり・・・などするものか・・・」


この一部始終をVIP席で見下ろしながら大爆笑しているリカードたちの傍らで、顔を真っ赤にしながらシモンをチラチラと窺う偽エヴァが居た。


「がっはっはっは、もう素直になっちまっていいんじゃねえか~? シモン復活シーンからヤバかっただろ?」


「そ、そんなことはない! 適当なことばかり言っていると、八つ裂きにするぞ!?」


「顔真っ赤にしても、全然怖くないわよ?」


「だだ、黙れ!? この私が易々と惚れたりなどするものか! 私を誰だと思っている! ・・・・・・・・」


「「「だはははははははははははははははは!!」」」


「し、しま・・・いや・・・今のは意識したわけではなく、・・・だ、誰だって言うではないか!」


「メロメロじゃの~、恋はいつでもギガドリルじゃな」


「・・・・ハリケーンじゃなかったかしら?」


偽エヴァの言葉に説得力が無いことなど一目瞭然だった。彼女に、今正に現実世界でシモンのことを想って身悶えたり、ちょっとアホな子になっている本体を見せたらどんな反応をするのか、少し興味もあるところだった。


「く、・・・おのれ貴様ら・・・・ん? あのアホはどこへ行った?」


「はっ? そういえばラカンがいねえ・・・・・って、うおッ!?」


「あのアホいつの間にあんなところに!?」


先ほどまで一緒にここに居たラカンが、いつの間にかこの場に居ないことに少し不思議に思い、リカードたちが辺りを見渡したところ・・・


『お、おおおおーーーーっと、これはどういうことだ!? なんと、英雄ラカンが、現れました!!』


なんとこの興奮冷め止まらぬ囚人観衆の中、ラカンはシモンたちの居る闘技場に突如飛び降りた。


「いよう、ボロボロじゃねえか。何があったんだ~?」


「・・・ラカン・・・・」


「だがまあ、とにかくド派手な登場かましやがって」


このサプライズには観客も大喜び。

すると現れたラカンはニヤニヤしながらシモンに近づいてきた。



「シモン。テメエの・・・いや、テメエらの伝説は、しかと目に焼き付けたぜ!!」



力強く言う言葉に、シモンは頷いた。

すると、ラカンは突然ネギと小太郎の肩に手を回し、シモンに告げる。


「だがな・・・ここに居る小僧は・・・・弟子びいきを差し引いてもだ、・・・能力・・・才能・・・修練・・・力・・・そして、テメエの大好きな気合・・・どれをとっても、世界最強クラスだ! コジローにいたっても同じだ! どうしてテメエがそんな状態かは知らねえが、テメエがズタボロの状態で相手をしなきゃならないのは・・・・そんな二人だ!」


今のシモンの何故か分からぬがボロボロの姿を見ながら告げる。まるで確認するかのように。

だが、そんな確認は無意味であることなどラカンは知っている。

案の定、シモンは「だからどうした?」と言わんばかりの表情である。


「ああ・・・知ってるぜ! だけど逃げねえよ! 退き下がることしないさ。お前も俺の過去を見たなら知ってるだろ?」


そう、ラカンの問いに対してシモンは・・・



「逃げねぇ 退かねぇ 振り向かねぇ それが俺たちグレン団の心意気だ!!」



満点の回答をした。



「だーーーはっはっはっはっはっはっはっはっ!! 当ったり前だ! 聞いてみただけだよ、大馬鹿野郎!!」



ラカンの口元が心底嬉しそうにつりあがった。

ラカンの笑い声と共に、観客からも「おお!」という声が漏れる。

そして、ラカンはネギと小太郎の肩から腕を放し、そしてその場から一歩下がって、彼らに促した。



「じゃあ・・・・テメエら・・・・・燃え尽きるまで戦いやがれ!! ここはお前たちのためだけに用意された舞台だ!!」



するとラカンは審判の女性を腰に担ぎ、闘技場から飛び出した。


『えっ、ちょっ、ラカンさん! 私、審判なんですけど!?』


「バーカ。あそこにいたら、巻きこまれんだろ?」


そして審判の女性を担いだラカンは観客席までジャンプして、そしてどこから取り出したのか、超巨大な大太鼓を準備した。

そして闘技場に居る三人に、そして会場中に、そして全世界の視聴者へ向けて、開始のゴングを鳴らす。



「いくぜ、決勝戦・・・・始めええええええええええーーーーーーーーーーッ!!!!」



ラカンが素手で叩いた太鼓が破裂して、闘技場に大音量のゴングが響き渡った。

そして審判の女性も慌ててマイクを持ち直し、もうどうにでもなれという気持ちで、叫んだ。



『さあ、もはや話が勝手に進んでいます! しかし、皆様も既にその気になっている様子! ここで邪魔をするのは野暮ってものだ! もう、どうにでもなれ! お互い死ぬ気で戦いなさい! 決勝戦の開始です!!』



「「「「「「「「「ウオオオオオォォォォォォーーーーーーーーーッッ!!!!」」」」」」」」



さあ、ショータイムの始まりだ。全員一瞬たりとも目を背けるなと、会場中の想いが響き渡る。

だが、それは当事者の彼らにとっても同じこと。


「さっそくいくで、狗族獣化!!!!」


「・・ふっ、超銀河ァ!!!!」


そして・・・・


「解放・固定(エーミッタム・エト・スタグネット)!! 『千の雷(キーリプル・アストラペー)』!!  掌握(コンプレクシオー)!! 術式兵装(プロ・アルマティオーネ)!!」



「ん?」


『おーっと、ナギ選手いきなり来ました! 準決勝のラカン戦と同じ技!』


試合開始と同時に全員いきなり大開放!

白銀の光に包まれて、全身がスパークするネギ。

流れる空気が痺れるように痛い。コケ脅しには見えない



「雷天大壮(ヘー・アストラペー・ヒューペル・ウーラヌー・メガ・デュナメネー)!!!!」



天に轟く稲妻を、自らの体内に全て取り込み、己自身を雷神と化したネギの新技。

初めて見たシモンにすら、その脅威を一瞬で感じ取ることが出来た。



『さあ、きたきたきたきたァ!! ナギ選手の変身技! そして、コジロー選手の獣化による本領発揮!! グレンラガンのない、シモン選手! 大グレン団の仲間無しで、これを乗り切ることが出来るのか!? その答えは彼のドリルに詰まっている!』



魂のぶつかり合いが始まった!


だが、そんな中、シモンは自分の体の異変に気づいた。


(体が・・・重い・・・・)


超銀河の光が弱い。

いつものように、無限に溢れ出す力も感じない。

それも当然だ。彼は既にガス欠状態なのである。

ギガドリルブレイク、ギガドリルマキシマム、超銀河ギガドリルブレイク、ギガドリルブレイク新生大グレン団スペシャル、おまけに大人数との大喧嘩に加えてチコ☆タンとの戦いによる疲労と怪我が、既にシモンをギリギリまで追い込んでいた。

しかし・・・


(だからって・・・折れるわけにはいかねえよな・・・)


決して弱音を口に出さずに、残りの螺旋力と気合に賭けて彼は構える。


(何分持つ・・・・・・でも、その数分だけは耐えてくれ!)


全ては目の前に居る・・・・


(俺を目指した奴らに、精一杯応えられるまで!)


彼らの想いに応えるためだ。


(ペース配分なんか考えるな。配分するほど残ってないんだ。)


その想いに正面からシモンはぶつかっていく。


(ネギの変身は見たことない。やばいのか? ラカンに勝ったんだ、当然だ。だが、ラカンに勝つってことは、妙な特殊能力とかそういう類のものじゃない。能力じゃなくて性能・・・単純なパワーアップのための変身だ!)


シモンは変身したネギの力を、頭の中で分析し、一瞬で行動に移る。


(ゴチャゴチャ考えるな! 力勝負なら先手必勝だ!! この数分に、今の俺の全部を出し切る!)


自らの状態を考え、短期決戦に臨む。


「いくぞ、坊主共!!」


まだ、動いていないネギたちより早くに、シモンは動いた。

そして、それは間合いをつめるのではない。開始位置から前へ行かずに、その場でドリルを振り上げ、地面に向って突き刺した。



「スパイラルギャラクシー(渦巻銀河)!!」



『おおーっと! シモン選手がドリルを大地に突き刺した瞬間、闘技場内四方八方からドリルが出現して伸びたァ!?』



突如出現したドリルが、上下左右に当たり構わず伸び、闘技場を埋め尽くし、ドリルの宇宙が広がった。



『こんなもの食らったら、流石のナギ選手とコジロー選手は・・・・って、えっ!? これは!?』



しかし、シモンの創り出した宇宙は砕け散った。

ドリル銀河が広がったかと思えば、それは一瞬で消えた。


「なっ!?」


次々とドリルが消えて、視界が広がると、宇宙の中央でネギの拳が既にシモンを捕らえていた。


「な、・・・なにッ!?」


「シモンさん! 今の僕の疾さは・・・時を刻みます!!」


『で、でたァァ! 神速超速電光石火! ナギ選手の雷速瞬動が、シモン選手の技の発動の瞬間に突き刺さったァァ!!』


「が、がはァ」


思わぬダメージに、シモンの技は消されてしまった。


「うお・・・は、・・・は・・・」


「速い! 流石ネギ先生!」


気づいたときには、腹部に突き刺さる拳の痛みと、ふっとばされて宙に舞っていることしか分からなかった。

正直、反応出来る出来ない以前に・・・


(み、見えなかった!?)


ネギ同様、疲れているとはいえ、あらゆるスペックが桁外れに上昇しているはずの超銀河モードのシモンが、ネギの攻撃を避けるどころか、何も見えなかった。


『たまらず吹っ飛ばされるシモン選手! しかし、ナギの追撃の手は止まらない! おおーーっと、コジロー選手も現れた!』


「助かったで、ナギ! お前が技消してくれたおかげで、一瞬防御で耐えるだけで助かったわ!」


シモンの技が一瞬で消えたために、小太郎も大したダメージを食らうことなく健在である。

吹き飛ばされたシモンに、獣神と雷神のタッグが容赦なく攻め立てる。


「雷速瞬動!!」


「なら俺は、獣速瞬動!!」


光の速さと獣のスピードが、闘技場を駆け巡る。


「こ、これは!?」


正直、ネギのスピードは目に見ることすら不可能な技だ。だが、目に見えなくても心を落ち着かせれば、流れを感じ取ることぐらいは出来たかもしれない。

だが、小太郎の動きがそれを邪魔させた。

小太郎の動きも自分の想像を遥かに上回るほどのスピードである。しかし、目に見えないほどではない。


(くっ、注意が散漫になる・・・・・)


そのため、目に見える小太郎の動きばかりを追いかけてしまい、視界に映すことの出来ないネギにまで対処が出来なかった。


「いくで、兄ちゃん! まずは俺からや! 狗音噛鹿尖乱撃!!」


「っつう!?」


まずは、小太郎だ。

小太郎の腕から発せられた大量の狼の群れが、スピードに乗ってシモンに迫り来る。

これを全て対処するのは不可能である。


「兄ちゃんのドリルは確かに厄介や! しかし、欠点がある! それは一撃必殺なところや! こうやって足使っての連打には、ドリルが重くて対処が出来ん! 突き刺す、振り下ろす、なぎ払うかのどれかや!」


「!?」


動き回りながら指摘する小太郎。若干シモンの顔が歪んだ。


「へっ、・・・だからどうした! それに一番重要なのを忘れてる! ドリルは・・・・突き立て捻じ込むものなんだよ!! なめんじゃねえ!」


「それも知っとるで!」


「むっ!?」


『おおおーーーっと、カウンター気味に突き刺したシモン選手のドリルが空を切る! コジロー選手が更にスピードを上げた!』


「俺らは兄ちゃんをなめてなんかないで! だからこそ、手段も方法も構わず、容赦なく攻め立てるんや!!」


「っつううう」


「いくで、狗音爆砕拳!!」


小太郎の攻めに防戦一方のところに、がら空きとなったシモンの腹部まで踏み込み、彼は狗神を集中させた拳を一気に振りぬく。


「超螺旋フィールド!!」


とっさの螺旋の防壁だ。

だが、溜める時間もない上に、残りの螺旋力で張れるフィールドの強度はたかが知れてる。

小太郎の拳は、シモンのフィールドを粉々に砕き、その勢いでシモンのどてっぱらに渾身の一撃を叩き込む。


「――――ッ!?」


『キマッタァ!! コジローの渾身のボディーブローが炸裂ゥーーーッ!! 悶絶ものの一撃にシモンは溜まらず吹き飛ばされる!!』


腹を押さえながら苦痛に顔を歪めるシモン。

だが、吐き出しそうになる胃液を押さえ込み、懸命に態勢を立て直そうとする。


(くそっ、もう防御も使えない・・・このままじゃ・・・だけど・・・悶絶しても・・・骨が折れようと・・・俺はまだ意識がある・・・意識がある限り・・・・)


だが、その時・・・・


「心が折れない限り・・・・奇跡は起きる! そんなもの何度も教えてもらいました!」


「なっ!?」


シモンが吹き飛ばされた先には、既にネギが居た。


「全てが終わるまで、僕たちは欠片の油断もしたりしませんよ!」


「こ、・・・この・・・」


「雷速瞬動!!」
最終更新:2011年05月13日 20:50
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