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109-2

初めて体験する舞踏会に窮屈な表情を見せる三人。どうやらあまり馴染めないような感じだ。


「ラカン? そういえばラカンは?」


「一緒に来たんですけど、トイレに行くって。・・・大きいほうだからすごく遅くなるって・・・・」


「えっ? どういうことだ・・・あいつ・・・・」


ネギの口から漏れたラカンの名。

先ほどはラカンもここに来ると言っていたのだが、確かにここにラカンほどの大物が来れば、騒ぎはこれの比ではないだろう。


(・・・ラカン・・・・)


しかし、まったく来る気配のないラカンに、シモンは先ほど感じた嫌な胸騒ぎを思い出した。

すると・・・



「なーに、つまんねー顔してんだよッ!!」



「うわっ!?」



後ろからシモンは背中にとび蹴りを食らった。


「だ、誰だ・・・・って・・・・あれ?」


背中を押さえながら、振り返るとそこには・・・・


「へへーん、よお!」


「サラ!?」


「へ~、タキシードも似合ってるじゃないか」


「ハルカさんも!」 


以前とまったく変わらぬ無事な姿のサラとハルカがドレスに身を包んでそこに居た。

無事だった二人の姿を見て、シモンは心の底からうれしそうに二人に駆け寄った。


「良かった、無事だったんだな」


「えっ? 無事も何も私たちはちょっと話を聞かれただけだぞ? なんだ~? 私に一日会えなかっただけで寂しかったのかよ?」


「ははは、・・・・って、あれ? 瀬田さんは?」


サラがニヤニヤしながら言う言葉にシモンは笑って流すが、あることに気づいた。それは瀬田が居ないことだ。辺りを見渡しても居るようには見えない。


「パパはもう少しかかるってさ」


「えっ?」


するとサラの口からは意外な言葉が出てきた。


「何で瀬田さんは?」


「あいつにはまだ聞くことがあるから、その間はパーティーにでも出て時間をつぶせと総督から言われてな。ドレスも用意されたしお前たちも招待すると言ってたから来たのさ」


「そうか・・・良かった・・・でも・・・・」


ラカンの言葉を思い出し、少し不安になった。



―――何か冒険王の奴、ヤバイ情報でも知っちまったんじゃねえのか?



サラは分からず首を傾げている。

しかしシモンの心中を理解したハルカが、皆に聞こえないように小声でシモンの耳元でつぶやいた。


(シモン・・・どうやら総督は中々メンドくさそうだぞ?)


(えっ?)


(そして、ウチの旦那はこの世界の真実に足を踏み入れたようだ。何も聞いていないサラと、私は知らないの一点張りで解放されたが、あいつはそうもいかなかった。そしてあいつもとことん追及する気かもしれん。このパーティーが終わったら、あいつは一対一で総督と話をするようだ)


(瀬田さんが!?)


(表情を変えるな。他の奴らに気づかれる)


(・・・ッ)


(まあ私たちは色々と既に打ち合わせをしているから逃げ出す準備もあいつを助け出す作戦も出来ている。だが、あんたたちも総督とやらに用があるなら気をつけておけよ)


あくまで何事も無かったかのようにハルカはそのままシモンから離れて、パーティー会場をうろつき始めた。


「あっ、おいハルカ~、待てよ~」


その背中を追いかけるサラ。二人の背中を見つめて、やはり何かが起こるのは避けられないだろうということをシモンは感じ取った。


「シモンさん、ハルカさんどうしたんですか?」


「いや・・・気をつけろってさ・・・これから何かが起こってもな」


「なあ、兄ちゃんに、ナギ~、何話しとるんや? そんなことより、さっきから黙ってついてくるこいつらどうにかならんのか?」


小太郎に言われて後ろを振り返ると、そこには大名行列のように淑女が列を作って並んでいた。


「えっ?」


「な、なにこれ?」


淑女たちはチラチラとネギたちを見て、顔を赤らめて直ぐに背ける。

何かを言いたそうに、しかし何も言わずにネギたちの傍から離れなかった。


「けけけ、旦那にアニキよ~、踊りってのは男のほうから誘うんだぜ?」


「へっ、こうなると最初に選ぶ相手は超重要だな~、因みに選ばないってのは社交界では無しなんだぜ?」


あたふたする三人に冷やかしを入れるカモと千雨。

どうやら彼女たちはネギや小太郎と一緒に踊りたいために、誘われるように待っているのだ。

その言葉に三人は困ったような表情になり、どうするべきかと会場をうろついていた。


(うう~・・・ネギせんせー・・・)


(ネギ先生・・・しかし・・・)


(・・・ナギさん・・・ううん、ネギ君・・・)


(小太郎君・・・・)


(ウチもシモンさんと・・・・)


(ここはやはりお嬢様に・・・しかしシモンさん・・・)


(ダンスか~、へへ~ん、シモンと踊ってやろうかな~、あいつみたいに冴えない奴だと、壁の花になるのが関の山だからよ~)


(くっ、・・・私は任務中ですからここは・・・)


声には出さないが、のどか、亜子、茶々丸、夏美、木乃香、刹那、サラ、そしてちゃっかりエミリィも視線を自分の踊りたい相手を射抜いている。

その視線にゾクリと背筋を震わせる三人。


「は~、面倒やな~、誰か選ばんとあかんのか~」


「うう・・・で、でも踊るのはルールですし・・・シモンさん・・・その・・・ヨーコさんには内緒にしてもらえますか? その・・・誰彼構わずだなんて思われたくないですし・・・」


「えっ・・・お前はいまさらそんなこと言うのか?」


ハルナや和美を中心に面白そうにニヤニヤと見守っている者たち。

さて、三人はその中から誰を選ぶのか?

誰もが答えを見守っていた中、最初に動いたのは小太郎だった。


「あ~~、もうええわ! 夏美姉ちゃん一緒に踊ってくれや!」


「へっ!?」


「「「「おおおおーーーー!!」」」」


「ちょっ・・・なな、何で私!?」


「まーまー、えーからえーから」


こういうことにあまり関心が無かったのが幸いしたのか、ただ親しい人との方が良いという簡単な理由で、小太郎は逸早くダンスパートナーを見つけて夏美を連れ出した。


「やるじゃないか、小太郎」


「は、はい。僕も見習わなきゃ・・・・」


そのあまりにも勇ましい姿に感心する一同。

そして、小太郎に見習って数ある視線の中からネギも一人を見つけ出す。


「アスナさん」


「はあ?」


「「「「おおおおーーーー!!」」」」


ウロウロしていたら、偶然にも一番近くに居たアスナをネギは誘った。


「い、嫌よ。踊りなんかできないし。大体アンタはヨーコさんの方がいいんでしょ?」


「まーまー」


「まーまー、じゃないわよ!?」


一足早くに相手を見つけて、人ごみから逃れるネギと小太郎。二人に誘って欲しかった淑女やクラスメートたちは少し落ち込んでいる。


「すごいな、二人とも。・・・・じゃあ俺も・・・・」


10歳に先を越されたシモンも、大人としての面子にかけて自分も相手を見つけなければと辺りを見渡す。

すると・・・・


「・・・・あっ・・・・」


強い視線を感じ、振り返るとそこには・・・


(ウチウチウチウチウチウチウチウチウチウチウチ)


(お嬢様をお嬢様をお嬢様をお嬢様をお嬢様をお嬢様をお嬢様を・・・・なんでしたら私でも・・・・)


(へへ~ん、トーゼン私だよな~)


(わ、私でもよろしいですわ、お困りでしたら少し不本意ですが、踊ってさしあげますわよ) 


(兄貴さん・・・・お嬢様を・・・・)


目を燃やして熱い眼差しで見つめる少女たちが居た。


(ま、まずい・・・・誰を選んでも・・・・)


誰を選んでも混乱が巻き起こりそうな勢いだった。拳闘大会の日に再会した時の修羅場だけは避けたい。


しかし誰かを選ばなければいけない。


一番平和的に解決できる方法・・・


シモンは考える。


(シャ・・・・シャークティ・・・)


(ふふふ、逃げる口実に私を誘うんでしたら怒りますよ~♪)


(うっ・・・・)


救いを求めてシャークティに視線を送ったが、天使のような微笑でニッコリと拒絶されてしまった。


(くっ・・・美空・・・・)


(へへ~ん、アーニキッ、年貢の納め時~♪)


ニヤニヤ笑って美空も救出の手を出す気はなさそうである。

完全に孤立したシモン、そして熱い眼差しを向ける少女たち。

ハッキリさせねばならない。しかしハッキリしたら、ここは大惨事になる可能性が高い。


(どうすればいいんだよ。大体、選ぶとかそういうのおかしいじゃないか)


ならばどうすればいい? ここが運命の分岐点だと思いシモンが、答えを出そうとすると・・・


「ん?」


自分の服の裾を誰かに下から引っ張られた。

シモンが誰かと思い、視線を下に向けると、自分の真下でココネがシモンの服を引っ張りながら見上げていた。


「えっ? ココネ?」


いつの間にか自分の傍に現れたココネ。

そしてココネは、そのままシモンの服を引っ張りながら、予想だにしていなかった発言をした。



「兄貴、ココネと踊ッテ」



「・・・・へっ?」



「「「「があ゛!?」」」」



思わずシモンは聞き返し、そして言葉にならぬ声が数人の少女から聞こえてきた。



「え・・・え~っと・・・」



シモンがココネの言葉にどうするべきかとあたふたしていると、ココネは表情を変えぬまま・・・・



「ココネ、踊りタイ」



「・・・えっ・・・」



「ココネ、兄貴と踊りタイ」



「「「「――――ッ!?」」」」



思わぬ援軍が舞い降りたのだった。

いや、ココネは純粋にシモンと踊りたかっただけなのだが、その無垢なココネに、シモンは天使の救いを感じた。

シモンはフッと笑い、ココネの頭をなでた。


「いいか、ココネ? こういうときには男のほうから誘うらしいんだよ。だから・・・・」


そして中腰になり、撫でていた手をそのままココネに差し出した。



「俺と踊ろう、ココネ」



「ン!」



ココネは嬉しそうに笑い、シモンの手を取って、二人は会場の中央へ移動するのだった。






「う~~・・・・・そんなん反則や~・・・・」



「ココネさんでは・・・・文句の言いようもないではないですか・・・・」



「このヤロウ・・・家族はルール違反だぞ・・・」



「ひ、卑怯ですわ・・・・」



「は~、シモンさんあなたという人は・・・ココネに文句は言えませんが・・・」



「うは~、大穴が来たよ~。ココネもやるね~」



打ちのめされた少女たち。

家族という権限と、ココネに文句を言えるはずも無いというジレンマに負け、うな垂れてしまう。

その光景をシャークティは呆れ、そして美空は爆笑していた。


シモン争奪戦の結末は・・・・・



「~♪」



家族による特権勝ちだった・・・



「兄貴・・・踊るノ下手・・・・」



「うっ、・・・仕方ないじゃないか、俺もあまりやったことないんだよ」



平和なひと時だった。


最初は色々と考えていたが、結局は今のところはただのパーティーだ。


何かおかしなところもないし、今のところ何も問題も無い。


このまま何事も起こらなければ、それ以上のことは無い。



「ほら、ココネ。次は美空やシャークティも一緒に、四人で踊ってみないか?」



「ン! ヤル!」



だが・・・その平和なひと時が・・・・




―――!?




「ッ!?」




―――!!!




最悪の形で途切れることになる。



「ウッ!? ・・・・・ぐっ!?」



それは突然のことだった。突然の悪寒がシモンを襲った。



「あ、兄貴!?」



「兄貴、ダイジョウブ!?」



「リーダー!?」



突如シモンが胸を抑えて蹲った。



「はあ・・・はあ・・・・はあ・・・・はあ・・・・」



大量の汗を額から流し、震える唇に開いた瞳孔。


ただ事ではないことなど一目瞭然である。



「だ、大丈夫ですかシモンさん? まさか昨日の怪我が?」



心配そうに覗いてくるシャークティたち。



(な・・・・・なんだ・・・今のは・・・・) 



シモンは首を横に振る。大丈夫だとアピールする。


だが、ワナワナと震えるシモンを心配するなというほうが無理だった。



「はあ・・・はあ・・・・はあ・・・・お前たちは・・・何もないのか?」



「・・・えっ?」



「どういうこと、兄貴?」



「俺・・・だけなのか?」



「えっ?」



「何も感じなかったのか?」



シモンの言っていることが何かは分からない。



「何のことだよ、リーダー?」



「別に何にも無かったけど・・・・」



しかしシモンは自分以外の者に何の変化もないこの状況と、自分が感じたものに異変を感じた。



(何だ? 皆気づいていないのか? 俺だけなのか? あの・・・強烈な・・・・突然感じた・・・身も凍るような禍々しい視線を・・・)



そう、シモンは感じたのだ。



(あの異常なまでの・・・・・)



誰かから見られている視線を。



(あの異常なまでの邪悪さを・・・俺しか気づかなかったのか?)



いや、それは視線などという生易しいものではない。



(感づいただけで、・・・全身に悪寒が走った・・・)



パーティー会場には人があふれている。自分がグレン団のシモンと分かり、色々な人が自分を噂して見ている。


だが、たった今感じた視線はそれらとは比較にならないものだった。



「・・・大丈夫だ・・・・」



「ほんと? すごい顔色悪いよ? 木乃香でも呼んでこよっか?」



「いや、大丈夫。少し外で涼んでくるから・・・・直ぐ戻るから・・」



「兄貴・・・・」



明らかに顔色の悪いシモンは、少し足取り重くしながらテラスへ向かう。


その背中に、そしてシモンの「大丈夫」という言葉に、何か言いようの知れない不安を感じた美空たち。


この時、自分たちが無理やりシモンの傍に居れば、あんなことにはならなかったのではないかと後々悔やむことになるのだった。



「・・・・あそこから・・・か・・・」



そしてテラスへ出たシモンは、美しい夜景が広がる光景に浸る間もなく、辺りを見渡して、一つの建造物の屋根の上をジッとも見つめた。



「あそこから・・・・誰かが俺だけを見ていた・・・俺にワザと気づかせて・・・まるで誘うかのように」



シモンは流れる汗をぬぐい、そして無理やり口元に笑みを浮かべた。



「総督もヤバそうだが・・・・こいつもまずそうだな・・・・誰かは知らないけどな」



何かが、誰かが、何のために自分を誘っているかは知らない。


しかしシモンには分かった。


この視線の正体は、自分だけを呼んでいること。


そしてそれを無視すれば、躊躇なく大勢の人を殺傷することができる者である事を。



「・・・・ネギ、そっちはまかせたぞ・・・・こっちは、ちょっとやばいことになりそうだからな・・・・」



だからシモンは向かった。


その、自分を求める何かの場所へ


かつてないほど心音を高ぶらせながら向かうのだった。



そしてこっそりパーティー会場から一人抜け出したシモンに誰もが気づくことなく、パーティーは問題なく進んでいく。

そんな会場を見下ろしながら、クルトは一人つぶやいていた。



「おや・・・・シモン君が居ませんね。しかし他の方々は居るようで・・・・ふむ、何かを企んでいるのでしょうか? だがどちらにしろ、最低限の役者は揃っているので大丈夫でしょう」



居ないシモンを多少気にしつつも、ネギがそこに居るのを確認し、とりあえずこの場は満足することにした。



「さて・・・・そろそろ始めますか」



この場から消えたシモンを抜きにして、世界の真実が語られることになる。


そして語られた、その時・・・・



「あれ?」



「どうしたの、ネギ?」



「えっ・・・いや・・・アスナさん、シモンさん知りません?」



「シモンさん? ココネちゃんと踊ってなかった?」



「いえ、なんか気づいたら姿が見当たらなくて・・・・」



「また木乃香に刹那さん、サラちゃんにエミリィちゃんに巻き込まれてるんじゃない?」



「・・・だったらいいんですけど・・・・」



ラカンも居ない。シモンも居ない。


その状況でネギは、真実と現実を目の当たりにして受け止めることが出来るのか。


その答えは、ネギのこれまでの積み重ね、そして今この場に居る仲間たちによって委ねられているのだった。










そしてパーティー会場から少し離れた場所。






建物の上からオスティアの夜を見下ろしている人影が見える。




その者は、酒を片手に星空の下で戯れる者達を見下ろしながら、そして繰り広げるダンスを眺めながら、一人酒を食らっていた。




「あ~あ~、向こうも始めたかい。アーウェルンクスに千の刃の決闘・・・どいつもこいつも喧嘩っ早いね~。まあ・・・・俺も似たようなもんだがな。だが、ふふふ、とりあえず役者は揃っているわけだ。傍観主義者の俺はダンスには参加せずパーティーの壁の花にでもなろうと思っていたんだが・・・・・・・」




ケタケタと屋上で一人ぼやくのは、地獄の住人ユウサ。


すると次の瞬間、ユウサは一本のナイフを取り出した。



「ワリーな、アーウェルンクスよ~。観戦気取ると約束したんだが・・・・」



鋭く光る刃を舐め、口元に笑みを浮かべたユウサは、そのナイフを無造作に後ろへ向けて投げた。



「そうも・・・言っていられなくなっちまった。くっくっく、まあ、確信犯なんだがな~」



ユウサが後ろに向かって投げた刃物。


その刃物を真後ろに立っていた男が弾いた。



「ひははは・・・・来たかい・・・・」



ユウサは振り返らずに口元をつり上がらせた。するとその言葉に現れた男は返した。



「お前か。パーティー会場に居る俺一人だけに向けて殺気を飛ばしたのは」



輝く螺旋槍を片手に現れたのは・・・・



「ふっふっふ、気づいてくれたようで安心したぜ、シモン君。ど~しても二人で会いたくてな~」



現れたのはシモンだった。


会場で突き刺さるような殺気を感じ取ったシモンは、単身でこの場まで現れたのだ。


そしてシモンはゆっくりと、こちらを見向きもせずに座るユウサに近づいていく。



「お前は何者だ? 今まで出会った誰よりも・・・・嫌な空気を纏っている」



一歩一歩近づきながらも警戒心だけは絶対に解かない。それほどまでに男の異質をシモンは感じ取っていた。



「ふっふっふ、君のファンなのだよ」



「嘘つけ・・・・」



するとユウサはようやく立ち上がり、ゆっくりと振り返る。


歪んだ口元とサングラス。より一層シモンは不気味に感じた。



「ひははははははははははははは」



ユウサは答えない。


ただ機嫌よく笑うだけ。


しかしその笑みが嫌だった。


歪んだ思いを孕んだその笑みは、これまでシモンが一度も出会ったことのない種類だった。



「ぐだぐだと。俺が何者か? 力ずくで吐かせてみたらどうだい、英雄さんよ。もっとも、出来たらの話だがな~。お前さんごときにな」



シモンを「ごとき」と言い捨てるその男。


しかしシモンには決してそれが大口や虚勢には見えない。


言い知れぬ悪寒と全身の細胞が全て告げていた。「こいつはヤバイ」と。



「ごときか・・・・言ってくれるじゃないか」



そして今ここに、誰にも知られぬ中で歴史的対面が果たされた。



「言うさ。頼みのグレンラガンもねえ君に、何ができる? ただのシモン君?」



真っ直ぐに生き続けてきた男と歪みながら生き続けてきた鬼。



「・・・壁に・・・・穴を開けるぐらいならできるさ」



生まれも育ちも宇宙すら違う何の接点もない二人だが、この出会いは必然だった。



「ひはーーッはははは、そりゃそうだ! そうだな、交渉する前にまずは一当てするか!! 本当に君が屈服しない男なのかも確かめたいしな!」



「交渉? ・・・・何のことだ? いや、お前は一体何者だ?」



「ふはははは、細かいことは気にしねんだろ~、グレン団! さあ、かかってきな! 言葉で語るより血しぶきあげて語り合え! テメエの魂を吟味してやる!」



そう、世界を賭けた戦いが・・・・



「さあパーティーの幕開けだ! 歴史と世界を左右させる瞬間に立ち会うこの感覚! 何回味わってもたまらねえ! これぞ人生の真骨頂!」



「な、・・・・なんなんだ、お前は」



世界が知らぬ間に始まろうとしていた。



「ひはははは、感じるぜ、感じるぞ! 時代のうねりを感じるぜ!! 止められるもんなら止めてみなァ! 逃げ出したい奴は逃げ出しなァ! 偽りの幻想も全部消えちまいなァ! 本物しか生き残れねえ時代に覇気のねえ奴は必要ねえ!」



銀河の広さを知る男と・・・・



「何言ってるのか、全然理解できないけど・・・・止めて欲しいなら止めてやるさ!! お前は・・・ここで止めなければいけないと、俺の中の螺旋の遺伝子が叫んでやがる!」



地獄の深さを知る男・・・・



「来な、銀河の英雄! 格の違いを教えてやるよ!!」



二人の出会いが世界に、そして歴史に刻まれる。
最終更新:2011年05月13日 20:57
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