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109-こいつはヤバイ

第百九話 こいつはヤバイ 投稿者:兄貴 投稿日:10/03/29-11:31 No.4318
ここはオスティア総督府で行われる舞踏会の会場。


数多くのオスティアの国民や祭りの客の中でも限られたものしか入ることのできないセレブの空間。


美しく光り輝く夜景と、祭りの夜の宮殿に、花火に照らされたテラス、星空の下の花咲き乱れる中庭に、美しいドレスに身に纏った淑女たちが集い、これ以上ないほどのロマンチックなシチュエーションが揃っていた。


着飾った者達が上品な雰囲気をかもし出し、この会の品格を表していた。


庶民に生まれたからには一度は憧れ、足を踏み入れてみたい聖域。


しかし、その聖域から僅かに離れた場所で今、大きな戦いが始まろうとしていた。



「懐かしい姿じゃねえか。ぼーずに合わせたか? 招待状はあんのかよ?」



タキシードに身を包んだ伝説の豪傑、ラカンと・・・



「あなたが出てくるとは意外だな。世界のことなど、どーでもいい人だと思ってたけど」



白いスーツに身を包みんだ世界の命運を握る者、フェイト。幻術を使っているのか、普段よりも手足が長い。

そんな二人が・・・



「なあに、世界はどーでもいいんだが、・・・あいつらの所為で・・・久々に馬鹿やってた時代を思い出して血が騒いでな・・・だから・・・・」



会合を果たし・・・



「かつての拭き残しを拭きに来たんだよ!!」



ネギも、シモンも、世界が知らぬ中でぶつかることになる。


突如始まる頂上決戦の行く末がどうなるのかは、今の時点では予想できない。


だが・・・・どちらが勝つにせよ・・・・シモンがこの戦いに関わることはなかった。


シモンは宿敵と友の戦いに立ち会うことも関わることもできなかったのだ。




なぜなら・・・・・・・・・・・・・
















「しっかし、最終日に武道会じゃなくて舞踏会とはな。初めての経験だぜ! 何を着ていけばいいんだ?」


シモンが口にした総督府で行われる舞踏会。

その話を聴いた瞬間、彼らの思いは既に固まっていた。


「ここはあれだな、薫ちん。レッツナンパか?」


「ば、馬鹿言うな、たっちゃん。硬派な男はナンパをしないんだ!」


「しかし、社交界では男性が女性を踊りに誘わないのは失礼に当たるそうだよ?」


「そ、それは本当か、山ちゃん!? では、ナンパは義務なのか!?」


「ハカセ、私ハドウスレバ?」


「う~ん、私で良ければ踊るよ? 壁の花はつまらないだろうし」


事情を説明された豪徳寺たちは、既にパーティーの話で盛り上がっていた。

危険、罠、命がけ、策謀、様々なものが張り巡らされているという前提の話なのだが、既に彼らは行くこと前提で話しをしていた。


「あの・・・皆さん? 少しは躊躇わないのですか?」


「「「「全ッ然!!」」」」


昨日の疲れを癒すために一日中爆睡していた彼らを起こして事情を説明したら、彼らは既に疲れを見せずにパーティーの準備を始めてしまった。

シャークティも少し呆れ顔だ。


「お前たち、もういいのか?」


「うん、まだねむ~いけどね。なんかネギ君たちがやばかったみたいじゃん? それなら寝てる場合じゃないんじゃねって、思ってね♪」


「ココネは大丈夫・・・」


「まっ、放っておくのは僕たちグレン団の主義に反するということでね」


「大体、どっちにしろ行くんだろ? だったら楽しまねえとな、リーダー。それとも危険だから俺たちには来てほしくねーのか?」


「ま~、シモンさんなら答えは決まっていると思いますし、改めて聞くまでもありませんがね~」


「ハカセノ言ウトオリ、指示ニ従イマス」


豪徳寺やハカセたちはシモンの指示を待っていた。


「大体兄貴~、そ~んな面白そうな展開に、野暮なことは言いっこなしだーーーッ!」


「オー」


美空とココネも同じ気持ち。

既に皆がシモンの答えは分かっているようだが、あえてシモンの口から言わせようとしていた。


「やれやれ、仕方ないな」


そのことに観念して、シモンも結局この答えを言うしかなかった。


「そうだな・・・祭りの後は宴だ! 盛り上げてやるか!」


「「「「「しゃーーーーーッ!!」」」」」


今夜はパーティーだ。

昨日までの疲れをもう忘れたのか、グレン団たちは野太い声で気合のこもった掛け声を上げた。


「ふ~、少しは緊張感を持って欲しいものですね。らしいといえばらしいのですが。ですが皆さん、今回は少しいつものように殴って解決というような相手ではなさそうです。くれぐれも軽はずみな行動は避けるようにしてくださいね」


「ああ。それは俺も感じたな。俺たちには苦手なゴチャゴチャしたものがある」


今更聞くのは野暮・・・・そんな言葉をこれで何度味わったのか、シャークティもこれ以上は言わなかった。


「まあ、それはいいとして、心配なのは戦えない生徒たちです。彼女たちはパーティーに行く気満々ですが、私は連れていくのは避けるべきだと思いますが・・・」


「確かにな。だけど、もしもの時は一緒に居たほうが都合がいいかもしれないんじゃないか? 世界を破滅させるような敵がうろついているんだったら、世界のどこにも安全な場所なんてない。離れている間に人質にでもされた方が厄介だ」


「たしかにね~、兄貴の言うとおり。それなら皆一緒に居たほうが返って安心かもね。それにウチのクラスの連中はそこまでヤワじゃないからね~」


「しかし足手まといや戦いに巻き込まれることも・・・」


その通りだ。

本来なら戦えない生徒たちだけでも先に安全地帯へ向かわせるべきなのだろう。

しかしどうせもう彼女たちは止まらないだろう。

止まらないのだったら、無理して止めるよりも、無理して一緒に飛び込んでやるのがグレン団流だ。



「そうだな。だが、敵がそういう気なら、こっちも黙っていないだけだ」



その言葉にシャークティはため息を、そして他の仲間たちはニヤリと笑みを浮かべて笑った。


「さて、行くぞ。盛り上がることだけは忘れないようにな!」


「「「「「「「しゃーーーッ、いくぜェ!!」」」」」」」


招待状を片手に、シモン、シャークティ、美空、ココネ、豪徳寺、達也、慶一、ポチ、エンキ、ハカセ、ブータのメンバーで、グレン団のマークからタキシード、シスター服、ドレスを身につけ、今度はパーティー会場に乗り込むことになった。


シモンもフォーマルスーツは久しぶりで、落ち着かない気がしたがグレン団の服装は目立って騒ぎになるかもしれないということで、大人しく着ることにした。


「こういう服を着るのも久しぶりだな。でも、なんか落ち着かないな」


「でも似合ってるよ~、兄貴」


「おうよ! しっかし、リーダーの言うとおりこれは窮屈だぜ。学ランじゃ駄目なのか?」


「まあ、社交界というのはそういうものだけどね」


「つーか、エンキはもはやどこかのマフィアだな」


「いや~、私も制服や白衣以外はあまり着ないので、なんか変な気分ですよ」


美空たち以外は全員着慣れぬ服に袖を通し、見慣れぬ互いの姿に笑っていた。

だが、それでも彼らの頼もしさを損なうことはなかった。


「やれやれ、のんきなものですね。これから世界と戦うかもしれないというのに」


「世界ね~。まっ、どんと来やがれって感じっすけどね」


「その過信がチコ☆タンとの戦いに繋がったことを忘れないように」


「うっ、・・・反省してるっス」


シャークティの厳しい言葉に顔を引きつらせる美空。しかしシャークティは直ぐに話を元に戻した。


「それにしても、例の総督は何を企んでいるんでしょうね。わざわざシモンさんまで呼び寄せて」


「そうだな。でもグダグダ考えるのは苦手だ。そんなもん行ってみれば分かるさ。ひょっとしたら瀬田さんたちも居るかもしれないしな」


瀬田、ハルカ、サラ、今となっては彼らも立派な自分たちの仲間だ。

夢を語り、共に命を賭け、死線を乗り越えたものたちだ。

だからこそ、このまま瀬田たちと何も言わずに別れることだけはしたくなかった。

すると・・・・


「そういえば・・・瀬田さんで思い出したんですけど・・・」


シモンとシャークティの間にハカセが口を挟んできた。


「私、前から気になっていたんですが、瀬田教授の目的をシモンさんは知ってるんですか?」


まるで確認するかのような質問だった。


「目的って、どういうことだ、ハカセ?」


「そりゃー、この魔法世界に来た目的ですよ。決まってるじゃないですか」


「う~ん、瀬田さんの目的? ・・・瀬田さんの目的ってこの世界の調査とかそういうのじゃないのか?」


そこらへんはあまり詳しくは聞いていなかった。

曖昧には説明されているが、謎を解き明かすとか、調査・・・まあ、そんなところだろう。


「たしか、モルモル王国とかいうところの依頼で・・・トップシークレットって言われて・・・、それ以上のことは聞いてなかったな」


だが、別に瀬田たちの目的がなんであろうと自分たちには些細なことだ。

彼らが信頼に足る仲間であるのなら、それでかまわなかった。

だが、シモンのその言葉にハカセは顎に手を置いて難しそうな顔をした。


「む~・・・・やはりシモンさんも、あまり深くは聞いていないのですね」


「どういうことだ?」


「う~ん、・・・・・・実は瀬田さんは私のことを覚えていなかったんですけど、私は以前瀬田さんに一度だけ会ったことがあるんです」


「えっ!? そうなのか!?」


「はい、専門分野が私とは違っても瀬田教授は日本では有名でしたし、まあ、向こうは私のことをまったく覚えていなかったんですけどね・・・」


それは実に意外な接点だった。

過去の歴史を掘り起こす考古学者の瀬田と、常に最先端と未来を追い求める科学者のハカセは、過去に接点があったのだ。


「勿論お話しはしていません。ちょっと会釈をしたぐらいです。実は私が所属している麻帆良大学のロボット研究部が、研修の一環で以前モルモル王国に行ったことがあるんです」


「おいおいモルモル王国っていやあ南国の楽園でカップルや新婚にスゲー人気な国じゃねえか?」


「そうなの? いや~、私も一度行ってみたいっすね~。・・・ってそういえば、木乃香もそんな国のことを調べていたような・・・」


「モルモル王国か・・・俺はまったく知らないけど、瀬田さんが言うには遺跡とかがたくさんあるって聞いたけど」


「私も話だけは聞いたことがありますよ。さらにモルモル王国は、世界最高峰の技術力を誇る国家であるということも」


「はい、正直私も目を疑うほどの技術力でしたよ。でも・・・問題はそこではないんですよ」


皆の知識に頷くハカセ。しかし彼女はキリのいいところで話を止めて本題に入る。


「どういうことだ?」


皆がシンとなり、真剣なハカセの言葉を聞く。すると・・・



「実は私と一緒に中等部から、・・・超さんも行ったんです」



懐かしい名前が出てきた。


「超!?」


予想していなかった人物の名に、若干シモンが身を乗り出した。


「はい、その時なんですけど超さんは私たちの共同研究にはまったく参加しないでどっか行ってたんです。でも途中で煮詰まって超さんの意見も借りたいと思って超さんを探していたら、トーダイ遺跡というところで、超さんが・・・・・瀬田さんと何かを話していたんです」


「なっ、超も瀬田さんと会ったことがあったのか!?」


「そ、それは意外でしたね・・・・縁というものは分からないものですね」


シャークティの言うとおりだ。

まさかあの超鈴音と瀬田が過去に面識があったなど、ただ事ではないにもほどがある。

世界は広いが世間は狭い。そう感じさせられた。


「まあ、さっきも言ったとおり、瀬田さんは考古学者ですから私とは専攻分野がまったく違うので大して興味はなかったんですが、今にして思えば・・・・なんか・・・・気になってきて・・・」


「それで、ハカセさん。お二人は何を話していたのですか?」


「いえ、超さんが私に気づいて、そのまま二人は別れて、私たちは王宮に帰りました。何を話してたのかを超さんに聞いても、超さんは・・秘密ヨ秘密・・・と言って教えてくれませんでしたから」


当時を思い出し、懐かしそうに目を細めるハカセ。彼女もまた超鈴音と深い繋がりがあった一人として、彼女のことを思うと少し切なくなるようだ。

それはシモンも同じだった。だからこそ、ハカセの今の心境も分かった気がした。


「それにしても、超か・・・・まさかここに来てまであいつのことを聞くとはな」


「よく分からないが、ようするに知りたいことが増えたってことか、リーダー?」


「ああ。そうみたいだな」


たしかに、瀬田と超が過去に会い、そして何を二人は話していたのか興味深い。

知るべきことが増えたなと思い、気持ちと足は自然と目的地へと速く進む。

そして・・・


「兄貴・・・見えてキタ」


「おっ、あそこだな」


ココネに言われて目的地の宮殿へと到着した。

既に辺りには正装をした紳士やドレスを纏った貴婦人たちが出入りしている。


「おうおう、なんかスゲー美人がいっぱいいるぞ」


「おまけに見るからに金持ちそうな匂いがプンプンするぜ」


屋外のテラスに並ぶカップルや、中庭に女性をエスコートする紳士。

豪華な料理やオーケストラが奏でる美しい音楽が響き渡る会場。

これだけで既に感動的な気分だった


「うっは~、すげーっすね~。正に映画だね~、こりゃあ」


「うお・・・これが舞踏会か・・・正にセレブの空間だぜ」


生まれて初めて体感するゴージャスで場違いな雰囲気に思わず飲み込まれてしまいそうになるほど、この光景は圧巻だった。


「ふむ、たしかに美しいレディがたくさんいるね」


「むう・・・山ちゃん・・・本当に男から誘っていいのか?」


「ゴハン・・・・食ベル・・・」


「こら、ココネ。上品に食べるのですよ。他の方々に失礼のないように」


「・・・魔法世界ノ著名人、貴族ノ御曹司ヤ令嬢・・・・軍ノ幹部モイマス」


「な~るほどね~、本当にセレブという奴なんだね。エンキ、怪しそうな人が居たらちゃんと報告してね」


「了解シマシタ。ハカセ」


グレン団のメンバーには初めての経験である。一人一人が色々なものに興味を惹かれ、皆自由にウロウロとし始めた。



「すごいな~、なんか俺には場違いって感じがするよ」


「おや、意外ですね。螺旋王を倒した後の世界で、あなたは王のような役割をしていたのではなかったんですか?」


「俺は大したことはしていないさ。こういう文化はまだ無かったからな」


すると、そんな田舎のおのぼりのようなシモンたちにクスクスと笑いながら、可愛らしいドレスを着た少女たちが歩み寄ってきた。


「シモンさん! ってゆうか、新生大グレン団の皆さん!」


振り向いたそこには、アスナや木乃香たち。そしてエミリィやコレットを始めとするアリアドネーの子達まで居た。


「よお、お前ら」


「シモンさんたちも来てくれたんやなー! うん、シモンさんタキシード似合うとる!」


「シモンさんたちも来てくれたのね! これなら、あの変態メガネ総督が何を企んでいても怖くないわね!」


シモンたちが現れたことに、ホッと安堵する白き翼の面々。

どうやらシャークティの予想通り、彼女たちは亜子やアキラたちのように戦えない生徒たちも含めて、全員で来ているようだ。


「おう! リーダや俺たちが居れば、誰が相手でも恐れるに足らずだ!」


「そうですね、安心してパーティーを楽しみましょう」


「おっ、一撃兄ちゃんや薫の兄ちゃんたちまでタキシード?」


「おおーーーッ、ユウナ☆キッドじゃねえか!! ドレスも中々じゃねえか! それよりどうよ、グレン団に入る意思は固まったか!」


「まったく、騒がしいですわね。ですが我々アリアドネーの戦乙女たちもいるのですから、あなた方も存分に最後の夜を味わってください」


華やかなパーティーが少し賑やかになる。

だが、それを注意したり怪訝な顔で見てくる者たちは居ない。

むしろ温かいものを見守るかの様な表情でクスクス微笑んでいた。


「それにしても・・・そうか・・・今日で最後になるんだな・・・」


色々と慌てていて少し忘れていたが、今日で魔法世界から彼らは元の世界へ帰る。

そう考えると少し寂しくなり、シモンがエミリィやコレットたちに告げる。


「う~ん、兄貴・・・なんか寂しくなるね~。美空やココネともここでお別れだから・・・・」


「本当だな。そういえば、俺がこの世界で最初に会ったのはコレットだったな」


「おっ、そうそう、ね~、コレット。その辺詳しく教えてくんない?」


「兄貴・・・何がアッタ?」


「えっ、えええ~~~!? う~んどうしよっかな~・・・」


寂しい気持ちはコレットたちも、そして彼女たちと友情で結ばれた美空たちも同じだった。


「そういえば、俺はエミリィには嫌われてたっけ?」


「い、今は全然違いますわ! さ、最初だけですわ!」


「ベアトリクスは俺と一緒にエミリィを助けに森に行ったよな」


「はい、あの時は本当に助かりました」


「ああ。色々あったけど、またオスティアで再会できて良かったよ」


長かったようであっという間。

彼女たちとの出会いから、記憶の無い状態でこの世界の旅をスタートした。

それは色々と傷つく場面やしんどい展開もあったが、自分の中では全てがかけがえの無いものとして鮮明に覚えている。


「トサカは居ないかな? あいつにもお礼を言いたかったけど・・・・。そういえば、あいつと出会ったのは、アリアドネーの次に寄った街だったな~」


「・・・む~・・・シモンさん」


そんな風に懐かしむシモンを見て、エミリィは少しつまらなそうに口を膨らませている。

そしてついに我慢できなくなったのか、腕を組んで高圧的な態度でシモンに告げる。


「まあ、あなたは糸のついていない凧のような方です。どうせ、またどこへでも人の気も知らずに好き勝手に飛んで行くのでしょう? ならばさっさと行ってしまえばいいのですわ」


「ちょっ、委員長・・・・」


「お嬢様・・・シモンさんが居なくなったとき、あれほど泣き喚いたり、再会して抱きついたり、木乃香さんたちをライバルだとか・・・・・」


「こらーーーーッ!? それを言ってはいけないと何度も・・・・・」


高圧的な態度は一瞬で崩れ、すぐに顔を真っ赤にしてアタフタしだした。

しかしここで認めると負けを認めたように感じ、エミリィはすぐに「フンッ」と顔を逸らし、精一杯の強がりを言う。


「ま、まあ・・・・その・・・・もしあなたがこちらの世界の妹に会いたくなったのなら・・・悲しませたくないのなら・・・・ちゃんとまた来ることですね。コレットたちはその方が・・・・」


「な~に、私たちをダシに使ってるの?」


「ち、ちが!? そ、それに美空さんも! あなたとの決着はまだですわ! そしてユエさんも、いつかちゃんと戻ってくることですね!! 全員まとめて私が叩き潰しますわ!!」


もはや自分でも何を言っているか分からないぐらい焦ってしまったエミリィだが、気持ちは伝わった。そんな彼女にシモンも美空も、そして夕映も頷いた。


「うん、望むところ!」


「約束するです」


「ああ、安心しろ。妹を二度と泣かせるな・・・これはお前たちの団長にも言われたことだ。絶対守るさ。それに、・・・絶対にまたお前たちに会いに行くさ」


その言葉を聞いた瞬間、少しエミリィの目じりに涙が溜まった。


「ほ、・・・・本当でしょうね? それとそれまで・・・木乃香さんばかりでなく・・・ではなく・・・その・・・と、とにかく! や、・・・約束ですよ?」


「約束は守るさ。俺を誰だと思っている」


「うっ!?」


この瞬間、エミリィの顔が真っ赤に沸騰したのは言うまでも無い。

後ろではコレットやベアトリクスも嬉しそうにシモンの言葉に頷き、その言葉をかみ締めていた。


「うひょ~っ、ネギ君がニコポならシモンさんは、誰だと思っているポだね。さすがシモンさん、新たなジャンルを開拓したね!」


「む~~、パル~、笑い事や無いで~、・・・シモンさんもシモンさんで仕方ないんやから」


「な~に、ヤキモチ~?」


「ううん。ただ、あんまカッコええところ他の人に見せるんが嫌なだけや。だってライバルがこれ以上増えたらしんどいからな~」


「ははは、かっこいいでござるか。しかしそれなら、我らの王子も負けてないでござるよ?」


膨れる木乃香たちの隣で楓が指差した方向には、ネギが居た。


ただそこを歩くだけで、多くのものが視線を彼に向け、熱い吐息が会場中に零れる。


「見て・・・ナギ様よ」


「コジロー様も居るわ。なんて凛々しいのかしら・・・・」


「拳闘大会優勝ペアのお出ましか」


多くの注目が注がれ、若干居心地を悪そうにしているが、ニッコリとネギはちゃんと笑顔で応える。


「「「「キャーーー!!」」」」


「さ、・・・流石ニコポマスターだな・・・」


「なあ、ちうっち。ニコポって何だ?」


「簡単に言やあ笑っただけで惚れられる能力だよ」


自分を熱いまなざしで見つめる淑女たちに対して、ちゃんと応えるあたり大した紳士ぶりだと感心し、そんなネギたちにシモンが声を掛けた。


「よう、なんか有名になっちゃったな」


「シモンさん!」


「おっ、兄ちゃんも来たんか! これでもう安心やな」


シモンの姿を見つけて嬉しそうに駆け寄る二人。


「シモンさん、先ほどはみっともないところを見せて申し訳ありませんでした」


「気にすることないさ。お前だって俺のみっともないところを知っているだろ?」


「ははは、それじゃあお互い様というところですね」


「なんや~、二人して俺の居ない間に何があったんや?」


「大したことじゃないさ」


パーティー会場で談笑する三人。


しかしそれがまずかった。


ネギと小太郎は既に注目が集まっている。


そんな中でシモンと会えば・・・


「お、おいあれ・・・・・」


「ええ。ねえ・・・・あれって・・・・そうよね」


そう、既に手遅れ。

一人・・・また一人と徐々に気づきだし、そしてとうとう一人が大声で叫んだ。



「大グレン団のシモン様!!」



      • こうなるわけだった。



「「「・・・・えっ?」」」



まあ、この三人が一箇所に集まれば、それはもう注目の的だった。


「すごいわ。なんて豪華なゲストなの!」


「く~、参加してよかった!」


「伝説ともなった拳闘大会の決勝メンバーが揃うなんて、三人にサインもらえないか?」


「一緒に踊ってもらえないかしら? 誘われたいわ・・・・」


いつの間にか、会場中の視線がこの三人にぶつけられているのだった。


「まったく、シモンさんは・・・おまけにナギ様まで・・・・先ほどまでは私たちと居たというのに・・・・」


「にゃはは、仕方ないよ委員長。ナギも兄貴も皆の二人なんだから」


「それに、この方が返っていいのかもしれませんよ?」


「まあ、・・・・そうですわね。しんみりと別れるのは嫌ですから・・・」


再び会う約束をし、後はしんみりしないで存分に楽しもう。


それが今この時のやるべきことだった。


総督との約束の時間までは、悔いの無いようにこの世界での時間を楽しもう。それだけだった。


だが、そうやって楽しむつもりだったのだが、シモンたちにはその暇がまったく与えられなかった。



「「「「「「ナギ様ーーッ!!」」」」」」



「「「「「コジロー様ーーッ!!」」」」」」



「「「「「「うおおおお、シモンのアニキーーーッ!」」」」」



気づけば舞踏会には黄色い声と野太い声が入り混じっていた。


「は~、舞踏会ってのは面倒やな~」


「うん、これじゃあ身動き取れないよ~」


「やっぱり俺たちって、結構有名になったんだな」


うっとりとした視線をネギと小太郎に向ける淑女たちに、シモンに憧れのまなざしを向ける軍人たち。

気づけばこの三人はパーティーの主役のような扱いで、今では常に20人以上の人が回りに集まっていた。


「さすがリーダーだぜ! 俺たちも負けていられねえ!」


「「「おう!!」」」


三人に負けぬようにと豪徳寺たちも張り切って、ダンスパートナーを探しに会場中を走り回っている。

その気楽な彼らの態度に、まじめなシャークティはこれで何回目かも忘れてしまったため息を再び吐く。


「・・・絶対、目的忘れていますよね」


「まあ、いいんじゃないっすか? 楽しいし。しっかしまあ、不思議なもんっすね~、私たちしか知らなかったはずの兄貴が、いつの間にか魔法世界で超有名人になっちまったんすから」


頭が痛くなって抑えるシャークティに、美空はあくまで楽観的に笑った。


「しかし、心強いです。皆さんが来ていただけで」


「うむ、グレン団総出など頼もしい限りでござるよ」


「まあそうだな、先生やあんたたちが居てくれりゃあ、よっぽどの敵でも大丈夫な気がしてきた」


そんな二人に苦笑しながら、刹那や楓、そして白き翼の面々はこの場に居てくれる新生大グレン団の面々にこれ以上ない頼もしさを感じ、不安や恐れが完全に無くなっていた。


「ふう~、舞踏会って大変なんだな」


「せやな~、セレブって苦手やな」


「うん・・・・ラカンさんって、これが嫌だったのかな~?」
最終更新:2011年05月13日 20:57
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