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118-2

怒り任せに飛び掛ろうとした美空を後ろからシモンが掴んだ。

そして振り返る美空に、シモンは驚いた表情で尋ねた。


「美空・・・みんなって・・・・」


「・・・・うん・・・・」


ギロッと涙目でデュナミスを睨みながら、美空は頷いた。


「・・・・首都の兵士・・・本屋がお世話になった人たち・・・・さらに・・・エマさん・・・熊の奴隷長さんや・・・・トサカさん・・・・エ、・・・エミリィも!」


「ッ!?」


シモンとて覚悟はしていた。

自分の知り合いが消されたことに対して覚悟はしていた。

だが、気持ちはそんな簡単には割り切れなかった。


「エマ・・・・奴隷長や・・・・トサカに・・・・・・エミリィまで・・・・」


全員自分がこの世界で世話になった人たちだ。

好意を向けられ、殴られ、叱咤され、手を貸されたりした人たちだ。

その繋がりを絶たれたという事実を知らされて、シモンも落ち着いてなど居られなかった。

そしてシモンや美空たちがその事に気を取られている隙をデュナミスは、そして刹那を相手にしている月詠も見逃さなかった。


「ふん・・・・ならば再現してやろうぞ! この力でな!」


デュナミスが取り出したのは、忌まわしき造物主の掟の鍵。

世界を滅亡へ導く鍵となる力だ。

美空が気づいて駆け出すが、一歩手遅れでデュナミスは影の中に消え、魔道大グレンの甲板から姿を消した。

そしてその直後、デュナミスが消えた代わりに前へと進むシモンたちの眼前に、オスティアに出現した超巨大な召喚魔が姿を見せた。


「なっ、・・・アレは!?」


「また現われやがった!?」


デュナミスの召喚したデカブツは、墓守人の宮殿への道を通せんぼするかのように立ちはだかり、行く手を遮られた。

先頭を走る小太郎たちでも、これほど巨大な質量の敵を倒す方法は無かった。

何よりも、オスティアで見た脅威を再び見せられれば、誰もが動揺せざるを得なかった。


『神速部隊、あのデカブツに一斉射撃だ!』


『ダメですマンドラ隊長! シモンリダーの確率変動区域の外に居るために、我らの攻撃が通用しません!』


『く、くけーー・・・・触手が!?』


『ゲ、ゲッコ先輩!?』


さらに造物主の掟の力を使っている以上、連合軍の力も通用しない。

デカブツから不気味な触手が幾重も伸び、搾取の時間が始まった。この力を前に魔法世界人になす術は無い。

白き翼か新生大グレン団たちでどうにかするしかない。

だが、事態は更に悪化する。


「ほな、ウチも怪獣大決戦に相応しいものを披露しますえ~」


「なに!?」


現われたデカブツを見て、月詠も再び造物主の掟の鍵を取り出した。

鍵を見て刹那も表情を変えて切りかかるが、その剣閃を交わしながら、月詠はぶつぶつと呟き始めた。


「っ? この・・・詠唱は・・・・・」


次の瞬間刹那の表情は強張った。


「月詠、それはまさか!?」


「んふふふふ~」


「バ、バカな、ヤメロ! それは呪術協会でも禁術に指定されたものだぞ!!」


「んふふふふふ~! もう遅いですえ~! さあ、神をも恐れぬ禁術を披露しますえ~!!」


月詠のやろうとしていることを理解し、それを必死で止めようとするが月詠は聞く耳を持たない。

そして彼女は止まらずに詠唱と印を結び、その術の名を叫ぶ。



「鬼芽羅(キメラ)の術!!!!」



月詠が億鬼夜行によって召喚した無数の化物。

中には竜の形をした飛行船より遥かに強大な怪物も居る。

その内の八頭の竜が月詠が術を唱えた瞬間、強制的に収束され、嫌な音を響かせながら形を潰され、一つの巨大な球体なった。

そしてその球体は見る見るうちに形を崩し、その姿を更なる怪物へと変えた。



「暴れ狂いなはれ! 八俣大竜(ヤマタノドラゴン)!!!!」



八匹の竜を合体させて新たな強力なデカブツが戦場に出現した。




「「「「「「「「「「な、なんだあの化物はァ!?」」」」」」」」」」




これまで湧き出た希望を全て粉々にするかのような、強大な二つの壁が立ちはだかった。


「なんだよ~、このデカ物は!?」


「合体ってわけか。造物主の力なんて言ってるわりには原始的だな」


思わず手が止まってしまうような巨大な怪物の出現に誰もが見入ってしまった。

まるで自分たちをあざ笑うかのような、強大な壁がここに来て立ちふさがった。

さあ、絶望しろと言わんばかりのデュナミスや月詠の高笑いが聞こえた気がした。


「んだ、トカゲの分際でゴラァァァ!! 吹き飛ばしてやらァ!!」


そんな中、臆せずチコ☆タンだけは八俣大竜に飛び掛る。

だが、その超絶な破壊力を秘めた拳が・・・


「ンガッ!?」


強烈な炸裂音を響かせるものの、大竜を砕くまでに至らなかった。


「チ、チコ☆タンの拳が!?」


「あの化物竜、なんて硬さだ!?」


そして大竜はそのまま、何事も無かったかのように懐へ飛び込んだチコ☆タンに八つの首を向けて、口を開いた。

竜族のブレスだ。

しかも一つのブレスですら脅威だというのに、それが八種の力を同時に放てば、それはもはや想像もつかぬ威力だ。


――八極玉(エイティストボール)!!


「グアアアアアアアアアアアアアアアア」


炎や風など、八種の属性全てを凝縮したその息吹は、魔人チコ☆タンに強烈なダメージを与えて吹き飛ばした。


「チコ☆タン君!?」


「や、やべえぞ、パパ! あの化物がアッサリ返り討ちに!?」


チコ☆タンすら撥ね退ける力を前に、戦場に動揺が走る。

魔法世界人なら知らぬものの居ないチコ☆タンという魔人すら受け付けぬ脅威に戦慄が走った。


「ガッ・・・ゴノ・・・あのデカさに硬さにこの威力か・・・・」


勢いよく吹っ飛ばされたチコ☆タンは運よく通りかかったグレートパル様号の甲板に落ちた。

おかげで、グレートパル様号の甲板にはミサイルでも落下したかのような衝撃音が響き、船もぐらついたが何とか無事である。

苛立って自分を吹き飛ばした上空の化物竜をチコ☆タンが見上げる。すると、そんな自分に慌てて駆け寄る少女が現われた。


「無理したらアカン。今ウチが治したるえ」


「・・・・・ァ゛?」


心の芯から温まるような治癒の力がチコ☆タンの体に流れた。

木乃香の力だ。木乃香は先ほどまで皆と一緒にチコ☆タンに怯えていたというのに、今では自分たちの仲間だと認識して、献身的にその傷を癒していく。

余計なことをと払いのけようとしたが、その温かさに少しチコ☆タンもされるがままになり、一命を取りとめていた。

だが、チコ☆タンがやられた光景は誰もが見ていた。そのショックは未だ抜けない。


「チコ☆タンさん・・・・・くっ、・・・・こんな怪物まで出てくるなんて・・・・・・・フェイト!」


新たに出現した化物二匹にネギも舌打ちする。

少しでも速くフェイトの元へ、アスナとアーニャの元へと思っていたのだが、中々前へは進めない。

未だ遠い目標地点を睨みながら、ネギの心も次第に焦ってきていた。

自身もまた数十万の敵に囲まれて余裕が無い。

このままではフェイトに辿り着くどころか、魔力が先に尽きてしまうという不安に駆られていた。

だが、出し惜しみをするわけにもいかない。


「雷帝招来!!」


ネギは雷天の威力を更に高めて、全力で傀儡たちを撃ち落して行く。

そして、その時だった!


「二一三○式超包子衛星支援(チャオパオジー サテライトサポート)システム!!」


「!?」


突如現われた可愛い猫を模した銃のようなものを持ち、これまた猫のような尻尾と耳を生やした少女が現われた。


「ネギ先生。あなたは最終決戦まで少しでも力を残しておいてください」


「茶々丸さん!?」


「ここは私たちが奮闘します。それがチームワークです」


茶々丸だ。

そして彼女はネギを庇うように前へ出る。その手に持つ銃を前方にいる大軍に向けてレーザー照準装置のようなもので狙いを定め、引き金を抜いた。

すると雲より空よりも遥か彼方の天の向こうが急激に輝きだし、まるで神の天罰をも思わせるような、人知を遥かに超えた巨大な光の柱が大軍を撃ち抜いた。



「空飛び猫(アル・イスカンダリア)!!」



その威力は、この場に居た全ての者達が生まれてから今日に至るまで一度も見たことが無いほどの最強の威力。


「なっ・・・・」


「・・・・なん・・・・」


「な・・・・・・・」


大爆発を起こして大量の敵が消滅した。



「「「「「「「「「「「なんだありゃアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!??」」」」」」」」」」



ネギもシモンも含めて、茶々丸が今見せたとんでもない破壊力を秘めた攻撃に衝撃を受けた。


「た、大量の召喚魔が消滅。威力・・・数値化できません!」


「なんて破壊力・・・・・・」


「あんだけの大軍が一瞬で!?」


だが、その衝撃はやがて歓声に変わる。


「すごい、あれが茶々丸さんのアーティファクト! いける・・・これなら僕たちはいける!」


茶々丸が一瞬で大軍を消滅させたことにより、ネギを始め、連合軍の志気は完全に高まった。


「・・・なんと・・・一撃であれだけ消すとは・・・とんでもない魔法を使うものが居るな・・・」


「くっ・・・・だが、ウチの八俣大竜ちゃんは、そう簡単に仕留められませんえ~」


底を見せぬ連合軍の力。

流石にこれにはデュナミスや月詠すら僅かにうろたえていた。

だからこそ分かる。

今こそ連合軍の勝機だということを。


「さすが茶々丸だ。これならいける。後はあのデカトカゲとデカブツを蹴散らすだけだ!!」


勝機を感じたシモンは、デカブツの向こうにある墓守人の宮殿を睨む。


「美空・・・みんな消えたと言ったな。でもな、まだだ。希望は何一つ消えてない」


そしてシモンもついに動き出した。


「みんな下がっていてくれ、俺も出る!」


シモンはその瞬間、確率変動場を解いた。


「「兄貴!?」」


「「「「「シモンさん!?」」」」」


「「「「「「「「「「リーダーッ!?」」」」」」」」」」


いかにシモンとはいえこの力を使ったまま戦うのは難しい。

だから仲間を一旦下げて、自らが前へ出ることにした。


「いくぜ名前も気合もねえ野郎共! これが俺の・・・」


そしてシモンは背中に翼を出し、大乱戦の中へ飛び出した。そして四方八方見渡し、仲間の位置を確認してその力を振るう。

滾った血を抑えられずに開放する力・・・・



「ボルテックス・キャノン・マキシマム!!」



体中からドリルを出して敵を貫くギガドリルマキシマムのビーム砲。

周りに居た傀儡たちを光の槍が貫いたのだ。


「ぬおおおおお、なにあれーーーーッ!?」


パル様号の操縦席から、降り注ぐこの光の槍に目玉を飛び出して驚くハルナ。


「おまけに茶々丸同様エネルギーが数値化出来ませんね~・・・これじゃあ、数値化の上限をいくらに設定してもおいつけませんね~」


ハカセも驚きを通り越して呆れ顔だった。


「さすがシモンさんだ。相変わらずの破壊力」


蹴散らされていく傀儡たちを見て、ネギも冷や汗を掻いた。


「すごい・・・撃墜された数が把握できないネ」


「あれだけ最初はどうなるのかと不安だった大軍を一瞬で消しちゃったよ~。め、目玉が飛び出るかと思ったよ~」


「俺らも負けてらんねえ、撃って撃って撃ちまくるぞ!」


モニターに映し出される茶々丸とシモンの大技に、パイオツゥたちも負けてなるものかと、全砲弾をところかまわず撃ちまくり、傀儡たちもなすすべなく押されていく。


「ついに動きましたか」


「シモンさん!」


動き出したシモンの下へ、ネギと茶々丸が近づいてきた。

飛んできた茶々丸とネギにシモンも応える。


「ネギ、それに茶々丸も、すごかったな、今の」


「はい。威力が大きくて使いどころに困りますが」


ライバルを称え、称えられたライバルは謙遜せずに誇らしげに頷いた。

この感覚も懐かしい。

そして茶々丸はうれしそうに自分の手にある猫型の銃を撫でた。


「・・・シモンさん・・・これは超の発明です」


「超だと!?」


「どのような力によってか知りませんが、私の元に届いたのです。未来から」


その言葉に衝撃を受けたのはシモンだけでない。ネギもだ。

理屈や理由も分からない。しかし自分たちのこの窮地を救ったのは、何とあの超鈴音の発明だったのだ。

戦っているのは今だけではない。未来も戦っていた。

それを知った瞬間、シモンの心は最高潮に達した。


「ふっ・・・あいつめ・・・。だが、これに乗らない手はない!」


「シモンさん?」


何かをたくらんだ顔。

こんな表情をするシモンは、いつもとんでもないことをやらかすのだ。


「未来から届けてくれたあいつのために、今度は今から未来へ向かってあいつに届けてやらないとな! 命の叫びと世界の想いを! そして魂を!」


「つまり・・・?」


「決まってる、合体だ!」


茶々丸には分かっていたのかもしれない。

シモンの言葉に驚きよりも、むしろ期待通りといった表情で笑った。



「是非もありません!!」



お互い頷きあい、シモンは振り返り、ウイングを羽ばたかせてデュナミスが召喚したデカブツの上空目掛けて一気に飛ぶ。

そして茶々丸もそれだけでシモンの考えを読み取り、再び銃を突き出して、今度は照準をデュナミスの召喚したデカブツに狙いを定める。


「まったく、あなたと一緒に居ると飽きません!」


「ならばとっととぶち破るぞ!」


「当然です。あんなもので私たちは止められない」


合体と言いつつ、二人の距離は離れる。ネギは二人が何をする気かと疑問に思うと、何と茶々丸は猫型のレーザー照準装置でデカブツに照準を合わせたかと思えば、デカブツではなくその真上に居るシモンに合わせたのだ。


「ちょっ、茶々丸さん何を!? これじゃあ、まるで・・・」


まるでシモンを狙っているようではないかと慌ててネギが止めようとする。

だが、茶々丸は止まらない。茶々丸は分かっているのだ。


「茶々丸さん、シモンさん!」


「兄貴!」


デカブツの上空に居るシモンから漏れ出した螺旋力の光の波動がやがて巨大なギガドリル、いや、超銀河ギガドリルを作り出す。

その波動に乗せ、シモンが超銀河ギガドリルを天に掲げる。

すると次の瞬間、天空から先ほどと同じ巨大な光の柱が、シモンに振り下ろされた。


「シ、シモンさーーーーーん!?」


「あの二人何やっとんねん!?」


「バカかあの二人は!?」


まるでシモンを攻撃するかのように振り下ろされる巨大なエネルギー砲。その光は容赦なくシモンを包み込む。


「・・・・あれ?」


      • 正確にはシモンのドリルにだ。


「そんな無茶苦茶な~、リーダーは何をやってるヨ!?」


パイオツゥがモニター越しに悲鳴を上げる。


「いや・・・見よ・・・おもしろいことになっておるぞ」


アムグがモニターのシモンを指差す。

シモンのドリルに接触した瞬間、茶々丸の『空飛び猫』のエネルギーを吸収していく。

超巨大なエネルギー砲を、超高速回転する超銀河ギガドリルが生んだエネルギー波で丸ごと飲み込んでいく。


「来たぜ・・・茶々丸の気合と超の想い! いま、全部まとめてぶちまけてやらァ!」


まるで螺旋力のメーターの針が極限まで振り切れるような感覚。

昔から何度も感じているあの感覚だ。

その波動に想い乗せて、シモンが世界に叫ぶ。



「世界も時限も突破して!!」



茶々丸が続く。



「心の叫びよ未来へ届け!!」



二人の声が重なり




「「怒涛合体!! 超銀河・アル・イスカンダリア・ボルテックス・インパクトォォォォ!!!!」」




メカと螺旋の力の合体は、螺旋力の真の力の解放を意味する。

渦巻く螺旋のエネルギーが、デュナミスのデカブツを貫いた。

その渦巻きに飲み込まれたデカブツは、いとも容易く胴体内にエネルギーをねじ込まれ、デカブツの体は大爆発を起こして完全消滅した。


「うおおおおおおおおおおおお、なんだありゃァ!!」


「茶々丸さんもシモンさんもスゲー!」


「デ、データが取れない・・・何て威力」


もはや新生大グレン団も白き翼も、世界連合軍も気持ちを大きく揺さぶられた。


「すごい・・・・これが白き翼に新生大グレン団」


クルトは震えていた。

ただの威力のデカイ攻撃を見ただけで、なぜここまで心が震えるのか。

決まっている。頼もしいからだ。

リカードもテオドラもセラスも、そしてタカミチも同じだ。


『すげえ、すげえぜ』


『ええ・・・この力・・・確かに』


『本当にこの世界を救ってくれるかも知れぬな』


彼らになら運命を預けられるかもしれないと、心の底から思えたのだった。


「いや・・・まだだ・・・彼らにはまだ先があるかもしれない」


ネギを、シモンを、彼らの仲間を見ていると、もっともっと先があるのではないかとタカミチもゾクゾクしていた。

なにはともあれ、二発の巨大な攻撃により、デカブツが一体消えて、傀儡たちも何万も消えた。

今なら道が空いている。

この時をネギたちは待っていた。


「ネギ、茶々丸のおかげで敵にほつれが出た。美空たちをネギたちの船に乗せて、そのほつれの中を一気に駆け抜けてくれ。瀬田さんたちもネギたちと一緒に!」


「えっ、でもそれならシモンさんは?」


「そうだよ兄貴!」


自分たちを先に行かせてシモンはどうするのか? するとシモンは自信満々に答えた。


「残りの一匹もぶっとばす。俺もその直ぐ後に突っ込んでいく!」


「では、シモンさん」


「ああ、茶々丸。もう一発ぶちこんでやろうぜ!」


相手を全滅させる必要は無い。

道を通れるように出来さえすればいい。

そのために邪魔なのは巨大な八俣の化物一匹。

それさえ居なくなれば後は真っ直ぐ強行突破できるはずだ。


『だそうじゃが、小僧ども?』


シモンの声をそのままアムグは全艦隊に通した。


『・・・仕方ねえな。露払いには俺たちも協力するか』


『うむ、ハルナとやらの情報によれば、あの巨大なバリヤーには隙間があるそうじゃ。今ならそこに群がるものが薄い』


『ならば決まりね。あの巨大な化物はシモンさんに任せて、後はネギ君たちが無事に辿り着くのを祈るわ』


連合艦隊も腹をくくった。


『ハルナさん。クルトです。シモン君たちが超巨大種を引き付けている間に、我々はバリヤーの隙間の通路目掛けて一斉砲撃します! あなたたちはそのまま真直ぐ進んでください!』


連合軍の意志をクルトが代表してハルナに通信で伝える。


『おお~、いいんすか!? いや~、頼もしいっすね~』


暢気なハルナの声にクルトは苦笑しながら頷いた。


「いいんだね・・・クルト」


その傍らでタカミチは確認するかのようにクルトに訪ねる。するとクルトは少し顔を俯かせて唇をかみ締めていた。


「いい・・・・・わけではない」


「クルト・・・・」


「彼らはまだ子供。全てを任せるわけにはいかない。だが、・・・・今は・・・託すしかない」


やるべきことが決まった。

全てはシモンが八俣の化物竜を倒せるかどうかに掛かっている。

全艦隊はモニターに注目し、シモンの背中を皆が見つめた。


「さあ、決めるぞ、茶々丸」


「はい」


二人は頷きあう。

この一撃でこの化物を消し去らねば、ネギたちも先にはいけない。

ネギたちも、美空たちも、この一瞬に緊張が走った。

すると・・・・



「待ちやがれ・・・・・・」



「「ッ!?」」



「あのクソトカゲは俺がぶちのめす・・・・・」


シモンの肩を掴んで止めたのは、先ほど敵にやられたチコ☆タンだった。

怒りで額に青筋を浮かべながら、「人の獲物を取るんじゃねえ」というような表情で再び参上した。


「チコ☆タン!? お前、怪我は?」


「ああん? あのトロ臭そうな女に治された。だが、そんなことはどうでもいい。あの身の程知らねえトカゲは俺が爆殺する!! 余計なことはするんじゃねえ!」


チコ☆タンが不愉快そうに指を指した先には、木乃香が満面の笑みでシモンに手を振っていた。

どうやらチコ☆タンは不本意ながら大怪我を木乃香に治してもらい、再び現われたのだ。

シモンもうれしそうに木乃香に手を振り、そしてチコ☆タンを見る。


「チコ☆タン・・・・だが、完全に治ったわけじゃないだろ?」


そう、木乃香が治癒呪文を掛けたとはいえ、チコ☆タンの肉体は確かに深く傷ついていた。


「だろうな・・・・・だからどうした?」


こんな状態であんな化物を相手にするというのはとてもではないが無謀だ。


「・・・お前一人で勝てるか?」


「当たり前だ! テメエも余計なことをするんじゃねえぞ!!」


「チコ☆タン・・・あのデカブツは、さっき俺たちが消したのよりも遥かに強い」


「アア?」


「恐らくそうでしょう。もはや、帝都守護聖獣・古龍龍樹に匹敵する力を持っているかもしれません」


シモンに続いて茶々丸もチコ☆タンを宥めるような口調で敵のレベルを告げる。だが、チコ☆タンの様な男に説得も命令も無意味だ。


「ハッ、だからどうしたってんだよクソ共! 同じトカゲなら、あんなもんゲジョウの野郎に比べたらどうってことはねえ! ゴチャゴチャ抜かしてこの俺に命令するなら、テメエらから先に片付けるぞ!!」


怒りに満ち、今にも爆発寸前の手の付けられない状態に見える。一度戦った身としては、この状態のチコ☆タンは非常に厄介だ。

しかしここで揉めている時間も無い。仲間たちは皆自分たちのやることを待っているのだ。


「・・・ったく・・・仕方ないな・・・茶々丸・・・お前もネギたちと一緒に居てくれ」


「シモンさん!?」


シモンは決断した。

今再び茶々丸と合体技で敵を蹴散らしてもいいだろう。

しかし、ここは魔人の気分を損ねることはしないことにした。


「ここは俺とこいつに任せてくれ」


「・・・・・・・残念ですね」


ライバルとはいえシモンと共に戦うことは悪い気はしなかった。

しかしここで断って八俣の化物竜を倒すと、チコ☆タンもなにをするのか分からない。

ここは合体一回で我慢するべきだろうと、茶々丸も引き下がることにした。


「では、シモンさん。私はネギ先生たち共にグレートパル様号で特攻します。あなたも必ず追いついてきてくださいね」


「任せろ。俺を誰だと思っている」


頷き、茶々丸は魔道大グレンから飛び降りてグレートパル様号へと向かった。

その背を眺めながら、残ったのはシモンとチコ☆タンの二人。

他の連中もシモンが確率変動場を解いたことにより、前へ出るのは止めて待機の状態に入った。

つまり今この戦場は、この二人に委ねられているといえる。


「おい、テメエも消えて良いぞ。あのクソトカゲに一発ぶち込むのは一人で十分だ」


しかしチコ☆タンはシモンをも邪険にして、一人で戦う気漫々である。

受けた屈辱を何万倍にしてでも返してやるという気迫が漂っている。

だが、シモンは首を横に振る。


「チコ☆タン・・・お前を昔倒したネギの親父さんも・・・俺も・・・そしてネギも、一人で無理して戦って強いなんてことを誇ったりはしない」


「ア゛ア゛?」


「どんなに自分が強くなっても、それでも尚も頼もしいと思える仲間が居たことが、何よりも強みだった。少なくとも俺はそう思っている」


深く傷つきながらも死地へ臨もうとするチコ☆タンを止めるシモン。


「・・・・何が・・・言いたい?」


チコ☆タンにとっては不可解でウザッたいだけかもしれない。だが、シモンは言う。


「お前の男気を考慮して茶々丸は行かせた。だが、一人でやらせるわけにはいかない。これによって俺たちの命運が変わるんだからな」


「・・・・まさか・・・テメエの命令に従えと? ふざけんなよ・・・ゴラァ・・・」
最終更新:2011年05月13日 21:19
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