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117-3

ヒロインのピンチに現われる王子様など自分には居ない。


だが、それならばこの逞しい両腕の感じはなんだ?



(ネギ君? ナギさん? ううん・・・・違う・・・・もっと大きな・・・)



自分が今まで感じたことも無いほどの逞しく太い腕の中。



(ナギさんはもっと温かくて優しい感じがしたけど・・・この人は・・・・・・力強い!)

に現われた・・・・



自分のピンチ

(まさか・・・・まさか・・・・・・!)



亜子の・・・



(ウチの・・・・王子様!?)



亜子は恐る恐る、目を開けた。


ネギでもナギでもないこの逞しい腕の正体は何なのか?


ひょっとしたら、自分の未だ見ぬ王子様が助けに来てくれたのではないかと興奮し、亜子は目を開けた。


するとそこに居たのは・・・・
















「ウガァァァァァァァァァァァ!! ゴラアアアアァァァ!! 何で人間のメスが上から落ちてきたんだァァァッ!?」








「・・・・・・・・・・・・・・・・・・へっ?」







チコ☆タンだった・・・・・・



「コラァ! クソメスがァ! テメエ、誰だァ!! 何で俺様の上から落ちてきたんだゴラァーーーーッ!!」



「・・・・・・・・・・・・・・・・」



まあ、少なくとも白馬に乗った王子様などでは断じて無い。


そのあまりにも凶暴で凶悪な人相は・・・・・




「ば・・・・ば・・・・ば・・・・」




「ア゛ン?」




「バーーーーケーーーーモーーーーノーーーーーやああああああああああああああああ!!??」




「誰が化物だグラアアアアアアアアアアア!!」




まあ、化物以外の何者でもなかった。




「いやああああああああ、食べられてまううううう!! ネギくうううん、トサカさああああああん、助けてエエエエエエ!!」




いくら、このごろの出来事で色々なことに耐性の付いていた亜子とはいえ、チコ☆タンをドアップで見てしまえばどうしようもない。


散々騒いだ挙句に、彼女は泡を吹いて気絶してしまった。



「んだごのメスはアアアアアアアア!? つうか、何で上から? ん? あの飛行船・・・・そうか、あれがドリル野郎のほざいていた奴ら・・・そしてあのクソ野郎の息子が居るんだな!!」



亜子が落下してきた上空に二つの飛行船を確認し、チコ☆タンはそれが直ぐにネギたちの船だと理解した。


ニヤリと笑みを浮かべて、爆風を操りチコ☆タンは一気にグレートパル様号へと飛んだ。



「あ、亜子が・・・・・」



「むっ、何かが近づいてくるぞ!?」



「みんな、気をつけるでござる!」



亜子が落ちたかと思えば、様子が違う。


遠くからでは良く分からないが、黒い人影が亜子を受け止めた。


そしてその黒い影は強烈な爆発を起こし、その爆風を利用してグングンと近づき、自分たちの前に不敵な笑みを見せて現われた。



「「「「・・・・・・・・・・・」」」」



「なんだ~、メスがゾロゾロしてやがるな~」



その見てくれに少女たちは思わず言葉を失い・・・



「「「「「「ば・・・・・化物がしゃべったアアアアアアアアアアア!!??」」」」」」



「なんだとグラアアアアアアアアアアア!! 誰が頭の足りない脳筋化物だアアアアア!!」



「「「「「そこまで言ってねエエエエ!?」」」」」



世界の希望にしてはあまりにも普通の子らしい反応を見せたのだった。



「っていうか、亜子ォ!?」



「ま、まずい和泉が化物に食われるぞォ!?」



「なんかレベルが桁違いっぽいんですけどォ!? 敵の本拠地に乗り込む前に魔王が現われたアアアア!?」



「こいつ、只者じゃない! 楓!」



「ウム! 真名、小太郎、古! おそらくこやつはボスクラスでござる!」



「亜子を放すアル!!」



「テメエがボスかい!!」



無量大数の怪物たちを前に、命惜しまず果敢に戦ってきた者たちだが、見てくれだけではなく、内に秘めた純度の高い怪物を前に、ようやく普通の少女らしく悲鳴を上げた。

だが、事情を知らない子達からすれば当然の反応。

チコ☆タンはアムグやシモンの手前、沸き起こる怒りを懸命に堪えようとするが・・・・



「誰が食うかァ!! けっ・・・今すぐ皆殺しにしてやりたいところだが・・・・・・・・・」



「あのーーーーーーッ!」



「アン?」



のどかが、恐れを打ち負かし、勇敢に前へ出て、チコ☆タンに指を指して叫んだ。



「あ、・・・・我汝の真名を問う(アナタノオナマエナンデスカ)!!!!」



「宮崎!」



「本屋!?」



のどかの能力・・・・・・・・・


(おそらくこの人は敵の主力のはず! ここで・・・ここで私ががんばらないと!)


激しい戦場の中で、己の出来ることをするためにのどかが、危険を顧みずに甲板へ顔を出してチコ☆タンに問いかける。



「ふっふっふ・・・俺の名前? いいだろう、教えてやる」



すると・・・



「俺はこの世界に轟く世界最恐の傭兵結社。黒い猟犬(カニス・ニゲル)の賞金稼ぎ部門・第17部隊隊長! アレクサンドル・ザイツェフ。世界に上る太陽の光をも暗雲で遮る俺様を人はこう呼ぶ・・・」



のどかの能力を知らないチコ☆タンはベラベラと語りだし、そしてニヒルな笑みを浮かべてキメる。



「黄昏のザイツェフとなッ!!」



しかし・・・・













「・・・・・・・・チコ☆タンさん?」



のどかの前には全部筒抜けだった・・・・・



「「「「「へっ・・・・?」」」」」



時が止まった。


怪物たちは容赦なく攻撃してくるのだが、この瞬間だけこの場の時が止まった気がした。


少女たちはトントンと耳を叩きながら、自分たちの聞き間違えではないかというような顔をしながら、のどかを、そしてチコ☆タンを見る。


すると・・・



「な、な、な・・・・・・・」



フルフルと黒い肌が真っ赤に見えるほど震えて・・・・・



「・・・・・・・・・・な、・・・・なん・・・・・テメエ・・・・なんで俺の名前が分かったアアアアアアアアア!?」



爆発してしまった。


「ちょっと、本屋たち何してるのさ!?」


「おい、白き翼のお嬢さんたち! 攻撃が止まってねえか!?」


もう一方の飛行船に乗り込んでいる新生大グレン団たちが、急に攻撃の止んだグレートパル様号を不審に思い、側によって大声で叫んだ。

だが、何事なのかとグレートパル様号の甲板を見た瞬間に、全員が固まった。



「げっ!?」



「なァ!?」



「むむッ!?」



「あれは!?」



「・・・・アレは・・・・」



そう彼らは既に知っている。

空中大喧嘩祭を経験した豪徳寺たち、そして怪物の恐怖を間近で味わったシャークティ、ココネ、美空も気づかないはずは無い。

ソレを視界に入れた瞬間、白き翼たち以上の反応を見せた。



「バカな!? 逮捕されたはずでは!?」



「ウ・・・・アウ・・・・・」



「げっ・・・・げええええええええええ!? チチチチ、チコ☆タン!? 何でここにいるっすかァ!?」



大爆音が響き渡る空中でも、美空の声はよく響いた。


そして美空の叫びを聞いた瞬間、固まっていた少女たちも目を覚ました。



「ちょっと待って!? 何? 美空ちゃんたちこいつの事、知ってるの? つうか、こんなボスキャラみたいのがチコ☆タンなんてかわいい名前なの?」



「ええ!? 本名なの!? そんな名前が!?」



「バッ、裕奈、まき絵!? こいつの名前をバカにしたら!? ・・・・・・・うわ~・・・・」



そしてチコ☆タンを知らない少女たちは言ってはいけないことを言ってしまった。



「テ、テメエら・・・・・・・・・・・・・・テメエらそれでも人間かァァァァァァァ!! テメエらの血は何色だァァァァ!!!! ド畜生がァァァァ!!」



ブチキレタ・・・


その癇癪は大気を揺らし・・・


それに構わず、チコ☆タンの背後から巨大な2匹の竜型のゴーレムが襲い掛かるが・・・・・・



「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!! ってトカゲが俺の後ろを飛ぶんじゃねえええええええええ!!」



振り向きざまの拳骨でぶっ飛ばした。



「「「「「んなああああああああああああああ!!?? ド、ドラゴンを殴り飛ばしたアアアアアアアア!?」」」」」



あまりにも少女たちには刺激が強すぎ、全員顎が外れそうなぐらいに口を開けて驚いた。



「なんやてえ!! 大型種が瞬殺やとォ!?」



「こ、こいつ強いアル!? ・・・・でも、竜に襲われて返り討ちにしたところを見ると、この化物どもの仲間じゃないアルか?」



「ま、真名? どうしたでござる・・・そんなに難しい顔をして・・・」



「い、いや・・・・チコ☆タン・・・・まさかな・・・・はは・・・そんなはず・・・あるわけがない・・・わけでも・・・なさそうだな・・・おいおい・・・狂い笑いに続いて今度は爆乱とは・・・・割りに合わないにもほどがあるぞ」



「つうか、何でこいつがここにいるっすかァァァ!!」



「アニキ・・・やだ・・・怖い・・・ココネ、チコ☆タンやだ・・・・・・」



「ココネ、今は泣いている場合では・・・しかし何故でしょう・・・私・・・どうしてチコ☆タンがここに居るのかは知りませんが、どうしてもあの人が関わっているとしか思えないのですが・・・・」



もはや何がなんだか分からず、ただでさえ混沌としていた戦場が更に混沌と化した。



「生命はな~・・・生まれも親も本名も選べねんだよグラアアアアアアアア!!!!」



もはや子供の癇癪のような、しかしそれでも洒落にならないほどの覇気の篭った怒号が炸裂する。

思わず全員が耳を塞いでしまうほどのだ。

月詠が召喚した怪物たちすらその怒号で吹き飛ばされている。

さすがにそんな強烈な物が響き渡ればネギすら気づく。


「ッ、皆さん!!」


「ネギ君!?」


雷天状態で放電したままのネギがパル様号に両の足で降り立つ。

目の前に現われ、亜子を指先で摘んで持ち上げているチコ☆タンを睨みつける。


「あなたは・・・・何者ですか?」


ネギとて一瞬で気づく。目の前の怪物の強大さを、目の前に立つだけで理解した。


「・・・ネギ・・・・へっ・・・・そうか・・・テメエがあのバカと・・・あのクソ女の子供か!! 似てやがる・・・・似てやがる!!!」


そして怪物はネギに対して驚いたように目を見開き、次第に機嫌良さそうにニヤニヤ笑い出した。


「に、似ている? な、何者ですかあなたは!? いえ、その前に亜子さんを離してください!!」


「あ~・・・こんなクソ女どうでもいいんだよ。ほらよ」


「っ、亜子さん!?」


ポイッと亜子を目の前に投げ捨てるチコ☆タン。

慌ててネギたちが彼女の元へ駆け寄る。

しかしその間にも敵は止まらず背後からも襲い掛かってくる。


「ッ、だあ、もう!! なんや知らんがピンチや!」


「くっ、ただでさえ数が多すぎるのに、あの化物まで現われて!!」


亜子に駆け寄るネギたちを守るように、小太郎やグレン団たちも奮闘するが、現われたチコ☆タンに警戒する者たちに人数が裂かれて押され気味になってきた。

しかしそれでもネギは振り返らない。

背中を小太郎たちに任せて、亜子を、そして目の前に居るチコ☆タンから目を離さない。


「うっ・・・うう・・・」


「亜子さん!」


「ネ・・・・ネギ君・・・・」


気を失っていた亜子をネギは抱き起こす。


「ネギ君・・・ごめん・・・ウチ・・・・足引っ張って・・・ドジで・・・脇役で・・・」


「何を言ってるんですか、亜子さん。亜子さんだって以前、ウジウジしている僕の背中を押してくれたことがあったじゃないですか」


「ネ、ネギ君・・・・」


「脇役なんて居ません。人は懸命に生きてさえ居れば人生という物語においては誰だって主役なんです」


「ネ、・・・・ネギ君!!」


ぶわっと溢れる涙を堪えられず、亜子はネギの腕の中で涙を流す。

こんな状況下に些細なことで思い悩む自分はなんとちっぽけな事かと亜子は涙を流し、ネギは優しく微笑んだ。

その様子を戦場下でありながら暖かく微笑む仲間たち・・・・なのだが・・・・



「ウガアアアアアアアアアアアアアア、戦争忘れてラブコメってんじゃねえええええええええ!!!!」



存在を一瞬忘れられていたチコ☆タンは我慢できずに雰囲気をぶち壊した。



「ウガアアアアアアアアアアアアア!! つうか、やっぱもうどうでも良くなった!! やっぱテメエら一家は親子揃ってムカつくことこの上ねえ!! とにかくテメエは一回ぶん殴らせろォ! 爆殺させろォ!!」



「僕の手の届く範囲ではもう誰も傷つけさせない!! 僕があなたの相手だ!!」



「上等だアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」



憤怒が大気に充満し、ネギは鳥肌が立つ。


「ネギ君、そいつはマジでヤバイから!!」


「ネギ先生、その者と戦ってしまえば、この飛行船が丸々消滅してしまいますよ!?」


美空たちがこの化物を知っているというのは気になるところだが、ヤバイというのは既に分かっている。


(まるで・・・・ラカンさんを怒らせたような感じだ・・・・・それほどの力が怒り任せに襲い掛かる・・・・)


考えただけでもゾッとする。

だが、戦わねばならない。守らなければならない。


「来い!!」


「し~~~~~ねええええええええええええええええええ!!」


やけに気合を入れて構えるネギ。さながら気分は魔王と戦う勇者のような感じだろう。

チコ☆タンも当初の目的を忘れて既に暴走気味である。

勿論この二人が戦えば、それは正に世界を揺るがすほどの死闘になるだろう。

だが、その戦いは奇跡的に回避されることになる。



『拘束(カプテット)・チコ☆タン!!』



「「「「「!?」」」」」



「ぬおおおお、力が!?」



それはどこからともなく聞こえてきた。

スピーカー越しから老人のような声が響き渡った瞬間に、チコ☆タンは首輪を光らせ力なく倒れた。


「・・・・えっ・・・・あれ?」


振り上げた拳を振りぬくことなくチコ☆タンが倒れてしまい、ネギも目が点になった。


「「「「「・・・・・あれ?」」」」」


龍宮や楓たちも目が点になっていた。


「な、なんや!? 何が起こったんや!? って、とにかく今はこっちや!?」


「おおおおおい、何か知らねえが、そいつぶっ倒れたんならこっちに手え貸してくれよ!!」


「うわああああああ、やべえ、被弾したァ!? このままじゃ負けるぞ!!」


わけが分からない状況だが、周りの状況は変わっていない。何万と押し寄せる数にいい加減押し込まれそうになり、小太郎やグレン団たちは悲鳴を上げる。

だが、その弱音が聞こえた瞬間・・・・・





『確率変動・魔道大グレン砲発射ァァァァァ!!!!』





「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」」」」」」」」」」





再びスピーカー越しから、そして今度は何やらとんでもない叫び声が聞こえた。

そしてその叫びと同時に巨大な魔力砲が自分たちの真横を通り過ぎて、押し寄せる無量大数の怪物たちを一掃した。


「こ・・・・」


「これは!?」


メガロメセンブリアたちの援軍か? たしかにこの巨大な主砲は間違いないかもしれない。

だが、先ほどの叫びが聞き間違えでなければ・・・・

ネギたちがそう思った瞬間・・・



「まったく、アムグが居て良かった。チコ☆タン、先に一人で突っ走るなよ!! ・・・って、いつもそうやって言われている立場の俺が、人に向かって言う日がまた来るなんて思わなかったよ。ガキの頃に、アニキに言って以来だな」



「あっ!?」



「そしてネギ、ぶち破る壁を間違えるな。お前のぶち破る壁はそいつじゃなくて、アッチだ!」



「シ・・・・・シ・・・・・・」



ネギを見ながら、真っ直ぐ墓守の宮殿を指差す男は・・・・



「そしてお前たち! 弱音なんか聞きたくないぞ! 弱音じゃなくて、強音を吐け! 強音を吐いて無理も困難もぶち破るのが俺たちだろ!!」



「おっ・・・・・」



「お・・・おおおおおお!!」



「ア・・・・アニキィィィ!!!!」



腕を組み・・・



「へっ、兄ちゃん!」




「リーダー!」




「シモンはん!」




不敵に笑い・・・・



「ようやくでござるな・・・・」



「ふっ、待っていたよ」



「おいしいところどりアルね!」



無量大数の怪物を掻き分けて・・・・


視界に収まりきらないと言っても過言ではない、超巨大な戦艦の舳先に立つ男。



「シモンはーーーーーーーーーん!!」



シモンだ。


とうとうシモンが目の前に現われた。


彼らにとって、これほどうれしい援軍は居ない。


うれしそうに誰もが顔をほころばせて、ガッツポーズや拳をグッと握る。


しかし・・・




「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも・・・・・・・・・・・」」」」」」」




そう、直ぐに表情が皆変わった。



『どういうことじゃあああああ、リカーーード!!』



『バーロー! 俺だって驚いてるんだ!?』



『あれは確か・・・超弩級要塞型戦艦ケルベロス・・・・ケルベロスじゃ・・・・あれはケルベロスじゃろう!!』



『か・・・かつて狂い笑いのユウサが、大戦期のテロ組織に売買していたあの伝説の兵器・・・所在が分からなくなり、我々アリアドネーですら眼を光らせていたあの兵器が・・・・』



この光景にはリカード、テオドラ、セラスをはじめ・・・・



「もう・・・・ダメだ・・・・・頭が痛くなってきた・・・・」



「クルト・・・・・・・・考えたら負けだよ」



頭を抱えて俯くクルトの肩にやさしく手を置くタカミチを含め・・・・



「おい・・・あれ・・・・」



「ああ・・・・なんで・・・・・」



「「「「「大グレン団の穴掘りシモンだァ!!!」」」」



この戦場に集った者たち全てが、驚かずに居られなかったのだ。




「「「「「「「「「「シモンさん(リーダー)なんかスゲエもん持ってきたァァァァァ!!??」」」」」」」」」」




この状況を説明無くして理解できるものなど一人も居ない。

最早常識というものが何なのかさえ分からない展開に誰もついていけなかった。



「まったく、あなたは本当に・・・見てください。ネギ先生たちがポカンとしていますよ?」



苦笑しながら、しかしどこかうれしそうに、先ほど月詠と共に離れた刹那がシモンの隣でネギたちの反応を見て笑っていた。



「まだだ。まだこんなもんじゃないさ」



するとシモンはそこで天に向かって指差した。


それが合図となり、ゾロゾロと瞳をギラつかせたものたちがケルベロスの甲板に現れた。




「さあ、みんな、やるぞ!! 世界の果てで咲かせる花で、明日の勝利を飾ってみせろ!!」




そしてシモンは叫ぶ。




「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」」」」




彼らも叫ぶ。


これまで自分が歩んできた道。これまで出会った人たち。そこに本物も偽者も関係ない。


生まれも立場も関係ない。


想いをドリルと変えて叫ぶ。


そしてその想いが一つになる。


この場に居るものは誰も恐れない。


この場に居るものは誰もが迷わない。




「「「「「「「「「「いくぜ、俺たちを誰だと思ってやがらァァ!!!!」」」」」」」」」」」




無限の敵が阻もうと、彼らは不撓不屈の無法者。


この道誰にも譲らない。


壁があるなら殴って壊す。道がなければこの手で創る。


因果も運命も突破して、命の叫びが銀河に響く。


友の想いをこの身に刻み、無限の闇を光に変える。


全ての道がねじって交わる螺旋道。


その道が今世界の果てに広がり始めた。



その傍ら・・・



その道を、冷たい目で遠くから眺める人影が墓守の宮殿の中に現われた。




「ネギ先生もそうだが・・・・彼も困った人・・・・・・ポヨ・・・・これで本当に魔法世界は彼を知ってしまったポイヨ・・・・」




熱く滾ったその道を、大して驚きもせずに現われた影はブツブツと呟いていた。



「もしここに居て・・・この光景を見たらどう思う、・・・超鈴音・・・。怒るか・・・諦めるのか・・・・それとも目を輝かせて爆笑するのか・・・・・」



そしてその影は踵を返して再び消える。



「だがまあ、あの男については・・・・約束通り、あの人に全て任せよう。そして、私はネギ先生たちを・・・彼らはきっとここまで来る・・・ポヨ・・・」
最終更新:2011年05月13日 21:17
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