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111-3

ネギも、仲間たちも、シモンですら辿り着いた、いや・・・足を踏み入れたこの世界の謎。

その最後のピースがまだ残っている。

かつては紅き翼としてどんな無理も道理も突き抜けた男たちの仲間だったクルトをこのような考えに至らせた最後の鍵。

だが、それが明かされないのなら、現時点でのネギの答えはこれしかない。


「ならば、答えは一つです! 見えない真実や絶望に怯えて後悔したくはありません!! どんな道理もぶっ飛ばしてきた父さんたちのためにも、僕の答えは決まっています!」


それはフェイトとオスティアで再会したときと同じこと。


「敵も味方もありません! 全部救える道を探してみせます!!」


「・・・何も知らぬガキが・・・ベラベラと・・・・」


仲間の命と世界を天秤にかけられたとき、自分の導き出した答えと同じだ。


「口では何とでも言えます。言葉の重さも知らずに喚いて・・・・君に責任が持てますか!?」


「その責任が・・・その真実がどれほど重いかは知りません。あなたの言うとおり僕一人では背負いきれないかもしれません・・・・・でも・・・・!!」


「ッ!?」


その瞬間、この幻想空間がひび割れ、元の総督府の室内へと戻った。


「なっ!?」


突如崩壊した空間に驚きを隠せぬクルト。しかし対するネギは、まるでこうなることが分かっていたかのように笑みを浮かべている。

そう、ネギには分かっていた。



「その重さを分かち合うから仲間なんだろッ!!」



千雨が既に動いていたことを。


「へっ、私の能力でこの部屋のセキュリティシステムは全て乗っ取った!!」


「バ、バカな!? こんな平和ボケした旧世界の学生に!?」


「平和ボケして何が悪い! 平和ボケした甘ったれた世間知らずの奴らだからこそ。あんたが諦めた甘えた答えにすがる事が出来るんだよ!」


言った後、少しキャラではなかったかと顔を赤らめて表情を隠したが、その言葉に千雨の珍しさとちょっとした熱さに朝倉がニヤニヤと笑い、そして直ぐにクルトに向き合った。


「まあ、千雨ちゃんの言うとおりだよ。あんたの隠している真実がどんだけ重いかは知らないけど・・・・こんだけの仲間で分け合えば少しは負担が減るんじゃないの?」


「・・・・ガキ共が!!」


激昂したクルトは即座に剣を抜き、刃を向ける。そこには先ほどまでの冷静さや紳士な態度も完全に失せていた。


「父さんたちのため? あきらめない? ふざけるな! ナギと一度も会ったことの無い君に、アリカ姫のことを昨日今日知った君が、彼らの何が分かるというのです!! 旧世界で面白半分にこの世界に足を踏み入れた少女が数人集まって、何が出来るというのです!!」


「仲間と共に背負って・・・父さんたちの意志を受け継ぎます!!」


「ガ・・・・・この・・・ッ!!」


ネギたちなりの決意の言葉。だが、その言葉すら気に入らないと、何も分かっていないと言い捨てて、クルトは牙をむき出しに襲い掛かってきた。



「今だよ、みんなア!!」



「ッ!?」



突如部屋の壁を突き破って現れる巨大な如意。

石柱と思えるほど太く、強大なものの出現に、冷静さを欠いたクルトに対処できずに、彼は見事に吹き飛ばされてしまった。


「来たアルよ、ネギ坊主!」


現れたのは、孫悟空の如意棒のような武器を振りかざすクーフェに・・・


「おうよッ!! 重たいもの持つんなら俺たちだア!」


「力仕事は任せろォ!!」


グレン団の豪徳寺と達也も現れた。


「白き翼に・・・グレン団!?」


「嬢ちゃんたち、坊主を運ぶのは俺らに任せろ!」


「美空ちゃんやパルちゃんたちとは既に手筈は整えている!」


瓦礫に埋もれながら、現れた者たちに唇をかみ締めるクルト。


「おのれ、グレン団!? 君たちまで再び罪を重ねるのか!? これもシモン君の仕業か!?」


「へっ、リーダーじゃねえよ。成り行きでも、自分たちの意思だ!」


「そうアル! 白き翼とグレン団の最強タッグチームアル!!」


威風堂々と正面に立つ白き翼とグレン団の熱風。この熱い風の前にクルトは僅かに尻込みした。

その僅かな隙に・・・・





「新たな風に圧倒されているね、クルト」





「ッ、お前は!?」





今度は、ネギたちでも予想外の方向から攻撃が飛んできた。古のアーティファクトの威力に決して劣らぬ衝撃がクルトを襲い、彼を再び激しく部屋の壁に打ち付けた。


「あ、・・・・おおおおおッ!! あんたは!」


「やあ、君たちも無事で何よりだ。そしてネギ君、心の強さを見られて満足だよ」


涼しい顔で新たな援軍として現れたのは、グレン団と共にこの世界にネギたちを助けるためにやってきた・・・・



「タカミチーーーッ!!」



「「「「高畑先生!!」」」」



「・・・・タカミチィッ!?」



頼もしき援軍。立ちはだかる旧友。反応はそれぞれだが、ネギたちにとってこの再会は大きな安心感をもたらした。

そしてこれを合図に、これまで不動だった者たちがついに動き出す。


「よっしゃあ、ネギ君は勧誘を拒否! それじゃあ私たちも行きますか!」


「では行きましょう! 美空、ココネ、それに皆さんもいいですね?」


「ン!」


「やるっきゃないでしょ!!」


さあ、考えるのはいったんヤメだ。

とにかく今は戦闘準備開始だ。クルトとの交渉が決裂したことにより、間もなく自分たちはメガロメセンブリアの兵士たちに身柄を拘束されるだろう。

しかし、誰もがそのことについてネギに文句など無い。むしろ望むところだといった瞳で、各々が身構えていた。


「ぐっ、・・・・なんてバカなことを・・・・・・」


「どうしたクルト、思い通りにいかないからこそ人生だよ」


「黙れ、タカミチ!!」


「ネギ君、のどか君たちも、薫君たちも、ここは僕に任せたまえ。彼は顔見知りだ。心配ない!!」


当初はクルトのペースだったはず。

少なくとも初めてネギたちと対面したときは、自分の思い通りの反応をネギたちは見せ、いかに腕利きとはいえ組みやすいとさえ思っていた。

だが今はどうだ? 何一つ思い通りにならずに、むしろ開き直った彼らは活き活きとしている。もはやいつの間にか完全に彼らのペースだった。


「クルト・ゲーテルさん!! 最後に一つ教えてください!!」


「?」


「さっきクルトさんが言っていたこの世界の全ての人を救えない理由・・・・この世界の謎の最後のピースを教えてください!!」


「――――――ッ!?」


もう誰にも止められはしない。

グレン団たちがそうだったように、やるべきことを決めた白き翼たちの行く手は阻めない。いかにクルトが紅き翼のメンバーだったとはいえ、一人でこの二大勢力のタッグを止められることは出来なかった。

アーティファクト「いどのえにっき」でクルトの心の中の解答を記録して、のどかが本をパタンと閉じた。


「OKです!!」


「うおおお、やるじゃねえか嬢ちゃん!!」


「さあ、ズラかれェッ!!」


真実を記録して、彼らは飛び出した。


だが、それでも彼らはここで忘れてはいけないことがある。


彼らはまだ「知った」だけに過ぎない。「知った」だけではまだクルトやフェイトたちと並べない。


彼らがこの場で「知った」世界の謎。そこからどのように彼らが彼らなりの答えを導き出すのかが、真の勝敗を決し、そして世界の運命を左右させるのである。


そのことには、まだ気づいてはいなかった。




「居たぞ、白き翼共!!」




さあ、どちらにしろパーティーの華やかな舞台も終わり、ようやく暑苦しい戦闘開始だ。

クルトが報告したのか、既に大勢の武装した兵士たちがゾロゾロと現われ、外で待機していたアスナたちを取り囲み始めた。

メガロメセンブリアの重装備をした兵士たちが、まるで戦争をするかのような闘志を秘めた空気を放っている。

その数は約100を超える。


「来ちゃったわね~~」


「ちょっ、おもいっきり囲まれちゃってるじゃない!?」


「非戦闘員は下がってください、お嬢様も!」


「アスナ殿、刹那、それに美空殿やシャークティ先生もよろしいでござるな!」


「よろし過ぎ!!」


「気をつけてくださいね。相手はプロです」


「まあ、ようやく退屈しなくて済みそうやな。夏美姉ちゃんたちは下がっとき」


「いくよ、エンキ!」


「・・・・戦闘開始・・・・」


「山チャンサン、ポチサン、油断禁物デス」


「同じく」


気迫を放って自分たちを取り囲む軍勢を前に、アスナたちも武器を構えて交戦の準備を整える。

外で待機組みのアスナ、刹那、楓、シャークティ、美空、小太郎、慶一、ポチ、エンキ、茶々丸、まあ・・・相手も多いが・・・とにかく十分すぎる戦力だった。

しかし・・・


「先手は任せろ」


「僕たちが先に道を作ろう!!」


「ま、待ちなさい!? 達也さん、ポチさん!?」


シャークティの制止を振り切って、男として少女たちより先に動いたのは、達也とポチ。激戦を乗り越えたことが彼らの中の自信となり、彼らを突き動かした。


だが、それでもこの状況、そう簡単に乗り越えられるほど容易くは無かった。


相手もそれなりの屈強。中には相当面倒な相手も居る。


何よりも・・・・




「叩きのめせェェェーーーーーッ!!!!」




「「「「「「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」」」」」」」」」」




「「「「「「「「「「――――ッ!?」」」」」」」」」」




この尋常でないほどの兵士たちの士気はただ事ではなかった。


「ッ・・・グハッ!?」


「ッ!?」


その荒ぶる屈強な壁は達也とポチを簡単にはじき返し・・・さらに・・・


「なっ、たっちゃん!? ポチっち!?」


「ちょっ!?」


向かって来た達也とポチをはじき返した兵士たちは、そのまま大勢で二人を取り囲み、その拳で、足で、容赦なく袋叩きにした。


「なっ、ちょっ・・・ちょっと!?」


「なっ・・・・なにやっとんねん、コラァ!!」


あまりにも容赦ない、いや、やりすぎな攻撃。

まるで二人を本気で殺す気で痛めつけている兵士たちに、少女たちは顔を青褪めさせ、そして小太郎の堪忍袋を切れさせた。



「空牙連弾!! 二人を放せや!!」



激昂して兵士たちに気弾を放出する小太郎。襲い掛かる攻撃に兵士たちも手を止めるが、その前に数人の別の兵士たちが立ちはだかり、呪文を詠唱する。



「「「「「風花旋風 風牢壁(フランス・カルカル・ウェンティ・ウェルテンティス)」」」」」



兵士数人がかりで作り出した竜巻の防壁。その壁はいかに小太郎といえども、容易に破ることは出来なかった。


「ちっ、・・・だが・・・美空の姉ちゃん、頼んだで!」


小太郎の攻撃は不発。だが、それでも注意はこちらに引くことが出来た。


「まかせてッ!!」


「ん、こ・・・この娘、いつの間に!?」


「は、速い!?」


「二人は返してもらうよ!!」


一瞬さえあれば、誰よりも早く立ち直り、誰よりも速く駆ける少女が二人を救出することができる。

美空が目にも止まらぬそのスピードをもって、兵士たちの中に飛び込み、二人を取り戻した。


「たっちゃん! ポチッち! しっかり!!」


「かっ・・・かはっ・・・・」


「な、なんて酷い・・・・お嬢様!」


「う、うん!!」


小太郎の攻撃に兵士たちの気が逸れているうちに一瞬で美空は兵士たちから二人を救出した。だが、救出された二人は惨く、顔は腫れ、何箇所か骨折もしている。

あまりにも痛々しい姿だが、木乃香がいち早く二人に治癒呪文を掛けることにより、二人は命に別状は無い。

だが、この兵士たちのあまりにも容赦ない攻撃は、刹那や楓たちだけならまだしも、亜子やアキラたちのような少女たちの心を折るのには十分な効果だった。



「こ・・・こんの・・・ちょっとあんた達! いくら何でもやりすぎでしょ! 殺す気!?」



剣を力強く握り、明らかにやりすぎだとアスナが兵士たちに怒鳴りつける。だが、その言葉が届くことは無い。

集った100人ほどのメガロメセンブリアの兵士たち。その中の一人の隊長らしき男が前へ出た。

その者は全員と同じ、鉄の甲冑、仮面で全身を覆い、巨大な大剣を掲げ、しかし一人だけ見分けが付くように白いマントが黒い甲冑に装着されていた。



「・・・・もう・・・・」



「えっ?」



「もう・・・うんざりだ」



その男はゆっくりと前へ出て仮面を外し、その表情を露にした。

一般人なら腰が引けるくらいの強面で貫禄のある中年の男の表情には、これ異常ないほどの怒りの感情が表に出ていた。



「もう、うんざりだ。冒険王、黒い猟犬に続いてこれ以上のバカ騒ぎは。平和を満喫するものたちは、みなもう我慢の限界なのだ」



文句を言ったアスナに、そして自分たちを睨む白き翼、グレン団の全員に向けて、男はドスの利いた声で告げる。



「総督は捕らえよと命じられただけだが、ただでは捕らえん。二度とこんなバカなことをさせないために徹底的にやる。多少の行き過ぎも覚悟のうえだ。いや、例え死なせてしまったとしても今後のテロリストや賞金首どもの見せしめに使える」



決して冗談などではなかった。

完全に堪忍袋が切れた男が、例え見た目がまだ子供の少女たちだろうと、本気の怒りを露にしていた。

この男はこの平和の式典が始まってからも、瀬田たちと、そしてチコ☆タンたちの逮捕のときにも働いていた。

20周年という世界で最も大事な平和を祝う式典。それを乱す無法者たちが調子に乗って大暴れすることに、もはや我慢の限界を超えていた。

それをアスナたちが知る由もない。

だが、現在賞金首として手配され、そして総督の命が下っている以上、アスナたちが犯罪者であるということに揺るぎはない。

ゆえに、男たちの溜まりに溜まった怒りと正義の鉄槌が、皮肉にも今正に振り下ろされるのだった。




「メガロメセンブリア・重装魔導装甲兵・ドウカツ隊全100名に告ぐ!! 責任は私が取る! いや、我々に責を問うものなどは居ない! 容赦なくやれ! このバカ共に国家の力を思い知らせてやれェーーーーーーーッ!!!!」




「「「「「「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」」」」」」」」」」




「貴様ら大人しくしろォ!!」




「いつぞやの借りを返すぞ貴様らァ!!」




来る。



「ちっ、こいつら~。夏美姉ちゃんたちは下がっとき!!」



「美空、ココネ、気をつけなさい。もはや何も言い訳が出来ない・・・・後戻りが出来ないとはこのことです。・・・私が付いていながら・・・」



「この士気・・・・容易に潜り抜けることは出来ないでござるな」



「だが、殺すわけにはいかない。お嬢様・・・私たちからもっと離れておいてください」



国家の怒りがアスナたちを飲み込んでいく。


「へっ、こんなことがあろうかと準備しておいた・・・・パル様号、カモン!!」


「あっ!?」


「むっ、敵艦かッ!?」


ハルナが指をパチンと鳴らしたのが合図となり、バルコニーの下からパルの所有する白き翼の船が出現した。

この敵機の出現に、100名の兵士たちの足が一瞬止まった。その隙に、パル様号で既に待機していたメンバーのさよが、魔砲弾を転送したマシンガンを構えていた。


「さよちゃん、頼んだァ!!」


「任せてください!」


「なっ、なんだあの武器は!?」


「き、気をつけろ! 何か撃ってくるぞ!」


この世界にとっては知られていないマシンガンという名の武器は、十分な火力を備えた魔砲弾を放ち、一瞬にしてバルコニーに数多の閃光を撒き散らせて兵士たちを混乱させる。


「こ、このガキ共が~!!」


「さあ、今だよ、皆乗って!!」


「に、逃げるぞ! 怯むなァ! 殺しても構わん! 奴らを逃がすなァ!!」


100人の兵士を引き連れるドウカツは、煙と閃光が湧き上がるバルコニーでもただ一人怯まず、兵士たちを鼓舞する。

するとその声に気を取り直した兵士たち、そして意外と、さよの放つマシンガンの殺傷能力がそれほど高くないと気づき、多少の怪我を覚悟し向かってくる。


「み、みなさん早くしてくださ~い!」


「くっそ~、流石にちょっとした脅しにしかならないか~。高かったのに~」


さよとハルナが急いで全員に逃げるように諭すが、そう簡単にはいかない。

敵が向かってくるほうが早いからだ。


「く~~、裕奈たち、早くパル様号に乗って!!」


「ここは我々が食い止めます!!」


「へっ、相手になるで~、メガロメセンブリア!!」


迎え撃つのは、アスナ、小太郎、刹那、楓、シャークティ、美空、ココネ、エンキ、茶々丸という実戦で戦えるものたちだけだ。更にこちらは戦えないクラスメートや怪我人も抱えている。

対して、怒りと闘志を前面に押し出した100人の武装した兵士たち。

いかにアスナたちが密度の濃い困難を乗り越えてきたとはいえ、この戦局を乗り切るのは中々厳しいものであった。


「ちょっ、意外とこいつら強いわよ!?」


「雑魚や思って油断し取ったわ! 結構鍛えられとる! オマケに気合十分やし厄介やで! 数も多い!」


何よりも守りながらの戦いは、ある意味ハンデを抱えているようなものだ。しかも相手が容赦なく殺気をむき出しにして果敢に襲い掛かってくるのだ。負けることがなくとも、手強い相手であることには変わりない。


「くっ、こうなったら大技で決めるでござる・・・・」


「ああ」


「せやな!」


「楓忍法・・・」


「神鳴流奥義・・・」


「我流犬上流・・・」


多少相手を傷つけることになったとしても、この危機を乗り越えられねば意味がない。そう判断した楓、刹那、小太郎の三人は襲い掛かる兵士たちに向けて、それぞれの大技を放つ。

だが・・・


「ドウカツ隊、防護陣形!!」


「「「「「「「「「「了解ッ!!」」」」」」」」」」


ドウカツの指示に従い即座に兵たちの隊形が変わり、先ほどまで後方に居た部隊が前へズラーッと10人ほど並び、呪文の詠唱を始めた。



「縛鎖爆炎陣!!」



「百花繚乱!!」



「怒涛空牙!!」



激しい爆音を立てて放たれる楓たちの奥義。



「「「「「「「「「「風花・風障壁×10!!」」」」」」」」」」



しかし迎えるのは強固を誇る呪文の合わせ技。頭に血が上って闘志をむき出しにしている一方で、相手の攻撃に対して咄嗟に連携を整えて迎え撃つ冷静さと連係。

見事に統率されたメガロメセンブリアの部隊に、楓たちの技が完全に防がれていた。


「くっ、これは厄介でござるな」


「つ・・・強い!?」


シモンと再会したとき、これよりも多い人数と戦った経験があるシャークティにとっては、この事態に驚きを隠せない。

だが、その瞬間あることに気づいた。


(そうか、あの時はメガロメセンブリアだけでなく帝国やアリアドネーの兵士も多数居すぎたために統率も連携もなされていなかったのですね。つまり軍の連携や策を練れる今の彼らが一番手強い!)


そう、力で敵わぬ相手に人は武器を使う。強きものを倒すために人は策を使う。効率よく倒すために策を練り、味方と連携をとる。

たかが一部隊100人とはいえ、むしろ普段から共に行動しているもの同士、意思疎通や命令系統の伝達なども的確に行え、チームワークも使える今の敵こそ最も恐ろしいのである。


「い、痛いッ!?」


「やっ、やだっ、離してッ!? 助けてッ!?」


「なっ、亜子殿!? 裕奈殿!?」


「きゃああッ!?」


「捕まえたぞ、大人しくしろッ!」


「監獄に叩き込んでやる!!」


そして、相手に感心している暇などない。自分たちは追い詰められているのである。

アスナたちが相手に手を焼いている間に、亜子や裕奈たちのように戦えない少女たちが乱暴に取り押さえられていく。



「亜子ッ!? まき絵!? 裕奈!? ちょっ、離しなさいよ! 乱暴にするんじゃないわよ! その子達は戦えないのよッ!? 男のクセに恥ずかしくないのッ!?」



「くっ、いつの間に!?」



「美空! 正面は任せなさい! 急いで彼女たちを!」



「んの~、姉ちゃんたちを離せや! 卑怯やで!!」



ただ正面から戦うだけではない。

自分たちを取り囲み、更には明らかに戦うことの出来ない少女たちを取り押さえる兵士たちに、アスナや小太郎たちが激昂して叫ぶ。

だが、その言葉に対してドウカツは鼻で笑った。



「ふっ、戦えない? 男のクセに? 卑怯者? ・・・・」



そして僅かな間を置いて顔を上げ、この総督府全体に響き渡るような怒号を上げた。




「このクズ共がーーーーッ!! ふざけたことをぬかすなーーーーッ!! 散々好き勝手してきた無法者共が今になって被害者ヅラして、常識に訴えかけるのかーーーーッ!! そんなムシのいい話がまかり通るかーーーーーッ!! 平和を乱す醜悪なクズ共め! 貴様らにはこの場で判決を下してやる!! 全員死刑だァァーーーッ!! 総督やリカード元老院議員がゴチャゴチャ言おうと、この現場の全責任は私が持つ!! 貴様ら今すぐ死ねーーーッ!!」




響き渡るその声、その想い、言葉は乱暴だが、この男の信念が滲み出ていた。




「大戦が終わった後も多くの小競り合いや紛争、テロリストたちが多く世界を騒がせていた!! しかしそれでも20回目の祭典を迎えられたのは、影で、戦場で、現場で日夜努力し、戦い、世界を守ってきたものたちが居たからだ! 多くの友が殉職しようとも、恐れず命を賭けて我々は戦ってきた! そうやって積み重ねてきた世界を崩す悪党どもよ! 今すぐ死ねええッ!! 子供だから? 女だから? ふざけるのも大概にしろーーーーッ!!」




無法者には理不尽を持って対処する。それがこの男のやり方なのだろうか。

だが、感情的であり、あまりにもやり過ぎだと人から非難されようとも、彼もまた彼の背負って来たものや失って来たものがある故の行動なのかもしれない。


「んなろッ! そもそも賞金首になったんは無実やってのに! あんのオッサン、どついたるで!!」


「落ち着くでござる小太郎! 無理やり突っ込んでもこの陣形は崩せぬでござる!! それにお主が離れたら誰が夏美殿を守る!」


「で、でも楓ちゃん。このままにしてたらどんどん敵が来ちゃうわよ!?」


「ああ~~もう、兄貴は何やってんのさーーーーッ!?」


正義を武器に狂気と化す兵士たち。その荒ぶる男たちの咆哮は、皮肉にもアスナたちを飲み込もうとしている。

一対一の攻防ならアスナたちの方が上だろう。しかし軍として統率された連携の前に、徐々にその勢いに押しこまれていく。


「くっそ~・・・冗談じゃないわよ! こんなところで捕まってらんないわよ!」


「言い訳はせえへんが、俺らも退けんのや! せやからここは通させてもらう! 仲間にも手は出させへん!!」


「戯言ぬかすな、カスどもめーーーッ!! 数で押し込め!! 倒れた仲間の屍を踏み越えていけ!!」


互いに引けぬ理由がある。

正しいのか、間違っているのかではない、とにかく戦うしかないのである。

ここで大人しく降伏することも、ここで相手を見逃すことも出来ない。




お互いに引けない以上、この戦いは終わらない・・・・・・かに見えた。




この時はまだ誰一人として気づいていない。



間もなくオスティア総督府を包む巨大な魔物の影が、全てを消し去らんとしているのだった。




「ほう、あれがテルティウムの言っていた件の連中か・・・・なるほど、・・・・噂通り騒がしいな。久々に昔の血が騒ぐと言ったところか・・・・」




そしてその巨大な影の側にいるローブに身を包んだ男。この男がこの影を操っているのだろう。

底知れぬ不気味さを漂わせ・・・・・




「では・・・始めよう」




その巨大な影の拳を今正に戦闘を繰り広げているアスナたちの居る広場に叩き下ろしたのだった。




「「「「「「「「「――――――!?」」」」」」」」」」




「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」




敵も味方もない。


無常な拳に息つく暇も無く彼らは飲み込まれた。


夢なら覚めてくれ。間もなく、多くのものがそう嘆くことになる。だが悲しいかな、これから起こることは全てが現実である。


純粋な心を持ち、若さと希望に満ち溢れて輝く白き翼や新生大グレン団たち。しかし今日この日、彼らの心に悲劇が襲い掛かる。


夢と現実の葛藤。しかし、今日彼らの心に襲う痛みは、紛れも無く真実なのである。
最終更新:2011年05月13日 21:01
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