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106-2

天に稲妻が鳴り響いた。

目にも止まらぬ・・・・目にも見えぬ・・・知覚すら出来ない速さ。

分かるのは、視界が閃光で埋め尽くされ、気づけば全身の至る所から痛みが広がっていく。


『フルボッコ!! メッタ打ち、メッタ打ちだァ!!! つうか、昨日のラカン戦と同様、何が起きてるか分かりませんが、とにかく速い!! 光の奔流に飲み込まれてシモンフルボッコだァ!!』


(な、なんだこりゃあ・・・俺が疲れてるとか無関係に速くて強い!! このガキ・・・・いつの間に・・・こんな・・・)


ネギとの出会いは、森の中で泣いている彼と出会ったとき。

あの時の少年が・・・・涙腺の弱い子供が・・・・数ヶ月前の学園祭では自分にボコボコにされた少年がいつの間に・・・


(触れもしない・・・なら・・・・弾き飛ばす!!)


シモンの体が僅かに光った。

残る螺旋力では大技は使えない。

だが、それでも最後の足掻きを見せるために、彼は残りの螺旋力を振り絞って、全身からドリルを出した。


「フルドリライズ!!」


『おおおっと! これはグレンラガンと同じフルドリライズ形態です!! シモン選手はこんな技を隠し持っていたのかァ!?』


グレンラガンと同じ技に会場中が盛り上がる。

だが、シモンもただのサービスでやったわけではない。

全方位に向けて伸ばすフルドリライズなら、たとえネギが目に見えなくても、吹き飛ばすことが出来るとシモンは考えたからだ。

しかし・・・


「な、なに!?」


手ごたえが感じられなかった。

目を開けると、フルドリライズが伸びる限界の間合いの外に、ネギは一瞬で退避していた。


「知っています! あなたならそうすると思っていました!!」


「こ、こいつ!?」


そして、伸びきったドリルがやがて消えうせ・・・・その瞬間・・・


「術式解放(ペルフェクトゥス・プラスマティオーニス)!! 完全雷化(ペル・エーミッシオーネム)!!」


がら空きとなったシモンに、待っていましたとばかりに追い討ちをかける。


「あ、あの技は!? ネギ先生・・・ちょっ!?」


「コラーネギーーッ!?」


今からネギが何をやるのかが分かったアスナたちが騒いでネギを止めようとする。

それだけで、技の危険度が予想できる。


(シモンさんは既にボロボロ・・・・この技を食らえば、並みの魔法使いなら消し飛ぶってラカンさんは言っていた・・・・・でも・・・シモンさんは・・・・僕らの予想のはるか上の人だ!!)


ネギは技を止めない。

それは、確実にシモンを倒すため。そのために、ネギは一切の油断もしない。

そして・・・


(それにこの人が・・・これで・・・・)


ある意味・・・・


「ちょっ、ネギってばァ! シモンさんが・・・・「大丈夫や!」 ・・・・木乃香?」


「大・・・丈夫や・・・シモンさんなら・・・大丈夫や! シモンさんがコレで終わるはずが・・・ない!」


涙を堪えながら自分を押さえ込み、シモンから目を離さない今の木乃香と同じように・・・


(そうだ、これで終わるはずがない!!)


ネギもまたシモンを信じていた。

決着を付けるために放つ技。しかし、心のどこかでは、シモンが何かを起こしてくれることを期待していた。

その想いを込めて、雷化したネギが、天空から光臨する。



「千磐破雷(チハヤブルイカヅチ)!!!」



並みの使い手など跡形もなく消し飛ばすほどの超強力なネギの突進が、シモン目掛けて真っ直ぐに迫る。


(ま、まずい・・・・あれを食らったら・・・・)


考える暇すらない。


(こんな一方的になるとは・・・どうする・・・どうする!?)


避けることも防ぐことも出来ぬ今の自分・・・・

ましてや螺旋力も完全に底をつきかけた今の自分では・・・・



――どうした?



「えっ?」



だが、その時・・・現実世界の時の流れに逆らって・・・



――お前の螺旋もタネ切れか?



シモンは精神世界に引きずり込まれ・・・・



(むっ・・・・)



男の声を聞いた。

威厳に満ちたその男の言葉は、シモンの頭の中に響き渡った。

そして、僅かに点滅するコアドリルが、シモンの緑色の光から、紅く輝きだした。



(・・・・・・・・・・・)



この光、この感じ、覚えがある。



―――お前ら全員燃えてしまえッ!!!



記憶を失っていたとき、ラカンと戦っていたとき、絶望に飲み込まれたときに味わった力だ。



(・・・ロージェノム・・・・・・・・)



アンチスパイラルの絶望に飲み込まれて、倦怠の海に沈んだ男。

その男の光が、徐々にシモンに流れる・・・



―――人間よ、愚かなる種よ、恐怖せよ! この絶対の力の前に!



支配の力が・・・・



―――圧倒的恐怖と、絶望の前にひれ伏せい!



絶望の力がシモンを支配しようとする。

自分に全てを委ねよと命令してくる。



―――螺旋王の名の前に!



流れ込む。

一瞬ゆれた自分の心の弱さ。

その心の弱さにつけ込んで、絶望した男の想いが流れ込もうとする。


だが・・・


(・・・いらねえよ・・・・)


今は以前とは違う。

シモンはその流れる想いに抗った。



(そんな力・・・俺はいらない・・・ひれ伏すものか!)



流れに身を任せなかった。



(なめんじゃねえよ! 飲み込まれるかよ、もう二度と! 絶望なんざ・・・・逆に飲み込んでやらァ!! ロージェノム・・・螺旋の友よ・・・アンチスパイラル・・・さっきも言っただろ・・・・俺を信じろって!)



その力を受け入れなかった。



(絶望の力なんていらない! 絶望なんか、俺がぶち壊すからだ! 希望もいらない・・・・そんなもん・・・この手で自ら掴んでやるからだ!!)



そして・・・



(だが、・・・もし・・・くれるというのならば・・・螺旋族の・・・お前の・・・・)



その流れと力を逆に・・・



(お前の魂俺にくれぇ!!)



飲み込んでみせた。


その想いは・・・・


魂を通じて・・・・



――シモオオオオン!! 受け取れええ!!



伝わった。



託してやろう・・・この力・・・・



「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」



「ッ!?」



「な、なんや!?」



ほんの一瞬の出来事。


シモンの頭の中でのそんなやり取りを知らずに、既に目前まで迫っていたネギと小太郎は、突然のシモンの変化を感じ取った。


「む、何だってんだ!?」


「あやつ、一体何が起こったのじゃ?」


「この感じは今までと違うわよ? エヴァ、何だか分かる?」


「し、知らん・・・・初めて見る類の力だ・・・・」


紅い光が、緑色の光に飲み込まれ・・・・


交わった光は螺旋の渦を描き、シモンの全身を包み込む、


そして・・・


「なっ!?」


「なんやとォ!?」


『こ、ここ・・・この技はッ!?』


「あの技・・・俺様と戦ったときの・・・・・・」


巨大な螺旋の渦はシモン自身を包み込み、巨大なドリルそのものとなった。

ネギの攻撃は既に止まらない。

巨大なドリルに包まれたシモンに向って振り下ろされる。

だが、現れたドリルも、刃先を真上に向けて、一気に発射される。



「カテドラル・ラゼンガン・インパクトォォーーーーッ!!」



その技は、つい先ほど見た。

それは、映像の中。シモンの記憶映像の中に流れていた技・・・・

グレンラガンではない・・・

大グレン団ではない・・・・

螺旋王ロージェノムのラゼンガンの技だった。



『こ、これはァ!?』



会場中が声を出して驚くよりも前に、ネギの千磐破雷(チハヤブルイカヅチ)とシモンのラゼンガン・インパクトがぶつかり合い、閃光が弾け飛ぶ。

光そのものとなったネギと、光のドリルに包まれたシモンの、二人の技がぶつかり合い、激しい衝撃音が伝わってきた。


(この技は螺旋王の!? どうやって!? それにシモンさんは既に限界だったはず・・・いや、シモンさんに限界はないって言ったのは僕だ・・・でも、これは・・・)


一瞬の動揺が、真っ直ぐなシモンに押し切られ、勢いを増したシモンのドリルが次の瞬間、ネギの光を弾き飛ばした。

だが、ドリルがネギの胸に飛び込んでくる寸前のところで、彼は真横に避けてドリルの直撃から回避し、そのまま地上へ降り立つ。

真上を見上げると、天高らかに上昇する巨大なドリル。


「だ、大丈夫かネギィ!?」


「大丈夫だよ、直撃は避けた! それより小太郎君、直ぐに構えるんだ!」


「・・・ああ・・・さっきまでとは違う・・・背中に汗かいてもうたで・・・」


「うん、・・・どうやら僕たちは・・・・」


やがて上空まで進んだドリルが回転を止め、光の渦が治まると、中から螺旋の炎を頭に燃やしたシモンが、上空から見下ろしていた。



『な、なんということだァ! 今シモンから放たれた技は、間違いなくラゼンガンの技です! 一体何があったと言うのだ! この衝撃の事態に、私も驚きを隠せません! しかしシモンはまだ戦う! その身が朽ちるまで戦うつもりだァ!』



その堂々とした姿に武者震いをさせながら・・・


「どうやら、あの人の本領を発揮させたようだね!」


そしてシモンは、間髪入れずに地上に居る二人に向って降下する。


「はっ、上等や! 本領発揮のグレン団と戦ってこそ、男ってもんや!!」


「なら、行くよ!! こっちも・・・・全力全開超開放だ!!」


何故、シモンがロージェノムと同じ技を?  

だが、考えている暇など与えられない。息を呑む間も与えない。


「いくぜ! 千年の時を込めたこの力、簡単には行かねえぜ!!」


体の傷が治ったわけではない。


(・・・まだ・・・動く・・・)


疲労が完全回復したわけではない。


(まだ・・・心は折れていない・・・・)


コアドリルの気まぐれか・・・それとも奇跡か・・・ロージェノムの意思なのかは分からない。


(ならば・・・最後まで受け止めてやる・・・・この身の痛みぐらいなら・・・・心さえあれば・・・まだ・・・俺は戦える)


しかし、いかに螺旋力を得ようとも、先ほどのような大技の衝撃に耐え切れる力はシモンにはもう残っていない。自分の出す技の衝撃すら、シモンにとっては苦痛だった。


しかし、それがどうしたというのだ?



「我流犬上流獣化奥義!!」



そんな情報など、無意味だということを、むしろ彼らが一番良く分かっていた。



「狗音影装!!」



狗神を肉体に取り込み、獣化の中でも最強形態。


『おおーーーっと、コジローも獣化の外装を身に纏い、最強の力でシモンを迎え撃つ! そして、ナギ選手・・・これは・・・』


漆黒の巨大な狗神、牙と爪を光らせて、シモンに狙いを定めている。


「流石に驚いたで。まさかあんな隠し技があるとはな!」


「隠していたわけじゃねえ! 新しく覚えたんだよ!」


「はっ、ええな~、兄ちゃんなら何でもありや! さあ、いくで兄ちゃん・・・どこまでも・・・・どこまでも行ったるで!!」


「どこまでも来やがれ!!」


シモンの螺旋槍と小太郎の爪が交差する。

激しい金属音を響かせ、闘技場内を駆け巡る。

だが、手数は小太郎の方が上。


「へっ、スピードは変わってへんようやな! 鈍重な武器で俺を仕留めることはできひんぞ!!」


「そうかな?」


「!?」


「だったら、こいつはどうだ!」


シモンが左手にドリルを持ち、開いた右腕を小太郎に向ける。すると、シモンの全身からドリルが伸び、全てが小太郎目掛けて襲い掛かる。

それはフルドリライズのように全方位に向けたドリルではない。

シモンの腕の指示の方角に伸び、そしてそのドリルは鞭のようにしなやかに、小太郎に向けて放たれた。


「な、なんやとォ!?」


小太郎も辛うじて回避していく。だが、技のスピードとキレが、段違いである。

そしてこの技も見たことがある。


『こ、これも・・・これもラゼンガンの技だ!? 一体どういうことだ、シモン! 天敵である螺旋王の技をも自在に操ります!! しかし、コジローはたまらず後退! 流石はシモン、獣人には強かったァ!! 速い速い速い!』


ラゼンガンの技。

そして、映像で見る限り、パワーはグレンラガンが上でも、機動力とスピードはラゼンガンが上だった。

しなるドリルの鞭が、高速で逃げ回る小太郎を追い詰めていく。


「くっ・・・・・ウルァ! 爆ぜぇ!!」


溜まらず小太郎が口の中から気弾を放出し、小太郎の合図と共に爆発する。

その勢いにより、シモンのドリルが弾かれ、小太郎は致命傷を避けられた。

しかし・・・


「チコ☆タンの爆発は・・・・・」


「なっ!?」


「こんなもんじゃなかったぞォ!!」


立ち込める爆炎の中から、ドリル片手にシモンが飛び出した。


「しっ、しま!?」


「俺の攻撃は遅い・・・だから当たらなければ意味がない・・・でもな、当たれば・・・」


「くっ!?」


「でけえぞォ!!」


突き刺さる。

天井を・・・天を・・・世界を・・・銀河を貫いた男のドリルを、小太郎は真正面から食らった。


「が、ガハァ!?」


『捉えたァァ!! シモンの息もつかせぬ手数に足を止められ、天を突くシモンのドリルがコジローに風穴開けるゥ!!』


文字通りの一撃必殺の攻撃は、たった一発で小太郎の足を止めた。


「こ、こここここここここ、小太郎君!?」


「お、落ち着くんだ夏美。まだ彼も大丈夫だ」


染み渡る一撃の重み。


(へっ、効いた~~~、これが兄ちゃんのドリルかいな)


世界を変えたドリルの威力。

もし、この男が本調子なら、・・・ギガドリルブレイクなら・・・想像しただけでゾッとしてしまう。

だが・・・・


「なんちゅう一撃や・・・だがな・・・耐えたで!!」


堪えきった。

傷は軽くない上に、血もいくらか吐き出しているが、強固な外装を纏っていた小太郎を仕留めるまでには至らなかった。

そして・・・


「兄ちゃん・・・・あっちも準備できたみたいやで?」


「なに?」


ニヤリと笑う小太郎に、シモンはハッとなって後ろを振り返る。

するとそこには、両手を交差させて、巨大な雷を放出しているネギが居た。

その両腕に刻まれた光が、千の雷を掌握し・・・



「左腕(シニストラー) 解放固定(エーミッサ・スタグネット) 千の雷(キーリプル・アストラペー)!! 右腕(デクストラー) 解放固定(エーミッサ・スタグネット) 千の雷(キーリプル・アストラペー)!! 双腕掌握(ドゥプレクス・コンプレクシオー)!!」



「なにッ!?」



「術式兵装(プロ・アルマティオーネ)!!」



「・・・・こいつは・・・・」



「雷天大壮2(ヘー・アストラペー・ヒューペル・ウーラヌー・メガ・デュナメネー)!!」



天衣無縫の力を生み出した。


『で、出たァァァ!! ナギ選手の最終奥義! あのラカンを粉砕した最強の力! 雷天大壮2だァァーーーッ!!』



「ラカンを? ・・・・なるほど・・・・それか・・・・」


背筋にゾクリと寒気がした。

伝わってくるのだ。


(な、んだ・・・・・この力は・・・)


ラカンを力で超える、ネギの無理を通したその力。

こうして正面に対峙しているだけでも伝わってくる。

奥の手を惜しみなく繰り出すネギ。

その底が知れない力に、シモンは背筋を振るわせた。

そして・・・・


「・・・・勝負・・・あったか?」


この状態のネギを見て、リカードが呟いた。


「ああ・・・どうやらこれまでのようじゃのう」


「これを打ち負かすのは、もはや気合とかいうレベルじゃないからね」


ネギの力を知る彼らは、この戦いの勝敗を既に見た。


「たしかに・・・螺旋王の力だか知らねえが、今のシモンは騙し騙しだ・・・・後一撃食らえば、・・・ギリギリで繋ぎとめている心も切れるだろうな・・・」


ラカンも否定しなかった。

自身を打ち破った力だからこそ、仮にシモンのことを良く知っていたとしても、結末を既に感じ取っていた。

何とか予備電源を振り絞ったシモンとはいえ、微塵の油断もしていない、今の状態のネギたちに勝つ見込みはない。

正直これまでだろうというのが、大方の見方だった。




そして・・・





今正に同じ光景を・・・


会場の屋根の上で、彼らの戦いを黙って見下ろす男が居た。


終始無表情で、何を考えているかは分からない。


「・・・・・・・・・・・・・・・」


だが、男は決して彼らの攻防から目を放さず、その瞳に焼き付けていた。


彼にとって、自分の生きる目的のような存在でもある、ネギとシモン。


勝敗や力比べが見たいのではない。


ただ、魂を振り絞る二人のぶつかり合いに、フェイトは柄にもなく気になり、わざわざ姿を現した。


世界がこの舞台にくぎ付けになっている以上、彼の存在が見つかる心配はないのだが、実に大胆な行動に出たものだ。


恐らくフェイトの従者は今頃焦って探し回っている頃かもしれない。


しかしフェイトは来た。従者の少女たちにも言えない自分の感情を隠し通したまま、彼はネギとシモンの行く末を見届ける。


だが、集中して見ていたのか、フェイトは気づかなかった。



「ひゃはははは、いよう、こんなところで何をやってるんだい? 世界の守護者様が今頃俗世間にでも興味を持ったのか?」



「!?」



闘技場の屋根の上に、自分以外の気配が現れたのを、彼は寸前まで察知できなかった。



「・・・・・・君は・・・・・」



フェイトは、目を見開いて、目の前に現れた男から目を離せないでいた。


これほど接近されて何故気づけなかったのかと・・・


これほどの存在感を何故気づけなかったのかと・・・・



「久し振り・・・・それとも初めましてか? くっくっく、悪いね~、お前たちの判別できなくてよ~。人形は皆同じ顔に見えるからな~」



不快な空気を身に纏った、ユウサがフェイトの前に現れた。


「人形でも口はついてるだろ? もう一度言うぜ、テメエは俺とは初顔合わせか?」


「君とは初めましてだよ・・・・狂い笑いのユウサ・・・・」


世界に気取られぬように、彼らは出会った。


今この世界で最も危険な二人の会合と言っても良いだろう。


品のない笑みを浮かべながら、歩み寄るユウサに対し、フェイトは表情を変えぬまま、しかしいつでも動けるように身構えていた。


「おっ、そうかい? まあ・・・どっちにしろアーウェルンクス・・・テメエがここに居るってことは、どうやらこの茶番な世界が終幕を迎えるってのは本当みたいだな」


話の核心をいきなりついてくるユウサ。フェイトの眉が僅かに動いた。


「・・・・なるほど、噂通りの地獄耳・・・・・そして下賎な男だ・・・。それに何故君がここにいる。君は死んだと聞いていたが・・・それにこの世界にも既に興味がないと聞いたんだが、逃げてきたのかい?」


「くっくっく、祭りがあるって聞いたんでな。ちょいと参加しにな。それに、仮にも数年は楽しませてもらった舞台だ。興味が失せても終幕ぐらいは見届けようと思ってな」


「・・・・・・・・・」


「安心しろよ。今回ばかりは完全な傍観者だ。引っ掻き回すのは程々にしてやるよ。テメエらは勝手に親玉の遺志でも貫いてな。それにしても・・・ひゃはははは、嫌味の一つも言えるあたりは、妙な人間臭さがあるじゃねえか。くっくっく、その感情を埋め込んだのは、誰の仕業だ? それともテメエの意思なのかい?」


不快・・・その一言に尽きた。

先ほどまで、胸が僅かに高鳴っていたというのに、今では冷たく、興が削がれた気分だった。


「ふう・・・・君とこれ以上語ると・・・非常に不愉快になる・・・・」


「ひゃはは、よせよせ、初顔合わせでもテメエらの能力は知っている。俺には効かねえよ。それに・・・ふふふ・・・こ~んなところで機能停止してもつまらねえだろ? あんまりなめてっと、壊しちまうぜ?」


「・・・・・試してみるかい?・・・・・」


フェイトが軽く腕を挙げ、そして場の空気が若干変わった。

ピリピリと痛い空気を発しながら、フェイトはいつでも相手になるといった態度で、ユウサに構える。

だが、ユウサはそんなフェイトの気迫を正面から受け、むしろ・・・


「くくく・・・ひはーッはははははは! 安くありきたりな挑発だな。世界の守護者様なら、もっと気の利いた殺し文句を言えよ。じゃねえと俺の心を震わせることはできねーぜ?」


      • 笑った。

それが尚更気に食わなかった。


「・・・君には分からないさ。僕のことも・・・大義も・・・目先の欲望や快楽ばかりに動く君みたいな低俗な者にはね」


「ふん、分からねーな。だが、長年世界を見てきた先輩としては、大義を振りかざす奴に限って戦争したがるってことぐらいは知ってるぜ? テメエもその口か?」


「・・・・・・・・・・」


「睨むな睨むな。まー、お前を壊しちゃってもいいが、俺は今すこぶる機嫌がいい。次にやりたい暇つぶしも、オモチャも既に見つけたしな。この世界はテメエにやるよ。好きにしな。派手なフィナーレを飾って、世界をひっくり返し・・・新たな時代の幕開けに相応しいファンファーレを鳴らしてくれよ。チコちゃんたちには鳴らせなかった・・・・特大の花火をな!」


肩をすくめてユウサはフェイトに背を向け、その場から遠ざかった。


「・・・・下種め・・・・」


「くっくっく、だが・・・俺には心がある。自分を飾らず偽らねえ心がな。人の使命で動くテメエらには分からねえだろうがな」


そしてチラッと視線を闘技場に向けながら、機嫌よく笑いながらこの場を後にした。


「さて、・・・とりあえず今は、その時代を担うものたちの輝きを見せてもらおうじゃねえか」


世界が気づかぬ、一触即発の危険な会合。



「さあ、見せてみろ。どっちの心が時代を創るんだ? そして、俺の楽しめる世界を用意してくれる?」



誰も知らず、誰も気づかず、破滅の足音は刻一刻と近づいてきた。





だが、世界も気づかぬほど夢中になっていた、この戦いにも終幕は見えてきた。



『さあ・・・ナギ・・・コジロー・・・そしてシモン。三者中央で睨み合う! いよいよこの攻防に終わりが近づいてきたか!? ナギもコジローも油断は一切していない!』
最終更新:2011年05月13日 20:51
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