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115-確変決めて大当たりだッ!!

第百十五話 確変決めて大当たりだッ!! 投稿者:兄貴 投稿日:10/06/28-13:11 No.4367
少年と少女たちが、目指すべき場所へと突き進んでいるころ、世界の果ての地の奥底で、燻っていた男の魂がようやく立ち上がる。


「けけけけ、おいおい、さっきからアムグの野郎は誰と話してるんだ?」


「へっ、知ったことかよ。あのジジイがわけ分からねえのは元からだろ? あ~あ、なんかおもしれえことねえかな」


「はん、あきらめろ。俺たちはずっとここで死ぬまで生きてくんだからよ」


薄暗い地獄の底の中で聞こえる囚人たちの声。


犯した罪の内容はそれぞれ。だが誰の目にも覇気も魂も宿っていない。


地獄の底の闇に打ちのめされたもの達は、人間、獣人、亜人を問わずして誰もが今のアムグのように全てをどうでも良いと思うような、倦怠の滲み出た表情をしていた。


だが、その地の奥底に、決して似つかわしくない男がいた。


今は地に這いつくばっているかもしれないが、もう十分だろう。


いつまでもウダウダしていることを、自分自身も、自分の仲間も、そして世界が許さないのだった。



「瀬田さん。世界と魔法は完全に交わらないって本当なのか?」



「理想と現実・・・いつだって世界はそれに悩まされる。個人間で分かりあうことは難しくない・・・しかしそれが世界規模になるとそうもいかない。魔法とか亜人とか以前に、地球人類は未だに人種や宗教の壁を越えられないのだから。でもね、仕方ないんだよ。戦争は、平和を求める人類の悲しさなんだ」



「あれも嫌だ、これも嫌だ、それでまかり通るほど甘くないことなど、貴様がよく知っているはずじゃ。目の前で兄を失った貴様ならのう」



運命に抗ってきた自分が、運命をただ受け入れようとする獣人を前にして、何も言えないことが悔しくてたまらなかった。



「受け入れよ。希望は無い」



希望は無いのか?



「・・・・・・・アニキ・・・か・・・」



そう思ったとき、シモンは天井を見上げた。


頭の中から余計な考えを排除し、心を落ち着かせ、薄暗い監獄の天井を眺めながめた。



(・・・アニキ・・・こんな時、・・・アニキならどうする?)



答えを出すのは自分自身だ。


そんなことは分かっている。


だが、それでもシモンとて人間だ。


弱気になりそうになったとき、必ず天を見上げてあの男のことを思い出す。



(そういえば・・・・あの時も・・・こんな風に天井を見たっけ?)



シモンは一度、答えの分からぬ道に迷ったとき、天井を見上げた。それは一年前、アンチスパイラルが来襲したときだ。


自分たちの戦いが、アンチスパイラルの人類殲滅システムの発動のきっかけとなり、世界はシモンの死を望んだ。


自分はあの時、死んでも良いと思った。


自分の死がきっかけで、人々の混乱が収まるなら死んでも良いと思った。


だが、その時、心のどこかで悩んでいた。


こんな時、あの男はなんと言うだろう? 


どんな行動をするだろう? 


そう思わずにはいられなかった。


だがしかし、そんな風に燻っている自分の前に、カミナではなく、あの男が現われた。



(俺はあの時は確かに死を受け入れるつもりだった。それが頭で考えた結論だった・・・・だから裁判の結果に反論もしなかった・・・でも・・・)



そうやって受け入れて、そんな自分を確か殴った男がいた。


そう・・・あれは・・・



(そう・・・あれは・・・たしか・・・・・監獄の中で・・・・・)



今、シモンの胸元に光る、過去の螺旋の戦士たちのコアドリル。


それを託してくれた男が、確かに言った。



――運命を黙って受け入れ、種の存続を名目に千年の倦怠に流され、そして処刑される。それが、俺たちを滅ぼしてまで掴んだ明日なのか?



(ヴィラル・・・・)



そう、あの時確かに奴はそう言った。まったくその通りだった。


どこかで自分は仕方がないと思っていた。仕方が無いと諦めていた。


だがしかし、そんな自分をヴィラルは許してくれなかった。


何故許してくれなかったのか? 簡単だ、自分たちを滅ぼしてまで掴んだはずの明日を諦め、今日を抗おうとしなかったからだ。



(そのままあいつとは喧嘩になった)



シモンもヴィラルに殴り返した。


自分の何が分かると。自分は自分の出来ることをやっていると。


だがしかし、ヴィラルは鼻で笑った。



――おもしろいなあ。何もしないのがお前のやるべきことなのか?



「俺の・・・・やるべきこと・・・・」



今でも思い出す。


腹の底に溜まったものを開放するかのごとく、ヴィラルと殴りあったあの時の事を。


では、今の自分は何だ?



「アムグ・・・」



「?」



「俺の・・・やるべきこととは何だ?」



「何じゃ、藪から棒に・・・そうじゃのう・・・」



自分のやるべきこととは何だ? 



「何もするな。運命を黙って受け入れよ。仕方の無いことなのじゃよ」



本当にそうなのだろうか? 


何もしないことが今の自分のやるべきことか?


運命を黙って受け入れることが自分のやるべきことか?



(いや・・・違う・・・)



そうだ、違う。


今の自分は、かつてヴィラルと殴りあったときの自分だ。


今の自分をあの男は許さないだろう。


ヴィラルだけではない。


ロージェノムも。


銀河に散った仲間たちも。


そして最愛のニアも。


アンチスパイラルでさえもだ。



(俺は・・・・)



例え事情がどうであれ、この場で成り行きを見守るだけの自分を許してくれるはずは無い。



(俺の・・・答え・・・)



そう、結局自分で答えを出すしかないのだ。


魔法世界とこの宇宙の地球。


地球では、家族と呼べる者たちと出会い、友と呼べ、仲間と呼べ、自分を慕い、自分を愛してくれるものたちとも出会った。


この世界でもそうだ。見知らぬ自分を受け入れてくれた者たち。正面から自分を殴ってきたものたち。デカイ器を持った友との出会い。


どちらとも曲がりなりにも絆を持った自分。


これまで自分が歩んできた道。


その全てからシモンなりの答えを出さねばならない。



(俺の・・・答え・・・は・・・)



シモンは目を瞑り、これまで歩んできた自分の道を考えた。



(あれもダメこれもダメ・・・それじゃあダメなことは分かっている・・・・でも・・・俺は・・・・)



だが、その道はいつだって側にある。



(失いたくない。どっちも・・・・どっちも・・・・)



自分の胸元に輝く道標、コアドリルが思い出させてくれた。



(・・・・どっちも? ・・・・・何故俺は片方だけを選ぼうと・・・・・)



このコアドリルを託してくれたヴィラルは言ってくれた。



――ああ、よく知っているよ。お前はグレン団の大馬鹿野郎だ!



「・・・・そうだ・・・・」



かつて、自分で考え、自分を信じ、そして自らが導き出した答えを聞いて、ヴィラルが笑いながら答えた言葉だ。


そう、自分はグレン団だ。どこまで行ってもそれは変わらない。


ならば、その大馬鹿野郎のする大馬鹿な事とは?


いつだってそうだった。


悩みに悩み、そして悩みぬいた結果、答えはいつでも直ぐ側にあったのだ。



「そうなんだよな・・・結局俺は・・・グレン団なんだよな・・・それでいいんだよな、アニキ・・・ニア・・・みんな・・・ヴィラル・・・ロージェノム・・・アンチスパイラル」



「ん?」



「・・・シモン君?」



グレン団として自分はかつて戦った。


その道を塞ぐものたちと、命を賭して戦った。


道に立ちはだかった彼らもまた、彼らなりの正義、そして世界や宇宙を思い戦っていた。


しかし自分たちは拒み、彼らに反抗した。


自分たちの望む明日を掴み取るために。


だからこそ、そんな自分がいつまでも立ち止まっているわけには行かない。


彼らを滅ぼしてまで掴んだ自分の迎える明日が、このままでいいはずがない。



――ならばこの宇宙、必ず守れよ



彼らの目指した未来より良い未来を目指すことを約束したはずの自分が、いつまでも下を向いてはいられない。



「そうだ・・・簡単だ・・・アニキならきっとこう言うんだ」



そう、思い出した。


こんな時にあの男ならなんと言うかといえば・・・・



「自分を信じろ。俺が信じるお前をじゃない。お前が信じる俺でもない・・・お前が信じる・・・」



そうだ、これが真実だ。



「お前を信じろ!!」



弱気になりそうなとき、自信がなくなりそうになったとき、いつだって熱く生き続けたあの男を思い出す。


あの男に笑われない男になる。それが昔から変わらぬ自分の想いだ。



「アムグ・・・やっぱり・・・どんなに悩んでも俺には結局これしかないよ・・・・」



そうだ、シモンはどこまでいってもグレン団。


答えも理由もそれで自分には十分なのだ。


世界の正体だろうと、世界の危機だろうと、魔法世界人の真実だろうと、関係ない。



――もしとか、たらとか、ればとか、そんな思いに惑わされんな。自分の選んだ一つのことがお前の宇宙の真実だ!



だからこそ、もう惑わされない。


その時、葛藤に苛まれたシモンの表情が少し軽くなった。



「・・・何?」



迷いをふっ切ったのか?


そこにはシモンらしい表情をしたシモンが居た。



「ネギたちの未来は無限に広がっている。あいつらは今から何にだってなれる。でも、俺はもうあいつらにはなれないんだ。だって・・・俺はもうグレン団だからだ」



「・・・・何が言いたい?」



「グレン団として生きてきた。グレン団として多くのものを背負ってきた。グレン団として成すべきことをしてきた。だから答えはいつだって、ここにある」



シモンは自分の胸にぶら下がっているコアドリルを叩いた。


そう、シモンがグレン団であることは、たとえ死んだとしても変わらない。


どれほど考えてもグレン団としての答え意外など自分には許されない。


友に、兄に、最愛の女に、戦友に、打ち倒した者たちのために。



「アムグ、俺も結局何が正しいのかは分からない。だから全てを救うことに決めた」



だからこそ、そうやってこれからも、そして今を生きていく。



「・・・・・・全て・・・じゃと?」



「ああ」



シモンは頷く。



「世界の真実を知って、・・・それでも言うのかのう?」



「ああ、その通りだ」



先ほどと違い、迷いの無いシモンをアムグは笑った。



「グワハハハハ。無理と言うのが分からんのか?」



その笑いは、まるでシモンを嘲笑するかのようだった。しかし、シモンは首を横に振る。



「俺には分からない。ヒトの定義も獣人も亜人も魔法世界人も俺自身も。何が正しくて何が間違っているのかもな。だから全てを救う。この世界に生きるものは、人間も獣人も亜人も動物も、良いことも、悪いことも、正しいことも、間違っていることも、例え幻想だろうと全てまとめて助ける。それが俺のやり方だ」



抗わず運命を黙って受け入れ今日を生きるなど、シモンにはできなかった。



「ふん・・・で・・・・貴様は何をするんじゃ?」



「とにかくまずはフェイトたちを止める。たとえいつかこの世界が滅んだとしても、今滅ぶことを誰だって望まない。あいつとの決着は約束だったし、何よりもそうすることでここに居るだけでは分からない何かが見えてくるかもしれない」



「何か・・・か・・・それは希望ではなく、更なる絶望かも知れんぞ? 別にアーウェルンクスを倒したところで未来は変わらん。妙な期待をさせぬことじゃな」



この世界の滅びをどうするか。それは今すぐどうにかできる問題ではない。


アンチスパイラルに示されたスパイラルネメシスとてそうだったからだ。しかし、そのために今滅びることを自分たちは望まない。


だからこそ自分たちは戦ったのだ。



「それでも俺は・・・希望は捨てない。皆と明日を迎えて、皆と未来を探してみせる。」



「ふん、甘ったれすぎた感情論では話にならんわい。所詮根拠が無い」



「だけど、俺は足掻いて足掻いてジタバタするさ。自分が信じる自分を信じてな。それが絶対的絶望に唯一打ち勝つ方法だ」



気に食わない。



「ふざけるな。その判断が間違っておったらどうするのじゃ。仕方ないことじゃと思わんのか?」



「仕方が無い? 仕方が無いってことはあきらめるってことか? 冗談じゃない。俺はいつだって判断して動いているんじゃない。俺はいつだって気持ちで動いているんだ。だから抗う。悔いが無いと思えるぐらいに」



アムグはシモンの回答を非常に気に食わない。


何故ならこの難解に悩み苦しみ、諦めた者たちだっているのにもかかわらず、つい最近この世界に現れたばかりの新参者が自信に満ちた表情で口にしたからだ。


しかし、気に食わないが悪い気分がするわけでもなかった。


甘ったれた答えを告げるシモンの瞳が、決して生半可な覚悟でないことは分かっているからだ。



「とにかく出来ることはやる。今はそれだけだ」



そうだ。かつてアンチスパイラルが来襲したときそうだった。


自分は世界に生きるもの全てを見殺しにしないと決めた。


それは何故か? 自分には分からないからだ。何が正しいのか正しくないかも分からないからだ。


だから全部助ける。


良いことも、悪いことも、正しいことも、間違っていることも、全てまとめて助ける。


それがシモンの・・・



「それが貴様のやり方か?」



「そうだ。俺の・・・俺たちグレン団のやり方だ」



シモンたちのやり方だ。



「ふん、大口を叩くのう」



「大口じゃない。俺を誰だと思っている」



そう、そうやって掘りぬけてきた。


フェイトもクルトも自分たちのやり方に揺らぎはない。


世界のためにこの世界を滅ぼす。


救える命だけでも確実に救う。


それが間違いなどと誰にも言えない。


しかしシモンはグレン団だ。


グレン団にはグレン団のやり方がある。


そのやり方が正しかろうと、間違っていようとも、突き抜けるしかない。



「ぐふ・・ぐふふ・・・ぐわははははははははははははははははは!!」



アムグは思わず笑ってしまった。腹を抱えて、これ以上ないほど愉快に笑った。



「そうか・・・・抗うか・・・不思議じゃのう。今日初めて会った貴様を、貴様らしいと思ってしまったわい」



そして一頻り笑った後、アムグはぼやいた。


「・・・ジェノムに聞いたことがある。地球でかつて誰かが言ったそうじゃ・・・例え明日世界が滅んだとしても、自分は今日リンゴの木を植えるとな・・・じゃが、ワシはリンゴの木を植えなかった。意味がないと思ってのう。じゃが・・・貴様は植えるのか・・・滅びると分かっていてなお」


呟くアムグの瞳に、どこか寂しさが感じられた。


何も知らずに希望ばかりを探そうとするシモンを無知だと思う反面、どこか自分に無い輝きを感じたからだ。


そしてやるべきことを決めたシモンは直ぐに動く。



「人手がいるし、事情に詳しい奴も必要だ。瀬田さん、そしてアムグ、お前も手伝ってくれ」



「僕は構わないないよ。地球と火星人のわだかまりはまだ分からないけど、今すぐこの世界を滅ぼすことには賛成できないからね」



「グワハハハハ、ふざけた若造じゃわい。手伝う? ワシが?」



アムグはニヤッと笑った。それが自然と出た笑みなのか、嘲笑なのかは分からない、しかしアムグの気分は悪くなさそうだ。

拳闘大会決勝戦の日、不意につけたテレビに映ったシモンと大グレン団たちの戦い。

無茶苦茶な戦いぶりの中で魅せた熱い想いと魂が、この世界を熱気に包み込んだ。

映像では当時少年だったシモン。成長して大人になった彼が今、目の前に居る。

しかしその少年は成長してもその大馬鹿さは変わっていない。


「ふん、いいじゃろう」


笑みを浮かべたまま、鋭い目つきでシモンに答えた。


「どうせ未来は変わらんのじゃ。ならば貴様らがその中でどうするのか、見届けてやるわい」


「変えてみせるさ。お前が見届けるのはまだ見ぬ明日だ!」


「ふっ、・・・ぐわはははははははは、頭の悪い人間じゃ!」


いいだろう。

何をやっても同じなのだから、やるだけやらせてやろう。

そんな感情を込めてアムグは頷いた。

アムグは鍵を取りだした。それはシモンの閉じ込められている監獄の鍵。

そしてアムグはシモンを、さらに瀬田も監獄から出し、二人の手錠を外した。

解放された手を軽くほぐしてシモンはまずやるべきことを確認する。


「フェイトがどこに居るか分かるか?」


「恐らく、崩壊したオスティア王家の遺跡じゃろう。そこに、現実世界へ帰るためのゲートが存在する。アーウェルンクスもそこじゃろうな」


「だったらシモン君、急いでオスティアに戻らないと。でもどうやって行く? オスティアに戻っても僕の飛行船はラカン君に衝突した時に壊れて使えなくなっちゃったよ? 飛行船なしでは・・・」


とにかく当面のやるべきことは決まった。

まずはフェイトのやっていることを止めねばならない。

未来の絶望に立ち向かうには、少なくとも明日を迎えねばならないのだから。

シモン、瀬田、そしてアムグの三人は明日を手にするために動き出した。

シモンもようやく軋む体に激しく鞭を打ちながら立ち上がる。傷の痛みなど気合で耐えるといった表情だ。



だが、その瞬間冷え冷えとした空気が辺りを包んだ。



空間が歪む前兆だ。



そしてその歪んだ空間から・・・



「・・・無駄だね・・・」



「「「!?」」」



「それでも未来は変わらない」



あまりの唐突のことで、三人とも反応に戸惑った。



「シモン、これは解決不可能な問題だ。君にも、カミナにも、大グレン団だろうとね。感情論ではまかり通らない次元の問題なんだよ」



あまりにも予想外の人物が、何食わぬ顔でそこに居た。



「フェ・・・フェイト・・・」



「ほう、・・・懐かしい顔じゃ」



「なるほど、彼が噂の・・・映画に出てきた人物と同じ顔だね」



宿敵、フェイトがこの大監獄の中に突如現れたのだった。



「やあ、シモン。もう僕のことは思い出したかい?」



「ああ」



「そうか。しかし以前の再会は奴隷騒ぎで今回は監獄の中か、君は相変わらずわけがわからないね」



「・・・うっ・・・・・・」



シモンを呆れたような眼差しで見るフェイト。その瞳に対して、シモンも何も言い返すことができなかった。

そしてフェイトはシモンの隣に居る瀬田、そして目の前に居るアムグを見る。



「旧世界の冒険王瀬田、そしてメガロメセンブリアの元将軍、不動のアムグか・・・豪華な顔ぶれだね。だが、アムグ、瀬田、どうやらあなたたちも全てを知ってしまっているようだね。もっともアムグに関しては20年前からだと思うけど」



「ふん、この世界の機密情報の管理能力が低いことなど大戦のころからじゃよ。じゃからお前たちにワシらは情報を操作され、振り回された」



「まあ、そのおかげで僕もこの世界に来れたんだけどね」



「そうかい、アムグは分からなくもないが、一般人のあなたが秘密を得られるあたり、魔法協会もまだまだだね」



会話は何気ない表面上のやり取りに見える。だが、フェイトも、瀬田も、そしてアムグも腹の内は見せない。

まだまだ己の底は見せないような態度で接していた。


「さて、シモン。僕は君には知ってほしくなかった。この世界の真実をね」


「どういうことだ?」


「君との決着の約束は覚えている。しかしそれは世界を賭けてではない。少なくとも何も賭ける物のない純粋な喧嘩をしてみたかったよ。事実を知れば君は得意の感情論で好き勝手に叫ぶ。本当に迷惑な話だよ」


「フェイト・・・」


「リライトが通用しなければ・・・ジャック・ラカンとの戦いも面白いと感じただろう・・・」


「ラカン!?」


思わず三人がその名に全身を身震いさせた。


「アーウェルンクス・・・ヌシ・・・まさか・・・」


「造物主の理には彼ですら敵わなかった。アムグ・・・それはあなたも同じだ」


「フェイト・・・お前・・・まさか・・・ラカンを・・・」


恐る恐る尋ねるシモン。

そしてその問いにフェイトは小さく頷いた。


「別に死んだわけじゃない。移動させただけだ。完全なる世界、争いのない完全なる園へね」


「あ、・・・あいつまで・・・」


「彼だけじゃない。今夜魔法世界人は多く消えた。その中には君の知り合いも居ただろう。そして・・・今もね」


「!?」
最終更新:2011年05月13日 21:12
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