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117-弱音じゃなくて、強音を吐け!

第百十七話 弱音じゃなくて、強音を吐け! 投稿者:兄貴 投稿日:10/08/06-14:51 No.4395
巨大な魔力溜りが魔法世界に発生し、天空に魔力の川が流れていた。


光り輝くその流れは、メガロメセンブリア、ヘラス帝国、アリアドネーのみならず、世界のいたるところから確認できた。


光景は美しい。


しかしそれを美しいと思うものは居ない。むしろ世界に起こった異変に対して不安な表情を浮かべていた。


天に輝く魔力の流れが世界の人々の心に恐れを抱かせた。


世界の危機当時を味わった者たち、戦争の知らない時代に生まれた子達も含めて、全てが今この光景を目にしていた。


この異常事態に対して世界はかつてと同じように、メガロメセンブリア、ヘラス帝国、アリアドネーの全ての勢力が手を組み、混成艦隊を編成して彼の地へ向かっていた。



『いいか、緊張と警戒を絶対に解くな!! 今こそ我らの存在意義が問われるのだ!』



「「「「「「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」」」」」」」」」」



『敵は巨大! 我々の常識が決して通じぬと思え!!』



無数の艦隊、無数の砲台、無数の杖に無数の剣を掲げた無数の戦士たちが叫ぶ。


大戦を味わっていない若者を含め、大戦を乗り越えそれなりに名を馳せた将校や将軍たち。


そしてそれを束ねるのはアリアドネーのセラス、ヘラス帝国のテオドラ、メガロメセンブリアのリカード、オスティア総督のクルト、そして紅き翼のタカミチたちなど、見渡してみれば名の知れた連中ばかりだった。


しかし、これだけの戦力を引き連れて向かうものの彼らに全ての情報が耳に入っているわけではない。


世界各地より召集された戦力の数は、頼もしさよりもむしろ事の尋常さと不安を表しているようにも見えた。


世界の謎、敵の正体、戦いの意味、全てを知らされず、ただ世界を守るという曖昧な言葉だけに突き動かされ、世界の正義がオスティアに集結していた。


だが、アムグ同様に政府の上層部や一部の人間は既に、敵の勢力に対して自分たちの力が通用しないことは分かっている。


しかしそれでも一縷の望みに賭けて、三国より集められし艦隊、兵士は空一杯に覆いつくすほどに集い、にじり寄る決戦のときを待ち、先頭を走る白き翼たちへと接近していた。



「ダメか・・・ミルフ隊長、ドウカツ隊長にも連絡が取れない・・・まさか奴らにやられたのか?」



そんな中、数多く存在する艦の一つのメインブリッジにて、オスティア総督のクルトは爪を噛んでいた。


「どうしたんだい、クルト?」


心配そうにクルトの背後から顔を出したのは、タカミチである。


「いや、動ける戦力は集めようとしていたのだが、中々うまくいかなくてな。特にミルフ隊長に連絡が取れないのは痛い。・・・・奴らにやられたのかもしれないな・・・」


「ミルフさんか・・・懐かしいな。アムグさんとミルフさんには仕事でも、そして政府に追われて戦いになった時もいつも痛い目に合わされたからね、僕と師匠は」


顔をしかめるクルトとは逆に、タカミチはどこか懐かしそうな表情でタバコをふかした。


「そうか・・・たしかガトー・カグラ・ヴァンデンバーグとミルフ・・・そしてアムグは旧友だったな。だが、ミルフ隊長はまだしも、よくあの人もアムグなどという狡猾な獣人と友人になれたものだ」


「・・・・そうだね。そしてあのアリカ姫の処刑決行の日の僕たちやナギの所為であの人は失脚した・・・・」


「そう・・・だったな・・・今でも覚えているよ。あの時登場したお前たちを・・・・幸せそうなアリカ様も・・・・」


「でも、その所為でアムグさんには多大な迷惑を掛けてしまった・・・・僕たちを恨んでいるかもね・・・・」


「ふん、そういうタマだとは思えないが・・・だが、アムグの時代はもうとっくに終わった・・・・それは別に構わない。しかしミルフ隊長がこの戦線に居ないのは痛い。彼ならば不安に駆られている兵士たちも統率できただろうに・・・・」


「しかしそれでも今は僕たちで何とかするしかない。僕たち・・・そしてネギ君たちでね」


「言われなくても分かっている・・・・」


クルトは、ギリッと唇をかみ締め、そして余計な考えを全て振り払うかのように、首を振った。


「総督・・・首都大艦隊、さらに帝国、アリアドネー、かき集められるだけの戦力が間もなく集結します。リカード元老院議員、セラス総長、テオドラ殿下からも通信が来ています!」


メインブリッジにて、一人の兵士がモニターを見上げながらクルトに告げる。だが、クルトの表情は硬いままだ。


「そうか・・・・・集められるだけの戦力・・・とはいえ、どれだけが生き残れるか・・・・」


造物主の掟の前には、ほとんどの戦力が使い物にならない。それは数がどうとか、レベルがどうとかという問題ではない。


『おう、こちらリカードだ。間もなく俺たちも合流する』


『テオドラじゃ、同じく』


『セラスよ。我々も白き翼の姿を確認したわ』


『了解しました、こちらからもう一度連絡をするまで待機なさっていてください』


そのことをよく理解しているクルト、そしてタカミチだからこそ、いくら味方の数が増えようとも安堵したりなどはしない。

そう、味方の数が何人いようと全ての鍵は彼らが握っている。

だが、クルトは中々ソレを口に出すことが出来ずどこか躊躇ったような表情だ。


「クルト・・・・お前の覚悟も思いも痛いほどに分かる・・・でも・・・」


あれほどのことがあったのだ。口に出しづらいのはタカミチにも分かる。だが時間は無い。


「黙れタカミチ・・・何が分かるだ。旧世界の学園で平和面していたお前に何が分かる!!」


「・・・・・・・・・・・クルト・・・・・・」


「それに私だって・・・分かっているさ・・・私も分かっているさ・・・・・・・私もかつてはナギたちに・・・・・・・未来を賭けたのだから・・・だが・・・」


クルトはかつて信じたものを見放して、その道から外れて自分の道を進んだ。そのことを間違っていたなどとは今でも思わない。

だが、だからこそそれは父の道の後を進もうとしているあの少年とは相容れることが出来ないということである。

しかし先ほども言ったように、もはや事態はそれどころではない。

いつの日か訪れるかもしれないと思っていた世界滅亡の危機が、正に今目の前に迫っているのである。


『総督、考えている暇は無いわ。そろそろ目的地に着くわ』


『セラス総長・・・・』


『情けないかもしれんが、頭を下げるのも責任者の仕事じゃ。ネギたちはそこまで心が狭いとは思えんからのう』


『殿下・・・・わ、分かりました』


だからこそ、生き延びなければならない。


「タカミチ、今からネギ君たちにも通信を取る。頭を下げて協力を頼んでみる・・・・こうなっては・・・・彼らだけが希望だ」


「ああ。そのことに関しては僕も異論は無い。彼らに・・・・明日を賭けよう」


「総督、この辺りの魔素が乱れているため、通信状態は思わしくありませんが、何とか白き翼の艦に繋ぎました!」


守らなければならない。どれほど屈辱にまみれようとも。

オペレーターの言葉にクルトは小さく頷き、目の前にあるモニターに向けて叫んだ。


「白き翼の諸君。新オスティア総督のクルトです。応答を願います。まことに都合がいいと思われるかもしれませんが、この事態に対する協力を要請したい」


集結する世界最高の戦力たちの先頭を先駆けるネギたちが居ると思われる方角を眺めながら、クルトは少し気が進まないような表情で咳払いをした後、観念したようにグレートパル様号に通信を入れるのだった。







「あ、あの皆さん! 急いで来てください!!」


「宮崎?」


「あの、その・・・・クルトさんからの通信が入りました!」


「「「「「!?」」」」」


かつてのわだかまりを捨てて、魔法世界の戦力を結集し、そして自分たちを先頭に立たせた魔法世界最大規模の戦いが始まるのである。


『・・・クルトさん、ネギです』


通信を受けたネギはコクピットにて少々躊躇いながらも通信に応えた。

それはそうだ、つい先ほどまでのオスティアでのクルトとのやり取りを考えると、警戒するというものだ。

しかし・・・


『やあネギ君、無事なようで何よりだ』


『えっ、タカミチ!? 良かった、タカミチも無事だったんだね』


モニターに映し出されて先に応えたのはタカミチだった。そのことにネギたちだけでなくほかの仲間たちも安堵した。


『ああ、少々説得に手こずったがこの事態だ。クルトも快く・・・・』


『不・本・意ですが、協力することになったしだいです!』


『クルトさん!』


不機嫌そうに顔を歪めているクルト、その背後では笑いを堪えているタカミチ。それを見て安心した。

クルトに対しての疑念はあったが、タカミチと並んで立つ姿を見ると、どこか信用してもいいのではないかと思えてきた。


『・・・話を進めても?』


『はい、お願いします』


『ではまず・・・現状の確認、そして我々の今の状況・・・・そして君たちへの頼みごとを言います』


『・・・・・・・・はい・・・お聞きします』


一つ一つ丁寧に、そして何かを伺うようにクルトはしゃべりだす。


しかしクルトの言いたいことはネギたちにも分かっている。クルトの頼み事はなんなのかも分かっている。


ユウサの戦いを経て、今の自分の思い、仲間たちの意思、既にそれを確認している以上是非もない。


魔法世界最高戦力を引き従え、ネギたちは先頭を走り、最終決戦の地へと赴くのだった。




だが、その最終決戦・・・・



「そうか、・・・麻帆良で確認されたか・・・そうなると例の子供が麻帆良に帰ってくることはないかもしれんな」



彼らの知らぬところで別の動きがあることを、まだ誰も知らない。


「オス。世界樹の発光を確認・・・やっぱ麻帆良側は図書館島の地下にあるアレを完全に破棄してなかったようだすね~。まあ、これで面倒な新世界は排除されるってことでいいだすかね~。でもいいだすか~? ボスは友達が居たんじゃないだすか? 不動の何とかとか・・・」


「アムグか・・・懐かしいが・・・まあ、たしかに何人か顔見知りは居たが・・・・名残は無いな・・・」


「ん~、冷たいだすね~」


片膝付きながらも調子よさそうな声でヘラヘラと述べる忍に対して、報告を受けた男は顔色一つ変えずに受け流した。

そのあまりにも反応の無い反応の仕方に少しつまらなく感じ、黒装束の忍はマスクの下で頬を膨らませた。


「なんだ、・・・・ワシに文句でも?」


「いやいや、滅相も」


ぶーたれる忍を一睨みするだけで、忍は焦ったように首を横に振った。


「ふん」


そこは奇妙な空間だった。

いや、部屋自体に特に変わったところは無い。

広々とした部屋に机に、大きな椅子。机の上には大量の書類を山済みにされ、まるで企業の幹部クラスの社員に宛がわれるような個室だ。

だが、その部屋の主と訪れている忍者の存在が奇妙だった。

リクライニングシートをまるで玉座のように深々と座り、手すりに肩肘をつけて、頭を垂れる忍を見下ろす男。

彼こそがこの部屋の主、そして今後の世界の流れを左右させる人物でもある、ジェノム・テンジョウ。


「ま、まあ~ボス、ほんの茶目っ気」


「冗談は好かん」


「だ・・・そうだすよね・・・」


冗談で済むことと済まないことの境界線をイマイチ理解していない忍だが、それでも信頼はある。

だからこそ、この男は常にこの忍を引き従えている。


「ならばくだらぬ事を考えていないで、準備をしろ」


「じゅ、準備?」


首を傾げる忍。すると目の前に居る己が仕える主が、重い腰を上げて立ち上がった。


「おおよその結末は予想できる。しかしワシらが重要視しなければならんのは結末の後だ。良くも悪くも世界は混乱するであろう。色々な奴らもそれを察知して動き出しておる」


「ボ、・・・ボス・・・?」


「アムグは最早動く気も無い。あやつが静観を決め込む以上、メガロメセンブリアは捨て置いてよい。アーウェルンクスに勝手にやらせる。例の小僧も、あの学園祭とやらの戦いを映像で見たが、血筋は良いが、あの程度の雑魚がどうこうすることもあるまい。ならば、ワシらが今気にせねばならんのは学園だ。あの学園にこの混乱は収められまい。まあ、滅びればそれまでだが、流石に民間人にまで被害を及ばせるわけにはいくまい」


立ち上がる。その動作だけで空気の読めぬ男の背筋も思わずピンとなった。

そして上げた重い腰と同時に、鋭い眼光で男は重い口を開けた。


「麻帆良へ向かう」


「・・・・・・・・はっ?」


口元をマスクで覆っていても、ポカンと大きく開けているのはハッキリと分かる。


「あ、あの~・・・ボス?」


「流石に世界樹の発光で麻帆良も動き出すであろう。丁度いいタイミングで呪術協会の近衛詠春も麻帆良にいることで、隠れてコソコソと余計なことをされてはかなわんからな。ならばワシらもそろそろ動くとしよう。浦島家と青山家の動きも気になるが・・・」


「・・・・助太刀? ・・・邪魔しに? アーウェルンクスに? 魔法使いに? どっちに?」


「くだらぬことを聞くな。世界に流れる血を少しでも緩和できる方にだ。夢想に未来は託せぬ。大局はこの目で確かめよう。この惑星の全生命の中から選ばれた守護者としてな」


「はあ・・・ごもっとも・・・」


「それに娘の言っていたことも気になる。例の男・・・麻帆良で直接確かめるのも良かろう」


玉座から動き出した覇王の見据えた未来は分からない。


「今すぐ使える者をかき集めろ。武装のレベルは好きに任せる。それと・・・娘にも連絡を入れておけ。今からそちらに向かうとな」


「あ、いや~それが~、お嬢も大学部の夏休みを境に連絡が途絶えて・・・旅行でもしてるんじゃないだすか?」


「むっ、そうか・・・屋敷に戻らんと思えば自由な奴め。我が娘ながら相変わらず考えていることが分からん。・・・・まあよい、完全なる世界に魔法使い共、どちらがこの戦を制しても世界の流れは変わる。ワシらの御しやすいほうであればよいが・・・・・」


時代の先を見据えて、男は王座からついに動き出した。


向かう先は麻帆良学園。


世界に表と裏が存在するのであれば、魔法使いたちなどの世界から秘匿とされた存在たちは裏。


しかし今、表の世界にその名を馳せ、全てを持つものが動き出した。


金、権力、そして力。


その全てを特化させて所有する男が、覇王のオーラをかもし出しながら、魔法世界の決着を待たずして動き出した。


ネギやシモンたちの行く末に、この男がどう行動を起こすのかは、それは二人がこの男と出会うまではまだ分からないのだった。


だが、それは遠くない未来のことである。


しかし今は少し先の未来よりも、まずは目の前の今を戦わねばならない。


しっかりと前を見据えて、ネギと白き翼に新生大グレン団たちは飛行船の外に飛び出して、目の前に輝く巨大な魔力の膜、そしてその中心で浮かぶ巨大な遺跡、墓守人の宮殿をその目に焼き付けていた。



「あれが・・・墓守人の宮殿・・・あそこにアーニャが・・・・・そして・・・・アスナさん・・・」



ごくりと息を飲み込みながら、ネギは墓守人の宮殿を眺めた。

これまで映像では見たことあるものの、自身の目で見るのは始めてである。

そして何より、実はこの墓守人の宮殿とは20年前の大戦期に、ネギの父親でもあるナギがラカンたち紅き翼を引き連れて完全なる世界と戦った場所でもある。

その父の拭き残しと、20年後に息子である自分が同じ場所で戦うなど、妙なめぐり合わせだと感慨にふけっていた。


「くう~~~、ラストダンジョンって奴ね~! あそこに敵が全員集合して、さらにアーニャちゃんまで居るのね!」


「ああ、ほんでもって、この世界を救う鍵もある」


「裕奈さんと小太郎君の言うとおりです。目的のものが全部揃っているということは、分かりやすいですね」


「うむ、しかし・・・問題はあの巨大なバリアでござるな・・・・」


「はい、私も計算してみましたけど、とてもじゃないですけど我々の火力で穴を開けられませんよ~」


目的地が近づくにつれて仲間たちの気持ちも徐々に高ぶっている。今すぐ飛び込みたい気持ちに駆られて、身を乗り出そうとする者たちも居る。

アーニャ、そして一部のものを除いて知られていないが本物のアスナが敵の手の中にある。

そして世界を救う鍵となる、造物主の掟・最後の鍵も存在する。

言うなれば夏休みから始まったネギたちの旅路の最終目標地でもある。気持ちがたがぶるのも無理は無い。

途中、宮殿を覆う巨大な魔力の障壁の存在が気がかりとなったが、そこは偽アスナ、フェイトたちの情報を持っているルーナが簡単に解明した。


「あの・・・ハカセさん。その障壁の最下部からなら・・・簡単に入れますよ?」


「えっ?」


「はあ!?」


障壁は首都艦隊の主砲でも打ち抜けないという強大な壁であったのだが、バリアの最上部と最下部は魔力が台風の目のように穴が開いているということで簡単に入れることを告げられた。


「え・・・え~っとその・・・ちょっといいの、アンタ? こんなこと言って・・・あ、はい・・・その自分で考えて・・・」


「アスナ・・・とうとう壊れたの?」


「つうか、何でアスナがそんなこと知ってんの? 電波?」


「ち、違うわよ、まき絵も裕奈も変な事言わないでよ! そ、そう・・・これは・・・覚醒よ! 覚醒した私の二重螺旋の遺伝子が教えてくれたのよ!!」


「意味がわかんねーーッ! つうか、何語それ!?」


敵の一味でも会った偽アスナの言葉。事情を知るものたちだけがコッソリのどかを見ると、のどかは小さく頷いた。どうやら嘘を言っていないようである。

ルーナが何を思って自分たちにこんなことを教えたのかは分からないが、情報に嘘はなさそうである。

しかし、事情の知らない者たちにはアスナの言葉が異常だと思っても仕方が無い。

だが、小太郎がケラケラ笑いながらまき絵と裕奈たちを抑えた。


「まーまー、ええやないか、姉ちゃんたちらしくもない。理屈はどうあれ行き方が分かった以上、行くしかないやろ?」


「そうだな、コジローの言うとおりだぜ! ようするに敵のデッカイ壁には実は穴が開いてたから、そこから入れるって事だろうが!!」


「そう、細かいことは気にする無かれ!」


「うむ、大雑把な我々には大雑把な説明で十分だ!」


小太郎の言葉に同意して、豪徳寺たちも激しく頷いた。

それを聴いた瞬間、裕奈たちもそれ以上追及しようとせず、アスナの謎はうやむやにされた。

偽アスナもホッと胸をなでおろし、小太郎に苦笑の笑みを浮かべながら、「助かった」と合図を送った。


「さて、僕たちのやるべきことは大体決まりました。大前提はアーニャの救出に造物主の掟・最後の鍵の奪取。目的達成のために出来る限りのことを魔法世界の方々と協力し合う。皆さんもそれでいいですね?」


最後の意思確認として口にしたネギだが、目の前にいるものたちは最初から最後までまったく気持ちに変化は無いようだ。

おうと、全員が頷いて自分たちのなすべきことが決まった。

新生大グレン団と白き翼の連合チーム。シモンやヨーコたち大グレン団とは少し違うが、ネギにとっては変えがたい頼もしい仲間たちだ。

このチームならどんな困難も成し遂げられると心から思えた。

全員の了承を得て、ネギは最後に彼らに叫ぶ。

確認ではない。

決意の言葉だ。



「行きましょう! 最後の戦いです!」



「「「「「「「「「「オオオオオオオオッ!!!!」」」」」」」」」」



天より高く響き渡るほどのネギの決意の言葉と仲間たちの決意の叫びが響き渡った。


「よっしゃあ、やるぞー! とっ言っても、私は待機組だけど」


「くう~、世界の危機だと分かっているのに不謹慎ながら燃えてきた!」


「頭を使う面倒ごとはごめんだけど、こういう荒っぽい面倒ごとなら大歓迎だ!」


「まったくだ!」


さあ、あとは思う存分大暴れするだけだと誰もが表情を綻ばせた。


中には緊張で強張っている少女たちもいるが、この熱気と気合が上回って、何とかなるような安心感にも包まれていた。


自分たちの仲間を救うため。


自分たちのこの世界で繋いだ絆を取り戻すため。


奴隷長の事を心の中で呟く夏美やトサカのことを想う亜子にアキラ。エマを想う木乃香にエミリィの事を想う夕映にコレットにベアトリクス。


大切な人たちを取り戻すため、お互いに大丈夫だと笑顔で頷きあい、彼女たちも前を見た。



だが・・・・敵はあくまで敵。



こちらの準備が全て整うまで待ち構えているほどのお人よしでもない。



「は~~、あの男と同様忌々しい木偶共が囀って・・・・」



「「「「「!?」」」」」



脅威は既にすぐそこに居た。

開戦の合図を待たずして、既に敵は直ぐそこにいた。


「つ、月詠ッ!?」


「本物も偽者も無く、現実の戦と血の味を教えてあげますえ~!!」


誰にも気づかれずにこの場までたどり着き、妖艶な笑みを浮かべながら、月詠は現われた。


その瞬間、本当の意味でこの最終決戦の開始の合図が鳴らされたのだった。


「ふん!」


「おっ!?」


途端に銃声が鳴り響く。

現われた月詠に警告も威嚇もなしに、龍宮が拳銃を連射した。


「た、龍宮さん!?」


「止めるな、ネギ先生。あれは殺すものの目だ。快楽に身を委ねて殺すものの目だ。容赦は出来ないよ」


「は~、挨拶も無くいきなり撃つやなんて、ネギ君のお仲間にしては非情ですな~、ウチは好きやけど」


「今すぐ消えてくれたら少しぐらいは好きになってやるよ」


放った弾丸は、驚異的な月詠の反応速度で切り裂かれた。

弾丸をいとも容易く切り裂く技量には言葉にせずとも誰もが息を呑む。だが、一々驚いていてはキリが無い。もう戦いは始まっているのだから。


「ホンマやな・・・・・」


「ほッ!?」


月詠の背後に風が吹く。

咄嗟に振り向いた瞬間、自分に振り下ろされる爪を見た。

慌てて体を反転させ、バックステップを取りながら無我夢中で剣を横一文字に振りぬいて難を逃れた。

だが、完全に回避できなかったのか、月詠の肩には爪で引き裂かれて薄く血が滲み出てきた。


「へっ、テメエが現われたんは奇襲のつもりやろうが、奇襲は油断しとる相手にしか通用せん。ついさっきムカつく鬼と戦っとったせいか、全員気ぃ立っとるんや。殺意を持って現われた敵には、それ相応の態度で望ませてもらうで」


「ふふ・・・犬上・・・小太郎君・・・」


かつては味方として共に戦ったが、今は違う。殺意と狂気を持って現われた敵に油断などするつもりは微塵も無く、小太郎は再び構えた。


「は~ええわ~・・・ちょいとつまみ食いのつもりが・・・・」


敵意を向けて構える者たちに対して、月詠は瞳をとろんとさせた。


「メインディッシュ以外もこうもうまそうやなんて・・・・・涎が出てまいますな~!!」


「はっ、食いすぎて腹を壊すのだけは気をつけるんやな!!」


「小太郎君!?」


月詠は二刀を交差させて十字に小太郎を切り裂こうとする。

しかし対する小太郎は、危険を恐れずに月詠の十文字切りの交差点に自分の爪を叩き込んで受け止めた。


「ぬ、・・・・ぬぬ・・・やりますな~」


「夏美姉ちゃんたちは下がっとき!! ディナーちゅうもんが、どうやらもう始まったみたいやからな!!」


飛び出してきた小太郎の手応えに興奮したのか、月詠の笑みはさらに吊り上った。

一方で小太郎も、ぺろりと唇を舐め、滾った血を熱くさせながら拳を繰り出していく。

技量と間合いの広さは月詠の方が上だが、スピードとパワーは圧倒的に小太郎のほうが上である。


「うるああああああああああああ!!」


「むむむむ、アンタも中々の歯応えですな~!!」


小太郎が押せ押せで月詠を追い詰めていく。いかに月詠とはいえ、これほど息つく暇も無く連打をされ、おまけに逃げ場も無い狭い船上の上では思うように避けることも出来ない。

そして何より今は一対一ではない。


「・・・ッ!?」


月詠に迫るクナイ。

楓だ。

咄嗟に剣でクナイを弾くが、飛んできた方向からはクナイを投げた状態のままこちらを細い両目で睨みつける楓。

そして少し視線をずらすと二丁拳銃で銃口を向けてくる龍宮。

木乃香たちを庇うように立ちながら、いつでも抜刀できる体勢で構える刹那。

拳を鳴らして、周りを囲むグレン団たち。


「は・・・はは・・・えらい気合の入りようですな~。油断しとるかと思いきや、準備万端みたいですな~。これは、油断したら直ぐに満腹になってまいますえ~」


あまりにも臨戦態勢バッチリなこの状況。さらに一番月詠が警戒しているはずだったネギすらまだ戦闘に加わっていないのに、取り囲まれる自分。

さすがに少し侮りすぎていたと、笑いながらも額に汗が流れていた。

だが、元々気合を溜め込んでいたグレン団は当然のこと、小太郎たちもユウサという最悪の強襲を受けた直後ゆえに警戒心も神経も全開に研ぎ澄ましていた。

ゆえに月詠の奇襲には一瞬驚いたものの、こうして万全の状態で迎え撃つことが出来たのだった。


「月詠さん・・・あなたではこの包囲網から逃れられません。ただお金で雇われただけなのだとしたら、ここで降伏していただければ何もしません」


「・・・ふふ・・・言うようになりましたなぁ。己の強さだけでなく、周りを信じる余裕まで生まれとる。ゲートポートでは自分が傷つき、仲間が傷つきうろたえてた子供がよう成長しなはった」


ゆっくりと前に出て月詠に降伏をネギは提案する。

ネギの力無くして、自分をこのような状況に追い詰める周りの者たちのレベルアップには月詠も予想外だった。


「でもな・・・ネギ君・・・」


だが、その予想外が月詠のような輩には、うれしい誤算でしかなかった。

ニタリと笑いながら月詠は上空へ飛び、同時に造物主の掟をその手に出した。


「ッ、アレは!?」


「こんなたくさんの美味しそうなもの目の前に引き下がれやなんて、人を理解してないにもほどがありますえ~!!」


「むっ、あれは!?」


「げげ、なんかへんな模様がいくつも浮かび上がってるよ!!」


月詠の持つ造物主の掟が光った瞬間、空にいくつもの紋様が浮かび上がった。


「召喚陣だ!!」


「まずい・・・・来るぞ・・・・」


ゴクリと息を飲み込むネギたち。

そして次の瞬間、浮かび上がった紋様全てから、数え切れないほどの怪物たちが次々と飛び出してきた。



「ふふふふふふふ・・・・ひはははははははははははははは、地獄を見せてあげますえ~。ん? 空の上で地獄とはこれ如何に?」
最終更新:2011年05月13日 21:16
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