アットウィキロゴ

116-2

滅びの話から、何だか変な話になり、むしろわけが分からず首を傾げてしまった。

だが、その言葉を聞いて真剣に向き合う者たちも居る。

アムグや瀬田、ディーネにミルフにマンドラたちだ。


「ふん、実際に聞いてみてもやはり眉唾じゃのう・・・永遠の園とはのう」


「理不尽やアンフェアな不幸の無いだって? 僕にはそれこそ不公平に聞こえるね」


「なんか私には虫唾が走りそうなクソみたいな世界だね」


「そんな世界に何かがあるとは思えんな」


「ふん、どこかの宗教団体の勧誘にしか聞こえんな」


シモンの背後に立ち、彼らは正面からフェイトと対立した。

だが、そんな彼らの態度に、フェイトは呆れたように首を振り、口を開く。



「アムグ・・・そして獣人四天王・・・君たちはこれまでに何が出来た? 冒険王、この世界や地球の歴史を見て君も知ったはずだ。20年前に終戦したはずの戦いは未だに続いている。どこの世界でも内乱やテロ活動。上げればキリが無い。一時の平和を手にしても直ぐに乱れる・・・それが現状だよ。しわ寄せや不幸になるのは、救われぬ弱者の魂だ。それにどのみちこの世界もいずれ滅びる。それも避けられない。だからこそ世界を救うには、この方法しかないんだよ」



避けられぬ滅びの運命。

未だに続く戦いに、救われぬ魂や弱者の悲しみ。

その多くのものを救うには、この方法しかないのだとフェイトは告げる。

そう、恐らくフェイトに従う少女たちや横に居るデュナミスも同じような考えの下に生きているのだろう。

だが、それでも全ての者たちが同じ想いとは限らない。


「ふざけるな! そんなものは幻に過ぎん。希望も夢もへったくれも無い。わだかまりも争いも無い世界など、この世界で実現させてこそ意味があるのじゃ」


ミルフも・・・・


「テメエが人の許可無くやることのほうが、私にとっちゃ理不尽だよ」


ディーネも・・・・


「たしかに、夢想もいいところだな。反吐が出る」


マンドラも・・・


「ふん、ワシはどっちでも構わんがのう。別にこの世界が滅ぼうがどうでもよい。しかしこの世界が滅ぶにしろ、そんな虫唾の走る世界に行ってまで生き延びたいとは思わんな~」


多少歪んではいるがアムグも・・・


「フェイト君だったね。地球だって同じだよ。わだかまりや不幸は消えない。いずれ自滅の道を辿るだろうね。でもね、やはり現実で何とかしなければ意味が無いと思うよ?」


瀬田も、納得することは出来なかった。

ハルカもサラも同じこと。彼らは皆、道理は理解しても従えぬという思いで、フェイトと相対した。



「そうやってネギ君も、君たちも、誰もが誤魔化しのセリフを言う。本当は理解しているのにね、希望は無いと」



だが、それでもフェイトには届かない。



「それで黙ってこのまま滅びを迎え入れるのかい?」



主の夢想を受け継いだ彼の鋼の意思に、疑念も揺らぎも決して無かった。

するとそんな真面目な会話中・・・


「ゴラアアア! テメエらさっきからよく分からねんだよ! 世界がどうとか、パンチパーマがどうとかよ!」


「パンチパーマじゃなくて、アンチスパイラルな」


「うるせえええええ!! もっと分かりやすく言いやがれ! つうか、世界を滅ぼすなら俺がやる! テメエみてえなガキはすっこんでやがれ!!」


愛すべきバカでもあるチコ☆タンが、空気も読めずにうるさく騒いだ。


「・・・・君と一緒にするな。それに先ほども言ったように、殺すわけじゃない。この世界に居るものたちの報われぬ魂を救うには・・・・・」


フェイトは溜息をつきながら簡単にかわそうとしたが、チコ☆タンは食いつく。


「ああん? 知るかコラァ! 何だかよくわからねえけど、要するにゴチャゴチャ考えるのがメンドクせーから、手っ取り早く全部消すだけだろうが! 意味は分からねえけど、それだけは分かったぞーッ! スカした態度で威張ってんじゃねー!! ならテメエは地球が温暖化で滅びるなら、その前に人類を核爆弾で皆殺しにするんだな! ぜってー、誰も助けるんじゃねえぞーー! ぜってー一人残らずブチ殺せよなア!」


滅茶苦茶な理論を持ちだしては喚いた。


「・・・チコ☆タン・・・」


「なんかもう言ってることが滅茶苦茶だね・・・」


「少しは空気を読まんかい」


「うるせえ! 大体テメエは完全なる世界の生き残りらしいが、世界を賭けた戦いでとっくに紅き翼の馬鹿どもに負けてるんだろうが! 奴らがいなくなってからコソコソ現われて正義だ大義だほざいてんじゃねえよ! 負け犬の見る夢ほど、信用できねえものはねえ!!」


何だか話が相当わき道に逸れて、このままでは埒が明かない。

だが、何故かチコ☆タンの単純だが良く分からぬ理論に、今まで黙っていたシモンが笑ってしまった。


「ぷっ、・・・はははは・・・・」


「な、なにがおかしいんだこのドリル野郎がァ!!」


「いや・・・だけどチコ☆タン・・・お前の怒りは分かったけど、ちょっと待ってくれ」


「ああん? んだとお!!」


意味も分からないチコ☆タン理論にアムグたちは頭を抱えるが、シモンはチコ☆タンを軽く手で制して、フェイトに告げる。


「なあ、フェイト。耳を貸せるなら聞いてくれ。別に俺はお前を説得するつもりはない。多分この世界で不幸になった奴らがお前の身近に居て、そんな世界を求める奴らもいるんだろ。だからべつにどっちが正しいとも間違っているとも言わないさ。でも、これだけは覚えておいてくれ。この世界に住む人たちは、いずれ滅びを迎えたとしても、今身勝手にこの世界を無くすことを望んでいないんじゃないか?」 


「・・・・・・」


「たしかに中にはアムグのように諦めていた奴もいるかもしれない。でもな、チコ☆タンの言うとおり、勝手な理想によって歪められた大義に意味なんかない。それを認めずに大義とのたまい、押し付け、孤立する奴なんかに明日は掴めないさ」


「・・・・明日・・・か・・・そうだね。そうやって孤立していた螺旋王やアンチスパイラルとやらには、明日は来なかったらしいからね」


明日を掴めない。

そう言われたとき、思わずフェイトは反論して「君に何が分かる」と言おうとした。

だが、言い返せなかった。

何も分かっていないものからは決して感じることが出来ないほどの言葉の重みを、シモンから感じたからだ。


「でも・・・それでも君も感情を持ち込みすぎだ・・・・」


「何?」


「その感情で全てを台無しにする気かい? 希望があるように叫びながら、それがダメだと分かって絶望するのは君じゃない。この世界だ。君のやろうとしていることは希望を探すことじゃない。今よりもっと大きな絶望を与えるだけだ。君だって・・・本当は分かっているんじゃないかい? それに、そのスパイラルネメシスとやらだって、本当に止められると思っているのかい?」


本当にそう思うのか? 


「本当に目的を達成させるために、余計な心や感情は必要ない。しかしその感情や心が、現実や真実を曇らせてしまう。世界は・・・そんなに簡単じゃないと知っていながら」


アンチスパイラルを倒したことにより、制限が無くなった螺旋族は増殖するしかない。

それでどうやって、シモンは守る?



「フェイト。・・・俺だってネギたちと違って、もう大人だ。宇宙が・・・世界が・・・とてもデカクて、自分一人だけじゃ無力なのは分かっている。今の流れを止めるには、一度世界を滅ぼすっていう、お前の気持ちも・・・アンチスパイラルの考えも分からなくもない」



進化と引き換えに増殖し、食いつくし、やがては自分の世界を自滅に追い込み、滅びる。

一度世界を綺麗に滅ぼし、恐怖と絶望で人をコントロールして破滅を防いだのがアンチスパイラルだった。



「でも、それでもなんとかしなくちゃいけない。俺たちが、そこまで愚かじゃないと証明しなくちゃいけない。それが俺の交わした約束だからな」



――ならばこの宇宙、必ず守れよ



――当然だ、人間はそこまで愚かじゃない



だからこそ死ぬまで抗うのだ。

現にその道を託されたロシウやギミー、ダリ―たちを始め、後から続く者たちは自分たちから受け継いだ道を必死に整備している。

その道を造った自分が、抗わないわけにはいかない。


「・・・何故・・・君は・・・絶望しないでそう思える?」


「そんなの簡単だ。俺たち人には、心があるからだよ。人の心は無限。その大きさに、俺たちはいつだって賭けてきた」


――心があるからだよ。


「・・・・・・ふん・・・・」


フェイトは不意にラカンが戦いの最中に言った言葉を思い出した。


「そしてフェイト、お前もだ」


「なにがだい?」


「お前に心は無い? ・・・そんなはずはない」


心。それこそがシモンたちの無限大の強さの源。


「いいや、無いよ」


フェイトはその心をアッサリと否定した。

しかし・・・


「嘘だな」


「・・・・なに?」


「だったら何故お前はネギを殺さなかった。何故今傷だらけの俺を動けないようしない」


「・・・・・・・それは・・・・・」


その問いに、ほんの僅か、ほんの僅かだが、フェイトの瞳が若干揺れた。


「計画を完遂させるための道具だとしたら、一番の障害はネギのはず。何故ここまで強くなる前に何とかしなかった? 俺だって邪魔なはず。なのに、何故お前はそれを排除しない」


「・・・別にそれは計画に関係ない。ただ、君たちと戦うのが・・・」


「そうだ。何かを望むことこそ、正にお前の意思だ。道具だろうと意思を持とうとするのが、お前の心だ」


「・・・・・・・・・・・」


だからこそフェイトにも心はある。


「何が・・・・言いたい・・・・・」


「ゴチャゴチャ理屈を言う前に、まずお前の本音を話せ。お前は使命がどうとか大義がどうとか世界がどうとかじゃなく、まずお前の気持ちはどうなんだ? お前は何がしたいんだ?」


心が無いはずのフェイトの本音? 本音とはなんだ? 

本音とは真実の感情。

世界の滅亡や大義がどうのではなく、フェイトの真実の感情は何か?


「・・・僕は・・・・」


分からない。

事の道理、是非や意義も理解している。

だが、迷いもなく、ただ忠実に与えられた役割をこなすだけのフェイトだが、初めて分からないという思いに囚われた。


「僕の望みは・・・・・」


「惑わされるなテルティウムよ」


「・・・・分かっている。大丈夫だ」


一瞬揺れたフェイトを宥めるように、デュナミスが口をはさみ、そしてシモンを見る。

考えても分からないはずの疑問に対して、一番早く思いついたことは・・・・



「計画の遂行に揺らぎは無い。・・・でも、・・・君たちと決着をつけたいというのも・・・・今の僕の望みだというのだけは分かる・・・・」



それこそが今のフェイトの本音だった。



「ああ。お前と決着をつけることに、何の異論もないさ」



「・・・・・・・・・・・」



「俺も全てをぶつける。言葉だけでは伝わらない想いを込めて、お前と全力で戦ってみせる」



そう、戦おう。

まずはそこからだ。

どちらが正しくて、どちらが間違っているとは言えないだろう。

長い間この世界でこの世界の現実を見てきたフェイトの道理。

閉ざされた世界を解放してきたシモンの信念。



「・・・・・・のぞむところだ・・・・・」



この二つがようやく決着をつけることになるのだ。

それは避けられない。

そして避けるつもりもない。

話し合いで全員が納得できる答えが見いだせるなら、誰だって苦しむことも悩むこともない。

ましてや相手はシモンと違い、何十年も魔法世界解決不可能な問題と関わっていたものたちだ。

その信念の強さも半端ではない。


「・・・・済んだか、テルティウムよ?」


「ああ、もう十分だ。どのみち彼とは話し合いでどうにかなるなんて思っていなかったしね」


「そうか・・・」


これまでフェイトとシモンのやり取りを黙っていたデュナミス。

彼は反論も口出しもせず、二人の思いを黙って聞いていた。

そしてその直後に、フェイトとデュナミスの立っている空間が歪んだ。この場を後にするのだろう。

するとその時・・・



「道理は合わぬが・・・」



「えっ?」



「貴様の言葉は心を揺さぶるな・・・・・」



消える寸前、最後の最後にデュナミスがシモンに振り向いた。



「誰から見ても満たされ幸福なものの言葉には重みが無い・・・・ゆえに、人の心は動かせん。だが、貴様は満たされているように見えながらも・・・想いとやらを感じるな」



「お前・・・・・」



「ふっ、直ぐに会おう」



デュナミスはそれだけシモンに告げ、フェイトとデュナミスは姿を消した。

傀儡たちも消え、脅威が去ったことに囚人たちも皆ホッと胸をなでおろした。



「ああ・・・待っていろ。すぐに行ってやる」



フェイトが消えた空間。

いつまでもそこを見ているわけにはいかない。



「行くんだね、シモン君?」



だから、シモンは行く。



「ああ行こう、瀬田さん。アムグ。サラもハルカさんも。当然、ブータ! お前もだ! ようやく俺たちの出番がやってきた!」



「ぶーーーむ!」



「へへん、まっ、仕方ねーな」



「バカにはもう慣れてるからね」



「最後の舞台か・・・まあ、良かろう」



立ち去ったフェイトたち。

今度は自分たちが赴く番だ。


「確か、奴らの行った先は旧・オスティアの遺跡だったな?」


「うむ、黄昏の姫巫女もそこじゃろうな」


「十分だ。敵の根城が分かったんならそこをぶっ潰す! それが俺のやり方だ!」


彼らは顔を見合わせて頷いた。

さあ、地下で燻るのはもう終わりだ。

やるべきことが決まったら、さっさと天井突き破って世界に飛び出すのだった。


「アムグ署長!!」


「聞けい! ワシは今からこの場を離れる。この場の騒ぎと囚人たちの収容はお前たちで行うのじゃ。逆らうものは容赦なく首輪を爆破せよ!」


「りょ、了解しました!」


「さあ、騒ぎは終わりだ。全員再び戻れ。脱走などとくだらないことは考えるではないぞ! 回復薬もありったけ持ってこい! シモンの治療は移動しながら行う」


アムグの号令でキビキビ動き出す看守たち。

囚人たちも先ほどの騒ぎで疲れているのか、誰もが力が抜けて良からぬことを企んでいなかったのが幸いだった。

疲れたなと、肩の力を抜いて、壊れた監獄の中へ再び戻って行った。

だが、中にはそうでない奴もいる。



「おい・・・・」



「チコ☆タン?」



「ドリル野郎、アムグ、裏取引・・・・・というか、司法取引だ」



「なんじゃと?」



「俺の知ってる黒い猟犬(カニス・ニゲル)の情報を全部くれてやる・・・・幹部やテメエらがずっと追いかけている社長の正体もな。だから・・・」



床に寝そべりながら、ニヤリと笑みを浮かべるチコ☆タン。

彼はシモンを見上げながら・・・












「俺を今すぐ釈放して、一緒に連れて行け。そしたらテメエをブチ殺すどころか、テメエを手伝ってやるよ」










「「「「はああああああああああああああああああああああああッ!!??」」」」




シモン、瀬田、ハルカ、サラの絶叫が監獄内に響き渡った。

いや、他の首都の兵士たちや囚人たにも動揺が走った。


「バカ言え、お前なんか連れて行けるか!!」


「はあああああああッ!? なななな、何言ってんだよ、こいつは!? シモン、絶対ダメだからな!」


「まったく・・・どういう風の吹きまわしだい?」


「い、いや~・・・僕もなんと言えば・・・」


まあ、そりゃあそうだろう。

魔法世界の歴史に名を残す大怪物、爆乱のチコ☆タンが釈放どころか、一緒に戦わせろと要求してきたのだ。

ましてやチコ☆タンはシモンの愛する妹を傷つけ、殺そうとした、絶対に許せない相手だ。

そんな要件にシモンが応じるわけなど・・・


「アアン? テメエ、俺の要求を飲まねえって言うのか?」


「ふざけるな! お前は俺の妹を・・・美空とココネを傷つけた!」


「ア~? あんなもん、あのクソガキ共から先に向かってきたんだ、知るかってんだ。つうか、人がせっかく殊勝な態度に出てやってんだよ。ガタガタ言ってると、爆殺すんぞ!!」


どこが殊勝だと誰もがツッコミたかったが、命が惜しいので誰も言わなかった。

しかし、流石にこんな奴を連れて行くわけには・・・・




「よかろう」




「って、アムグ!?」




と、思った瞬間に、アムグがアッサリと承諾した。


「ちょっ、アムグ!? 何を言ってるんだ、こいつは・・・」


「シモンよ。残念ながら造物主の掟に逆らえる戦力は一人でも多いに越したことは無い。貴様の確率変動も完全ではない以上、政府側の戦力もそれほど期待できんじゃろう。じゃが、そ奴なら申し分ない上に、逆らえば首輪を使ってワシが押さえ込もう。これは超法規的措置じゃ!」


「おっ、話が分かるじゃねえかジジイ!」


「で、でもこんな危ない奴を連れて行くなんて・・・・」


「しかしどういう風の吹き回しじゃ。そんなにネギ・スプリンフィールドがアリカ姫の息子であるのがうれしかったか? サウザンドマスターがちゃんと姫を救ったのがうれしかったか?」


「そうじゃねえ。ムカつくが、借りは返さねえと気が済まねえ。あの女に出来た借りを息子に返して、全部チャラにしてやらア!」


今あるチコ☆タンの命は、不本意ながら救われた命だ。

その借りを返さんと、チコ☆タンは立ち上がる。

そしてその命の縁は・・・



「おやおやおいしい所取りもいい所だね。だったら私にもそれを分けて欲しいもんだね」



「ディーネ!」



彼女にもあった。


「アムグ、ミルフ、マンドラ・・・私も連れていきな。ちゃんと逃げずに働いてやるよ。それなら文句はないね?」


「・・・ディーネ・・・」


「ふん、まあ・・・貴様の罪は祭りに参加しただけで、シモンたちのおかげで、実際の罪状は大喧嘩した程度の罪じゃからのう。一晩監獄に叩き込んだから、もう十分じゃろう。大戦期の功績や貢献を考慮し、特別に許可してやるわい」


「ちょっ、いいのか? それに・・・ミルフにマンドラも?」


「無論じゃ、シモン。最後までワシも付き合おうぞ」


「当然だな。今更野暮というものだ」


チコ☆タンだけではない。ディーネもまた命がけの縁。

そしてミルフ、マンドラはさも当然のようにシモンたちと共に行くつもりである。

それはつまり・・・



「ミルフ隊長、ならば我々もお供します!」



「マンドラ隊長!!」



当然彼らの部下たちも付いてこようとするわけで、何名かの軍関係者たちも挙って参戦を希望しだした。

中には、命が惜しいと監獄に戻る囚人たちも居る。

だが、逆にドサクサに紛れて脱走のチャンスだと名乗りを上げるものもいる。



「けけけけけけ、おうおう、俺も連れて行け~!」



「しははは、取引だ~取引だ~、手を貸してやるぜ~」



「けっけっけ、おう、そうだ~」



「黙っとれ。・・・・・・重力10倍!!」



「「「「「「「「「「ぎゃあああああーーーッ!?」」」」」」」」」」



「連れて行く奴は、こちらで見定めるわい。テロリストや重要犯罪者はとりあえず出すわけにはいかんからのう」



だが、そんな連中にアムグは耳を貸さない。

いつの間にかこの急増チームの指揮を執っていた。


「い、いいのかよ・・・シモン」


「い、良いわけないじゃないか・・・でも・・・もう、俺がどうとか言える展開じゃないぞ?」


当初はシモンにブータ、そして瀬田にハルカにサラと、事情の知るアムグだけの4人の人間と2匹の獣で行く予定だったのだが、いつの間にかとんでもないことになってしまった。

ディーネとチコ☆タンですら既に信用できるか微妙な奴らに加えて、続々と人が集まっていた。

すると顔を青くさせるシモンに、ディーネが後ろからバシンと背中を叩いてきた。


「勘違いすんじゃないよ、ドリル男」


「いつっ、ディーネ・・・」


「この世界に住んでるのは私たちなんだよ。だから20年前から何の役にも立たねえ役人どもや、ガキどもばかりに任せちゃおけないんだよ。私たちはお前のために戦うんじゃないんだよ。自分のために戦うんだよ」


ディーネが笑う。


「そうじゃのう。お前のためじゃないぞよ」


「私たちもいい加減ケリを付けたいのだよ」


その隣ではミルフもマンドラも、既に決意をした笑みを浮かべていた。


「お前たち・・・でも・・・」


「でもも何もないわい。歴史の中に埋もれた地獄の亡者どもが穴倉から飛び出して貴様を後ろから後押ししてやるんじゃ。儲けものと思うんじゃな」


「俺様に許可なく世界を壊す奴らはブチ殺す!!」


アムグは親指を立ててニッと笑い、チコ☆タンは頼もしく叫ぶ。

この世界に住む彼らが自分たちの意思で決めたことをどうやって止めることができる。

いや、誰にも止められない。


「ミルフよ。貴様のところは何人じゃ?」


「オスティアや本艦に待機中の部下を集めればもっといるのじゃが、今この施設内に呼んで、待機させているのは50名弱だけだ」


「私の神速部隊も、今すぐだと20名だ・・・」


「何だい、大したことないね~」


「貴様の部下も一網打尽されたじゃろ」


「ああん、このクソミルフが! やんのかい? だが、それなら私の部下も連れてくよ? 政府の坊ちゃんどもよりは使える。私と同じ罪状なら、大した罪じゃないんだろ?」


「おい、クソ共。なら、俺のところの部下の三人も連れてくぞ。テメエら政府の連中よりは使える」


「おお、流石隊長ネ!」


「「「「「「「「「「ディーネの姐さーーーーん!!」」」」」」」」」」


「お、おい! 何を勝手に!」


「落ち着かんかい。まあいい。とにかくワシらとシモンに冒険王一家、黒い猟犬(カニス・ニゲル)にディーネのところを合わせて・・・、後は白き翼と政府側の戦力次第じゃが・・・・」


もはや善悪どころではない。


「ついでじゃ。今日釈放予定じゃった虎口のラオに、妖精ラン、ウルフ王子や蜘蛛魔族兄弟、ジギタリやティトリ、ゲッコなども首輪アリでよければ連れて行ってやるぞい? その代わり、しっかり働いてもらうがのう」


「「「「「「「「「「ぬああああにいいいいいいいいい!?」」」」」」」」」」


何と、チコ☆タンやディーネは愚か、他の囚人までアムグは数に入れようとしていた。

だが、その提案に対して囚人たちは浮かない顔だ。


「・・・・・・・」


「何じゃ? 政府公認で暴れる気は無いのか?」


アムグが誘った者たちは、誰もがそれなりに名の通った拳闘士や賞金稼ぎの猛者たちだ。しかし、彼らは顔を背けた。


「おい・・・さっきは俺たちも盛り上がったが、正直ザイツェフ・・・つうかチコ☆タンと違って、そんなもんに参加する気はねえよ」


「ぬっ、・・・・・・・・」


「そうさ、こいつは元々俺たちに関係の無い戦争だ。テメエら役人と、馬鹿な連中だけで勝手にやってろよ」


「大体、サウザンドマスターたちにやられた奴らも居るんだ、その息子の手助けなんざする義理なんかねえよ」


「正直、完全なる世界とか、俺たちにはどうでもいい話だからよ。世界の滅亡はお前ら政府の人間が食い止めろよ」


首都や帝国の兵士たちと違って、先ほどまでは盛り上がっていた囚人たちは完全に尻込みしていた。


「そうさ。チンピラの俺らには、世界の危機とか良く分かんねーし、そんな高尚なことに命を賭ける気はねえよ」


まあ、恐らくはこれが正常な反応なのだろう。

世界の滅亡、そして大戦期の頃から名を轟かせていた『完全なる世界』の名前に、囚人たちは萎縮してしまっていた。


「むう~、なんじゃノリが悪いではないか」
最終更新:2011年05月13日 21:15
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。