地獄の業火が繭に包まれたシモンごと消滅させようと燃え上がる。
だが次の瞬間、シモンが包まれた繭が中から強烈な光を発した。
「おっ♪」
ユウサは嬉しそうに笑う。
すると次の瞬間に光がはじけ、繭が爆発し、中からギガドリルが上下左右全方位に向けて伸びた。
「ギガドリル・マキシマム!!」
いくつものギガドリルの超高速回転の前に、地獄の糸がねじ切られた。その強力な余波に当てられて、式神の蜘蛛が元の紙切れになった。
「ッ!? へっ・・・この程度の式神じゃあ無理か・・・・しかしそれが超銀河モードって奴かい! ・・・・・面白え!!」
シモンの目元に輝くのは星型のサングラス。
それを確認したユウサは、更にシモンを挑発する。
「その力が目覚めたのは・・・たしか大グレン団のメンバーが宇宙で死んで、そしてキタンとかいう奴が特攻して死んだ後だったか?」
「ッ!?」
「ひはははははははは、あれは中々派手な死に様だったぜ? まあ、死んじまったらそれまでだがな! 他の奴らも、弱いくせに足掻いてて笑えたぜ! ひははははははははは!」
「ッ!!!!」
シモンは初めての経験かもしれない。
「言うな・・・・・」
「アン?」
これほど・・・・
「みんなの名前を! 死を! 大グレン団を! 俺たちのことを! お前なんかが口にするんじゃねえ!!」
これほど誰かに怒りを覚えたのは初めての経験だった。
「超銀河アストラルボルテックス!!」
超銀河の螺旋力を纏った巨大な突きが、螺旋を描きながらユウサに迫る。
だが・・・
「へっ、式神・絶対防壁羅生門!!」
再びユウサは一枚の紙を投げつけ、すると今度は生物ではなく、遥か巨大な鬼の顔をした門が出現した。
閉ざされた門は見るからに強固な造りで立ちはだかり、巨大な轟音と衝撃により激しく揺れながらも、シモンの攻撃を防ぎきった。
「・・・くっ、・・・・堅い・・・・・」
「ほ~・・・・羅生門にこれだけの振動を与えるとは・・・・くらったらやばかったな・・・やっぱ俺は挑発の加減が苦手だね~・・・」
休むまもなく続いた攻防にようやく一瞬の間が開いた。
少々肩で息をしながらも、怒り任せで無我夢中で攻め立てていたシモンもようやく少し落ち着き、冷静になった。
(こいつ・・・・強い・・・攻撃がよく分からない。氷や炎・・・化け物を出したり、限がない)
決して認めたくは無いが、それだけは感じ取らねばならなかった。
パワーアップしたはずの自分の力を前に、こうも余裕の笑みを絶やさぬままやり過ごされたのだ。それだけは認めなければならなかった。
(ふ~ん、なるほどね~、確かにそれなりには出来るようだ。チコちゃんが負けたのも頷けるな・・・あっ、油断してたとはいえ、千の刃も退けてるんだったな)
そしてユウサもまた同じだった。
「ふ~、ちょいと予想よりも遊びの難易度が高いことを意識する必要がありそうだ」
「遊びだと?」
「あ~、遊び心は大切だ。俺はいつも笑顔で過ごせる生き方をしてきた。まあ、遊びにも限度ってものもあるが・・・・これぐらいなら・・・・」
「・・・・・・・・」
「これぐらいならまだ遊び気分で収まるな!」
底の知れない鬼の笑み。
だが、そのことに恐怖するよりも、シモンには「何故?」という感情で一杯だった。
「どうして・・・・」
「ん~?」
「遊びだとか・・・楽しむとか・・・命を何だと思ってやがるんだ」
「は~? 今更、白けること言うなよ、シモン君?」
納得できない表情で見つめるシモンに対して、ユウサはあくまで開き直る。
「だ~か~ら~、それを君が言うかい? 最初から命を軽いと思っている俺よりも、重いとかほざきながら平気で命を賭けたり投げ出したりしているお前さんたち大グレン団のほうが、よっぽど命の価値を分かってないんじゃね~か~?」
「ふざけるな! どこに死ぬのが怖くない奴がいるってんだ!」
そうだ・・・・
―――怖いに決まってるじゃねえか!
「みんな・・・平気だったわけじゃないさ! でもな・・・でもな・・・」
―――仕方ねえんだ。これしかねえんだ。俺たちは好きでやってんだよ。怖いから尚のこと・・・・
「だからこそ前へと進んだんだよ!」
死への恐怖に足を止めるのではない。そこから這い出すためにも前へと進んだのだ。
キタンの言葉だ。
もっともキタンはシモンに向けて言った言葉ではない。この言葉はアンチスパイラルとの戦いのとき、死への恐怖で思うように動けずに震えていたギミーに言った言葉だ。だが、その言葉はシモンの耳に、そして心に残っていた。
そう、怖いからこそ大グレン団はそうやって命を賭けてきた。
自分も・・・仲間たちも・・・
「だから・・・・・」
だからこそ・・・・
「あいつらの命を侮辱するんじゃない! みんな怖かったんだ! みんな苦しんだんだ! そして失ったらもう二度と返ってこないんだぞ! 誰かが死ぬっていうのはそういうことなんだ!」
命を軽んじるユウサの言葉に黙っていられなかった。
だが・・・
「おやおや~! 銀河の英雄様の講義かい? こりゃ~、貴重なお言葉だ~。ひははは、だがな~、自分に酔って自分たちだけを特別扱いして正当化するなよな。俺もお前も同じなんだからよ。俺もお前も過程は違えど、結果的にはいくつもの屍を踏みつけて、今ここに立っているんだよ」
「なんだとッ!」
「だ~か~ら~、カッコいい言葉で誤魔化すなよ。それともお前はこう言えば満足か? 俺が死なせてしまった奴らは、俺の暇をつぶすための尊い犠牲となったってな♪ そうだ、尊い犠牲だ♪ 仕方な~い! ひはははははははは!!」
「て、てめえ!」
「おっ、動揺したな! 動きが鈍ったぞ!」
再びシモンが動き出したが、先ほどまでのようにキレが無い。
ソルバーニアの超速スピードに見る影がない。
軽やかに戦場を駆け抜けられるはずのソルバーニアをただの槍のように、シモンは振り回していく。
それはシモン自身の動揺を表しているようにも見えた。だが、このまま乱されるわけにはいかない。
「確かに・・・俺の手もいくつもの血で染められている! 俺を恨んでいる獣人はたくさん居た! アンチスパイラルが現れたのも俺の責任だ!」
シモンがラガンを掘り当て、地上を開放したからこそアンチスパイラルは出現した。
そのことにより、多くの市民が暴動を起こして自分を責め立てた。
―――貴様のせいだ!
―――なぜ地上に出した!
―――月が落ちてくるんだ、どうするんだ!
―――俺たちは地下の生活で満足してたんだ!
―――シモンが全ての元凶だ!
そしてシモンがその責任を負われ、ロシウに監獄に送り込まれたとき、自分に恨みを持った獣人が襲い掛かってきたりもした。
―――貴様さえ居なければ、俺はまだ自由に空を飛べたんだ!
シモンはギリッと唇をかみ締めながら、告げる。
「ひはは、確かじゃなくて、事実だよ!」
「でも・・・俺は俺の成すべきことをした! そのことに後悔はしていない! そして、そのことを許してもらおうだなんて思ってもいない! でもな、これだけは言わせてもらう! 俺たちの・・・・」
このまま納得させられるわけにはいかない。
それに自分は言われたからだ。処刑を宣告されて牢獄に送り込まれたとき、そのことを受け入れようとした自分にあの男は言った。
―――それが俺たちを滅ぼしてまで掴んだ明日か? そんな事は俺が許さない!
戦争が終わっても、最後の最後まで抵抗したヴィラルが言った言葉だ。
「俺たちの進んできた道は、お前には一生分からない!」
そうだ違う。
仮に同じように多くの命を奪い、手が血で汚されようとも、自分はこの男とは違う。
もし同じだと認めてしまえば、自分のこれまでの全てを否定することになる。自分たちの成したこと、魂も、信念も、死も、悲しみも、誓いも、アンチスパイラルとの戦いもだ。
―――ならばこの宇宙、必ず守れよ・・・・
そうだ、仮にこの男がどれだけ自分の物語を見ようとも、見ただけで理解することなど到底出来ない。
―――もしとか、たらとか、ればとか、そんな思いに惑わされるな。自分が決めた一つのことが、お前の宇宙の真実だ
いかに自分の物語を知ろうとも、彼らの熱き想いを微塵も理解せぬ者に、たとえそこに「理」を感じようとも、自分がこのまま相手に飲み込まれて論破されるわけにはいかない。
「へっ、自分を正当化して開き直るか? 自分を鬼畜と認めて悪気がある分、まだ俺のほうがマシってものだぜ小僧?」
「それは違う! 俺たちは自分たちの道が正しいと信じて進んできただけだ! その道が本当に正しいか正しくないかなんて、簡単に判断できるものじゃない。もし出来るとしたら・・・それは俺たちの創った道を通る奴らだ! 俺たちが道を託した奴らが決めることだ! 決めるのはお前じゃない!」
「・・・・・ああ言えばこう言う~」
相容れぬ。
この男は違う。
これまでいくつもの敵と戦ってきた。
だが、ヴィラル、ロージェノム、アンチスパイラル、茶々丸、そして超鈴音、例え進む道は違い戦ったとしても、同じ信念を掲げたときには分かり合えた。
だが、この男は違う。
「いくら乱されようとも、お前に何を言われたって、俺の心は迷わねえ! そして、大グレン団・・・いや、新生大グレン団のリーダー、穴掘りシモンの名に賭けて、お前はここでぶっ倒す!!」
「ひはははは、たしかに・・・・もはやディベートでお前さんとやり合うのは無意味だな。正論もクソも無い。信念折れない奴は、大変だね~。これが尽きない螺旋の意思とやらなのかい?」
「分かったような口を利くな! 何度だって言ってやる! 俺たちのことを、お前には一生分からねえよ!!」
この男とは分かり合えない。
「俺たちの物語がもし世界に知られるとしたら・・・それを知らせるのはお前じゃない!」
そう、この男は違う。
「俺たちの物語を、意味を、真実を教える資格があるのは、この宇宙ではただ一人! 超鈴音っていう女だけなんだよォッ!!」
この男とは生涯相容れることがない。
これまで出会った生命の中でも異端の純粋な悪意を前に、シモンは生まれて初めて自分と他の者との交われぬ境界を見た気がした。
だからこそ・・・
(この男を未来まで野放しにするわけにはいかない。ここで俺が決着をつけてやる!)
自分の手で終わらせることを決意した。
「超スパイラルギャラクシーッ!!」
シモンはその場でドリルを振り上げ、地面に向って突き刺した。
その瞬間、無限地獄の四方八方からドリルが現れ、上下左右に当たり構わず伸び、無限地獄をドリルの宇宙で埋め尽くした。
「ッ!?」
「言ったろうがァ! 地獄なんざぶち抜いてやる!!」
「うひはァ! ・・・・ちょ、待ちなってシモン君! それはねえだろ!!」
全方位から伸びるドリルの宇宙に閉じ込められた瞬間、ユウサの姿を覆い隠し、そして埋め尽くされたドリルの中から声が聞こえた。
「ひは・・・ひははははははははは! 血だァ! ドリルだァ! ひはっ、どうしてくれる、シモン君! 穴だらけにしてくれやがって! 酷えじゃねえか!」
自分自身でも手ごたえがあった。
埋め尽くされたドリル銀河の中から血だらけとなったユウサが立っていた。
だが、派手に傷つけられて、見るからに大ダメージを受けているにもかかわらず、痛みを感じていないのか、とにかく甲高くユウサは笑っていた。
(な、なんだこいつ・・・・・)
それが尚更不気味に感じた。だがそれでも好機であることには変わらず、シモンは飛び出した。
「俺たちの物語にハマッたんなら、いい技をテメエにくれてやる!」
「・・・・!」
ソルバーニアの輝きが更に増した。
シモンの螺旋力を一身に受け止め、凝縮した衝撃を一気にユウサに目掛けてシモンは叩き込む。
「シモンインパクトォ!!」
叩き込まれた螺旋の衝撃にユウサは激しく吹き飛ばされた。
これほどの連続攻撃を叩き込むのは珍しい。それほどまでにシモンの攻撃は凄まじかった。
無限地獄に広がる螺旋銀河の余韻が全てを物語っていた。
そして、その超銀河の猛攻の全てをユウサはその身に受け続けたのだ。
「ぐはッ・・・・ぎはっ・・・・かっ・・・かっ・・・・・」
派手な服装はボロボロになり、血が流れ続け、その瞳のサングラスにも亀裂が走っている。
正に螺旋の宇宙の大猛威の前に、地獄は完全に押しつぶされたのだ・・・・・
「ひっ・・・・はっ・・・・くく、容赦ないね・・・・・・そこまで怒るとは・・・・ひひ・・・そこまで命を尊いとほざく訳か?」
「当たり前だ!」
完全に勝負あったと思ったこの対決。
だが、それでも重傷を負ったかのように見える鬼は変わらず・・・・・
「ひは・・・・ひゃはははははははははははははははは!」
「何がおかしいんだ!」
シモンの想いを一笑するかのように、ユウサは高らかに笑い転げた。
ユウサの態度に更に激昂するシモンだが、ユウサのシモンを小馬鹿にするような笑みは変わらない。
そしてその口から・・・
「くっくっく、おめでたいね~、そして君はな~んにも分かっちゃいない」
「なんだと!?」
「くっくっくっく、ひはーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」
「な・・・・何がおかしいんだ!」
狂ったように笑い出すユウサに背筋を凍らせながらも、シモンは声を荒げる。
そんなシモンの姿にユウサは笑いが止まらない。
「ひゃはははは、たった100万人の世界の頂点に立ったぐらいで偉そうに言わないことだ。それなら君は創られた偽りの命を、世界をも、価値のあるものだと言うのかい? 幻想にも価値はあるべきだとほざくのかい?」
「・・・・・どういうことだ? ・・・偽りだと?」
「ふっふっふっ、まあ君にはどうでもいいことだ。時代はそれでも動いている。終わるものは終わり、始まるものは始まる。その後の世界に希望があるのか・・・あるのは愚かな闘争か・・・ひはははは、君にもどうすることも出来ないさ!」
「何だ・・・・さっきから何のことを言ってやがる」
「気にするな。どーせお前さんには関係ねえこった。お前さんは俺の作る未来のヒーローになってくれればそれでいい!」
「ふざけんじゃねえ! 誰がそんなことさせるかよ!」
「許可などいらねえ! 神も悪魔も閻魔の声も、現実の前には無力なんだよ!!」
このユウサの心の内が分からない。理解できない。
この男は何を知っているのか? 何がおかしいのか?
何故この男と居るだけで・・・・
「ひはっ♪ ・・・・・さっきまでの攻防で俺の実力を見極めたと思ったら大間違いだぜ!」
「なにッ!?」
「鬼爪地獄!!」
「!?」
人の手が形を変えて禍々しい鬼の手へと変貌し、なぎ払うかのように振りぬいた爪は、空気を切り裂き、どの名刀や魔剣にも勝る切れ味を誇った空気の刃が、シモンを切り裂く。
「ッ!? カ、カマイタチ!?」
「ヒハッ! そんな生易しいものじゃねえ! 地獄に蔓延る罪人どものように苦痛の悲鳴を上げやがれ!」
うねりを上げて襲い掛かる空気の刃を避けるべく、シモンは持ち前の超速スピードで交わそうとしたが、一瞬遅かった。
かすった刃がシモンの足の薄皮を切り裂き、真っ白な無限地獄の空間に、シモンの赤い血が滴り落ちた。
「ッ・・・・」
「どうした! 怪我を見るのは初めてかい? ボーっとしてんじゃねえよ! 竜巻地獄!!」
「くっ・・・・超銀河螺旋フィールド展開!!」
超銀河のエネルギーでフィールドを張り、防御の構えを取るシモンだが、幾多の旋風が渦巻いて巻き起こされた地獄の竜巻は、シモンの全身の表皮を容赦なく切り裂いていく。
「ぐっ・・・うううっぐ!?」
「ひはははははは! この技にはあの冒険王も手を焼いていた! 分かったか? お前さんは見誤った! 目に見える宇宙の広さに自惚れて、目に見えねえ地の奥底にある地獄の深さを見誤った!」
「ぐっ、・・・・・・」
「後悔してももう遅い! 地獄行きを一度命じられたら、どれほど己の行いを悔い改めようとも地獄の鬼に懺悔は届かない! さあ、いよいよ本物の地獄のお出ましだ!」
ユウサの鬼の手。それは普通の人間の手首より先だけ鬼の手と化したものだった。
しかし今は違う・・・
「鬼族・鬼化! 状態2!!」
今は両手・・・いや、両腕。
手首より先ではなく、肘や腕も変形し、ユウサの肩より先の両腕が異形の鬼の物へと変化した。
「・・・・・な、・・・な・・・んだ・・・こいつは・・・」
高らかに笑うその男。人の姿をした鬼は、徐々に真の姿を見せつつある。
身に纏った地獄の空気はさらに奥底まで進んだ大地獄の空気へと変化した。
無限の地獄に広がる更なる地獄。目に見える世界の全てに地獄の瘴気が漂った。
「ひはははは、君の知らねえ、まだ見ぬ世界を体感させてやる!! 墓穴掘って掘りぬけた後には・・・・更なる大地獄が待っているのさ!!」
シモンはいまだかつて見たこともない地の奥底の脅威に、ようやく触れることになるのだった。
そうだ・・・・・地獄だ・・・・地獄絵図だ・・・・
地の奥底から天の向こうまで飛び出したシモンは、裏を返せば地の奥底のさらにその奥の世界でもある地獄というものを見たことがない。
常世とは思えぬ悲惨な世界。
しかしそんな世界を思わせるような光景を、ある少年は6歳のころに見てしまった。
「ようこそ、私の特別室へ。ネギ・スプリングフィールド君」
吐き気のするような光景は、ネギのトラウマの一部。
「こ、これは・・・・」
「ネギ先生の故郷の村・・・六年前の・・・・」
「どういうことだ!?」
総督の面会に付き人として許された3名として、朝倉、のどか、千雨は、クルトの待つ特別室の扉を開けた途端に広がった光景に激しく動揺してしまった。
「・・・・何故・・・どうやって・・・・」
覚悟は決めていた。
心の準備も出来ていたはずだった。
しかしネギは予想外の出迎えにいきなりペースを奪われてしまった。
「ははははは! 話のテーマをハッキリさせておこうと思いましてね! 特別に用意させてもらいました。君の知りたい答え、それは6年前の雪の日、そしてこの時の真相のはず!!」
周囲に広がるのは全てが映像だ。本物ではない。しかし偽りでもない。
「そう、六年前の雪の日。君の人生を変えた事件の真犯人は・・・いや・・・君はもう気づいている・・・」
今広がる光景は、過去に実際に起こったこと。
「この事件が起こってもっとも得する人物・・・・・それは・・・・」
ある雪の日、激しく燃え盛る村。
自分と親しかった者、顔見知りだった者、全てが声の返さぬ石へと姿を変えている。
そんな悲劇の広がる世界で震えながら必死で泣き叫ぶ少年、それが昔のネギだった。
「うっ・・・・ぐうううううう・・・・・・」
「先生!?」
「うっ・・・ぐううう・・・・・・」
溢れ出す邪悪な瘴気。
底知れぬ闇を抱えた心が漏れ出していく。
「ぼ、僕は・・・・僕は・・・・」
頭を抱えて苦しむネギ。その体が徐々に変貌しつつある。
「くく・・・良いぞ・・・もう少し・・・・・・・・・・・そう、真犯人は・・・・」
その様子に、口元の笑みが止まらぬクルト。
「せ、・・・・・せんせ・・・・」
黒く塗りつぶされていくネギの心にただ呆然としているのどか達。
このままではネギがおかしくなってしまうかもしれない。
早く何とかしなければならない。
だが・・・・
「我々です。我々メガロメセンブリア元老院です」
「「「「――――ッ!?」」」」
何も出来ない。
「ッ・・・ア゛ア゛・・・・・」
ただ叫ぶだけしか出来ない。
「せ、・・・・せんせーッ!?」
のどかはいても経ってもいられずに、今のネギに近寄ろうとする。
だが・・・・
「やめろ馬鹿! 余計なことをすんじゃねえ!」
「えっ、・・・・」
「ちょっ、千雨ちゃん!?」
駆け寄ろうとしたのどかと朝倉を、千雨が止めた。
「何やってんのさ! 早くしないとネギ君が!?」
その通りだ。こうしている間にも、闇の魔法の副作用により犯されていくネギが、苦しんでいる。
涙目になるのどかに、珍しく慌てる朝倉が焦ってネギの元へ駆け寄ろうとしたのだが、それを千雨が止め、通せんぼのように二人の前に立ちふさがった。
そして・・・・
「知らねえよ・・・・」
「・・・えっ?」
「僕を誰だと思っている? 知らねえよ・・・この日に芽生えたアンタの気持ちも・・・・お前の人生の根っこも・・・私は知らねえよ・・・・」
震えながら告げる千雨。
「「えっ!?」」
すると、のどかも朝倉も・・・・
「・・・・・むっ!? こ、・・・・・これは・・・・まさか・・・・ネギ君・・・君は・・・・」
クルトもようやく気がついた。
「うっ・・・・ぐうう・・・うぐっ・・・」
闇の魔法に飲み込まれていき、苦しむネギ・・・・・
そう思っていた・・・
だが違う・・・・
「ぼ・・・・く・・・・は・・・・」
違うのだ。
「憎いだろうよ・・・アンタの敵を前にして・・・さぞかしぶん殴ってやりたいだろうよ。その苦しさの量までは、ただの中学生の私には分かってやれねえよ・・・でもな・・・そうじゃねえだろ・・・・」
ネギは・・・・耐えているのだ。
「な、何を我慢しているんだい? 君のその感情は耐える必要のないもの。吐き出すべきもの。その憎しみをぶつける相手が、今まさにここに居るのだよ?」
「うっ・・・・ぐうう・・・・あぐ・・・・・」
「さあ、想いをさらけ出しなさい! 君は正当な復讐者だ! さあ!」
たしかに衝撃の事実に心の闇が反応し、その力が漏れ出している。
だが、それでも飲み込まれてなどいない。
ギリギリで、己自身を保って心の闇と戦っているのだ。
「助けねえぞ・・・・・」
千雨には分かっている。
だからこそ、拳を強く握り締めて、ネギを信じて待っているのだ。
「アンタの闇だろうが! アンタの力だけで晴らしやがれ! それも出来ないで、僕を誰だと思うとか・・・・死んでも言うんじゃねえよ!!」
惨劇の映像の中で響き渡る、千雨の声はリアルの声だ。その声は、たしかに・・・・・
「・・・・・千・・・・さ・・・め・・・・さん」
ちゃんと届いているのである。
(僕の村を襲った人・・・・スタンさんを・・・アーニャのお母さんを・・・おじさんを・・・・おねえちゃんを・・・みんなを・・・・・そうだ・・・この人が! ・・・憎い・・・憎い・・・でも・・・・・・でも・・・・・・)
だからこそ、最後の一線を越えずに済んだ。
――アニキは憎しみで戦っていたのとは違う気がする。
たしか・・・・そんな言葉をシモンは言っていた。
獣人により地下に押し込められた人間たち。地上にあこがれて飛び出したカミナの父親も、地上で死んでいた。
だが、カミナはそんな世界に恨みを持っていなかった。
多少の憎しみは持っていたかもしれないが、彼は・・・・
(・・・あの人は・・・・・)
彼らは・・・・・
(あの人たちは・・・・・・)
最終更新:2011年05月13日 20:59