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112-2

勇ましく戦う男たちに突き動かされ、この窮地に助っ人として高音と愛衣。そして会場に居たエミリィや夕映たちも参戦した。


「高音さーん! 夕映ちゃんにメイちゃんも、助けに来たわよーーー!」


「か、神楽坂さん!?」


「私とココネにシスターシャークティも居るっすよ!」


「なっ!? あの女たちは先ほどの!? 貴殿らの知り合いか!?」


心突き動かされ、そして自分たちのやるべきことをやるために少女たちも武器を取り動き出した。


「おじさんたち、今はその話は後にして!」


「ふざけるなァ! そもそも、貴様らが・・・・」


「守りたいものがあるのは同じです! 今はこの危機を何とかしましょう!」


「ぬ、ぬう・・・・」


風向きがほんの少しだけ変わってきた気がした。


先ほどまでは脅威の風に押されっぱなしだったが、この時になりようやく風向きが少しだけ自分たちに向いてきた。



「まったく、頭が固い連中に、相変わらず勇ましい連中なことだ」



「「「「えっ?」」」」



その風が告げていた。今こそ反撃せよと。


「だが、嫌いじゃない。ボランティアとまでは行かないが、私もこの勢いに乗せてもらおう」


「アーーーーーッ!?」


「あんたはッ!?」


「龍宮さん!?」


タカミチと、そしてシャークティたちグレン団とともにこの世界へ援軍に来た龍宮。そう、タカミチもこの総督府に居たのだ。彼女も居てもおかしくない。

正に絶好のタイミングで彼女は現われ、その頼もしき姿にアスナたちにも笑顔が戻ってくる。


「よっしゃァ! 敵の敵は味方! こいつらぶっとばすわよ!!」


「なっ、貴様ら勝手に!? ふざけたことを・・・」


「ほら来るぞ。文句を言ってる間に誰かが消されても知らんぞ?」


頼もしい援軍を得て、反撃開始ののろしが上がった。


例え敵同士だったとはいえ、この士気ならいけると、声に出さずとも心の中で誰もが思っていた。


そう、なんとかなると・・・


この時はまだ思うことが出来ていたのだ・・・


だがそれも・・・


ただの勘違いだと直ぐに気づくことになる。


だがそれでも、彼らは足掻くのだ。



例え、その身が滅ぶことになろうとも・・・・



「ネギ君・・・」



「これは・・・・・・これが・・・この世界の・・・真実・・・」



巨大な怪物の出現により、総督府が破壊されネギたちも混乱の中に居た。

その際、のどかとはぐれてしまったが、のどかは自分たちの目の前で彼女とこの世界で旅していたグレイグたちトレジャーハンターに助けられ、難を逃れていた。

のどかも心配だが、彼女は大丈夫だろう。

だから今はそれどころではないのである。

いや、確かにそれも大事だが、今のネギの頭には目の前にある衝撃の真実で一杯だった。

フルフルと震えるネギの手には、のどかが残したアーティファクト「いどの絵日記」がある。

クルトの隠していた真実が全てそこに記されているのである。


「おい坊主・・・・これ・・・・どういう意味なんだよ?」


「えっ? えっと・・・要するにさっき、のどかちゃんがメガネ総督に質問した内容の答えがここに書いてあるんだろ? ってことはこれは・・・ここに書いてることは・・・」


闇の魔法の反動により、体が思うように動かぬネギを支えながら、豪徳寺と達也もネギの手の中にある「いどの絵日記」を覗き込んで、顔が引きつっていた。

いつもの威勢がまったく無いのである。


「これが・・・クルトさんの前に立ちふさがった絶望・・・・・・」


そう、かつて紅き翼の仲間でもあったクルトですらあきらめた絶望の正体をようやく知り、彼らはこの事態の中でもしばらく動けず、何度も何度も文章を読み直していた。

だが答えは変わらない。

そしてその答えが嘘偽りの無いことを・・・・


「「「「「ッ!?」」」」」


突如上空に走った閃光と空間の亀裂が証明した。

突然のことに思わず空を見上げると、空間が割れ、割れた空間から見知った男が飛ばされてきた。


「・・・えっ?」


激しく吹き飛ばされたその男、それはネギたちの良く知る人物だった。


「ラ、・・・ラカンさん・・・・」


「よお・・・ぼーず・・・最後にお前に会えてよかったぜ」


「えっ?」


タキシードがボロボロになり、呼吸も疲労で激しい。

そして何よりどんな時でも圧倒的存在感を醸し出していたはずのラカンが、今目の前に居るはずなのに存在が薄く感じてしまう。

何がなんだか分からず、ネギが声をかけようとした瞬間・・・・



「こんな所に出てしまったか・・・・ジャック・ラカン、ここに空間を開いたのは、あなたの意志なのか?」



空間の亀裂からラカンとともにもう一人現われた。

無表情で、冷たい瞳をしたその男。ラカンに対してこちらは無傷に見える。

身長こそ自分の知っている男とは違うが、間違いない。



「フェイト!?」



そしてフェイトの側には、現在総督府内で暴れている傀儡たちと同じ鍵の形をした杖があった。


「どいてな、ぼーずども!!」


「ラカンさん!?」


「千の顔を持つ英雄(ホ・ヘーロース・メタ・キーリオーン・プロソーポーン)!!」


現われたフェイトに対して、ラカンがネギたちの前に立ち、フェイトに向けて無数の刃を投げつける。

一本一本が相当の破壊力を秘めている刃だ。

しかしその刃はフェイトに届くことは無い。


「無駄だ」


その刃は見えない何かに阻まれ、伝説を誇るラカンの武器が、まるでバターのように溶けて全て消滅してしまった。


「なっ!? どういうことだよ!?」


「おっさんの攻撃が!?」


世界最強、無敵を誇るラカンの攻撃が、フェイトの前に無力と化す。



「斬艦剣!!」



それでもラカンは攻撃の手をやめない。

ミサイルやバズーカ砲を上回る威力を誇る攻撃をフェイトに向けて放つ。

だが、その全てがフェイトの前には何も無かったかのように消えていく。


「無意味だよジャック・ラカン、全てを知って何故向かってくるんだい?」


「ラカンさん!?」


「おっさん!」


「下がってな若造共!!」


こんな光景誰が予想できたか。

あのラカンだ。

誰もが口をそろえて最強だ、無敵だ、バグキャラだと呼ぶほどのこの男が、一人の男の前に手も足も出ないのだ。

天才少年も白き翼もグレン団も無い。

ラカンを知るものにとっては信じられない光景が目の前に広がっていた。


「やれやれ無様だね。無意味なことに足掻くのがそんなに良いのかい?」


そして手も足も出ずとも足掻くラカンを涼しい目で見つめながら、フェイトは告げる。


「アン?」


「例え世界が明日滅ぼうとも、足掻くのがヒト・・・君はそう言ったね。でも何故そう思えるんだい? 今の君と僕の間には神と人ほどの力の差があり・・・さらに力の差以前に・・・・この世界の無慈悲な真実を知っている君が、・・・ましてや・・・ヒトではない君が何故足掻く?」


「「「「「!?」」」」」


「無意味だと、何故気づかない?」


フェイトの言葉・・・何も知らないものたちになら、何を言っているのか分からない言葉だろう。

だが、ネギたちは理解してしまった。


(世界の無慈悲な真実・・・・ヒトではない・・・)


(なってこった・・・それじゃ・・・やっぱ・・・・マジかよ・・・・・どーすんだよ、先生)


そしてそのフェイトの言葉が、自分たちが知った真実が偽りの無いことだと理解してしまった。

フェイトの言葉に動揺する千雨たち。

だが、逆に・・・・



「へっ・・・・何故・・・ねえ・・・・」



言われたラカンは飄々と、どこ吹く風で聞き流していた。

そして、このような状況で、強がりでもない、心のそこからの笑みをフェイトに向けた。



「簡単だ、俺にも心があるからだよ!!」



「ッ!?」



―――人間は確かにちっぽけです。でも、そのちっぽけな人間には大きな大きな心がある。彼らは人形じゃない!



ラカンの言葉で、フェイトの頭の中に映画で見たニアの言葉が過ぎった。

人形師に逆らう人形。

心を持っていれば人形ではない・・・



「なら、その心ごと、真実の前に消え去るがいい、幻よ」



「けっ、真実? 意味? そんなもん、俺の生にゃあ関係ねえのさ!!」



ラカンの言葉に、冷静なはずのフェイトが、らしくないほど、気持ちを発散するかのように数多の攻撃を放つ。

まるでイラついているかのように、ラカンの存在そのものを消し去らんと、脅威を振り撒いた。



「ラカンさんッ!?」



まるで悲鳴のような叫び。


ネギだけではない、豪徳寺も達也も千雨も古菲も叫ぶ。


だが、真実はあまりにも残酷に・・・


容赦なく・・・


全てのものを無に帰す。






「エマはん!?」



「くっ、だ・・・大丈夫だ。これしき・・・」



扉を背に、追い詰められたエマと木乃香。


エマは懸命に剣と魔法を武器に応戦するが、何一つ現われた傀儡に通用しない。


それどころか敵の放った攻撃は、痛みも何も感じさせずに着弾したエマの腕を塵のようにかき消してしまったのだ。


「エ、エマはん、手が!?」


「くっ、・・・どういうことだ・・・痛みがまるでない。まるで最初からなかったかのように・・・」


「エ、エマはん、ここは逃げるんや! ウチならその手を治せるかもしれん。せやけど、今は直ぐに逃げなアカン!」


木乃香はわけも分からず涙を流しながら悲鳴にも似た声を叫ぶ。


エマはそれでも必死に足掻こうとするが、攻撃が効かない以上成す術が無い。


(くっ、どういうことだ? 私の力が通じない・・・いや・・・届かない)


足掻きに足掻いた結果、魔力も体力も尽きかけ、万事休すの死地に追い込まれたのだ。


(木乃香の言うとおり、ここは引くのが正解かもしれん。・・・・だが・・・)


だが、それでも逃げるという選択肢を中々選ぶことが出来ない。


(こいつらは空間を転移して現われた。ならば逃げても直ぐに追いつかれるかもしれん・・・)


エマは目の前に存在する幾多の傀儡たちを睨みつけ、そして後ろに居る木乃香を交互に見てこの状況で出来ることを模索する。


(やはりここでこいつらを止めるしかない。・・・しかし・・・それは・・・・)


だが、何も思い浮かばない。

敵の能力や性質を考えると、仮に逃げたとしても直ぐに追いつかれる。

それどころか他の者たちをも巻き添えにしてしまうかもしれないのだ。

それだけは絶対に出来なかった。

ならばどうする?

するとその時、一人の男の顔が不本意ながらエマの頭の中に浮かんだ。


(シモン・・・あの馬鹿者なら・・・この状況でどうするだろうか? ・・・って、何を考えているのだ私は)


エマはシモンが大嫌いだ。

だからこそ、こんな状況で考えたくも無い男のことを考えてしまい、思わずエマは笑ってしまった。

そして直ぐに首を振った。


「バカな・・・あいつはあいつだ・・・・そして私は私・・・・何を血迷っているのだろうな・・・・私は・・・」


「・・・・エマはん?」


その表情には、どこかスッキリとした様子が滲み出ていた。

この状況で一体どうしたのかと木乃香も涙を流しながらも思わず首を傾げた。

するとエマは、そんな木乃香に一度だけ振り向いて微笑み、そして直ぐに顔を前へ向けた。

そして・・・



「・・・私が・・・目指し、欲したもの・・・それは・・・団長や将軍などのような、ただの階級でも権力でもない」



「・・・・えっ?」



涙を流しながら木乃香はポカンとしながら顔を上げた。

エマはなんと、片腕が捥がれているにも関わらず、そんなことをまったく気にせず、小さく微笑みながら呟き始めた。



「数ある死地を乗り越え・・・・多くの者を救った者にだけその功績を称えられ・・・賞賛され・・・人から呼ばれることが出来る」



「エマ・・・はん?」



エマは続ける。


木乃香に向かって言っているのか、立ちはだかる傀儡たちに言っているのか、それとも自分自身に言っているのかは分からない。



「その称号を目指すものは数多く、しかしその称号を得ることが出来るのはほんの一握り。そして得たとしてもそこでゴールではない。だからこそその称号を得たものは、先人たちがこれまで築き上げてきた称号の誇りを守り、そして後から続くものたちの希望として存在し続けなければならない・・・・・」



だが、その言葉はこの状況下だというのに一言一句逃さず木乃香の頭に、そして心に響く。



「・・・ゆえに・・・その栄誉は重く、・・・誇り高く・・・眩しく光り輝く」



だが、逃げねばならない。状況は最悪のままなのだから。



「だからこそ・・・・その称号を得たならば・・・」



「エマはん、行かなアカン! 何でか知らんけど魔法は効かんのやから!」



「最後まで誇りを胸に戦わねばならぬのだ!!」



木乃香は涙を流しながら、エマの服を引っ張る。


しかしエマは決してこちらを振り返らず、背後に迫る傀儡たちへ構えていた。


片腕を失い、魔力も消費し、その手にある装剣も通用しない。


だが、それでもその瞳には恐れなど無く、彼女は木乃香を守るように傀儡たちの前に立ちはだかった。


そして・・・



「行け!!」



服を引っ張って逃げるように諭す木乃香を扉の奥へ突き飛ばし、エマはその扉を硬く閉ざした。



「エマはん!?」



突き飛ばされた木乃香は慌てて立ち上がり、閉ざされた扉を強く、そして何度も叩く。



「何で・・・何でなん! エマはん、ウチのこと嫌いやったんやないの!? 何でウチを逃がすために!? エマはん、ここ開けて!! 一緒に逃げるんや!」



自分は本来彼女に逮捕されるはずの人間だ。少なくとも彼女が命を賭してまで守るに値するものではないはずである。


にもかかわらず、エマは木乃香を守る。


その体がどれだけ傷つこうとも、傀儡たちをこれ以上先へは行かせない。



「ふん、逃げるわけに行くか。直ぐに追いつかれる。ならば、ここで私がこいつらを食い止める」



「どうして・・・・・うう・・・・どうしてッ!? どうしてそんなんなってまで!?」



「どうして? くだらないな、決まっているだろう? 私がその称号を得た者だからだ・・・・そう・・・私が・・・」 



すると扉の向こうから鼻で笑ったようなエマの声が聞こえた。


そして彼女は、一切の陰りの無い自信に満ち溢れた声で、扉越しに居る木乃香に向かって叫んだ。





「私が、偉大なる魔法使い(マギステル・マギ)だからだ!!」





「―――ッ!?」





この世界に来て、木乃香は自分の歩むべき道と向き合いそして考えてきた。


将来の進むべき道、愛しき男への想い、そして世界のために戦った多くの魔法使いたち。


そんな者たちのことを考え、彼女が導き出した将来の進むべき道、それはネギと同じ立派な魔法使い(マギステル・マギ)だった。



「行け、木乃香よ。下を向くな。悔しくば知恵を付けろ。力を付けろ。想いを育め。そして多くの仲間たちと共に多くの者を救い、いつの日か・・・・この称号まで駆け上がって来い!!」



足手まとい・・・・


何も出来ない無力な自分が悔しかった。


だが、ここで腐ってどうするのか? いかに魔力があっても戦闘能力の無い自分がこの扉を蹴破って何が出来る?


命を賭けて道を作り、そして塞いでくれているエマに対して何と応える。


今の自分に出来ることは何だ?



「・・・エマ・・・はん・・・」



「お前が駆け上がるまで、私は死なん!」



エマの想いに応えるためにも、少しでも早く仲間の下へ駆けつけるしかない。


そして、多くの仲間と共に、エマを、国を、そしてこの世界を救うために駆けるしかない。


悔しさで自分の唇を血がにじみ出るほどかみ締め、木乃香は涙を流しながら走った。


扉の向こうで木乃香が走り出した足音が聞こえたエマは、小さく笑い、上を向いた。



「そうだ、それでいい」



そして携えた剣を傀儡たちに向け、残りの魔力を振り絞り、強く威嚇するかのように全身から光を放った。



「ふっ・・・久しぶりに言ったな・・・・。今まで正義や掟、誇りなどを数多く口にしてきたが・・・称号を・・・夢を口にしたのは・・・何年ぶりだろうな・・・・・・ふふ、本当はまだ偉大なる魔法使い(マギステル・マギ)の称号を貰っていないのだがな・・・・ふふふふふ」



この状況下だというのに、自分自身に対して自然と笑みが零れた。

その笑みはとても儚く・・・しかし・・・



「シモン・・・・貴様は私の手で捕らえてやりたかったが・・・・・幸運な奴め。私が捕まえに行かないからといって、調子に乗ってあまり世界を困らせるなよな」



人にも自分にも厳しく、常に戦乙女たちの模範として生きてきた鉄のように真面目な女が見せた初めての心からの笑みだったのかもしれない。



「木乃香よ・・・シモンの首根っこは・・・お前がしっかりと掴んでおけよ」



そして彼女は雄叫びを上げた。

襲い掛かる傀儡たちに少しも怯むことなく立ち向かって行った。



「さあ来い、木偶人形共! この道はそう簡単には通さんぞ!! 私を・・・・私を誰だと思っているッ!!」



放たれる巨大な閃光はまるでオーロラのように鮮やかな輝き。


まるでその者の生き様を見せるかのような眩しい魂の輝きだった。


だが、その光はたった一度の強烈な光を放っただけで、直ぐに消えた。


その変化は逃げ出した木乃香も理解した。



「うう・・・エマはん・・・エマはん・・・」



だが、今は振り返らず。涙を流しながらでも、エマの思いを無駄にしないために、ひたすら走った。



「うっ・・・わあああああああああああん!! エマはーーーん!!」









少しでも安全なところへ。


だが、この世界の危機という状況で、一体何処に安全な場所があるというのか。


そんなことは分かっている。


どこまで逃げても追っ手が追いかけ、いずれは追い詰められていく。例え広大な総督府の敷地内のどこへ行こうとも安全な場所など無かった。


(くそ・・・このままじゃ追いつかれるぜ)


トサカはこれまでの人生、強敵に正面から堂々とぶつかっていったことなど滅多に無い。

だが、それゆえに彼は人より危機回避能力が少し長けていた。

だからこそこの状況でも活路を見出そうと必死だった。

だが、それでも絶望は変わらない。


(畜生・・・数が多すぎるぜ・・・俺一人だけなら何とか抜け出せるかもしれないが・・・・・)


トサカは唇をかみ締めながら後ろを見る。そこにはこの事態にアタフタしている舎弟たちに、怯えて震えている亜子とアキラが居る。


(くそが・・・どうする・・・どうすりゃいいんだよ・・・・・)


突如現れた敵の勢力から逃げ惑い、徐々に追い詰められていく。

目的地の場所までまだ距離がある。

このまま逃げても追いつかれるだろう。何より足手まといが多い分、危険な確率が極めて高い。

総督府の衛兵や警備隊が援護に来る気配は無い。正に絶体絶命のピンチだ。

そこでトサカは考えた。

自分が生き残るための道をだ。

このままでは自分たちもやられるだろう。

しかし、生き残る可能性を上げる方法が一つだけあることを、トサカは瞬時に頭の中に思いついた。

そしてトサカはもう一度回りの者たちを見る。

そこに居るのは役に立たない舎弟に何も出来ない少女たちだ。


(・・・・こいつらさえ居なければ・・・・)


真っ先に考え付いたのはそのことだ。

トサカ一人だけならば、脱出できる可能性は極めて高い。

大して戦力にならない舎弟に、魔法すら使えない少女たちだ。一緒に逃げるよりも、一人で逃げたほうが絶対に確率は上がる。


(そうだ・・・・そもそも何で俺がこんなガキ共まで面倒見なくちゃいけねえんだよ・・・・)


ましてや少女たちは元奴隷だ。この世界では労働力として以外には無価値な存在である。

更に亜子たちは奴隷から解放されたゆえに、この場で自分が命懸けで助けたとしても労働力としてはもう使えないのである。

つまり、それはどういうことか? 


(そうじゃねえか・・・別にメリットなんかねえ・・・)


そうだ、助ける意味など何も無いのである。そんな考えに至った瞬間、どんどんトサカの中で黒い感情が湧き上がってきた。

自分は正義の味方でも英雄でもない。地べたを這いずり回り、屈辱にまみれ、穴倉の中でずっと生きてきた人間だ。

そんな自分が、何故自分にとって価値の無い人間を助けるために命を張らなければならない?


(そうだ、意味なんて無え)
最終更新:2011年05月13日 21:04
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