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114-俺には結局これしかない

第百十四話 俺には結局これしかない 投稿者:兄貴 投稿日:10/06/26-00:10 No.4363
「コロシテヤル・・・」



溢れだす、憎悪、憤怒、殺意。

これほどの禍々しい感情を溢れだすのは本当にあのネギなのか?

あの誰からも愛された、愛くるしい少年の姿なのか?

その異形に誰もが声を失っていた。

だが、少年は止まらない。


「殺すって、・・・君~、先生がそんなこと言っちゃダメでしょ~。子供だからじゃ許されないよ? ひはははは」


目の前の男を滅ぼすために。



「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」



「!!」



正に一閃。


雷神のごとき速さに魔人の獰猛さを兼ね備えたネギの右の爪が、正面からユウサを引き裂き、吹き飛ばした。


「な、ネ・・・ネギ!?」


あまりにも暴力的な攻撃は、ユウサを南国の森林の奥深くまで吹き飛ばし、密林の木々がが激しく音を立てて倒れていく。


「・・・ひはは・・・あ~あ・・・」


遥か彼方まで吹き飛ばされたユウサは、頬に真っ赤に染まった爪痕を刻まれたまま、しかしニヤニヤとした笑みは崩さない。


「中々いい具合に染まってるじゃないの、ネギ君。俺がPTAの関係者ならクビだよ? 今は公務員の数が減らされて日本は大変なんだろ?」


「グウウ!」


密林から飄々と吹き飛ばされた道を戻ってきたユウサ。


その瞳には獣のような呻き声を上げて睨んでいるネギに、この状況に手が出せない少女たちが一歩下がって見ていた。


「ひはははは、光に愛された坊やだと思ってたが、中々腹黒い本性をお持ちのようで。こりゃあ~、君の親父とどっちが強いのかを確かめたくなったね~」


「ダマレ・・・」


「ん?」


「黙れと言っているんだァァ!!」


アスナを、エヴァを、仮に偽物とは言え目の前で血まみれにされたのだ。


その元凶たるこの男へ抱く負の感情は、もはや臨界点を遥かに超えていた。


「・・・ひははは・・・・おもしれえ!!」


「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

ほんの挨拶と悪戯が目的だったのだが、・・・いや・・・この男の考えは分からない。

しかし、今は目の前に居る魔に落ちた少年に対して、ユウサはまるで新しい玩具を手に入れた子供のようにハシャイでいた。


「ま、まずいでネギ! 完全にヘルマンの時と同じや!」


「ああ、兄貴のやろう、怒りでオーバードライブしてやがる・・・さらに今回は闇の魔法のオマケ付きだ! 早く止めねえと!」


「・・・カモさん・・・しかし・・・止めるって・・・」


「・・・おい、桜咲! 先生を止めなくていいのかよ!? なあ、・・・龍宮!」


「・・・どうやってだい? とてもじゃないが手を出せる状況じゃない」


魔人と鬼人。

もはや神話ですら語れそうな領域の戦いに、どうやって手を出せばいいのか。



「炎熱地獄!!」



「ガアアアア!!」



――雷天大壮!!



「ガアガア、ウルセエよ小僧!!」



天の怒りと、地獄の業火がぶつかり合う。


暴走状態での雷天大壮を使うネギは、まるで天よりの雷の如く舞い降り突進し、対するユウサは天に目掛けて燃え盛る炎を巻き上げた。

二つのエネルギーのぶつかり合いは、幻想空間にまるで天変地異を引き起こしたのではないかと感じさせるほどの影響を感じさせた。


だが・・・



「ウガアアアアアアアアアア!!」



「ッ!?」



軍配が上がったのはネギ。





――千磐破雷(チハヤブルイカヅチ)!!





周りが見えぬほど真っ直ぐしか見ない暴走状態のネギは、何と真っ直ぐなまま地獄の業火を突き抜けてユウサに突進し、正に天罰の雷を地獄の鬼に叩き込んだ。


「ぐっ・・ガハアッ!!」


ラカンやシモン。二人の強敵にしか使用しなかった大技を手加減なしで叩き込んだのだ。

この巨大な一撃はユウサに確かな爪あとを刻み込んだ。

だが・・・


「ひははははは、やるね~、でも・・・・・・我を失ってこの程度かい? まだまだ親父には敵わねえかな?」


鬼の笑みは消えない。

鬼は死なず、倒れず、歪んだ狂気を振りまいた。



「ウガアアアアアアアアアアアアアア!!」



その狂気を引き裂かんとするネギの咆哮は、もはや人のそれではない。

底知れぬ不の感情を次から次へとあふれ出し、その姿はまるで・・・・


「くっ・・・・ネギ坊主・・・」


「・・・ネギ君・・・」


彼を良く知る彼女たちですら、表情を強張らせるほどの・・・


「あれ・・・本当にネギ君なの?」


ユウサと同じ、化物にしかみえなかった。


「ひはははは、何を怒る? 偽姫様も偽エヴァちゃんも文字通り偽者よ! 目がさめたら消えるだけの幻に過ぎねえ! 架空の人物の死にブチ切れて人を殺そうとするなんざ、そこら辺の二次元オタクより始末がワリーぜ! キモイぜ!」


ユウサは快楽のために。



「ダアアアマアアアレエエエエエエ!!!!」



ネギは憤怒ゆえに。


「あっ、ひょっとしてお前あの二人も狙ってたのか? あ~、いいんだいいんだ君も男の子だもんな♪ でなけりゃ思念体や敵の女がやられたぐらいで憎悪なんて抱かねえだろ? つまり女を自分のものに出来なかった腹いせに俺を殺したいわけ~?」


「ダマレトイッテイルンダアアアア!!」


互いの胸に秘めた感情こそ違うが、とにかく抱くのは殺意だ。


ネギは確かに強くなった。それは誰もが認めなければならない。


だが、今の戦いを見ていると、恐怖を覚えるだけで、決してネギに感動を感じなかった。


だからこそまずい。


このままでは本当に自分たちの知るネギは居なくなってしまうかもしれない。


しかしどうやって止めればいい。


下手をすれば、自分たちの命も危ない。


どうやってネギを不の感情から解き放てるのか?


するとそんな時・・・



「う・・・・うう・・・わた・・・しは・・・」



ネギを止められる可能性を持つものが目を覚ました。

アスナに化けていた少女だ。


「はっ、気づいたん!? しっかりし! 大丈夫やから! せやからあんたも気合入れるんや!」


「・・・あなたは・・・・近衛木乃香・・・そうか・・・私は・・・ッ!? ゲホッ、ゲホッ」


「ああ、まだ寝てなあかん! 傷は深いんやから」


「そう・・・私は正体がバレて・・・それで・・・」


腹部に手をあてると、自分の身に起きたことを思い出したのか、少女は身震いした。

無理もない、普通ならショック死をしてもおかしくないほどの出来事だったのだ。


「おい・・・あんたはところで誰なんだ? フェイトの仲間なのか?」


目を覚ました少女に千雨が尋ねるが、少女は答えない。顔をプイッと横に背けた。


「おい!!」


「千雨ちゃん、今この子を責めたらアカン。まだ目を覚ましたばっかなんやから」


「でもよ!」


「それに今は・・・ネギ君の方が・・・・」


木乃香は少女の治療を続けたまま、浮かない表情で上空を見上げる。


「ネギ・・・さん? ネギさんがどうしたんですか!?」


「えっ?」


するとネギの名前に反応したのか、少女は急に取り乱したように木乃香の服にしがみついた。


「えっ? ・・・一体ネギさんに何が・・・・・・えっ!?」


少女の瞳に映ったのは、自分を半殺しにした男と、魔と化したネギが繰り広げる人外の戦いだった。


「なな・・・ネギさん・・・なんで?」


「ネギさんだ~? まあ、・・・簡単に言うと、ブチ切れちまったんだよ。目の前で神楽坂の姿をしたお前が傷つけられたからな」


「あっ・・・」


アスナの姿をした自分。

そういうことかと直ぐに納得できた。


「アスナ姫と・・・ネギさんは・・・お互い強い絆で結ばれているんですか?」


「あ・・・あ~?」


「・・・なんでそう思うん?」


「・・・・私の能力は、相手の人格や記憶を完全にトレースする究極の変装魔法・・・だから私には分かるんです・・・アスナ姫の感情が・・・とてもとても強い想いだと」


木乃香も千雨も、少女の言葉には納得できた。

そしてだからこそ、今のネギの怒りは仕方のないことなのだと思わずには居られなかった。


「おい、そいつは敵の娘だ。いつまでもゴチャゴチャ話していないで、今は先生をどうにかする方が先決だ」


「そうでござるな」


「しかし龍宮さん、どうやって・・・・とてもではありませんが介入した瞬間に巻き添えを喰らいますよ」


「くっ・・・・こんなとき・・・・シモンさんが居てくれれば・・・・」


今は敵の少女より、あのネギをどうするかだ。

しかしこれほどのレベルの暴走した殺し合いには、流石の龍宮たちでも簡単には介入できない。



「ひははははは、こりゃまた立派なケモノに育ったもんだな。親父も母親もさぞ鼻が高いだろうな」



「アガ?」



「世界を敵に回してまで愛を貫き、結ばれた二人の間に出来た子供が今じゃ立派なケモノの仲間入り。ひはははは、何が親父の意志を受け継ぐだ。殊勝なこと言って本音は血を見るのが大好きなんだろ? 分かるぜ~、なんてったって母親は災厄の女王様! 資質はバッチリだーーーッ! 草葉の陰から両親も涙を流して喜んでるぜ!!」



「!!!!」



だが時間はない。



「いいんだよ、誇れよ! 人間ってのは他人を傷つけることでしか存在価値を見出せねえ! 敵を作り、その中で正義や友情、平和を探し求めている! だから戦争は絶えねえんだよ! もしその敵が居なくなったら人はどうなる? 無気力で覇気のない奴らが世界に広がるだけだ! だから肯定するべきなんだよ! その姿こそお前が求めるものだってよ!」



このままではユウサの挑発はエスカレートし、ネギは本当に完全なる魔に身を落としてしまう。


それだけは絶対に出来ない。しかし手が出せない。


すると、何か手はないかと皆が頭を振りしぼっている中で・・・・




「・・・・アスナ姫なら・・・止められるでしょうか?」




「「「「「「「?」」」」」」」




「アスナ姫ならネギさんを止められるでしょうか」




少女はまだ傷が深いにもかかわらず、無理やり体を起こした。


「ちょっ・・・まだ寝てな・・・」


「確かにアスナ殿なら・・・しかしどうやって?」


「この姿で無事を報告すれば・・・・ネギさんは止まってくれますね!」


「「「「「「「あっ!!!!」」」」」」」


少女は傷ついた体で再び能力を使い、アスナの姿になった。

少女の傷はそのまま請け負っているが、確かにアスナが目の前に居た。


「待て、危険だ! その傷で何ができる!」


「そうでござる。いくら木乃香殿の治癒呪文とはいえこんなに早くは・・・」


そう、楓の言うとおり、こんなに早く治るはずはない。

偽アスナは傷の痛みに耐えきれず膝をついてせき込んだ。


「うっ・・・うう・・・」


「ほら、無茶や! そんなん無茶して・・・・「でも!」 ・・・・アスナ?」


「私・・・約束しっちゃったから・・・・」


目の前に居るのはアスナではない。


しかし傷だらけでも無理やり見せるその笑顔・・・・



「私・・・シモンさんと約束しちゃったのよ・・・・」



「・・・アスナさん・・・」



この想い・・・



「道に迷ったネギをぶん殴ってやるのは私だって・・・約束したのよ・・・・だから・・・」



「神楽坂・・・」



「オチオチ寝てなんかいられないっての!」



やはりアスナだ。


いかに魔法で作られた偽物とはいえ、これはアスナだと誰もが思ってしまった。



「大丈夫! 必ず目を覚まさせてやるわよ、私を誰だと思ってんの!」



例え偽者でも本物でも、アスナはアスナなのだと、その力強い笑みが語っていた。








――雷速瞬動!!



「ぐぬう!?」



「グオオオオオオオオオオオオオオ!!」



まるで暴風のように暴れまわる雷の拳足は、強靭な肉体を誇るユウサの肉体を容赦なく痛めつけていく。

ユウサの速度もシモンや瀬田と並ぶほどの速さを誇っている。

しかしその速さが鈍足に見えるほど、二人のスピード差は激しく、ネギの前にユウサは滅多打ちを食らっている。


(は・・・速え・・・)


怒り任せの攻撃ほど予測しやすいものはない。技も大振りでカウンターの餌食になりやすい。

にもかかわらず、この現状は何だ?


(このガキ・・・速さの桁が違う)


ユウサが手も足も出ないほど、今のネギの力は飛びぬけているのだった。


(戦闘経験や臨機応変さは冒険王・・・破壊力ならシモン君とジャック・ラカン・・・だが・・・この小僧は・・・性能において奴らを遥かに凌駕してやがる!)


接近戦では分が悪すぎる。

ユウサは距離を取るべく、全身から周囲360度方位、シモンのフルドリライズのように肉体に棘を生やし伸ばした。


「針山地獄!!」


「ガアアッ!?」


「ひははははは、距離とった!!」


暴走状態だが、ハリネズミのように針を全身から伸ばすユウサに攻撃することを本能で止めた。

その隙にユウサはネギと距離をとり、右腕に小さな渦巻きを作り、徐々にそれを巨大化させた。


「属性的に雷は・・・風に弱えんだろ!!」


「ガッ!?」


「竜巻地獄!!」


瀬田とシモンを血まみれに引き裂いた竜巻の渦がネギを包み、その風の刃が雷化したネギを容赦なく切り裂いていく。


「グガアアアア!?」


「ひははははは、天空で散開しな!!」


属性の相性として雷は風には弱い。そんなことは魔法に齧っているものならば誰でも知っている。

だが・・・


「ヌググググウ」


「へっ?」


「グガガガガガ」


「・・・おいおい・・・ひははは・・・まじで? ひはははははははは、これほどとはな!」


風に囚われぬほどの憤怒が・・・・




「グアガアアアアアアアアアアアアアア!!!」




地獄の竜巻などを吹き飛ばした。



「かかか、もう完全に化け物じゃないの。力に魅入られて手にした力。ひははは、君も満足だろ」



今のネギを阻めるものなど何もない。


属性も、戦力もクソもない。


ただの性能だけのぶつかり合い。


しかしその性能だけで最早無敵に近い力を得ていた。


だが、鬼は笑う。



(ひはは・・・だが、今のうちに俺を痛めつけておきな・・・・最後の最後で真っ逆さま・・・阿鼻地獄に落としてやるさ!)



鬼は機をうかがっていた。


一発逆転を繰り出す最悪の地獄を隠していた。


シモンにすら見せた地獄に、今僅か十歳の少年をその地獄に叩き落そうとしている。


竜巻を吹き飛ばし、ネギが目指すはユウサのみ。


一直線上にユウサ目掛けてネギは突進する。その存在を完全消滅させるために。


だが、ユウサはその瞬間待っていたとばかりに右腕でネギに掴みかかろうとする。



「ガアアアアアアアアアアアアアア!!」



「ひはははは、落ちろ! 阿鼻地獄にな!!」



ネギが速ければ、この一撃でユウサは倒せるかもしれない。


だが、ユウサが先に掴んでしまえば、これまで蓄積されたユウサの痛みをそのままネギが請け負うことになる。


そうなれば悲惨な結末しか予想できない。


だが、その二人のぶつかり合いは・・・




「ネギィ!!」




「!?」




「ア?」




熱き思いを宿した少女によって妨げられた。


聞き覚えのある声。


アスナの声だ。


幻聴か?


いや・・・




「ネギィ、歯ァ喰いしばんなさああああああああああああい!!」




違う! 


確かに聞こえる。




「・・・・・・ア・・・スナ・・・サン?」




ユウサも思わず動作を止め、暴走化したはずのネギもその言葉に動きを止め、視線をそらした。

すると思いっきり拳を振り上げたアスナが、ぐんぐん迫ってネギにぶち当てた。




「!?」




大きな音を立てて拳がネギの顔面に直撃し、その威力でネギが空中から落下してしまった。


たかが女の拳で殴られただけだ。


なのに、痛みを感じる。


顔面に直撃した衝撃はとてもとても痛かった。


だが、その痛み、思いはどこか懐かしく、暴走したはずのネギの意識を取り戻した。




「ア・・・アスナさん」




地上に落下したネギは顔を見上げる。


すると同時に着地したアスナが堂々とした姿でそこにいた。


血を流しながらも、天に向かって力強く指さすアスナが居た。




「ネギ! あんたは自分を誰だと思ってんの!」




「・・・えっ?」




「あんたの魔法は、勇気と奇跡を引き起こす魔法でしょ! そんな変態にゴチャゴチャ言われたぐらいで何取り乱してんの! どんな時でも、私たちも一緒に居る!! 何も不安なんかないでしょうがああああ!!」




アスナが本物か偽者か、その定義を考えれば目の前に居るアスナは偽者に当たる。




「一人で悩んでんじゃないわよ! 一人でいじけてんじゃないわよ! 仲間がいたり、シモンさんとかラカンさんとか、色々な人と出会ったりして、あんたも強くなったんでしょうが! だったらこんなときも一人で居るんじゃないわよ!




だが、この想いは何だ?


ネギは感じる。


「アスナさん・・・・・僕は・・・・・」


負の感情で覆いつくされたはずのネギの心の内から燃え上がるようなこの気持ちは。


負けるなと、自分自身の闇などに負けるなと心が叫んでいる。


思い出す。自分のこれまで積み上げてきた想いを。育んできたものを。




「大丈夫!! 自分を信じなさい!! あんたが信じる、あんたを信じなさい!!」




ネギも、そしてクラスメートの少女たちも感じた。


このアスナは偽者でも、この想いは本物だと。




「あっ・・・あっ・・・・」




ならば自分はその想いにどう応える。




「は・・・・はいッ!!」




未来を見据えて希望に満ちたネギ。


敵の少女のものなのか、それとも偽アスナのものなのか、それは分からない。


だが、偽者とは到底言えぬほどの大きな想いを受け取ったネギは、自分を取り戻した。



「なにッ!? 戻ったア!? おいおいおいおいおい! 人がせっかく仕込みをしたのに何だそりゃア!?」



負の感情を消し、闇を調伏したネギの瞳は、ユウサの理想をかけ離れ、地獄の底に住む鬼には目を覆いたくなるほどまぶしく見えた。



「ネギ・・・やりゃあ・・・できるんじゃ・・・な・・・い・・・」



「アスナさん!?」



そしてアスナが力尽きたように倒れこんだ。


無理もない、先ほどまでどれほど重度な状態だったのかはこの目にしっかりとやきついているのだから。


ネギは慌てて駆け寄り、アスナの体を抱き起こす。


すると少女の体が再び光に包まれ、変装が解けた。


ネギの腕の中には、アスナではなく見知らぬ少女。



「あなたは・・・」



「・・・・・・・・・・・・ルーナ・・・・・・」



ようやくその名を告げた少女。


傷で痛んだ体に力は無く、そして複雑な表情を浮かべた。



「ネギ・・・さん・・・」



少女、ルーナは一体何を思ってあんな行動を起こしたのかは分からない。


しかし、名を告げた瞬間、再び口を閉ざした。



「ルーナさん・・・・・本物のアスナさんは?」



ネギは抱きかかえたルーナに丁寧な口調で尋ねる。



「・・・・・本物のアスナ姫は墓守の宮殿に居ます・・・・・」



ルーナを抱きかかえているネギには分かる。


ルーナの体は震えていた。その震えは恐れかもしれない。


無理も無い。ネギの大切な人を攫うのに手を貸し、あまつさえずっと偽り続けてきたのだ。


責められても、罵倒されても仕方が無い。


だがネギは・・・



「そうですか・・・・・・・ありがとうございます。ルーナさん。おかげで助かりました」



「え・・・・」



「もう・・・僕は大丈夫です」



いい意味でも悪い意味でも、底なしに甘いが、その分優しい心を持っている。


ネギは許す許さないではなく、最初からルーナを責めたりなどしない。


むしろ負の闇に囚われていた自分にここまでしてくれたルーナに対して感謝していた。


だからこそ・・・



「今度は僕が応える番です。アスナさんと・・・そしてルーナさんの想いに対して」



その想いを胸に、ネギは再び、いや、今度こそネギ・スプリングフィールドとしてユウサと向き合ったのだった。



「おいおいおいおい・・・なんだよそれ・・・そんなつまんね~フラグが何で立つんだ~? これはあれだ。レベルをMAXまで上げて、クラスチェンジもして最強に育てたキャラをセーブし忘れて最初からみたいなガッカリ度だぜ! あ~あ、せっかく面白かったのによ。一度やったことをもう一度繰り返すことほどつまらねえもんはねえ!」 



そんなネギに対してユウサは非常に不機嫌そうに落ち込んでいた。


先ほどまで闇に落ちかけたネギにランランとしていた姿はもう無かった。


「とにかく・・・・・」


「ネギ君、後ろや!?」


「えっ!?」


「その出来損ないのムカつく幻を無に返してやろうじゃねえか!!」


即座に背後に回りこみ、鋭い鬼の爪を光らせて、ネギごとルーナを貫こうとした。


だが、そんな時・・・



「捨て駒の癖に俺の遊びを邪魔するんじゃ・・・・・むっ!?」



銃声が響いた。


突如発砲された弾丸がユウサに迫る。


辛うじて交わすと、弾丸の飛んできた先には龍宮が構えていた。




「黙れ、外道。鉛玉をケツの穴からブチ込むぞ」




もう彼女たちも許しはしない。


ユウサが飽きようが飽きまいが、彼女たちはユウサに、そして自分たちの無力さが許せず、さらに敵の少女の根性に突き動かされ、恐れを捨ててユウサを取り囲んでいた。


龍宮が弾丸を飛ばし、ユウサの頬を掠めさせた。


辛うじて交わしたユウサだが、頬から血が流れ、殺意を一気に龍宮に向ける。


だが、龍宮は怯まない。


それどころか・・・




「悪いが・・・ここまで怒りを覚えたのは拙者も初めてでござるよ」




「覚悟せえよ・・・鬼野郎!」




「神鳴流の名に賭けて・・・・」




「神の・・・いえ、グレン団の旗に誓って」




「敵の女にあんだけ気合見せられたら、兄貴が居なくっても・・・・」




楓、小太郎、刹那、シャークティ、美空も、戦う意志を胸に宿し・・・




「「「「「「ここで貴様をぶったお(す)(すでござる)(します)(すよ)!!」」」」」」




ユウサを打倒することを叫んだ。


その言葉を聞いてユウサの額に青筋が浮き出た。



「ア゛ア゛? やって・・・みろよ、クソ餓鬼共。地獄に落ちたければな!!」



ネギに代わり、次に憤怒が湧き上がったのはユウサの方だ。


身勝手で一方的な怒りだが、遊びをやめて悪意を越えた殺意を少女たちに向け、その殺意に今度は白き翼たちが迎え撃つ。



「やってやるさ」



「へっ・・・くだらねえ! 地獄のあらゆる辛苦を扱うこの俺が! 大量生産の鉛玉ごときでヤレるとでも・・・」



「どうかな。神によって与えられた禁断の知識。その知識の中で人類の歴史を大きく変えて創り上げてきたもの、それが武器だ」
最終更新:2011年05月13日 21:10
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