第百十話 俺を知った気になってんじゃねえ! 投稿者:兄貴 投稿日:10/04/11-09:17 No.4324
シモンが突然居なくなった。
最初は少し気にする程度だったが、まったく現れる様子のないシモンに、ネギたちは僅かな不安がこみ上げてきた。
先ほどまでは、シモンの居ない間にハルナに唆されて、ネギは少女たちと仮契約大会などを繰り広げていた。
当然、木乃香のようにシモン狙いは、シモンを探していたのだが、パーティー会場にはシモンは影も形も無く、ただ不安だけが残っていた。
「美空さん・・・・・シモンさんは本当にどこへ行ったんですか!?」
「う~ん、ちょっと体調が悪そうで休んでくるって言ってたけど・・・・な~んか心配になってきたっすね~」
「ちょっと~、もう直ぐあの変態総督と会うんでしょ? せっかくシモンさんが一緒だと思ったのに~」
姿を消したシモンに、グレン団やアスナたちも表情に不安が見える。
(これだけ待っても来ない・・・・ラカンさん・・・・シモンさん・・・・僕は・・・・)
これから何が起こるか分からない。
しかしラカンとシモン、存在だけで頼もしい二人が、結局肝心なときに姿を見せないことに、先ほどまでの楽観的な雰囲気から徐々に緊張感が漂っていた。
何故なら彼女たちの一見楽観した様子も、ネギを含めたシモンやラカンが居てこそのものであり、だからこそ安心してパーティーを楽しんでいたのだ。
だが、そんな状態でいよいよ・・・・
「ナギ様」
時間がやってきてしまった。
「クルト・ゲーテル総督が特別室でお待ちです。同行者は3名まで許可されています」
クルトの付き人の少年がネギたちの前に現れたのだった。
ついにこの時が来てしまったのかという雰囲気で息をのみこむ少女たち。
シモンが居ないことに不安に思う少女たち。
「そ・・・そんな・・・まだラカンさんとシモンさんが来てないのに・・・」
「・・・ネギ先生・・・・」
今の状態でどうするべきなのか?
(シモンさん・・・・ラカンさん・・・・僕は・・・・)
これだけ人数が居ても、たった二人が居ないだけで少女たちは浮かない顔をしている。
それだけ彼女たちにとって、二人のウエイトは大きかったということだ。
それはネギにとっても同じことだった。
しかし・・・
(・・・・・・・・・僕に出来ることをやります・・・・)
そんなネギは、少女たちが戸惑ったほんの数秒で・・・
「・・・・分かりました」
少し返答に間をおいて、ネギは小さく頷いたのだった。
「ちょっ、ネギ!? ラカンさんやシモンさんを待たないでいいの?」
「ネギ先生・・・よろしいのですか?」
帰らぬ二人を置いて、クルトとの面会を果たそうとするネギをアスナが止めようとするが、ネギは首を横に振った。
何かを確信したかのように・・・
「これだけ待っても現れないということは・・・シモンさんとラカンさん・・・きっと何かあったんでしょうね・・・・」
「「「「ッ!?」」」」
少し考えながら口にしたネギの言葉に、アスナたちは一斉に身を乗り出した。
「ちょっ、どういうことよ!?」
「兄貴たちに何かあったってどういうこと!?」
だが、確かにネギの言うとおり、何かがなければこの状況に説明はつかない。
むしろ驚いたのは、そんな二人を放っておこうとするネギの態度だった。
だが、ネギは首を横に振る。
「何かがあった・・・しかしそれでも二人は何も言わずに行かれました・・・それは・・・・心配するな・・・・任せろ・・・そういう意味なんだと思います。そして二人はここを僕に任せた・・・そういうことなんだと思います」
それは決して薄情な思いではない。
二人よりも総督の話が気になるということでもない。
何も言わずに消えた二人は、無言でこの場を自分に託したのだとネギは判断した。
総督の話を聞かずに二人を捜しに行くのは簡単だ。しかし、消えた二人はそれを絶対に望まないだろう。
「だからここに居る僕は・・・ここで僕のやるべきことをやりたいと思います。それに・・・あの二人を心配だなんて言ったら、それこそ殴られちゃいますよ。俺を誰だと思っているんだ? って言われて」
そう言ってネギは笑った。
自分だって心配だろう。
しかしそれを表情に出さないよう、そして二人を信じて笑った。
「会います。クルトさんと会わせてください」
ネギのその想いにアスナたちも少し互いに顔を見合った後頷いた。
たしかにあの二人に自分たちが心配するというのもおかしな話だった。
心配なのはむしろ自分たちの方だ。
だが、それでもシモンとラカンは自分たちを置いてそれぞれの場所へと向かったのだ。
「ったく、あんたってば本当に仕方ないわね~」
ネギの言うとおり、それは信頼されているということなのかもしれない。
「たしかに、あの二人なら大丈夫でしょう」
「そだね~、兄貴ならきっとそう言うかもね」
「じゃあ、決まりだな子供先生」
「ン」
ネギの言葉に、シモンに置いて行かれたグレン団たちも納得した。
そしてシモンが何も言わずに消えたのは、何かあった時には自分たちグレン団はネギたちに力を貸してやれということだろう。
ならば自分たちもここに残ろうと、彼らも決めた。
「では・・・行きましょう。案内してください」
力強く、そして自分を信じきった瞳で押し通され、その表情に少年は小さく微笑んだ。
「・・・・面白いですね、あなた方」
「えっ?」
「いえ、あの悲劇の出来事から、ここまで自信に満ち溢れた者へと成長できるとは、よほどいい出会いがあったのですね」
そうだ、出会った。
ネギは出会ったのだ。
たとえ過去がどうであれ、その悲劇に飲み込まれないぐらいの力強い絆を結べるものたちと出会い、ここまで来た。
そんなこと言われるまでもない。
あのシモンだって、カミナやヨーコと出会わなければと思うと、出会いというものがどれほど重要なのかと思い知らされる。
だが・・・忘れてはいけない。
出会いというのは良いものばかりではない。
出会ったのが後悔したくなるほどの最悪の出会いだってこの世にはあるのだ。
たとえそれが運命により決められた出会いだったとしてもだ・・・・
「ひははははははははははは!」
先手必勝。
どんな相手にもシモンは先に仕掛けてきた。
だが、シモンも人間だ。
自分の意志や体がそう告げても、無意識の細胞レベルの反応までは制御できない。
「くっくっく、場所を変えさせてもらうぜ」
「!?」
全身の細胞が警戒心を鳴らしていたため、戦いの反応に一瞬遅れた。
「空間妖術・無限地獄!!」
「なっ!?」
まったくの予想外だった。シモンが先手を取られた。
いや、警戒心をしていたにも関わらず、ユウサの不気味さが気になって、一瞬反応が遅れてしまった。
そして遅れた反応が全てを決した。
ユウサが発した光がシモンを、ユウサを、そしてあたり一面を埋め尽くし、美しい夜景が広がるオスティアの景色が変わった。
「な、・・・なんだ・・・ここは・・・・」
それはどこまでも殺風景で何も無い世界。
空も、大地も、右も左も前も後ろも、ただ真っ白な世界が広がるだけの世界。
「亜空間さ」
「何?」
「入ったが最後。俺の意思以外では出られない・・・・・まあ、常人レベルならの話だがな」
先ほどまでの祭りの世界とは一変した世界。
「な、・・・何も無い・・・右も左も上も下も・・・真っ白・・・・これが地獄?」
「くっくっくっく、もっとドロドロしたものを想像したかい? だがな、何も無い世界だけが広がる無限の空間と時間は、それほど甘いものじゃないぜ?」
まるでフェイトの従者の女の子が使っていたアーティファクトに似ている。しかしこうまで殺風景だとこちらの方がタチが悪い。
「無の世界。色もなく、音もなく、変化もなく、時間の流れも分からねえ世界。そんな世界に閉じ込められたら常人は何十時間かで精神崩壊を引き起こす。因みにシモン君のレベルなら足掻けば数時間でこの結界から脱出できるだろうが、それすら出来ない奴は半永久的に閉じ込めておける」
タチの悪い世界をシモンも珍しそうにまだ見渡している。すると、辺りをキョロキョロ見渡したら、シモンは少し離れた場所に落ちている何かを見つけた。
「何も無い・・・ん? なんだ・・・・あれは?」
「おっ、・・・ひはははは・・・何も無い世界では無かったな。出し忘れが転がってるからな」
シモンが目を凝らしながら近づくと、それは・・・・
「ッ!?」
「ひゃははは、気をつけな。その辺には俺が閉じ込めておいて出してやるのを忘れた奴らがゴロゴロ眠っているぜ!」
シモンが見つけたもの。それは骨だった。
人の屍が、所々に落ちていた。
「こ・・・これは・・・・」
「ひはははは、片付けるの忘れてたんだよ。でも、その方が面白いんだぜ? 脱出できなくなった奴らはとにかく精神崩壊したら何をするかも分からねえ。ある奴は何も言い返せねえ骨に話しかけ、誰かも分からねえ骨を抱きしめて温もりを得ようとしたり・・・くくく、一番の傑作は・・・・ひはははは、腹が減って骨にかぶり付く奴が居たっけな! 同じ人間なのに!」
「ッ!?」
孤独や空腹、錯乱した精神がこの世界では永劫に付きまとう。無限地獄とはよく言ったものだ。
「ふざけるな・・・・」
「あん?」
だが、シモンは抑えることが出来なかった。
震える手で白骨化した遺体を優しく置き、胸の奥から感じる吐き気を飲み込みながら口を開く。
「何故・・・」
「ん~?」
「何故ここまで酷い事を・・・・笑いながら出来るんだよ!!」
駆け出したシモンは、フェイントも何も入れず、ただ怒りに任せて正面からつっこんでしまった。
「ひはは、お気に召さないか、この偽善者め!」
「ふざけんじゃねェ!!」
そんな攻撃がユウサに当たるはずもない。
ユウサはケラケラ笑いながらシモンの槍をヒラリと回避し、シモンの心を抉る。
「ひはははは、おいおいおいおい、そのセリフは自分の人生に対しても言えるんじゃねえか?」
「な、なんだとォ!?」
ユウサの発言に、シモンは目の色を変える。
「こんな話をしよう。ある売り物の前にAさんとBさんが居ました。Aさんは迷わずその売り物を盗みました。一方Bさんは散々迷った挙句、売り物を盗みました。さて、悪いのはどっちだ?」
「な、何の話だ?」
「いいから答えろよ」
訳の分からぬユウサの問い。
顔を不快に歪ませながらも、大して考えずにシモンは思ったことを口にする。
「そんなの・・・結局盗んでいるんだから両方じゃないのか? でも、だからなんだっていうんだよ!」
だが、その答えにユウサは待っていたかのように、更に上機嫌になった。
「ひはははははは、その通り! 正解だ! 重要なのは過程でどうだったとか、迷ったとか関係ない。結果だ! 結果が同じなら過程なんざ意味がねえ。そしてそれは俺たちにも言えるんじゃねえか?」
「何?」
「結果が同じなら、楽しんで殺そうと、戦争で仕方なく殺そうと、殺したことには変わりねえ。お前はどうよ? 命がけの戦いという言葉で誤魔化して、どれだけの生命を死なせた? 所詮命の価値なんてそんなもん! 状況や人の精神状態でいくらでも塗り替えることが出来る!」
「!?」
下種の唇から漏れるその言葉、しかしその言葉はシモンの心臓を捉えた。
「全部知ってるぜ? 例えば獣人の連中、四天王のチミルフ、アディーネ、シトマンドラ、グアーム、螺旋王。そういや~、お前がちゃんとしいてれば、カミナは死ななかった」
「な、なに!?」
「獣人のガンメンを強奪して、やりたい放題したテメエは何だ~? 悪気もなく開き直ってるテメエのほうがよっぽど悪じゃねえか?」
「だ、・・・・黙れ!!」
「アンチスパイラルが襲来したとき、ロシウの言葉を無視して突っ込んで市民に多大な被害を与えたのは誰だ? お前が外の世界を開放した所為で死んだグレン団は? キタン、ゾーシィ、キッド、アイラック、マッケン、ジョーガン、バリンボー、皆お前という希望に酔って命を落とした!」
「・・・・・・え?」
「ん? ニアは違うか? どのみち崖に捨てられていたときに死ぬはずだった。ひゃはは、お前が見つけようと見つけまいと、どちらにせよ死ぬ運命だったか!」
「テメエ!? 何で・・・何でアンチスパイラルやニアのことを!?」
それはありえないことだった。
何故ならこの世界ではテッペリン攻略までしかシモンたちの物語は放映されなかった。
だからニアの死、そしてアンチスパイラルに関してはネギたちだって知らない。
この世界で知っているものなど居るはずがない。
居るとすれば・・・・
「ひははははは、間抜けだぜシモン君。そして、この世界には骨になったカスよりも、もっと魅力的なものがあるのに気づかないのかい?」
「・・・・な、なんだと・・・・」
「あれを見な!」
ユウサはある方角を指差した。その先には確かに遺体とは違う何かが落ちていた。丸く、大きい、そして赤い色の物体だ。
「えっ?」
その瞬間、シモンはゾクリとなった。
少し遠いが見間違うはずもない。だが、それでも考えられない。シモンは無我夢中でその物体へ走った。
「う、・・・・・うそ・・・・だろ・・・」
そして見た。
「・・・・ラガン・・・・何で・・・・」
ボロボロで草臥れたラガンがそこに居た。
ありえない物体にシモンが動揺するが、シモンは即座にその意味を理解した。
「ひははははははは、恐れ入ったぜ螺旋族! 人様の宇宙にまでズカズカと上がりこむなよな! テメエらはテメエらの宇宙のちっぽけな星の地下の世界で生きてりゃあ良かったんだよ!」
「ッ!? お前、顔神遺跡にあったラガンを盗んだな!!」
「くっくっく・・・・・ひははははははははははは!!」
瀬田達と行った顔神遺跡。
あの時は気づかなかったが、はるか大昔に自分と同じように異なる宇宙へ来訪した螺旋族が居た。
そのラガンが、今目の前にあるのだ。
「答えやがれ!!」
「ふふふふ、正解! ならば、俺の要求は分かっているな?」
「な、・・・なんだと?」
「かつてラガンを掘り起こしたシモン君・・・・君はこれをどうしたのかな?」
無の世界に唯一響き渡る鬼の笑い声。シモンはその言葉に小さく頷いた。
「・・・・お前・・・・まさか・・・・・・」
「ひはっ!」
そうか・・・・そういうことか・・・・
この男が自分を呼んだ理由・・・
「・・・・お前、盗んだはいいけど・・・・動かせないんだろ?」
その言葉にユウサはニカッと笑って頷いた。
「その通りだ! コアドリルが無いからか、もしくは螺旋力とやらが俺にはないからか、どちらにせよ持って来たはいいがウンともスンとも言わねえ。まあ、この空間に置いておけば持ち運びにも便利なんでな。それにお前さんと話をするならここの方が周りを気にせず都合がいいと思ったんだよ」
「待て、何でお前が螺旋力のことまで!? それにさっきは、ニアとアンチスパイラルのことも・・・・・・・・まさかお前・・・・」
「ひひ・・・ひはははははははははは!! その通り! ファイナルアンサーなんて、必要ない! 今すぐ言ってやる! 正解だァ! これなーんだ?」
服の中をゴソゴソあさり、ユウサは自慢げに懐から一本のフィルムを取り出した。
それこそが、盗まれたシモンの物語。
「お前・・・・お前がそれを盗んだのか!?」
「その通りだ。そして俺は全てを知っている。お前がこの世界で記憶喪失になったのも、超鈴音、武道大会、学園祭、可愛いエヴァちゃん、ヨーコの出現、悪魔の襲来、詠春の娘からの告白、京都でのスクナや天ヶ崎家の娘、アーウェルンクスとの戦い、坊やたちとの出会い、家族との出会い、そして・・・ニアや大グレン団のメンバーの死! そしてアンチスパイラルのこともな!!」
「!?」
「ふふふふふ、いや~、中々面白かったぜ。まさか異なる宇宙の来訪者とはな。ワープの力とやらもスゲ~な~」
自分の全てをこの男は知ってしまった。
ネギたちでも美空たちでもない。
自分のこれまでの進んできた道の全てを知ったのは、何とこの男だったのだ。
「・・・・・・・お前は何を企んでいるんだ・・・・」
「企む? 心外な。面白いことをしようとしているだけさ。シモン君、君の力やラガンの力、そして影響力。分かるか?」
「・・・・何をだ?」
「それは世界を巻き込む力だ! それは超鈴音とかいうガキが言っている通りだ。君とラガンとこの記憶映像の三つで星の行く末を左右できる。おもしれ~だろ~? たった一人の異邦人により、世界の未来が委ねられている! 傑作じゃねえか! そしてその鍵を、この俺が手に握っている!」
「・・・・・ふざけるな・・・」
「ひはははは、だからこそ言おう! シモン君、俺の仲間になれ! 既に計画は大まかに出来ている! 時代にうねりをあげてみねえか?」
「ふざけるんじゃねえ! そんなもんに俺が手を貸すと思ってんのか!?」
「ふっ、そうか? だが、俺は超鈴音とかいう娘の言葉を聞いて未来を確信した。君の物語が歪むかどうかは知ったことじゃねーがな」
「ッ!?」
「魔法の時代はもう終わりだ! 今こそ新時代だァ!!」
その瞬間、シモンは脳裏に思い出す。
素直になれず、意地ばかり張っていた少女。
未来から来たその少女は、小さな背中で涙を堪えながら、歪んだ物語と決別するために命を賭けた。
その少女が流した涙と本音を今でも覚えている。
―――それが・・・アナタがこの世界で広めたグレン団の姿が・・・時を経て捻じ曲がるとは思わないカ? ・・・明日・・・アナタが仮に勝ったとしても・・・魔法使いではないのにそれ以上の力を振るうシモンさんたちの物語が・・・・世界に影響を及ぼすとは思わないのカ?
あの涙と失望を変えるために自分は戦った。
「ッ、この野郎!!」
まさか・・・・
そう思わずには居られない。
「お、・・・・お前の仕業だったのかッ!?」
気づいたら駆け出していた。
「ひはははは、知るかよ! 未来がどうなるかなんざ分からねえ。仮に捻じ曲がったとしても、そりゃあお前さんたちの問題だろ?」
「黙りやがれ! お前の・・・・お前の好きにさせてたまるかよッ!!」
それ以上は言わせてなるものかと、シモンは激昂してユウサに怒りの槍の突きを何度も放つ。
「ひはははははは、どうやら嫌われちまったようだな。人に好かれようと思ったことがねえから、コミュニケーションってのは難しいね~。それに俺をどうしようと暴走する時代は止まらない。そろそろ・・・・他の奴らも動き出すころかもしれないからな」
「何を言ってるのかは分からねえが、それは俺の記憶だ! 返してもらうぞ! そしてラガンもだ! それはお前なんかが手にしていいものじゃない! それは俺たちの宇宙の希望の証! 時代を創ったシンボルだ!」
「ひはははは、嫌だと言ったら?」
「奪い返す!」
「出来るのか? グレンラガンもねえ君ごときにな!」
「ごときかどうかなんて関係ない!」
「ふふふ、君には交渉したいだけなんだが、意外と好戦的だな。だが、まあいいだろう」
決裂した。
いや、交渉など最初から無い。この二人が交わることなどありえない。
これもまた必然・・・・
「ひはははははは、宇宙はもう飽きただろ? なら特別に、テメエの知らねえ地獄巡りの旅に連れて行ってやる!」
「地獄の底なんざ、貫いてやる!!」
世界を貫く力と世界を左右させる力。
シモンの輝くソルバーニアとユウサの拳が強烈な衝撃波を巻き起こしながら交錯する。
「くっくっく・・・・・」
「散々ヘラヘラ笑いやがって、テメエのニヤケ面、今ぶち壊してやる!!」
「やってみなァ!!」
あくまで笑みを絶やさぬユウサ。
その表情を一秒でも見たくなく、シモンはソルバーニアと螺旋力を最初から全力解放し、ユウサを消滅させることすら厭わぬほどの力を振るう。
「いくぜ、ソルバーニア・ギガドリル!!」
いきなり大技。ソルバーニアの先端の槍がギガドリルと化した。
「ひはーーっ、いきなりギガドリルか! うれしいねーッ!」
だが、それを恐れるどころか、ユウサはますます機嫌良さそうにハシャイだ。
だが、構うものか。とにかくやるべきことはぶち込むだけ。
「ブレイクゥゥーーーーッ!!」
「くっくっく、だが・・・・冷静じゃないな! 頭を冷やしな!」
うねりを上げて向かってくるシモンに対して、ユウサは手元で印を結び、地獄の吹雪を放出させる。
「極寒地獄!!」
「ッ!!」
「地獄の吹雪に身を冷ませ!」
荒れ狂う猛吹雪が、ドリルの回転を鈍らせていく。回転が軋み、想像を超える寒さが手を振るわせる。
だが・・・それがどうした!
「こんな寒さ・・・あの暗く孤独な銀河螺旋海溝に比べれば・・・・・なんてことねえ!」
それで止まるほど利口なドリルではない。
「へっ、・・・・みたいだなッ!」
吹雪を突破したシモンはそのまま突進する。だが、ユウサは既にそこには居ない。
突進するシモンのドリルを軽々と交わした。
だが、シモンも見逃さない。ギガドリルを解除して、ソルバーニアの力を使ってユウサに迫る。
「逃がさねえ!」
「ふっ、な~るほど~、たしかに速いな。それがニアの魂との合体により得た力か?」
シモンの巨大な螺旋力を全て細い槍に凝縮したことにより、今のシモンはネギですら驚くほどの超速戦闘を可能としている。
それはユウサ相手にも例外ではない。
「速い・・・・・俺の鬼脚についてくるか・・・・・速さは中々だな・・・次は・・・これはどうかな?」
そんなシモンを観察するように、ユウサは余裕の笑みを絶やさぬまま次々とシモンを試していく。
自分の親指を噛み、流れる血で懐から取り出した一枚の札に何かを描き、それを放り投げた。
「式神! 大鬼蜘蛛!!」
「なっ、・・・・蜘蛛!?」
「気をつけな! 地獄の蜘蛛は気性が荒いぜ!」
投げた札が大きな煙を発し、次の瞬間煙の中から巨大な蜘蛛の式神が召喚された。
「・・・・こいつ・・・・京都にいた奴に似ている・・・・」
「ふっふっふっ、テメエが京都で戦った三流陰陽術士と一緒にするなよな! 地獄の瘴気と妖気を孕んで研ぎ澄まされた力だ!」
ユウサの合図と共に巨大な蜘蛛がシモンの前に立ちはだかり、そして蜘蛛の糸を吐き出した。
―――鬼蜘蛛縛り!!
「ひははは、地獄に垂れ流された蜘蛛の糸は救いの糸? そんなんあるわけねえだろーが!」
蜘蛛から吐き出された糸がシモン目掛けて襲い掛かる。だが、シモンはすぐに反応して、ソルバーニアでその糸をなぎ払おうとする。
「そんなもん効くか!」
そう、なんでもないと思い、シモンは躊躇わずにソルバーニアで蜘蛛の糸をなぎ払おうとした。
だが・・・
「なッ!?」
「甘え! 伸縮性・粘着性抜群の糸だ! どこまでも伸びて、余計に絡みつくだけよ!」
出来なかった。
簡単になぎ払えると思った糸はソルバーニアに絡みつき、そして粘着性があり、どれだけ力を込めても払うことも引きちぎることも出来ない。
「し、しまッ!?」
「飲み込まれちまいなァ!!」
その間にも蜘蛛はシモンに向けて糸を吐き続け、それがシモンの手足に、そして胴体に、次々とシモンに絡みつく。
―――鬼蜘蛛繭!!
蜘蛛の糸がシモンの全身を包み込み、人の大きさの繭が出来上がり、シモンが完全に封じ込められてしまった。
「な、なんだこれは!? み、身動きがとれない!?」
「ひはははは、意外に呆気なかったな!」
繭の外からユウサの高笑いが聞こえてくる。
だが、ユウサの言うとおり、身じろぎしようにも絡まった糸がシモンの動きを封じている。
そして、この状況下でユウサは右手に黒い炎を放出し、それをシモンに向ける。
繭の中に居ても感じる灼熱の炎。たとえ相手が見えなくてもシモンは自身に感じる命の危機に汗を流す。
「ひはははは、だが・・・最後まで分からない。それが君だ。くっくっく・・・・本当にそうかァ? 炎熱地獄!!」
最終更新:2011年05月13日 20:58